圧巻の1・2階の天井・サッシ2.72mだからこそ不満も 大和ハ「xevoΣ PREMIUM」
「xevoΣPREMIUM(ジーヴォシグマプレミアム)」完成予想図
大和ハウス工業は10月1日、富裕層をターゲットとした住宅業界最高クラスの鉄骨住宅商品「xevoΣPREMIUM(ジーヴォシグマプレミアム)」の販売を開始する。販売に先立つ28日、モデルハウスを報道陣に公開した。
新商品は、①業界最高水準の断熱・耐震性能及び長期保証②天井高2.72mまで達するサッシやドアの「グランフルデザイン」③業界最大級となる彫りの深さ12mm を実現した新外壁を開発・装備しているのが特徴。
同社取締役常務執行役員 住宅事業全般担当・大友浩嗣氏は、「2014年に発売開始した『xevoΣ 』の天井高2.72mの採用率は80%を超え、累計13,500棟を販売するなど評価されているが、当社の(同業他社と比較して)若干弱い富裕層向けを強化するのが狙い。4月から始めたプレ販売では7月、8月は月間10棟を契約するなど手応えは十分。年間600棟の販売目標はクリアできる」と話した。
同社住宅事業推進部商品開発部長・藤原陽介氏ら関係者は、「xevoΣ」と比較して1.6倍の開口部を設けることができたこと、軽くてデザイン性に優れる高さ2.72mの「グランフルサッシ」を開発し、2階も2.72m天井を提案していること、業界最大級となる柄の深さ12mmの新外壁「ベルサイクス」の良さなどを強調した。
新商品の坪単価は90万円~120万円。販売目標は年間600棟(北海道・沖縄除く)。
「グランフルデザイン」
2階の天井高2.72m提案
◇ ◆ ◇
高天井がいいのは言うまでもない。今回の新商品は2階も天井高2.72mを確保し、しかも掃き出し窓をフラットにしている。これはいい。富裕層向けの分譲戸建ても天井の高さ競争に拍車がかかっている。
LIXIL製という「グランフルサッシ」は障子枠を従来の9cmから5cmに細くし、閉めたときの収まりもよく、しかも軽いのに驚いた。開口部を多くしてもZEH対応が可能というのも納得だ。
しかし、「弱い富裕層向けを強化する」のが狙いであるとすれば、不満も残った。第一に、せっかくの2階も含めた天井高2.72m(一部3m)の圧倒的な大空間が十分演出できていない点だ。
その理由は、今回公開された港北インター住宅公園展示場の敷地形状のためなのか別にあるのか分からないが、約71坪の建物の階段室を建物のほぼ中央に配したことで、廊下部分にもかなりのスペースが取られており、その分リビング、各居室などが窮屈に感じられた。主寝室は8畳大もなかったのではないか。
もう一つ、設備仕様レベルは富裕層を納得させるものかどうかという疑問だ。
1階の床は挽き板が、約5畳大の防音室にはヘリンボーンがそれぞれ採用されていたが、その他の建具・家具の多くはシート張りだった。キッチンカウンターは一見してすぐそのレベルが分かった。
マンションの例だが、三井不動産の「パークマンション」「パークコート」が圧倒的な支持を受けているのは、質がけた違いだからだ。7年前だが、「パークコート六本木ヒルトップ」は階高を3,400~3,450ミリ確保したため廊下、キッチンの天井高も最低2,350ミリあった。
近鉄不動産「グランド ミッドタワーズ大宮」は、ザ・ペニンシュラ東京を手がけたデザイナー橋本夕紀夫氏を起用し、天井高は3m、リビングの床全面を亀甲仕上げとし、建具・面材は全てクリ、トチなどの突き板、廊下幅は1~1.2m、ドアはイタリア製だった。
橋本夕紀夫氏を起用した最近のマンションでは、坪単価750万円の東京建物「Brillia 一番町」が絶好調だ。
ヘリンボーンでは、昨年見た「サンウッド青山」は「マダガスカル・ローズウッド、パリサンダー」と呼ばれる希少高級材が床全面に張られていた。
同業のハウスメーカーの富裕層向けも、三井ホームはかつて坪単価250万円のモデルハウスを設けたことがあったし、積水ハウスや三菱地所ホームなども圧倒的な存在感がある。
この日、配布されたパンフレットには、様々な敷地形状にも対応できる1~5までのプランが紹介されている。1や2、5はとてもいいプランだ。今度、どこかでは同業他社に負けない〝突き抜ける〟モデルハウスをつくってほしい。
高断熱アルミ樹脂複合サッシ
「ベルサイクス」
木の美しさを全面に 天井高3m実現 三井ホームが新商品「LANGLEY(ラングレー)」(2018/4/11)
大和ハウス 天井高2.8mの「xevoΣ」ロビーに公開 一般住宅との差が一目瞭然(2017/4/26)
効果てきめん 三菱地所ホーム 全館空調「エアロテック」記者も宿泊体験(2017/10/30)
積水ハウス 古河に2億円「イズ・ステージ」と1.2億円「グラヴィス・ヴィラ」(2016/7/17)
埼玉県の過去最高レベルマンション 近鉄不動産他「グランド ミッド タワーズ大宮」(2010/6/2)
〝敷延は売り辛い〟概念を覆す 和モダンのデザイン・プラン秀逸 ポラス「北浦和」
「ことしな北浦和」
ああ、あそこ。いまはポラスさんが住宅を建てているところ? あそこはね、以前は雑木林だったところで、車を停め、窓から足を出して昼寝したもんです。タヌキなども生息していて、近所の人たちは「今日は出るかもね」などと楽しみにしてたもんです。今は世知辛い世の中で、全部位置情報で会社に分かるからね。成績のいい運転手は見て見ぬぬりをしてもらえるが、成績が上がらない者は呼び出しを食らっちゃう。それにしても、ポラスさんは偉いね。大きなことをする。あそこの社長が阿波踊りを初めて、いまでは埼玉で1、2位を争う祭りに育てた。(えっ。ポラスさんってそんなに大きいんですか)いゃ、大したもんですよ。
◇ ◆ ◇
ポラスグループのポラスタウン開発が分譲中の分譲戸建て「ことしな北浦和」を見学した。冒頭は、同社広報マンと北浦和からタクシーに乗って、行き先を伝えたところ、運転手さんが〝勝って〟に話したことをそのまま紹介した。タクシーの運転手さんも〝雑木林〟と話したように、現地は以前、一軒の邸宅が建っていたところで、その環境を極力残そうと飛騨古川の町並みをモチーフにしたランドスケープデザインと、住戸プランが秀逸だ。
物件は、JR京浜東北線 北浦和駅からバス10分バス停徒歩1~2分、さいたま市浦和区瀬ヶ崎3丁目、建ペイ率60%、容積率172%の第二種中高層住居専用地域・第一種住居地域に位置する全42棟。現在分譲中の住戸の土地面積は約100~108㎡、建物面積は約94~102㎡、価格は4,380万~5,380万円。構造は木造2階建(在来工法)。建物は一部完成済み。
現地は、木崎中学に近接、浦和高校も徒歩圏の文教エリアの一角。地域住民からも親しまれていた住環境を少しでも残そうと企画。「相場崩しを嫌う」(伝統の街並みを壊すみっともないものは建てないという意味)飛騨古川の町並みを担当者が歩き商品化した。
街並みを形作る大きなアイテムである犬矢来、戸格子、下見板、大和塀、隈寄席など古来の建築様式を現代風にアレンジしたのが特徴。大きな提供公園にはクスノキを植えている。舗装材には遮熱、透水性の高い素材を採用。
住戸の配棟計画では、敷地境界に塀を設けず、洗い出しの色やタマリュウ、トクサなどの植物で見分けられるようにしたり、2~3戸で共有するコモンガーデンを設置したりして緑被率を上げるとともにオープンな街並みを演出している。
各住戸には、銘木フローリングのほか、化粧梁、柱見せ(壁で隠さずに敢えて見せる)、タモ材の腰壁などの木を多用。壁は珪藻土塗り壁・左官壁を採用。
今年2月から分譲が始まっており、半分以上が成約済みという。
洗い出しの色によって敷地境界が分かるようにしている(中央の樹木はイロハモミジ)
コモンガーデン
◇ ◆ ◇
広報担当から企画をしたのは同社の百瀬修氏であることを知らされた。「ああ、あの百瀬さんか」とすぐ思い出した。
百瀬氏の「作品」に最初に出会ったのは8年前だ。注文住宅モデルハウス「『ARZILL(アルジール)』~街のCOTTAGE ~」だった。「ダイニング・寝室・リビング」といった既成の概念を「食べる・寝る・遊ぶ」スペースに置き換えたプランに驚嘆した。
その後、百瀬氏が主導したモデルハウスや販売現場を取材し、その都度、間接的に会話を交わしてきたような気がする。
今回の「ことしな北浦和」は、百瀬氏の街や住まいに対する思想が全て盛り込まれていると思った。敷地境界に黒竹を配する都市型戸建てなど絶対にないはずだ。犬矢来、戸格子、下見板、大和塀などはわれわれの世代にとって日常的な風景だった。それが〝フェイク〟ではあったが、至るところに採用されていた。
モデルハウスもよくできている。いかにも百瀬らしい土間の提案もさることながら、記者が感動したのは若手の建築士、内田里絵氏による敷地延長プランだった。コモンガーデン-玄関-坪庭--土間-和室-キッチンを緩やかにつなぐブランが抜群だ。建具・家具を古民家風にまとめているのもプランとマッチする。〝敷延は売りづらい〟という既成概念をこのプランは覆した。
モデルハウス
わずか2週間で14戸成約 徒歩19分のハンディ克服 ポラスグループ「朝霞」(2017/2/6)
ポラス 1棟1棟にこだわりのデザイン「グレースヴィラ越谷レイクタウン」(2014/5/1)
ポラス 新越谷に2棟のモデルハウス「音楽好き」と「くるま好き」を想定(2010/10/18)
ポラス 一挙に5棟のモデルハウスオープン(2010/6/18)
「かゆいところに手が届く」商品企画 IoT搭載の戸建て ポラス「船橋・北習志野」
「アドバンスドプレイス船橋・北習志野」
ポラスグループの中央住宅とポラスガーデンヒルズは8月30日、同社初のIoTを装備した戸建て分譲「アドバンスドプレイス船橋・北習志野」の記者見学会を行った。「家電などの無駄な稼働時間を減らし、家本来が持つ省エネ性能も最大限に発揮し快適性さと同時に、経済性を高めた」(ニュース・リリース)「かゆいところに手が届く」住宅が売りだ。
物件は、新京成・京葉高速鉄道北習志野駅から徒歩13分、船橋市習志野台2丁目に位置する全91棟。第1期(33棟)の土地面積は100.08~140.10㎡、建物面積は93.46~110.13㎡、価格は3,580万~5,380万円。
すでに8月11日から分譲を開始しており、分譲開始前の3週間で60組の来場があり、16棟が申し込み済み。申込者の45%が船橋市、25%が近隣市、20%が都内居住者。年齢は30歳代後半が中心。
現地は、高低差にして10m以上ある南傾斜の第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)の官舎跡地。隣接地にはUR都市機構の「高根木戸団地」と幼稚園があり、小・中学校、保育所、病院、船橋アリーナ、日大薬学部キャンパスなどが近接。
「一歩先を行く未来の快適性」がテーマで、パナソニックの「AiSEG2(アイセグ2)」を採用し、全棟に装備したタブレットにより給湯・照明・エアコンなどの操作や電子回覧板の閲覧が可能で、外出先からの戸締り確認、気象情報と連動させ自動シャッターを閉じたりポーチ灯や外壁灯を自動点灯させたりする同社独自の「灯かりのいえなみ協定」を締結している。
街並みは3つの街区で構成。「フィンテック街区」(37棟)はHEMS×コンシューマーサービスを標準装備。光熱費の見える化と管理を一元化するHEMSと、三井住友銀行が提供するアプリを使用して、住宅ローンの事前審査や申し込みがタブレットで行えるサービスも用意している。
「ヒーリング街区」(26棟)では、音と香り、音と灯りを商品企画に取り込み、スピーカ付きダウンライトを標準装備するほか、癒し効果があるとされるフィトンチッドの成分を最大限残したスギパネル、調湿建材の壁を採用。
「サードプレイス街区」(28棟)は、第三の居場所×スタディスペースをコンセプトに各棟にスタディリビングをプランニングし、未来の働き方・暮らし方につながる「自宅のサードプレイス化」を提案する。
中央住宅戸建分譲千葉事業部事業部長・田中弘樹氏は「当社の船橋事業所は平成25年に設立し、6年で50現場、600棟の実績があるが、今回は北習志野駅圏最大級。千葉で実績が豊富なグループのポラスガーデンヒルズと組んだことが相乗効果となり、販売も好調に進んでいる。9月には注文住宅の拠点も開設し、エリアの事業拡大を進めていく」と話し、同社戸建分譲千葉事業部船橋事業所営業課課長・高橋元毅氏は「例年8月の分譲は集客が厳しいが、順調に販売が進んでいる。共働き世帯の申し込みより、夫のみの収入の方のほうが多かったのは想定外で、IoTの(販促)効果は現段階で不明」と語った。
アリーナ
◇ ◆ ◇
IoTを標準装備した戸建ては一昨日、大阪吹田市の野村不動産「プラウドシーズン千里円山町」の記事を書いたのでそちらも参照していただきたい。
「千里」は梅田から30分圏内、「北習志野」は大手町から30分圏内と都心からの距離はよく似ているが、価格は倍くらいの差がある。大阪の高級住宅地もすごいということか。官舎跡地で、機種がパナソニックなのは同じ。用途地域は「千里」が第一種低層住居専用地域、「北習志野」は第一種中高層住居専用地域。「北習志野」の隣接地には野村不動産「オハナ北習志野」があるのは単なる偶然か。
スマホすら満足に扱えない記者だが、IoTは結構なことだと思う。ただ、機器に向かって「寒い、温かくして」「暑い!温度を下げよ」「開けゴマ」などと声を掛けるのはためらわれる。家族間の「上げよ」「下げよ」の声が飛び交ったら機器はどう反応するのか。権力を握る者にこびへつらうようになったら怖い。
そんなことより、物件の基本性能、商品企画をじっくり観察した。1階の天井高が2.7mあるからこそキッチン・リビングにあえて段差(約20~40cm)を設けて空間を演出していたのはさすがポラスだ。窓サッシの位置を工夫し、遮熱性の高いものを採用しているためか、断熱性能もずいぶん向上したと実感した。
酷暑の夏にこれほど売れているのにも正直驚いた。商品企画が優れているからだろう。これだけの広さのマンションなら最低でも4,500万円はする。デベロッパーが戸建てにシフトし、ユーザーも戸建てを志向する流れになるのもよく理解できる。
キャンパス
◇ ◆ ◇
〝商品企画がいい〟と褒めたら、同社の広報マンが「IoTもそうだが、うちはかゆいところに手が届く商品を供給している」と返事した。
なるほどと思ったが、「痒くなる」ノミやシラミなどが一般家庭から姿を消してどれくらいたつのか。「かゆいところに手が届く」は死語と化し、麻姑掻痒(まこようそう)=孫の手も意味不明の時代になったということか。この前、ある量販店で巨大ネズミが徘徊しているのを見て心臓が飛び出しそうになった。害獣がはびこる時代の到来か。
おまけ。今回のIoT商品で言えば、今回のモデルハウスにはなかったが、「ヒーリング街区」「サードプレイス街区」がいい。映像も含めた音や香りなど五感に訴える工夫が住まいを変えるかもしれない。
例えば、ひばりのような夜鷹のよがり声、ヒキガエルに似た息が詰まる夫のいびき、絶滅危惧種トキ(鬨)の雄たけび、かわいい七つの子のカラスの勝手口のきしみ、寒さに震えるキリギリスの虫の息、遠き島より流れ寄る椰子の実を胸に聞く伊良子岬の波の音、マリアナ海溝の海底に棲む深海魚の寝息、マダタスカル(いつもの誤植ではない。念のため)で発見されるかもしれぬ不死鳥の羽音、催眠と催淫がごちゃ混ぜになった麝香の香り、えも言えぬ心鎮まる可憐なドクダミとヘクソカズラのブレンド香、荒城の月の月下美人の花の蜜…そんな音や香りが自由自在に体感できる時代がやってくると考えただけでワクワクするではないか。パナソニックのスピーカ付きダウンライトはとても音がいい。「千里」で体感した。
さらに言えば、風呂のお湯張りも結構だが、だれが風呂掃除をするのか考えたほうがいい。部屋掃除もしかり。風呂を洗い、階段を上って部屋を掃除するロボットを開発したら拍手喝采してやってもいい。
ビストロ
プラザ
「過去に類を見ない反響」 野村不の戸建て「千里円山町」/大阪市は1低層がない!
「プラウドシーズン千里円山町」
野村不動産は8月28日、同社初のIoTを搭載した「プラウドシーズン千里円山町」の記者見学会を行った。梅田駅直結21分、阪急千里線関大前駅から徒歩4分の高台立地の全76戸の大規模で、府下で2000年以降、駅から5分以内で第一種低層住居専用地域に立地する50戸以上の住宅開発は初めてという希少性が評価され、6月からの問い合わせが約600件に達するなど関西圏の戸建て市場でも稀にみる注目物件のようだ。
物件は、阪急電鉄阪急千里線関大前駅から徒歩4分、大阪府吹田市円山町な位置する第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率100%)の全76戸。敷地面積は150.03~180.87㎡、建物面積101.84~126.38㎡、予定価格は6,000万円台の半ばから9,000万円台の後半。構造規模は木造(2×4) 地上2階建て。竣工時期は2018年8月下旬・10月下旬。設計・施工は昭和工務店・西武建設。分譲予定は10月中旬。
現地は、高級住宅街として知られている標高50m、関大前駅との比高差約30mの「円山町」アドレスの高台で、財務省の官舎跡地。近接地では日本生命スタジアム跡地で大林新星和不動産が300区画前後の宅地造成を行っている。
同社初のIoTを全戸に搭載しているのが特徴で、「宅配便の対応」「玄関ドア操作」「照明スイッチ遠隔操作」「室内カメラを通じての会話」などが住設機器とスマートフォンを繋げることで可能となる。
また、パナソニックのスマートフォンで接続でき、ステレオやテレビの音声も再生できる新製品「スピーカー付きダウンライト」(定価39,500円)も標準装備。
同社関西支社住宅営業部副部長兼住宅営業第二課長・今村恒一氏は、「6月末に広告を開始して以来600件近い反響がある。業界全体としても過去に類を見ない多さ。2000年以降、駅から徒歩5分以内で50区画以上の供給事例もなく、大阪市内にはない第一種低層住居専用地域というのも評価されている」と話した。
開発二課長・小林和人氏は「関西圏で立地・街並み・品質を重視し、年間80~180戸をコンスタントに供給しているデベロッパーは当社くらい。この物件を旗艦物件として位置づけ、仕入れを強化していく」と語った。
◇ ◆ ◇
関西圏の戸建ては京都、奈良、芦屋などを取材したことがある。首都圏の田園調布や成城に負けない住宅地だったが、大阪府は初めてだった。
首都圏の同社の「プラウドシーズン」と比べると、外観デザイン・外構は若干異なるが、質的には高いレベルにあると思う。名古屋や東京からも問い合わせがあるというから、大阪に縁のある人は「円山町」がどのような住宅地であるかはご存じの方か多いのだろう。関大キャンパスもあり学園都市としても知られているのだろう。価格が高いのか安いのかはまったく分からない。
モデルハウスでは、先に紹介した「スピーカー付きダウンライト」がなかなかのスグレモノだ。いい音が出ていた。
パナソニックが今年2月に発売開始したもので、この種の機器を販売しているのは同社のみという。売れ行きも好調と聞いた。
このほか、子ども部屋には籠れる下屋裏収納がついていた。これも首都圏にはあまりないアイデアだ。
下屋裏収納
◇ ◆ ◇
驚いたのは同社関係者から「大阪市内には第一種低層住居専用地域(1低層)がまったくない」ということを知らされたことだ。早速、大阪市にも問い合わせた。その通りで、平成4年に法律が改正される前の用途地域指定でも「第一種住居専用地域」はなく、現在もまた「第2種低層住居専用地域」も含めて「低層住居専用地域」はどこにもないとのことだった。市の担当者は「規制の手法はいろいろあるので、野放図ということではない」と話した。
全国的に見ても大都市圏で1低層が1カ所もないのは大阪市だけのはずだ。
大阪市には大変失礼だが、「低層住宅の良好な住環境を守るための地域」が一つもないことが、東京と比べポテンシャルが圧倒的に低い一因ではないか。それとも、これが大阪人の「負けたらあかんで東京に」(天童よしみさん「道頓堀人情」)の意地か。
東京都23区はどうかというと、区域面積全体に占める1低層の割合は19.4%で、1低層が指定されていないのは千代田、中央、台東、墨田、江東、北、荒川の7区しかない。
首都圏ではこのほか埼玉県の八潮市、戸田市、蕨市、杉戸町などが指定されていない。
大林新星和不動産の開発地
アキュラホーム 期間限定で「井戸のある家」発売
アキュラホームは2018年8月18日(土)~9月30 日(日)の期間限定で「井戸のある家」を発売する。
同社のベース商品「住みごこちのいい家」 に、井戸をセットにして販売する。施工・設置までを組み入れたプランのほか、施主が自ら手掘りで施工することもできる2プランを用意。延床面積97.70㎡の場合、本体価格1,610万 円(税込)~。
井戸水は外気温の影響を受けにくいため、夏は水道水と比べ冷たく感じることができ、打ち水に使用すると、周辺気温が2℃程度下がることも分かっている。水道水の節水による節約、 災害時の非常用水の確保としても有効。
◇ ◆ ◇
井戸は文化だ。記者が小さい頃は「井戸端会議」は日常だった。飲用として井戸は各戸に掘られていたので、そこで「会議」が開かれることはなかったが、山から引かれた用水は水田用だけでなく、野菜を洗い、洗濯もする生活用水として利用され、主婦などのたまり場になっていた。子どもたちはそこで遊んだ。あらゆる文化・情報の集積場であり、発信基地でもあった。
今はネットで検索しても「井戸」に関する情報は少ない。とくに飲用井戸に関するものは厚労省の調査くらいしかない。首都圏では水道水質基準に満たない恐れがあることから、飲用として井戸が掘られることはないようだ。
しかし、散水、水遣り、打ち水だけでなく、最近は災害用井戸としても注目されている。
同社の「井戸のある家」がどれくらい売れるか注目したい。
◇ ◆ ◇
同社の宮沢俊哉社長は2012年、自宅を公開し、自宅に掘った井戸について延々と話したことがある。
井戸は2本で、1本は深さが約5m、もう1本は約8m。浅いほうは洗車や散水、水遣りなどに使用し、もう1本の深いほうは、水温が15~16℃で一定している井戸に水道水を循環させて夏場は冷たく、冬場は温かくする実験も行っていると話した。その実験結果はどうなったのだろう。
アキュラホーム カンナ社長こと宮沢社長が自宅を公開(2012/4/4)
敷延の難点解消&4棟で100㎡(30坪)のシェアスペース ポラス「ONE LINK」
「ONE LINK 紡ぎの街区」
先日(7月30日)、ポラスグループがJR西大宮駅圏の大規模分譲地「ONE LINK」販売事務所に併設した「ONE LINKカフェ」で浦和レッズレディース選手によるワークショップ「体幹トレーニング・サッカーイベント」を行ったことを紹介した。
当日はとても暑くうんざりしたのだが、浦和レッズレディースの選手が試合に出ると10キロは走ると聞かされ、負けてなるものかとくじけそうになるわが精神を奮い起こした。「記事は足で書け」と。
今回は、現地取材を行うと思いもよらない僥倖ともいえるネタにありつけることを紹介する。当日はイベント後、同社の広報担当者に勧められて「ONE LINK 森の街区・紡ぎの街区」のモデルハウス2棟を見学した。
同社の分譲戸建てはたくさん見ており、記事にもしているので詳細は省く。圧倒的な1階リビング天井高2.7mを巧みに生かしスキップフロアや小上がり、吹き抜け空間を演出し、木の温かみもふんだんに採用していた。冷房はつけられていなかったが、ムッとする暑さは感じなかった。断熱性能が高いからだ。
そのモデルハウスより驚いたのは、現地で渡された「紡ぎの街区」のパンフレットだった。4区画の住宅を図のように配置することで〝コモン〟空間を生み出している。
似たようなものは同社の「浦和美園」にもあるし、他のハウスメーカー、デベロッパーもよく採用するが、よく見ると通常の〝コモン〟と違うことに気が付いた。全ての住戸のリビングがこの〝コモン〟(同社は「シェアコート」と呼ぶ)を設けているほか、ゲート付きエントランス、住まいと外を緩やかに繋ぐ緩衝ゾーン、各住戸をつなぐ小路がついている。全体として敷地延長住戸の難点を解消して余りある空間を創造している。
「ONE LINK 紡ぎの街区」平面プラン
いったい権利関係はどうなっているのかなどを同社に聞いた。以下の回答を得た。
「各住戸の敷地は100%所有し、持ち分案分の土地はなく、それぞれ敷地を2~3筆に分筆し、さらにみんなが使えるシェアスペースには地役権を設定。従来のコモンスペースは持ち分案分で持つことが多く、建築協定の決めごとも縛りがゆるく、将来の建て替えの際にもめるなど不動産の価値として不安定な側面がある。またコモンを介して接道しているため、住宅ローンがつけにくいというデメリットもある。そこで今回は、すべての区画を通常通り接道させ、住宅ローンの問題を解消したうえで、お互いの敷地の一部を出しあい、地役権を登記することで、将来的にも同じ使い勝手を担保した」「敷地境界線につてはフェンスなど一切設けず、地面の仕上げの素材を変え、目地を設けることなどして、界線はわかるようにしている」
この結果、4棟の拠出面積はそれぞれ9.70~26.97㎡まであり、全体のシェアスペースは73.32㎡となり、緩衝ゾーンは各住戸とも13~15㎡となる。駐車スペースを合わせると、この4棟で実質的に100㎡くらいのシェアスペースを生み出していることになる。わずか4棟でも商品企画を練り、信じられないような空間を生む-さすがポラスというべきか。
紡ぎの街区は、JR川越線 西大宮駅から徒歩8分、土地面積140.35~155.16㎡、建物面積96.26~105.40㎡、価格4,480万~5,280万円。完成予定は2018年12月20日。
参考までに、優れた〝コモン〟〝小路〟を別掲の記事で紹介する。
「ONE LINK 森の街区」モデルハウス
ポラス 浦和レッズレディース選手が「ONE LINKカフェ」でワークショップ(2018/7/30)
どこにも負けない先進の街づくり「浦和美園E-フォレスト」竣工 街びらき(2017/3/27)
売電制度活用 業界初 管理費実質ゼロで年間306万円の収入 アキュラ「若葉台」分譲(2018/6/22)
三菱地所ホーム リフォームで攻勢 定額制から最上級まで備えたギャラリー 赤坂に開設
「Re Dran(リグラン)」モデルルーム
三菱地所ホームがマンション・一戸建てのリフォームに攻勢をかける。7月26日、住宅リフォームに関する多様なニーズに応える「赤坂リフォームギャラリー」をオープンするとともに戸建ての定額制メニューを採用した「Re Dia HOUSE(リディアハウス)」を発売開始すると発表した。
「赤坂リフォームギャラリー」は、定額制リフォームメニュー「Re Dia(リディア)」と24時間空調システム「エアロテック」を搭載した最上級の「Re Dran(リグラン)」の2つのマンションモデルルームを設置。「Re Dia HOUSE(リディアハウス)」は、内外装、インテリアなどを含めた延べ床面積に応じた定額制を提案しているのが特徴。
発表会に臨んだ同社社長・加藤博文氏は「当社は来年、創業35周年を迎える。水や空気もただの時代に24時間空調システム『エアロテック』を業界に先駆け主力商品とし販売してきた、その甲斐があった。他社の商品も含めニーズの高まりを感じる。今回のギャラリー開設によって、当社の本拠地である赤坂に来ていただければ新築からリフォーム、インテリアに至るまで全てを見ていただくことができる」と話した。
今回のリフォームギャラリーの開設により、既設のリフォームラボ赤坂、赤坂ハウジングギャラリー、オーダーグラン赤坂、インテリアサロンなど新築・リフォーム・インテリアに関する市よ―ルームが赤坂に結集することになる。リフォーム事業は、先に発足した「三菱地所のレジデンスクラブラウンジ」と連携し、現在の売上高約50億円を2020年度までに100億円に伸ばす意向。
「Re Dia(リディア)」モデルルーム
加藤社長
◇ ◆ ◇
ここ数年の同社の新築、リフォーム拡大にかける意気込みの大きさがひしひしと伝わってくるギャラリーだ。
2つのモデルルームのうちひとつの「Re Dran(リグラン)」は約110㎡。「エアロテック」も含め内装・インテリアに約5,300万円を掛けたという意欲作であるのが一目見てわかる。
場所にもよるが、都心・準都心の新築も中古も30坪のマンションは1億円をはるかに突破する。その2分の1か3分の1を追加すればこの空間が実現できるというのは魅力だ。「エアロテック」は大きな武器になる。
もう一つの「Re Dia(リディア)」は、70㎡の定額制498万円からスケルトンインフィルの850万円などメニューに応じて出来栄えが体感できるのが特徴だが、ここも内装・インテリアに約2,300万円かけたというから、キッチンカウンターなどは三菱地所レジデンスの高額マンションに引けをとらないレベルの高さだ。
玄関(左)とエアロテック吹き出し口
◇ ◆ ◇
同社は詳細を明らかにしなかったが、今秋にはマンション用エアロテックの新商品を発売すると話した。容量とともに価格を引き下げ、拡大を図るようだ。
既存マンションにエアロテックを搭載するには二重床にする必要があり、断熱性能を高めるにはサッシ・玄関ドアの変更も欠かせないが、ほとんどの管理組合はこれらの共用部分の変更は認めていないのが現状だ。標準管理規約の変更も考えていいのではないか。
野村不 戸建て「プラウドシーズン稲城南山」全87戸が早期完売へ
「プラウドシーズン稲城南山」
野村不動産の分譲戸建て「プラウドシーズン稲城南山」(93区画のうち87戸)が早期完売へ-6月中旬から分譲を開始した第1期60戸が即日完売したのをはじめ、その後追加販売した第1期2次15戸も即完し、9月に分譲予定の最終期第1期3次12戸も早期完売となる見込みで、わずか3カ月足らずで全87戸が販売することになりそうだ。
物件は、京王電鉄相模原線稲城駅から徒歩6分(戸建て街区までは徒歩11~12分)、稲城市東長沼字九号に位置する全93区画(うち6区画は販売事務所や公園として当面利用されるため分譲は87戸)。第1期3次の敷地面積は140.98~162.62㎡、建物面積は100.81~109.44㎡、価格は未定だが5,000万円台の前半から6,000万円台の半ばになる模様(既分譲の平均価格は5,870万円)。構造は木造(2×4)2階建て。施工は西武建設、東急建設、細田工務店。竣工は2018年4月・6月(竣工済)、9月下旬(予定)、11月下旬(予定)。
現地は、稲城駅からなだらかな坂を上った約87万㎡の土地区画整理事業地「スカイテラス南山」の一角に位置。同社が保留地を取得して分譲するもの。稲城市が所有する北側の土地からは比高差にして5mくらい高い傾斜地。スーパーへは徒歩1分、保育園には徒歩3分、小学校へは徒歩7分。
今回は第1工区で、このほか今年度末に土地区画整理組合と契約予定の第2工区と第3工区を含めて全体で約600戸になる予定。5区画分のクラブハウスも建設される予定。
購入者は地元稲城市居住者が中心だが、調布、府中市、その他のエリアからの広域からも集客できているのが特徴。敷地面積が140㎡以上で、北道路(北側が擁壁の住戸含む)でも眺望がよく、街並みが整っていることなどが評価された。
同社は、今回の「南山」を含め、現在施行中の「稲城上平尾」(25.1ha)と「稲城小田良」(29.5ha)土地区画整理事業地でも分譲中・計画中で、全体で約1,000戸となる。
道路幅が6mで、敷地の間口が広いのが特徴の一つ(10mくらいあったか)
◇ ◆ ◇
「南山」については、これまで数回記事にしている。それらを参照していただきたい。
ここの魅力は何といっても里山だ。今回の戸建て街区から徒歩数分で里山の入り口に着ける。民有地だが、道路もあり規制もないから奥深くまで歩ける。ところどころ畑もある。休日などにゆっくり親子で山に分け入るのに絶好だ。
名も知らない小鳥がきれいなさえずりで歓迎してくれるだろうし、これは大きな声でいってはいけないことかもしれないが、山椒魚が生息する沢もある(立ち入り禁止になっていたような気がするが)。
皆さんは山椒魚と言ったって、小説かテレビの映像、図鑑しか知らないだろうが、記者は小さいころ、祖母と連れ立ってよく捕りに行った。弁当箱にいっぱいになるくらい捕れた。いもりとよく似ているが、それほど不気味でもなく、滑稽な姿をしている。
精力がつくと言われており、隣の爺さんにあげたりすると飴玉をもらった。もちろん自分でもそのまま口の中にほうりこんだり焼いて食べたりしたことがある。美味しくはない。発情などもしなかった。当たり前か。
いまはみんな都心志向だ。それはそれで結構なことだが、「南山」のようなまだ自然が残る郊外で暮らせば人間性が取り戻せるかもしれない。
門柱
売電制度活用 業界初 管理費実質ゼロで年間306万円の収入 アキュラ「若葉台」分譲(2018/6/22)
「おいでよ!南山」イベントに約500人 エリアマネジメント南山・野村不(2014/9/29)
売電制度活用 業界初 管理費実質ゼロで年間306万円の収入 アキュラ「若葉台」分譲
「ヒルサイドテラス若葉台」
今日(22日)、3カ所のマンション・分譲戸建ての取材をこなした。どこを起点にするかだが、取材先はわが多摩センターからだと若葉台(12分)-八千代緑ヶ丘(1時間43分)-池袋(1時間30分)-多摩センター(55分)。移動だけで4時間33分。新幹線だと東京-広島か。
どこから書いてもいいのだが、まず若葉台から。この日、アキュラホームは京王相模原線若葉台駅から徒歩17分の分譲戸建て「ヒルサイドテラス若葉台」の報道陣向け現地記者見学会を行った。全51区画の同社としては素地から取得して分譲する初の大型プロジェクトで、宮沢俊哉社長が直々に出席、「理想の住まい、年を経るごとに価値が高まる街づくりを実現した」と熱っぽく語った。
物件は、京王相模原線若葉台駅から徒歩17分、稲城市若葉台4丁目に位置する開発面積約12,000㎡の全51区画。土地面積(建築確認済住戸24戸)は174.33~247.75㎡、建物面積は90.26~120.27㎡、価格は未定だが5,000万円台前半~6,000万円台後半の予定。竣工(予定)は平成30年4月下旬、7月下旬。構造は木造軸組工法2階建。施工はアキュラホーム東京中央・アキュラホーム埼玉中央・イトーピアホーム・細田工務店・小田急ハウジング。6月30日(土)、モデルハウスを一般公開する。販売開始は7月下旬。販売代理は東急リバブル。これまでの資料請求は約330件。
現地は、駅からなだらかな坂を上った多摩ニュータウン若葉台地区のマンション群(若葉台パークヒルズ)と、多摩カントリークラブ・里山保全区域に隣接する比高差約4mの南傾斜地。3年半前に同社がUR都市機構から用地を取得した。
あらゆるモノ・コト・空間をシェアすることでコミュニティを育む街づくりがコンセプト。延べ床面積約108㎡の木造平屋建て集会施設「センターハウス」を建設し、その屋根と分譲する棟に太陽光発電を搭載、国の固定価格買い取り制度を利用して売電収入を街の維持管理費用に充当、余ったお金は管理組合法人の収入とするほか、全戸数の約半数が3~4戸が共同利用する「コモン付き」となるのが特徴。
見学会に臨んだ同社・宮沢俊哉社長は、「素地から取得して道を付け、企画・設計して分譲するのは初めてだが、多くの専門家の方々の知見を得て、これまで考えてきた理想の住まい、年を経るごとに価値が向上する〝経年増価〟の街づくりを実現した」「バブル崩壊でそれまでの価値観が変わった。これからは生活を豊かにする、利用価値を高める、資産価値を向上するような市場を創造することが求められる。その価値を可視化できるかどうかだ」などと熱弁をふるった。
コモンスペース
「センターハウス」
センターハウスの天井(ラミナ張弦梁)
宮沢氏
◇ ◆ ◇
同社の分譲戸建ては「むさしのiタウン」や「浦和美園E-フォレスト」が印象深く記憶に残っている。このプロジェクトは1~2年前から聞いていたので、どのようなコンセプト、企画になるのか楽しみにしていた。
発表会には宮沢社長のほか、同社住生活研究所長・伊藤圭子氏、同社まちづくくり推進部長・中道弘敬氏、基本計画段階から参画している市浦ハウジング&プランニング社長・川崎直宏氏が参加し、挨拶・説明を行った。質疑応答を含めたっぷり1時間を費やした。
そして、宮沢氏が「価値を可視化できるかどうか」と締めくくった言葉はまさに正鵠を射たものだと思った。物件特性を分かりやすく消費者に訴え切れるかどうかがプロジェクトの成否のカギを握っている。
コンセプトの一つであるコミュニティ-これは戸建てもマンションも同様、ここ数年大きなテーマになっている。しかし、これが販促に結びついたプロジェクトは多くないはずだ。
むしろ、コミュニティの大切さを訴えれば訴えるほど、コミュニティが希薄になり、人々は孤立を深め、閉塞感が強まり、まるで白内障のような色彩を濃くする社会を浮き彫りにするだけではないかと、記者などはしらけ切ってしまう。それよりも、ストレートに実利を消費者訴えることのほうが効果的ではないかと。
そんなことを考えながら宮沢氏などの話を聞いていたのだが、その実利が中道氏から具体的に語られた。
中道氏は、前述したように固定価格買い取り制度を利用し、売電価格18円、センターハウスの維持管理費・修繕積立金を5,000円/戸と設定し、余剰売電価格は5,000円/戸と試算していると話した。つまり5,000円×51戸(センターハウス除く)×12カ月=306万円が組合の年間収入となる。
戸建て団地でも管理組合が設立される例は珍しくない。月額1万円を超えるケースもある。それが実質無料になるばかりか、年間にして306万円の収入になる。同社によるとこのような事例は全国初という。これはインパクトがある。
「コモン付き」も真新しい提案ではないが、訴求力がある。これは宮脇檀建築研究所に勤務していた二瓶正史氏のアイデアだろうと思う。管理組合の運営には齊藤広子氏が関わるのも後押しとなる。無電柱化、隣接の里山保全地域も価値がある。住棟は長期優良、マルチパーパスルーム、マルチユーティリティ付きが特徴で、これもいい。
これらを徹底して可視化=見せる化できれば、早期に完売できるのではないか。
同駅より1駅都心寄りの稲城駅から徒歩6分の野村不動産「プラウドシーズン稲城南山」第1期60戸(平均5,769万円)が6月16日抽選の結果、即日完売した。競合は相乗効果を生むかもしれない。
現地に隣接する里山保全地域
モデルハウス(観葉植物はフェイクが多かったが、果物類は本物)
グランピンググッズ(ビール、鳥の丸焼きなど飲食料は本物=報道陣に供されたわけではない。見るだけ)
どこにも負けない先進の街づくり「浦和美園E-フォレスト」竣工 街びらき(2017/3/27)
GWに126組来場 アキュラホーム「エコモデルハウス」(2010/5/6)
「むさしのiタウン」平均3.7倍の申し込み倍率に(2007/2/13)
敷地内に建っていた100年超の古民家古木を採用 細田工務店 分譲戸建て「武蔵境」
「グローイングスクエア武蔵境ストロングスマート」
細田工務店は6月5日、築後100年以上の古民家の古材をモデルハウスなどに活用した「グローイングスクエア武蔵境ストロングスマート」の見学会を報道陣向けに行った。価格は未定としているが、すぐ近くには玉川上水が流れる一角で、いったいいくらの値を付けるか。
物件は、JR中央線武蔵境駅から徒歩17分(バス5分、バス停徒歩2分)、西東京市新町5丁目の第一種住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全17区画。敷地面積は110.0~115.56㎡、建物面積は91.86~103.44㎡、第1期(8戸)の価格は未定だが、南道路の住戸は6,000万円台の後半になる模様。規模・構造は木造軸組(在来)工法2階建て。建物は外構を残しほぼ完成済み。
現地は、玉川上水へ徒歩2分、小金井公園も徒歩圏の住宅街の一角。従前の敷地は700~800坪くらいあり、築100年以上の古民家が建っていたところで、オーナーが住まなくなって10数年が経過しているが、その後はケア施設や学童クラブなどとして利用されてきたという。同社が相対で敷地を取得した。
開発に当たっては、近隣住民の惜しむ声を生かすために古材の一部をモデルハウスに残すことを決定した。
建物の解体は、同社の大工チームが建てた順とは逆に1本ずつはがしながら行い、保管し、再生利用した。
再利用に使用したのは、天井板、戸襖、化粧柱、丸太梁、壁面化粧板など。
外構にも古材が使用されていた
◇ ◆ ◇
モデルハウスは2階リビングの約28坪。玄関に入ると、壁には額装が施された一服の絵のような下見板が飾られ、天井板からは昔から使われていたと思われる時代物の照明が吊るされていた。
2階のダイニングには丸太梁が化粧梁として、洗面所の鏡廻りの額装が、床柱には落とし掛け材がそれぞれ採用され、高さ40センチの小上がり部分には大工さんも名前が分からないという硬そうな材質が用いられていた。
この価値をどう見るかだが、古民家風デザインが好きな人にはたまらないのではないか。記者ならもっと徹底してやるが。
玄関(左)と2階洗面所
キッチンからダイニング・リビング写す
ダイニング天井(天井高は3150ミリ)
◇ ◆ ◇
現地の近くに流れる玉川上水の両岸には緑が生い茂り、ひんやりとした冷風が古民家風のモデルハウスを見学したばかりの記者の火照ったほほを撫でた。
川の水量は太宰治が入水心中したほどではないが、つがいの鯉が泳ぐには十分すぎで、付かず離れず、波風ではなくて穏やかな波紋でもって、「ここは住みいいよ」とまだ梅雨前だというのに季節外れの、あるいは〝色鯉〟は季節に関係ないのか秋波をまき散らしていた。
玉川上水(中央に鯉が泳いでいる)