今度は横浜のど真ん中 人気必至の横浜公社「横浜MIDベース タワー」
「横浜MIDベース タワーレジデンス」完成予想図
横浜市住宅供給公社が2月中旬~下旬に分譲する「横浜MIDベース タワーレジデンス」を見学した。商業・保育所・診療所・有料老人ホーム・地域交流施設を併設した複合大規模開発で、鹿島建設の免震・SI工法を採用。商品企画レベルが高く、申し込みが殺到しそうだ。資料請求は3,000件に達している。
物件は、横浜市営地下鉄ブルーライン高島町駅から徒歩3分(京浜東北・根岸線横浜駅から徒歩13分)、横浜市西区花咲町6丁目に位置する18階建て全199戸(他に老人ホーム定員100名予定、保育所、診療所、物販店舗)。専有面積は56.73~87.70㎡、価格は未定。竣工予定は平成29年11月下旬。設計は鹿島建設、施工は鹿島・紅梅組建設工事共同企業体。販売代理は野村不動産アーバンネット。従前はJTの施設。
現地の最寄り駅は高島駅だが、横浜駅、桜木町駅、みなとみらい駅も徒歩圏にあり、建物は鹿島の免震・SI工法を採用し、商業施設や保育所、有料老人ホーム、地域交流施設などが併設される複合開発であるのが最大の特徴。
商品企画レベルも高く、「CASBEE横浜」Aランクを取得。長期優良住宅の認定を受ける予定だ。住戸は4階以上で、内廊下方式を採用。全18タイプ。フィオレストーンキッチンカウンター、グローエ水栓、食洗機、吊戸棚、トイレドア幅75センチなどが標準装備。
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横浜公社のマンションといえば、最近では「横浜ポートサイド」「マークワンタワー長津田」が忘れられない。別掲の記事を参照していただきたいが、大手デベロッパーが供給するマンションとそん色ないどころか、ユニバーサルデザインなどは民間をしのぐレベルの高さだった。
今回も同様だ。モデルルームは柱・梁型がややあったのが気にはなったが、折り上げ天井にするなどうまく処理していた。
面白い取り組みでは、5階の屋上コミュニティ広場に「屋上養蜂」を行うことだ。年間30~50キログラムを採取し、地域交流の場でお年寄りや子どもたちが食べるのだそうだ。
養蜂を取り巻く環境は生態系の崩壊などにより悪化の一途をたどっており、関係者は危機感を募らせている。ミツバチはどこに花を求めるのか心配だが、横浜のど真ん中で養蜂を行うというのがうれしいではないか。
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さて、肝心の価格。坪単価は最低で300万円、高値追及するなら350万円と見たが、公社は極力価格を抑えると読んだ。320万円くらいでないか。
三井デザインテックの遠藤瑠衣氏がコーディネートしている東南角の10~18階の87㎡のタイプは、億ション(坪400万円として)となりそうだ。「横浜ポートサイド」では4戸が億ションだった。
公社が億ションなどと書くと批判される向きもあるかもしれないが、そういうプレッシャーをかけるからつまらない当たり障りのないプランになる。みなとみらいエリアは坪400万円をはるかに突破しているではないか。安売りは横浜市民のためにならない。地域のポテンシャルを高める役割も横浜公社は担っている。
首都圏で分譲事業を継続して行っているのは横浜公社と川崎公社だけになってしまったが、これからも民間とは一味違った質の高いマンションを供給してほしい。
87㎡のモデルルーム
「里山でシゴトする!」 キックオフ・イベントに約140名 NORA
「まちの近くで里山をいかすシゴトづくり」(横浜市市民活動支援センターで)
「里山」をキーワードに様々な活動を展開している特定非営利活動法人よこはま里山研究所(通称称:NORA、理事長:松村正治・恵泉女学園大学准教授)が主催したワークショップ「まちの近くで里山をいかすシゴトづくり」を見学・取材した。
「都市近郊の里山生態系を保全しつつ、里山資源を有効に活用することで、持続可能な共生社会の構築を試みるプロジェクトのキックオフ」として位置づけられたこのイベントは1月13日(水)と1月20日(水)、2週連続で行われ、延べ参加者は約140名にのぼった。
記者が取材したのは20日のみだったが、会場の横浜市市民活動支援センターは60~70名の参加者であふれかえっていた。年代は20代から60代まで幅広い層にわたり、男女比は半々。記者のようなネクタイ、スーツ姿の人は皆無だった。「里山でシゴトする!」ことは、結果をすぐ求める、コストを最優先するサラリーマン的発想ではできないからだと理解した。
さて、「里山」は、記者は勝手に人間界と獣界の共存界、分水嶺のようなところで、わくわくするような宝の山でもあると理解しているのだが、最近は「里山」が獣類に侵され、人間は檻の中でしか生きられなくなってきたのに絶望もしている。しかし、ここでは「里山」の定義だとか、林野庁がいつも使う「里山林」とどう違うのかはさておく。藻谷浩介氏の『里山資本主義』(角川新書)が大ヒットし、「里山」が一部の人たちのものでなくなったことは歓迎すべきことだと思う。
とても面白かったのは、参加者が「里山で農福連携」「地域とつながる」「環境教育」「薪・木質バイオマス」「畑」などをテーマにグループに分かれて話し合う「グループワーク」だった。記者は聞き眺めていただけだが、考えるヒントをたくさん提供してくれた。例えば「木材」がテーマのグループワーク。「広葉樹が不足している」ことが話題になった。
記者が生まれ育った田舎の川は水量が激減し、面白いように獲れたアユもモクズカニもほとんど姿を消した。川と山の関係はよくわからないが、戦後、わが国は雑木林をスギやヒノキの山に変えたことと無関係ではないのではないか。
スギやヒノキの山はしっかり管理すればきれいではあるが、かん養機能、渇水・洪水防止機能を著しく低下させていることは容易に想像できる(針葉樹より広葉樹のほうが保水力が高いということに対しては異論もある)。棚田がなくなったのも関係しているはずだ。そういえば、昔は地元で採れたケヤキ、サクラなどの広葉樹が家具や住宅に当たり前のように用いられていたが、今はすっかりなくなってしまった。
そのスギやヒノキは伐採期を迎えているにも関わらず、様々な理由で放置されている。打ち捨てられた間伐材が洪水時に街を襲うことがしばしばある。
さらに驚いたのは、参加者が意欲満々だったことだ。「里山」に興味・関心のある人がほとんどというのは当然だろうが、「里山をシゴトにしたい」人が20人くらいいて、「里山が専業」の人が10数人もいたことだ。「副業」の人も4~5人いた。
「里山」が仕事になるはずがないと記者は思っているのだが、そうではない可能性を秘めていることも報告された。
一般社団法人まちやま代表理事の塚原宏城氏もそうだ。塚原氏は1979年生まれで、北大を卒業後、札幌市役所に7年間勤務したあと、国際自然大学校へ転身。そして2015年に独立して、まちやまを設立した。
〝売り手・買い手・里山よく〟の「三方良し」を掲げる塚原氏は、笹が生い茂り荒れ放題となったままの町田市郊外の「里山」の所有者に話を付け、「笹でつくる!ティピー&ミニバウムクーヘン」の体験イベントを行った。刈り取ったササでインディアンが使っていたテント型住居「ティピー」と、ミニバウムクーヘンを作るイベントだ。親子一組3,000円、定員20名で参加者を募ったところ、8組19人が集まったという。先日の1月17日だ。
笹やぶをきれいにする作業はやったことがないが、お金をもらってもやりたくない。大きくなったササはしぶとく、刈り取るのは容易でない。真冬にわざわざ3,000円も払って参加する人がいるのが信じられない。塚原氏はそのようなニーズがあることを活動の中から発掘したのだろう。
このほか、NPO法人ナチュラルリングトラスト副代表・小出仁志氏、認定NPO法人自然環境復元協会・伊藤博隆氏、多摩市グリーンボランティア森木会・高澤愛氏、株式会社FIO代表取締役・舩木翔平氏がそれぞれ里山資源をいかすシゴトについて事例紹介した。
グループワーク
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取材を申し込んだのは、NORAがどのような活動を行っているのかこの目で確かめたかったのと、松村氏が年初のNORAのメルマガで〝里山でシゴトする!〟を宣言し、並々ならぬ決意を込められていたのに興味をそそらされたからだ。
松村氏はコラムで次のように述べている。
「NORAは、約15年前にNPOを立ち上げたときから、『里山でシゴトする!』ことをキャッチフレーズとして掲げ、これを実現しようとしていた。…しかし、十分に戦略を練る余裕もないままに、『シゴトする』こと自体が次第に目的化してしまった。その結果、設立後7年目には、NPOとしての目的を果たすことができず、軌道修正を図ることになった。…この方針転換から、さらに約7年の月日が流れた。…都市近郊の里山に目を向ければ、特に若手を中心に、人と里山をつなぎ、新たな仕事を創出しようとする動きが広がっているように見受けられる。
NORAとしては、こうした動きの輪に加わり、あらためて『里山でシゴトする!』ことにチャレンジしたいと思っている。…ここには、(里山を)『いかす』(生かす・活かす)ということを深く考えたいという気持ちが働いている。
(都市近郊の)人びとに向けたレクリエーション・教育・医療・福祉などのサービスを、総合的に提供できるとしたら、このエリアの里山の価値は非常に高まるはずだ。…まちの近くの里山をいかし、持続可能で共生社会をつくるために、まず私たちが立ち上がりましょう」
松村氏
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松村氏について一言。数年前、多摩ニュータウン学会の会合で松村氏と初めてお会いしたとき、話される言葉一つひとつに「強靭さ」「重さ」があるのに驚いた。座学だけでは得られない実践によるしっかりした裏付けがあるからだろうと気づかされた。
「実践」とは、NORAの活動だ。実に多彩でユニークな活動をされている。毎月送られるメルマガは量が多く読み切れないが、松村氏のコラムは読むことにしている。リンクを貼ったのでぜひ見ていただきたい。
全国初の「特区民泊」 大田区の事業説明会に定員の2倍200名参加
「特区民泊」事業説明会(大田区立消費者生活センターで)
全国初の「特区民泊」説明会に定員の2倍の200名-東京都大田区は1月27日、全国で初めて施行される「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)」説明会を行ったが、定員100人の2倍の約200人が参加。席に座れず立ったままで説明を聞く人も多くみられた。報道陣も数十人が詰めかけ、会場は人であふれた。条例は1月29日に施行される。
「特区民泊」は、①7日以上(6泊7日)施設を利用させること②居室の面積が25㎡以上であること③清潔な居室環境にあること④廃棄物の処理方法が適切であること⑤外国人に必要な役務を提供すること⑥所轄の消防署の審査を経ること⑦近隣住民への周知を行うこと-など一定の要件を満たせば旅館業法の適用除外を受けられるというもの。
同様の条例は大阪府(施行日は未定)と大阪市(施行日は平成28年10月以降)にあるが、同区が全国に先駆けて施行する。
説明会で挨拶した同区生活衛生課長・三井英司氏は「全国初の試み。外国人の旅行者に安心・安全で質の高い民泊を提供し、リーディングケースとなるよう第一歩を切りたい」と話した。
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記者は「民泊」にほとんど関心はないし、知識もない。ただ、分譲マンションの空き部屋などが民泊施設として利用されないかという危惧を抱いているので、どのような人が申請するのか興味があって取材することにした。なので、記事の当否については自信がないことを最初にお断りしたい。
まず、分譲マンションが特区民泊として利用されるかどうかだが、これはないとひとまず安心した。一般的な分譲マンションは管理規約で「専ら居住」が定められているはずで、「業」として不特定多数の人に短期宿泊させるのは規約違反となりそうだ。住民も管理組合も認めないのではないかと思う。管理規約があいまいで、事務所化、賃貸化が進んでいる古いマンションが民泊施設化する可能性は否定できない。
これから申請を考えている人もいるのだろうが、条例の要件をクリアするハードルは低いようで高い。例えばゴミ出し。一般家庭のゴミ出しと異なり、事業者用のゴミ出しルールを守らないといけない。分別は当然ながら、出す場所も異なるし、燃えるごみは区の許可業者の、その他のゴミは産業廃棄物として都の許可業者にそれぞれ依頼しないといけない。
また、テロ対策、感染症対策、違法薬物の使用、売春などを防止する目的から警察の滞在者の名簿の提出や照会に協力すること、挙動に不審の点が見られたら警察に通報することも求められる。
近隣住民の苦情が頻繁に出るようでは「外国人に安全で安心な役務」を提供することにならず、特定認定を取り消されるリスクもある。
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条例の施行によって区内でどれだけの特区民泊が申請されるか。これも大きな関心事だが、三井課長は「1社で年内に1,000部屋くらい申請したいという業者もあると聞くが、どうなるか分からない」と語ったように、ふたを開けてみないとわからないのが現状のようだ。
ただ、説明参加者には、「マンションの購入を含めて民泊を検討したい」という28歳の男性が語ったように、民泊をビジネスにしようという業者や、投資用として民泊施設を購入しようと考えている人もいるのかもしれない。参加者の中には若い人の姿が多いのが目立った。
三菱地所レジデンス 社宅を1棟リノベの賃貸マンション「東陽町」完成
「ザ・パークレックス東陽町」
三菱地所レジデンスは1月26日、中小ビルのリノベーション賃貸事業「Reビル事業」で初の社宅を一棟リノベーションした「ザ・パークレックス東陽町」の工事が完了したことに伴いプレス内覧会を行った。
「Reビル事業」は、築年数が経過して競争力を失った中小既存ビルなどを同社が一括賃借し、同社負担で耐震補強などを含むリノベーション工事を実施したのち、一定期間(概ね10~15年)転貸して投資資金の回収とバリューアップした転貸収入を確保したあと、オーナーに返還。リノベーション企画にあたっては、同社の子会社メックecoライフが主導して計画を練り、設計については、主にオープン・エー(代表取締役の馬場正尊氏は「東京R不動産」の共同創設者)に委託。ニーズを的確に捉えた物件に改修するというスキーム。
2014年に立ち上げ、これまで東京・丸の内の後背地で5棟が竣工。竣工したばかりの2棟を除く3棟は100%稼働。事業推進中が約5棟、検討中が約10棟ある。オーナーの希望によってはマスターリースだけでなく、買い取りも行い、対象物件も住宅、倉庫などにも広げていくことを検討しているという。
今回の物件は、東京メトロ東西線東陽町駅から徒歩13分、江東区千石2丁目に位置する地下1階地上5階建て全10戸。完成は昭和56年。NTT東日本が幹部社宅として使用していたもので、転貸人はテルウェル東日本。同社が転々貸人となる。1坪当たりリノベーション費用は約20万円。
敷地北側に公園・小学校があり、敷地面積約202坪に対して延べ床面積が約380坪とゆったり建てられていること、さらには新耐震基準で建設されていること、共用部にはピロティ・ポーチ、専用部にはサンルーム・多くの共用収納があることなどの特性を最大限に生かすため「子供と共に成長する住まい」をテーマに子育て世代にターゲットを絞っているのが特徴。月額賃料は18万円前後を予定している。
内覧会に臨んだ同社資産活用室兼メックecoライフ常務取締役・明嵐二朗氏は、「ヒアリングの結果、〝困っている〟〝バリューアップできない〟というオーナーがたくさんいる。われわれがリスクを負うことで、事業が環境負荷の低減や耐震化促進につながり、エリアの活性化が確実にできることを実感している」と話した。
飾れるポーチ
階段室
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「Reビル事業」は立ち上げたばかりで、1兆円もある三菱地所グループの売上比率からすればコンマ数パーセントにしか過ぎないはずだ。
しかし、デベロッパーの事業すべてが〝ソリューション〟ビジネスであるという観点からすれば、「Reビル事業」は同社の将来を左右する先導役となると記者は確信している。地域の課題を徹底して掘り起こし、ビルやマンション事業に生かしてほしい。地方の再生にも取り組んでほしい。
明嵐氏は「東京・丸の内の後背地にはバリューアップできなくて困っているオーナーがたくさんいらっしゃる。しかし、どうしていいかわからない、投資リスクが獲れないということが大きな壁になっている。わりわれがリスクを取ってバリューアップし、地域の活性化に貢献する」と力を込めたが、とても頼もしく見えた。
昨日は三菱地所の全面広告が朝日新聞と日経新聞に掲載されていた。ビルのイラストを背景にして杉山博孝社長の全身像が大写しされていた。デベロッパーの社長が広告や記事で大写しされたものはたくさんあるが、全身像というのは記憶ない(体形からいって絵になる社長はほとんどいなかったこともありそうだ。杉山氏はその点、身長175センチはありそう)。
昨日の杉山社長の全身像と今日の明嵐氏の姿をだぶらせて眺めていた。かっこいい。明嵐氏は同社野球部の主砲も務めていた。
カスタマイズできる壁
育てるガーデン
大京 リフォームショールームを併設した仲介店舗「江東区大島」に開設
大京グループの不動産流通事業を手掛ける大京穴吹不動産とリフォーム事業を手掛ける大京リフォーム・デザインは1月22日、リフォームショールームを併設した新形態の不動産仲介店舗「Reno Salon(リノサロン)」を江東区大島に開設する。
マンション居住者や中古物件購入検討者のリフォーム需要の高まりに対応するもので、水回り(キッチン、浴室、洗面台、トイレ)」を中心に、大手メーカーの実機約20点を展示するほか、大京穴吹不動産のリノベーションマンション「Renoα(リノアルファ)」の品質が体感できるモデルルームを設置する。
「Reno Salon(リノサロン)」は江東区大島8-32-7学協ビル1階。電話番号:大京穴吹不動産 大島営業所03-6362-0745 大京リフォーム・デザイン大島店03-6362-0743・営業時間:10:00~19:00 (毎週水曜、第1・3火曜定休)。
前途多難 佐倉市・千成に見る郊外団地の現状と課題
「千成ニュータウン」の街並み
皆さんは「千葉県佐倉市」から何を連想されるだろうか。野球好きの記者はすぐ「長嶋茂雄さんの出身地」と反応するのだが、不動産業界では、昭和40年代の高度成長期から60年代にかけて、大量の建売住宅やマンションなどが分譲された東京のベッドタウンとして知られる。最盛期には7,000万円から8,000万円の建売住宅が飛ぶように売れた。
しかし、開発が早かったための課題・難題がここにきて重くのしかかってきている。建物の老朽化、居住者の高齢化、世帯分離による子世代の転出・人口減少などだ。
これらの問題が集中的に表れている市内の「千成ニュータウン」を見て回った。
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京成佐倉駅からなだらかな坂道を上って十数分。長嶋さんが通った佐倉高校の隣に「千成ニュータウン」はある。新宿に本社を構えていた成田屋工務店が昭和40年代初期に開発した総戸数が1,119戸もある大規模な一戸建ての団地だ。
「千成」の名前は、千葉市と成田市の間にあることから名付けられたと多くの人は思っているようだが、そうではない。記者は豊臣秀吉の馬印「千成瓢箪」にちなんで名づけたと当時の同社関係者から聞いていた。第2、第3の「千成」を同社は計画していた。しかし、その遠大な計画はとん挫する。過大な投資が負担となり、同社は昭和60年代の初期に破たんした。バブル崩壊の予兆でもあった。
千成東小学校の近く
地価公示の4分の1でも売れない高台の土地
全ての住宅地を見て回ったわけではないが、なにしろ都市計画法ができる前だ。道路幅は5メートルくらいあったが、隅切りはなく、新しいガス管に替えたためか、黒いアスファルトの跡が生々しい。
開発当初の平屋建てなどがそのまま残っている住宅の割合は1、2割程度しかない。多くは建て替えられたりリフォームされたりした住宅だ。もちろん地区計画や建築協定などなかった時代だ。外観もまちまちで、古い住宅と新しい住宅が混在している風景は異形の街と言えなくもない。
空き家はどれくらいあるか判然としなかったが、見かけ上は10軒に1軒あるかどうかだった。建て替え工事中の建物もいくつか見た。かつては商店だったものはほとんど閉店していた。街の中心部に蕎麦屋があるくらいだ。街ゆく人はほとんど見かけなかった。
いったい、いくらくらいで住宅や土地が取り引きされているのか。平成27年度の公示地価によると、千成2丁目の住宅地の坪単価は約14万円だ。住宅・土地の売り情報もおおむねその前後となっている。
ところが、地元のトクスイ不動産が扱っている千成1丁目の80坪の土地の売り出し価格は290万円、坪単価にして約3.6万円になっている。公示地価の4分の1の価格だ。
なぜそんなに安いのか。「この土地は敷地延長部分に階段が30段以上あるのがネックとなり、なかなか売れません。地域の活性化や空き家の解消は難しい問題です。私は佐倉が地元で39歳ですが、私が小学生の頃の千成の小学校は1クラス3~4組ありましたが、確か今は1組のはずです」と同社の担当者は話した。階段1段当たりのステップを仮に18センチとすると5メートル以上だ。
千成ニュータウンは山あり谷ありの起伏の激しい住宅地であるのも特徴の一つだ。団地内は比高差にして20メートルくらいはあるのではないか。
「77歳の夫は世田谷まで通っています」
居住者の女性に話を聞いた。
「主人は77歳、私は74歳。成田屋さんから土地を買ったのは昭和54年。50坪で1,250万円(坪単価25万円)。成田屋さんは家も建てさせてくれといったのですが、大手のハウスメーカーに建ててもらったんです。お父さんはサラリーマンですが、元気でまだ働いています。世田谷まで毎日2時間かけて通勤しています。『俺は85歳まで元気で働く』と言っています。
街の将来? そうですね、みんな歳をとってきて、お年寄りが亡くなるとそのまま空き家になってきています。昔はスーパーもあったんですがね…。
私も娘が二人いるんですが、『おいでよ』と言われているので、一人になったら引っ越すか老人ホームに行くか考えています。家は近く1,000万円かけてリフォームします」
Aさんが40歳の時、昭和54年に買った土地は坪25万円。いまの地価公示はその半値だ。土地が値下がりすることなど、Aさんは夢にも思わなかったはずだ。
若い人は信じられないだろうが、昭和40年代から60年代の土地神話が生きていたころは、一般のサラリーマンが土地付きの一戸建てを取得できたのは、千成ニュータウンのような都心から1時間、2時間かかるところしかなかった。
佐倉市役所
千成ニュータウン 高齢者人口比率は推定40%超
市のデータによると、総人口はピーク時の平成23年の約17.8万人から漸減しており、27年12月末現在17.7万人。ほとんど横ばいだが、23年のデータでは外国人をカウントしておらず、27年には外国人(2,407人)を含めているのでこのような結果となっている。平成42年には約15万人に減少すると予測されている。空き家は平成13年の2,380戸から20年に8,230戸へと約3.5倍に増加している。
千成ニュータウンの数値は深刻だ。千成1~3丁目の世帯数は平成13年の1,092世帯から27年12月の1,047世帯へと4.1%、人口は3,155人から2,425人へと23.1%、1世帯当たり人口は13年の約2.9人から約2.3人へとそれぞれ減少。
高齢者人口比率は平成13年の14.0%から22年には31.3%へと大幅に増え、27年は推定だが間違いなく40%を突破しているはずだ。幼年人口比率は13年の11.1%から22年には8.8%と10%を割り込んでいる。
大きな特徴は、平成13年の時点で約250人いた25~29歳の層は22年(35~39歳)には約180人へと3割近く減少していることだ。結婚、転出などによって街を離れる人が多いことを物語っている。
市は、人口減少に歯止めをかけるとともに、住みよい環境を確保して将来にわたって活力ある社会を維持していくため昨年10月、将来ビジョンを描いた「佐倉市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定した。
企業誘致の推進、雇用拡大・就業支援、若者世帯等の親との近居・同居の住み替え支援、中古住宅リフォーム支援事業、空き家等を活用した移住者支援などを打ち出し、3団地を団地再生モデル事業として掲げている。
また、空き家法の施行を受けて、空き家対策計画の策定、協議会設置、情報収集などを進めていくが、空き家の除却などに対する補助は行わない方針だ。団地再生モデルについても具体的な対象団地は決まっていない。
市のホームページによると、市にゆかりのある人物として明治の洋画家・浅井忠や津田塾大学の前身、女子英学塾を開いた津田梅子が紹介されていた。
市役所のエントランスにはモンキー・パンチさんも紹介されていたが、長嶋茂雄さんはなかった。長嶋さんを前面に打ち出せば効果的だろうと記者は思うが、長嶋さんは田園調布の人か。
市役所の市紹介コーナー(背番号3は長嶋さんのユニフォームではなかった。モンキー・パンチさんを紹介するものだった。その上の背番号10はサッカーの本田選手を紹介するものだった。佐倉市にサッカースクールがあるようだ)
分譲マンション初 赤坂御用地に隣接 住友不「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」
「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」完成予想図
住友不動産が分譲中の「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」を見学した。業界初の赤坂御用地隣接マンションだ。
物件は、JR中央線四ツ谷駅から徒歩10分、信濃町駅から徒歩9分、新宿区南元町の第一種住居地域・第二種住居地域に位置する7階・地下2階建て全139戸。専有面積は55.84~154.87㎡。2期(戸数未定)の価格は未定。坪単価はA棟、B棟が600万円以上となり、未供給のC棟はそれを下回りそうだ。竣工予定は平成28年10月中旬。設計・施工は西松建設。
現地は、四ツ谷駅と信濃町駅のほぼ中間。四ツ谷駅からだと、左手に若葉東公園、迎賓館正門を見つつ、右手の学習院初等科-みなみもと町公園を抜けたT字路の角。対面には東宮御所正門警備派出所がある。
建物は、御用地の森に面したA棟、みなみもと町公園に面したB棟、北西向きのC棟の3棟構成で、A棟は前面道路の形状にそうような緩やかなカーブを描く雁行設計。総戸数の半数以上はA棟が占める。
モデルルームはA棟の81㎡。バルコニーの奥行きは約3m。御用地の森が眺められる(東宮御所そのものは見えない配慮もされている)。隣戸との壁はコンクリート壁でほぼ完ぺきにプライバシーが保たれるようになっている。設備仕様は同社の他の〝ガーデンヒルズ〟と同様、最高級仕様。
昨年12月に第1期34戸が分譲され、A棟の3階前後が人気になっているという。最上階の5戸はプレミアム仕様で、スカイルーフテラス付き。
鳥の目線からしたら間違いなくこのように見える
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すごいマンションだ。皇居が見渡せる三菱地所レジデンスの「千鳥ヶ淵」もすごかったが、こちらはほぼ正面に東宮御所の正門があり、こんもりとした御用地の森が眼前に広がる。よくぞ建ったと思った。従前は公立学校の共済組合の建物だったそうだ。
通りの安鎮坂には街路樹のユリノキ、トチノキなどの巨木がそびえる。車も人通りも少なく、信じられないほど静か。
「千鳥ヶ淵」では〝唯一無二〟の見出しを付けたが、赤坂御用地に面した分譲マンションもおそらく初だ。青山通り沿いにはひょっとしたらマンションはあるかもしれないが、御用地は北側だ。御用地を東側に見る外苑東通り、西側に見る外堀通りにはマンションはない。
この立地条件に驚き、記者の相場観は壊れた磁石のように右に左に振れた。普通なら坪500万円だろうが、そんな価格では失礼だとも思った。A棟の81㎡のタイプで約14,000万円(坪600万円)と聞いて納得もした。最上階は坪1,000万円くらいになるのではないか。
現地周辺のマンションの供給事例では、2011年分譲の大京のマンションがある。これもレベルは高かった。
参考までに同社のパンフレットから「ロイヤルグリーンベルト」を紹介する。迎賓館が11ha、赤坂御用地が50ha、神宮外苑が27ha。これに隣接・近接する公園や明治記念館も含めれば、広さが約115haの皇居に匹敵する。
7階相当からの眺望
圧倒的人気呼ぶか 大京「ライオンズ外苑の杜」(2011/7/11)
三井リアルティ 業界初の新たな仲介スタイル「三井のリハウス360°サポート」
三井不動産リアルティは1月19日、既存住宅流通事業「三井のリハウス」の顧客を対象に、新たな仲介スタイル「三井のリハウス360°サポート」の提供をすると発表。
築30年以内の一戸建てやマンションの雨漏り、シロアリ被害、給排水管の故障など瑕疵について調査・報告し、引き渡し後2年間に判明した瑕疵について最大250万円を同社が負担する「建物チェック&サポート サービス」を実施する。
また、住宅設備の不具合について調査し、引渡後に設備の不具合が発生した場合に、修理・交換費用を同社が負担する「設備チェック&サポート サービス」や、売主と買主の担当を分けてほしいという要望には「My エージェント制」なども行う。
他社が取り扱う物件でも、同社を通じて購入する買主には建物、設備の調査の実施と補修サービスの提供を標準業務として行っていく。
これらのサービスを「専属専任媒介」「専任媒介」に限定せず、「一般媒介」にも適用するのは業界初と見られ、同社は「物件収集・販促の手段として限定的に行うのではなく、広く一般仲介にも適用し、サービスを提供することが既存住宅流通マーケットの活性化へ寄与できる」としている。
空き家対策 喫緊の課題ではあるが難問も山積
ある首都圏の郊外団地
空き家対策が喫緊の課題となっている。国土交通省は来年度の重点施策の一つとして、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家法)に基づく地方自治体や民間が取り組む空き家対策を支援する空き家対策総合支援事業費として20億円の予算を計上する。
現在、全国で820万戸(総務省データ)あるといわれる空き家は、野村総研のシナリオによれば、何も対策を講じなければ、2023年には総住宅数約6,640万戸のうち空き家数は約1,397万戸、空き家率は21.0%にまで増加する。そうならないための施策が空き家法だ。
空き家法は、「雑草・悪臭など衛生環境悪化」「景観の悪化」「不法侵入などによる治安の悪化」「生命・身体への被害のおそれ」などを回避するため、緊急避難的に「特定空家」に指定し除却、修繕、立ち木などの伐採を行い、環境の保全を図るとともに、空き家の活用に結び付けようという法律だ。
しかし、国や自治体、あるいは民間がどれだけ躍起になって空き家対策に力を入れようと、人口減少・世帯数減少、世帯の高齢化、地域経済・地域コミュニティの崩壊など現在進行形の厳しい環境を考えると、悲観的な考えにならざるを得ない。
確かに緊急避難策として「特定空家」の指定は、予防策・抑止力として一定の効果を上げるかもしれない。「空き家バンク」制度の拡充も一つの処方箋ではある。
とはいえ、①倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態②著しく衛生上有害となる恐れのある状態③適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態④その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態-をどのように特定するのかの課題は残る。代執行も容易ではないと思う。除却費用の一部を自治体が補助するのも、税の公平性からいって住民の支持を得るのは難しい。
各種の調査でも明らかになっているように、そもそも空き家が多く発生しているのは中心市街地では木密地域の狭小住宅であり、郊外部では通勤・通学に不便な立地や、生活利便施設に乏しい地域だ。狭小住宅では、接道義務違反の再建築不可の物件も相当数あるはずだ。
仮に空き家を除却して更地にしても、固定資産税が最大で6倍になる可能性がある。これは空き家の解消、流通促進の本来の目的とは逆に作用しかねない。
さらに言えば、相続放棄・遺棄の問題だ。空き家のままで放置している住宅のうち除却しなければならないほど深刻な状態になっているのは、所有者や相続人に除却費用や固定資産税などの負担が重荷になっている人が少なくないからだ。
相続を放棄したからといって管理責任はまぬかれないが、管理義務を遺棄したらどうなるのか。空き家法では市町村長の命令に違反した場合は50万円の、立ち入り検査を拒んだ者には20万円のそれぞれ「過料」が科せられるが、「特定空家」のもたらす弊害と天秤にかけた場合、罰則は軽すぎないか。
空き家問題の解決を阻む問題はまだある。空き家に残る家財道具・遺品の整理がつかないという問題だ。家財道具、骨とう品、書籍、車…これらの処理をワンストップで行う仕組み・ビジネスモデルが待たれる。遺品整理ビジネスは、空き家の処分・流通を含めれば100兆円、200兆円規模に上るのではないか。
もう一つ気掛かりというか、これが一番大切だと考えているのだが、空き家法は「特定空家」などを除却することに力点が置かれていて、表層だけを取り繕うとしているようにしか見えない。空き家を生じさせないビジョンが著しく欠けているのではないかということだ。
空き家が発生してもすぐに次の住まい手が現れるような、誰もが移り住みたくなるような街づくりを描くのが先決だ。街の再生・活性化の羅針盤ともいうべきタウンマネジメントの活用は必須要件だ。用途変更によるインセンティブ、あるいは逆に私権の制限も必要かもしれない。
また、危機に瀕している地域コミュニティをどう再生するか、その旗振り役ともいうべき人材の育成が欠かせない。
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「田舎暮らし」をバラ色に描き、喧伝する不動産業者とちょうちん持ちのマスコミがあるが、「都会の憂鬱」があるように「田園の憂鬱」もある。都会でまっとうな生活ができない団塊世代の落伍者が、都会より厳しい自然環境、人間関係が待ち構える田舎で再生できるとは思えない。
田舎に移り住もうと考えている人は、もう一度立ち止まってよく考えてほしい。「田舎暮らし」を推奨する人たちには、田舎に移住して3年持たずにまた都会へ舞い戻る人がどれくらいいるかのデータも示してほしい。
オープンハウス 「代々木」に続き「銀座2丁目」「虎ノ門」「青山1丁目」など予定
「オープンレジデンシア代々木ザ ハウス」完成予想図
オープンハウス・ディベロップメントが分譲中の「オープンレジデンシア代々木ザ ハウス」を見学した。物件名に〝ザ ハウス〟が付いているのは昨年分譲して人気になった「恵比寿」に続き2物件目。昨年11月から分譲を開始して、これまで13戸が契約済み。順調に売れている。
物件は、小田急線参宮橋駅から徒歩5分、渋谷区代々木5丁目の第2種低層住居専用地域に位置する地上4階地下1階建て全30戸。専有面積は44.45~118.33㎡。坪単価は400万円。竣工予定は平成28年9月上旬。設計・監理は長谷建築設計事務所。施工はナカノフドー建設。
現地は、道路、小田急線を挟んで対面には国立オリンピック記念青少年総合センター・代々木公園が近接している立地。建物は地階住戸が8戸あるが、100㎡以上の億ションも含めまんべんなく売れている。
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同社の高額マンションを観るのは今回が2回目だ。最初は一昨年分譲された光井純氏がデザイン監修した「オープンレジデンシア南青山」だった。地型が不整形でどうかと思ったが、瞬く間に売れた。
今回は、単価は割安感があるが、高さ規制が12mのエリアで地階住戸もあるのでどうかと思ったが、よく売れている。
モデルルームは「南青山」と同じモデルルームなので、設備仕様などについては「南青山」の記事を参照していただきたい。二重床・二重天井、シーザーストーンのキッチン天板、グローエの水栓、食洗機、ユーティリティシンク、バックカウンター、ミストサウナ、木製建具などが標準装備で総じてレベルは高い。
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同社のマンションは、低層メゾネットの〝オープンレジデンス〟のときから結構見学しているが、最近は地価高と建築費の上昇などからほとんど供給されていない。
その一方で、同社はDINKS・ファミリー向けの〝オープン レジデンシア〟にシフトしており、これまで供給された約80物件のうち半数くらいは〝レジデンシア〟だ。これからも都心部では「銀座2丁目」「虎ノ門」「青山1丁目」「小石川」などが予定されている。
戸建てもそうだが、マンションの売れ行きも好調なことから業績アップに貢献。オープンハウスの前9月期決算は売上高1,793億円(前年同期比:59.9%増)、営業利益213億円(同55.0%増)、当期純利益126億円(同62.8%増)と3期連続して過去最高を更新した。まだまだ快進撃が続きそうだ。
光井純氏デザイン監修 オープンハウス「南青山」 上々スタート(2014/10/20)
安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」 立地よく割安の単価415万円(2014/12/11)