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「大網白里市子育て交流センター」

 今年のキッズデザイン協議会「第14回キッズデザイン賞(子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門)」を受賞した積水ハウスの「大網白里市子育て交流センター」を見学した。

 「大網白里市子育て交流センター」は、大網駅からバスで約10分、平成2年から12年にわたって行われた組合施行の約90haの土地区画整理事業「みどりが丘」住宅地の一角に位置する敷地面積約1.277㎡、木造平屋建て延べ床面積約1,242㎡。

 「学童エリア」「児童館エリア」「子育て支援エリア」の3つの機能を持たせているのが特徴で、隣接する平成24年に駅近くから移転・開校した大網小学校の学童保育室の不足を解消するとともに、広域「サードプレイス」として子育てをワンストップで支援する環境を整えている。学童は今年4月、児童館と子育て支援は7月にそれぞれオープン。学童の登録者は約150人に達し、児童館、子育て支援施設も隣町の東金市民を含め多くの利用者があるという。

 市は当初、土地区画整理地内に所有する約4.6haの土地にPPP手法による子育て、福祉、医療、商業の複合施設を考えたが不調に終わったため、2018年、学童・児童館・子育て支援施設の建設を条件に提案を公募した。

 同市企画政策課政策推進アドバイザー・伊藤栄朗氏は、「応募があった4プランのうち2つは四角い鉄骨造で、もう一つは在来工法だったが、木造ですべての施設を南向きにして光と風を取り込んだ積水さんのプランが高く評価され採用が決まった。設計・施工を一括発注したことでコストも抑えられた。この種の施設は全国的にも珍しいのではないか」と語った。

 同社はこのほか、今年のキッズデザイン賞で「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門」で1点、「子どもたちを産み育てやすいデザイン部門」で4点、合計6点が受賞。同賞の受賞は累計93点となっている。

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児童館エリア エントランスホール

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子育て支援センターエリア

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学童エリア

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指はさみ防止ドア

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中庭

◇      ◆     ◇

 これまで大網駅は、大規模住宅地「季美の森」の取材などで5回くらい訪れている。まだ大網白里町の時代で、2015年に市制が施行されたのは知らなかった。

 駅に降りた途端、清澄な空気に触れ、わが心にも悪影響を及ぼしている汚濁まみれの都心の空気とつながっているのが不思議に思えた。周りの風景は以前とあまり変わらずゆったりと時間が流れているのを肌で感じた。早速、これまでもよく利用した駅前にある創業48年というタバコが吸える喫茶店に入った。

 施設見学は、小学校に隣接し、学童・児童館・子育て支援の3つの機能を持たせたワンストップの施設は珍しく、ひょっとしたらキッズデザイン賞の上位賞を狙えるのではないかと考えお願いした。残念ながら上位33賞には選ばれなかったが、収穫も多かった。

 施設は、東西に総延長83m。地盤を周囲より1m下げている効果か、低層の建物は周りとよくなじんでいた。内観はスギの構造材をところどころ現しにし、床はレッドオークの無垢材、天井高は最大4m、Low-Eガラス、中庭にはモミジ、引き戸、開き戸には全て指はさみ防止対策…今年のキッズデザイン賞で総理大臣賞を受賞した「まごころ学園」も素晴らしいと思ったが、紙一重の差しかないのではないか。

 空気はおいしく、施設は素晴らしかったが、市の課題も多いようだ。伊藤氏によると、「みどりが丘」にはスーパーが一つもなく、全2,000区画のうち地権者が所有する2割くらいが更地として残っており、当初予定人口の8,900人は、5,000人に届くがどうかとも話した。今回の施設を除く残り3.6haの市有地に商業施設などの誘致は可能なのかどうか。人口も市制施行時に5万人を突破したが、最近は減少に転じたという。

 しかし、希望も持てる。市内の全体で2,000戸近い「季美の森」のフェアウェイフロント住宅は1億円を突破し、4,000~5,000万円台の普通の住宅もよく売れた。このほか、外房線沿線の鎌取-誉田-土気-大網には良好な住宅地がたくさんあることだ。官民を挙げて地域の活性化、空き家対策に取り組めば優位性をアピールできるのではないか。

 最後に、コロナ禍にもかかわらず見学をセットしていただいた同社広報、技術的な説明をしていただき帰りには駅まで送っていただいた同社千葉支店設計課係長・土屋貴輝氏、同支店課長・大越太郎氏、そして何よりも施設建設の経緯、市の課題などを分かりやすく説明していただいた伊藤氏、指定管理者のオーエンス施設長・上代真澄氏にお礼申し上げる。

 市の新型コロナ感染者は6人だそうだが、都県またぎした小生は徹底して三密を避けている。コロナを運ばなかったのはまず間違いないし、このあと市原市と千葉市の2か所でマンションの取材をしたが、おにぎり1個と缶ビールの昼食は野外で済ませた。

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エントランスホール

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エントランス

総理大臣賞に福祉型障がい児入所施設「まごころ学園」 第14回キッズデザイン賞(2020/9/30)

積水ハウス 第14回キッズデザイン賞2部門で6点受賞(2020/8/24)

積水ハウス 保育園「深川冬木」 キッズデザイン賞 少子化対策担当大臣賞(2018/9/26)

カテゴリ: 2020年度

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「BONUS TRACK」

 小田急電鉄は10月1日、開発を進めてきた「下北線路街」の施設の一つ「BONUS TRACK」を開業した。同日、プロジェクトを担当する同社生活創造事業本部 開発推進部課長・橋本崇氏と施設を運営する散歩社代表取締役CEO・小野裕之氏、同社取締役CCO・内沼晋太郎氏によるトークセッションが行われた。

 橋本氏は、3年前に同プロジェクトを担当したとき、地域住民から聞き取り調査を行った結果、〝昔は個性的な店が多かった〟との声を聞き、復活できないかと考え、それを実現するには賃料を抑える必要性を感じ、小野氏に相談を持ち掛けたなどと開発の経緯について語った。

 小野氏は、「下北沢には自分たちの価値をしっかり認識している多様な主体者(店舗など)が存在し、民間の力と融合させれば地域とも共存できると考え、事業に参画した」と話した。

 内沼氏は、音楽、アート、映画など地域の人々に日常使いしてもらえるようなイベントをどんどん仕掛けていくと語った。

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左から橋本氏、内沼氏、小野氏

◇       ◆     ◇

 この施設については開業前の3月末にも取材しているので、そちらの記事も参照していただきたい。

 トークセッション会場で配布された資料の一つに「BE YOU.シモキタらしく。ジブンらしく。」のパンフレットがあった。

 新聞紙の見開き2ページ分に相当するA1判を4つ割り、つまり8ページ建ての大きなもので、世田谷代田駅から下北沢-東北沢に至る全長約1.7㎞の゛下北線路街」に、今回の「BONUS TRACK」を含めホテル、旅館、学生寮、コミュニティハブ、カフェ、商業施設など計画を含め13のプロジェクトが図示されている。

 そして、冒頭のキャッチコピーには「いろんな人が、自分らしく生きている街、シモキタ。ここまで多様性にあふれている場所は、日本中を見渡しても、そうそう存在しません。」とあった。

 このフレーズに京王線沿線に約50年住んでいる京王ファンの小生は敏感に反応した。「ここまで多様性にあふれている場所は、日本中を見渡しても、そうそう存在しません」というのは根拠があるのかと。

 橋本氏はさすがに「このコピーは街づくりの思いを表現したもので…」と言葉を濁したが、小野氏は「北は北海道から南は九州まで全国の街を巡ったが、一定程度人口が集積し、個性的な店舗が揃い、車が歩行者に気を付けるウォーカブルな街は他にない」と言い切った。

 この答えに記者も頭をフル回転した。京王線沿線にそんな街はないかと。残念ながらない。尻尾を巻くほかなかった。

 同じような空間はないわけではない。似たようなエリアはある。京王新線初台-幡ヶ谷-笹塚の線路沿いには緑道、公園が走っている。総延長は下北線路街の約1.7㎞と同じくらいではないか。もう一つは、京王線と京王相模原線の分岐駅である調布駅の地下化にともなう地上空間だ。

 前者の公園、緑道はそれなりの人通りはあるが、管理するのは渋谷区で周囲の商業施設、住宅などとは隔絶されており、お互いが背を向けた状態で存在する。最近、日本財団による公園トイレも幡ヶ谷駅近くに建設されたが、果たしてどれくらいの人が利用するか。記者はほとんどないとみている。

 後者の調布駅前の整備だが、これは調布市の事業として行われており、完成は2025年度なので現段階ではよく分からないが、市民が自由に行き交う空間は期待できないのではないかと記者は思っている。

 なぜ、これほどまでに異なるのか。詳しく紹介する余裕はないが、一言でいえば街づくりの思想・理念の有無だ。小田急は地域と共存する街づくりを進めようとしている。一方の京王はそれがない(失礼)。初台-幡ヶ谷-笹塚の緑地空間に市民が関わる余地は皆無だ。調布駅前の空間づくりも市民の声(あるのかないのかよく分からないが)が反映されるのは期待薄のような気がする(記者は40年前の緑が豊富な調布駅周辺はよく知っている)。

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「恋する豚研究所コロッケカフェ」

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「お粥とお酒 ANDON」

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正面の「ADDA」のカレーは人気とか

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 「お帰り、何か食べてきた? 」「うん」「2,000円渡したんだけど収まった? 」「…(倍以上)」「お酒飲んできたでしょ。すぐ分かるんだから」「…うん」-小田急電鉄の取材を終え、うちに帰ったのは午後2時半を過ぎていた。

 利用した「恋する豚研究所コロッケカフェ」「お粥とお酒 ANDON」「日記屋月日」はみんないい店だ。おいしかった。2,000円は本を買ったことにしよう。駅前の温泉旅館・由縁別邸はGo Toトラベルを利用して飲みに行こう。

 京王線にも「BONUS TRACK」のような街はできないか。がんばれ京王!小田急に負けるな!

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「温泉旅館・由縁別邸」

小田急電鉄〝下北沢の新たな名所〟SOHO&店舗「BONUS TRACK」4月1日開業(2020/3/30)

日本財団 渋谷区公園トイレ整備に17億円 「西原一丁目」完成/真逆の児童遊園(2020/8/31)

坂茂氏も坂倉竹之助氏も素晴らしい 日本財団の民設民営 渋谷区公園トイレ(2020/8/9)

カテゴリ: 2020年度

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「まごころ学園」(-記者撮影の★印以外の写真は全て同協議会提供)

 キッズデザイン協議会(会長:山本正已・富士通取締役シニアアドバイザー)は9月30日、第14回「キッズデザイン賞」受賞作品237点の中から最優秀賞、優秀賞、奨励賞、特別賞など優秀作品33点を発表。最優秀賞の内閣総理大臣賞は福祉型障がい児入所施設「まごころ学園」が受賞した。

 「まごころ学園」は、新潟県見附市にある知的障がい、育児放棄、虐待を受けた子どもたちを受け入れる施設で、見附市、長岡市など5市町村の共同プロジェクト。建物は1辺54mの中庭付きヒノキの木造平屋建て延床面積約2,000㎡。約40人の子どもはそれぞれ6畳大の個室に入所している。

 受賞者は福祉型障がい児入所施設 まごころ学園/一級建築士事務所 山下研究室/長建設計事務所/江尻建築構造設計事務所/設備工房アドイン/ハイランドパーク。

 授賞理由は、「福祉型施設の課題点を精緻に分析し、空間デザインとして非常にうまくまとめている。管理型になりがちな施設に家づくり・コミュニティづくりの視点を取り入れ、様々な居場所をつくり、子どもたちが無理なく伸び伸びと過ごせる環境を生み出している。個室も完備され、居住空間も良く、カラーリングやサイン計画も秀逸」としている。

 プロジェクトを代表して登壇した山下氏は、「思いもよらぬ受賞、感無量です。子どもたちはコンクリでつくられた旧施設から移って一冬を過ごしたが、インフルエンザに罹った子どもはほとんどなかった。生き生きと暮らしている。最高の賞を受賞し、これまでの苦労が報われた。オール・ハーピーエンドとなった。とても幸せ」などと喜びを語った。途中、プロジェクトに関わった自治体の市長から学生さん、大工さんに至るまで約20人の具体的な名前を挙げ喜びを分かち合った。

 「キッズデザイン賞」は、子どもの安心・安全と健やかな成長発達に役立つ優れた製品・空間・サービス・活動などを検証する制度で、今回の応募は390点で、先に237点が受賞。累計応募数は5,376点、受賞数は3,205点となった。

 同協会会長・山本氏は「キッズデザイン宣言に掲げるように『すべての子どもは社会の宝であり、未来そのものです』-新型コロナの影響を大きく受けている今だからこそわれわれは真価を問われている。ものづくり、ことづくりを通じで子どもに心の豊かさを届けられるよう一層努力していく」と挨拶した。

 審査委員長・益田文和氏は「今、社会は自然界からパンデミックや気候変動などのチャレンジを受けながら、戸惑い、足踏みをしているのでしょうか。今年の審査を通して時代の迷いのようなものを感じました。しかし、そういう時だからこそ、子どもたちの中にある未来の不安を打ち消し希望を呼び覚ますために、社会がしなければならないことがあるはずです。状況の変化に柔軟に対応しつつキッズデザインの目標を再確認し、果敢に提案し続けていきたいものです」とコメントした。

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山下氏(★)

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山下氏(左)と経済産業副大臣・長坂康正氏

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山本氏(左)と益田氏 

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 記者はこれまで10回くらい取材してきただろうか。ほとんど毎回ハウスメーカーやデベロッパー、ゼネコンなど日ごろ取材している企業などが優秀作品に選ばれているので楽しみにしてきた。

 ところが、今回は優秀作品33点の中には相互住宅(消費者担当大臣賞受賞)とミサワホーム総合研究所(キッズデザイン協議会会長賞)しかなく、コロナ対策として入場制限なども行われていたので、早々に退却しようと考え、表彰式もぼんやりと眺めるだけだった。

 何の収穫も得られず帰ろうとした途端だ。記者の目を射たのが「まごころ学園」の模型とファイルに収められていた図面だった。文字は小さく配布資料もなかったが、優れた作品であることは読み取れた。

 設計を担当された長岡造形大学 建築・環境デザイン学科教授・山下秀之氏の話も聞いた。

 「子どもたちはインフルエンザに罹らなくなった。喧嘩が激減した。明らかに木質空間の効果。そればかりでない。大人たちがみんな〝自分が住みたい〟と言い出した。これはそのまま全国の施設に置き換えることができる」-嘘のような本当の話を山下氏はされた。山下氏はキッズデザイン賞を教え子の方を含めて過去4回受賞されているとのことだった。今回の作品は、審査員から圧倒的な支持を得たそうだ。

 木造ハイブリッドの記事を2本書いた翌日の今回の総理大臣賞受賞作品だけによけいにうれしい。コロナがなければすっ飛んでいきたい作品だ。

 ちょうど居合わせた同協会副会長で積水ハウス副会長の稲垣士郎氏に「稲垣さん、御社もこのようなものを造るべき」とけしかけたら、「検討しよう」とまんざらでもなさそうだった。

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「まごころ学園」

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「まごころ学園」模型(★)

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会場(六本木ヒルズ  アカデミーヒルズ49)

カテゴリ: 2020年度

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 三井不動産と竹中工務店は9月29日、木造高層建築物として国内最大・最高層となる賃貸オフィスビルを中央区日本橋本町一丁目で建設する計画を進めていると発表した。

 計画は地上17階建て、高さ約70m、延床面積約26,000㎡で、2023年着工、2025年竣工を目指す。三井不動産がライフサイエンス事業の拠点にしているエリアの主要な施設の一つとして設置する予定。

 主要な構造部材に竹中工務店が開発した耐火集成材の「燃エンウッド」を採用し、木材は三井不動産グループが保有する森林の材など国産材を積極的に使用していく。

 物件は、中央区日本橋本町一丁目3 番地、敷地面積約2,500㎡、用途は事務所、店舗、駐車場など。構造はハイブリッド木造。竣工時期は2025年の予定。

◇       ◆     ◇

 今回の両社のニュース・リリースには「国内最大・最高層」とある。早速、三井不動産にその根拠を聞いたが、「しっかりマーケティングしているので間違いはないが、どこを抜いて国内最大・最高層なのかは他社のことなので言えない」とのことだった。ならばと、一方の竹中工務店にも聞いた。「当社の計画も含めてこれを上回るものがあるかどうかはノーコメント」(同社広報)とのことだった。なので、以下の記事は記者の推測によるものであることを断っておく。

 さて、現段階で記者が「最高層」と思っている木造ハイブリッドは野村不動産の高さ約47mの14階建て「プラウド神田駿河台」だ。施工はやはり竹中工務店だ。

 これに迫るのが東急不動産が今年8月に発表した高さ約45mの「(仮称)道玄坂一丁目計画」だ。同社は「鉄骨造・木造によるハイブリッド構造のオフィスとして発表されているものとしては、国内最高の階数となる13階建て」と発表した。

 今回の三井不動産と竹中工務店の計画は高さ約70mなので、野村不動産も東急不動産も上回るのは間違いない。

 では、このほかにこれを上回るオフィスやマンション計画があるかどうかだが、三菱地所の竹中施工の「PARK WOOD 高森」は10階建てだし、「(仮称)大通西1丁目プロジェクト」ホテルは11階建てだ。高さは不明だが、1フロア4mとしても70mには遠く及ばない。

 つまり、やはり日本橋本町一丁目のプロジェクトが「国内最大・最高層」となると記者も結論を下した。間違っていたらごめんなさいと謝るほかない。

 外国ではこれらよりはるかに上回る超高層建築物の計画があるが、わが国のデベロッパーの木造ハイブリッドをめぐる〝覇権争い〟が面白い展開になってきた。ゼネコンでは竹中と清水が大きくリードを奪っている。住友林業の高さ350mのW350計画はあと20年も先だ。

 

日本初 野村不&竹中 構造部に木質系部材を採用したマンション「神田駿河台」(2020/2/27)

三菱地所グループ総力結集 国内初の高層ハイブリット木造ホテル 札幌で着工(2020/3/26)

シンプルで端正な姿が美しい 三菱地所 わが国初のCLT高層「高森」完成(2019/3/14)

さすが三井不動産 わが国初の本物の木造〝杉乃木〟ホテル「神宮外苑」に誕生(2019/11/13)

カテゴリ: 2020年度

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「かめやキッチン」

 不動産の売買・賃貸・仲介、空き家活用事業「アキサポ」などを展開するジェクトワンは10月2日、東京都板橋区のハッピーロード大山商店街にある空き店舗を活用したシェアキッチン「かめやキッチン」をオープンする。開業前の9月28日、関係者や報道陣向けにオープンイベントを開催。板橋区長・坂本健氏も来賓として参加し「再開発が進むエリアの起爆剤になる」とエールを送った。 

 「かめやキッチン」は、約80年にわたり営業を続けてきた老舗履物屋「かめや」が昨秋閉店となり、オーナーから店舗を地域活性化に役立ててほしいとの要望を受け、同社の空き家活用サービス「アキサポ」によりリノベーションを行い、シェアキッチンへ再生するもの。

 再生に当たってはエリアマネジメント手法を採用。ハッピーロード大山商店街振興組合の100%出資会社・まちづくり大山みらいと協議を重ね、地域の人々の料理教室・食育イベント場所として使用してもらうほか、飲食店の起業を目指す人の期間限定店舗としても提供する。

 施設は、東武東上線大山駅から徒歩4分、履物屋の店舗だった1階部分の天井を抜いて梁を露出させ、店舗のシンボルだった「亀」をデザインしたロゴを2階の雨戸の部分に設置。約13.5坪の店内には本格的な調理器具を揃えたキッチンスペースを設け、様々な用途の調理を可能としているほか、全16席の飲食スペースも併設。起業家を支援する板橋中小企業診断士協会による「かめやキッチン起業塾」を6回にわたり行っていく。

 来賓として参加した坂本区長は、「古い店舗を再生し、地域のコミュニティとも融合させながら、同時に飲食業の起業を目指す人々にもスペースを提供するというコンセプトは意義深いものがある。現在、川越街道周辺では再開発計画が進行中で、皆さんのこの新しい街と古い店舗をつなぐ取り組みが板橋区のモデルになるよう期待している」などと挨拶した。

 まちづくり大山みらいの石川政和代表取締役は、「大山は2つの再開発計画でものすごい変化が起きつつある。古いものを残しながら新しいものを揃え、緑と賑わいのある街づくりを進めていく。新型コロナの影響で飲食店は非常に厳しいが、在宅勤務は追い風になる」と語った。

 店舗所有者の春日冨美子さんは「昭和30年ころ父が建てた店舗。このように地域のために役立てていただけることを感謝しています」と深々と頭を下げた。

 ジェクトワン代表取締役・大河幹男氏は、「5年前に立ち上げた『アキサポ』は定借で空き家を借り上げ、リノベ再生するもので、オーナーの負担なしに資産価値を向上できるのが特徴」と話した。これまで約30件の実績があるという。

 同社は2009年1月設立。2020年3月期の売上高は14,100百万円。2016年3月期の6,000百万円から大幅に伸びている。

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左からジェクトワン地域コミュニティ事業部・石井萌奈氏、大河氏、坂本区長、石川氏、大山町会会長・松野榮仁氏、大山本町会会長・徳山安子氏

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 タカラレーベン(旧社名・宝工務店)が本拠を構えていた隣駅の中板橋とともにお世辞にもきれいな商店街とは言いがたいが、ハッピーロード大山商店街は、リブランの社名が千葉建設だったころから取材のためよく通った。幸か不幸か、同区の十条商店街と同様、開発から取り残されたために昭和の街並みが残っている。

 坂本区長や石川氏が語ったように大山は劇的に変化する。現在、市街地再開発事業」約0.85haの「大山町クロスポイント周辺地区第一種市街地再開発事業」と約1.2haの「大山町ピッコロ・スクエア周辺地区」が進行中だ。「大山町クロスポイント」では住友不動産が約340戸の住宅を建設することが決まっている。「大山町ピッコロ・スクエア」は再開発組合の設立準備中。三菱地所レジデンスが事業参画する模様た。

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「大山町クロスポイント周辺地区第一種市街地再開発事業」

東京建物「Brillia大山Park Front」完成 ランドスケープ・外観が素晴らしい(2018/11/30)

カテゴリ: 2020年度

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「GEMS AOYAMA CROSS」

 野村不動産は9月30日、同社の都市型商業施設「GEMS」の新コンセプト施設「GEMS AOYAMA CROSS」をオープンする。表参道駅から徒歩4分、青山通りから一歩入った第2種住居地域(建ぺい率60%、容積率300%)に位置する地下1階地上3階建てのグルメ、ファッション、生活雑貨、ビューティーなど複数の業態が同居するこれまでにないタイプ。開業前の28日、報道陣に公開された。

 施設は、“ミシュランガイド”や“アジアのベストレストラン50”でもおなじみの川手寛康氏のフレンチの名店「フロリレージュ」と長谷川在佑氏の日本料理の名店「傳」がタッグを組んだ串料理の新業態「デンクシフロリ」や、人気バッグブランドの新レーベル「Manhattan Portage BLACK LABEL」の初の旗艦店、美容整形やブローエステといったビューティー店舗も加わり、メインストリートから一本入った立地を生かした「隠れ家的なレストラン」や「女性の自分磨き」の場を提供する。

 物件は、東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線表参道駅B2出口から徒歩4 分、渋谷区神宮前五丁目46-7に位置するRC造地上3階地下1階建て。設計デザイン監修はジェネラルデザイン一級建築士事務所。基本設計・監修は野村不動産一級建築士事務所。設計監理・施工はまこと建設。施設運営は野村不動産コマース(2020年10月1日付でジオ・アカマツから商号変更予定)。

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「デンクシフロリ」

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「意気な寿司処 阿部 青山店」

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 生まれて初めて形成外科・美容外科・美容皮膚科を見学した。2階にある「R.O.clinic(アールオークリニック)」だ。白を基調とした内観もさることながら、女性スタッフの美しさに小生は絶句し、まぶしさのあまり目は点になった。

 彼女たちが身にまとっている白衣は、所狭しと飾られた開業を祝うランのそれより白く、安物のポリエステルなどケミカル製品とは天と地ほどの差があるシルクであることが一瞬で判別できた。肌と言えば白磁のミロのヴィーナスよりきめ細やかでシミ一つなく、例えていえば獲れ立ての白桃かあるいは搾りたての馬乳酒か、さもなければ織り立ての薄絹のようなすべらかな白だった。(容貌はマスク越しなのでよく分からないが、いわずもがな。目は口ほどにものをいう)

 化粧室の鏡がまたすごい。間違いなく美しい人はより美しく、そうでない人もそれなりに際立たせる仕掛けが施されている。小生も映すことを勧められたが、醜悪な顔だけでなく邪悪な内心までも映し出されるのかと恐れ、代わりに同社広報マンに座ってもらいカメラに収めた。

 試しに料金を聞いてみた。大きさにもよるが基本的にはシミ取り1つ3万円で、小生のようにシミか死斑か老人班かも区別がつかない吹き出物を〝取り放題メニュー〟(これは身も蓋もない。美しい彼女たちが吐く言葉ではない。もっとましなネーミングはないのか)は9.5万円(税別)だそうだ。髙いか安いか全くわからないが、坪単価1,000万円の〝プラウド〟が飛ぶように売れ、藤井聡太さんの将棋の封じ手に1,500万円の値がつく時代だ。記者が好きな作家・丸山健二氏の次作「ブラック・ハイビスカス」(全4巻で10万円)と同じくらいの価値があるのかもしれない。

 プレス・リリースには「“キレイになりたい”“若返りたい”———誰しも心に秘めるそんな願いを、美容医療で叶える時代。院長を務めるのは、美容医療のパイオニアでもある高須クリニックなどで経験を積んだ呂秀彦氏。丁寧なカウンセリングと繊細な治療が評判の医師です。緻密な二重や鼻の形成、たるみ治療、フェイスリフト手術からダイナミックな脂肪吸引や輪郭形成まで、オールラウンドにクオリティの高い手術治療を提供します」とある。

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「R.O.clinic(アールオークリニック)」

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化粧室

組子、稲架のデザイン最高 ピーマン絶品 野村不「GEMS神宮前」27日開業(2018/4/26)

カテゴリ: 2020年度

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「D's stocker(ディーズストッカー)」

 ⼤和ハウス⼯業は9月25日、ナスタと共同開発した戸建て住宅向けの据え置き型ダストボックス「D's stocker(ディーズストッカー)」を10月1日から全国発売すると発表した。

 「D's stocker」は45ℓ入り⼩サイズ(外⼨:幅403mm×奥⾏き356mm×⾼さ699mm)と、100ℓ入り⼤サイズ(外⼨:幅903 mm×奥⾏356 mm×⾼さ699mm)の2種類。価格は小サイズが30,000円、大サイズが40,000円。販売目標は年間1,000台。

 同社は、「新型コロナウイルスの影響により新しい⽣活様式へ変化し、⽇⽤品などの買い物だけでなく、⾷事も外⾷を控えデリバリーや⾃宅で料理をする機会が増加したことにより、段ボールやプラスチック容器などの家庭でのごみの量が昨年に⽐べ約10%増加し、約70%の人がごみの分別にストレスを感じている」ことから開発したとしている。

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 戸建てのごみ収集方法は自治体によって異なるのだろうが、戸別収集ならこれは便利だ。臨家とのトラブルの種にならないか心配もしたが、蓋は臭気が漏れださないようしっかり閉まるソフトクローズ機能付きだった。ごみ箱ですらソフトクローズ付きにしているのだから、引き戸などをそうしていないマンションデベロッパーは考えるべきだ。

 難点は奥行きがやや狭く新聞紙などは入れづらいことだ。同社は「作業スペースも確保しないといけない」と説明したがどうだろう。

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カテゴリ: 2020年度

 大和ハウス工業は9月25日、同社の全国の分譲マンション・分譲住宅販売状況や物流施設の稼働状況の取り組みに関するメディア向け勉強会を行った。勉強会は、近く発表される基準地価に関する記事を書くための参考となるよう開催されたもので、業界紙だけでなく一般紙の記者も多く参加した。

 分譲マンションは同社マンション事業推進部 営業統括部部長・角田卓也氏が、戸建て分譲住宅は同社住宅事業推進部 営業統括部 分譲住宅グループ グループ長・本間生志氏が、物流施設は同社建築事業推進部 営業統括部Dプロジェクト推進室室長・井上一樹氏がそれぞれの最近の事業概況について説明した。以下、概要を紹介する。

【分譲マンション】

 ①首都圏の供給物件の価格は依然として高水準を維持。都心5区(中央、千代田、港、新宿、渋谷)は2019年より約12%上昇、平均坪単価590万円となっている。市場が大手の寡占状態にあり、新型コロナの影響も鑑み、供給計画のバランスを図っているため、現段階では価格下落の傾向は見えない。

 ②近畿圏においても約4%の価格上昇。価格下落の傾向は見えない。地方都市においては、複合開発を含む主要な駅周辺の再開発案件等について特に進捗が見られる。

 総じて、コロナによる緊急事態宣言解除後は、来場・契約において、8月以降は(コロナ前の)1月~2月と比較し、遜色のない数値にまで回復。特に実需層における購買意欲が顕著に見受けられる。

 ③賃貸レジデンスに関しては、金融緩和を受けて不動産投資家の物件取得が堅調。そのため都心エリアを中心に、賃貸マンション向け土地取引が活発である。その結果、マンション事業用地においては依然競争が厳しく、コロナの影響は見受けられない。

 ④一方ホテルについては、出店計画の見直しに伴い、売買の成約に慎重な姿勢が見受けられ、マンション用地との競合は減少傾向にある。

 ⑤新型コロナウイルスの収束が不透明な状況ではあるが、日本の不動産市況における影響が諸外国に比べ、限定的であるという判断から、早い段階で海外投資家のニーズが回復する可能性がある。

【戸建て分譲住宅】

 同社の仕入れ施策としては、エリアの一等地購入を中心とした小規模区画、事業部連携の大型案件、他社との競合を避ける共同仕入れに注力し、企画施策としては首都圏での3階建て強化、新商品・木造分譲の強化、家事シェアハウスをはじめとするコンセプト住宅の供給など。

 2019年11月に販売開始したライフジェニックは累計320棟を販売。コンセプト住宅の「家事シェアハウス」は2020年7月4日~26日に実施した全国一斉見学会には6,278組が来場。テレワークスタイル提案は11月以降に投入する予定。門柱付近の玄関先に設置しても違和感のないデザインの「Next-Dbox」を2020年10月から販売開始。

【物流施設】

 同社の2020年3月期売上高4兆3,802億円のうちセグメント別では26%の事業施設がトップで、戸建住宅の11%、賃貸住宅の22%、マンションの8%をはるかにしのぐ。

 成長ドライバーである物流施設を中心とする事業施設への投資を図るため、第6次中計画の当初予定投資額3,500億円を6,500億円へ3,000億円積み上げることに修正。

同社調べによる開発会社別の物流施設シェアは開発面積、件数ともトップ。数字は開発面積、シェア、件数の順。

1 大和ハウス工業 6,378,964㎡ 19.9%  217件
2P社        6,092,094㎡    19.0%  94件
3G社       2,254,032㎡    7.0%  30件
4M社          2,174,905㎡   2.4%   28件
5 E社        1,842,336㎡  4.3%   21件
全施設計     31,986,036㎡      671件

◇       ◆     ◇

 分譲マンション市況については、記者も極力現場に足を運ぶようにしているので角田氏の説明はすんなり理解できた。その通りだと思う。テレワークの浸透で郊外マンションが活性化しつつある。

 角田氏に、「マンションブランドは御社のプレミストを含めパーク・ホームズ、パークハウス、プラウド、ブリリア、ブランズも大手は全て〝ハ行〟。コンセプトによって複数のブランド名にしているところがあり、総合ギャラリーを開設しているところがあるが、御社はどうか」と質問した。角田氏はブランドの追加、総合ギャラリーの開設の予定はないと話した。

 戸建て分譲は、同社を含めた大手ハウスメーカー・デベロッパーと分譲戸建て専業のデベロッパー、メーカーなどとはターゲットが異なり、一概に断定的なことは言えないが、本間氏は「価格上昇、競争激化、消費増税などの影響で当社だけでなく各社とも昨年は売上戸数を減らした。今年も当社はコロナの影響で第一四半期の数値は大幅に前年同期を下回ったが、7月以降はV字回復。上半期の減少を下半期に取り戻したい。売上戸数は前期の2,000戸若干下回る1,900戸くらいを予定している」と話した。

 本間氏はまた、「回復が著しいのは首都圏の多摩エリア(ニュータウンとは言わなかったが)と千葉ニュータウン」と話した。これも納得だ。これらの戸建ては、土地が30坪、建物が30坪の都市型戸建てと異なり、土地は40坪以上確保され、緑環境など住環境もよく、第一次取得層でも手が届く価格帯にある。

 井上氏は施設事業について、①ゼネコンとしての施工能力の高さ②デベロッパーとしての土地選定能力③不動産証券化の仕組み-の3つの強みを強調した。稼ぎ頭だから当然かもしれないが、まだまだ話し足りなさそうだった。

 ◇      ◆     ◇

 昨日(9月24日)は、同社のリノベーションマンション「リブネスモア戸田公園」の取材現場で、20年以上前に取材した山梨県甲府市の「双葉・響きが丘」の同社の担当者・佐々木祐輔氏から声を掛けていただいたが、今日(9月25日)は、2011年11月に取材した千葉県千葉市の開発面積約369haの「かずさの杜 ちはら台」の同社担当者・鈴木光章氏から声を掛けられた。名刺の肩書は「住宅事業推進部東日本住宅設計室一課主任 一級建築士 一級建築施工管理技士 一級造園施工管理技士 インテリアプランナー」とあった。

 感動的な取材をした記憶がまたまた蘇った。ここも素晴らしい大規模住宅地だ。当時の記事も添付したのでぜひ読んで頂きたい。

 同社も分譲戸建ては都市型戸建てが中心になっているが、分譲戸建ての見学の醍醐味はやはり大規模住宅地にある。機会を見つけて取材したい。

20年、30年前の記憶蘇る 大和ハウス リノベマンション「リブネスモア戸田公園」(2020/9/25)

先行逃げ切りか まくり一発か レベル高い 大和ハウス「プレミストタワー白金高輪」(2020/9/19)

大和ハウス工業「平和台」 同社初の「ZEH-M Ready」 申し込み殺到 早期完売へ(2020/9/15)

積水ハウス「スマートコモンシティちはら台」に見た街づくりへの覚悟(2014/9/13)

街のレベル高い「かずさの杜 ちはら台」大和ハウス「xevo Li (ジーヴォリアン)」(2011/10/21)

 

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pdfはこちら  30日間の感染者.pdf

 東京都の新型コロナ感染者は、連日300~400人台だった7月下旬から8月中旬と比較し、この1か月間は100~200人台で概ね推移し、100人を割る日もあるなど、徐々に減少しているようにも受け取れる。別表に、過去30日間の年代別感染者の推移を示した。

 8月24日から9月2日までの10日間の感染者は1,795人で、年代別では20~30代が最も多く884人で、全体に占める割合は49.2%となっている。以下、割合は40~50代が27.9%、60代以上が15.4%、20歳未満が7.4%の順。

 9月3日から9月12日までの10日間の感染者は1,729人と前10日間より66人減少した。20~30代が58人、60代以上が36人それぞれ減少したのが反映された。注目されるのは20~30代の感染比率が47.8%へ1.4ポイント低下した一方で、40~50代は31.5%へ3.6ポイントアップしたことだ。

 さらにこの10日間はその傾向が顕著になっている。感染者は1,537人へ前10日間から192人減少した。年代別では20~30代が157人、40~50代が39人減少し、60代以上は12人増加した。比率では20~30代は4.3ポイント低下し43.5%になった一方で、40~50代は1.4ポイント、60代以上は2.6ポイント、20歳未満は0.4ポイントそれぞれ上昇した。

 以上のことから、感染者の減少に20~30代の若年層が大きく〝寄与〟していることが分かる。他方で、他の世代はそれほど減少しておらず、若年層が減少した分だけ感染比率は高まっている。

 今後、どのように推移するか分からないが、感染経路不明者割合は40%台の後半から50%台で推移するなど減少はしているものの依然として高い数値を示していることを合わせ注視する必要がありそうだ。

 23区の飲食店などの営業制限も解除(9月15日)され、プロ野球観戦者制限は5,000人から収容人員の50%へ緩和(9月19日)された。10月からは除外されていた東京都のGo Toトラベルキャンペーンも解除される。

 以下、9月17日に行われた東京都のモニタリング会議での専門家によるコメントを紹介する。

①新規陽性者数が高い水準のまま、増加比が100%を超える値に変化したことは、新規陽性者数が急速に増加していくことを意味している

②新規陽性者数は、依然、週当たり1,000人を超える高い水準で推移しており、更に増加傾向が続くことへの厳重な警戒が必要である。

③今週の濃厚接触者における感染経路別の割合は、全年代合計で、同居する人からの感染が、前週の37.4%から32.9%に低下したものの、依然として最も多く、次いで職場が13.5%となり、施設13.2%、会食11.6%、接待を伴う飲食店等5.9%の順であった。前週と同様、同居する人からの感染が最も高い割合であった。

④一旦、家族内に新型コロナウイルスが持ち込まれると、感染を防ぐことは困難であり、まずは、家族内に持ち込まないよう、家族以外との交流における基本的な感染防止対策の徹底が必要である。また、特に重症化するリスクが高い高齢者の同居家族への日常的な感染防止対策が重要である。

⑤特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイケア施設、訪問看護、病院等、重症化リスクの高い施設において、無症状や症状の乏しい職員を発端とした感染が多数見られており、高齢者施設と医療施設における施設内感染等への厳重な警戒と、高齢者の感染予防を目的とした検査体制の拡充が必要である。

⑥今週の新規陽性者1,234人のうち、無症状の陽性者が18.0%を占めている。

東京都 新型コロナ感染者5日連続で30代男性が最多20代の減少顕著(2020/9/13)

東京都 新型コロナ感染者1カ月で大きな変化20代女性が最多に20代男性は48%減(2020/9/6)

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槇文彦氏「恵比寿東公園」

 先日(9月18日)、日本財団の17か所(予定含む)の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトのうち恵比寿にある3か所を見学した。建築家・槇文彦氏の「恵比寿東公園」には立ち去りがたいほどの感動を覚えた。片山正通氏の「恵比寿公園トイレ」にもうなってしまった。田村奈穂氏の「東三丁目公衆トイレ」には強烈なメッセージが込められている。みんな素晴らしい。公園トイレの概念を間違いなく変える。(写真、コメントは全て日本財団提供)

 利用者は、「えっ、1か所1億円? 全部で17億円?あの笹川さんとこが? とてもありがたい」などと異口同音に感嘆の声を上げた。

 プロジェクトは、同財団が約17億円を投じ、渋谷区内の17か所の公園トイレを整備したうえ渋谷区に寄付し、維持管理も日本財団・渋谷区・渋谷区観光協会が行う〝民設民営〟事業で、TOTOの暖房便座付きトイレを採用、施工は大和ハウス工業が担当し、設計・デザインにわが国を代表する建築家を起用していることから話題になっている。、世界から〝同じものを是非〟というオファーもあるという。

 記者はこれで完成した7か所すべてを踏破した。(断わっておくが記者はトイレフェチではない。マンションもそうだが、全て物事は一流に触れないと成長しない。全17か所を見るつもりだ)

◇      ◆     ◇

 さすが世界でもっとも名誉あるプリツカー賞を受賞した槇文彦氏だ。「恵比寿東公園」トイレに記者は絶句した。息が詰まりそうな感動を覚えた。

 利用者がとぐろを巻きそうな円形デザインの安藤忠雄氏のトイレも素晴らしかったが、槇氏のトイレはスチールとアクリル板を組み合わせた白が基調の外観で、アールを描いた屋根は、わが国の寺社仏閣建築物によくみられる軒反りの手法を採用したその曲線は飛翔する鶴のようでもあり、樹間を緩やかに抜ける薫風のようにも映る。

 外観が美しいだけではない。普通トイレと言えば入り口と出口は同じだが、ここは通り抜けられるになっており、内部空間に風と光を取り込んでいるのが大きな特徴だ。臭気・運気は風に乗って天空を舞い、やがて雲散霧消する仕掛けだ。

 まだある。何とトイレの外壁には同じ素材のベンチが設えてある。デパートのトイレ脇の通路にベンチが設けられている例はあるが、ベンチ付きの公衆トイレなどないのではないか。

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記者が見学したときもベンチに腰かけていた人がいた

【槇文彦氏コメント】

 このパブリックトイレをきっかけに、公共空間のあり方について再考する機会を与えられたことに感謝いたします。
 敷地の恵比寿東公園は、緑豊かな児童遊園として普段から近隣の人々に親しまれている公園です。私たちはこの施設を単なるパブリックトイレとしてだけでなく、休憩所を備えた公園内のパビリオンとして機能する公共空間としたいと考えました。子どもたちから通勤中の人々まで、多様な利用者に配慮し、施設ボリュームの分散配置によって視線を制御しながら、安全で快適な空間の創出を目指しました。ボリュームを統合する軽快な屋根は、通風を促し自然光を呼び込む形態とし、明るく清潔な環境と同時に、公園内の遊具のようなユニークな姿を生み出すことを意図しました。
 タコの遊具によって「タコ公園」と呼ばれる恵比寿東公園に、新しく生まれた「イカのトイレ」として親しまれることを望んでいます。

◇      ◆     ◇

 プロダクトデザイナー・田村奈穂氏の「東三丁目公衆トイレ」は、恵比寿駅から徒歩数分のJR線路沿いにある三角形の敷地に合わせた鮮やかな赤の外観が特徴の三角形トイレだ。

 素材は堅牢な分厚いスチール。強烈な赤の色と鋭角的な外観に記者はたじろいだ。これは、田村氏が「LGBTQ+」(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア・クエスチョニング+)とコメントしているように、多様な生き方をストレートに表現したのだろう。

 誰が利用するのだろうとしばらく眺めていたら、タクシーの運転手や配送業の従事者と思われる人が利用していた。女性は少なかった。

 駅には近いが、道路幅は狭く(2mもないはず)残地のような敷地に立地するだけに、他の公園トイレと比べると田村氏には気の毒な気もした。

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田村奈穂氏「東三丁目公衆トイレ」

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女性用トイレ

【田村奈穂氏コメント】

 年齢や性アイデンティティ、国籍や宗教、肌の色に関係なく、誰にでも訪れる生理現象を満たす場所、トイレ。けれど、個人のニーズというものが無限に多様であることがわかった今、社会が共有する「公衆トイレ」はどう変わっていけばいいのでしょう?

 私の住むニューヨークの街ではLGBTQ+の人々が、自分の認識する性に正直に生きています。渋谷の片隅の小さな三角の土地にトイレをデザインするにあたり、彼らが、ありのままの「自分」を生きる姿を、ありのままを受け入れる社会を想像しながら突き詰めて考えてみた結果、トイレを利用するだれもが、快適な気持ちを同じように得られるために大切なのは、プライバシーと安全です。それを念頭に、個人の空間を再定義して3つの空間をデザインしました。

 造形のインスピレーションは、国際都市渋谷にやってくるビジターへのもてなしの気持ちをこめて、また、利用する人々を包み込む安全な場所にしたいという願いを込めて、日本の贈り物文化のシンボルである折形から得ました。

 社会に属するすべての人たちが、安全に、ハッピーに生活を営める社会に、そんな思いをデザインにこめたトイレです。

◇       ◆     ◇

 ワンダーウォール代表としてインテリアから建築、クリエイティブディレクション、大型商業施設など世界的に活躍する片山正通氏の「恵比寿公園トイレ」にもうなってしまった。

 記者が言うことはない。片山氏のコメントがすべてを物語っている。「建築的なものから距離を置き、遊具やベンチや樹木のように何気なく公園に佇むオブジェクト」-これがすべてだ。

 外壁に浮造り加工を施したコンクリート化粧打ち放し仕上げ スギ板型枠工法を採用することで、かなりのボリュームがあるにもかかわらず周囲の緑にしっくり溶け込み佇んでいるその風情は、空の青にも海の青にも染まず漂う白鳥とも、そして田村氏の強烈な「LGBTQ+」の赤とも馴染みそうだ。街行く人もそこに建造物があることすら気づかず、それがトイレであることも全然識別できないはずだ。(よく観察すると芸は細かい。写真で示したピクトサインはアートだ)

 片山氏は“曖昧な領域-現代の川屋(厠)”を構築したともコメントしているが、記者は谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を思い出した。川に直接用便する「川屋」(厠)の記述もある。谷崎が生きていたらこのトイレをどう表現するだろうか。

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片山正通氏「恵比寿公園トイレ」

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ピクトサイン

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女性用(左)と男性用トイレ

【片山正通氏コメント】

 念頭に置いたのは、建築的なものから距離を置き、遊具やベンチや樹木のように何気なく公園に佇むオブジェクトとしての在り方。

 日本におけるトイレの起源は川に直接用便する「川屋」(厠の語源)と呼ばれるもので、縄文時代早期に遡る。土で固められたもの、木材を結び付けて作ったものなど極めてプリミティブで質素であった。そんな佇まいをイメージしながらコンクリートでできた壁を15枚いたずらに組み合わせ、トイレでありオブジェクトでもある“曖昧な領域-現代の川屋(厠)”を構築。壁と壁の間を男性用/女性用/だれでもトイレという3つの空間への導入とするなど、人々が不思議な遊具と戯れるような、ユニークな関係性をデザインした。

◇       ◆     ◇

 槇文彦氏の「恵比寿東公園」トイレについて追加する。

 この公園は、東京都に85か所(令和2年現在)しかない、渋谷区では130か所ある公園の中で唯一の「児童遊園」だ。

 どういうことか、少し説明しよう。児童遊園は、児童福祉法第四十条で規定されている「児童厚生施設は、児童遊園、児童館等児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、又は情操をゆたかにすることを目的とする」施設だ。経緯は分からないが、渋谷区は平成19年にこの「恵比寿東公園」を児童遊園に指定した。

 他の129の公園は「〇〇遊園」と名がついているものを含め全て都市公園法第一条に定める「都市公園の設置及び管理に関する基準等を定めて、都市公園の健全な発達を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」施設だ。

 ちなみに、わが多摩市には208か所公園があり、「児童公園」の名がつく公園は5か所あるが、児童福祉法による児童遊園は1か所もない。全て都市公園法で規定する「街区公園」だ。

 そもそも児童遊園と都市公園の差などほとんどない。児童遊園には遊具の整備に関する規定や「児童厚生員」を配置することが求められていることくらいのはずだ。記者はこの〝垣根〟を取り払うべきだと思う。「(悪しき)前例主義」の典型ではないか。

 そうでなくとも、街区公園は利用されないという現状がある。目黒区の実態調査によると、ほとんど利用されない公園比率は2割くらいに達している。他の区市も同じではないか。「立体都市公園制度」もあるのだから公園のあり方を根本的に見直したらどうか。日本財団の渋谷区公園トイレは一石を投じたはずだ。

 児童遊園があるのだから、圧倒的多数派のわれら老人向けの公園もあっていいはずだがどこにもない(ゲートボール場として〝占拠〟している例はあるだろうが)。老人福祉法の施設にも「老人公園(遊園)」の文言は一つもない。

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〝タコ公園〟と呼ばれる由縁のタコの遊具がある「恵比寿東公園」

「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー日本財団PJ(2020/9/15)

縦格子の円形平屋デザインが美しい 安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ」完成 日本財団(2020/9/7

若い人で溢れかえる「立体都市公園制度」を活用した三井不「MIYASHITA PARK」(2020/9/6)

日本財団 渋谷区公園トイレ整備に17億円 「西原一丁目」完成/真逆の児童遊園(2020/8/31)

坂茂氏も坂倉竹之助氏も素晴らしい 日本財団の民設民営 渋谷区公園トイレ(2020/8/9)

渋谷区に安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾、槇文彦氏ら16人がデザインしたトイレ誕生(2020/8/7)

激減する利用者激増する1人当たり占有面積公園のあり方考える(2020/8/3)

〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)

デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)

「女性が輝く社会」へつなげるトイレ環境は整うか 国交省 トイレ協議会(2017/3/14)

公園に保育所、マンション岩盤規制を打ち破れるか国交省公園のあり方検討会(2015/2/2)

カテゴリ: 2020年度
 

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