〝聖地〟新秩父宮ラグビー場着工イベント 何も伝えぬメディア

外観パース

左から植田氏、押味氏、中島氏、小澤氏(明治神宮外苑 室内球技場で)

植樹セレモニー(前列左から伊藤忠商事代表取締役社長CEO・石井敬太氏、日本スポーツ振興センター理事長・芦立訓氏、明治神宮外苑苑長・石井拓蔵氏、植田氏、後列左から青山高校ラグビー部代表、東芝ブレイブルーパス東京・三上正貴氏、田中氏、中島氏、鹿島建設取締役副社長執行役員・石川洋氏、小澤氏
鹿島建設を代表企業として三井不動産、東京建物、東京ドームの4社が出資企業として設立した秩父宮ラグビー場は2月12日、「新秩父宮ラグビー場(仮称)整備・運営等事業」着工記者説明会と「令和の献木プログラム」植樹セレモニーを行った。三部構成で、第一部では鹿島建設代表取締役会長兼社長・押味至一氏、三井不動産代表取締役社長・植田俊氏、東京建物代表取締役社長執行役員・小澤克人氏、三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役社長グループCEO・中島達氏らトップがそれぞれ挨拶し、第二部では元ラグビー日本代表・田中史朗氏らがトークセッションを行い。第三部では青山高校ラグビー部代表も加わってユズリハの植樹セレモニーを建設地で行った。約70人のメディアが集まった。
施設は、東京都新宿区霞ヶ丘町に位置。敷地面積は約34,437㎡(第Ⅱ期整備後は約43,476㎡)、延床面積は約72,957㎡。高さ46.25m(地上8階・地下1階)。設計は鹿島建設・松田平田設計設計共同企業体、設計協力は内藤廣建築設計事務所、POPULOUS。施工は鹿島建設。収容人数はラグビー利用時約1.5 万人、イベント開催時最大約2.5万人の、わが国初の屋内全天候型多目的ラグビー場。
「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)に基づき行われ、事業者は施設等の設計、建設を行った後、独立行政法人日本スポーツ振興センターに施設などの所有権を移転すると同時に施設の公共施設等運営権を取得し、30年間の運営・維持管理を行う。トップパートナーには三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が選ばれた。開業は2030年。
記者説明会の冒頭にあいさつした三井不・植田氏は「当社は2024年に策定した長期経営方針『&INNOVASION 2030』で事業戦略の一つとしてスポーツ・エンターテイメントの力を活用したリアルの体験価値を最大化する街づくりを進めている。神宮外苑再開発に当たっては、既存の樹木1,904本を完成後は2,304本へ、緑の割合は約25%から約30%に増やす。象徴である4列のイチョウ並木の保全には万全を期す。今回のプロジェクトは、老朽化したラグビーの〝聖地〟である秩父宮ラグビーの想いを継承する。次の100年に向かって大切なバトンを渡す第一歩」と語った。
続いて登壇した鹿島・押味氏は「この事業の設計、施工から運営・維持管理に携われることになったのは光栄の至り。ユニバーサルデザインや環境への配慮など、最高の愛と感動をお届けするため、総力を結集して取り組む」と決意を語った。
東京建物・小澤氏は「当社は中期経営計画でスポーツ・エンターテイメントを重点戦略の一つに掲げている。ラグビー場に隣接する都立公園初の当社が関わっているPark-PFIを活用した『都立明治公園は』年間300万人の来場者がある。これらともしっかり連携を図っていく」と述べた。
SMBC・中島氏は「当社グループは2023年、個人向け総合金融サービス『Olive』の提供を開始している。今回、トップパートナーに選ばれたのは大変光栄。またとない機会。ラグビー憲章が掲げる『品位・情熱・結束・規律・尊重』の5つのコリアバリューは仕事にも通じる。私自身もラグビー選手としてプレーしたことがあり、高い高揚感を覚えたのが記憶に残っている。2014年からは様々なラグビー大会を支援もしてきた」と喜びを語った。
第二部のトークショーでは、2015年のワールドカップで日本チームが南アフリカを倒し〝ジャイアント・キリング〟と呼ばれたこと(記者も鮮明に覚えている)、身長が166cmしかない田中氏が〝神風〟のお陰でトライし、三上氏が属する東芝チームを破り日本一になったこと、人工芝はすべらないのでスピードが出ること、反則が少なくなること、雷などで中断しないこと、充実した風呂に入れることなどが話しあわれた。人工芝はやけどや身体への負担が大きいのではと思っているが、そんな話は全然出なかった。41歳の田中氏は「わくわくする。私もプレーしたい」(確かにそう話した)と現役復帰を匂わせた(プロ野球の山本昌投手は50歳まで現役、サッカーの三浦知良選手は60歳近いではないか)。
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この日(12日)の記者説明会に参加したメディアは約70人(主催者公表)。凄い数だと思った。〝日々妄想〟は三井不・植田氏の十八番だが、冬季オリンピックの応援と、酒なしでは生きられない記者は〝日々朦朧〟の状態で取材に臨んだ。耳が遠くなったので細大漏らさず記録しようとボイスレコーダーを用意したのだが、電池切れか作動せず、仕方がないので必死でメモした。みんな早口でしゃべるので聞き取れなかった(上段の記事は正確ではないかもしれない)。
質疑応答では10人くらいの方が手を挙げた。最初に指名されたのは、いつもの会見で真っ先に質問し、指名される、いわば〝指定席〟になっている不動産経済研究所の記者の方で、次は日経新聞、その次はフジテレビ、4番目は日経アーキテクチュア。小生も質問することにしていたが、時間切れで指名されることはなかった。聞きたかったのは次の通り。かなり本質を突いているはずだ。
神宮外苑の再開発を可能にしたのは、東京都が平成25年12月に創設した「公園まちづくり制度」で、必須要件である「都市計画決定から概ね50年以上経過し、未供用区域面積が2.0ha以上ある区域」に秩父宮ラグビー場が該当したからだ。同ラグビー場は昭和22年に完成したが、都市計画公園施設からずっと「未供用」となっていた。
ラグビーの「聖地」がどうして完成してからずっと「未供用」とされてきたのか。その創建の歴史からして、一般に開放しないというのは分からないではないが、謎のままだ。再開発反対の論客・石川幹子氏(東京大学名誉教授)が「専門家でもよく分からない迷路のような開発手法」と皮肉ったように、学者先生も分かっていない人がかなりいる。小生は、この謎について各社の代表から率直な感想を聞きたかった。
「未供用」は神宮外苑以外にもかなり存在するはずだ。是非はともかく、今後あちこちでこの制度を活用した再開発案件が浮上すると思う。(記者はRark-PFIは賛成)
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イベントが行われた翌日(13日)、メディアは何を報じるか興味があったので、全国紙5紙(誰がいつからそう呼ぶのか)と東京新聞をチェックした。毎日新聞と産経新聞、東京新聞は1行も報じていなかった。
大きなスペースを割いたのは日経新聞。7段囲み記事で、SMBCがネーミングライツ(命名権)を含むトップパートナー契約を結び、秩父宮ラグビー場の副名称を「SMBCオリーブスクエア」にすることを報じていた。さすがだ。小生はSMBC・中島氏が喜びを語ったとき、命名権はいくらだろうと思った。同紙の報道によると10年間で総額100億円(年間10億円)だそうで、隣接する国立競技場の命名権を取得したMUEGの年間20億円と比較して随分高いような気もする。記者はラグビーはよくわからないのだが、プロ野球の「エスコンフィールド北海道」は年間5億円だそうで、これは球団もエスコンも大成功。わが西武ライオンズの「ベルーナドーム」はさっぱり分からない。
まあ、いずれにしろ、この日経の記事はいろいろ考えさせてくれる。朝日新聞と読売新聞は2段見出し扱いで、朝日は「再開発をめぐっては、樹木の伐採を伴うことに周辺住民らから批判の声があがり…」としてはいるが、双方ともほとんど中身はなし。
事業者3社と伊藤忠商事、SMBCを合わせた5社の直近の売上高合計は約23.7兆円(SMBCは粗利益、神宮外苑の資産も桁違いのはず)だ。この企業のトップが勢揃いしていたのに、オールド・メディアは何も伝えない(囲み取材を受けなかった主催者もどうかと思う)。若い人を中心に新聞を読まなくなったのは当然だ。批判的精神をなくしたメディアに明日はない。〝メディアは死んだ〟といったら失礼か。
言いたくはないが、あえて書く。フジテレビの女性記者の方へ。貴女は、三井不・植田氏に「環境デベロッパーとして…」と質問した。三井不に質問するなら、同社が標榜している〝産業デベロッパー〟を口にすべきだった。「環境」はこのところ積極的にCMなどで「環境全力TOKYU」を謳っている東急不動産HDだ。仕方ない。貴女が〝楽しくなければテレビじゃない〟から脱皮を図ろうとしている同社の先頭に立って活躍されることに期待しよう(以前の産経新聞は不動産担当の専属記者がいた)。
第一部が終わり、第二部が終わり、メディア参加者は半減した。まあ、これまた仕方ない。興味の対象が異なる。小生は、第三部の植樹セレモニーに誰が参加するか、ユズリハは何歳か、青山高校のラグビー部の生徒と会話を交わすことを楽しみにしていた。参加した各社の幹部はみんなスーツ姿(この日はそんなに寒くはなかった)、ユズリハは人間にしたら3~4歳、あと100年は生きられる。ラグビー部員は15人とか。太ももは小生の2倍はあった。素晴らしい!

ラグビー利用時

ラグビータワー

フィールドバー

VIPラウンジ

北側外観

左から田中氏、青山高校ラグビー部代表、三上氏
「誰でもできるラグビー」元日本代表・田中さん三井不第28回 SPORTS ACADEMY(2025/6/28)
「市民と考える、不動産開発と都市の公園緑地の保全」シンポ日本不動産学会(2026/2/2)
〝喬木は風に折らる〟誤解解く取り組みの見える化急げ「神宮外苑地区まちづくり」(2023/10/17)
秩父宮ラグビー場が「未供用」の謎「広場」は都市公園ではない神宮外苑再開発(2023/8/9)
1月の建築物価指数 集合住宅、事務所、工場、木造住宅とも前月比0.3~0.4%上昇
建設物価調査会は2月10日、2026年1月の建設物価建築費指数(東京2015年平均=100)をまとめ発表。工事原価は、集合住宅(鉄筋コンクリート造)は142.9と前月比0.4%上昇(前年同月比5.8%増)、事務所(鉄骨造)は140.5と前月比0.3%上昇(同3.3%増)、工場(鉄骨造)は139.0と前月比0.4%上昇(同3.3%増)、住宅(木造)は149.0と前月比0.4%上昇(同6.1%増)となった。
「樹冠被覆率」の導入に大賛成 SMiLE・増田氏とロッシェル・カップ氏がセミナー
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増田氏(左)とロッシェル・カップ氏(お二人の写真をお願いしたら、秩父宮ラグビー場の前に行われた昨年のデモで撮ったツーとツーショットの写真が送られてきた。素晴らしい写真だ。明後日は新ラグビー場の着工セレモニーが行われる)
長年北米に住み、経営者として国際ビジネスに従事し、その経験をもとに地元杉並区で地域貢献活動を行っている増田義彦氏(SMiLE=Suginami Mirai Life Empowerment=すぎなみの未来を創る会代表)と、神宮外苑再開発に反対するなど精力的に環境保全活動を行っているロッシェル・カップ氏は2月8日、「なぜ世界の都市は『木の量』を競い始めたのか 〜樹冠被覆率が示す都市の本当の実力〜」と題するオンラインセミナーを開催した。世界の都市が重視する指標「樹冠被覆率」を手がかりに、緑が環境・健康・経済に与える影響と、これからの都市のあり方を読み解くのが目的で、百数十人が視聴した模様だ。記者も視聴した。
樹冠被覆率とは、樹木の枝や葉(樹冠)が地上に落とす影の面積比率を示すもので、比率が大きいほど炭素固定、ヒート・アイランド抑制、ウォーカブルな街づくりに貢献するとして、欧米を中心に広がっている概念だが、わが国ではほとんど普及していない。
増田氏はセミナーで、樹冠被覆率は7つの大きな効果-①夏の暑さを和らげてくれる=涼しい街②大雨のとき街を守る=災害に強い街③空気をきれいにする=深呼吸する街④子どもや高齢者も安心=ヒューマンスケールな街⑤心を整えてひらめきを生む=イノベーションが起きる街⑥人が集まる=価値の高い街⑦人と自然が共存する街-があるとし、景観だけでなく健康や経済にも大きな効果をもたらすと説明。
また、増田氏は、東京大学都市・ランドスケープ計画(寺田徹)研究室の白石欣也氏らの論文「東京の都市樹木問題:2013年から2022年にかけて東京で樹木の樹冠被覆率が低下」を引用し、東京23区の樹冠被覆率は2013年の9.2%から2022年は7.3%へ大幅に減少し、杉並区は17.2%から10.4%へ激減したことに大きなショックを受けたと話した。その原因は、民有地のマンション化、狭小敷地化が大きいと語った。自ら住んでいたノースカロライナ州シャーロット市は48%であり、トロントは30%、シンガポールは29%、ロスアンゼルスは21%、パリは26%であることから、東京都23区はいかに〝貧しい〟街であるかを説明した。
一方で増田氏は樹冠被覆率を向上させるデメリットとして①維持管理コスト増②落ち葉対応(広葉樹)③視認性・防犯性④インフラと衝突⑤合意形成の難しさなどを上げ、落ち葉対策では米国ではストリート・スイパーが普及しており、事前に設計管理計画を開示すれば、一気に課題を解決する可能性を秘めていると強調した。
最後に増田氏は、樹冠被覆率を向上させるキーワード「3-30-300ルール」-「3」は窓から3本の樹木が見える、「30」は被覆率30%にする、「300」は300m以内に公園がある-を紹介し、住民も引っ越しの際には、利便性だけでなく樹冠被覆率も選考の一つに加えていただきたいと話した。
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記者は15年前から「街路樹が泣いている」という見出しの記事を書いている。100本くらいあるのではないか。もちろん、景観だけでなく健康や経済に大きな効果をもたらす、グローバルスタンダードになっているという樹冠被覆率の指標を導入することに大賛成だ。
増田氏が住んでいたという、ノースカロライナ州の人口が100万人のシャーロット市の樹冠被覆率が48%だと聞いてびっくりした。マラソン好きの増田氏は、2.1キロもある巨木で溢れ返っている道路を走っていたという。
誰かも質問したが、東京にはそんな道路はあるだろうか。1か所だけあるような気がする。武蔵陵墓地に至る八王子市の都道がそうではないかと調べたら、距離は844mしかなかった。公園の中を走るしかない。駒沢公園にはマラソンコースがある。距離は2キロだ。
記者も若いころ、仲間と一緒に皇居一周のマラソンを週に一度行っていた。街路樹の根上がりには難儀したが、樹そのものはそれほど高くなく、樹冠被覆率にしたら10%あるかないかだろう。5キロを20数分だから速いほうだった。
残念ながら、わが国は樹冠被覆率を導入する気配は見られない。増田氏は「樹木の剪定コストを抑制するため、強剪定することが当たり前になっている」現状を指摘し、ロッシェル・カップ氏は「街路樹はみんな電信柱のようにぶった切られている」と憤っている通りだと思う。
国土交通省は昨年10月、世界の気温上昇を抑えるための植栽や、雨水の有効活用を行い気候変動へ適応策を紹介し、メルボルンでは「2040年までに樹冠被覆率を22%から40%に増加。具体的な取組みとして、年間3000本の植林や公園の拡張等を実施」することを紹介するにとどまっている。AI技術を採用すれば、いかにわが国の都市の緑環境が退行しているかが分かるはずだ。
市民が地道な活動を通じて行政に樹冠被覆率を導入するよう働きかけるほかないと思う。
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ロッシェル・カップ氏は東京都の「みどり率」を〝最低〟と酷評した。これには賛否を保留する。同じような指標として、他の都市が採用している「緑被率」があるが、双方の違いは、緑被率は文字通り公園以外の緑(芝生など)や水面を除外して計算し、「みどり率」は芝生・水面も対象としているので、23区の緑被率は18.2%なのに対し、みどり率は24.0%に上昇する。
記者は芝生や屋上緑化、壁面緑化もヒート・アイランド対策として大きな効果を発揮すると思う。要するに「樹冠被覆率」「緑被率」「みどり率」をすべて分かるようにしたらいいと思う。
もう一つ二つ。わが国にはない「i-Tree(アイツリー)」システムを導入すべきだ。ロシェルさん、米国には(わが国は少ないようだが)研究者はたくさんいる。ぜひ、「i-Tree(アイツリー)」に関するシンポジウムを開いていただきたい。Paak-PFIに記者は賛成なのだが、ロッシェルさんはイギリスではこの手法は破綻したという。この問題で激論が飛び交う公開討論会を行ったら、参加者が殺到するはずだ。
「市民と考える、不動産開発と都市の公園緑地の保全」シンポ日本不動産学会(2026/2/2)
〝やめてくれよ区長さん千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯(2023/12/1)
多摩市の次に好きな草加市だが…街並みは乱杭歯〝美しくない〟と感じる市民6割超(2023/11/23)
マンション価格10年間で5割上昇延床、敷地狭小化も進む東京カンテイ・国のデータ(2020/2/2)
敷地60㎡未満の分譲「狭小住宅」都心部は軒並み50%超最少の練馬は1.9%(2019/8/19)
分譲戸建てから「勝手口」が消えるわが国の文化の崩壊ここにも(2016/10/31)
伊達冠石の採石会社・大蔵山スタジオ 山田政博著「山にいのちを返す」に学ぶ
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OSI研究会勉強会

講演する山田氏
現在の建築のあり方の是非を問う社会文明論

墓石もそうだが、高級マンションやビルディングなどの建材・モニュメントに重宝されている伊達冠石をご存じだろう。記者は、その伊達冠石を産出する宮城県南の丸森町に位置する大蔵山の所有者で採石会社・大蔵山スタジオ(旧・山田石材計画)の山田政博相談役(73)にお会いし、その著書「山にいのちを返す-大蔵山採石場にて-」(石文社、2011年刊)を読む機会に恵まれた。古今東西の浩瀚な文献・書籍を渉猟し、持論を展開する論文はあまたあるが、山田氏の著作はそれだけにとどまらず、「石」の本質に迫り、〝産業廃棄物〟のようにスクラップアンドビルドを繰り返す現代社会の是非を問う社会文明論でもある。自然への畏怖と畏敬の念を忘れず、自ら重機を駆使し、ノミを打ち続ける実践者であるからこそ書ける著作だ。ぜひ皆さんに読んでいただきたい。
山田氏にお会いしたのは先月末、NPO法人OSI研究会(沖縄観光産業研究会・佐藤基之理事長)の勉強会&懇親会で、山田氏は採石により荒廃した大蔵山の修復・再生事業に取り組んできた経緯などについて講演した。講演は画像を紹介しながら説明するのに多くを費やされたため、記事化するのは難しいと判断し、著作を通じて山田氏を紹介することにした。
大蔵山スタジオは、東北新幹線白石蔵王駅から車で15分、宮城県伊具郡丸森町の標高300m前後の大蔵山(約50ha)に位置。創業は1887年。山田氏は1953年生まれで、明治大学経営学部卒。1986年4月に4代目として家業を継ぎ、2017年(平成29年)8月、社長を息子の山田能資氏に譲り、自らは相談役に退いた。
山田氏の別の著作によると、伊達冠石は両輝石安山岩に属する。地表近くに押し出されたマグマは冷え固まる段階で規則正しい柱状を示すが、伊達冠石は比較的ゆっくり冷却したためか、不規則的に割れた岩脈から丸みのあるものや動きのあるもの、あるいは直線的なものなど様々な形状で産出される。岩脈は、表土から約10m下の幅約20m、厚さ約10m、南北約2㎞、の層となっている。原石表面の黄土色、内面の灰黒色との色合いのコントラスト、石膚と対照的な研磨面など、尽きることのない造形的な可能性を秘めているという。現在の採石量は約200t。
OSI研究会は、明治大学名誉教授・百瀬恵夫氏(92)が2003年に立ち上げた関係から会員には明大卒業者が多く、懇親会では口さがない会員は〝石がすごい〟などと妬み半ばの賛辞を送った。記者は、対面に座り雑談を交わしたのだが、自然の恵みを享受する僥倖に恵まれた、酒好きのただのおやじに見えた。

1960年代の採石場現場

赤土の表土に覆われた大蔵山採石場

一般に公開されている広場

伊達冠石リチャードロング作品(東京フォーラム)

伊達冠石デザイナーズ商品展示会風景

ワークキャンプイベント風景

「神様の石」を山にお返しする現代イワクラ建設作業

「この石は神様だ」と作業員が発した過去最大級5mクラスの伊達冠石原石

円錐形状に積み上げた頭頂部には伊達冠石が設置されている

伊達冠石が割れた面
「ビジョン」を見た翌日、自然も石も美しく見えた
しかし、著作はこのようなイメージとは全く異なった。「神は鉱物の中で眠り、植物の中では目覚め、動物の中では歩き、人間の中では思惟する」-「ウパニシャッド」の言葉で始まる本を読みだしてすぐ、眼が釘付けになった。4ページ目だ。次のようにある。
「私にとっての転機は、突然訪れた。それまで会社の牽引役であった父にかわり、会社を経営することになったのだ。会社は相当の混乱状態。精神的にもかなり追い込まれていたこの時期に、私は自分の中であるひとつの『ビジョン』をみた。極めて個人的な体験なので、詳しくは割愛するが、この『ビジョン』を経験した翌日、庭に咲く花々の白や葉の緑が、昨日とは違って色鮮やかに見えた。空の青さが、今まで感じたこともないほどに迫ってくる。採石場に行けば、石の形や石肌が美しい。今まで不良品にしか見えなかったキズ肌や割れ肌さえも、美しい石の表情をもっている。草花はそれだけで美しいと感じるのは当然だが、石も美しいと感じた自分が不思議だった」
花や空、石のキズ肌などが美しく見えるこの極めて個人的な体験=「ビジョン」とは何か。世には〝人生を変えた〟ものには、1冊の書籍やら失恋、失業、妻あるいは夫の一言、夢、旅行…数え上げたらきりがないほどある。ただ、これらはその後の人生が好転した〝後付け〟として語られることが多い。その一方で〝魔が差して〟人生を台無しにするどころか、社会に致命的な打撃を加えてしまうケースも少なくない。社会も人生も一寸先は闇ということだ。
その時点で、この「ビジョン」の正体を探し出すのに主眼を置き、一気に読んだ。B6判、全200ページ。1ページに1枚以上の白黒写真が紹介されており、とても読みやすい。著作には、石に関する参考文献・資料は74、石工と石工集団に関する文献は71ある(書庫には芸術や民族信仰など石にまつわる本が約2000冊収められているそうだ)。大半はほとんど知らない専門家によるものだが、ゲーテ、ダ・ヴィンチ、フロイト、ユング、ベルグソン、ヨゼフ・ボイス、ガストン・バシュラール、空海、立花隆、小林秀雄、柳田國男、中沢新一、折口信夫、小泉八雲、谷川徹三、草野心平、唐木順三、澁澤龍彦、藤本義一、白川静、中沢新一などわれわれも少しは知っている哲学者、作家の著作や言葉などが頻繁に出てくる。
自説を補強する添え木として、あれやこれやのデータや学説を寄せ集めるのはよくあるケースだ。中には、参考文献が支柱で、持論・自説は柱と梁をつなぐ金物か、支柱がないと伸びないつる草のような論説や記事を読まされることも少なくない。(小生の拙い記事をそのまま無断で転載していた大学名誉教授や人気ブロガーを見つけたが、謝罪の一言しかなかった)
山田氏の著作はそうではない。ほぼ全編に肺腑をえぐる「伊達冠石」のような文章がちりばめられている。いくつか紹介する。
文献を読んでも「石の霊性を知る」ことにはならない
「(採石は)二度と復元することのできない破壊行為」(30ページ)
「石の歩留まり率とか、原価とかいう経済的な観点からではない。残された石や廃材捨て場に捨てられた石を見るたび、石を人間の価値観で推し量り、使える石・使えない石と決めてかかることが果たしてどうなのか」(45ページ)
「いくら文献を読んだところで『石の霊性を知る』ことにはならない。必要なのは、文献を読んで得られる知識より、直感的に霊力を感じたことがあるというような『経験』である。いいかえれば、石の霊力というものにどれくらい思いを巡らせているか、思いをめぐらせるなかで何をどう感じるかということが重要なのだ」(58ページ)
「現在は、あらゆるものが石から別の素材へと置き換えられ、それにともなって『石屋』『石工』の活躍する場が狭められている。しかしその現象をよく見ると、たとえば建築・土木の分野では限りなく石が薄くなり、ハリボテ状に使われていくだけで、いわゆる石本来の性格からかけ離れていくばかりである。耐用年数などを『計算』しているからなのだろうが、せいぜい五十年も持てばよいということか。もっともそれを支えているコンクリートや骨材も怪しいもので、何百年後に残る歴史的な建築物などははたしてどのくらいあるのであろうか。百年サイクルでみると、すべてが産業廃棄物のようにも思えてくる」(84ページ)
「モノのかたちは、中身(質量)があるから外観(輪郭)があるのであって、モノの中身がどのように意識されてつくられているかということは、とても重要なことだ」(105ページ)
「石の美しさや石の力を石ならではの表情として引き立たせようとする繊細な美意識」(123ページ)
「機械で仕上げられたものよりは、手仕上げの石造物のほうが、より深く、より自然に、人の魂やこころに響いてくるのではないか」(129ページ)
石の霊力を得た山田氏自身が「伊達冠石」

読み終えた時の感想は、山田氏そのものが「伊達冠石」ではないかということだった。自らが重機を運転し、寝食を忘れるほどノミを打ち続ける実践家だからこそ発せられる箴言だ。山田氏はこう述べている。「少なくとも私自身のプリミティブな感覚は、大蔵山採石場から生まれてくる自然石によって呼び覚まされたといっても過言ではない」(61ページ)と。
最初に戻る。「ビジョン」とは、この「私自身のプリミティブな感覚」ではないかと推測し、山田氏に「ビジョンとは何ぞや」と聞いた。山田氏は、この「ビジョン」の正体を自身のブログ「石好きおじさんの石巡り」に明かしており、文章を送ってくれた。やや長いがそのまま紹介する。
「(石への目覚め)私は代々石材業を営む家系の四代目として生まれ、当然のように家業を受け継いだ。石材業といっても加工業や施工業など様々な職域があるが、私の会社は主に山から石を採掘する採石業者である。採石している現場は大蔵山といって、宮城県の最南部に位置する白石市と丸森町にまたがった標高300mの小高い山で、そこから玄武岩質安山岩の自然石を採り出している。
私が会社を引き継いだのは1986年、当時33歳の時であった。忘れもしない昭和61年3月31日。父が十数億円という負債を抱えた状態で事業に行き詰まり、混乱のさなか受け継いだ。会社の後継者としてどんな困難にも立ち向かうのが使命と思い、家族を親戚の家に預け、各方面の債権者たちとの交渉に追われながら事態の収拾にあたっていた。しかし、何せ初めての経験で、相当気を張り詰めていたこともあり、その日から一週間後ぐらいで、精神的にかなり追い詰められた状態となった。
そんな精神状態になりながら、ある晩、いつものように自宅のお風呂に入った。お湯に浸かっていると、やがてうとうととして意識が飛んでいくような状態になったらしい。夢心地の中でいると突然、意識の中で井戸のイメージが浮かび、どんどんと体ごと下方に引っ張られていくような感覚に陥った。どこまで落ちていくのだろうと思っていると、やがて水面が現れ、ゆらゆらと揺れている。何かと思いそこを覗き込むと、人の顔のようなものが浮かび、誰だろうと思うとそれは自分の顔である。自分の顔だと自覚した瞬間、その顔はニコッと笑い返してきた。
それまでよく眠れない日が続いていたが、その晩は、不思議なくらい深い眠りに落ちた。
翌日も、相変わらず混乱が続く会社に出社しなければならない。会社と自宅は地続きで、自宅の庭を横切っていく。庭先には赤や黄色のチューリップの花が咲いていた。今までそんなに気に留めることがなかった花の赤や黄色が色鮮やかに飛び込んでくる。不思議に思って空を見上げると、空の青さまでが明るく際立っている。目に映るものや景色が今までとは違って鮮やかなのだ。その日以来、解放されたような気分になり、気持ちが楽になったのを覚えている。
数日後、採石場の現場確認のために大蔵山に行く機会があった。いつもの採石場の風景が広がり、大量の石が積み重なっている。それらの石たちも、いつも見慣れているはずの石なのに、これまでとは違ったものとして目に映ってくる。それまでは価値のないものとしか思わなかったキズの入った石や不定形に割れた石、形が不格好な石が実に美しく見える。割れた表面の表情や、絶妙な線を描くエッジが神秘的に思え、表面を彩る色の具合が輝いて見える。特殊な形をしたものはどうしてこんな姿になったのか不思議に思えてくる。すべては神様の仕業。それ以来、お金を生むものとしか見えていなかった大蔵山の石が初めていとおしく思え、同時に石の持っている本来の価値に気づかされたような気がしたのだ。
振り返ってみると、あの晩の錯乱した精神状態で浮かんだ、井戸の中に落ちていくようなイメージのなか、大地の中に引き連れ込まれたような夢見の経験よって、自分自身の意識の中で、どこか別の感覚が目覚めたらしい。笑顔の自分の顔によって、何かとても救われたような感じさえもしたのだ。もし、あの時の顔が恐怖心におびえていたり情けない表情だったりしたら、きっと私は発狂していたことであろう」
皆さんいかがか。記者は「霊」なるものの存在を信じないし、「レム睡眠」の正体も分かっていないようだ。錯乱状態で見た夢見の経験が正夢になることはあるのか。これは謎のままだ。
◇ ◆ ◇
経済産業省のデータによると、令和5年の採石場は2,410か所、生産量は154,906千t(砕石用がほとんどで、石材用は1割未満)、事業者は2,038業者、資本金別では全国1,597社のうち資本金が3億円超は35社(2.2%)。令和元年比では、砕石場は53.3%減、生産量は75.9%減、事業者は61.9%減となっている。
石の需要が減るわけがないと思って調べたら、石灰石の自給率は100%だが、他の鉱物資源は輸入に頼っているようだ。
採石法もざっと読んだ。土地の返還を定めた第8条には「採石権者は、採石権が消滅したときは、その土地を原状に回復し、又は原状に回復しないことによって生ずる損失を補償して、土地を返還しなければならない」とあるのは当然として、許可要件には「その土地が鉄道、軌道、道路、水道、運河、港湾、河川、湖…公園、墓地、学校、病院、図書館若しくはその他の公共の用に供する施設の敷地若しくは用地又は建物の敷地」のほか、農地法などの制限も受けるとある。

大蔵山銀座スタジオに設置されているテーブル(300万円とか)

大蔵山銀座スタジオに展示されているWASHBASIN(40数万円の値が付いていた)

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リスト 北海道ニセコで別荘地「Niseko Loop」15区画販売開始

「Niseko Loop(ニセコ・ループ)」
リストグループのリストデベロップメント(LD)は2月5日、グループ初の別荘用地分譲事業「Niseko Loop(ニセコ・ループ)」の分譲を開始したと発表した。
物件は、JR函館本線ニセコ駅から車5分(3.6km)、北海道虻田郡ニセコ町字曽我に位置する開発面積約25,898㎡、総区画数は15区画。土地面積は1,000.00(約302.5坪)~1,662.55㎡(約502.9坪)。価格はインナー販売期間中につき非公表。用途地域は無指定。建ぺい率は50%、容積率は200%。販売開始は2025年12月。
分譲地は2023年に用地を取得。ニセコ高原教会の近隣に位置し、周囲には豊かな自然環境と落ち着いた景観が広がるエリアの一角。冬季は複数のスキーリゾートへ、夏季はゴルフ場や観光施設へもスムーズに移動でき、四季を通じてニセコの魅力を享受できる立地。別荘用地として、長期滞在や二拠点居住といった多様なライフスタイルに対応可能。
華氏35.6度 期日前投票所に蟻聚する選挙民 1時間待ちに結局〝棄民〟選択
この日(2月7日)の外気温は2℃(華氏35.6度)。団地の会合を終えてから、雪が降りしきる中、いつものように駅前の日高屋で熱燗1合と半ラーメンの昼食。
もう1杯飲みたかったが、この前〝もうアル中同然〟と後輩の記者にたしなめられたので我慢し、駅直結の市役所出張所に設けられている衆院選期日前投票所に向かった。ポケットには衆院選投票券を入れていた。選挙権はもうもう30年以上行使していない。理由は簡単。騙されるのが嫌だからだ。ならは〝拒否〟(逃避と同義語)するのが一番だと。
まあ、しかし、〝天下分け目の戦い〟かどうかは分からないが、同年代の同業Hさんに馬鹿にされるのも嫌だから、一念発起して投票しようと考えた。
豈図らんや。信じられない光景を目にした。投票所そのものはビルの中にあるのだが、中に入るには吹きさらしのアーケードで待たなければならない。案内係の人に聞いたら、待ち時間は1時間以上だ。人数を数えた。約120人(このほか選挙権がないと思われる子どもが約10人)の黒づくしの老弱男女…蟻聚そのものだ。どこかの軍事政権に強制(去勢)された愚民かと思った。凍え死んだらだれが責任を取るのかと。
しばし様子を見ようと、これまたいつもの駅前のDOOTORでタバコを吸いながら思案した。〝行かない-行きます-行く-行くとき-行けば-行け〟…何度も自問自答したが、〝行くな〟と命令するもう一人の自分がいた。雨にも雪にも勝てない、逃げるが勝ちだ。投票される方には頭を下げるほかない。
帰り道、駅頭では赤でも黒でもない黄色だったか。どこかの政党が〝どれほど怖い世の中に向かっているか…外国人…〟などとがなり立てていた。俺も〝害人〟の一人だ。
東京都第30区は、府中市、多摩市、稲城市からなり、有権者数は約42万人、受かるのは一人。当選される方は有権者を裏切らないで頂きたい。
◇ ◆ ◇
「このあいだの選挙、みんなとおなじように投票したわ。ノーブル大統領にいれてみたの。あの人、これまで大統領になった人のなかで、いちばんハンサムだと思うわ」
「ああ、でも対立候補のほうはね!」
「あっちはたいしたことなかったわよ? 背は低いし、地味な感じだし、ひげがちょっとのびてたし、髪もちゃんとくしをいれていなかったみたい」
「野党はなんであんな人を候補にしたのかしら? 背の高い相手に、あんな背の低い人をかつぎだすなんてね。それに-あの人、もごもごしゃべるし。話の半分は聞き取れなかったもの。おまけに聞こえたところは、わけがわからなかった!」
「太りすぎだしね。しかもそれを服でカバーする工夫もしていなかったし。ウィンストン・ノーブルが圧勝して当然よ。名前の差もあるわね。ウィンストン・ノーブルとヒューバート・ホーグを十秒くらべたら、それだけでほとんど決まりだわ」
――これは〝選挙棄民〟の小生が言っていることではない。レイ・ブラッドリーが今から70年前に書いた「華氏451度」(早川書房)から引用したものだ。
三菱地所 アパートメントホテル事業に参入 2030年までに10軒開業へ

「WAYPOINT TSUKIJI TOKYO」エントランス
三菱地所と三菱地所ホテルズ&リゾーツは2月2日、長期滞在ニーズに対応する新ブランド「WAYPOINT」を立ち上げ、アパートメントホテル事業に参入すると発表した。主にインバウンドをターゲットに、ランドリーやキッチンなどを備え、多人数・複数泊に対応するもので、今後2030年までに10軒の開業を目標にしている。
新ブランド1号物件「WAYPOINT TSUKIJI TOKYO」は既存施設をアパートメントホテルとしてリノベーションしたもの。客室は、TVボードに国産杉材を使用した積木パネルを採用するとともに、バンクベッド(2段ベッド)にも杉材を使用。最大6名まで宿泊可能。一部客室にはミニキッチンや洗濯乾燥機を備える。また、ロビーなどの共用部でも内装にも木材を施し、木に囲まれた山のキャビンで過ごしているかのような空間を演出する。
施設は、東京メトロ日比谷線築地駅から徒歩1分、中央区築地2丁目に位置する敷地面積約368㎡、9階建て全52室。料金はデラックスバンクルーム(37.28㎡)1名料金(4名1室利用時)11,000円~、スイートバンクルーム(68.28㎡)1名料金(6名1室利用時)12,833円~。改修工事は三菱地所ホーム。ホテル運営は三菱地所ホテルズ&リゾーツ。開業予定は2026年4月1日。

アパートメントホテル5社が結集・怪気炎市場規模は現在4,000室⇒30万室へ(2024/10/30)
令和7年の住宅着工74万戸 総戸数は16年振り、持家は70年振りの低水準

国土交通省は1月30日、令和7年の住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は前年比6.5%減の740,667戸で3年連続の減少となり、平成21年(2009年)の788,410戸に次ぐ16年振りの低水準となった。利用関係別では、持家は201,285戸(前年比7.7%減)で4年連続の減少。昭和33年(1955年)の188,650戸以来70年振りの低水準となった。貸家は324,991戸(同5.0%減)で3年連続の減少、分譲住宅は208,169戸(同7.6%減)で3年連続の減少。平成21年の168,836戸以来16年振りの低水準。分譲住宅の内訳はマンションが89,888戸(同12.2%減)で3年連続の減少、一戸建住宅が115,935戸(同4.3%減)で3年連続の減少となった。
地域別では、近畿圏のマンションが前年比6.6%増加した以外は、すべて利用関係別で前年を下回った。
プレハブは88,877戸(前年比4.5%減)で4年連続の減少、ツーバイフォーは91,512戸(前年比3.8%減)で昨年の増加から再びの減少となった。2年連続でツーバイがプレハブを上回った。
首都圏マンションは40,305戸(前年比21.0%減)で、内訳は東京都が24,238戸(同8.9%減)、神奈川県が9,070戸(同35.5%減)、埼玉県が4,416戸(同20.1%減)、千葉県が2,581戸(同46.1%減)。
首都圏戸建ては51,275戸(同3.9%減)で、内訳は東京都が16,257戸(同2.9%減)、神奈川県が13,238戸(同5.5%減)、埼玉県が12,201戸(同7.9%減)、千葉県が9,579戸(同2.7%減)。
用途別 金融業・保険業用の工事予定額は坪300万円
建築物の床面積と工事費予定額の前年比との関係では、建築物全体では面積は6.7%減で予定額は4.2%増。用途別では、居住用の面積は6.6%減で面積は0.4%増、非居住用の面積は7.0%減で予定額は8.9%増。用途別で注目されるのは金融業・保険業用で、令和7年の面積は439千㎡(前年比0.5%減)で、予定額は3,985億円(同237.9%増)となっており、坪単価は約300万円。
構造別では、木造の面積は5.2%減で予定額は0.1%減、非木造の面積は7.8%減で予定額は6.4%増、うち鉄筋の面積は18,437千㎡(6.4%減)で予定額は75,550億円(同3.9%増)となっており、坪単価は135万円。
「市民と考える、不動産開発と都市の公園緑地の保全」シンポ 日本不動産学会

前列左から佐藤氏、中林氏、三上氏、石川氏、後列左から室田氏、長岡氏、原科氏(御茶ノ水ソラシティで)
日本不動産学会は1月26日、「市民と考える、不動産開発と都市の公園緑地の保全」と題するシンポジウム(定員:オンサイト80名、オンライン200名)を開催した。不動産開発における公園緑地の保全と防災面などの活用について、情報公開の方法と自治体、事業者、市民など多様な主体が参加する公衆協議のあり方を論議し、その推進のため方策を示すのが目的。令和7年度科学研究費助成事業にもなっている。
シンポジウムは二部構成で、第Ⅰ部(13:00~14:50)では、室田昌子氏(日本不動産学会副会長、東京都市大学名誉教授)が開催のあいさつ、趣旨説明を長岡篤氏(千葉商科大学基盤教育機構助教)が行った。
趣旨説明で長岡氏は、「不動産開発は経済的利益の追求だけでなく、社会的側面や文化的・歴史的側面、環境的側面、防災面を踏まえる必要がる」「しかし、これに逆行する例もある。例えば、神宮外苑再開発では既存の都市計画公園の一部を削除し、高度利用開発が計画されている。この計画プロセスでは、情報公開と参加が不十分で、公衆協議のあり方に課題がある。このことは、2024年6月の国連総会、国連人権理事会でも指摘された」と語った。
第Ⅱ部(15:00~16:30)では、長岡氏が司会役を務め、各氏によるパネルディスカッションが行われた。以下、各氏の報告・発言要旨を紹介する。(報告順)

室田氏(左)と長岡氏
都市計画・土地利用計画に戦略性がない
基調講演「都市の公園緑地の保全と不動産開発‐ビジネスと人権の観点から‐」
原科幸彦氏(東京科学大学名誉教授、千葉商科大学名誉教授・前学長、日本不動産学会前会長・顧問)

原科氏
都市における公園緑地の価値は①市民の生活質(QOL)に不可欠②震災時の避難場所として重要③地球温暖化対策として樹冠豊かな樹林が必要。戦略的環境アセスメント(SEA:Strategic Environmental Assessment)が重要。事業段階(Project)では遅すぎる。上位の計画段階である政策段階(Policy)と計画段階(Plan Program)での情報公開と公衆合意(Public Consensus)が必要だが、わが国は、国際的に見て、ビジネスと人権の観点から公衆協議(Public Consultation)が不足している。新たな国際規範に対する理解が不十分で、都市計画・土地利用計画に戦略性がない。
神宮外苑は「文化としての社会の富」
「都市における公園緑地の価値と日本の状況」
石川幹子氏(東京大学名誉教授、国際文化的景観科学者委員会(ISCCL)日本代表)

石川氏
BC230年の中国の治水・灌漑の取り組みからイギリスのコモンズ、NYのセントラルパーク、神宮外苑のパークシステムなど「文化としての公園緑地」が果たしてきた役割は大きい。西行法師が「なにごとの おはしますをば 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」と伊勢神宮を詠んだ歌は自然への恐れと畏敬を象徴している。東京都の公園まちづくり制度による神宮外苑再開発は、良好な市街地(開発)では断じてない。神宮外苑は、古来の伝統を受け継ぎ、近代都市美を導入した「文化としての社会の富」である。
「私が最初に就職したのは不動産会社。不動産業は立派な事業。その立派な方(会社)が公園を蚕食し、自らの価値を貶めるような、委縮させるような、劣化させるようなことをやってはならない。不動産学会もこのような観点からどんどんシンポジウムなどを行っていただきたい」
樹冠被覆率、公園緑地の保全と拡大が必要
「都市の公園緑地(オープンスペース)による気候変動への適応」
三上岳彦氏(東京都立大学名誉教授)

三上氏
気象庁のデータをもとにすると、1976年~2025年の8月の平均最高気温は都心部では30℃弱から33℃に、千葉県銚子市は約27℃から29℃にそれぞれ3℃くらい上昇している。約50年で3℃の上昇だから、あと50年すると東京都心は36℃になる。熱中症搬送患者も増加の一途で、2010年は全国で5万数千人だったのが、2025年は約10万人。このような都市の気温上昇(ヒートアイランド)を緩和する緑地の樹木効果を実測したところ、夏の地表温度はコンクリ・アスファルトでは50℃以上に達するのに対し、木陰は30℃くらいに留まっている。加速する気候変動対策として、樹冠被覆率の増加、公園緑地の保全と拡大が必要だ。
地震にも水害にも負けない二つの「そうぞう力」
「都市公園における防災緑地機能について」
中林一樹氏(東京都立大学名誉教授)

中林氏
1923年の関東大震災で東京全体で約22万棟が焼失し、2.700棟が全壊した。被服廠跡地の避難者約4万人のうち約3.8万人が犠牲になったのは、当時は住宅はほとんどが借家で、家財道具を大八車に積んで避難したが、布団などに飛び火したのが被害を大きくした。現在の東京都には環状6号線外には大規模公園がなく、木造密集地が多いのが課題。水害対策としては、流域全体で対応することが必要。公園も学校グラウンド、田んぼなどは避難場所になるのはもちろんだが、高台立地のマウンド型にし、水を一時貯留する新しい対策も必要だ。地震にも水害にも負けないためには、未来をイメージする「想像の力」と、方策を工夫し実践する「創造力」の二つの「そうぞう力」が求められる。
都市は、公園なしでは再生しない
「多様な主体による「みどりのまちづくり」
佐藤留美氏(NPO法人Green Connection TOKYO代表理事)

佐藤氏
Green Connection TOKYOは、〝自然・ひと・まちを元気に!〟をスローガンに掲げ、Community、Education、Healthy、Livable、Art、Safety、Biodiversity、Cultureなど様々な取り組みを行ってきた。これからの都市は、公園なしでは再生しない。公園を中心に「人」「モノ・コト」「情報」「自然」「お金」が循環する取り組みが必要。様々な活動を通じて、手ごたえを感じている。最近の若者は街づくりに大きな興味を示しており、緑が多く、人と人がつながることに働き甲斐を求めている。そのために不動産業を立ちあげようと考えている人も少なくない。この流れをキャッチしないといけない。
シンポジウムに参加した、前職が神奈川県の自治体職員で、主に街づくりに関する仕事をしていた無職の男性(65)は「神宮外苑問題と公園、不動産の関係が混在していた。みんな危ないのか。外苑問題だけがヒットアップしそう」と語った。
千代田区の神田警察通りの街路樹伐採に反対したため、区から工事区間への立ち入りを禁止された「建築ジャーナル」の西川直子氏は、「立ち入り禁止? イチョウは昨年までにすべて伐採された。立ち入り禁止の要件そのものがなくなった。区は第3期工事を始める予定で、協議会も設置しないと聞いている。今日のシンポジウムでも話されたように早めの対応策を練る」と話した。
「スラップ訴訟」「ひこばえあるうちはあきらめない」街路樹守る会・愛氏ら会見(2023/11/23)
◇ ◆ ◇
上段でシンポジウムの概略を紹介したが、講演時間は約3時間半。各氏の一人当たり時間は約1時間。大学の講座なら1年分のカリュキュラムだろう。各氏が言いたかったことの10分の1も伝えきれていないような気がする。謝るほかない。
原科氏は、出席していたメディアを意識してか、最後に「市民にどう伝えるか、メディアの役割は大きい」と牽制球を投げた。優しい取材などないのだが、この種のシンポジウムは極めて難しい。記者の技量が問われる。記事をアップするまで1週間が経過したか、この種の記事は速ければいいというものでもない。
◇ ◆ ◇
記者は、一般の方を対象にしたシンポジウムで質問したことはほとんどない。参加者の質問時間を奪いたくないからだし、〝雄弁は銀、沈黙は金〟〝知る者は言わず言う者は知らず〟-質問するといかに無知であるかをさらけ出すことにもなりかねないからだ。
しかし、今回は事前に不動産学会から「取材」の了解を得ており、参加者の多くは学者や研究者だろうと思ったので、質問することにした。第Ⅱ部の開始前に配布された質問表にはおおよそ次のように書いた。
①神宮外苑の再開発は、都の公園まちづくり制度によって、都市計画公園内の秩父宮ラグビー場が「未利用」だったため可能になった。都市計画公園と都市公園は似てはいるが、全然異なる。この差を分かりやすく説明していただきたい
②神宮外苑のほかにも都市計画公園内の「未利用」施設はかなりある。神宮外苑と同じような再開発計画が浮上することはないのか
③都の制度そのものが定められた時点で、学者先生は「未利用」施設が再開発に道を開くものになるとの危惧を抱かなかったのか
残念ながら、時間切れで質問が取り上げられることはなかった。記者の質問だけではない。質問票はかなり提出されたはずだが、応答は2人のみだった。これは時間配分に問題あり。シンポでは先生方は市民から声を聴けと仰ったではないか。記者は全て双方向シンポジウムにすべきだと思う。
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なぜ農学、環境、家政学者の会合はおおらかなのか 国交省検討会(2015/3/17)
継承と創造の「継承設計」とは 三菱地所・三菱地所設計 合同丸の内建築ツアーに50人

「仲通り」
三菱地所・三菱地所設計は1月30日、メディア向け「合同丸の内建築ツアー・懇親会」を行った。1891年(明治23年)、陸軍省から丸の内と神田三崎町の合計10.6万坪を128万円(12円/坪)で払い下げを受けてから、今日までの135年の継承と創造の丸の内の歴史を紹介するのがイベントの主旨で、当初予定の約30人をはるかに超える約50人の報道陣が駆けつけた。少しは丸の内について知っていると思っていた小生は、実際は何も知らなかったことを痛感させられた。丸の内を歩くのがまた楽しくなりそうだ。
冒頭、三菱地所設計経営企画部広報室主事・平井祐一氏は、同社の概要を説明。今年は1890年に「三菱社丸ノ内建築所」として創業してから創業135年で、2001年に三菱地所から分社化して「三菱地所設計」を設立してから設立25年の節目の年を迎えると紹介。2001年当時の従業員は約430人、売上高は業界4位だったのが、現在は従業員数は約870人、売上高は業界2位(トップは日建設計、3位はNTTファシリティーズ、4位は日本設計)で、日本最古の設計会社であり、内製化により業界トップクラスまで成長した〝若さ〟を強調した。
主な作品として、「サンシャイン60」「横浜ランドマークタワー」「TOKYO TORCH」「アント・グループ杭州オフィス」「臺北南山廣場」「臺北台南山人壽」「泉パークタウン」「みなとみらい21地区」「琉球銀行本店」「大手町ビルリノベーション」「長崎スタジアムシティ」「御殿場プレミアム・アウトレットパーク第4期拡張」などを上げ、川上から川下まで幅広い分野で展開してきたと話した。
続いて登壇した同社フェロー リノベーション設計一部継承設計室室長・江島知義氏は、3年前に立ち上げた「継承設計」とは何かについて、14ページにもわたる資料を基に説明。初代技師長・曾禰達蔵から保岡勝也、桜井小太郎らの技師長や内田洋三(のちに帝大総長)、山下寿郎(のちに山下設計設立)、大江宏(のちに法大名誉教授)、杉山雅則(レーモンドより薫陶)、艪恒治(坂倉順三より薫陶)なども同社出身であることを紹介した。また、ジョサイア・コンドルが設計した「三菱一号館」(1894年)「丸ノ内ビルヂング」(1923年)「新東京ビルヂング」(1963年)、通りとつながる建築デザインの発展、歩行者ネットワークの形成、仲通りの拡張などエリアマネジメントの導入などについて語った。
「継承設計」が目指すのは、歴史的建造物を「活かす」法的な位置づけ、各種建築物を保存・修理する技術の追求、保存活用計画の作成と活用、デジタル技術の活用、学識との協働など、創業以来の「リレーデザイン」であると話した。
その後、江島氏が解説者となり約1時間、三菱一号館から丸の内の一連の建築物-丸の内オアゾにある丸の内建築保存部材倉庫までツアーを行った。ツアーでは、江島氏は自らが三菱一号館の復元(現存するものを残すのは復原)に関わったことを明かし、百尺ライン(31m)、100×100mグリッドの街づくり、仲通りの道路拡張(7m⇒21m)などについて語った。丸の内建築保存部材倉庫は2025年に設置したもので一般には非公開。この日は〝本邦初公開〟の部品などが報道陣に披露された。

江島氏
◇ ◆ ◇
数学者の藤原正彦氏は「ものごとを知れば知るほど分からなくなる。私などは小学一年生より一万倍以上分からない。困ったもので、教養などまったくない。恥ずかしい限り。学者だって哲学者だって同じ。くだらないどうでもいいことを言葉で定義づけようとするが、その言葉そのものが分からない。死とは何か、世界とは何か、だれも何一つ定義づけることができない」と語ったが、この日ほど自らの無知ぶりをを思い知らされたことはなかった。
上段は、少しは街づくりについて分かっていると思っていた記者が、全くの素人であることを思い知らされて書いた記事だ。
なので、素人が発する情報が何の役に立つかも分からないが、これから丸の内を歩けば少しは参考になりそうなことを二つ三つ紹介する。
まず、仲通りについて。記者は仲通りが東京のあるいは全国を代表するウォーカブルな通りだと思う。ケヤキや常緑のメタセコイアの巨木が植わっており、ところどころにアートが設置されている。道路幅は当初7mだったことは初めて知った。通りは都道だが、頻繁に様々なイベントに使用されている。個人的には廃道にしても不都合はないと思っているが、どうだろう。〝初めに道ありき〟と語った宮脇檀を思い出した。
次に100尺ラインについて。このラインを街並みに保存しているのは丸の内と日本橋くらいしかないのではないか。とにかく美しい。記者は建築物の高さ規制には反対・意味がないと考えているが、このような歴史的建造物は保存して、その代わり容積率の緩和を図るべきだ。
丸の内建築保存部材倉庫について。これは一般にも公開すべきだ。江島氏らは「復原」の参考にするため保存していると話したが、わが国のビルの歴史・文化を知る貴重な教科書だ。非公開にするのはもったいない。公開すれば全国の街づくりや建築物デザインに行かされるはずだ。

ヘンリー・ムーアの作品が設置されている「三菱一号館」の広場

「三菱一号館」

向こう側が見通せるのは高透過ガラスが採用されているため(何ビルだったか。江島氏の足は馬でいえばキャンター、とても速く、イヤホンで聞きながらメモを取り、写真に収めるのは大変な作業だった。メモを取る記者の方はほとんどいなかった)

モニュメントの石かコンクリかについて説明する江島氏(これも意味はよく分からなかった)

地階に自然光を送るためガラスが使用されている(何ビルだったか)

100尺ラインの規制を受けているビル(右)と緩和されているビル(何ビルだったか)

日本工業倶楽部快感が入居すね三菱UFJ信託銀行本店ビル

旧丸ビルの8階に入居していた三菱地所建築設計部の扉(文字は職人による手書きとか)

窓台

「三菱一号館」の模型

ビル銘板は「ビルヂング」になっていた

胸飾り

お祭りの提灯ではなくメガホン、ロウソク電燈として使われていた

松杭(左)と銀行カウンター

郵便物シューター(詰まることも多く、途中で使われなくなったとか)

説明を受けたが、何だったか

火災報知器

何かの飾りだったはず

ガラス(何に使われていたのか)

アール形状のサッシ枠
めっちゃ楽しい三菱地所など「仲通り綱引き大会2025」ソニー生命 2年ぶり4度目V(2025/5/22)
神田と大手町繋ぐ“外空間”の居方を検証三菱地所「BATON PARK」社会実験(2022/10/20)
丸の内仲通りウォーカブルな街づくり「Marunouchi Street Park 2022 Summer」(2022/8/3)
三菱地所「TOKYO TORCH」第一弾「常盤橋タワー」完成緑の量と質に感動(2021/7/20)
〝宮脇檀さんにまた会えた〟 積水ハウス「コモアしおつ」(2013/9/13)
道からつくり道を中庭化した旭化成レジ「アトラス調布」(2013/7/25)
「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授日テレ本社跡地再開発(2023/2/23)
絶対高さ制限の背景にある100尺規制とは(2008/6/10)
全国に広がる建築物の「絶対高さ規制」「住民は知るべき行政は伝えるべき」大澤昭彦研究員(2008/6/3)
