野村不 シェアハウス&コワーキング事業「TOMORE」人形町にコンセプトスペース
「TOMORE zero」
野村不動産は10月21日、シェアハウス&コワーキングスペース事業を始動し、事業化に先駆けた実証プロジェクト「TOMORE(トモア)共創ライフ開発プロジェクト」のコンセプトコワーキングスペース「TOMORE zero」を東京・日本橋人形町に11月オープンすると発表した。
「TOMORE(トモア)」は、「TOMO(友と、共に)×MORE(もっと先へ) 」を掛け合わせて生まれた言葉で、「More Company(仲間),More Collaboration(共同),More Creation(創造)」をオンライン・オフラインの双方で体現することを目指し、今後プロジェクトを段階的に進めていく。
「TOMORE zero」には、「ソーシャル・ワークスペース」と「ソーシャル・リビング・ダイニング」の2つのゾーンそれぞれに4つのエリア、計8つのエリアを設置。ソーシャル・リビング・ダイニングゾーンには靴を脱いでソファに腰掛けながら過ごすことができ、またアートが設置されたダイニングテーブルで食事を取りながらメンバー同士で交流することができる。
施設は、都営新宿線浜町駅から徒歩3分、日比谷線人形町駅から徒歩6分。面積は151㎡(46.01 坪)。営業時間は10時~19時(2021年10月21日現在)。定休日は土・日・祝日・年末年始(同)。会費は当初トライアル期間中につき無料(同)。https://www.nreg-tomore.jp/map/。
天晴れ!ポラス!14件受賞 「2021年度 グッドデザイン賞」
既分譲のポラス「浦和美園E-フォレスト コネクテッドサイト」
ハウスメーカー・デベロッパー各社から「2021年度 グッドデザイン賞」受賞の知らせがメールに届いた。17:00現在の各社の受賞作は次の通り。★印は記者が見学した物件。順不同
三菱地所(8件)
・「WORK×ation Site 軽井沢」
・「型枠木材のトレーサビリティ認証スキーム」
・「ザ・パークレックス 大濠公園」
・「瀬田の杜 Garden & Terrace」
・「天然木ノンビス工法外装材」
・「大手町ビル・リノベーション」
・「LIXIL WING ビル HOSHI」
・「明産霞が関ビル」
住友不動産(5件)
・「新宿住友ビル」★
・「プレミアム・J 京都五条」
・「New J・アーバンコート二俣川」
・「シティハウス品川サウス」
・「シティハウス四谷坂町」
ケイアイスター不動産(1件)
・「縁廊の間 “縁廊と離れ”が暮らしに交感を創出 都市型分譲住宅の新たなスタイル」★
三井不動産(5件)
・「HOTEL THE MITSUI KYOTO」
・「パークホームズ中目黒」
・「パークホームズ中野本町 ザ レジデンス」
・「DX ロッカーシステム」
野村不動産(6件)
・「ラウド神田駿河台」(グッドデザイン・ベスト100選出)★
・「プラウド杉並方南町」
・「プラウドフラット中野」
・「H¹O日本橋小舟町」
・「Hi-NODE TOKYO HiNODE PiER」
大和地所レジデンス(1件)
フージャースコーポレーション(1件)
コスモスイニシア(4件)
・「イニシア三鷹」
・「イニシアテラス小竹向原」
・「ETOWA KASAMA」
・「KARUIZAWA FOREST VILLA PROJECT」
積水ハウス(2件)
・「KOKAGE LOUNGE(コカゲ ラウンジ)」
・「グランドメゾン上町台レジデンスタワー」
ポラス(14件)
・「スマートシティさいたまモデル」
・「KIRINOKA」
・「結の街(ムスビノマチ)」
・「サイクルスペースを軸に考えた空間提案」
・「咲が丘 3 丁目緑地」
・「空居間(そらいま)の街」
・「唯・巧・居(イ・コ・イ)の家」
・「ボーダレスな家」
・「暮らしを整える家」
・「家の中のノマドワーカー」
・「大谷口の家」
・「断熱材の産廃排出抑制とリサイクル化への取り組み」
・「アンビエントフロアーCV」
大和ハウス工業グループ(6件)
・「イニシア三鷹」(コスモスイニシア)
・「イニシアテラス小竹向原」(コスモスイニシア)
・「KARUIZAWA FOREST VILLA PROJECT (コスモスイニシア)
・「ETOWA KASAMA」(コスモスイニシア)
・「株式会社リクルート KUDANZAKA SUSTAINABLE PROJECT (九段坂サステナブルプロジェクト)」(コスモスモア)
◇ ◆ ◇
受賞した各社もそうだが、天晴れ!ポラス!といいたい。何と14件も受賞したではないか。昨年は9件だったそうだ。
残念なのは、記者の取材フィールドである分譲住宅で言えば、昨年も今年もコロナ禍でメディア向け見学会などを行えなかったこともあるだろうが、今回発表されるまで存在すら知らなかった物件ばかりであることだ。以前は7~8割方は取材した物件だった。今回は数えるほどしかなく、全体でも9件しかない。
各社にお願いだ。自信作であるのなら希望者はみんな取材・評価できるようにしていただきたい。審査委員だってほとんど書類審査で決めているはずだ。もの(商品)を見せないで、また見ないでその良し悪しをどうして判断できるのかという疑問もわく。消費者参加型の他薦もあっていいのではないか。
世界最高峰の「デジタル×建築」研究施設 運用を開始 積水ハウス×東大工学部
「T-BOX」オンライン発表会
積水ハウスと東京大学大学院工学系研究科は10月14日、「未来の住まいのあり方」をテーマとした研究および次世代の建築人材育成を目指す「国際建築教育拠点(SEKISUIHOUSE–KUMA LAB)」の研究施設「T-BOX」を東京大学工学部1号館に新設し、同日から順次運用を開始すると発表した。隈研吾・特別教授を中心に世界最高峰の「デジタル×建築」により、次世代の人材育成および住宅イノベーションの実現を目指す。
「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」は、国際アドバイザーにバリー・バーグドール(コロンビア大学美術史学専攻マイヤー・シャピロ講座教授、ニューヨーク近代美術館(MoMA)建築デザイン部門元主任学芸員)、サラ・M・ホワイティング(ハーバード大学デザイン大学院(GSD)学部長および建築学専攻ホセ・ルイ・セルト講座教授)、佐々木経世氏(イーソリューションズ代表取締役社長)を迎え、国際デザインスタジオ、デジタルファブリケーションセンター、デジタルアーカイブセンターの3つの活動を展開する。
「T-BOX」は「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」が東京大学内で運営するスペースの呼称で、延床面積約180㎡。デザイン監修はSEKISUI HOUSE - KUMA LAB(担当:隈研吾氏、平野利樹氏、齋藤遼氏)。工作機械や複写機器の設備を備えている。
仲井氏
新設を記念するオンライン記者発表会・報道公開イベントで、積水ハウス代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は「SEKISUI HOUSE–KUMA LAB」について、「デジタルテクノロジーを駆使し、国際的な思考と歴史の再認識を重視した活動を展開することにより、未来の住まいのあり方を研究する施設。最先端のデジタル技術の活用や、国際人材の育成を進める東京大学と、人生100年時代における住まいと暮らしについて挑戦する積水ハウス、この両者の産学連携により、新たなイノベーションが生まれることを期待しています」とあいさつした。
隈氏
東京大学特別教授でSEKISUI HOUSEーKUMA LABアドバイザーを務める 隈研吾氏は「『T-BOX』が完成したことは、歴史的にも特別な意味があると感じています。そして今、新型コロナウイルスによって、住まい、建築、都市の在り方が大きく変わろうとしています。業界が抱える大きな課題は、リアルとデジタルをどのようにつなぐかということです。建築学科ではこれまで、リアルなものや空間づくりを行ってきましたが、それらと新たなデジタルテクノロジーをどのようにつなぐかということを考えなくてはいけません。本取り組みの目的は、リアルとデジタルをつなぎ直すことです。そして、それを実行できる人材を教育・育成することです。『T-BOX』はリアルとデジタルだけでなく、その他にも様々なものをつなぎ直すと思います」と語った。
「T-BOX」
3D プリンタで作成した建築模型(左)と3D スキャナで建築模型をデジタルアーカイブする様子
◇ ◆ ◇
「歴史的な特別の意味を持つ」(隈氏)オンライン発表会は、他の取材と重なったので視聴できなかった。その模様は広報事務局からイベントリポート、資料素材、会見見逃し視聴URLが送られているのだが、もう面倒くさくなり、聴いても訳が分からないだろうとそのままにし、リリースを前段の通りコピペした。どんな凄いことが始まるのか。
それにしても、大和ハウス工業が2014年、同大学内に隈氏がデザインした「ダイワユビキタス学術研究館」を完成させたし、三井不動産も昨年に「三井不動産東大ラボ」を発足させ、三菱地所は今年4月に東大IPCオープンイノベーション推進1号ファンドへLP出資したように、わが国を代表するハウスメーカー、デベロッパーは東大との連携を強化しているのに注目したい。どこがヘゲモニーを握るのか。
そういえば、三井不動産には野球メンバーが組めるくらいの東大野球部OBがいる(本業では活躍されているようだが、RBA野球では期待ほど実績を残していない)。
表も裏も美しい 東大「ダイワユビキタス学術研究館」完成(2014/5/14)
スギ・ヒノキ価格上昇 木材自給率48年ぶり40%台回復 農水省「モクレポ」創刊
農林水産省は10月15日、木材需給・木材価格・木材産業の動向などに関するデータを集約・整理した「モクレポ~林産物に関するマンスリーレポート~」を創刊した。林業・木材産業関係者などの事業活動に役立つ情報を提供するのが目的で、今後、毎月中旬に発行していく。
創刊号の特集では、概要として①令和2年の総需要(供給)量は7,443.9万㎥で、前年に比べ746.6万㎥減少し、2年連続の減少②国内生産量(国産材)は3,114.9万㎥で、前年に比べ16.1万㎥増加し、平成22年から11年連続で増加。③輸入量は4,329万㎥で、前年に比べ762.7万㎥減少④木材自給率は、前年から4.0ポイント上昇の41.8%となり、平成23年から10年連続の上昇で、木材自給率は48年 ぶりに40%台に回復したとしている。
基礎的指標としては、2021年1~8月の新設住宅着工戸数は56.3万戸(前年比4.7%増)、うち木造住宅は32.5万戸(同6.8%増)となっていると報告。
米国の住宅着工戸数(戸建て計)は、コロナ禍による在宅需要の増加と住宅ローンの低金利により、昨年5月から急増。本年3月に173万戸(年率換算)を記録。本年8月は、前月比+5%増の162万戸となったと報告。
また、2020年末から米国での輸入急増とコロナ禍に伴う港湾処理能力の低下等により、北米にコンテナが滞留して、アジアでコンテナが不足。海上輸送運賃が急激に値上がり、7月は欧州発が横ばいとなる一方、米国発は依然として上昇しているとしている。
木材価格情報では、 直近のスギ原木価格は前年同期比11%から57%増、ヒノキは前年同期比42%から143%増としている。
ボイド・階段室3か所新設 青木茂リファイニング 「早稲田」事務所を賃貸住宅に
「(仮称)早稲田ビルリファイニング工事」(シートが掛かっているのが物件)
青木茂建築工房は10月15日、設計・監理を担当した「(仮称)早稲田ビルリファイニング工事」解体見学会を5部に分けて開催。各部ごと40~50人が参加するなど人気になった。
物件は、東西線早稲田駅から徒歩5分、新宿区早稲田鶴巻町の早大通りに面した昭和48年に建設された敷地面積239㎡、SRC造一部RC造の8階建て延べ床面積1,216㎡の共同住宅、駐車場、事務所、店舗の複合建築物。リファイニング後は共同住宅、店舗となる。設計は青木茂建築工房(建築)、DN-Archi(構造)、ルナ・デザイン・ラボ(電気設備)、ナグモ設備設計事務所(機械設備)。施工は小原建設。竣工は2022年2月。
既存建築物は、構造耐力、容積率、高度地区が既存不適格で、既存不適格を維持するため増築を伴わない大規模模様替え・用途変更し、建築確認を行い、再度検査済証を取得するもの。
最大の特徴は、法規・環境・構造・意匠を一体とした合理的計画になっていること。2~8階を共同住宅とするため東京都建築安全条例の規定に基づき避難のための2m四方の吹抜け(ボイド)を建物東側に新設し、さらに2以上の直通階段規定に適法させるために建物西側に2つの階段を新設している。
環境面では、ボイド・階段室からの通風・採光を住戸内・共用部に取り込むことで居住性を高め、外壁にガルバリウム鋼板を採用し、凹凸を設けることで室内の換気量向上に寄与する意匠デザインとしている。
このほか、耐震補強では、袖壁補強、外壁の開口閉鎖を行う一方で、不要なコンクリート壁を撤去するなど建物の軽量化を図り、既存建物重量と比べ約23%の重量が軽減されている。既存建物は台形状で、重心・剛性を担保するため剛心を重心に近づけるための袖壁補強を行っているのがポイント。
耐用年数は、銀行融資を受けるため圧縮強度試験、中性化試験、含水率試験などを行い、躯体の耐用年数は100年超と評価された。
CO2排出量は、既存躯体を再利用し今後50年の使用を想定しているため、同規模の新築と比較して概算で65~70%のCO2排出量の削減を実現している。
見学会で青木氏は、「審査機関の担当者は初めて経験することだから無理もないが、やり取りに3か月もかかった」などと課題について話した。
見学会に参加していた元国交相で環境未来フォーラム代表理事・前田武志氏は「壊して建て替えるのではなく、従前のイメージを残しシンボリックな建物に再生したデザインが素晴らしい」と絶賛した。
見学会
建物東側のボイド
建物西側の階段室
青木氏(左)と前田氏
◇ ◆ ◇
現地は、片側二車線の道路の中央分離帯に樹齢数十年と思われる立派なケヤキが植えられており、シンボリックな街並みを形成している。分譲マンションなら坪単価は500万円はしないはずだが、400万円をはるかに突破するのは間違いない。
前段で書いた通り、今回のリファイニングの最大の特徴は、賃貸マンションとして法規に適合させ、なおかつ商品性を高めるためボイドと階段室を2か所新設していることだ。これは同工房でも初めての試みのようだ。
住戸プランは内廊下方式の1フロア3戸構成で、全住戸が1LDK~2LDKの角住戸となっている。居住性が飛躍的に高まっているのが分かる。
現場で配布された資料は図が小さいのでよく分からないのだが、開口部はリビング、居室だけでなく、浴室や洗面所、キッチンなどにもあるように思う。
「妙典行き」の社内表示(左)と横になった「♂」(先生、やはりこれは「オス」ではないか)
現場には少なくとも5分前に着くように出掛けた。東京メトロ九段下駅で東西線に乗り換えた。3つ先が目的地の早稲田駅だ。ところが車内の案内表示には「妙典行き」とあるではないか。コロナの影響で表示が狂ったのだとすぐ判断し、東京メトロに苦情の一つも言ってやろうと、その証拠のためにカメラに収めた。
ン? 狂っているのは表示だけでなかった。次の停車駅は「飯田橋」のはずが「次は竹橋」と社内アナウンスが告げたではないか。乗客が騒ぎ立てないのも不思議に思ったが、〝まあ、みんなスマホに夢中になり、眠り呆けているのでこんなこともあるか〟と乗り過ごした。
ところが、どうだ。次の駅は「神楽坂」ではなく、以前の職場があった「大手町」ではないか。慌てて飛び降りた。狂っているのは電車ではなく、記者だとこのとき初めて気がついた。
このために、取材現場には10分近く遅刻した。どなたかが何やら話していたが、マスク越しなので声がくぐもってよく聞こえなかった。
仕方なくあちこちの裸のコンクリを眺めたら、だしぬけに横になった「男」のマーク「♂」が目の前に飛び込んできた。ならば、きっとやはり横になった「♀」がいるはずだと目を凝らしたが全然いなかった。
これはおかしい。「オスのマークがあるのにメスのマークはないのはなぜか」と青木氏に聞いた。青木氏は馬鹿にしたように「これは単なる矢印」と答えた。
この時点でやっと、電車が逆走したのではなく記者が逆走し、矢印を「♂」だと早合点したのは、昨夜、1年半ぶりにデベロッパー社長と飲んだ「酒」のせいにした。あるいは呆けが始まったか。高齢者の皆さん、運転免許は返納した方がいい。夏子さんはいなかった。
世界へ 建築業界に新風 青木茂リファイニング×服部夏子アート 「信濃町」見学会(2021/10/8)
デザイン一新 藤沢翔陵高/不可解 防衛省補助金 青木茂建築工房リファイニングPJ(2021/4/3)
I'm fine 桜もハナニラも満開 青木茂建築工房「目黒」リファイニング完成(2021/3/22)
築84年 都内に現存する唯一の木造見番建築物見学会 青木茂建築工房が設計監理(2020/12/15)
築51年の礼拝堂⇒診療所 青木茂氏「リファイニング」解体見学会に満席120人超(2020/10/26)
安藤忠雄氏を超えた? 青木茂氏×三井不 「氷川台」リファイニング見学会に200人超(2020/9/16)
美しい公衆トイレ 発信できた 安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団プロジェクト(2020/9/15)
大和ハウス工業「平和台」 同社初の「ZEH-M Ready」 申し込み殺到 早期完売へ(2020/9/15)
三井不動産×青木茂建築工房 リファイニング「初台」で見学会 過去記事も紹介(2019//12/8)
駅4分の1低層 息をのむほど美しいサペリの建具 三菱地所レジ「代々木上原」(2018/12/14)
省エネ対策に感服 三井不動産+青木茂建築工房 「林マンション」リファイニング完成(2018/3/30)
青木茂建築工房×ミサワホーム 「千代田富士見」のリファイニング見学会に450名(2018/3/1)
リファイニング建築の考案者 首都大学東京特任教授・青木茂氏が退官へ 記念講演会(2018/2/13)
ミサワホーム&青木茂建築工房 千代田区富士見のリファイニング建築見学会に250名(2017/11/9)
三井不&青木茂建築工房 築52年の市場性ない共同住宅をリファイニングで再生(2017/10/16)
三井不動産&青木茂建築工房 練馬区のリファイニング見学会に200名(2017/3/27)
築44年の寄宿舎をリファイニング手法で賃貸に一新 見学者100名超 青木茂建築工房(2016/12/21)
建築の魔術師・青木リファイニングの真髄を見た 「竹本邸」完成見学会(2015/11/17)
「リファイニング」に熱い視線60坪の建物見学に250人殺到 青木茂建築工房(2015/3/11)
リファイニング建築のすごさを見た 「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」完成(2014/3/24)
全てが腑に落ちる 首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(20143/19)
再生建築学の設置を 青木茂氏が三井不動産のセミナーで語る(2013/12/10)
千駄ヶ谷のリファイニング建築に見学者300人(2013/11/12)
億万長者100人減少 人口も25年ぶり減 日本一裕福な港区財政 コロナが直撃
新型コロナが直撃、億万長者が100人減少-東京都港区の令和3年度の課税標準額が1億円を超える高額納税者は1,009人と前年度の1,108人より99人、8.9%減少した。納税者も納税額も減少し、人口も実に25年ぶりに減少に転じるなど、新型コロナが日本一裕福な港区の財政を直撃した。
別表は、港区の納税者数の推移をみたものだ。これによると、令和3年度の所得割額納税者は143,852人と前年度比で2.5%減少し、所得割額は令和2年度の約755億円から約743億円へ1.6%減少した。均等割のみ納める納税者は5,292人(同2.8%減)となった。所得割とは、所得から様々な控除額を除いた課税標準額に税率10%(特別区民税6%、都民税4%)を掛けた地方税だ。
所得割額納税者を課税標準額段階別にみると、700万円超~1,000万円未満が令和2年度の11,075人から11,407人へ332人、3.0%増加しているほかは、すべての層で減少。減少率がもっとも大きいのは1,108人から1,009人へ8.9%減少した1億円を超える層で、10万円以下の層の7.6%減、400万円を超える層の5.8減などとなっている。
課税標準額が1,000万円を超える層は、令和2年度の24,413人から13,620人へ3.2%減少。この層の所得割額も令和2年度の約516億円(全体に占める割合68.4%)から約501億円(同67.5%)へ2.9%減少した。
外国人の納税義務者は、令和2年度の10,530人から9,205人へ12.6%減少し、所得割額も令和2年度の約92億円(構成比12.2%)から約88億円(同11.9%)へ4.6%減少した。
また、同区の人口は令和3年1月1日現在、約25.9万人で前年の約26.0万人より約1,000人、0.5%減少した。人口減少は実に25年ぶりで、納税者の減少とともに新型コロナの影響と思われる。
外国人居住者もコロナ前のもっとも多かった令和年11月の20,613人から令和3年9月には17,394 人へ約3,200人、15.6%減少している。
港区・武井雅昭区長は、令和3年2月17日の令和3年第1回港区議会定例会本会議で「令和3年度は、特別区民税収入が、前年度と比較して74億円、率としては9.7%減収すると見込んでいます。厳しい財政状況ではありますが、これまで計画的に積み立ててきた基金を効果的に活用し、区民サービスの質を維持するとともに、感染症対策として区民生活の支援や地域経済の回復を最優先とし、併せて、新たな時代に対応した区民サービスへの転換などを積極的に進めてまいります」と所信を語っている。
◇ ◆ ◇
課税標準額1億円超の高額納税者(億万長者)が100人も減少したのは、所得や役員報酬、株の売却・配当などが減少したというより、やはりコロナの影響で飲食を中心に所得が減少した事業主が多かったと見るのが妥当だろう。区の担当者も「コロナの影響」と語った。
それにしても凄い数字だ。比較するデータはないのだが、国税庁の2017年度のデータでは、総所得が1億円以上の納税者は全国で23,250人となっており、都道府県別では東京都の8,891人がトップで、27位の石川県は111人だ。つまり、石川県以下の20県それぞれの億万長者が1年間で消えることに匹敵する。
港区は、それでも億万長者の減少率は8.9%にとどまっているのはさすがというべきか。それとも狡猾で冷酷無比ではあるが、老弱男女、富者も貧者も賢者も愚者も北も南も右も左も一切区別しない新型コロナの公平性が証明されたと解すべきか。
興味深いのはほかにもある。コロナ禍でも納税義務者1人当たりの所得割額は令和2年度の51.2万円 51.6万円へ増加していることだ。増加に貢献しているのは外国人だ。外国人の1人当たり所得割額は令和2年の87.8万円から95.6万円へ増加している。区平均より44.0万円も多い。
もう一つは、課税標準額が700万円1,000万円未満の層が332人増えていることだ。いわゆるアッパーミドルと呼べる層で、これは所得が増加したというよりは、他のエリアからの転入者が多かったと解すのが正解ではないか。
特別区民税が74億円減るというのは、地方町村の年間予算規模だ。それでもびくともしないのだろう。お金持ちが住みたくなるのも分かる。
港区 課税標準額1億円以上は1,113人 都民のお金持ち8人に1人が港区民?(2019/10/19)
リスト 中国大手ECサイト「JD.com」と業務提携 わが国の不動産情報を独占的に提供
リストは10月11日、グループ会社のリストインターナショナルリアルティ(LIR)が中国大手ECサイト「JD.com」のグローバル不動産プロジェクトの専属パートナーであるListingCo(本社:香港)と業務提携を締結し、10月11日から「JD.com」に日本国内不動産企業で唯一、物件情報を提供すると発表した。
ListingCo は、アリババグループが運営するEC サイト「天猫」に次ぐ中国国内EC市場シェア第2位の「JD.com」とグローバル不動産プロジェクトの専属パートナー契約を締結している中国最大級の電子商取引会社。
「JD.com」内でLIRが取り扱う日本国内の不動産情報を提供する。日本国内の不動産情報は今後LIRのみが掲載可能という。
サイト利用者は希望する物件を選択すると「JD.com」のコンシェルジュがリアルタイムで対応を行い、その後各国の担当エージェントに連携するため、購入時は言語の問題なく取引ができる。
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先ほど首都圏の中古マンションの〝バブル〟の記事を書いたばかりだ。黄砂がかかると街全体がどんよりと曇り埃っぽくなる北京とは比べものにならないほどわが国は美しくてきれいだ。ヴィンテージマンションは坪3,000万円まで買い進まれても記者は驚かない。
バブルだすさまじい中古マンションの値上がりレインズの9月のレポート(2021/10/12)
港区「景観街づくり賞」受賞 総合地所「ルネ麻布十番ビル」
「ルネ麻布十番ビル」
総合地所は10月11日、ホテルと店舗の複合商業施設「ルネ麻布十番ビル」が「2020年度グッドデザイン賞」受賞に続き、令和3年度港区景観表彰「景観街づくり賞」を受賞したと発表した。
「ルネ麻布十番ビル」は、東京メトロ南北線・都営地下鉄大江戸線麻布十番駅ら徒歩3分、港区麻布十番1丁目に位置する敷地面積740㎡、9階建て延床面積3,365㎡。2019年8月竣工。設計・施工は長谷工コーポレーション。基本設計・デザイン監修はA.A.E.一級建築士事務所。
同社は、麻布十番温泉跡地に建つホテル・店舗の複合商業施設。敷地が面する交差点部は、元麻布から鳥居坂を結ぶ道路と商店街が交わる地域一帯の重要な都市ノード(結節点)として地元の憩いの場所でもあった 地に、活力溢れる商店街の界隈性と地域のランドマーク性を兼ね備えた公共性の高い空間をデザインしました。地域特性を読み解きながら、敷地に接する交差点部を広場のようなオープン空間として創出したとしている。
港区「景観街づくり賞」は平成23年度に創設されたもので、審査委員は次のように評価している。
「暗闇坂に続く通りと麻布十番通りとの交差部に隣接させた低層部の扱い方が、この街への対応として秀逸である。この低層部をテナントスペースとして街に開き、屋上部はテラスラウンジとしてホテル2階のレストランと連絡させている。このテラスラウンジは、オアシスのようにこの街に新たな眺望点と居場所を創出した。テラスラウンジのスラブ線をホテル1階の軒線と意匠的に一貫させているのも小気味良い」
「港区に長く住んでいると、商店街から店舗が消え、賑わいが失われていく様子を幾度となく目の当たりにする。航空写真で見ると建てづまった印象もあるが、グランドレベルからはそれを全く感じさせない清々しさがある。敷地の可能性と建物のデザインが調和し、相乗効果により街の魅力を高めている」
◇ ◆ ◇
このホテルは記者も見学している。「素晴らしい」と書いた。「グッドデザイン賞」「景観街づくり賞」を受賞するのもよく分かる。
「心理的瑕疵」「嫌悪施設」とは何か 釈然としない国交省「死の告知ガイドライン」
国土交通省は10月8日、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を発表した。これまで人の死に関する案件の判断基準がなく、取引現場の判断が難しいことから、宅建業者が負うべき義務を示したもの。ガイドラインは次のように定めている。
①宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、過去に生じた人の死について、告知書等に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする
②取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい
③賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい
④人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある
◇ ◆ ◇
厚生労働省の直近のデータによると、不慮の事故死は38 069件、自殺者は21,081人、殺人は950件などとなっており、死に至らなくともこれらの「事故」件数は少なくとも数倍はあるはずだ。
これらのうち、不慮の事故死については、宅建業者が重要事項説明書で一つひとつ告知しなければならないのはさすがに酷だと判断したのだろう。除外したのは当然だ。
今回のガイドラインの根拠とされるのは次の民法の規定だ。
(買主の追完請求権)
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
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不動産業界用語でもある「心理的瑕疵」は、アットホームによると次のように定義されている。
「心理的瑕疵とされているのは、不動産物件の取引に当たって、借主・買主に心理的な抵抗が生じる恐れのあることがらをいう。自殺・他殺・事故死・孤独死などがあったこと、近くに墓地や嫌悪・迷惑施設が立地していること、近隣に指定暴力団構成員等が居住していることなどである。
物件の物理的、機能的な瑕疵ではないが、物件の評価に影響することがあるため、知っていながらその事実を説明しない場合には契約不適合責任を問われることがある。もっとも、何が心理的瑕疵に当たるかについての明確な基準はない」
また、不動産流通促進センターは嫌悪施設として、騒音や振動の発生源となる高速道路等の主要道路、飛行場、鉄道、地下軌道、航空基地、大型車両出入りの物流施設等、煤煙や臭気(悪臭)の発生源となる工場、下水道処理場、ごみ焼却場、養豚・養鶏場、火葬場等、危険を感じさせるものとしてガスタンク、ガソリンスタンド、高圧線鉄塔、危険物取扱工場、危険物貯蔵施設、暴力団組事務所等、心理的に忌避されるものとして墓地、刑務所、風俗店、葬儀場等を例示している。(「等」も曲者)
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これらについてコメントする立場にないが、ガイドラインにも「心理的瑕疵」「嫌悪施設」にも釈然としないものを感じる。
われわれ人間は一つ間違えれば、自死、孤独死、あるいは殺人も含め当事者になる可能性もある脆さ、危うさを抱えている動物だ。その意味では、猛禽類より危険な存在だ。
例示されている嫌悪施設は、われわれ危険な動物が生活するために必要なものだし、そこで働く人はいわゆるエッセンシャルワーカーだ。三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏は「われわれは街を造っている。もはや嫌悪施設ではない」と言い切ったのを思い出す。
「心理的に忌避されるものとして墓地、刑務所、風俗店、葬儀場等」と「等」があるように、コロナ禍では「夜の街」がやり玉に挙げられた。われわれは平気で差別的な決めつけを行う。
かといって、騒音・CO2を撒き散らす車の製造責任は問われないし(問われているか)、乗る人も嫌悪・忌避されるわけではない(これも最近問題になっているか)。実に勝手な解釈を行う。こういうのをご都合主義という。最近人気の都心マンションの多くは嫌悪施設と隣り合わせの商業系・工業系立地ではないか。
このように、よくよく考えてみると、われわれ人間そのものが嫌悪・忌避される存在であり、「瑕疵」「心理的」「嫌悪施設」の概念もあいまいであることに全て起因するのではないか。釈然としないのはそのためだ。
「瑕疵」はキズ、欠点、落ち度などと同義語で、法律の概念でもあるが、なにをもって瑕疵とするのかは難しい。住宅で言えば「経年美化」(積水ハウス)の言葉や「経年優化」(三井不動産)の造語もあるように、年と共に価値が向上するものがある半面、賃貸借契約で原状回復をめぐってトラブルが絶えないのは「経年劣化」の定め・考え方があいまいだからだ。
「心理的」という語彙もまた難しい。人の心理、あるいは精神は常に揺れ動き不動ではなく歴史や文化、時代と共に絶えず変化する。これと「瑕疵」を結びつけ、法律などで規制(民法には「隠れた瑕疵」はあっても「心理的瑕疵」の文言は一つもないが)するのは極めて危険なことだと思う。
例えば喫煙。チャーチル、マッカーサー、吉田茂、松本清張、石原裕次郎などみんなそうだ。かつて喫煙は〝かっこいい姿〟としてもてはやされた。記者の小さいころは、学校の先生はタバコを吸いながら教壇に立っていた。
いまはどうか。わが多摩市は「あなたをタバコの煙から守ります」などと横断幕を掲げる。吸う前からきちんと高い税金を払っているというのに、われわれ喫煙者はまるで犯罪者扱いだ。狭い喫煙室に押し込まれるたびにアウシュビッツの「ガス室」を連想するのは記者だけではないはずだ。
公園ですら「飲酒・喫煙禁止」「キャッチボールなど禁止」「大声禁止」「楽器演奏禁止」「火気厳禁」「早朝・夜間の静粛」…とあるように、嫌悪施設に転落しかねない要素をはらむ。保育園の設置に反対する住民行動も多い。
マンション管理規約にも最近はバルコニーでの喫煙を含む「火気厳禁」が盛り込まれており、「新聞配達の音がうるさい」「ハイヒールの音がうるさい」「窓を開けるとうるさい」などの苦情例もある。管理規約に「ペット禁止」が盛り込まれている、今では〝瑕疵〟とも取れる物件も少なくないはずだ。
生き死には人間の尊厳にかかわる問題だ。「心」の問題に国が土足で踏み込んでくる。それに迎合する不動産会社・団体もある。何だか窒息しそうな嫌な世の中になってきた。
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国土交通省は「心理的瑕疵」について、次のような判例を示している。
①「売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであつて、右目的物が家屋である場合、家屋として通常有すべき『住み心地の良さ』を欠くときもまた、家屋の有体的欠陥の一種としての瑕疵と解するに妨げない。」(大阪高判昭37.6.21)
②「売買の目的物に民法570条の瑕疵があるというのは、…目的物に物理的欠陥がある場合だけではなく、目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥がある場合も含まれる」(大阪高判平18.12.19)
③「建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景など客観的事情に属しない事由を持って瑕疵といいうるためには、単に買主において右事由の存する家屋の居住を好まぬというだけでは足らず、さらに進んで、それが、通常一般人において右事由があれば『住み心地の良さ』を欠くと感ずることに合理性があると判断される程度にいたつものであることを必要とする」(大阪高判昭37.6.21)
これも難しい。いったい「住み心地の良さ」とは何か。一応、国が定めた健康で文化的な住生活を営むための「都市型誘導居住面積」である3人家族で75㎡(未就学の子の世帯は65㎡)、4人家族で95㎡(同85㎡)はあるが、23区内で取得するのは絶望的になっている。それどころか、郊外部でも最近は66㎡(20坪)の3LDKが堂々とまかり通っているのが現状だ。
世界へ 建築業界に新風 青木茂リファイニング×服部夏子アート 「信濃町」見学会
「Forever」
一昨日(10月6日)のことだ。三井不動産と青木茂建築工房の「(仮称)シャトレ信濃町リファイニング工事」の解体見学会の取材を終え帰ろうとしたとき、解体途中の2階の壁面いっぱいに冒頭の映像が映し出された。
一瞬、草間彌生さんの水玉芸術かと思ったが、そうではないこともすぐわかった。油絵が趣味で、多少は美醜を分けることができると自負している記者はこのアートに魅了された。今まで観たこともないものだった。
アートは、主にアメリカで活躍されている世界に一人しかいない布再生アーティスト・服部夏子さん(34)の「Forever」と題した縦横約3.5mの作品だ。
布をお手玉のように丸め、それをキャンパスに縫い合わせて仕上げたもので、布は服部さんのおばあさんが着ていた和服や洋服を用いており、おばあさんが好んだ藤をイメージしたそうだ。作品にはおばあさんに対する服部さんの思いのたけが込められている。完成させるのに半年くらいかけたという。
会場でもらった資料には、服部さんは福岡県北九州市出身で、2006年の18歳のとき、第15回青木繁記念大賞公募展に最年少で入選。2010年、筑波大学芸術専門学群洋画専攻を卒業後渡米。これまでメトリポリタン美術館、ウォール・ストリート・ジャーナル本社ビル、ニューヨーク日本総領事館令和記帳会場などで展示・個展を開いたなどとあり、作品概要には次のようにある。
「『布』という素材は人にとって、最も身近な素材である。この素材によって伝わる人の暖かさや人間味、繊細な感情や自然な美しさなど、布の持つ無限の可能性を追求しながら、作品を制作している。
例えば、亡くなった人の洋服を見ただけで、沢山の思い出が蘇ってくるように、布は、多くの記憶と思い出を留めることが出来る。
制作過程は、まず、お手玉のような布のボールを作り、それぞれを縫い合わせることによって、完成する。どの作品も、布で『包む』という行程が重要である。『包む』という行為には、様々な苦痛や悲しみ、挫折や憎しみ、愛や希望、そして人の暖かさをも包み、肯定的なエネルギーに換えるパワーがあると感じている。そして、この『包む』という行為を、上述したように、私たちにとって一番身近な素材である布で行うことによって、作品は表現されている。
また、記憶を留める衣類も巡りゆく年月の中、やむをえず処分されることがある。しかし、その布を使って作り直し、作品として生まれ変わることで、新しい命が生まれる。
記憶、環境の視点から見てもその布を使いアートを作ることにより、新たな日々の中にその布と共に生きることが出来る。このように身近な布を使って、作品を作ることによって、アートを通じて想い出を共有し、身近に感じることは豊かな生活に繋がる。
上記からも取れるように私の作品は、環境に配慮されたリファイニング建築と通ずるものである」
皆さん、いかがか。これで服部さんと青木氏の接点が分かる。布再生アートもリファイニングも〝世界に一つ〟〝唯一無二〟だ。
これだけではない。「青木繁」は福岡県出身で、28歳にして早逝した明治時代の著名な画家だ。「青木茂」氏は大分県出身で、現場見学会などを開くと大賑わいになる〝売れっ子〟建築家だ。つまり服部さんは「青木繁」「青木茂」「九州出身」とも連なっている。
服部さんは記者の問いに「『青木繁』の賞は、歴代最年少入選だったこともあり、私にとって特別なスタートをきった存在です。10年以上経って、『青木茂』先生との出会いは、自分でも驚きでした。『九州&青木&再生&世界』は確かにその通りですね」と答えた。
建物は来年3月に完成し、「Forever」はエントランスロビーに飾られる。三井不動産が日本橋再生のコンセプトに掲げる「残しながら、蘇らせながら、創っていく」にもぴったりではないか。
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青木茂建築工房の作品は20件くらい見学しただろうか。素人の記者は何度見てもさっぱり分からないのだが、アルファベッドや記号や線でむき出しのコンクリ壁にマーキングしている図はアートに見えなくはない。
だがしかし、今回だけは服部さんの作品にはかなわない。真っ先に紹介したのはそのためだ。
青木氏は「どうして俺の作品が刺身のつまにされるのか」と怒り狂うタイプではないはずだし、むしろその逆で、してやったりとほくそ笑んでいるのではないか。仕掛け人は青木氏に違いない。
リファイニングと布再生アートの融合は、建設業界に新しい風を巻き起こすのではないか。
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以下が、解体見学会で紹介された概要だ。物件は、JR中央線信濃町駅から徒歩7分、新宿区信濃町3丁目の第一種中高層住宅専用地域に位置する敷地面積968㎡のSRC造10階建て・RC造2階建て延べ床面積2,605㎡。建設年は昭和46年。従前用途は賃貸住宅20戸と店舗。リファイニング後は賃貸住宅32戸と店舗1戸。設計は青木茂建築工房。施工は大末建設。竣工予定は2022年3月。サブリースは三井不動産レッツ資産活用部、三井不動産レジデンシャルリース。
施工にあたって、耐震性能を向上させるため構造耐力に影響のない壁を撤去し、建物全体の軽量化を図り、袖壁補強と炭素繊維補強で耐震補強を行っている。工事に際しては高いせん断耐力と剛性を発揮するアンカー「ディスクシアキー」を使用しているのも特徴の一つという。コンクリートの耐久性を確保するために1フロア約300か所、全体で約3,000か所の補強を行っている。
居住性能では、既存のコンクリートスラブ厚120ミリでは遮音性が不足するため、二重床のほか、新開発の施工がしやすいサイレントドロップを天井に使用することで、遮音等級LH60からLH55へワンランク上げる効果が実証されている。建物全体にサイレントドロップを採用するのはわが国初の事例という。
見学会でオーナーのケーズコート代表取締役社長・木村達央氏(72)は、「マンションは父が50年前に建てた。地震時に大丈夫かと調査してもらったら、あらゆるところに×(ぺけ)が付いた。このままでは貸せないと考え建て替えを検討したら5階建てにしかならず、大幅に採算が悪化することが分かった。困り果てていたところで青木先生のセミナーを聴いて、これはいいと工事を決断した。環境にもやさしくいいことづくし。成功事例として広がってほしい」と語った。
リファイニング建築は、耐震性能上問題のない壁や設備を撤去し、建物全体を軽量化し、独自の補強で現行の建基法基準などを満たし、建て替えと比べ約70%のコストで設備、内外装を一新し工期短縮を実現し、新築並みの価値を生み出すのが特徴。これまで100棟以上の調査、計画、設計を行っており、今回の物件は完成時で93棟目となる。三井不動産との連携は6棟目。
今回のプロジェクトでは、三井不動産と東京大学新領域創成科学研究科清家剛教授との共同研究により、建て替えと比べCO2排出量は全体で約72%削減できることが実証されている。
「ディスクシアキー」
サイレントドロップ
説明する青木氏
補修のためのマーキング
建設現場
デザイン一新 藤沢翔陵高/不可解 防衛省補助金 青木茂建築工房リファイニングPJ(2021/4/3)
I'm fine 桜もハナニラも満開 青木茂建築工房「目黒」リファイニング完成(2021/3/22)
築84年 都内に現存する唯一の木造見番建築物見学会 青木茂建築工房が設計監理(2020/12/15)
築51年の礼拝堂⇒診療所 青木茂氏「リファイニング」解体見学会に満席120人超(2020/10/26)
安藤忠雄氏を超えた? 青木茂氏×三井不 「氷川台」リファイニング見学会に200人超(2020/9/16)
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大和ハウス工業「平和台」 同社初の「ZEH-M Ready」 申し込み殺到 早期完売へ(2020/9/15)
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駅4分の1低層 息をのむほど美しいサペリの建具 三菱地所レジ「代々木上原」(2018/12/14)
省エネ対策に感服 三井不動産+青木茂建築工房 「林マンション」リファイニング完成(2018/3/30)
青木茂建築工房×ミサワホーム 「千代田富士見」のリファイニング見学会に450名(2018/3/1)
リファイニング建築の考案者 首都大学東京特任教授・青木茂氏が退官へ 記念講演会(2018/2/13)
ミサワホーム&青木茂建築工房 千代田区富士見のリファイニング建築見学会に250名(2017/11/9)
三井不&青木茂建築工房 築52年の市場性ない共同住宅をリファイニングで再生(2017/10/16)
三井不動産&青木茂建築工房 練馬区のリファイニング見学会に200名(2017/3/27)
築44年の寄宿舎をリファイニング手法で賃貸に一新 見学者100名超 青木茂建築工房(2016/12/21)
建築の魔術師・青木リファイニングの真髄を見た 「竹本邸」完成見学会(2015/11/17)
「リファイニング」に熱い視線60坪の建物見学に250人殺到 青木茂建築工房(2015/3/11)
リファイニング建築のすごさを見た 「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」完成(2014/3/24)
全てが腑に落ちる 首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(20143/19)
再生建築学の設置を 青木茂氏が三井不動産のセミナーで語る(2013/12/10)
千駄ヶ谷のリファイニング建築に見学者300人(2013/11/12)