「看取り」も行う新発想 ファーストコーポ・中央住宅・中央日土地 第一弾「南大沢」
左からファーストエボリューション社長・須藤憲綱氏、品川氏、小島氏、高橋氏、中村氏、初澤氏(青山グランドホテルで)
ファーストコーポレーションと中央住宅、中央日本土地建物は9月14日、これまでにないコンセプトの分譲マンションプロジェクト「ウェルビーイングシティ構想」の記者発表会を開催し、第一弾の「CANVAS南大沢」(181戸)のモデルルームを10月2日にオープンすると発表した。
「CANVAS」は、暮らす人の身体的・精神的・社会的な健康状態がバランスよく調和の取れた状態であることを意味する概念「ウェルビーイング」をコンセプトに、様々なサービスの提供を通じて〈〝自分に正直でいい、自分らしく〟をかなえる暮し>を目指す。
発表会の冒頭、登壇したファーストコーポレーション代表取締役社長・中村利秋氏は、「従来の分譲マンションは分譲すれば、その後は管理会社に管理を委託し、入居者と関わることはなかった。新規事業を立ち上げるべく検討を重ねてきた結果、生まれた今回のプロジェクトは、人々の暮らしを支える様々なサービスを提供することで持続可能な社会の構築の実現を目指すもの。3社が力を合わせて成功させたい」と語った。
続いて、中央住宅代表取締役社長・品川典久氏は、「2年前、中村社長からお話を伺い、地域の幸せ、豊かさを追求するという当社の理念に合致すると事業参画させていただくことを決定した。大きな第一歩としたい」と話した。
中央日本土地建物専務執行役員・初澤剛氏は、「今回の新ジャンルは持続的、多面的な未来のシニア住宅時代を切り開くものとして育てていきたい」と語った。
発表会ではこのあと、元フジテレビアナウンサーの小島奈津子氏と後輩の高橋真麻氏によるトークセッションが行われた。
「CANVAS南大沢」は、京王相模原線多摩境駅から徒歩16分、南大沢駅からバス7分徒歩3分、八王子市鑓水二丁目に位置する9階建て全181戸。専有面積は32.47~82.35㎡、価格は未定。竣工予定は2022年10月。設計・施工はファーストコーポレーション。販売代理は伊藤忠ハウジング。
ターゲットは50代から70代で、年齢制限を設けず、子ども世代、孫世代との同居も想定。一般にも開放するレストランを併設しシェフサービスを行うほか、杏林大学病院-新川すみれクリニックとの24時間相談、リモート会議室、節税・自叙伝相談、フィットネス、大浴場、リゾートホテル宿泊優遇、入居者専用畑など多彩なサービスを提供する。橋本駅と南大沢駅を行き来するシャトルバスを運行する予定。
「CANVAS南大沢」
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上段は、プレス・リリースをコピペし、3氏が話したことをそのまま紹介した。ここまで読まれた方は、どのようなマンションかさっぱり理解できないはずだ。発表会に参加された約20名の記者の方も同様のはずだ。記者は発表会が始まってから約30分間、各氏の話を必死でメモし、コンセプト動画も見た。意気込みはよく分かるのだが、肝心の中身がよくわからない。どのようなマンションを分譲するのかさっぱり理解できなかった。
似たようなサービスは、フージャースコーポレーションやコスモスイニシアが展開しているシニア向け所有権分譲マンションや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などにもあるが、シニア向け所有権付き分譲は年齢制限があり、どちらかといえば連れ合いをなくしたお年寄りが一人で入居するケースが圧倒的に多いはずで(コスモスイニシアは都市型なので夫婦入居比率は高いか)、老人ホームもサ高住も法律の規制が多く、そもそも老人ホームは利用権付きが圧倒的に多く、サ高住は賃貸だ。
これらに対し、新構想は住、食、働、遊、学、健、看の7つのテーマを掲げている。そんなサービスを付加したらとんでもない価格になるのではないかなどと考え、出口、結論がさっぱり見通せず、イライラのみが募った。
すると突如、鮮やかな「赤」(朱と呼ぶべきか)のドレスと、対照的な純白のドレスをそれぞれまとった女性二人が登壇したではないか。記者は近眼と老眼のため視力は0.2で、しかも遠目であったので容姿などは全然わからなかったのだが、美しさに見とれそれをよしとし、核心に迫る話題を提供してくれるのではないかと期待した。
しかし、お二人からはそんな話はほとんど出ず、明るく元気なフジテレビパワーなどの話に花が咲いた。
(お二人は元フジテレビのアナウンサーであることは事前に知らされてはいたが、昔はプロ野球ニュースや競馬中継はよく観たが、いまはお笑い番組など興味はないし、最近はほとんど観ないので、小島さんも高橋さんもどのような方か全く知らなかった。小島さんは50歳以上であることを、高橋さんはコロナ禍で出産したことを明かした)
小島さん(左)と高橋さん(共同PR提供=知らないのは記者だけ。かみさんは「昔のフジテレビのトップアナウンサー」と言ってました)
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ここまで訳が分からない記事を辛抱強く読んでいただいた読者のみなさんに感謝します。これからが本番だ。まとまりを欠く起承転結がでたらめな発表会に対し、記者は皮肉を込めて「若い赤と白の女性の方が登場されて、もうコンセプトなとどうでもいいと思いましたが、もう少し具体的なプランを説明していただきたい。坪単価は200万円を下回ると思いますがいかがか」と挑発的な質問をした。
あにはからんや、回答したのは正面に居並ぶお三方ではなく、袖に控えていた方が「価格は未定。申し上げられませんが、コンセプトは老人ホームに近い」と答えた。
…なるほど。記者はもう少しヒントを得ようとその方に駆け寄った。名刺には「ファーストコーポレーション開発事業本部 第一開発事業部長兼シニア専任部長 細川潤」とあった。細川氏は、シニアに限定したくない、「老人」などの文言も使いたくない、看取りもやる、「介護」の問題はお年寄りだけではないなどと話した。細川氏は、自らトータルブレイン出身であることも明かした。
これですべての疑問が氷解した。老人ホームでもサ高住でもシニア向けでもない新しい概念のマンションがどのようなものかおぼろげながら見えてきた。「看取り」までやるマンションなど記者も読者の皆さんも考えたことなどないはずだ。3社はそれをやるというのだ。
まだ詳細は分からないが、記者は質問した「坪単価200万円以下」を取り消し、上方修正する。坪単価250万円は高すぎるような気がする。坪230万円でどうか。コンセプトの具体的な中身を分かりやすく訴えきれれば広範な支持を得るかもしれない。老人ホーム、サ高住、シニア向け分譲マンションの盲点をつく新しい提案になる可能性はありそうだ。
廊下幅最大1300ミリ リビング天井高2500ミリ 大和ハウス「川口並木」
「プレミスト川口並木」
大和ハウス工業が今年5月から契約を開始した「プレミスト川口並木」を見学した。駅から徒歩5分の全55戸で、これまでに供給した44戸のうち31戸が申し込み・成約済み。順調に進捗している。
物件は、JR京浜東北線西川口駅から徒歩5分、川口市並木二丁目の商業・近隣商業地域に位置する10階建て全55戸。現在分譲中の第1期~第2期1次(14戸)の専有面積は61.00~70.52㎡、価格は4,330万~5,940万円(最多価格帯5,400万円台)、坪単価は257万円。竣工予定は令和4年1月下旬。施工は埼玉建興。販売代理は野村不動産ソリューションズ。
現地は商業・近隣商業地域だが、通りから一歩入ったところで交通騒音もそれほどなく、嫌悪施設などもほとんどない。従前は駐車場。
住戸は全戸西向きで、主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2500~2800ミリ、廊下天井高2400ミリ、食洗機、廊下幅最大1300ミリ、間口6300ミリ(一部除く)など。
販売担当者は、「来場者は地元・川口市居住者が中心ですが、都内からも多く、価格の安さ、広さ、利便性が評価されています」と語っている。
エントランス
モデルルーム
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記者は一昨年、駅から徒歩5分で住環境もいいにも関わらず坪単価が214万円という超〝割安感〟のある大京「ライオンズ川口並木グランゲート」(120戸)を取材している。
今回の物件の坪単価257万円というのはやや高いという印象を受けたが、一駅都心寄りの川口駅の再開発マンションは坪340万円、都内・赤羽は坪400万円近くしていることを考えると、検討者も納得の価格なのだろう。
63㎡のモデルルームはよくできている。グループのコスモスイニシアが最近力を入れている〝魅せる玄関〟によく似た廊下幅(収納含む)最大1300ミリと廊下天井高2400ミリの提案が目を引き、テレワークに適したリビングの造作家具(有償)もよかった。スパンは6300ミリ確保している。
そして何より嬉しかったのは、若い女性の販売担当者が何とわがふるさと三重県出身だったことだ。記者は伊勢市の隣町出身だが、この女性の方は名張市だった。名張市は名古屋というより大阪が商圏なので、語尾に「な」が付く〝伊勢のな言葉〟とはややニュアンスが異なったが、それでも優しい語りは来場者にいい印象を与えるはずだ。
同社に入社してから京都に3年、静岡に2年、首都圏は異動になって1年半とのことだった(年齢が分かってしまうではないか)。次の販売物件が決まったら、また取材を申し込むことに決めた。
建築現場
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西川口駅に着いたのが12時過ぎだった。取材の約束時間15時までかなり空きがあったので、どこかタバコが吸え、くつろげる場所はないかと2時間近くうろつきまわったが、全くなかった。すると、モデルルームと目と鼻の先に「喫煙可」の飲食店があった。この種の店には1年半以上も利用したことがないが、もう我慢の限界。意を決して入った。
先客がいた。アンニョンハセヨ、チゲ、アニョー、クンニョー、ビビンバクッパ、チャヒョン、チョンマゲー、ハムニダ、ナムアミダブツ、ハムニダ、♥ Ü{ ♫⍨⍩˙▿˙%?…記者と同じくらいの年齢と思われる女性二人が並んで大きな声で会話を交わしていた。距離は十分あり、飛沫が飛んでくる心配はなかったが、あまりいい気持ちはしなかった。
「ビールあります? 」「ありません」「ノンアルコールは? 」「あります」「じゃ、ノンアルコールのビールください」と注文し、これだけでは悪いと思い「辛ラーメン」を頼んだ。写真に収めた。半分残した。タバコは3本吸った。
歩き回ったお陰で、エフ・ジェー・ネクストの「ガーラ・レジデンス川口並木パークサイド」36戸、名鉄不動産のコンパクトマンション「メイツ西川口」84戸の現場を見ることができた。
これで料金は1,100円
駅4分・魚籃坂・公園隣接 港区初のZEH 積水ハウス「白金高輪」人気必至
ラウンジ
積水ハウスが今週末の9月18日に抽選分譲する「グランドメゾン白金高輪パークフロント」を見学した。白金高輪駅から徒歩4分の全47戸、港区初のZEH認定を受ける予定で、中層階から隣接する公園の借景が望める港区内の希少立地と商品企画が素晴らしい。人気は必至と見た。
物件は、東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅から徒歩4分、都営浅草線・京急本線泉岳寺駅から徒歩8分、JR高輪ゲートウェイ駅から徒歩14分、港区高輪1丁目の商業地域・近隣商業地域(建ぺい率100%、容積率378.77%)に位置する13階建て47戸。9月18日に抽選分譲される第1期(30戸)の専有面積は48.60~100.19㎡、価格は8,990万~24,990万円(最多価格帯10,900万円台・11,900万円台)。坪単価は650万円。竣工予定は2023年6月。設計・監理・施工は若築建設。
現地は、オフィスビル跡地。駅から4分の商業・近隣商業エリアではあるが、表通りから一歩入った魚籃坂に面しており、敷地の西側は約5層分高い公園に隣接。将来にわたって(絶対ではないが)日照・眺望が担保されているのが特徴。
建物は、魚籃坂に面した東側に内廊下を配し、住戸は西向き。13階建ての商業エリアが1フロア2戸、8階建ての近商側は1フロア4戸の2棟構成。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH、リビング天井高2450~2500ミリ、食洗機、ディスポーザー、食器棚、クォーツストーンキッチン天板、ハンズグローエ水栓、ミストサウナ、床ワイパー洗浄、「乾太くん」(有償)、メーターモジュール廊下をはじめとするUD仕上げ、空気環境配慮システム「エアキス」など。
販売担当の同社東京マンション事業部販売課マンションギャラリー店長・金子氏は、「港区×駅徒歩5分以内×敷地が3,000㎡以上の公園に隣接している物件の条件でくくると、今回の物件は過去26年間に港区で供給された590物件のうち3件目という希少物件。エリアには大小を含め6~7競合物件がありますが、集客状況は順調」と語っている。
エントランスの和紙の光壁
隣接公園から建設現場を写す
公園
公園から三菱地所レジデンスの建設現場を写す
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今日(9月13日)は、この物件と大和ハウス工業の「川口並木」を見学したのだが、取材時間が異なったため約8時間というもの、ほとんど歩き放しだった。コロナから逃げるため飲食店には入らず、たばこが吸える場所を探したためでもあるが、へとへとに疲れた。万歩計は久々に1万歩を記録したが、コロナ前は平気でこれくらい歩いていたので、いかにコロナに足腰をやられたかを改めて思い知った。
なので、細々したことまで「書こう」「書きます」「書く」「書くとき」「書けば」「書け」という記者の別の声もあるが、「書かない・書けない」という結論に達した。申し訳ない。コロナが悪いのだ。
坪単価が低く抑えられているのは、公園レベル以下の4階までの住戸の価格が低く設定されているためだ。第1期30戸のうち価格が1億円を下回るのは2戸しかないので(2期以降も1億円以下は1戸くらいか)、お金持ちしか買えないだろうが、文句なしにいい物件だ。
隣接する公園は、現況では迂回してきつい坂を上らなければならないが、記者が確認したところ、公園と敷地との間に閉鎖はされていたが5層(約15m)の階段があった。建物が完成したらまた復活するかもしれない(復活しない可能性ももちろんある)。そうなったら、上り下りは大変だろうが、公園が我が家の庭のように利用できる。公園には差し渡し1mを超えそうなクスの大木などが植わっている。由緒ある公園のようだ。
同社の「白金」エリアの物件は主だったものだけで5物件あるそうだが、今回の物件はあらゆる条件が揃った物件ではないか。
早期完売した大和ハウス工業のマンション
積水ハウス 同社の首都圏初のZEH「センター北」好調スタート/20年間の記事も再録(2021/2/3)
先行逃げ切りか まくり一発か レベル高い 大和ハウス「プレミストタワー白金高輪」(2020/9/19)
坪単価は700万円を超えるかどうか 東京建物ほか 山手線内最大級「白金ザ・スカイ」(2019/7/29)
ひっ迫の度合い強める中古マンション・戸建て市場 東日本レインズ 8月の動向
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は9月10日、首都圏の2021年8月度の不動産流通市場の動向を発表した。中古マンション、中古戸建ても新規登録、在庫が減少し、価格は上昇傾向を示す一方で、土地面積、専有面積は縮小傾向にあるなど、市場はひっ迫の度合いを強めている。かつてのバブル発生時は中古市場が新築市場をけん引したが、今回は双方が影響を与え合う様相を呈してきた。
中古マンション 新規登録、在庫減少し成約単価は16か月連続上昇
中古マンションの成約件数は前年比で14.3%減となり、7月に続いて前年同月を下回った。成約㎡単価は前年比7.9%上昇し20年5月から16か月連続、成約価格は同3.5%上昇し、20年6月から15か月連続で前年同月を上回った。専有面積は同4.1%縮小した。
新規登録件数は前年比12.4%減の12,319件で、在庫は同19.0%減の34,594戸となっている。
地域別では、成約件数は7月に続いてすべての地域が前年比で減少し、東京都区部と多摩は3か月連続、他の地域は7月に続いて前年同月を下回った。成約㎡単価はすべての地域が前年比で上昇し、東京都区部は16か月連続、横浜・川崎市と埼玉県は15か月連続、千葉県は13か月連続で前年同月を上回った。
中古戸建て 新規登録21%、在庫31%減 価格は10か月連続上昇
中古戸建ての成約件数は前年比で9.9%減少し、20年6月以来14か月ぶりに前年同月を下回った。成約価格は前年比で6.1%上昇し、10か月連続で前年同月を上回った。土地面積は前年比で6.2%縮小、建物面積は同1.4%縮小した。
新規登録件数は前年比20.6%減の3,689件で、在庫件数は同30.7%減の13,690件となっている。
地域別では、成約件数は東京都区部以外の地域が前年比で減少し、横浜・川崎市と埼玉県は13か月ぶり、神奈川県他は11か月ぶりに前年同月を下回った。成約価格は東京都区部以外の地域が前年比で上昇し、埼玉県は9か月連続、横浜・川崎市と千葉県は6か月連続で前年同月を上回った。
新築戸建ての成約件数は前年比34.7%減、成約価格は同4.3%減、新規登録は同38.3%減、在庫は同45.9%減となっている。
三菱地所レジ 「マンション家計簿」リニューアル 業界初の住戸ごとCO2排出量記載
三菱地所レジデンスは9月9日、マンションのランニングコストの見える化を図った「マンション家計簿」をリニューアルし、業界初の1住戸ごとのCO2削減量を記載することを決定し、第一弾として「ザ・パークハウス石神井公園テラス」に導入すると発表した。
「マンション家計簿」は、マンションの環境性能を伝えるとともに省エネ活動を喚起するため、2013年から同社が制作。マンション購入検討者を対象にこれまで200物件以上に配布している。2015年のグッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」「未来づくりデザイン賞」を受賞している。
リニューアルした「マンション家計簿」は、入居後の水道光熱費のランニングコスト提示に加え、1住戸ごとのCO2削減量を記載するほか、ザ・パークハウスのCO2排出削減への工夫、CO2やエネルギーを削減するエコでかしこい暮らしの提案などを盛り込んでいる。
住戸ごとの光熱費表示、CO2排出量の記載はともに業界初。
「ザ・パークハウス石神井公園テラス」は、西武池袋線石神井公園駅から徒歩8分の練馬区石神井町2丁目に位置する3階地下1階建て全86戸。専有面積67.45~81.56㎡。竣工予定は2022年6月下旬。売主は同社のほか大栄不動産。
選手村裁判が結審 「HARUMI FLAG」利益は消費者(購入者)に還元すべき
「HARUMI FLAG」全体像
東京2020オリンピック・パラリンピック選手村となった用地を東京都が事業者に公示地価の10分の1の価格で売却したことの是非を問う裁判【事件番号 平成29年(行ウ)第388号】が2021年8月31日に結審した。判決日は未定だが、今年末までには出る模様だ。
記者は都が2016年7月31日に「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」の特定建築予定者として三井不動産レジデンシャルを代表とする11社を選定したときからずっと取材してきた。
その第一弾として書いた「東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟」(2016/8/4)という見出しの「こだわり記事」にはアクセスが殺到した。当時、記事は日経新聞が発行していた住宅購入予定者向けのWeb「住宅サーチ」に全文が転載されていたので、「こだわり記事」と合わせるとその数は数万件(もっと多いか)に達したはずだ。
反響の多さに驚いた記者は、書いた責任として継続して書き続けようと決意した。その後の経緯について若干紹介する。
第一弾の記事を書いたその翌年の平成29年5月19日、住民らは選手村敷地の売却価格約130億円は不当、違法であるとし、損害の回避または補填をするために必要な措置を講じることを都知事に求めた住民監査請求を行った。
これに対して同年7月19日、監査委員は「都市再開発制度を濫用した違法、不当なものであるとする請求人の主張には理由がない」として棄却した。その際、「本件事業の今後の実施に際しては、重要な決定に当たり、専門家の意見を十分に聞く等の内部牽制体制を強化することや、意思決定過程及び決定内容についてきめ細かな対外説明を行うことなどにより、これまで以上に透明性の確保に努められたい」との意見が付された。
この決定を不服とした住民側は同年8月17日、不当に売却されたことによる損害額約1,000億円(当時)を事業者に請求すべきと東京都知事に求める訴訟を提起した。原告側はその後、桝本行雄・不動産鑑定士による適正売却価格は約1,653億円とし、損害額は約1,500億円と上方修正している。
提訴から4年。原告側の住民らが勝訴するのか、被告の東京都知事が敗訴するのか、それともその逆になるかはわからないが、敗訴した側がそのまま判決を受け入れるはずはなく、控訴するのは間違いない。以下は記者のこれまでの記事のまとめとして、明らかになった問題点を紹介する。
まず、選手村の売却価格を決定するに当たって採用された不動産鑑定手法の一つである「開発法」について。
不動産鑑定手法は「三手法」と呼ばれる原価法、収益還元法、取引事例比較法が一般的に知られているが、このほかに「開発法」として「一体利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該 更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格」(国土交通省 不動産鑑定評価基準)を求めることができるとしている。
記者は専門でないのでよくわからないが、価格時点(将来価格ではなく都が事業者に売却した2016年時点)の販売総額から建築費その他の費用を差し引いた価格が「開発法」による土地価格となるということだ。つまり、都が売却する際に日本不動産研究所に依頼して作成した「調査報告書」では、売れる価格として坪単価250万円(記者の推定)とし、それから諸々の経費や減価要因を差し引いた結果、土地の値段は坪32万円(容積率を平均400%として1種当たり8万円)とはじき出したわけだ。是非はともかくとして、地価公示価格は参考程度としか考慮されていなかったようだ。
この坪単価250万円というのは記者も納得する。当時、晴海エリアでは2012年春、三菱地所レジデンス・鹿島建設「ザ・パークハウス 晴海タワーズ」の第一弾として「ザ・パークハウス 晴海タワーズ クロノレジデンス」が分譲開始された。スタート時点の坪単価は275万円だった。その後2016年3月、「ザ・パークハウス 晴海タワーズ」(全1,744戸)の全体が竣工。最終分譲の坪単価は坪330万円くらいだった
当時の最高峰のマンションですら坪330万円だった。〝陸の孤島〟の選手村に4,500戸もの分譲マンションを建てたら、坪単価250万円がアッパーと考えるのは妥当で、「開発法」による売却価格決定に瑕疵はないと考える。
一方で、原告側の桝本鑑定士による鑑定価格はどうか。被告側は「桝本鑑定士の意見書は証拠能力なし」とし、原告側は「善意の第三者である事業者」に対する「重大な名誉棄損」と批判した。
記者も桝本鑑定士の鑑定評価額には減価要因がほとんど盛り込まれていないのは気になるが、かといって桝本氏の「鑑定評価」にも違法性・瑕疵はないと思う。
そこでわかるのは、世の中に真実・真理は星の数ほどあるのと一緒だ。ものの見方、考え方、前提条件次第で不動産鑑定価格はいかような金額になるということだ。今回の裁判はこのことを改めて白日の下にさらけ出した。
さらにまた、いかような金額でもはじき出せる不動産鑑定士とは何かという問題が浮上する。不動産鑑定士の資格試験の難しいのはよく知られている。記者も問題にチャレンジしたことがあるが、全然解けなかった。司法試験合格者の平均年齢は30歳を切っているのに、不動産鑑定士は30歳を超えていることにも試験の難しさがうかがい知れる。
合格に要する費用を金額に置き換えてみた。時間給1,500円(もっと高いか)で、合格するには1日5時間×10年間勉強する必要があるとすると、約2,740万円も掛かる計算になる。しかし、鑑定士の資格を取得したからといって、会社からは手当てなど支給されないのが普通で、報酬額(給与)は弁護士よりはるかに低い。依頼者(クライアント)プレッシャーなる不可解な圧力を受けるともいう。割に合わない仕事ではないか。
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「HARUMI FLAG」に関する情報がまた飛び交っている。高いか安いか、これは購入検討者が考えることだが、情報の氾濫に溺れないようしていただきたいとしか言えない。ただ、マンションの基本性能・設備仕様レベルは極めて高いということは断言できる。
事業者には、日本不動産研究所が鑑定した坪単価250万円で十分利益が出るのだから、高値追求などしないよう求めたい。利益は購入者に還元すべきだ。儲かったら利益折半などと博打の寺銭のようなことをやったら、大手デベロッパーの看板が泣く。三井不動産レジデンシャルの元社長が「当社は腹八分目。残りの二分はお客さまのため」と語ったのを思い出す。
課題の交通便だが、記者はBRTにも試乗した。信号機が31か所あったのは気になったが、バスの運行がスムーズになるよう信号システムを変えればもっと早くなるはずだ。
メディアの方には、周辺の物件との価格差などを中心に論じるのではなくて、開発の経緯(土地価格は1種8万円)を念頭に置き、マンションの居住性に焦点を当てる情報を発信してほしい。〝投資〟をあおるような論調は論外だ。
東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟(2016/8/4)
文句なしにいい 街づくり・基本性能 坪単価280万円か 「HARUMI FLAG」(2019/4/24)
東京BRT初体験 虎ノ門~晴海の終点まで28分 信号31か所、待ち時間6.6分(2021/3/1)
「選手村マンション増収分折半」 選手村裁判の原告団が声明文(2019/9/18)
またも平行線 「早く結審を」(被告)「議事録開示を」(原告)第8回選手村裁判(2020/1/18)
オリンピック選手村裁判 原告側桝本鑑定士の意見書は証拠価値なし 被告側が意見陳述
「HARUMI FLAG」 土地と建物の価格比率は調整区域並みの7:93 算定は妥当
オリンピック選手村住民訴訟も佳境に 原告、被告双方 相手を「著しく」非難
「晴海」坪250万円予想の根拠 「週刊文春」も裏付け 当初単価は244万円と報道
三菱地所・鹿島建設 「ザ・パークハウス 晴海タワーズ」完成・完売(2016/4/14)
三菱地所レジデンス・鹿島建設「ザ・パークハウス 晴海タワーズ クロノレジデンス」(2011/12/6)
全戸に「乾太くん」、ファミリーは冷凍庫付き ポラス中央住宅「越谷」企画ヒット
「ルピアコート越谷」
ポラスグループ中央住宅が分譲中のファミリー&コンパクトマンション「ルピアコート越谷」を見学した。駅から徒歩4分の全46戸で、5月から販売開始。これまでにファミリーは9戸のうち7戸、コンパクトは37戸のうち半分が成約済み。他社との差別化を図った商品企画が優れている。
物件は、東武伊勢崎線越谷駅から徒歩4分、越谷市越ヶ谷1丁目の商業地域(建ぺい率80%、容積率400%)に位置する13階建て全46戸。専有面積は30.14~80.37㎡、コンパクトタイプの価格は2,300万円台~3,400万円台(坪単価285万円)、ファミリータイプの価格は4,800万円台~6,400万円台(坪単価246万円)。竣工予定は2022年1月中旬。施工は川村工営。販売代理は東京中央建物。
5月から販売を開始しており、これまでコンパクト37戸のうち半分が、ファミリー9戸のうち7戸が成約済み。順調に推移している。
現地は、表通りから一歩入った中高層建築物が建ち並ぶ一角。幅員7.8mの北側道路に接道。従前敷地は更地で、形状は南北軸がやや長い長方形で、敷地東側に同規模のマンションが建っていることから、内廊下方式を採用し目隠しとしても機能するようにしている。
住戸は2階から8階までがコンパクトで、標準階1フロア5戸構成。9階以上は角住戸のファミリー2戸と中住戸のコンパクトの3戸構成。主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、食洗機(コンパクト除く)、ガス衣類乾燥機「乾太くん」、バックカウンター・収納棚、ピアキッチン(同)、冷凍庫(同)、プッシュプルドア、物干しポールなど。
〝蔵の街・越谷〟を象徴する大谷石を建物基壇部に配し、ハナブサデザイン代表・花房茂氏による地元の伝統工芸をモチーフにした「だるまアート」「越谷「籠染灯篭」を共用部に設置する。
同社マインドスクェア事業部マンションDv営業企画課課長・湯村元昭氏は「単価は低くはないですが販売は堅調。ファミリーはデザイン、ワイドスパン、ピアキッチン、冷凍庫や首都圏初の『乾太くん』が地元のセレブに評価され、高額タイプは抽選になるほどの人気。コンパクトも『乾太くん』やバックカウンター・収納を標準装備したのが人気の要因。コンパクトの成約者の8割は女性」と語った。
モデルルーム
「だるまアート」(左)と「越谷「籠染灯篭」
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コンパクトの坪285万円はもちろん、ファミリーの坪245万円は越谷駅圏最高値だが、商品企画・設備仕様レベルは郊外型としては極めて高いはずだ。
間取り図を参照していただきたい。専有面積は70㎡台だが、スパンは8.75mで、形状はほぼ正方形。玄関・シューズインクロークに窓があり、廊下面積を少なくし、キッチン-洗面-浴室の動線も機能的にできている。
リンナイのヒット商品「乾太くん」を全戸標準装備とし、ファミリータイプには冷凍庫を装備したのは、冷凍冷蔵庫に収まり切れない家庭が増えている需要の高まりに対応するもの。マンションDv担当の同社取締役・金児正治氏の強い指示があったようだ。同社の戸建てでも採用するケースが増えているという。
同社のマンション事業は、数年前までは年間1~2棟くらいしかなかったが、最近はどんどん増加し、昨年はついに首都圏マンション供給ランキングベスト10入りした。現在の商品企画・設備仕様レベルを維持できたら、どことでも互角以上に戦えるはずだ。坪単価280万円のコンパクト「ルピアシェリール三郷中央」57戸も9カ月で完売したことを湯村氏は明かした。
建設現場
〝丘の上に広さと安さがある〟レベル高い武田薬品社宅をリノベ タカラ「保土ケ谷」
「ル・アール横浜保土ケ谷」
タカラレーベンが先月7月17日から販売を開始した横浜市の一棟リノベーションマンション「ル・アール横浜保土ケ谷」を見学した。従前は武田薬品工業の社宅として1994年に竣工したもので、全戸84㎡超の住居専有面積と収納の多さ、二重サッシ、ミストサウナなどの設備仕様は最高レベルで、駅と現地の比高差の難点を補って余りある。坪単価を162万円に抑えられたのは、スケルトンリノベーションを行う必要がなかったためだ。
物件は、JR横須賀線・湘南新宿ライン保土ケ谷駅から徒歩11分、京急本線井土ヶ谷駅徒歩11分、横浜市保土ケ谷区岩井町の第一種住居地域、第二種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積1,470㎡、鉄筋壁式構造4階建て全20戸。専有面積は84.91㎡・85.83㎡の2タイプ。既存建物竣工は1994年6月。新築時の設計・監理・施工は大林組。2011年改修工事時の設計・監理・施工はコーナン建設。2022年改修工事時設計・監理はネクストイノベーション。改修工事はきんでん。入居予定は2022年1月下旬。駐車場は敷地内に19台(敷地外に1台)。
7月17日から販売を開始し、現在10戸が供給済み。
現地は、保土ケ谷駅と井土ヶ谷駅の中間地点のヒルトップに位置し、敷地南側は首都高速神奈川3号狩場線が近接。保育園・小・中学校、病院、公園が徒歩圏。
建物は、武田薬品工業の社宅として建設されたもので、タカラレーベンは2019年に投資会社から取得した。10年前に改修工事が行われている。
採光に配慮された雁行設計、壁式工法が採用されているため、全戸南東向きで、天井高は2400ミリでも柱・梁の出っ張りがなく、収納が多いのが特徴。主な設備仕様は、二重・樹脂サッシ、14×18浴槽、ミストサウナ、ワイドキッチン、ダウンウォールキッチン収納、床暖房など。住宅ローンは新築マンションと同様、35年利用が可能。
販売を担当する同社マンション事業本部営業推進事業部第1営業統括部第1営業部3課 課長補佐・相沢陽介氏は「玄関ドアはプッシュフルに変更しましたが、10年前にも改修工事が行われているためスケルトンリノベする必要がなく、この単価が実現しました。私は当社に7年務めていますが、こんな素晴らしいマンションはほとんど経験がありません。収納がたっぷりあり、サッシは二重、浴室はミストサウナ付き。床はそのまま生かし、特許を取得している3ミリのフローリングを上張りしています」トイレはタンクレスだったので、工事次第でそのまま利用していただくことも可能。坂の利用はお勧めできませんが、坂を上り切ったらこの広さと安さを手に入れることができます」と語っている。
同社のリノベマンションは2005年10月の「西新井」60戸の第一弾をはじめ、「八王子」40戸、「柏」42戸、「志木」20戸、「多摩川」49戸、「川崎」30戸、「大倉山」34戸、「東林間」など今回が11棟目、トータルで500戸近くとなる。
リビング
◇ ◆ ◇
記者は12年前、同社のリノベマンション「ル・アール蘇我プレミアムヒルズ」を見学取材している。JR京葉線・内房線・外房線蘇我駅から徒歩13分のJFEグループの社宅をリニューアルした熊谷組・大林組共同企業体施工の2棟全152戸で、うち1棟(81戸)の専有面積は90㎡、全体平均で87㎡、分譲単価は70~75万円だったので、圧倒的な人気を呼び瞬く間に完売した。面積もさることながら設備仕様レベルの高さに驚いた。
今回もまた、大企業の社宅として利用されていたものだ。前段で書いたが、まさにバブル仕様だ。浴室・洗面室は段差があるのはやむを得ないが(フラット浴室が一般化したのは平成8年以降)、玄関幅は約1.2mもあり、壁式工法なので柱・梁の出っ張りもない。極めて居住性の高いマンションだ。
よくぞこんなレベルの高い物件を仕入れられたものだ。
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東京都には、「島津山」「池田山」「花房山」「御殿山」「八ツ山」の「城南五山」をはじめ、「赤坂」「乃木坂」「団子坂」「宮益坂」「青葉台」「世田谷」「渋谷」「四谷」「千駄ヶ谷」「日比谷」「鶯谷」など地形をそのまま住所にしているエリアが多く、お金持ちは高いところに住むのを好むのか、高級住宅街となっているところも少なくない。(「山谷」はなくなったが)
しかし、横浜は東京の比ではない。丘陵地、湿地、湧水、水路などから構成する「谷戸」(ヤト)が1,000か所近くあるといわれているように、急峻な山・坂にへばりつくように住宅が建ち並ぶ住宅地がたくさんある。
今回の同社の「保土ケ谷」もその一つで、近くには「井土ヶ谷」「上大岡」「西谷」「鶴ヶ峰」「二俣川」「戸塚」などが連なったり入り組んだりしている。
記者はこれらのエリアのマンションや戸建てをたくさん見学してきたので予想はしていたが、保土ケ谷駅から現地までの急坂にはさすがに驚いた。行きは、約束の取材時間に遅れそうになったのでタクシーに乗った。運転手の方は地図を矯めつ眇めつしたあげく道に迷い、徒歩時間と同じくらい掛かってようやくたどり着いた。
なので、坂の存在は知らなかったのだが、販売担当の相沢氏は「ご来場の際は公共交通機関の利用を推奨しております」と言ったので、実際はどうなのか確認するために帰りは駅まで歩くことにした。現地周辺は良好な住環境を形成していたが、2~3分歩くと、マンションにして10層くらいはありそうな階段があった。つまり、最短ルートでは車や自転車では現地にたどり着けないことがわかった。階段を下りてからまた前のめり速足になりそうな坂が続いた。実際に記者が歩いてみたところ、とても大変ではあった。
この急坂を気にされる方は検討の余地はない。しかし、相沢氏の「坂を上りきったところに広さと安さがある」の言葉はけだし名言だ。普段から車利用でしか移動しない人や居住性を重視する人にとってはたまらない物件ではないか。
現地
タカラレーベン リノベーションマンションも絶好調(2008/12/2)
タカラレーベン 好調リニューアルマンション「ル・アール蘇我」は4日間で120組超(2009/5/25)
大和地所レジ 茅ヶ崎の1低層で111戸 モデルルームオープン
「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」
大和地所レジデンスは9月2日、JR茅ヶ崎駅圏の第一種低層住居専用地域に位置する低層マンション「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」のモデルルームをオーブンしたと発表した。
物件は、JR茅ケ崎駅から徒歩15分、茅ヶ崎市東海岸南四丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約8,236㎡、地上4階・地下1階建で全111戸。9月下旬分譲予定の第1期1次(8戸)の専有面積は65.88~100.38㎡、価格は未定。竣工予定は2023年1月下旬。設計・監理は恒企画。施工は馬淵建設。
茅ケ崎駅最寄りで100戸以上の低層分譲マンションは22年ぶり、敷地形状を活かした回廊型の配棟、リゾートライフを楽しむためのサーフボード置場やシャワーブースを設置、屋上スカイラウンジやシーズンズガーデン、パーティーラウンジ、キッズルームなどの共用施設、100㎡プラン、4mバルコニー、ルーフバルコニー、屋上バルコニー、専用庭付きプランなど60タイプを提案するのが特徴。
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茅ヶ崎駅が最寄りの1低層のマンションといえば、設計が菊竹清訓。オーナーが上原謙や加山雄三氏らだった「パシフィックパーク茅ヶ崎」ホテル跡地に建設された興和物産・栄泉不動産「パシフィックガーデン茅ヶ崎」(1999年3月竣工、167戸)を思い出す。
そして、大和地所レジデンスの中層マンションといえば、第一種中高層住居専用地域の5階建て「ヴェレーナシティ上大岡」132戸を思い出す。記者はこの物件を2019年の「ベスト3マンション」の一つとして選んだ。
いったいどのような商品企画となるのか、価格はいくらか。「上大岡」の坪単価は175万円だったが、そんなに安くはならないはずだが、200万円を突破してもそれほど高くはならないと読んだ。機会があったら見学して紹介したい。
2019年ベスト3マンション 三井他「晴海」地所「北千住」大和レジ「上大岡」(2019/12/24)
総武線(亀戸~小岩)の開発に拍車 再開発中心に5000戸超 「亀戸」の上値圧力も
「プラウドタワー小岩ファースト」
総武線(亀戸~小岩)の再開発を中心とする分譲マンション開発に拍車がかかっている。現在分譲中と計画中の主だった物件戸数をざっと調べたら5,000戸(非分譲含む)を突破した。もちろん、この他の物件も供給されるはずだから、向こう数年間にわたって少なくとも年間500~600戸、市況次第では1,000戸近くが分譲されるのではないか。市場を概観した。
東京から快速で10分もかからない錦糸町駅圏は坪単価400万円を突破していると思われるが、開発余地は少ないはずで今後も大型物件の供給はないのではないか。
亀戸 最高峰「プラウドタワー亀戸クロス」(934戸)竣工完売か
その先の亀戸-平井-新小岩-小岩がこれからの主戦場になる。その中で最高峰マンションは、一昨年春から分譲が始まった野村不動産・三菱地所レジデンス「プラウドタワー亀戸クロス」(934戸)だ。この物件については販売開始前の記者見学会を取材しているので、記事はそちらを参照していただきたい。
「亀戸」の地域イメージはさておき、商品企画レベルは他のどの物件にも負けない。プラウド初となる床空調システム「床快full」(三菱地所レジデンスは全館空調の供給実績あり)と樹脂・二重サッシを採用することでZEH認定を取得、間取りの自由度と可変性を高める「Mi-liful(ミライフル)」、大規模修繕の周期を長くして全体的なコストを削減する「アトラクティブ30」を採用しているのが特徴だ。
見学時には坪単価は300万円台の半ばと予想したが、350~360万円くらいでスタートしたはずで、それほど外れていなかったと思う(今はもっと高いか)。現在、物件ホームページには「第5期」となっている。ものすごい販売スピードだ。竣工予定の2022年1月下旬までに売り切るのだろうか。この「亀戸」が分譲されている限り、他の物件はこの単価を上回って供給できないはずだ。
平井 駅北口で野村不・阪急阪神不の再開発 住友不も大規模予定
錦糸町駅から1駅先の「平井」駅といっても、具体的イメージがわかない人は多いと思われるが、記者は公園が多く落ち着いた住宅地を形成しているので、錦糸町~小岩駅圏ではもっとも好きな駅だ。
その平井駅北口では、野村不動産と阪急阪神不動産の29階建て「平井五丁目駅前地区」(施行面積約0.7ha)の再開発マンションが2022年度中に分譲される予定だ。全約370戸のうちうち分譲対象は270戸の予定。
平井駅から徒歩10分の平井六丁目では、住友不動産が「シティハウス平井」319戸を2022年3月上旬に分譲開始する。
新小岩 駅周辺で5か所の再開発 住友不ほかが先陣
平井駅の先の快速停車駅の新小岩駅圏では、駅を中心に北側地区、東北地区、西部地区、南口地区、東南地区の5地区、合計23.0haの再開発計画が進行中だ。このうちすでに着工中の「東南地区」再開発(施行面積3.9ha)では、住友不動産・ジェイアール東日本都市開発・日本貨物鉄道の15階建て「シティテラス新小岩」268戸の分譲が今春に始まった。坪単価は340万円程度と思われる。この単価設定は、やはり「亀戸」の上値圧力が強いからだと記者は思う。
このほか、新小岩駅圏では三井不動産レジデンシャルと首都圏不燃建築公社が事業参画している「新小岩駅南口地区第一種市街地再開発事業」(戸数約580戸)がこの8月に都市計画決定された。(記事参照)
小岩 3物件トータルで2000戸超 野村不・タカラは好調スタート
新小岩駅の先の小岩駅圏では、南口徒歩1分の野村不動産・タカラレーベン・清水建設の3社JVの22階建て「プラウドタワー小岩ファースト」233戸(非分譲住戸76戸含む)の分譲が7月から始まった。第1期として分譲対象の約半分88戸を供給したほどだから、順調なスタートを切った模様だ。ただ、坪単価は340万円くらいのはずで、ここも「亀戸」の上値圧力のせいでこの単価になったのではないか。
この物件は、「南小岩六丁目地区」再開発事業(施行面積1.3ha)のⅡ街区に当たり、Ⅰ街区には10階建て商業・オフィス棟、Ⅲ街区(33 階建て)は商業・住宅棟が建設される。住宅は合計で601戸の予定。竣工はⅠ街区が2020 年末に竣工済み。Ⅱ街区が2022年3月、Ⅲ街区が2026年冬頃に竣工する予定。
小岩駅北口では、三井不動産レジデンシャルと日鉄興和不動産が事業参画している小岩駅北口から徒歩2分の「JR小岩駅北口地区第一種市街地再開発事業」(施行面積2.0ha)として商業・業務・保育所とともに約730戸のマンションを建設する。2022年3月に着工、2027年1月竣工予定。
さらに小岩駅圏には、2023年度の都市計画決定を目指す日鉄興和不動産、住友商事、長谷工コーポレーション、学研ホールディングスが事業参画している「南小岩七丁目地区」再開発計画がある。住宅は約1,250戸。2025年度に着工する予定だ。
コンセプト次第で対抗できる中小規模物件
以上、主だった物件を紹介したが、コロナ禍で現場取材がほとんどできておらず〝フェイク〟記事にならないことを祈るのみだ。問題は、これらの再開発・大規模マンションに、他のデベロッパーの中小規模マンションは対抗できるかどうかということだ。
単価的には「亀戸」の分譲が完了しないと高値追求はできないはずで、〝売れる〟値段は坪300万円くらいと読むがどうだろうか。駅から遠い物件でもターゲット・コンセプトを明確にすればまた違った展開も考えられるか。
記者は昨年9月、平井駅から徒歩16分の「オーベルグランディオ平井」138戸を取材したが、坪単価は230万円くらいで、平均74㎡の〝広さ〟はアピールできると予測した。物件ホームページには最終期とあった。竣工予定は2022年1月下旬だから竣工完売のめどがついたか。
三井不レジ・首都圏不燃公社 新小岩の再開発 第2弾「南口地区」が都市計画決定(2021/9/1)
三井不レジ・日鉄興和不JR小岩駅北口再開発事業 権利変換計画認可(2021/7/28)
野村不、タカラレーベンが事業参画 小岩駅前で再開発マンション601戸(2019/5/13)
凄い!全館空調、二重&樹脂サッシ採用 野村不「亀戸」934戸 単価300万円台半ば(2019/2/19)
圧倒的な価格の安さと平均74㎡の広さアピール 大成有楽不動産「平井」(2020/9/10)