「苦汁」を飲まされたイチョウ 「苦渋の決定」には瑕疵 続「街路樹が泣いている」
既に伐採された神田警察署通りⅡ期道路整備区域のイチョウ(ブルーシートがかかっている)
前回の記事では、千代田区は神田警察署通りⅡ期道路整備区域に植えられている街路樹のイチョウ32本を全て伐採することを少なくとも2020年12月の段階で決定していたことを明らかにした。
そして、2021年5月28日に行われた書面開催による第18回神田警察通り沿道整備推進協議会(協議会)では、「台風などの倒木の危険性や根上りによる歩道空間の通行障害の問題、新たな歩道や自転車道整備に支障があるのであれば、街路樹の伐採は止むを得ず、全ての更新を望む」「協議会の多数の委員で決めてきたことが、少数の意見で中断されるのかわからない」「II期工事区間の植栽については、色彩も良く、ヨウコウザクラとオタフクナンンテンの組み合わせで問題なし」とし、「既存の街路樹は同位置には置けないため、すべて更新します」と決定している。
その後、令和4年1月28 日の協議会で区のまちづくり担当部長は「これまで十何年話し合いをしてきた当協議会は大切なものであり、最後は皆様の意見を聞いたうえで協議会に諮ることになる。その結果を受け、最終的には区が決める」と語ったのをはじめ第19回、第20回協議会、2019年12月に実施した住民アンケート、区議会企画総務委員会の論議もすべて、既定路線に沿わせるためのアリバイ作りであることが分かる。
令和4年3月17日行われた区議会企画総務委員会での小枝委員と嶋崎委員長のやり取りはそのことを否定していない。
・小枝委員今日出された資料の一番最初、沿道まちづくり検討委員会のときには、街路樹、樹木の専門家が入っていたんですよね。その後は、もうぱんと切ってしまって、いなくなってしまっているという問題に行き当たりました。非常に進め方にやはり瑕疵があったなと。
○嶋崎委員長 そうだね。それは、協議会の合意が必要だよね…そこのところの知恵出しというか、やり方というか…多少瑕疵があったのかもしれないけれども…そういうことでよろしいですよね。
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不動産業界では、物理的・法律的瑕疵だけでなく隠れた瑕疵、心理的な瑕疵を含めて「瑕疵」に対しては契約解除などかなり重い損害賠償責任が課される。
今回の問題ではその行政の「瑕疵」が問われている。住民らは強行伐採を決めた区に対して損害賠償裁判を起こしたが、結果はどうなるか。死滅しつつある民主主義が復活するかどうかの問題でもある。
記者は今回の問題を通じて、「戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり」-ジョージ・オーウェルの「一九八四年」(ハヤカワ文庫)そのものの世界をみたような気がした。街路樹伐採を決断した樋口高顕区長は「苦渋の決定」としたが、記者は議会(推進派を除く)も住民もイチョウも「苦汁を飲まされた」のだと思う。
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平成30年度調査による千代田区の区域面積1,166haに占める緑被地面積は約271haで緑被率は23.22%となっている。この数値は23区でもっとも高い練馬区の24.1%、2番目の世田谷区の23.6%に次いで3番目で、もっとも低い中央区の10.7%の倍以上となっている。千代田区の緑被率が高いのは、区域面積の12%を占める皇居(143ha)や日比谷公園(16ha)が数字を引き上げているためだ。
地域別では富士見地域がもっとも高く42.71%、以下、大手町・丸ノ内・有楽町・永田町地域の23.89%、番町地域の22.57%となっており、第2期工事に該当する神田公園地域は3.71%にとどまっている。
民主主義は死滅した 千代田区のイチョウ伐採 続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/13)
千代田区の主張は根拠希薄 イチョウの倒木・枯死は少ない 「街路樹が泣いている」(2022/5/12)
ぶった斬らないで 神田警察通りのイチョウの独白 続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/11)
なぜだ 千代田区の街路樹伐採強行 またまたさらにまた「街路樹が泣いている」(2022/5/10)
民主主義は死滅した 千代田区のイチョウ伐採 続またまた「街路樹が泣いている」
神田警察署通りⅡ期道路整備区域のイチョウ(左は「テラススクエア」の公開空地の樹木)
千代田区の神田警察署通りⅡ期道路整備では、少なくとも2020年12月の段階で区はイチョウ30本を伐採することを決めており、第17回神田警察通り沿道整備推進協議会でその旨を報告し、了解を得たとしている。2021年9月21日開かれた企画総務委員会の議事録には、事前に住民に諮ることなく、議会で論議もしないで決定したことがはっきりうかがえる。
この問題について、最初の記事で「プーチンのウクライナ侵攻と変わりないと言ったら失礼か」と書いたが、全然失礼に当たらないことが分かった。民主主義は死滅しつつあるのか、既に死んだのか。そもそもが幻想なのか。
以下、企画総務委員会のやり取りを紹介する。
〇大串副委員長 私が不思議だなと思うのは、この根拠としている沿道ガイドラインのゾーン別の将来像が書かれています。そこには街路樹も明確にうたっていますよ。今回のII期工事は、最初のゾーンですよね。既存のイチョウ並木を保全、活用するんだというのが、この沿道ガイドラインには書かれている。この沿道ガイドラインを根拠としてこの工事をやるんだというんだけれども、何でこのイチョウの並木を切ってしまうの、街路樹を。立派な樹冠が形成されているんですよ。どうなんですか。
◯須貝基盤整備計画担当課長 まず、ガイドラインのほうには、大串委員おっしゃるとおり、そのように書かれてございます。我々もそういうことで検討していったんでございますが、やはり当初の目的の自転車走行空間、そして、歩道を拡幅して、歩行者空間を確保していくと。そういうことを達成していくためには、今ある街路樹がその位置にあると整備ができないというところから、そして、このガイドラインにつきましては、この1ページのところに、本ガイドラインは、今後の地域の方との協議やまちづくりの動向を踏まえ、必要に応じて発展、改良していくことを想定していますと、そういう記載がございます。 そして、昨年の12月2日ですね、第17回協議会におきまして、ガイドラインの趣旨については達成できたものと考えて、(伐採を)協議会の中で確認したところでございます。
◯大串副委員長 昨年の12月の協議会で、切ることが決定したと。じゃあ、その時点で、そういう案が出たなら、その出た段階で、まず、ガイドラインを、これ、書き換えてくださいよ。今もこのままホームページに載っている。
◯須貝基盤整備計画担当課長 大串副委員長のおっしゃるとおり、確かにガイドラインを協議会の中で議論を交わして変わったということで、それに関しては、おっしゃるとおり、周知をしていくべきだったと思っております。遅まきながらですが、ホームページのガイドラインにつきましては、先週、実は更新をしたところです。申し訳ございません。
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ガイドラインとは、区が平成25年3月に制定した「神田警察通り沿道賑わいガイドライン」のことで、当初は「豊かに育った既存の街路樹を活用する(白山通りのプラタナス、共立女子前のイチョウなど)」となっていたのを「豊かに育った既存の街路樹を活用する(白山通りのプラタナス、共立女子前のイチョウ)」と「など」を削除した。
「など」を削除したことについて、区は朝日新聞(2022年1月27日付)の取材に対し「協議検討の結果、ガイドラインと違った形になることがあり、その都度改定はしない。今回はガイドラインと違うという指摘が多々寄せられたため、誤解を招くおそれがあるので『など』を削除した」とある。
「等」は法律やビジネス文書でもよく用いられる。例えば建築基準法。同法には「国の機関の長等」「建築主事等」「避難施設等」「確認審査等に関する指針等」「がけ崩れ等」「「木造建築物等」「防火壁等」「住宅等」「津波、高潮、出水等」「都市計画区域等」「用途地域等」などの「等」は600か所以上登場する。これらは用語の概念をあいまいにするのではなく、むしろ例示しているほかのものにも法律で縛る役割を果たしている。「等」とは何かを省令、施行令で詳細に定めているケースが多い。都合のいい文言ではある。
今回の千代田区のケースはその逆だ。既存樹を活用するのは白山通りのプラタナスと共立女子前のイチョウのみで、神田警察通りⅡ期以降はイチョウなどの巨木を全て伐採する意思を明確に打ち出したと理解できる。
ガイドラインは区も住民も縛る法律とほとんど同じだ。それを区は一方的に放棄した。これまで頻繁に行われてきた過去の歴史を塗り替えることと同じだ。
区の道路公園課は5月11日、記者の「第三期以降も街路樹を伐採されるのか(第三期はケヤキがかなり多い)」との質問に対し「伐採の予定です」と回答した。
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この問題について、片山善博氏は「世界」(岩波書店)6月号の連載コラム「日本を診る」で、「全国あちこちに見られる、議会本来の役割を果たさない議会の一つ」と切り捨て、「どうして、区議会は予算審議の過程で伐採に反対する住民の意見を聴かなかったのだろうか」と疑問を投げかけている。
議会関係者や千代田区はこの片山氏の声をどう受け止めるかだが、令和4年3月17日行われた区議会企画総務委員会での大串副委員長の発言を紹介する。
○大串副委員長 これは検討というよりも、既に千代田区のこの意見公募、手続要綱にやりなさいともう定められているんだよ。本当はやらなくちゃいけなかったことをやってこなかったんだよ…工事の看板が出て、初めて知るんですよ。こんなかわいそうなことはないよ。だから、僕は、まちづくりを行政から住民に返してくださいと。千代田区のやり方だけが何かちょっとおかしいんだよな。(「そうだ」と呼ぶ者あり)ここに手続要綱を定めながら、それを1回もやってこなかったというのは、まちづくり部だけですか。僕は、それを、あの予算の審議のときに間違った報告というかな、答弁をする。それから、1月8日の住民説明会での資料も頂きましたよ。そのとき、説明会で区側は何と言っていたか。神田警察通り賑わいガイドラインを前段として、区民参画の協議会とパブリックコメントの場を通じてオーソライズしてきたと。これはどうなんですか。うそじゃないんですか。住民に向かってきちんと説明しなくちゃいけない説明会において、うそを言ったらいかんよ。公務員はそんなことをやっちゃいけないんだよ。(「そうだ」と呼ぶ者あり)だからこそ、住民の間で要らないトラブルというかな、対立を生むきっかけは行政側にあるんだよ。十何年間積み上げてきたと言うけれども、その間、1回も議事録を公開せず、説明会も行わない。パブリックコメントも行わない。これで何で十何年積み上げてきたなんてよく言えますよ。(拍手)入っている協議会の人だけしか知らないんだよ。(中略)今のこの神田警察通りII期工事のイチョウ32本の伐採について、伐採しなくてはならないという合理的な理由もなかった。また、ここに至るまでの適正な手続を欠いていた。
Ⅱ期の区域内にはこのような公開空地が2か所ある
千代田区の主張は根拠希薄 イチョウの倒木・枯死は少ない 「街路樹が泣いている」(2022/5/12)
ぶった斬らないで 神田警察通りのイチョウの独白 続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/11)
なぜだ 千代田区の街路樹伐採強行 またまたさらにまた「街路樹が泣いている」(2022/5/10)
千代田区の主張は根拠希薄 イチョウの倒木・枯死は少ない 「街路樹が泣いている」
伐採が予定されている3期の街路樹(ケヤキもかなり多い)
街路樹の倒木・枝の落下による事故について考えてみた。今回の神田通りの道路整備計画だけでなく、すべての道路整備について当てはまる問題であり、街路樹をどう考えるかの本質的な問題がここにあると考えるからだ。
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令和4年1月31日に行われた千代田区の企画総務委員会で木村委員の「今回のこの計画だけれども、まず沿道住民の声を聞かなかった。これ致命的ですよ」という問いに、小川環境まちづくり部長は「区としての判断は、やはり安全に通行ができるといった歩行環境、道路環境の整備というものが、やはり今回の整備に関しましては優先すべきことであり、その安全性、利便性を犠牲にして木を残すという選択にはなかなかならなかったというのが現状でございます」と答えている。
また、須貝基盤整備計画担当課長は「車道とかは構造的に硬いものがあるので、なかなか根が張れる範囲というのは道路の中では限られてまいります。なので、あくまでも本当に道路の附属物ということで、これを言うとまた怒られてしまうんですけれども、まずは道路というのは本当に安全に通れるということが第一なんですね。木がかわいそうだとか、それももちろんございます。ただ、万が一それが倒れ人の命を痛める、そういうことになったら、そのときは本当に責任を取るのは私たち行政でございますので、その辺は踏まえてご理解いただきたいと存じます」と語っている。
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皆さんは、このやり取りをどう受け止められるか。道路の安全性、利便性を犠牲にして街路樹を残していいのか、万が一、倒木や枝の落下によって人の命が痛めることになったらだれが責任を取るのかと区側は主張している。管理者責任を問われるからだ。
記者は、ごもっともだと思う。歩道空間は危険に満ちている。車はしょっちゅう突っ込むし、雪や落ち葉に足を取られたり、敷石につまずいたりするのは日常茶飯だし、横からはコンクリの塀が襲うこともある。上からは車や看板、タイルなどだけでなく人が降ってくることもある。
今回の神田警察通りの問題は、街路樹を残すのか、伐採・撤去するのかは、行政の判断一つにゆだねられていることを改めてわれわれに突き付けた。須貝氏が語ったように、道路法と道路交通法には「街路樹」の文言は一つもない。あくまでも「附属物」「物」の一つだ。代替物などいくらでもあると。
これに対し、住民らは伐採せずに整備するよう区に求めた住民監査請求(2022年4月21日)を行っており、また、伐採工事が行われたことに対しては、22万円の損害賠償を区に求める訴えを東京地裁に起こした(2022年5月6日)。
ここでは住民監査請求と損害賠償請求については触れない。街路樹の倒木・枝の落下がどれほど危険かに絞ってみる。
ネットで調べたら、とても興味深いレポートが見つかった。2009年3月発行の「ランドスケープ研究」(日本造園学会)の細野哲央氏・小林明氏による「東京都道における街路樹による落下直撃事故の実態」だ。
レポートは、昭和63年度から平成19年度の都の事故発生報告書をもとに倒木などによる事故と判断できるもののみを抽出したもので、「原因となった樹種が明らかな69件の内訳は、ケヤキが29件(42%)で最も多くを占めていた。ケヤキの発生件数の半数を割ってエンジュ13件(19%) が続き、それにプラタナス6件((9%)、ヤナギ5件(7%)、イチョウ3件(4%)が続いていた」としている。
そして、平成18年4月現在の東京都道の街路樹約16万本の上位樹種は1位のイチョウ約2万8千本((18%)、2位プラタナス約2万2千本(14%)、3位トウカエデ約1万8千本(11%)、4位ハナミズキ約1万5千本(10%)、5位ケヤキ約1万本(6%)などから判断して、「植栽本数が多いほどその樹種が原因となる直撃事故も多いという関係にはないということができる」としている。
両氏は、「突然に樹木の枝が落下したり樹木の幹が倒れかかってくるという事故の性格のため、被害者自身の注意によってこの事故を回避することは極めて難しいといえる。このようなことから、落下直撃事故の発生を防ぐために道路管理者に期待されている役割は非常に大きいと考えられる。特に、ケヤキの枝による事故の発生数上位3路線では、いずれも樹高が高くなり大径木となっていたことから、そのような路線については重点的な安全管理が必要であるといえる」「直撃事故では、ケヤキの枝折れ、エンジュ・プラタナスの倒伏、ヤナギの幹折れなど、樹種によって発生しやすい態様のあることが示唆された」と締めくくっている。
KANDA SQUAREの公開空地
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レポートからケヤキによる事故が多いのはよく分かる。樹高が高く、箒状の見事な樹形を描くからだ(伐採が予定されている神田錦町3丁目のケヤキも見事)。その一方で中木のエンジュやヤナギが多いのは驚いた。
さて、今回問題になっているイチョウ3件(4%)だ。捉え方は様々だろうが、極めて少ないと考えることは可能だ。
区は2期で整備するイチョウ32本のうち2本は移植可能としている。記者も確認した。樹齢にして数年も経っていないはずだ。つまり、この2本はこの数年間の間に何らかの事情で伐採されたと思われる。仮に32本は植えられてから50年とすれば、病死・枯死の確率は極めて低いことが分かる。区の主張はガラガラと音を立てて崩れる。前回書いた記事(イチョウの独白)の正当性を証明できたと思うがいかがか。区の主張は根拠希薄だ。
ぶった斬らないで 神田警察通りのイチョウの独白 続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/11)
ぶった斬らないで 神田警察通りのイチョウの独白 続またまた「街路樹が泣いている」
神田警察通り道路整備Ⅱ期工事区間(右側は「錦町トラッドスクエア」)
記者はこの30年間、街路樹と親交を深め、会話を交わしてきた。以下は神田警察通り道路整備Ⅱ期工事(白山通り~千代田通り)に植わっている街路樹のイチョウの独白だ。
◇ ◆ ◇
お願いだ。ぶった斬ることだけはやめていただきたい。雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ 丈夫なからだをもち 慾はなく 決して怒らず いつも静かに笑っている-この言葉こそわれわれの姿そのものだ。あなたたちの先達は巧みにわれわれを利用し、街路樹としてたくさん植えてきた。事大主義の匂いがしないわけではなく、ちまちました街並みにわれわれのような巨木を選んだのに異論はあるけれども、そんなに間違いではなかったことを皆さんはご存じのはず。都市計画は100年先、200年先を見通して実施するものだから。
美点をひけらかすのはやや気が引けるが、われわれがもっとも自慢できるのはその性格のよさだ。サクラのようにひねくれておらず、真直ぐに伸び、雨にも風にも夏の暑さにも冬の寒さにも耐え忍び、車の排気ガスや騒音、身勝手なあなたたちの強剪定にもめげず成長してきた。樹齢は50~60年だろう。人間にすれば少年少女か。成長途上の段階だ。樹高は20mだって30mにも伸びるだろう。仲間には千年以上生きているものもいる。この先数百年は生きられるだろう。
劣悪な環境を是認し、ストレスは右から左へ受け流し、気を病むこともなく医者知らずだ。あなたたちのように風向きによって右や左に傾くことはしない。葉っぱだって裏も表もほとんど変わらない。正直そのものだ。
容姿だけではないぞ。われわれの利点はたくさんある。二酸化炭素を吸い酸素を吐き出す。お金持ちも貧乏人も賢者も愚者もあまねく平等に樹陰・緑陰で包み込み、地表温度を20度くらい下げているではないか。樹形は見事な円錐形を描き、秋にはまっ黄色に染まってあなたたちを楽しませてきた。火災時には防火壁の役割も果たしてやる。フルスピードで車が突っ込んできても跳ね返す自信はある。
だからわれわれは品格を兼ね備えた長寿、安産の木と崇められ、大学のシンボルマークに採用され、神社仏閣の神木となっているではないか。東京都をはじめ自治体の木としても使用されているではないか。
まだあるぞ。知らない方も多いだろうが、「たらちねの 消えやらで待つ 露の身を 風よりさきに いかでとはまし」と謳われた「たらちね」こそわれらの「垂乳根」のことを指す。「垂乳根」とは、樹齢数百年以上の老木の枝に垂れ下がる突起物のことだ。何? あなたのおっぱいも垂れ下がってきた? いいんだ。もう役割を終えたんだから。大きいから垂れ下がるんであって、大きいことはいいことだ。わが貧乳のかみさんじゃなかった雌株なんぞは全然垂れ下がっていないぞ。
品性を欠く下品なことを言ってしまったが、効能はまだある。葉っぱは血糖値や血圧を下げる効果があることから漢方薬として売られているではないか。幹は生板として利用されているし、実(種子)は料亭の茶わん蒸しに入っている。炒った銀杏はサファイアのような輝きを放ち、酒の肴として重宝されている。
何? 落ち葉の始末に困る? 滑って転ぶ? 銀杏が臭い? 馬鹿云っちゃいけない。これほど皆さんの役に立っているのに文句があるのか。どの木よりも高くそびえ、たくさんの葉っぱを付け、一挙に葉を落とし、種子が強烈な匂いを放つのも全て数百年生きるための知恵だ。だからこそ太古の昔から死に絶えることなく生き延びられてきたのだ。受忍義務という言葉を知らないのか。惻隠の情はないのか。罰が当たるぞ。
他の樹木の批判などしたくないが、われわれの代わりとされるヨウコウザクラの樹高はせいぜい10mと聞く。背丈はわれわれの2分の1か3分の1しかないぞ。赤紫色の美しい花を楽しませてくれるのは1週間ぐらいだ。花が散ったらただの中木、雑木だ。樹陰・緑陰など期待できない。われわれの代わりが務まるはずはない。横綱と平幕くらいの差がある。(これは言い過ぎか)
道路整備区域に入っている神田税務署、神田警察署、それに共立女子大、正則学園、錦城学園などの関係者へ一言。都市計画などない時から建っているのだろうから言っても詮無いことだが、どうして道路・街路に背を向けて、敷地いっぱいに建てたのだ。周りのデベロッパーなどが整備した再開発ビルはみんな総合設計制度を利用して立派な公開空地を確保したではないか。今度建て替える時はこの制度を活用していただきたい。
役所にも一言。4車線から3車線にして歩行者や自転車利用者の利便性を高める計画には大賛成だ。しかし、街路樹を道路の附属物としてしか認識していないようでは沿道の賑わい創出、ウォーカブルな街づくりは絵空事に終わる可能性が大きい。せっかくの公開空地を区民に開放し、屋台も飲酒も喫煙も可能にし、イベントをたくさんやるようにしなければならない。
おっと、忘れていた。70年安保を経験したあなた牧田さん、「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている」この言葉の意味を知っているはずだよね。日和ってんじゃねえぞ。しっかりした記事を書け(大きなお世話だ=記者)。
「錦町トラッドスクエア」の公開空地に設けられている池の鯉
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千代田区の延長約1,360m、道路幅員22mの神田警察通り通り道路整備計画の2期区間(白山通り~千代田通り)の実施が決まった。整備区間は総延長約230m、幅員22.0mで、現況の車道4車線16.6m(4車線+停車帯2)、歩行者・自転車通行空間1.7m、植樹帯1.0mを整備後は車道11.5m(3車線+停車帯1)、植樹帯1.4m、自転車運行空間1.5m・2.0m、樹木0.6m、歩行者2.0mにするもの。歩行者・自転車通行・植樹帯は現況5.4mから整備後は10.5mとなる予定。
計画では、街路樹のイチョウ32本のうち幼木の2本が移植され、残りの30本が全て伐採されることが決まった。すでに4月25日には2本が伐採された。代わりにはヨウコウザクラが植えられることになっている。工事は令和5年2月24日までの予定。
「神田警察通りの街路樹を守る会」などの住民は、区の強行伐採に反発し、工事時間の夜8時から翌朝の6時までイチョウにより沿い監視活動を行っている。
整備済みの神田警察通り道路Ⅰ期工事(左は学術総合センター)
ウクライナ支援活動開始 サンフロンティア アートオフィス「AYOTSUYA」
「Ukraine CaféHIMAWARI オープンイベント」
サンフロンティア不動産は5月10日、同社が運営するアートオフィス「AYOTSUYA(エーヨツヤ)」にオープンした「Ukraine CaféHIMAWARI」を通じ、日本に避難しているウクライナの人々をサポートする活動を開始したと発表した。
「Ukraine CaféHIMAWARI」は、公益財団法人日本YMCA同盟が、日本に避難しているウクライナ人のための交流・学びの場として5月1日にオープンした施設。同社はYMCAの来日サポートに賛同し、社員らの寄付金などの支援活動を行ってきた。
5月8日(日)のキックオフイベント「Ukraine CaféHIMAWARI オープンイベント」にはウクライナからの避難者24名、在日ウクライナ人4名、同社のスタッフ・関係者26名、合計54名が参加した。今後も支援活動を行っていく。
〝日本初 全てがアート〟 サンフロンティア不 シェアオフィス「A YOTSUYA」(2020/11/28)
なぜだ 千代田区の街路樹伐採強行 またまたさらにまた「街路樹が泣いている」
ブルーシートに覆われた伐採済みのイチョウ(右側の緑地帯は興和一橋ビル)
ウクライナ国旗と一緒にイチョウに添い寝する参加者(8日、午後9時ころ)
またまた、さらにまた「街路樹が泣いている」-東京都千代田区が4年4月25日から神田警察通り道路整備Ⅱ期工事を再開し、工事区間に植えられている32本のイチョウのうち二本が伐採されたことを受け、「神田警察通りの街路樹を守る会」のメンバーなど住民が工事時間帯の夜8時から翌日の朝6時まで、抗議の監視活動を行っているのを取材した。
記者が取材したのは5月8日夜8時過ぎから翌日の午前2時過ぎだった。参加者は20~30人くらいか。若い方もいたが記者のようなおじいちゃん、おばあちゃんが中心だった。それぞれがイチョウの傍に折り畳み式の椅子に座り行き交う車などを監視していた。なかにはイチョウに添い寝するように寝袋にくるまっている人もいた。
参加者は「私は14代目。みんな昔から住んでいる人ばかり」「区の言うことは信用できない」「家で缶ビールの蓋を開けたら、仲間からイチョウが伐採されたことを知らされ、自転車で5分かけて駆けつけた」「第一期でできたことがどうして第二期でできないのか」などと怒りをあらわにしていた。
寝袋の方も眠っていたわけではなかった。「(区に)騙されていたからね。トラウマになっちゃった。(行き交う車は)みんな(工事車両)怪しいと思った」と語った。
この日(9日)は工事が行われないと判断したのか、監視活動は午前2時過ぎに解散された。
工事が行われたら一部始終を見届けようと駆けつけた記者が予約していたホテルに帰ったのは2時半ころだった。酒もかなり入っていたが、半覚醒状態でなかなか寝付かれなかった。風呂にも入らず、歯も磨いていなかったのを朝8時ころ起きて初めて知った。飲み残しの缶ビールは半分残っていた。
なぜ、なぜ。なぜ。イチョウ伐採問題は決着がついていたのではないか。樋口高顕区長は「現在の一致点が見出せない状況が長く続けば、意見の対立を深め地域に亀裂を生じさせることにもなりかねないと認識」「(令和4年4月25日から神田警察通り道路整備Ⅱ期工事を再開したのは)行政として苦渋の決定」というが、意見の対立を深め、地域に亀裂を生じさせたのは区側であり、「苦渋の決定」は修復しがたい禍根となるのではないか。プーチンのウクライナ侵攻と変わりないと言ったら失礼か。
2日間かけて区議会企画総務委員会の議事録や経緯などをチェックしたが、怒りは正常な思考を停止させる。何から書いていいか分からない。五月雨式に書くことを決めた。
街路樹に関する記者の記事を調べたら、千代田区の記事も含め100本近く見つかった。参考になる記事を添付した。ぜひ読んでいただきたい。
神田警察通り道路整備Ⅱ期工事区間(右側は安田不動産「錦町トラッドスクエア」)
イチョウの幹には死刑宣告と同じ意味の「撤去」と書かれた張り紙が張られている
歩道のイチョウ(確かに歩道は広くはない。樹高20~30メートルに育つイチョウと釣り合わないのも事実)
整備済みの第1期工事区間(右側の緑地帯は防災センター、左側は共立女子大)
ネガティブにならざるをえない 無残な街路樹 ネイチャー・ポジティブを考える(2021/11/27)
またまた「街路樹が泣いている」 千代田区 街路樹伐採で賛否両論(2016/9/8)
千代田区「説明不足だった」 「豊洲」と同じ様相 神田警察通りのイチョウ伐採問題(2016/10/8)
会議用天板に杉の無垢材を活用した硬くて軽い「Gywood®」提案 ナイス
メラニン化粧板の天板(左)と「Gywood®(ギュッド)」
ナイスは5月2日、メラミン化粧板などの会議用テーブルの天板をスギの無垢材を活用した「Gywood®(ギュッド)」による無垢の板材へ交換する提案を開始したと発表した。
「Gywood®」は、一般的に軟らかいとされる針葉樹の無垢材の表層部を高密度化することで板厚を薄くすることに成功し、軽量化も図られているのが特徴。脚部のデザインも自由に選択でき、今回のような会議テーブルの天板交換などの提案も可能となった。
内装材の木質化の効果は科学的に証明されており、「Gywood®」はテーブルの天板のほかフローリング、階段板、学習机、キッチン面材などへの活用が進んでいる。
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「Gywood®」は記者も実物をみて触ったことがある。コストの問題もあるだろうが、CO2削減やSDGsの観点からすれば爆発的にヒットしてもおかしくないと思う。
国産針葉樹の特長保持しながら傷つきやすい難点解消 ナイス 無垢の新素材開発(2018/6/6)
6.6%増の86.6万戸 令和3年度住宅着工/基本性能・設備退行に触れぬ識者・メディア
国土交通省は4月28日、建築・住宅着工統計を発表。令和3年度の住宅着工戸数は前年度比6.6%増の865,909戸となり、3年ぶりの増加となった。利用関係別では、持家は281,279戸(前年度比6.9%増、3年ぶりの増加)、貸家は330,752戸(同9.2%増、5年ぶりの増加)、分譲住宅は248,384戸(同3.9%増、3年ぶりの増加)。分譲住宅の内訳はマンション102,762戸(同5.0%減、3年連続の減少)、一戸建住宅144,124戸(同11.4%増、2年ぶりの増加)。
首都圏は総戸数297,152戸(前年度比4.0%増)で、内訳は持家61,265戸(同9.1%増)、貸家126,574戸(同6.8%増)、分譲住宅107,831戸(同1.5%減)。分譲の内訳はマンション48,819戸(同11.2%減)、一戸建住宅58,061戸(同8.5%増)。マンションは3年連続減。5万戸を割るのは平成21年度の34,506戸以来12年ぶり。
都県別マンションは、東京都29,216戸(同12.1%減)、神奈川県10,758戸(同0.7%減)、埼玉県4,823戸(同13.6%減)、千葉県4,022戸(24.0%減)となり、4都県とも減少した。
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国土交通省の建築着工統計調査から過去10年間の木造と鉄筋コンクリート造の坪単価の推移を見てみた。坪単価は工事費予定額で、工事が着工から完成までに要した実際の工事費ではなく、一般にこの種の統計は低めに現れる傾向を持っているが、木造と鉄筋の単価推移を概観するのに参考になる。
木造は、平成24年度の52.2万円から令和3年度は56.9万円となり、過去10年間で9.0%の上昇。一方、鉄筋は平成24年度の63.7万円から令和3年度は94.8万円へ実に48.8%も上昇している。
巷間では、マンション価格が上昇しているのは、大手を中心とするデベロッパーが利便性の高い用地取得にシフトしているからで、価格上昇にも関わらず市場が堅調に推移しているのは供給不足によると喧伝されているが、記者はそう思わない。
価格上昇はもちろん、建築費の上昇も大きな要因だが、規制が緩やかな土地代が高い商業系や工業系用途での供給を増やしているためで、マンション適地はむしろ減少していると考えている。供給不足というのも当たらない。ストックの増大、人口減少の現状を考えると、戸数減少は当然だと思う。
そんなことより、マンションも戸建ても基本性能・設備仕様レベルがどんどん劣化・退行していることに注視しないといけないのに、識者もメディア誰も何も言わない。こちらも退行か。
価格15億円以上 本物志向の白が基調 リスト「広尾」ホームステージングイベント
現地建物
リストグループのリストインターナショナルリアルティ(LIR)は4月28日、渋谷区広尾で販売中の住宅のホームステージングイベントを開催。高級外車のランボルギーニ、世界的アーティストのアートを展示するとともに、女性若手ソリストユニット「MUTIA(ミューティア)」による特別演奏も行った。イベントはメディアにも公開された。
物件は、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩16分、渋谷区広尾3丁目の第二種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率300%)に位置する土地面積約247㎡(約74坪)、建物面積約328㎡(約99坪)。構造は鉄骨造3階建て。南西側幅員9.9m道路に接道。建設年月は令和元年6月。価格は15億円以上になる模様。
LIRは、オークションハウス「サザビーズ」を起源とする世界最大級の高級不動産ブランド「サザビーズ インターナショナル リアルティ®」の日本国内における独占営業権を取得後、世界70以上の国と地域に広がるネットワークを活用し、国内外の富裕層向け不動産売買取引を行っている。
2階エントランス
LDK
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現地は広尾駅からはややあるが、中層マンションやオフィスなど閑静な街並みを形成しており、東京女学館に近接。広尾ガーデンヒルズ、日赤、聖心女子大などにも近い。
1階はピロティ・駐車場(4台)と約81㎡の事務所。2~3階の住宅部分は5LDKで、カラーリングは壁や面材など白で統一。床は大判の磁器質タイルやナラ材を多用。2層吹き抜けのLDK天井高は約6.5mで広さは35畳大くらいか。リビングにはバイオエタノールの暖炉、キッチンシンクはディスポーザー機能付き。冷蔵庫はドイツリープヘル(LIEBHERR)製。鍵・レバーハンドルはウエスト。〝シンプル イズ ベスト〟-本物志向のオーナーの品格が伝わってくる。
価格は15億円以上とのことだが、その価値はあると見た。現地に近い広尾3丁目の地価公示は坪420万円(容積率150%)だが、現地は容積率300%なので単純計算するとざっと坪840万円で、土地代は約6.3億円だ。
1階事務所は見学しておらず、建物の建築費、内装費、設備費などはよく分からないが、坪300~400万円以上くらいではないか。建物だけで3~4億円だ。
土地代と建物価格を合計すると10億円くらいになり、都心部の眺望のいいマンションは坪2,000万円の事例も少なくないことを加味すると、オークションにかけたら20億円の値がついても驚かない。バブル期の最高値44億円を付けた「ドムス南麻布」の半値以下だし、やはりバブル期には「広尾ガーデンヒルズ」の中古は坪2,000~3,000万円もした。白が基調なのでどのような好みにも合わせられる。
システムキッチン(左が大型冷蔵庫)
トイレ(TOTO)と浴槽(これほど美しい浴槽は見たことがない。足がすくんだ)
屋上
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住宅価格を当てるのは得意だが、車のことはさっぱり分からない。猫に小判だ。展示されていたランボルギーニなる車は3,500万円で、最高価格のものは4億円と言われても、同業の記者の方が「僕の車の10倍」とため息をつこうと、「あっそう」という他ない。
それでも好奇心旺盛の小生は、「大丈夫、走りださないから」と担当者に勧められるままに運転席に乗ってみた。仰天した。座席といいフロントといいすべてが本革で覆われていた。ステッチはこの前見た三菱地所ホーム広報担当者のそれとは比べようのない微細な細工が施されていた。天井は人工皮革のアルカンターラとか。トランクにたくさんの皮見本(全部で60種)、ステッチ(全部で50種)が置かれていたのにもびっくりした。ドアを開けると地面に「Lamborghini」の文字が浮かび上がった。足元を照らすためだという。
ディーラー担当者によると、車はフルオーダーで生産するとかで、年間生産量よりオーダーのほうが多く、注文してから届くまで2年くらいかかるそうだ。需要が多いのは中国で、その次が北米。わが国は5番目だそうだ。
なるほど。車も金余りの世界経済を反映しているようだ。マンションと同じだ。二極化が進んでいる。車の減価償却期間は6年(マンションは47年)というのにもびっくりした。売れるわけだ。
ランボルギーニ
ハンドル(左)と機器類
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「MUTIA(ミューティア)」が演奏したのは「リベルタンゴ」「アメイジンググレイス」「パイレーツ オブ カリビアーン」。赤と黒の衣装も白い内装によく映えた。
演奏する「MUTIA(ミューティア)」
街のポテンシャル 劇的に変えた 野村不の商業施設「KAMEIDO CLOCK」4月28日開業
「KAMEIDO CLOCK(カメイドクロック)」
野村不動産は4月25日、フラッグシップ商業施設「KAMEIDO CLOCK(カメイドクロック)」記者発表会・関係者内覧会を行った。施設は、JR亀戸駅から徒歩2分、2016年3月に閉店した「サンストリート亀戸」の跡地約22,989㎡に完成したもので、大規模ZEHマンション「プラウドタワー亀戸クロス」との住・商・学複合施設。4月28日にグランドオープンする。内覧会には約2,000名が参加し、完成を祝った。
施設は、JR亀戸駅から徒歩2分、江東区亀戸六丁目の商業地域に位置する敷地面積 22,989.26㎡(プラウドタワー亀戸クロス敷地含む)、地下1階地上6階建て延床面積約58,000㎡。店舗数は136店舗。基本設計・監修は東急設計コンサルタント。設計監理・施工は前田建設工業。デザイン監修などはピクト・グラフィックデザイン:OKデザイン室、カメクロ横丁のデザイン監修は窪田建築都市研究所。竣工は2022年3月末。開業日は4月28日。年間1,200万人の来街者を見込む。
「プラウドタワー亀戸クロス」は25階建て全934戸。専有面積は28.48~135.49 ㎡。竣工は2022年1月。売主は野村不動産、三菱地所レジデンス。施工は前田建設工業。総合設計制度を活用して容積率は352%から505%の緩和を受け、緑化率は当初計画の35%から40&%に拡大した。これまで770戸を販売済み、坪単価は370万円。
施設1階は、施設の顔となる「カメクロプラザ」のほか、総合設計制度を活用して整備した広さ約3,400㎡の「カメクロステージ」、7店舗からなる飲食街「カメクロ横丁」、CCCと基本合意書を締結して設置するワークスペースの第一号店舗「SHARE LOUNGI亀戸with H¹T」などで構成。
地階は、「地域№1〝食〟市場」をテーマにした大型店舗「ライフ」のほか、関東初出店となる京都発の老舗ベーカリー「グランディール」、商業施設初出店「本庄鮮魚」などが入店。
2~3階は、「ユニクロ」、「コジマ×ビッグカメラ」など総合アパレル・生活用品店などで構成。
4階は、フードコートや「TSUTAYA BOOKSTORE」のほか、地域の活性化の取り組みを行うコーナーとして「アソビバ」「タマリバ」などを設置。地域情報を発信するYouTubeチャンネル「カメテレ」も稼働する。
記者発表会で、同社代表取締役社長・松尾大作氏は、「2年前に住宅事業本部として記者発表会に臨んだ。その後、コロナの発生で、市場は大きく変化したが、スケジュール通り施設、マンションが完成した。感慨深いものがある。地元の方、テナントの方、工事関係者の皆さんに感謝申し上げる」と述べ、「施設名の『CLOCK』にはかつて第二精工舎人であった地域のDNAを活かす意味を込めた。今後も常に人に寄り添う、野村不動産らしい街づくりに真摯に向き合って取り組んでいく」と語った。
来賓として発表会に出席した江東区商店街連合会副会長で亀戸十三間通商店街振興組合理事長・吉村政明氏は、「素敵なお客さんが集まりそうな施設が完成した。世間では中小VS大手としてとらえられているが、中小のノウハウと野村不動産さんの街づくりのノウハウをミックスして街を盛り上げていきたい。協力関係を築いていく」と話した。
「プラウドタワー亀戸クロス」(敷地西側から写す)
「カメクロステージ」
カメクロ横丁
松尾氏
フォトセッション
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この日の内覧会は二部制で、一部の商業施設は午後1時から、二部のマンション見学は2時から。そして、松尾社長らの記者発表会は4時から。質疑応答が終わったのは終了予定の5時を大幅に上回る5時25分だった。都合4時間25分。コロナが発生してから2年余、記者はこれほど長時間にわたるリアルの内覧会・記者発表会は初めてだった。記者会見だけでも先日の三井不動産のロジスティクスに関する記者発表会で三木孝行専務が話した1時間20分を突破した。
長いか短いか、内覧会と見学会はどちらを先にすればいいかよく分からないが、先に内覧会で実物を見て確認できるので、発表会を後にしたのは正解だったと思う。時間もこれくらいあれば、じっくり確認できる。松尾社長は開発当初からこのプロジェクトに関わっており、完成した施設・マンションをしっかり見てほしいという思いの表れだと解釈した。
さて、見学会の率直な感想について。ますマンション。販売開始前に行われた記者発表会も取材して記事にしている。そちらも参照していただきたい。そのとき全館空調の「床快Full」をワンルームタイプの162戸を除き装備し、Low-E樹脂サッシを採用していたのに驚愕した。最高レベルのマンションだと思った。その後、ZEH認定を受けたと同社は発表した。
問題は価格だった。発表当時の総武線沿線のマンション相場は、錦糸町がやや抜けており坪330~340万円くらいではなかったか。その他の亀戸、小岩、新小岩などは300万円強だったような気がする。記者は基本性能の高さなどを総合的に判断し、「『所沢』(坪350万円)は超えると思いますが、『北千住』(坪380万円)には負けるのではないか」と、当時、取締役兼専務執行役員をされていた松尾氏に直球勝負を挑んだ。松尾氏の回答が面白かった。スタッフを呼んで「コンパクトの162戸は『北千住』を超える」と話した。その通りとなったようだ。
残り約160戸は多いのか少ないのか、販売スケジュール通りかそうでないのかは判然としないが、これから分譲するのは価格の低い(コンパクトの単価は400万円でも安いと記者は思う)住戸のようだ。
これが他の物件にどのような影響を及ぼすか、これまたよく分からないが、沿線のポテンシャルを劇的に向上させた貢献度はものすごく高いと思う。記者などは「亀戸」といえば、戦前の亀戸事件と東京大空襲で焼け野原に変わったことくらいしか思い描くことができない。そんな街が、わが京王線の調布の相場を超える…悔しいが〝プラウド〟の力を認めざるを得ない。
同社は今後、浦和駅前の再開発マンションにも「床快Full」を採用するようだ。「亀戸」の竣工によってその快適性・省エネ性が居住者からもたらされる。大きな武器になる。
商業施設とデッキで結ばれているゲートタワー4階部分に設置された地域住民に開かれた「Be ACTO」がまたいい。ラウンジ、ワーク&スタディスペース、アトリエ、キッズルーム、ダイニング&キッチンスペースは合計で約180㎡(70㎡マンションの約2.6倍)。同社が2018年10月に発表した「新・街づくり構想」に沿った施設で、一般社団法人・ACTO亀戸を立ち上げ、住民の子育て、働く、学び、・学校・企業連携、食などをテーマに、共創する街づくりを推進していく。
施設には「床快Full」が採用されていないのは残念だったが、床や壁、テーブル・椅子などに木を採用し、身障者などの絵画・アートをレンタルで展示し、入れ替えるという取り組みもいい。
「床快full」のエアコン(左)と床吹出口・樹脂サッシ
「Be ACTO」
「Be ACTO」に飾られているカミジョウ・ミカ氏の絵画
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商業施設は、全フロアを担当者から説明を受けたが、一つひとつ紹介しきれない。その一部を紹介する。
記者のお気に入りは、商業施設1階のエントランス部分に開業する「CRAFT BEER BEER-MA」だ。600種類を超える世界のクラフトビールを提供するという。取材の合間に大好きな「東京ホワイト」「東京ブロンド」と乳酸菌入りの「KAME CLO」を飲んだ。店長の石田哲也氏に「毎日1本ずつ飲んだら全部飲むまでどれくらい」と聞いたら、「入れ替えも行うので、最低2年はかかる」そうだ。
千葉県産の地魚や海鮮を安心価格で提供するという、千葉の水産会社が経営する回転寿司屋「やまと寿司」を試食させてもらった。このまえ多摩センターで食べたテレビCMによく登場する回転寿司とは天と地ほどの差があった。
発酵調味料の量り売りや味噌汁・酒、ぬか漬け(床)などのサブスク、各種ワークショップを用意している「85[ハチゴウ]」はナチュラル派にはまるかもしれない。
最近は買い物をしないので高いのか安いのかよく分からないが、「本庄鮮魚」で売られていた韓国産アワビが1ケ380円なのには驚いた。日本の海で大きくなるまで育てたら日本産にならないのか。10倍の値が付く。イワシが1尾80円とは…どうしてこんなにおいしい魚を安売りできるのか。割り負けしている京王線のマンションの比ではない。
「船橋屋」といえば天ぷら屋だと思ったが、地元老舗のくず餅屋さんだった。土産に買った。
クラフトビール 東京ホワイト
「やまと寿司」
470円の日替わり鮮魚(左)と640円の極ウマ(「やまと寿司」)
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以下はおまけ。
全ての取材を終え、定番の「蛍の光」に追い立てられたのは7時半ころか。家に帰っても飲むだけなので、スタッフの方に「外で飲めるとこあります」と尋ねた。その方に「亀戸といえばギョーザかホルモンを食べないと…」と取材したことにならないと言われたような気がしたので飲むことに決めた。コロナ後に一人で外食するのは数えるほどしかない。
どこに行っても取材時は表通りを通るので、亀戸駅前に路地裏飲食街があることなど全く知らなかった。右を見て左を見て確認しながら歩いたら、だしぬけに「司ちゃん」と呼びかけられた-のではなく「当店一番人気 司ラーメン 850円」の看板が目を射た。上を眺めたら「つかさ司」とあるではないか。間口は1間あるかどうか。
足が止まった。ギョーザかホルモンか、それとも司ちゃんか、四択の宅建士よりは優しいが、どれを選択すればいいのか迷いに迷った末、意を決して店に入った。他を選んだら自らを捨てたことに死ぬまで後悔すると決断したからだ。
客席はウナギの寝床。1列に7席あるのみ。スタッフは店長らしき男性一人。一番奥に若い男性の方がズルズルと音を立てて食べていた。小生は自販機で「司ラーメン」を注文した。ぶっきら棒に「さっぱり? こってり? 」と聞かれたので「さっぱり」と答え、「麺は? 」には「少な目で結構です」と返した。
すると、どうた。厚さにして約2ミリ、2枚合わせれば文庫本くらいはありそうなチャーシューに角煮、味玉1個が入っているではないか。恐る恐る口に運んだ。さっぱりどころか、濃厚な豚骨スープに胃がひっくり返った。しかし、若いころの習性から抜け出せない、パブロフの犬と化した糖尿の小生はラーメンだけは汁まで食べつくさないと満足できなくなっている。
30分かけてやっと完食した。かみさんには「取材が長引いたので食事は済ませた」と携帯で知らせた。家に帰ってもお腹はパンパンで、酒は受け付けられなかった。夜中の3時くらいまで輾転反側した。
ラーメン店
凄い!全館空調、二重&樹脂サッシ採用 野村不「亀戸」934戸 単価300万円台半ば(2020/2/19)