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「ボゥ ヴィラージュ浦和美園イストワール87」

 ポラスグループの中央住宅は9月16日、さいたま市「みそのウイングシティ」内の大規模戸建て開発「ボゥ ヴィラージュ浦和美園イストワール87」の分譲を開始した。分譲に先立つ15日、報道陣向け見学会を行った。

 物件は、埼玉高速鉄道浦和美園駅から徒歩14分、さいたま市岩槻区美園東1丁目に位置する全87棟。土地面積は150.08~160.09㎡、建物面積は97.10~116.28㎡、第1期(19棟)の価格は4,000万円台前半から5,000万円半ば。構造は木造2階建(2×4工法、在来工法)。

 同社マインドスクェア事業部と戸建分譲事業部が共同で企画・開発した案件で、同エリアでは12年前の第一弾の「ボゥ ヴィラージュ美園」(172棟)以来2度目。

 フランス語で〝美しい村〟を意味する従来の〝ボゥ ヴィラージュ〟に〝歴史〟〝物語〟の意味がある〝イストワール〟を加え、〝人生を深く味わう〟を新たなコンセプトに、同社オリジナルの3種類の瓦屋根を用いたほか、珪藻土、銘木床、自然素材の壁を採用してそれぞれのライフスタイルにあった家を選択できるようにしているのが特徴。

 見学会で挨拶した同社取締役事業部長・金児正治氏は「12年前の172戸の第一弾は徹夜組が40組も出るほどの人気で早期完売した。涙を流された方もいた。心を込めれば買っていただけるということがよく理解できた。以来、当社グループは当地で約500戸の戸建てを供給してきた。今後は来年2月譲のマンション340戸を含め1,000戸超の供給を予定している。戸建てとマンションなどとの複合開発を当地など6カ所で進めており一層力を注ぐ」などと語った。

 同社取締役・石井克利氏は、「12年前の第一弾以来の社内JV。5月からこれまで161件の資料請求があり、月にして平均40件。第1期19戸についてはすでに9棟の要望がある。想定通り反響」などと話した。

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 浦和美園駅に降り立つのは10回目以上だ。何度も指摘してきたのだが、日本一ファンが多いというサッカーチーム・浦和レッズのホームスタジアムがあるというのに街づくりは遅々として進んでいない印象を受ける。金児氏が「12年前と比べ隔世の感がある」と述べたが、記者は逆だ。

 やはり同時進行の形で開発が進められてきた千葉県の柏の葉キャンパスと比較してしまう。柏の葉の当初のマンション単価は160万円くらいだった。浦和美園は140万円台だったと記憶している。現在は、柏の葉のマンションは坪200万円を突破する。戸建ては6,000万円か。浦和美園のマンションは坪170万円でも苦戦している。

 この差を当事者は考えないといけない。一言でいえば官主導と官民学連携の差だ。

 見学会が行われた15日、会場の美園コミュニティセンターにある図書館で埼玉新聞を読んだ。スポーツ欄トップは西武・菊池雄星が14勝をあげた記事で、県のアマゴルフ大会の模様に全面を割くなどいい新聞だ。

 さいたま市の2018年度の予算についての記事もあり、過去最大の459億円の予算不足が生じるとか。その理由の一つに都市整備に関わる建設事業費280億円が増加するためとあった。

 いつもそうだが、浦和美園駅に降りて、コーヒーを飲むにもタバコを吸うのにも徒歩13分のイオンモールに行かないといけない。飲み屋などもほとんど駅前にない。スタジアムまで徒歩26分だ。サッカーファンはよく暴動を起こさないものだ。誰のための街かと考えてしまう。

 そんな中で、ポラスグループはこの12年間で約500棟を供給してきたという。当地での戸建て着工シェアが知りたいところだが、圧倒的な数字だろうということは容易に想像できる。

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「フレンチハウス」(左)と「こもれ美の家」

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 今回の企画設計を担当したのは、先に取材した同社の分譲戸建て新ブランド〝Machie(マチエ)〟を作った古垣雄一氏。「美園エリアは建築条件付きの住宅が多く、植栽が少ない。当物件は緑を意識的に多くすることで美園エリアの街並みを牽引していきたい」と語った。

 物件はよくできている。4棟のモデルハウスのうち、「フレンチハウス」は、6色から選べるキッチンカウンタータイルと、ミルキー仕上げのキリ材を用いたデザイン壁が美しい。このプランの説明を、第1期の外構設計を担当し、全体としては販売戦略・パンフレットなどの販促も担当している同社戸建分譲設計本部設計一部 営業企画設計課 企画設計課主任・角張泰広氏が行った。(角張さん、せっかく自然素材を多用し、レベルの高い住宅をつくったのに、あの安っぽい造花はないと思います。画竜点睛を欠くとはこのことを言うのではないですか)

 「アトリエの家」は、リビングサイドの小上がり50~60センチの「スキップアトリエ(DEN)」の提案がいい。DENの部分の天井高は2.1~2.2m確保されており、リビング床の天井高を2.7m確保しているからこそできる芸当だ。

 「こもれ美の家」は、リビング東の高窓から光を取り込み、国産材のスギを壁全面に張って自然の風合いを演出しているのが特徴。1階水回りの部分を利用して、2階の1室の天井高を2.7mにしているのも面白い。参考までに。スギの学名はCryptomeria japonicaで、〝隠れた日本の財産〟という意味だ。英語のCedarを使ってほしくない。

 「リゾートハウス」は、アーチ状と擬石の壁を配した天井高3mのキッチン・ダイニングと、3面の窓とつながったウッドデッキを配してリゾート感覚を演出しているのが特徴。小上がりの和室は床下収納付き。

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この日の駅前の道路(左)と8月25日の道路(記者がひどいと書いたから刈ったわけでもなさそうだ)

驚嘆のプランと売れ行き ポラスの戸建て新ブランド〝Machie(マチエ)〟(2017/8/25)

開発スピードを上げる起爆剤へ ポラス「ボゥ ヴィラージュ浦和美園」1期は即完(2016/2/29)

ポラス「ボゥ ヴィラージュ美園」早期完売へ(2006/6/20)

カテゴリ: 2017年度

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「マインドスクェア南大泉Ⅰ」モデルハウス(左側が南方向)   

 ポラスグループの中央住宅が分譲している「マインドスクェア南大泉Ⅰ」(7戸)「マインドスクェア南大泉Ⅱ」(13戸)「マインドスクェア南大泉Ⅲ」(3戸)を見学した。今回は敷地延長(敷延)を逆手に取った斬新プランを盛り込んでいる「マインドスクェア南大泉Ⅰ」を紹介する。

 物件は、西武新宿線武蔵関駅より徒歩14分、練馬区南大泉1丁目に位置する全7棟現場。土地面積は110.09~110.83㎡、建物面積は89.83~108.08㎡、現在販売中の住棟(5戸)の価格は5,480万~6,580万円。建物は木造2階建(2×6工法)で5月に竣工済み。

 2×4工法より強度が高い2×6工法を採用し、同社の標準仕様である1階天井高2.7m、サッシ2.2m、天然木挽き板フローリング、同社オリジナルのウッドパネルを採用しているのが特徴。

 敷地延長(敷延)付モデルハウスは6号棟。敷地面積は約110㎡、建物面積は約91㎡、敷延部分は約2.7m×約14m。敷地と建物は他の住棟とそれほど変わらないが、価格は他の住棟より1,000万円くらい安く設定し、1階部分の弱点を利点に変える工夫を凝らしている。

 玄関を入ってすぐ右手(南側)にロードバイクとその備品などを配置した約3.1畳大のDEN(土間)を設置。それにつながる16.2畳大のリビング・ダイニングの南面は壁面を多くし、一体利用ができるように工夫。デザインでは、枕木や流木を利用したようなテーブル、照明などを採用している。

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DEN(土間)

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 敷地延長(敷延)については説明するまでもないが、建築基準法では建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないと定められており、道路から奥まったところに建物を建てる場合、敷地を延長して接道する部分のことを敷地延長(敷延)と呼ぶ。敷地形状が旗竿状になっていることから「旗竿敷地」と呼ぶこともある。

 一般的に敷地延長(敷延)がある建物は日照・通風・プライバシーに難点があり、その難点を解消するために戸建ての場合は2階にリビング・ダイニングを配し、価格を低めに設定するが、最後まで売れ残るケースが多い。デベロッパーの悩みの種だ。

 今回の敷延付き住宅はそれを巧みに〝料理〟している。陽が当たらないのであれば敢えて窓を取ろうとせず、壁面を増やしその空間を生かした逆転の発想が面白い。臨家にとっても好都合だ。〝お見合い〟を気にしなくて済むからだ。

 問題はⅠ・Ⅱ・Ⅲすべてあわせても23棟の現場だ。広告宣伝にそれほど費用はかけられない。この種の個性的なプランに敏感に反応するユーザーにどう伝えるか。〝価格ありき〟の商品が氾濫している市場ではその差異を表現するのは容易のようで難しい。天井高2.4~2.5mの戸建てしか見たことがない都内居住者に前述した同社標準の天井高2.7mの〝価値〟を伝えきれていないのと同じだ。

 これだけ様々な工夫を凝らした特別な敷地延長(敷延)物件の特徴を伝えるための仕掛けを早急に考える必要がある。同社がこれまで考え出してきた「良さ」を明確に伝えていくことが出来れば都内でもユーザーの支持を広げるのは間違いない。

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敷地延長部分

カテゴリ: 2017年度

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「ブルックリンハウス」のLDK

 ポラスグループ中央住宅の分譲戸建て新ブランド〝Machie(マチエ)〟を商品化した第一弾2棟を見学した。天然無垢の挽き板フローリングやレンガ壁、木製の建具・面材、自然石をふんだんに用い、デザインも個性的なものにするなど住まい手の五感を刺激する物件だ。〝建売り〟は不特定多数の人がターゲットではなく、住まい手一人ひとりの個性に訴える商品でなければならない-このことを強く感じた。

 見学したのは、4現場全8棟のうちの2棟。1棟は埼玉高速鉄道浦和美園駅から徒歩19分の「ブルックリンハウス」(土地面積187.16㎡、延べ床面積109.06㎡、価格4,680万円)、もう1棟は同駅から徒歩15分の「煌きの家」(土地面積289.07㎡、延べ床面積134.56㎡、価格6,380万円)。建物は木造在来工法2階建て。今年6月の完成を待たずに成約済み。

 現地は土地区画整理事業によって街づくりが進められている「みそのウイングシティ」(313ha)の一角。UR都市機構から〝飛び地〟を取得して分譲するもので、区画が散らばっているのはそのため。敷地面積が大きいのは、地区計画によって1区画当たり最低面積150㎡の規制がかけられているため。

 「ブルックリンハウス」は、外壁にレンガ調サイディング、カースペースにレンガをそれぞれ採用。室内のカラーリングは白を基調とし、黒の棚、濃紺の壁・ブラインドを採用することで引き締めている。1階の21.7畳大のLDKは天井高約2.7mのLと2.4mのDKとでスキップさせ、床はオークの天然無垢の挽き板。キッチンはステンレスと木の質感を黒のフレームで引き締めたウッドワン製〝KUROMUKU〟を、キッチン壁には本物のレンガを採用。洗面室は暖房機付き。宅配ボックスも設置している。

 「煌きの家」は、オーソドックスなプランで、大きな庭と一体利用できる12帖の木目調テラスを設置。20.1畳大のLDKはフルフラットで大きな吹き抜け付き。隣の5.6畳大の居室はテキスタイルフロアとすることで多目的に利用できる空間にしている。浴室は1.25坪を採用。ブラインドも電動式。2階にはインナーバルコニーを設置。

 〝Machie〟は、フランス語で「素材」を意味するMatériel=マチエールと「絵になる街」を作るという思いから採用したもので、同社は今後も〝飛び地〟などで積極的に供給する方針だ。

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「ブルックリンハウス」LDK(左)とキッチン〝KUROMUKU〟・レンガ壁

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「煌きの家」(後方に埼玉スタジアムが見える)

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テキスタイルフロアの居室

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 こんなことを書くとお叱りを受けるかもしれないが、日本一人気があるサッカーチーム浦和レッズの本拠地で、ワールドカップが行われた「埼玉スタジアム」や大規模な商業施設「イオンモール」があるのに、浦和美園の街づくりは遅々として進んでいない印象を受ける。

 換地処分はほぼ完了しているはずなのに、店舗や住宅はポツリ、ポツリ、空き地が目立つ。道路には雑草が生い茂り、街路樹も貧相なものばかり。それだけが要因ではないが、マンションの売れ行きもいまひとつだ。

 そんな中で、同社は孤軍奮闘。これまで浦和美園エリアで500戸近い戸建てを分譲している。記録的な戸数だろう。

 しかし、いくら実績があるとはいえ、同社が得意とするのは〝街づくり〟だ。1棟分譲はどこにでもある誰にでも受けるような無難な没個性的な建物だろうと想像していた。

 ところがどうだ。金にあかした注文住宅ならいざ知らず、不特定多数をターゲットにした戸建てとはとても思えない、想像を超えるプランに驚愕した。建物が完成する前に、外構が全くできていない段階で売れるというのもすごい。

 「よくもこのような大胆なプランを上司が認めましたね」と、企画・設計を担当した同社戸建分譲設計本部設計一部 営業企画設計課 企画設計課主任・角張泰広氏(33)に単刀直入に聞いた。

今回新しいブランド〝Machie〟の開発は戸建分譲設計本部の古垣課長が担当した。その現場を案内してくれたのが古垣氏の部下である角張氏だった。

 角張氏に代わってポラスグループ広報担当者が、角張氏は記者がかつて〝ポラスのホープ〟と書いた同社戸建分譲設計本部設計一部部長・野村壮一郎氏の部下だと明かした。

 その言葉ですべてが納得できた。野村氏などが手掛けた物件を最初に見たのは8年前の「新鎌ヶ谷」の物件だったが、そのときも思い切ったプランに驚愕した。野村氏が35歳の時だった。その後、野村氏が手掛けた物件を見たのは数物件に上るはずだ。

 今回の企画設計を担当した古垣氏、角張氏と野村氏を重ね合わせると、この大胆なプランが生まれるのは容易に理解できる。角張氏は昨年、バイオエタノール暖炉を装備した戸建てを手掛けたそうだ。

 暖炉が素晴らしいのはみんなよく知っている。しかし、費用は安くない。〝建売り〟ではまず採用しない。

 角張氏は「私は北海道旭川市出身で、祖母の実家に薪ストーブがあったのを思い出して採用することにしました。炎のゆらぎは一晩中見てても飽きない」と種を明かした。

 ポラスのロゴ「POLUS」のOには北極星(pole star)が描かれている。この星を中心にそれこそ綺羅星のごとく同社にはスターが存在していることを改めて感じた。

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角張氏

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暖炉を採用した船橋の「REASON船橋夏見台」(完売済)モデルルーム

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「ブルックリンハウス」の前の市道(左)と埼玉スタジアムと駅をつなぐ道路と街路樹(左はハナミズキか、右はサルスベリか)

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駅前の道路と街路樹(昨年、千葉ニュータウンの雑草について書いたら、その後、きれいに刈り取られたそうだ)

ポラス「白岡」の戸建て 埼玉県「先導的ヒートアイランド対策モデル」認定(2016/11/29)

ポラスグループ中央住宅が「キッズデザイン賞」受賞 国産材のスギ板壁を壁全面に採用した「きなりのまち」 (2012/7/24)

カテゴリ: 2017年度

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「DomaHut(どまはっと)」

 ポラスグループのポラスガーデンヒルズは8月10日、2014年の「第1回ポラス 学生・建築デザインコンペティション」に応募があった全458作品のなかから実物件化を目的として建築を進めてきたモデルハウス「DomaHut(どまはっと)」が完成したのに伴い、報道陣向けに見学会を行った。実物件化は一昨年の「三郷中央」に次ぎ2件目。

 採用したのは、当時、九州大学大学院の松川真友子氏の「もう一つの連なる棟」。建物は松戸市牧の原に位置する敷地面積101.58㎡、木造軸組工法3階建て、延べ床面積125.25㎡。5,000万円台の前半で分譲する予定。当時の応募要件は、木造による1棟~最大10棟の「自立型の共生を表現した住宅」だった。

 縦長の建物を3分割し、中央のブロックの屋根を90度回転させ、屋根の間から光と風を取り込み、半屋外と半屋内の土間空間を演出し、梁・柱・天井などに構造体を効果的に露出させているのが特徴。

 事業化に関わった同社ガーデンヒルズ事業部設計部部長・安藤欣司氏は「家の真ん中に土間空間を設け、外とつなげるアイデアが面白かった。適地を選定するのとプランニングに2年間くらい要した。コストをもっと下げるのが課題」などと話した。

 現在、北川原温建築設計事務所に勤務する一級建築士の松川氏は「実家が長崎で、隣近所の付き合いが大事だったのを思い出し、庭が持てない密集住宅地の問題を解決しようと考えた。プロの力によって事業に関われたことに感謝している」と語った。

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土間空間

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安藤氏(左)松川氏

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 松川氏がどのような「密集住宅地」を想定したのかわからないが、記者は昭和50~60年代、いわゆるミニ開発をよく取材した。ひどいものは、長屋として確認申請し、実際は切り離して一戸建てとして分譲されたものもあった。猫の額ほどの庭もなかった。明らかに違法建築だった。

 安藤氏が「コストは2階建てと比較すると1.7倍、3階建てだと3割増し。窓も嵌め殺しにせざるを得なかった」と語ったように、コスト高は否めないが、ミニ開発の問題点を解決しようという意欲がストレートに伝わるモデルハウスだと思う。

 とくに1階のビルトインガレージ-土間-ダイニングの提案がいい。土間の広さは5坪くらいか。光と風を呼び込み、外と緩やかにつながるテーマがよく表現できている。3階までのボイド空間の天井高は約9メートルもある。

 課題・難点もある。松川氏が当初描いた「密集住宅地のミニ住宅の閉じられた空間を外に開放する」狙いを徹底させるなら、土間空間は「勝手口」のような機能を持たせてよかったのではないかと思う。

 もう一つ。3階部分の2つの居室のうち1室は窓が1カ所しかなく、風が抜けない。窓の外は屋根が迫っている。9メートルのボイド空間は捨てがたいが、外壁の屋根形状はそのままにし、内部は陸屋根にして屋上テラスとして利用できるようにすればよかったのではないか。

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2階リビング

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三層の土間ボイド空間

ポラス中央住宅 「坪庭」と「玄関」を一体化 学生コンペ作品を実物件化(2015/12/3)

ポラス 学生・建築デザインコンペに458作品が応募 5作品が入選(2014/8/6)

 

 

カテゴリ: 2017年度

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「ORDER GRAN AKASAKA」(左)と「リフォーム赤坂ラボ」

 三菱地所ホームは7月15日、同社の赤坂ハウジングギャラリー内に設置した富裕層向けのフラッグシップブランド「ORDER GRANオーダーグラン)」第2弾のモデルハウス「ORDER GRAN AKASAKA」と「リフォーム赤坂ラボ」をオープンする。一般公開に先駆け13日、報道陣に公開した。

 「ORDER GRAN AKASAKA」は、昨年4月、駒沢公園ハウジングギャラリーにオープンした第一弾に次ぐもので、「リラックス&アクティビティ」をテーマにファサード・インテリアデザイン、アクティビティをさらにグレードアップした。同社の全館空調「エアロテック」を搭載、ホームスパ、ゴルフシミュレーション、シアターリビングなどラグジュアリーな最高品質の空間を提案。設計依頼をした顧客向けに体験宿泊できるようにしているのが特徴。

 構造・規模は2×NEXT構法2階建て延べ床面積187.95m。モデルハウス仕様の坪単価は約200万円。

 「リフォームラボ赤坂」は、1階を築30年のビフォー住宅、2階をリフォーム後のアフター住宅として再現し、「リフォーム100のポイント」を確認しながらリフォーム後の空間や暮らしを体験することができる施設。

 記者発表会・内覧会に臨んだ加藤博文社長は「年度明けはやや出遅れたが、6月以降は盛り返している」などと現況を語るとともに「今後のマーケットは楽観できない。当社の『エアロテック』を実際に体験していただくのと、建て替えの楽しさを表現することで、新築もリフォームもわくわくするような戸建ての楽しさを演出した」と語った。

 「ORDER GRAN AKASAKA」は年間20~25棟の受注が、リフォームの売り上げは前年度7億円だった一般向けを10億円に伸ばすのが目標。

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「ORDER GRAN AKASAKA」外観

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加藤社長

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 「エアロテック」が発売された22年前、記者は爆発的にヒットするのではないかと思った。しかし、外断熱マンション同様、それほど伸びなかった。

 なぜか。その良さは実際に体験しないとわからないからだとずっと考えてきた。「快適性」はなかなか金額に置き換えられないし、文章でも表現しにくい。最近は各社ともそのことが分かり始め「体験宿泊」を提案するところも出始めた。

 同社が今回モデルハウスの「体験宿泊」を可能に、同時にリフォームのビフォー、アフターをその場で見ることができる施設を併設したのは業界初だ。模型コーナーや設備、外壁材の展示コーナーも実によくできている。同社と他社がどう異なるのかもビジュアルに表現している。

 同社は今年4月、横浜みなとみらい地区にも仲介・リフォームを強化するショールームを開設した。近くマンション用のエアロテックも発売するという。いよいよ同社が本気で取り組み始めた。

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「ORDER GRAN AKASAKA」

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「リフォーム赤坂ラボ」 ビフォー(左)とアフター

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「ORDER GRAN AKASAKA」の単価200万円を聞いて記者は全然驚かなかった。同業他社もこれくらいの単価のモデルハウスを建てているし、都心のマンションなら20坪で軒並み1億円を突破する。

 それより驚いたのは、「体験宿泊」を実施することだった。一般的な住宅展示場は防災面から火器を使用することは不可能で、例えば立派な暖炉を設けながらその炎のゆらぎを見せることができない。赤坂ギャラリーは同社のみの施設だからそれができる。

 見学してさらに驚いた。広さは187㎡(56坪)、設備などを含めれば1億数千万円の価値がある住宅に「設計依頼をした人」という条件付きとはいえ無料で一泊できる。〝さすが三菱地所〟だと思った。仮にお金を出したらいくらになるか。数十万円の価値はある。

記者は加賀屋ホテルにもパークハイアットにもリッツにも止まったことがあるし、明豊エンタープライズの1億円の外断熱マンションにも宿泊したことがあるが、今回の同社の住宅はその数倍の価値がある。

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同業他社との差も分かりやすく展示している

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 ゴルフをやらない人には無価値だが、1,000万円かけたというゴルフシミュレーションが素晴らしい。韓国の女子プロが同じ施設を利用していたものだそうで、世界の名門60コースが体験できるそうだ。

 加藤社長(52)が実演して見せた。ロペ倶楽部の488ヤードのパー5。まずドライバーで200ヤードを飛ばした。ラフに入ったが、次は5番アイアンで170ヤード、ピッチングで見事にスリーオン。バーディは逃したがパー。見事だった。

 傍にいた同社関係者は「1時間1,000円で貸せますね」と話したが、これはない。1億円もする戸建てを建てる人が時間貸しするわけがない。

 加藤社長がどんな住宅に住んでいるかわからないが、これはもう絶対モデルハウスそのままで建てるべきだ。年間20~25棟は少なすぎる。〝三菱地所を、見に行こう。地所ホームで家を建てよう〟をグループ全体で訴えれば、この数倍の受注は獲得できるのではないか。

 加藤社長もそのような考えを示したように、加藤社長と三菱地所に一つお願いしたい。〝オール三菱〟は価値があるが、三菱地所の分譲戸建ては基本「エアロテック」を標準装備すべきだ。同業他社と同じ建売住宅を分譲する意味は全然ないと思う。

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488ヤード 見事パーセーブ ゴルフシミュレーション 実演して見せる加藤社長

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浴室

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リビング

カテゴリ: 2017年度

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「セキュレア西落合4丁目4号地」

 大和ハウス工業は7月11日、共働き世帯をターゲットにした分譲戸建て「家事シェアハウス」のモデルハウス見学会を行った。家事を「分担」するのではなく「名もなき家事」を含めた家事を家族全員で「シェア」(共有する意味を込めた言葉)する考えをもとに、新たな間取り提案・仕掛けを施した住宅だ。

 モデルハウスは、西武池袋線東長崎駅から徒歩7分、新宿区西落合4丁目に位置する「セキュレア西落合4丁目4号地」の全5棟の現場。土地面積は約107~110㎡、建物面積は約104~108㎡、価格は未定だが9,000万円台から1億1,000万円台の予定。7月22日から分譲開始する。

 ①自分のものは自分で管理する自分専用カタヅケロッカー②洗濯家事をスムーズにするファミリーユーティリティ③散らかる紙類をまとめて仕分けするお便り紙蔵庫④家族の持ち物を個別に収納する自分専用ボックス⑤2階に持っていくものを置く階段ポケット⑥明日着るものを掛けておくビューティクローゼット-などがついている。

 同社東京本店住宅事業部事業部長・上野敦仁氏は「最近は分譲戸建て用の土地が仕入れられなくなってきた。背伸びをしても他社のほうがはるかに上回る値段で買っていく。土地値でなく(建物を含めた)売り値ではないかと思うくらい高くなってきた」などと最近の市場に触れ、「当社は女性活躍について積極的に取り組んでいるが、今回の住宅は女性目線で家事を分担するのではなくシェアするという発想で暮らし方を提案した」などと話した。同社は年間、都内で約200戸の分譲戸建てを供給している。

 また、同社住宅事業推進部営業統括部事業戦略グループ主任・多田綾子氏は「この家事シェアハウスの考えは、共働き世帯が全国4位の富山県の1支店から生まれたアイデア」であることを話した後、「家事に関する調査結果をリリースしたらマスコミに大きく取り上げられ、『家事シェアハウス』の応援画像は『You Tube』で160万回以上再生された」などと、男性と女性の「家事」についての認識には大きな隔たりがあることを報告した。

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お便り紙蔵庫(左)とビューティクローゼット

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ファミリーユーティリティ 

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自分専用ボックス(左)とく階段ポケット

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 記者は10年間〝主夫〟をやったので少しは「家事」について知っている。しかし、同社が今年5月にリリースした共働き夫婦の「家事」に関する意識調査を読み、男と女の意識のギャップの大きさに頭をどやされたようなショックを受けた。この歳になっても全く女性の気持ちがわからないのかと。

 驚いたのは、多田氏が奥さん役となり、同社東京本店住宅事業部東京分譲住宅営業所主任・中野輝一郎氏が夫役になり「家事シェア」のビフォーアフターの寸劇をやったことだ。40年の記者生活の中で初めて見た。

 中野氏は完璧に演じた-「ただいま」(元気な声は立派)はいいが、靴は脱ぎっぱなし、郵便物はテーブルにドサッ置きっぱなし、靴下もスーツも脱ぎっぱなしで、「ビールくれ」-ほとんどの男性は似たり寄ったりではないか。中野氏はどうか知らないが、普段のままでいいのだから演技など必要ないはずだ。昔の自分の姿を見せられたようで情けなくなった。

 読者の特に男性のみなさん、ぜひこの同社のリリース(全12ページ)を熟読していただきたい。寸劇も想像していただきたい。またアットホームの別掲のアンケート調査にもどきりとさせられるはずだ。

 このギャップを放置すると間違いなく女性に捨てられる。そうなったらどんなに悲惨か、桐野夏生「だから荒野」(毎日新聞社、文庫本もあり。テレビドラマ化されたようだが記者は知らない)がお薦めだ。

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妻役を演じた多田氏(左)と夫役を演じた中野氏

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〝あーっ、疲れた〟(ビフォー)と〝家事シェアはいいなーぁ、ビールがうまい〟(アフター)

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 モデルハウスの提案は記者もそれなりに理解できた。他社も同じような提案を行っているところもある。正直に言えば、どこまでユーザーにアピールできるかよくわからない。いかに仕掛けを施しても男性が奥さんの言うことを聞くだろうかという疑問もある。男性をしつけるのは結婚してからでは遅いような気もする。

 しかし、同業の女性記者は「階段ポケット」や「ビューティクローゼット」に〝素敵〟の感嘆の声を上げていた。結構なものだろう。

 それより気になったのは戸建て用宅配ボックスの値段の高さだ。門柱を兼ね、書留が受け取れ、発送もできるのはいいと思ったが、価格は約25万円とか。1億円前後の戸建てを買う人にとっては高くないだろうが、昨日、ポラスの柏たなかの分譲戸建てに装備されていた戸建て用宅配ボックスは4~5万円だそうだ。

 また、アットホームの調査によれば、「設置にかけてもいいと思う費用は平均12,428円」だそうだ。

 戸建ての商品企画では、やはり1階の天井高2400ミリが気になった。同社の戸建て商品「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」は2700~2900ではないか。注文住宅でできるのだから分譲もぜひそうすべきだ。他社にないものでは、2階のベランダ掃き出しがフラット(実際はベランダのほうが下がっているが、デッキを敷けばフラットになる)なのはいい。

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門柱を兼ねた戸建て専用宅配ボックス

働く男性必読! 「名もなき家事」を妻に押しつけるな 大和ハウス調査(2017/5/18)

「自宅は癒しの場でない」 共働き夫婦の女性18.9%(男性13.1%) アットホーム調査(2016/12/14)

一戸建て用宅配ボックス欲しい7 割 居留守経験18.9% アットホーム調査(2017/6/22)

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「パレットコート柏たなか エヴァーシティ」

 ポラスグループの中央グリーン開発は7月10日、千葉県柏市の全150棟の大規模分譲戸建て開発「パレットコート柏たなか エヴァーシティ」の記者見学会を行った。美しい街並みと防犯・防災、コミュニティ形成に力を入れており、柏市初の景観協定も導入。5月から第1期と第2の分譲を開始しておりこれまで約250件の来場があり、23戸が成約・申し込み済み。好調なスタートを切った。

 物件は、つくばエクスプレス柏たなか駅から徒歩11分、千葉県柏市船戸柏都市計画事業柏北部東地区の土地区画整理事業地内の一角にある開発面積約2.7ha、全150棟。敷地面積は150.10~168.12㎡、建物面積は97.29~105.99㎡、価格は3,480万~4,680万円。構造は木造2階建て。施工はポラテック。

 用地は昨年、UR都市機構から入札で取得。同社グループは2007年から同エリアで分譲戸建てを展開しており、これまでに286戸を分譲済み。今回の150棟と合わせると436戸となり、エリア最多供給となる。

 ベンチマークとなる街づくりを主導するため、アメリカのフロリダ、カリフォルニア、ハワイ、リッチモンド、サンタバーバラ、ブルックリンの6つの都市をモチーフにシンボルツリーとしてサバルヤシをところどころに植え、美しい街並み形成を図る。将来の街並みを担保するため柏市初の景観協定を結んでいる。

 街ぐるみで防犯・防災に取り組みコミュニティ活動を支援するため防犯カメラを設置するほか、防災ベンチ、コミュニティスペース「KONOBA(コノバ)」、コミュニティを支援する「マチトモ」、ワークショップなどを行う。

 見学会であいさつした同社取締役事業部長・戒能隆洋氏は「エリア開発を主導するためランドスケープデザインや防犯・防災、コミュニティ形成に力を注いだ。2019年5月までに販売を完了したい」と話した。

 第1期分譲として16戸を5月に販売し、好調だったため7月に前倒しで第2期の分譲を開始し、これまで23戸の成約・申し込みがあるという。来場者は約250件。来場者は市内が約3割を占めるが、流山市、松戸市、江戸川区など広域から集客できているという。

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戸建て用宅配ボックス

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戒能氏

◇       ◆     ◇

 柏たなかエリアは、千葉県柏市ではあるが、隣駅の柏の葉キャンパスや東武線との乗換駅・流山おおたかの森などと比べ開発が遅れており、マンションは坪単価140~160万円台と安いにもかかわらず、苦戦を強いられている。

 同社が150棟を分譲すると聞いたとき、常識的に考えたら年間30戸として完売まで5年くらいかかるのではないか、あるいはまた、早期に売るために価格・グレードを抑えるのではないかとも思った。

 ところが、その予想・推測はものの見事に外れた。戒能氏は「2年間で販売する計画だが、これはキャパシティの問題であって、早めようと思えば早められる」と自信を見せたその理由も5棟あるモデルハウスを見てすぐ理解できた。きめが細かな商品企画に脱帽した。

 45~50坪の広い敷地に、ゆったりと庭を確保したうえ、シンボルツリーのヤシを配し、住戸プランは約5500ミリの吹き抜け付き、インナーテラス付き、多目的利用が可能な土間クローゼット付き、アイランドキッチン、ペニンシュラキッチン、カウンター付き収納など実に多彩。また、同社オリジナルの無垢材を用いたアクセントパネルにLIXLの新製品ドア、人気家具ショップとのコラボも行ない、さらにまた男の籠れるスペースも盛り込んでいる。戸建て用宅配ボックスも全戸に用意している。2年間で売る自信があるというのも頷ける。最大のセールスポイントであるはずの1階の天井高2700ミリなどどこにも謳っていない。

 このような商品企画を見せられたら同業はもちろんマンションなどとても太刀打ちできない。

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モデルハウス

 

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「リノベーション戸建て」事業の第1号物件

 大京グループの大京穴吹不動産は6月30日、「リノベーション戸建て」事業に参入し、第1号物件として川崎市麻生区の2階建て一戸建て住宅の販売を7月1日から開始すると発表した。「リノテラス(Reno Terrace)」ブランドとして展開する。

 大京グループは昨年10月、中期経営計画「Make NEW VALUE 2021 ~不動産ソリューションによる新・価値創造」を策定し、新たに取り組むテーマの1つとして「一戸建て住宅リノベーション」事業への参入を掲げた。業界トップクラスの販売実績を誇るリノベーションマンション「リノアルファ(Renoα)」と合わせ、2021年3月期にはリノベーション住宅販売戸数を2,500戸超の規模に拡大する。

 第1号物件は、小田急電鉄小田原線柿生駅から徒歩11分、川崎市麻生区片平4丁目に位置する土地面積100.00㎡、 建物面積93.17㎡、1998年11月築の軽量鉄骨造2階建て。

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すてきナイスの住宅事業

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日暮社長

 すてきナイスグループは6月1日、2017年3月期決算の説明会を開き、同社・日暮清社長と大野弘取締役が1時間半にわたって詳細な報告を行った。売上高は2,464億円(前期比103.3%)で営業利益は15億円(同93.2%)ととなり、売上高の68.7%を占める建築資材事業の営業利益は過去20年で最高水準となり、マンションから戸建てにシフトチェンジした住宅事業も堅調に推移していることなどを話した。以下、決算数字と日暮社長の説明などから住宅事業について考えてみた。

◇       ◆     ◇

 同社の前期の住宅事業の売上高は一戸建てが319億円、マンションが212億円。戸数は1,323(一戸建て831戸、首都圏マンション434戸、地方マンション58戸)。6年前は戸数1,336戸(一戸建て207戸、首都圏マンション1,060戸、地方マンション69戸)だから、完全に戸建てとマンションが逆転した。今期の一戸建ての売上目標は950戸。

 マンション市場はリーマンショック後、大手デベロッパー(とくに三井、三菱、住友、野村)の寡占化が進行しており、これらに大和ハウスや積水ハウスのハウスメーカー、大京、東建、東急不、NTT都市開発、伊藤忠都市開発、新日鉄興和、さらには資金力がある近鉄、阪急、京急、相鉄などの電鉄(系)が攻勢を強めている。中堅デベロッパーは駅近の用地取得合戦で太刀打ちできず、競争を回避する形で大手が手を出さない〝隙間〟や郊外・地方へ〝転戦〟せざるを得ない状況が今後も続くはずだ。同社がリスキーなマンション事業から戸建てへシフトするのは賢明な選択だ。

 武器も揃った。先に書いたようにBELS、CLT、ZEHなどはどこにも負けないし〝木の時代〟は加速する。本社に隣接して2015年にオープンした「スマートウェルネス体感パビリオン」の来場者は8,000名を超えたというし、同じような施設は「群馬」「新潟」にも開設した。モデルハウスは「横浜」に続き「藤沢」にも設ける。威力を発揮するのは間違いない。自ら木材、資材を調達できるのも強みだ。

 分譲戸建て分野では課題がないわけではない。この分野は、システマテックな手法を徹底させ、圧倒的な価格の安さで優位に立つ、年間4万戸を販売する飯田グループが王者として君臨する。大手ハウスメーカー社長は「うちは土地代がただでもかなわない」とお手上げだ。

 ここと競争するのは意味のないことだと思うが、建売りの価格下げ圧力は強まる一方で、同業の追い上げもある。いかに質を落とさず、トータルな価格競争力を向上させるかが問われる。これからが正念場だ。

 同社の計上戸数のうち6割、約500戸が分譲戸建てだ。ハウスメーカーを除けば三井、野村と肩を並べるまでに伸びた。

 日暮社長は「これからは売り建て(停止条件付き)や注文を伸ばし、建売りの比率を下げたい。手間がかかる仕事の平準化を進めて利益率を高めたい」と語った。

 記者は、フージャースコーポレーションが劇的に変わったようにデザインと外構に力を注ぐべきだと思うが、同社の建売りを近く見学して商品企画についてレポートしたい。

◇       ◆     ◇

 ついでに同社の沿革・株式ポストについて。同社は1950年、市売木材として創業。1962年、東証2部に上場。1972年に日榮住宅資材に社名変更し、1988年は日榮不動産へ、1995年にナイス日榮へ、2000年にナイスへ、そして2007年には持株会社体制への移行に伴い現社名になった。「ナイス日榮」から「ナイス」への変更は、当時、悪質な事業者ローン問題を引き起こした「日榮」を連想させ、風評被害があったための変更ではあったが、67年間に5回も社名を変更した上場会社は同社だけでないか。

 その是非は分からないが、株式ポストは「卸売業」だ。売上比率からすれば同社は商社だからそうなのかもしれないが、戸建て・マンションの住宅事業や木材事業比率も低くなく、多角化を推進している。「卸売業」のイメージとは程遠い。

 同社は全国8カ所に約1,836ヘクタールの森林(新宿区とほぼ同じ広さ)を保有し、地球温暖化防止に貢献するとともに「木材」という人と環境にやさしい社会性のある事業を行っている。最近は国産材利用、BELS、CLT、ZEH、免震マンション、復興支援、スマートウェルネス体感パビリオンなど先進的な取り組みを強化しており、隈研吾氏の起用や慶大、京大などの学との連携を図るなど話題性に富む事業を展開している。

 業態は「建設業」ポストに入っている住友林業に近いのではないか。住林と比べると売上高も利益率も比較にならないが、こうした環境への取り組みや社会的に意義のある事業展開を考慮すれば、住林の10分1以下という同社の株価150円前後は解せない。

 この日の決算説明会にはたくさんのアナリストが出席していたはずだが、企業の価値は収益性よりも企業サステナビリティ(社会性)がより重視されるべきだと思うがどうか。日暮社長、せっかく立派なホテルで説明会を開くのだから、そのまま懇親会にしてこの点をアピールしてはどうか。記者は20年以上、RBA野球大会で同社チームのメンバーと交流しているが、勝っても負けてもしっかりミーティングを行い、チームワークを大事にしているのに感心している。家族経営的な社風はもっと評価されていい。

 

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「HEBEL HAUS CUBIC roomy(ヘーベルハウス キュービック ルーミー)」

 旭化成ホームズは5月24日、2階建て戸建住宅の主力商品「ヘーベルハウス キュービック」の新モデル「HEBEL HAUS CUBIC roomy(ヘーベルハウス キュービック ルーミー)」を6月1日より発売すると発表した。静岡県富士市にある同社の住宅総合技術研究所でモデルハウス見学会を行った。

 「キュービック ルーミー」は、ロングセラー商品であるシンプルな立方体をベースとした箱の家「キュービック」のデザインコンセプトをそのままに、2階の天井を押し上げるという発想で空間を広げ、解放感のある2階リビングや使い方を楽しめるロフト空間を提案する商品。屋根庇や軒樋が外壁面から突出しない、南面を3.5寸勾配、北・東・西面を15.7寸勾配とするこれまでのヘーベルハウスにないアシンメトリック(非対称)な「偏芯寄棟屋根システム」を新たに開発し、斬新で美しい箱型フォルムを完成させた。

 南面の緩勾配天井による伸びやかな吹き抜け「ロフティルーフ」や、北面の急勾配天井に沿って生まれる広がりのあるロフト「ルーミーロフト」を提案しているのが特徴で、ZEHにも対応できるよう太陽光発電パネルの搭載容量を増やしている。

 メインターゲットは、延床面積30~40坪程度の単世帯一次取得者とし、年間販売棟数250棟を目標としている。延べ床面積約31.36坪のプロトタイプの税抜き価格は2,640万円(坪単価84万円)。

◇       ◆     ◇

 建物形状が7,320ミリ四方のコンパクト型にしてはよく工夫されたモデルハウスだと思う。だだ、2011年に発売した35.4坪「そらのま+」、2013年発売の35.8坪「STEP BOX」、2014年発売の37.8坪「屋根の家」と比べると、4~6坪狭く、ロフト空間はいつも見ているのでそれほど強い印象は残らなかった。 

 同社マーケティング本部次長兼同本部商品企画部長・加藤明氏が「好みが分かれる商品」と語ったように、一定の層に受け入れられるプランだと思った。「キュービック」にそれだけ選択肢の幅が広がったということだ。

 気になったのはやはり天井高だった。ロフト「ルーミーロフト」は最大約3m(ロフト部分は1.4m)はいいとしても、1階や2階の天井高は2.4mだ。同社は1階床を掘り下げたりスキップフロアを採用したりしてメリハリの空間を演出してはいるが、基本階を高くするのが課題だと思う。

 ロフト空間や天井高とも関連するのだが、今回の新商品のロフト床面積は3.57坪で、空間にすると8.3㎥になる。一般的な寄棟空間の5.1㎥より約3㎥広くなる。この空間価値をどう評価するか。空間価値で測らないといけないことは分かっていても、どうしても坪単価でしか測れなくなっている。新たな空間価値を測る物差しが必要だと改めて感じた。

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「ロフティルーフ」と「ルーミーロフト」

旭化成ホームズ、勾配屋根ニーズ取り込む「ソフィット」発売(2014/11/18)

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