港区の億万長者 納税者の1%1,500人超 激増に拍車かける億ション続々竣工へ
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東京都港区の課税標準額が1億円超の納税義務者(以下、億万長者)は令和6年7月末現在、1,523人となり前年度から131人増加したことが分かった。納税義務者に占める億万長者の割合は1.0%となり前年度より0.1ポイント増加、初めて1%台に達した。8年前の令和28年の957人(納税者に占める割合0.7%)の実に約6割増だ。億万長者が納めた1人当たり所得割額は約2,500万円と桁違いで、得割額総額は約380億円。区全体の所得割額の36.2%を占めている。
また、課税標準額が1,000万円超の納税者の割合は19.8%(前年度比1.2ポイント増)で、所得割額に占める割合は76.9%(同4.2ポイント増)となった。
令和5年度の東京都の納税義務者数は約757.1万人(23区531.5万人、市町村225.6万人)で、課税標準額が1億円超の納税者は5,584人(23区5,173人、市町村411人)となっており、都民の億万長者の27.3%の人が港区に住んでいることになる。
港区の億万長者の増加に拍車をかけているのが高額マンションの供給増だ。専有面積が30㎡でも億ションとなる三井不動産レジデンシャル「三田ガーデンヒルズ」(1,004戸)、世界貿易センタービル他「ワールドタワーレジデンス」(389)、森ビル「麻布台ヒルズ」(約1,400戸)などの高額マンションが今年末から相次いで竣工する。三井不動産レジデンシャルのシニア向け「パークウェルステイト西麻布」(全400室)の入居も始まった。
また、区内には建て替えや再開発マンションが目白押しで、この数年間に4,000~5,000戸が計画されており、坪単価は2,000~3,000万円以上となると予想される物件も少なくない。
このほか、港区の課税状況で興味深い数値がある。これまで課税標準額が10万円以下の納税者は3,000人前後で推移していたが、令和6年度は637人に激減、構成比も2~3%台から0.4%へ下げた。これは、定額減税による所得割が非課税になったことの影響と思われる。
アッパーミドル・富裕層さらに増加 5人に1人が課税標準額1,000万円超東京都港区(2024/9/18)
コロナ禍でも億万長者は11.4%増の1,392人令和5年度の港区所得割額は2.4%減(2023/10/15)
2024年グッドデザイン賞 不動産各社が受賞 ブルースタジオ・はちくりはうす金賞
ブルースタジオ「はちくりはうす」
日本デザイン振興会は10月16日、応募があった5,773件から「2024年度グッドデザイン賞」1,579件を発表した。最高賞である「グッドデザイン大賞」の候補となる「グッドデザイン金賞」20件には、住宅・不動産業界からはブルースタジオ・竹村眞紀「障害者シェアハウス+シェア店舗『はちくりはうす』」が選ばれた。また、「グッドデザイン・ベスト100」には大和ハウス工業「神社・地域と共に歩む老人ホーム『黒鶴稲荷神社+アズハイム大田中央』」、東急不動産・石勝エクステリア・東急コミュニティー「生物多様性保全に寄与する長期景観管理計画」が選定された。「グッドデザイン大賞」1件は11月5日に決定・発表される予定。以下、主な住宅・不動産会社の受賞作。順不同
「黒鶴稲荷神社+アズハイム大田中央」
ブルースタジオ 「障害者シェアハウス+シェア店舗『はちくり』」「総合住宅展示場のセンターハウス」
東栄住宅 「木造住宅用制震ダンパー/東栄セーフティダンパー」「地盤改良工法/R-Evolve パイル」「宅地開発手法/簡単に地図から消せる道」
住友不動産 「プレミアム.J 立川」「南麻布レジデンス」
日鉄興和不動産 「グランリビオ浜田山」
大東建託 「ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場」
相鉄不動産 木造マンション「KNOCKSゆめが丘」
AQ Group 「木造平屋建て 構造実験棟」
三菱地所グループ 「ベネチ庵/アラビ庵」「MUFG PARK/LIBRARY」「田町タワー」「ザ・パークハウス グラン 神山町」「ザ・パークハウス 南麻布」 「ザ・パークハウス 京都河原町」
ミサワホーム 「be in harmony」
トヨタホーム 「トヨタホーム 国立ブリックコート」
旭化成ホームズ 「子育て共感賃貸住宅『ヘーベルメゾン BORIKI』」
MIRARTHホールディングス(ミラースHD) 「レーベン上田中央 GALLDEA」「『防災重要事項説明書』の発行・説明」
三井不動産レジデンシャル 「パークタワー勝どきミッド/サウス」「パークホームズ西池袋」「パークホームズ吉祥寺北 ザ ガーデン」「SOCO HAUS KORAKUEN」「パークアクシス新宿百人町」「すまいとくらしから循環型社会を実現『くらしのサス活 Circular Action』」
近鉄不動産 「ローレルコート上本町五丁目」
日本エスコン 「SEVENS VILLA 軽井沢」「TOPAZ 江坂」
野村不動産ホールディングス 「森を、つなぐ」東京プロジェクト」「プラウドシティ豊田多摩平の森」「プラウド阪急塚口駅前・ソコラ塚口クロス」「シビックプライドを醸成する取組『街の推し応援活動』」
大和ハウス工業 「神社・地域と共に歩む老人ホーム『黒鶴稲荷神社+アズハイム大田中央』」「公園一体広場+研究施設&ホテル『Research Gate -TONOMACHI-』」
コスモスイニシア 「イニシア芦屋レジデンス」「コスモグラシア蔵前テラス」「古材を活用した買取再販リノベーションマンション」
伊藤忠都市開発 「クレヴィア新御徒町」
阪急阪神不動産 「ジオ四天王寺一丁目」
リストデベロップメント・リビタ 「複合シェアオフィス「12 KANDA」
東京建物 「MEIJIPARK(都立明治公園)」「Brillia 京都鞍馬口」
ポラスグループ 「フレーベスト秋津 -OKUNIWA-」「アンテナモデル」「リーズン馬込沢 SuBaCoプロジェクト」「ベルフォート北本」「東京ストリームサイト」「国産無垢再生パネル」「未来輪区 ~共助と共生を育む街~」「『ステイパス』のある風景」「開発する全ての戸建て分譲地・入居者を対象としたコミュニティ支援プログラム」「育実(はぐくみ)の丘大宮」「南の台木造倉庫」「令和最小限住宅4×4『造りすぎない家』」「SPDスリム中間水切り」
東急不動産ホールディングス 「REEN AGENDA for BRANZ」「コンフォリア東新宿」「東急プラザ原宿『ハラカド』」「Forestgate Daikanyama」
大京 「リジェ南山」「コンパクトマンション向け可動テーブル一体型キッチン」
モリモト 「ディアナコート祐天寺レジデンス」「ピアース用賀テラス」
安田不動産 「デュシタニ京都・植柳コミュニティセンター」「「plaNECT 薬王寺」「HAMACHO FUTURE LAB」
「ブランズ自由が丘」
大東建託 賃貸住宅のCLT使用量 2028年までに8倍に ZEHにも対応
CLTを採用した賃貸住宅共用部イメージ図
大東建託は10月15日、環境性能が高く住宅の脱炭素化を促進するCLT工法を採用するとともに、ZEH仕様にするため太陽光パネルを搭載した新商品「CLT DK-ZEH」を2024年10月から販売開始し、同社のCLT使用量を2028年までに現在の8倍とする目標を策定したと発表した。
配布資料によると、記者説明会に臨んだ日本CLT協会業務推進部・小玉陽史氏は、なぜCLTが話題になるかについて、国内森林資源は積極活用する時代に突入しており、2050年カーボンニュートラルに向けて世界各国が走り出していることなどを指摘。「(同工法の採用を考えている顧客が)特に知りたいこと」として、コスト的には54㎡のヴィラ型宿泊施設を例にとり、木造軸組工法+CLT屋根の坪単価は134万円であるのに対し、木造在来工法は136万円、S造は158万円であることを紹介。このほか、環境性能が優れ、国の支援策、助成制度があることなどを上げた模様だ。
また、同社技術開発部次長・岡本修司氏は、同社のCLTの取り組みとして、2019年9月、国内初のCLT賃貸住宅商品「Forterb(フォルタープ)」を開発、その後、2020年には日本最大級のCLT大屋根の未来展示場「ROOFLAG」をオーブンし、2023年にはLCCM認定を取得したCLT工法による戸建て賃貸住宅の建設、2024年には「ForterbⅢ」の販売を開始したことなどを話したと思われる。
CLT材(スギ)
◇ ◆ ◇
どうして上段で「配布資料によると」「模様だ」「思われる」などと書いたか。理由を説明しよう。実は、記者が説明会場となっていた経団連会館に着いたのは10時30分。開始まで30分あるので、カフェで煙草を吸って5分前に会場に向かったところ、途中で同業の記者の方から「今終わったよ」と告げられた。開始は11時ではなく、10時だったのを確認しなかった記者がばかだった。
お詫びをするため会場に着いたら、広報担当の方が同社技術開発部CLT開発課課長・末廣英章氏を紹介してくれた。木造ファンの記者が一番聞きたかったのは、CLTと親和性があるはずの2×4のほかに、在来工法や鉄、コンクリなどとの混構造によるハイブリッド建築物についてだった。
なぜかといえば、AQ Groupは今春、純木造8階建て新社屋を完成させたが、建設に当たっては特殊金物などを使わず、プレカット工場で製材・加工され、普及している一般流通材をモジュール化、グリット化させて完成させたからで、坪単価も145万円で収めたからだ。
この点について、末廣氏は「当社の賃貸住宅の8割は2×4なのでCLTとの親和性は高い。在来工法とは床など水平方向での組み合わせは可能だが、柱、壁などは難しい。しかし、岡山県では水回りを在来工法にしてCLTを採用した事例がある。当社も開発を進めたい」と語った。ぜひとも在来工法とCLT工法の連携を進めていただきたい。
ハイブリッドについて。記者は、建築物に限らず森羅万象、すべての事象を測る物差しは〝美しいかそうでないか〟〝本物か偽物か〟-ただそれだけだ。絶対的な美など存在しないし、本物か偽物かも見方にもよるので怪しいものだが、誰が何と言ったって、「木」は美しい。同社の「ROOFLAG」もそうだし、直近では隈研吾氏の作品「日本アロマ環境協会(AEAJ)3階グリーンテラス」も、日建設計が設計・監理を担当した「木材会館」も最高に素晴らしい。
CLT協会もすべての「木」にかかわる関係者にお願いしたいのは、木の環境性能やコストだけでなく、「木」が人にもたらす視覚・嗅覚・触覚などの効果を可視化・数値化していただきたいということだ。AIを活用すれば瞬時にはじき出せるのではないか。そうなれば、毎度毎度、他の工法と比べてコストが高いとか低いとかなどの論議は吹っ飛ぶはずだ。
コンクリファンにも元気づけの一言。今から14年昔だ。長谷工コーポレーションの日本初の長期優良住宅認定マンション「ブランシエラ浦和」のネイキッドルーム(技術展示)記者発表会が行われたのだが、「打放しコンクリートに記者の目は吸い寄せられた。思わず触ってみた。ツルツルだった。ひび割れもムラも気泡痕も砂利のザラザラ感など全くなかった。特殊な型枠を用い、この日のために表面を研磨したのだろうと思った。
この疑問を同社技術推進部門長期住宅企画推進室チーフスタッフ・小林仁司氏にストレートにぶつけた。そうではなかった。広報IR担当執行役員の岡田裕氏は『当社の技術担当スタッフが〝ほおずりをしたいぐらい〟と語ったぐらいで、私も驚いている。鏡のように蛍光灯の光が反射しているでしょう』と語った」と記事にした。コンクリも負けるな。
久慈東高と菊池農業高のプレゼンに感動全国5,499校が参加「みらい甲子園」林野庁(2024/10/10)
坂本氏の遺志継ぎ隈氏代表のmore treesと日本一人口が少ない野迫川村森づくり協定(2024/10/6)
「木は熟した」街並みを木造化するビルダー組織化へAQ Group新社屋は坪145万円(2024/4/22)
セーフティネット登録住宅90万戸の96%は1社に集中氷解した疑念と深まった謎(2024/3/28)
「頬擦りしたくなる」打放しコンクリート 長谷工の「ブランシエラ浦和」ネイキッドルーム(2010/3/15)
「価格に見合う価値あり」 長谷工の「ブランシエラ浦和」(2010/1/15)
AQ Group 木造耐力壁の強さを競うカベワングランプリ 3年連続トーナメント優勝
「AQチーム匠」(前列左から3人目が稲山氏、その左がAQ Group宮沢社長)
AQ Groupは10月10日、木造耐力壁の強さを競う第7回「カベワングランプリ」でAQ Groupが主体のチーム「AQチーム匠」が3年連続トーナメント優勝を達成したと発表した。
カベワングランプリは、20年の歴史を持つ「木造耐力壁ジャパンカップ」を前身とするイベントで、今回の第7回を含めると通算27度目となる。大会発起人は東大名誉教授・稲山正弘氏。AQ Groupは20年以上前からスポンサーとしても参加しており、大会を支えてきた。
AQチーム匠は、稲山氏とタッグを組み、複数回のトーナメント優勝や総合優勝を獲得しており、昨年は大会史上最大耐力となる71.2kNを記録している。同社の準木造8階建て本社ビルの技術もカベワンGRが発祥。
今回の大会では、本社ビルにも採用されている「相欠きのジャンヌダイク」で参戦。決勝戦では東京大学木質材料学研究室・網中木材と対決。50kNを超えたあたりでAQチーム匠の耐力壁に亀裂が入ったが、そこから粘りを発揮し53.5kNの段階で相手チームの耐力壁が破損し、大接戦の末の勝利となった。
優勝した「相欠きのジャンヌダイク」壁
売上高、営業利益、営業利益率とも拡大・向上 大和ハウス 事業施設(物流)事業
更科氏
大和ハウス工業は10月10日、2024年度事業施設(物流)事業計画説明会を開催し、同社執行役員建築事業本部長・更科雅俊氏が事業施設市場を取り巻く環境、同社の事業展開、今後の重点取り組みテーマなどについて説明した。記者団の質問にも丁寧に答えた。
同社が配布した資料によると、2024年度の民間非住宅建設投資額は17兆8,500億円(前年度比4.4%増)の見込みで、うち民間非住宅建築投資額は10兆6,300億円(同4.0%増)となっている。製造業の国内回帰・国産回帰への動きと半導体関連企業の積極的な設備投資や、人流拡大を受けて、都心再開発事業やホテル業界など設備投資の回復が見込まれるためとしている。一方で、資材価格、原油価格、労務コストの上昇はしばらくの間続くと予想している。
同社の事業施設事業の売上高は2023年度実績が12,944億円(うち海外870億円)、2024年度計画が13,400億円(うち海外881億円)、2026年度計画が13,000億円(うち海外900億円)、営業利益は2023年度が1,232億円(うち海外23億円)、2024年度計画が1,415億円(うち海外32億円)、2026年度計画が1,600億円(うち海外90億円)、営業利益率は2023年度実績が9.5%、2024年度計画が10.6%、2026年度計画が12.3%となっている。
重点取り組みテーマとして、更科氏は「物流2024年問題」への対応として映像とAIを活用した荷待ち・荷役時間を可視化するシステムの実証実験、3温度帯(常温・冷蔵・冷凍)に対応可能な物流施設の展開などを挙げ、具体的取り組みとして、従業員の働きやすさや自然環境にも配慮したタカギの新本社工場、「ZEB」と「水素活用」でCO2フリー水素供給システムを目指したジャパンガスの工場、大和ハウスグループの総合力を活かした半導体関連企業へのBIZ Livness提案、商業施設とオフィスによる複合テナントビル「Dタワー富山」などを紹介した。
海外事業では、米国テキサス州で敷地面積約37.1ha、延床面積約12.5haの平屋建て施設を2025年8月に完成させる予定と話した。
また、地域活性化の事業として、福島県双葉郡双葉町で敷地面積約23,000㎡、S造(一部木造)5階建て延床面積約7,000㎡のカンファレンスホテル客室100室、カンファレンスルーム4室を備えた施設を2026年1月に完成させるほか、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)では電気事業連合会:「電力館 可能性のタマゴたち」、NPO法人ゼリ・ジャパン:「BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャンドーム)」、シグネクチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」の3つの施設を建設する。
◇ ◆ ◇
物流施設の取材・見学会でいつも思うのは「嫌悪施設」のことだ。記者はこれまでマンションや分譲戸建てを中心に取材してきたので、嫌悪施設の有無には注意を払ってきた。売れ行きを左右するからだ。工業系用途の物件が致命的な打撃を受けたのもたくさん取材している。物流施設も嫌悪施設の一つだとずっと思っていた。
ところが、2018年5月、当時の三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(現、顧問)は大勢の記者団の前で「もはや物流施設は嫌悪施設ではない」と語った。その後、この言葉は頭の中にこびりついている。事業規模が10兆円を超え(うち物流の比率はわからないが)、エッセンシャルな事業である物流施設は嫌悪施設なのかどうかということだ。
しかし、その後、事業者は事業拡大、BCP対策、街づくりなどについては力説するのに、嫌悪施設について言及することはなく、記者団からの質問もほとんどない。
そこで、環境対策について更科氏に聞いた。更科氏は、「敷地内の緑化率については都市緑地法などによって規定されており、自治体の規制は20%とか25%など地域によりまちまちだが、当社としても独自の環境対策には力を入れている」と語った。今度、物流施設を「嫌悪施設」と定めている不動産流通促進センターに取材してみよう。
都内最大級の物流施設 23区希少の工専立地三井不・日鉄興和不「東京板橋」竣工(2024/10/3)
久慈東高と菊池農業高のプレゼンに感動 全国5,499校が参加「みらい甲子園」林野庁
「森林×ACT(アクト)チャレンジ2024」の表彰式(木材会館で)
林野庁は10月9日、「森林×ACT(アクト)チャレンジ2024」の表彰式を新木場・木材会館で行い、合わせて森林づくり全国推進会議が主催する第3回森林づくり全国推進会議とシンポジウムを開催した。
「森林×ACT(アクト)チャレンジ」は、森林整備への支援などを通じてカーボンニュートラルの実現や生物多様性保全に貢献する企業・団体の取り組みを募集し、顕彰するもので、グランプリ(農林水産大臣賞)には、地元の行政や森林組合と連携して、地域住も民を対象とした植樹や自然観察会などの活動を行っている特定非営利活動法人ちば森づくりの会が選ばれた。
グランプリを受賞した同会理事長・林隆通氏は、「とても光栄。私たち都市住民の活動が、全国で3,300ともいわれる同じような活動をされている団体にも喜んでいただくことになる」などと喜びを語った。優秀賞(林野庁長官賞)は次の通り。
[森林づくり部門]
・大林組
・鹿島建設
・サンデン
・サントリーホールディングス
・四国苗販売
・生活協同組合コープしが
・ツムラ
・野村不動産ホールディングス
[J-クレジット部門](共同応募)
・滋賀銀行/金勝生産森林組合
・ダンロップフェニックストーナメント大会事務局/宮崎県/ExRoad
・ヤベホーム/対馬市(長崎県)
不動産業界で優秀賞を受賞した野村不動産ホールディングス執行役員・田中克弥氏は「2年前に奥多摩町で『森を、つなぐ』プロジェクトを始動し、昨年に施業開始した。植林活動だけではなく、森林の生態系サービスを重視し、今後は社員参加型の取り組みへと発展させていく」と語った。
受賞企業・団体には背丈ほどある木製盾が贈呈された。グランプリは石川県産材の無垢のスギノキ、優秀賞は能登半島のヒバ材で作られたものだった。
左から農林水産副大臣・武村展英氏、林氏、中村氏
林野庁長官・青山豊久氏(左)と田中氏
木材会館
「SDGs QUESTみらい甲子園」2024年は40都道府県5,499校が対象
左から菊池農業高校の渡辺悠慎さん(17)、村上遥さん(16)、久慈東高校の大道慶三さん(17)、川向駿さん(16)
取材の主な目的は2つあった。一つは、美しい「木材会館」をもう一度見ることで、もう一つは、「SDGs QUESTみらい甲子園」で優秀賞として表彰された岩手県立久慈東高校と熊本県立菊池農業高校の生徒さんがどのようなアイデアを発表するのかについてだった。
「木材会館」はやはり美しいことが確認できた。両校のそれぞれ2人の生徒さんのプレゼンテーションは最高に素晴らしく、うれしくなって舞い上がってしまった。予想以上の成果が得られた。
何が素晴らしいか。自分の住む街の課題は、高校生なら調べれば分かるだろうが、その課題にどのようにして向き合い解決するかを見つけ出すのは容易ではなく、実践し検証するところまでこぎつけるのは至難の業のはずだが、両高の生徒さんが見事にやってのけたことだ。
「SDGs QUESTみらい甲子園」は、高校生が持続可能な地球の未来を考え行動するために、SDGsを探求し、社会課題解決に向けたアイデアを募集し、表彰する産官民協働の取り組みで、2019年の第1回では61校214チーム、814人か参加した。2023年度は319校1,753チーム、7,255人へ、2024年の対象高校は40都道府県5,499校に達している。
久慈東高校の「environment」チームは、〝日本一の白樺美林〟を誇る久慈市の白樺林が管理者の高齢化や後継者不足などから倒木などによる景観が悪化しているのに着目し、市や地元企業、農林業者などを巻き込み、白樺モルックを製作・開発し、白樺の樹皮などで抽出したエキスを漬物に混ぜる商品を開発中という。
菊池農業高校のある菊池市は熊本県北東端に位置し、暴れ川と呼ばれる筑後川とともに度々水害を引き起こしてきた菊池川が流れていることで知られる。「菊池農業高校SDGsプロジェクト班」は、荒廃した竹林の再生・活用に取り組み、竹チップで家庭用の生ごみ量を半減させる段ボールコンポストを開発し、バイオ竹炭の製造にチャレンジしているという。
両校の生徒さんのプレゼンが始まると、関係者など百数十人が集まっていた会場は水を打ったように静まり返り、終わったときは大きな拍手が巻き起こった。
呑み助の記者は発表を聞きながら、白樺の樽をつくって日本酒にしたらどうかをずっと考えていた。日本酒だけでなく味噌も醤油もウイスキーもワインもみんな木の香りがまじりあっておいしくなる(樹木の香りを混入したクラフトビールなどは商品化されている)。タケノコは酒のつまみに最高で、竹炭の効用は言うまでもない。竹そのものも建築材としてもっと利用されていい。
先ほども書いたように、グランプリを獲得した両校以外に2024年は40都道府県5,499校が参加するというではないか。みんな優れたアイデアばかりだと思う。
この前取材したmore treesと、日本一人口の少ない奈良県野迫川村(のせがわむら)との「森林保全および地域活性化に関する連携協定」では、more treesの代表・隈研吾氏は「一番小さな村で活動することが、森林・林業にかかわる方に希望と勇気を与えるきっかけになることを願っている」とメッセージを寄せた。「みらい甲子園」もまた全国の森林・林業関係者に希望と勇気を与えるに違いない。
両校の生徒さんだけでなく、すべての「みらい甲子園」にチャレンジする高校生の皆さん、さらにはスタートアップを目指す人に一つお願いがある。話法を学んでほしいということだ。ぜひ、丸谷才一(1925~2012年)の「挨拶はたいへん」(朝日文庫)を読んでいただきたい(ほかの文庫本でも挨拶について触れているが、どれだったか思い出せない)。
作家としての評価はともかく、丸谷才一ほどの博学者はいないと思う。挨拶もまたピカ一だ。記者は四十数年の記者生活の中で、数千人の方が話すのを聞いた。しかし、感動を覚えたスピーチをした人は数えるくらいしかない。その方たちに共通するのは、原稿などを読む人はいないということだ。聴衆・参加者に向かって自分の言葉で話した。
受賞盾
グランプリ賞の受賞盾
TNFD提言に基づく自然に対する依存・インパクト分析結果公表野村不HD(2024/10/7)
坂本氏の遺志継ぎ隈氏代表のmore treesと日本一人口が少ない野迫川村森づくり協定(2024/10/6)
「森を、つなぐ」東京プロジェクト始動野村不HD 奥多摩町と協定(2022/11/28)
木造とコンクリートの見事な調和を図った「木材会館」(2012/10/2)
SNSアカウント持つ人79% 「新聞をよく読む人」59% SMPPレポート
スマートニュースメディア研究所からメールが届いた。「第3回スマートニュース・メディア価値観全国調査(SMPP調査レポート③)」で、わが国の「ニュース回避」傾向のある人は8%で、ニュース回避傾向がある人が最も多かったのは「20代以下・男性」(16%)、「30代・女性」(15%)、「20代以下・女性」(15%)だった。逆にニュース回避傾向が最も少なかったのは「60代・男性」(79%)、「70代以上・女性」(77%)、「60代・女性」(76%)というものだ。
NHKのニュースを「よく見る」と回答した人の割合は、ニュース回避傾向がある人で28%、全体で46%だった。民放のニュースを「よく見る」と回答した人の割合は、ニュース回避傾向がある人で36%、全体で59%だった。一方、新聞を「よく読む」と答えた人は、ニュース回避傾向がある人で41%、全体で59%となった。
また、「マスメディアを信頼する」(とても信頼している、まあ信頼している)と答えた人の割合は、ニュース回避傾向がない人では74%だった一方、ニュース回避傾向がある人では41%にとどまった。マスメディアを「まったく信頼していない」とする人の割合は、回避傾向がある人では19%、回避傾向がない人では3%と大きく差が開いた。
調査対象は8歳-79歳の有権者で、郵送による回収数1,901(回収率42.6%)とオンライン(Web調査)による回収数2,000(同100%)。
◇ ◆ ◇
「SMPP調査レポート②」によると、SNSはFacebook、Twitter(現在はX)、LINE、Instagram、YouTube、TikTokなどがあり、今や世界で「知らない人はいない」サービスへと成長しており、日本における「ソーシャルメディア」利用者数は2022年時点で1億200万人とされている(令和5年度版・総務省情報通信白書=ソーシャルメディアはSNSのほかに口コミサイト、掲示板サービスなども含むより広い概念を指す)。
全世代の79%がSNSアカウントを1つは所持しており、45%がアカウントを複数所持、25%が「本名」「匿名」アカウントを両方持って使い分けをしているという。70代以上の全ての年代で、「SNSのアカウントを持っている」(79%)が「SNSのアカウントは1つも持っていない」(19%)を大幅に上回っている。
◇ ◆ ◇
上記レポートで「新聞をよく読む人」が全体で59%、回避傾向がある人の「マスメディアをまったく信頼していない」割合が19%に達しているのをどう理解すれはいいか、SNSを利用したことがない19%のうちの一人である記者はよくわからないのだが、新聞も含めマスメディアをまったく信頼していない人の割合がこれほど高いことについては、記者も含めて考えないといけない。
いつも思うのだが、記者発表会・見学会では、メモを取らない人が多すぎるし(メモを取らなくても頭に入る人は100人に1人くらいいるかもしれない。小生は耳が遠くなり、書きとれないのでメモを取らない人と結果として同じだが)、取材機会があるのにコピペ記事しか報じない大新聞、実物を見てもリリースしか書かない、自分が何を見ているのかわからない(その人の目を見るとよくわかる)…そんなメディアが多すぎる。〝講釈師見てきたようなうそを言う〟と五十歩百歩だ。
そしてまた、生成AIが普及したためか、最近は主催者もあらかじめ用意された文章を読むだけで、スクリーンに誰も読めないような小さな文字・図表を映し出し、目を伏せっぱなしの人が多すぎる。
参考になるかどうか。カルヴィーノの「アメリカ講義-新たな千年紀のための六つのメモ-」(岩波文庫、2011年第一刷、訳者:米川良夫・和田忠彦)から一部を以下に紹介する。
「私には言葉というものがつねに曖昧で、出まかせに、ぞんざいに用いられているというよう思われ、そのために免(ゆる)すことのできないほどの不愉快さを感じているのです…何よりも不愉快なのは自分がしゃべっているときに感じているものなのですから…」(110ページ)
「ときとして私には、何かしら疫病のようなものが人類をもっともよく特徴づけている能力、すなわち言葉を用いる能力を駄目にしているのではないかと思われることがあります。言葉の伝染病といったものでして、その徴候は識別的な機能や端的さの喪失、あるいはまた表現をおしなべてもっとも一般的な、没個性的で、抽象的な決まり文句に均一化させてしまい、その意味を希薄にして、語と語が新しい状況に出会うときに発する火花をいっさい消し去ってしまおうとする一種の無意識的・機械的な振る舞いとして表れています…私にとって大事なことは回復の可能性なのです。文学が(そして恐らくは文学だけが)、言葉の病気の蔓延を阻止できる抗体を生み出すことが可能なのです」(111~112ページ)
第六感も必要では 映像と音楽で快適なオフィスブース開発・検証 東京建物
東京建物は10月3日、コクヨ、VIEと共同で、音楽や映像で脳に刺激を提供するソリューションを組み合わせた可動式ブース「VIE POD(ヴィーポッド)」を開発し、同社のオフィスビルなどで商品検証を行うと発表した。
コクヨの既存商品「WORKPOD FLEX」をベースに、VIEが配信する「ニューロミュージック」(脳波への影響が科学的に実証された音楽)と映像コンテンツを取り入れたもの、ブース内でのアプリケーションの使用により、映像と音楽の刺激で「集中力」や「リラクゼーション」といった新しい付加価値を提供する。
開発に至った背景として、従業員の生産性向上は多くの企業が直面している喫緊の課題とし、脳疲労の蓄積やそれに起因する集中力の低下、自律神経の乱れなどの新たな問題も明らかになっていることから、ワーカーのパフォーマンスとウェルビーイングの向上を促進するとしている。
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これは間違いなく大きな効果がある。記者のかつての職場では「第九」が定期的に流されていた。この音楽が流れると「よし、やるぞ」と気合が入り、心を込めた記事を書いたものだ。圧倒的な人気を呼んだ2013年分譲の野村不動産他「Tomihisa Cross」のシアターでは「第九」第4楽章のBGMが流された。それだけ自信があったためだが、「第九」の音楽が流れたシアタターは40年以上の記者生活でここだけしかない。
ただ、同じ音楽がのべつ幕なし流されたら、効果は半減するどころか、マンネリになって逆効果をもたらすと思う。みんなシアターに「第九」を流したら販促効果など全く期待できないだろう。
この点について同社は「Well-being Lab.では、首都圏のビジネスパーソン1万人への調査結果を踏まえ、どのような行動や状況がウェルビーイングの向上に資するのかを分析した20個の『ウェルビーイング向上因子』を特定しています。『ウェルビーイング向上因子』を基に効果的な施策の検討を重ねる」としているので問題はないはずだ。
注文もある。オフィスビルにあふれているフェイクグリーンは一掃し、すべて本物の観葉植物にすべきだと思う。同社は分譲マンションにプロが活けた「生け花」を設置したことがある。大変な人気を呼んだ。
もう一つは、香りだ。アロマは好き嫌いがあるだろうが、気分がよくなるものはあるはずだ。
これで、聴覚、視覚、嗅覚の3つ。五感まであとの味覚、触角も何とかなる。さらに大事なのは第六感だ。ひらめき、インスピレーションを誘発する職場環境が欠かせない。なんでもそうだ。根を詰めて仕事をしても名案は浮かばない。ヒントは〝遊び〟〝リラックス〟〝息抜き〟だ。記者などはほぼ1時間置きに書くのを中断してタバコを吸い、たまには酒を飲み、校閲することにしている。
坪750万円でも好調 「Brillia」最高峰 東建・地所レジ「一番町」 サロンに乃村工藝(2018/4/18)
地揚げから30年坪330万円のマンションに再生「Tomihisa Cross」(2013/9/5)
more trees(代表:隈研吾氏) 日本一人口が少ない野迫川村 森づくり協定
水谷氏(左)と吉井氏(AEAJ 3階グリーンテラスで)
一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)と“日本一人口の少ない秘境”奈良県野迫川村(のせがわむら)は10月2日、「森林保全および地域活性化に関する連携協定」を神宮前の公益社団法人・日本アロマ環境協会(AEAJ)3階グリーンテラスで締結した。締結式の模様はメディアに公開された。
more treesにとっては国内22か所目(海外2か所)の活動地で、締結式を東京で開催するのは1か所目の高知県梼原町(隈研吾氏の作品で知られる)に次いで2度目。会場となった「グリーンテラス」は隈氏が手掛けた「僕の建築家としての原点となる作品」で、グリーンテラスからは隈氏が小学4年生のときに建築家を目指すきっかけとなった国立代々木競技場が正面に見える。隈氏は30年来の友人だったmore treesの初代代表・坂本龍一氏の死去に伴い昨年6月、遺志を継ぐ形で二代目代表に就任した。締結式では隈氏の手紙が披露された。
締結式の冒頭、more trees事務局長・水谷伸吉氏は、主な活動として①森づくり②国産材利活用③カーボンオフセット④木育などセミナーを挙げ、今後の森づくりでは人工林が皆伐された後に再植林されない林地が3割強あることから、広葉樹に着目し、その地域の特性に合致した樹種の植林に力を入れ、「企業の森」づくりなど、都市と森林・林業を結びつける活動に力を入れていくと語った。
協定締結式に臨んだ吉井善嗣村長は、風景写真(記事参照)をスクリーンに映し出し、 「野迫川村には広葉樹の森がたくさん広がっており、春には薄桃色のヤマプキやミズナラなどの木々や草花が咲き誇り、夏には青々とした木々に包まれ、秋にはカエデなどの黄色や赤の紅葉が広がります。そして、冬を迎えると、深々と雪が降り銀世界を描きます。四季折々の自然のリズムを楽しむことができます」と切り出し、村の概要について標高400~1,300m(平均700m)、総面積の97%が森林で、年間平均気温は札幌とほぼ同じ9.2℃、令和2年の国勢調査では人口は357人で、離島を除けば全国最小、年間を通して雲海が発生しやすいことから「天空の國」と呼ばれているなどと説明した。シイタケ、マツタケ、アマゴ(養殖)、凍り豆腐などが特産品だそうだ。
森林・林業については、全国の林業地が抱える共通の課題である従事者の高齢化、担い手不足、急峻な地形、主伐期を迎えながら伐採されない人工林(樹齢約60年のスギ、ヒノキなど村有林は600ha)、放置間伐材などの課題解決に向けて、針葉樹の皆伐後の混交林化など森林の基盤整備、林業構造の強化などの川上と、木材利用・加工の拡大、森林サービスの顕在化・発展などの川中・川下の取り組みに力を入れていくと話した。
隈氏は締結式に欠席したが、「僕にとってグリーンテラスは思い出深い場所です。1964年、小学4年生のとき、代々木体育館を見て建築家を目指そうと思った。グリーンテラスは建築家としての原点となる真向かいに建て、テラスから代々木体育館が見える。今回、ここで協定式が行われるのは二重三重の喜び。more treesの代表だった坂本さんとは30年来の友人。森づくりには様々な困難、共通の課題を抱えているが、一番小さな村で活動することが、森林・林業にかかわる方に希望と勇気を与えるきっかけになることを願っている」とメッセージを寄せた。
野迫川村の雲海
野迫川村の紅葉
野迫川村の冬
全面的に国産ヒノキを使い、日本の伝統的な「木組み」の技を最大限に生かしたAEAJ グリーンテラス
グリーンテラスエントランス庇
壁全面にクロマツ材が張られている
隈氏直筆のmore treesつみき(野迫川村に贈呈される)
3階グリーンテラス
木漏れ日をイメージした3階グリーンテラスの天井
日本アロマ環境協会(AEAJ)1階
日本アロマ環境協会(AEAJ)1階
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故・坂本龍一氏がmore treesの代表を務めていたので動向には注目していたが、直接取材するのは初めてだった。隈先生の作品が見られるし、てっきり隈先生に会えると思い込み、事前の下調べなど全くしなかった。
それでも収穫はたくさんあった。グリーンテラスは写真で紹介した。美しい。見事というほかない。野迫川村の概要は上段で紹介したが、財政状況を調べたら、歳入は15.3億円で、地方税比率は4.4%、地方交付税比率は68%、経常支出比率は88.5%、財政力指数は0.13%で、高齢化率は50%を突破しており、林業従事者は30人くらいだ。
村長さんや隈さんのメッセージを聞き、野迫川村に隣接する十津川村の復興再生プロジェクト「高森のいえ」の見学を兼ねて訪れてみようという気持ちになった。野迫川村は、新幹線新大阪駅から電車、バスを乗り継いで約3時間だから、東京からだと6時間、宿泊費を含めると往復で10万円くらいか。
クマもそうだが、怖いのはヤマヒルだ。村長さんに尋ねたら、「ヤマヒルはいる」と答えただけで、〝それがどうした〟という顔をしていた(水谷さんが「刺されたらタバコの火を近づけるとコロリと外れる」と助け船を出してくれた)。
大好物のアユとイワナの骨酒に聞いたら、アユは標高が高いので棲息しておらず、村に唯一あるホテルでは骨酒の提供はないが、代わりにアマゴの養殖がさかんなので、自分で作れば飲めるとのことだった。
それにしても、この日のメディアの参加者は記者を含めて数人だった。坂本さんの都知事宛ての手紙にはハゲタカのように群がったのに、more treesの本来の活動である森づくりのイベントにはどうして集まらないのか。これも危機に瀕する森林・林業の実態の反映か。山がダメになり、田んぼが少なくなり、川の水量が激減し、アユもウナギもカニも食べられなくなった。磯物も壊滅状態だ。そのうち近海魚は絶滅するのではないか。
まだ言いたい。国土強靭化の肝は森林・林業の再生だと思うが、来年度の林野庁の予算要求額は3,478億円(前年度比117.8%)だ。一方、防衛省の予算要求額は過去最大の8兆5,389億円(同110.5%)だ。10年前の2017年度の予算額は林野庁が2,903億円で、防衛省が1兆8,260億円だった。伸び率は林野庁が19.8%増、防衛省が2.1倍増だ。同じ国を守り、人を守り育てるための予算(自衛隊は合法的に人を殺すことが許される場合がありえるが)なのなぜこれほど差が出るのか。釣り合わないではないか。自然災害の激甚化と森林・林業の衰退とは無関係ではないはずだ。
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吉井村長と水谷事務局長はヤマヒルをご存じなのは当然だか、他の関係者やメディアの方は知らなそうな人ばかりだった。いかに恐ろしいか、田舎に移住するのにどのような覚悟が必要か。かつて書いた記事を紹介するので読んでいただきたい。
「それより怖いのはヤマヒルだ。尺取虫のようにどこからともなく忍び寄り、やわらかい皮膚に食らいつく。血を吸われても気がつかないから始末が悪い。無理に引っぱがすと、皮膚ごとはがれ、なかなか血が止まらない。山ヒルは山道が獣道に変わって出現するようになった。全国どこでもそうだという。
日本のユマヒルはまだたいしたことがないが、古山高麗雄が戦記小説に書いているように、中国とビルマの国境あたりのジャングルのヒルは強暴だ。人間を察知すると、葉裏に隠れている無数のヒルが「ザザザザッ」と葉を揺るがし、頭の上から襲いかかる。そして、知らないうちに陰部などに食らいつき真っ赤に膨れ上がる。(チンポコが2つになる記述もあった)無理に引き剥がすと出血多量で卒倒するのだという。仕方がないから、食らいつかれたまま下半身をさらし、石などでつぶすしかないのだという。
田舎に帰省するとこの小説が頭に浮かび、田んぼのあぜ道すら怖くなる」
more trees 隈研吾氏とコラボした「つみき」マクアケで支援者募集(2015/9/24)
三菱地所レジデンス「西新宿タワー60」第1回コミュニティ支援イベント公開(2015/1/21)
セカンドライフは田舎暮らしより都会 三井不販のアンケート(2011/9/8)
東海・富山発(初)?! 「急変の早期発見」「軽症での早期発見」社会実装へ
トータルフューチャーヘルスケア共同プレス発表会(帝国ホテルで)
「急変の早期発見」「軽症での早期発見」社会実装へ-YKK AP、大東建託、NTT ドコモ・ベンチャーズ、中部電力の事業パートナー4社は10月4日、プレス発表会を開催し、イーソリューションズ子会社のトータルフューチャーヘルスケア(TFH)への出資を通じ、生活空間で発生する転倒などの急変や、認知症などの疾患リスクの早期発見モデルの社会実装に取り組む業界横断のプラットフォームを発足すると発表した。プレス発表会にはメディア約65人、関係者約50人が参加した。
プラットフォームを立ち上げたのは、転倒は、つまずきによる転倒だけでなく、脳卒中や心筋梗塞などの疾患起因による意識障害や、認知症やフレイルなどの心身の変化の兆候としても現れ、多くが生活空間で発生しており、寝たきり状態になるケースも多いことから、疾患リスクを早期発見できれば、医療費・介護費などの社会コストの削減に寄与できる可能性があるとしている。
早期発見モデルは、世界最先端技術を有するVayyar Imaging Ltd.(Vayyar)、Binah.ai Ltd(Binah)、PST(PST)ら技術パートナーと提携して、優先的な実施権を持つTFHが開発する。技術パートナーは提携協議を進めている3社も含め今後も提携企業を増やしていく計画。実証協力機関は慶應義塾大学医学部。
佐々木氏
主催者を代表してイーソリューションズ代表取締役社長・佐々木経世氏は、家で起きる転倒事故(年間743万件、死亡者数19万人)が多い現状や、認知症(潜在患者数1,002万人)、糖尿病(同2,469万人)、高血圧(同4,140万人)の受診率はそれぞれ12%、14%、43%にとどまっている深刻な状況を紹介し、「心疾患、脳血管、高血圧、糖尿病など8大疾患を早期発見すれば、医療費、介護費などの社会コスト(104.6兆円)は最大で13兆円削減できると予測されている。このような心強いパートナーに恵まれ、日本の未来のために一緒に取り組めることにわくわくしている」とあいさつした。
魚津氏
事業パートナーで、各企業との連携を促進する商社的な役割を担うYKK AP代表取締役社長・魚津彰氏は、同社の樹脂サッシ出荷量は12年間で5倍に拡大したことを紹介し、今回の事業では「2025年に実証実験のため社員寮を建設し、TFHなどと共同研究し、新たな商品開発につなげる」と語った。
竹内氏
大東建託代表取締役社長執行役員CEO・竹内啓氏は、2024年度を初年度とする中期経営計画で「託すをつなぎ、未来をひらく。」をパーパスに掲げたことを紹介し、「当社らしい街づくりを実践する『DKミライサークル』では、会員130万人のアプリ『ruum』と連携させて、賃貸住宅居住者225万人、介護関連施設179施設での実証実験と共同研究を進め、課題解決を目指す」と話した。
前田氏
1億人超の利用者がいるNTT ドコモ・ベンチャーズ代表取締役社長・前田義晃氏は「今回の業界横断の事業では通信環境整備を支援し、加えて、ドコモのヘルスケア基盤と『Well-being 推定AI』を活用し、早期発見プラットフォームと連携することで疾病リスクの早期発見に貢献していく。医療・ヘルスケア分野のデジタルによる改革は不可欠」と述べた。
林氏
中部電力代表取締役社長・林欣吾氏は、電力スマートメーターで計測した電力使用量をAIに分析し、フレイルを検知する、自治体向けサービスを開始していることを紹介し、「当社の電力解析技術とTFHの技術を掛け合わせ、フレイル以外の疾患対策を共同で開発する」と語った。
前田氏
来賓としてあいさつしたエグゼクティブアドバイザーの国際協力銀行取締役会長・前田匡史氏は、「日本の課題発見力は高いが、それを解決するビジネスモデルを構築する能力が低い。佐々木さんと出会ったのは18年前。佐々木さんは天才です。とにかく巻き込む力がある。業界の枠を超えて企業を結び付けていく拡張性に富んでいる。これが天才たるゆえんです。今回の事業は日本発の新しいビジネスとして世界に展開できる。益々の発展を確信しております。祈っているのではありません」と語った。
新井氏
また、順天堂大学理事長補佐医学部脳神経外科学名誉教授・新井一氏は「予防医学には、病気を発症させない健康増進など一次予防、いち早く病気を発見する二次予防、退院後の社会復帰を促す三次予防があります。私が注目しているのは今回の事業は二次予防に革命をもたらすのではないかということです」と絶賛した。
質疑応答に答える各氏
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プレス発表会の案内が届いたとき、素晴らしい取り組みだと思った。と同時に不思議に思ったことが一つある。主催者企業4社のうち東海・北陸が発祥か本社を構える企業はYKK AP、大東建託、中部電力の3社もあることだった。
この日、配布された資料には、イーソリューションズ社長の佐々木氏は富山県黒部市出身、YKK AP社長の魚津社長は富山県出身、大東建託の竹内社長は富山県砺波市出身、中部電力の林社長は三重県出身とあるではないか。出身は不明だが、エグゼクティブアドバイザーの富山大学学長の齋藤滋氏も登壇し、あいさつした。
まだある。建築家・隈研吾氏もエグゼクティブアドバイザーとしてビデオメッセージを寄せたが、記者団からの質問に、佐々木氏は「隈さんとは40年来の友人」と答えた。富山県には隈研吾氏の作品「Toyamaキラリ」と日本酒ブランド「IWA」の酒蔵がある。
これで知恵の輪が解けた。これは東海・北陸発(初)であり、さらに言えば富山発(初)のプロジェクトだ。佐々木姓は東北に多いが、由来は滋賀県だといわれている。三重県出身の記者の母親も佐々木姓だった。地方閥があるかどうかは知らないが、富山の薬売り商法は生きている。先用後利だ。きっと花が咲く。数兆円のマーケットになるような気がする。がんばれ富山!佐々木さん!
一つ追加。写真はすべて主催者のオフィシャル画像。写真家のクレジットは不要のようだが、最高に素晴らしい。他社も見習ってほしい。いつも送られてくる人物の写真は遠景の米粒ばかり。拡大に耐えられない。
プレス発表会場(帝国ホテルで)