歴史・文化の破壊に疑義を唱える声に耳を傾けるべき 神宮外苑再開発 地元説明会
4列のイチョウ並木(今年5月写す)
神宮外苑地区まちづくり計画の代表施行者・三井不動産は7月20日、計画地の近隣住民を対象にした事業説明会を7月17~19日の3日間にわたって行い、381名が参加、41名が質問(意見陳述)、86件の質疑応答が行われたと発表した。
説明会は、計画地の敷地境界から計画の最高建物高さ(約190m)を2倍した距離の範囲内の近隣(約13,000世帯/法人含む)を対象に開催したもので、改めて計画の意義や必要性を説明した。
プロジェクトサイトで説明動画と質問受付ページを公開し、回答は約3週間後を目安にプロジェクトサイトに回答を掲載する予定。
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「神宮外苑地区まちづくり計画概要とまちづくりに関するご説明動画」は全体で約30分。「5つのポイント」として①明治神宮外苑とまちづくりの意義②段階建て替えによる大規模スポーツ施設の更新③オープンスペースの拡充④4列のいちょう並木の保全⑤みどりの考え方-について説明された。
全部を視聴した。①~④は、説明も具体的で分かりやすかった。
一番聞きたかったのは⑤「みどりの考え方」だった。「最後に街づくりについてご説明いたします」と切り出し、「神宮外苑地区街づくりにおいては一本一本の樹木を大切に扱い、施設計画の工夫も行い、可能な限り多くの樹木を保存します。
保存できない樹木は、樹木の活力度などに応じてできる限り移植いたします。移植のための根回し作業ができないほど建物に近い樹木や、移植に耐えられないほど活力度が低い樹木など、やむを得ず伐採する樹木については利活用いたします。
新たに新植する樹木については、献木や苗木の育成も行います。緑の面積と本数を増やしながら、皆さんと一緒に神宮外苑の次の100年に向け誰もが緑を楽しめる空間づくりに努めてまいります」と締めくくった。約5分間だった。
これにはがっかりした。これまでの説明と変わらない。「一本一本の樹木を大切に扱う」のであれば、やむを得ず伐採する734本の樹木の位置と樹種、樹齢を公表すべきだし、そのあとに新植する樹種も公表すべきだと思う。樹木本数は現状の1,904本から1,998本に、みどりの面積は整備前の25%から整備後は30%に増加するのに、多くの疑義・質問が寄せられているのはなぜなのかを事業者は真摯に受け止めるべきだ。
記者は、住民の人たちは神宮球場やラグビー場、ビル・ホテルなどの建て替え・建設そのものに反対ではなく、樹齢100年を超す神宮外苑の森の歴史・文化が破壊されようとしていることに疑義を唱えているのだと思う。記者自身も30年近く〝草野球の聖地〟である軟式野球場に通った。数千試合を取材しているはずだ。敷地内に植えられている巨木には畏怖すら感じる。
もう20年以上前だ。当時のプロパストは大磯の徳川邸跡地にマンション「レゾンデパン大磯」を建設・分譲したが、敷地中央に植わっていた松の大木を避けるように配棟した。積水ハウス「グランドメゾン狛江」も、敷地内に植わっていた20m超のヒマラヤスギ、ケヤキ、イチョウなどの既存樹約100本を残し、約18,000本を植樹した。
「残しながら、蘇らせながら、創っていく」-三井不動産の街づくりのスローガンだ。
威風堂々〝聖地〟神宮外苑野球場の巨木 事業者VS.イコモス 鳥や虫の視点で考えて(2023/5/23)
里山を見るような見事な植栽 積水ハウス「グランドメゾン狛江」竣工(2013/9/12)
共用部をシェアする 小規模でも実現可能 コスモスイニシア「芦屋」が人気
モデルルーム
コスモスイニシアは7月18日、「イニシア芦屋レジデンス」(全27戸)の第1期2次(17戸)の登録申込受付を7月14日から開始したと発表。共用部をシェアする概念×生活の質の向上をめざした設備仕様とすることで、合理的で機能的なゆとりのあるライフスタイルを提案しているのが特徴。
物件は、JR芦屋駅北出口から徒歩8分、兵庫県芦屋市親王塚町の第1種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する4階建て全27戸。専有面積は34.01~141.09㎡、第1期2次(17戸)の価格は3,898万円~9,998万円。坪単価382万円。竣工予定は2023年6月。施工は村本建設。
1階の共用部分約180㎡に「シェアリング・パス」という動線を設け、ワークスペース・ラウンジ・シェアブックス・シェアシェルフ・シェアシンク・ランドリー・井戸付き奥庭などを配置。送り状(伝票)番号が通行キーとなる「ココ配」システムを導入し、インターネットなどで注文した荷物が不在時でも自宅前の戸別宅配ボックスに投函され受け取ることができるようにしている。外観デザインには50六丁掛けタイル、アプローチには淡路瓦を採用している。
同社は人気になっている要因として「共用部のシェアや空間設計とあわせて、周辺物件と比較した際の価格にもメリットを感じていただいている」としている。
外観
シェアリング・パス
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芦屋へは5年前、東急不動産「ブランズ芦屋 ザ・レジデンス」と大京「ライオンズ芦屋グランフォート」のマンションの取材で訪れている。今回の物件の所在地はよく分からないが、第1期2次で17戸を分譲するのだから、残りはわずかなのだろう。
注目したいのは、戸数が27戸の小規模物件でありながら、180㎡(延床面積の約7.3%)のスペースを共用施設に充てていることだ。その分レンタブル比は下がるが、販売促進に効果的なのは間違いない。同社は首都圏の物件でもこの種の共用スペースの充実を図っている。大規模物件では当たり前の施設をこのように中小規模でも設置できることを証明している。
シェアシェルフ(左)とワークスペース
奥庭
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物件とは関係ないことだが、26歳で今春の市長選に当選したことから、全国最年少市長として話題になった高島崚輔市長(26)は、JR芦屋駅南口で市が計画している市街地再開発計画(施行面積約1.1ha)を見直し、計画の第一目標は「花と緑あふれる街づくり」であることを打ち出した。
こんな再開発計画は他にないはずだ。特定建設者の応募登録者7月24日に決定される。どこが選定されるのか注目したい。
わが国初の大京NearlyZEHマンション 坪単価は東急「芦屋」の3分の1(2018/7/29)
首都圏の億ションに負けない 関西最高峰の坪610万円 東急不「芦屋」(2018/7/23)
「HARUMI FLAG」タワー棟 第1期573戸 平均15.3倍で即日完売 坪単価421万円
三井不動産レジデンシャルなど10社は7月18日、「HARUMI FLAG」の「SUN VILLAGE第二工区(タワー棟)」第1期(276戸)と「PARK VILLAGE 第二工区(タワー棟)」第1期(297戸)の合計573戸(総戸数1,455戸)の登録申し込み受付を7月8日(土)~7月16日(日)まで行い、登録申込数は8,790件となり、最高倍率142倍、平均倍率約15.3倍で全戸に申し込み(即日完売)が入ったと発表した。
好評につき、9月上旬からそれぞれ第1期2次のパビリオン見学会(完全予約制)を開始し、11月中旬に販売する。
「SUN VILLAGE 」の第1期276戸の専有面積は49.38~145.54㎡、価格は5,440万~32,790万円(最多価格帯6,800万円台・6,900万円台)、「PARK VILLAGE」の第1期297戸の専有面積は47.74~161.12㎡、価格は4,840万~34,990万円(最多価格帯6,100万円台)。坪単価は421万円。
住宅セーフティネットを考える 「住宅確保要配慮者」は400万世帯でも少ない
厚生労働省、国土交通省、法務省による第1回「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(座長:大月敏雄・東京大学大学院工学系研究科教授)が行われたのをきっかけに、住宅セーフティネットについて改めて考えてみた。
まず、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(セーフティネット法)で定める「住宅確保要配慮者」とは何かについて整理する。
「住宅確保要配慮者」とは、①低額所得者(月収15.8万円以下)②被災者(発災後3年以内)③高齢者④障害者⑤子ども(高校生相当まで)を養育している者のほか⑥住宅の確保に特に配慮を要するものとして、外国人のほか中国残留邦人、児童虐待を受けた者、ハンセン病療養所入所者、DV被害者、拉致被害者、犯罪被害者、矯正施設退所者、生活困窮者、海外からの引揚者、新婚世帯、原子爆弾被爆者、戦傷病者、児童養護施設退所者、LGBT、UIJターンによる転入者なども該当するとされている。
国土交通省などの資料によると、①低額所得者(月収15.8万円以下)は約1,300万世帯②被災者(発災後3年以内)は約5,800世帯③高齢者は1,889万世帯④障がい者は約411万世帯⑤子ども(高校生相当まで)を養育している者は約1,147万世帯⑥障害者90万世帯、外国人240万人、生活保護受給世帯160万世帯。このほかセクシュアル・マイノリティ(LGBT)は人口の7~8%と言われている。
このマクロデータからは「住宅確保要配慮者」は見えてこない。低額所得者や高齢者であっても住宅に困っていない世帯は相当数にのぼっているからでもあるのだが、「高齢者」「外国人」「障がい者」を理由に入居を拒否しようとする大家、それを容認する仲介不動産会社には特権的な権限が付与されているわけでもないにも関わらず、全国のコンビニ約57,000店舗の2倍以上もある約13万の宅建業者に生活・住宅困窮者対策の一端を担わせようとする国と、賃貸料の滞納の心配がないセーフティネット住宅は大家・不動産会社にとっても大きなメリットがあり、その利害関係が複雑に絡み合っていることが実態を見えづらくしている。もう少し具体的にいろいろなテータを見てみよう。
令和2年の国勢調査によると、わが国の世帯数は5,583万世帯で、学校の寮・寄宿舎、病院・療養所などの入院者、社会施設の入所者などが居住する「施設などの世帯」を除く「一般世帯」を所有関係別にみると、「持ち家」が3,372万世帯(全体の61.4%)ともっとも多く、「民営借家」は1,633万世帯(29.7%)、「公営の借家」は190万世帯(3.5%)、「給与住宅」は155万世帯(2.8%)、「都市再生機構・公社の借家」は75万世帯(1.4%)となっている。
総務省の平成30年の住宅・土地統計調査によると、住生活基本計画に定める最低居住面積水準未満(単身25㎡、2人30㎡、3人40㎡、4人50㎡)以下の世帯は全世帯の6.6%、353万世帯で、所有関係別でみると持ち家は10.3%、民営借家は18.5%となっている。最低居住面積水準未満の80.0%を民営借家が占めている。
民営借家1,530万戸の世帯人数は2,641万人、1住宅当たりの延床面積は45.57㎡(持ち家は119.91㎡)。単純計算すると1戸当たり居住人数は0.73人となり、空き家が多いことをうかがわせる。空き家は845万戸(空き家率13.6%)で、「賃貸用の住宅」が433万戸(総住宅数に占める割合6.9%)、民営の空き家は360万戸、空室率は23.6%だ。
総務省の調査には面白いものもある。総数670万世帯の家計を支える者の通勤時間を所要関係別、延べ床面積別、建て方別に調べたもので、全体では1時間未満は86.9%(自宅・住み込みは0.9%、1時間以上は12.9%)となっている。
持ち家は、総数218万世帯のうち通勤時間1時間未満は81.2%で、自宅・住み込みは0.9%、1時間以上は18.6%。延べ床面積70~99㎡では、1時間未満は77.8%と低く、逆に1時間以上は21.9%を占めている。
民間借家はどうか。総数367万世帯のうち延べ床面積が29㎡以下の比率は25.4%(持ち家は6.6%)で、通勤時間1時間未満は89.5%、自宅・住み込みは0.6%、1時間以上は10.6%。延べ床面積70~99㎡では1時間以上が13.5%となっているように、面積が増えると通勤時間も増える傾向を示している。
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令和2年の国勢調査によると、「ひとり親と子供から成る世帯」は500万世帯(全体の9.0%)で、うち子どもが15歳未満は131万世帯だが、厚生労働省が令和3年11月に実施した「全国ひとり親世帯等調査」結果は母子世帯と父子世帯〝差〟が浮き彫りにされている。
世帯数は、母子世帯が119.5万世帯(母の平均年齢41.9歳)に対し、父子世帯は14.9万世帯(父の平均年齢46.6歳)。一桁異なる。ひとり親世帯になった理由は、母子世帯は離婚が79.8%、死別が5.3%、父子家庭は離婚が69.7%、死別が21.3%。
就業状況は、母子家庭が86.3%、父子家庭が88.1%とそれほど差はないが、うち正規職員・従業員では母子家庭が48.8%、父子家庭は88.1%、うちパート・アルバイトは母子家庭は38.8%、父子家庭は4.9%となっている。
世帯の平均年間収入(同居親族を含む世帯全員の収入)は母子家庭が373万円で、父子家庭が606万円。国民生活基礎調査による児童のいる世帯の平均所得を100として比較すると、母子家庭は45.9、父子家庭は74.5となっている。
養育費の取り決め状況は、「取り決めをしている」が母子世帯で46.7%、父子世帯で28.3%となっており、取り決めをしていない理由は、母子世帯では「相手と関わりたくない」がもっとも多く34.5%、次いで「相手に支払う意思がないと思った」が15.3%で、「相手に支払う能力がないと思った」が14.7%。
一方、父子世帯では「自分の収入等で経済的に問題がない」が22.3%ともっとも多く、「相手と関わりたくない」が19.8%、「相手に支払う能力がないと思った」が17.8%となっている。(この問題に深入りしないが、〝愛と憎しみは紙一重〟ととうことか。自由に別れられ、再婚できる環境を整備すべきだ)
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国土交通省の平成30年の「住生活総合調査」では、持ち家への住み替え意向を持つ子育て世帯の課題のトップは「資金・収入の不足」で、子どもの年齢にかかわらず64.4~71.3%(全世帯平均は63.6%)に達している。借家への住み替えを希望している子育て世帯もほぼ同様で、「資金・収入の不足」「希望エリアの物件が不足」を課題にあげている。
借家における住居費負担に対する評価を見ると、「ぜいたくはできないが、何とかやっていける」が52.1%ともっとも多く、次いで「ぜいたくを多少がまんしている」が23.1%、「家計にあまり影響がない」が16.7%、「生活必需品を切りつめるほど苦しい」が8.1%となっている。
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令和5年3月現在、住宅扶助を受けている世帯は被保護世帯全体約164万世帯の85.9%に当たる約141万世帯となっている。
支給に当たっては家賃限度額が定められており、東京23区(1級地)の単身は53,700円、2人世帯は64,000円だ。大半のセーフティネット登録住宅が郊外部であることからも分かるように、この額で借りられる23区の賃貸マンションは足立区などごく一部に限られるはずだ。つまり、生活保護世帯は居住地を自由に選べないという問題がある。
居住地が自由に選べないのは生活保護世帯に限ったことではない。23区の新築分譲マンション坪単価は300万円を突破しており、10坪(33㎡)で3,000万円以上、20坪(66㎡)で6,000万円以上だ。世帯年収500万円台の取得限界を超えている。安価で良質なマンションを購入できる層もまた限られている現実がある。
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以上、住宅セーフティネットを巡る現状について書いてきたが隔靴掻痒。いろいろなデータから平均値をはじき出しても実態に迫ることは容易ではない。
とはいえ、当初、国土交通省が令和3年3月末の目標としていたセーフティネット登録住宅数17.5万戸は圧倒的に少ないといわざるをえない。
民営借家1,633万世帯から最低居住水準未満の282万戸と、基本性能・設備仕様が劣り、老朽化や間取りの陳腐化などによって市場競争力を失った空き家360万戸(国が買い取り補修して貸し出すのも一法だとは思うが)を除いた約990万戸(世帯)を対象とし、住宅困窮者の実態に照らし合せれば、セーフティネット住宅の目標戸数は400万戸くらいに設定すべきではないか。
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今回の記事を書くにあたって、平山洋介・神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授(当時)の著書「マイホームのかなたに」(筑摩書房、2020年3月刊)と「『仮住まい』と戦後日本」(青土社、2020年刊)を参考にさせていただいた。
平山教授は「マイホームのかなたに」で次のように指摘している。
「留意すべきは、多彩な『カテゴリー』を『列挙』すればするほど、住宅セーフティネットの対象が『特殊』で、その構築が普遍性を持つ施策ではないことを示唆する効果が生まれる点である。住宅確保要配慮者の長大なリストの作成は、住宅困窮の範囲を拡大するのではなく、むしろ狭め、セーフティネット政策に『ピースミール・アプローチ』を当てはめる意味を持つ」(233ページ)
「住宅困窮を『カテゴリー』化する技術は、住宅政策のあり方についての論議を『階層化』『不平等』『再分配』などのコンセプトから遠ざけることで、〝脱社会化〟し、さらに〝脱社会化〟する(平山2017)。重視されるのは、貧困者、ホームレスの人たち、DV被害者などの住宅改善にどのように対応するのかというテクニカルな問いである。それは、住宅システムの市場化を『自然化』する力と表裏一体の関係をつくる。ここでの関心は、『階層化』社会における『不平等』と『再分配』ではなく、均質かつ広大な市場空間の『内』に参加できず、『外』に排除された『特殊』かつ多様な『カテゴリー』の人びとに対する『ピースミール・アプローチ』の工夫に向けられる。住宅問題の研究者と専門家、さらに運動家の一部は、障害者、母子家庭などの『カテゴリー』ごとに細切れになったグループの住宅状況とそれへの対策の技法に関する専門的な検討に専念し、住宅困窮の社会・政治力学に対する興味を失うように導かれる」(同書234~235ページ)
平山教授は「『仮住まい』と戦後日本」で次のように述べている。
「住宅セーフティネット法の2017年改正に向けて…『救済に値する』人たちの範囲をいわば極限にまで狭める方向が示された。事務局(国土交通省住宅局)の試算によると、住宅確保要配慮者は、約28万世帯であった…最低居住面積水準未満『または』高家賃負担の世帯数を計算すると、収入分位25%以下では277万、同25~50%では65万、計342万になる。『かつ』と『または』では、セーフティネットの対象の規模に12倍以上もの差がある」(同262~263ページ)とし、「最低居住面積水準未満『かつ』高家賃負担のグループは、『または』の場合に比べ、極めて小さくなる。このトレードオフを利用した住宅確保要配慮者の量の試算は、巧妙であった」(同263ページ)
平山教授の指摘は正鵠を射ていると思う。検討会では、セーフティネット住宅の5年間を総括し、その政策は正しかったのか、セーフティネット住宅の質について論議していただきたいし、登録住宅848,846戸をどう評価するのか、空室率2.3%の意味するものは何か、なぜ大東建託など一部の管理会社による登録が突出しているのか、「大家の安心」も大事だろうが、住宅困窮者の声も反映してほしい。
そもそも、人口が加速度的に減少し、グローバル化している社会にあって、1世紀も昔の賃貸住宅契約を墨守し、〝入居を拒んでも〟経営が成り立つ民間賃貸住宅市場は普通ではない。この問題にも踏み込んでほしい。
問題山積 要配慮者の居住支援 大家の安心、安否確認、支援法人などテーマ(2023/7/4)
ユニソン「防災トークセッション」に170名/AIの文字起こしは凄いが課題も
ユニソンは7月14日、リアル・オンラインによる「防災トークセッション」を開催した。リアル会場は同社「コミュニティスペース大阪『玄と素(くろとしろ)』で、ポラスタウン開発が開発・分譲している「ディスカバリープロジェクト東武動物公園コネクト・コミュニティ」の事例を取り上げ、企画段階から関わっている同社の広報企画部部長代理・鷲津智也氏、ポラスタウン開発企画設計リーダー・内田里絵氏、NPO法人日本防災環境事務局長/理事・加藤愛梨氏がそれぞれ力を入れた点、今後の展開などについて語り合った。記者はオンラインで視聴した。
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定員はリアルが20名、オンラインが150名。参加者はどのような方か分からなかったが、中身は、記者も取材したポラスの分譲戸建て「東武動物公園」でのハード・ソフトの取り組みの紹介が中心だったので、まずまず理解できた。
苦労話なども紹介されたが、モデルハウス来場者など一般のお客さんの反応はどうだったか、「防災」や「環境」をテーマにしたマンション、分譲戸建ては少なく(そもそもこれらを全面に押し出してもなかなか販売促進につながらない)、どうしたらいいかを聞きたかったのだが、突っ込んだ話し合いはなかったのはやや残念だった。
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オンラインでは、トークセッションの会話がその場で文字起こしされ、パソコン画面に表示された。この種の文字起こし同時画面表示は初めて経験することなので、正確に変換されるかどうかに注目した。
話し言葉が瞬時に文字に変換されるのにびっくりした。記者発表会場にパソコンを持ち込み、話す人の言葉をそのまま打ち込む記者の方が増えているが、AIもまた同等の、あるいはそれ以上の能力の持ち主であることが分かった。凄いというほかない。
しかし、一方で、信じられないような誤変換も目立った。以下に列挙する。( )内が誤変換。
日本(二本)、地震(自信)、NPO(NBO)、日本列島(二本列島)、スパン(スポンジ)、火の回り(日の周り)、複層ガラス(服装ガラス)、公助(控除、公道)、分譲(文章)、鷲津(和地図、和室)、駅前広場(一枚広場)、ポラスタウン開発(プラスタウン開発、プラス端開発)、全棟(前進)、外構計画(外交計画)、分譲地(分庁地)、自助(次女)、DINKS(リンクス)、相乗効果(症状効果)、ブロック塀(ブロック上)、テロ(ゼロ)、東武動物公園(トップ動物公園)、避難(非難)、太鼓判(太鼓盤)、ご尽力(ご人歴)、主導(手動)…。
書き出したらきりがないほど誤変換があった。なぜ、誤変換が起きるかを考えた。一つには、同音異義語が多いことだ。これらは課題ではあるが、やむを得ない。
例えば「全棟」。記者のパソコンも「ぜんとう」と打ち込むと「全島」「全党」「前頭」「全灯」などに変換されるので、「ぜんむね」と打ち込むようにしている。そうすると、きちんと「全棟」に変換される。
「東武動物公園」などの固有名詞もそうだ。「とうぶどうぶつこうえん」とAIが認知すれば誤変換は起こらないだろうが、「とうぶ」「どうぶつ」「こうえん」をそれぞれ別々に認知すれば、「とうぶ」は「東部」「頭部」に、「こうえん」は「公演」「講演」「後援」に変換されることはありうる。
もう一つは、話す人の言語が不明瞭であることだ。これはAIだけの責任ではない。先の「東武」を「トップ」とAIは認識したのだろうし、「テロ」は「ゼロ」と聞き違えたのだろう。
ただ、前後の文脈からしたら間違えようがないはずなのに、「日本列島」が「二本列島」に、「地震」が「自信」に、「公助」が「控除」に、「避難」が「非難」などに変換されたのはいささか驚いた。現行のAIの知識では文脈を考えて正確に変換する能力がないということだろう。
10年以上使役させているわがパソコンは学習能力が高いのか、小生にこびへつらっているのか、それとも嫌味なのか分からないのだが、「コロナ避ける」の「避」を「酒」に、「名前を知らない魚」の「魚」を「肴」に、「肝心なのは愛」の「愛」を「哀」に変換した。「ビールを飲んだ」あとに「ビル工事」と書いたら、「ビル」に文字チェックが入った。
感心したのは、「えー」「そのー」「あのー」などの無機能語は変換されないケースも多かったことだ。これは凄い。
全体的な評価は、先に書いたようにやはり凄いということだ。AIが打ち出された文章を編集したら、ほとんどミスのない原稿が仕上がるはずだ。メモを取る手間が省けるし、録音を何度も再生しながら記事を書くのと比べれば、その仕上がりスピードは数倍速い。文字起こしした文章をChatGPTに校正・編集させたら完璧な文章に仕上がる。
可視化難しい「防災」「コミュニティ」「環境」に挑戦 ポラス「東武動物公園」(2023/6/16)
ハウスメーカー初の水素住宅実証実験 2025年夏の実用化目指す 積水ハウス
積水ハウスは7月14日、株式会社は、住宅メーカー初の水素住宅の2025年夏の実用化を目指し、2023年6月から同社総合住宅研究所で実証実験を開始したと発表した。
太陽光発電による再生可能エネルギーの電力を用い、自宅で水素をつくり、住宅内の電力を自給自足するもので、①日中は自宅の屋根の太陽光発電パネルでエネルギーをつくり消費②太陽光発電の余剰電力で水を電気分解して水素をつくり、水素を水素吸蔵合金のタンクで貯蔵③雨の日などの日射不足時や夜間は貯蔵した水素を利用して燃料電池で発電する。
国立市・富士見台団地建て替えへ 野村不・東京建物・URリンケージ
「国立富士見台団地マンション建替え事業」
参加組合員として事業参画している野村不動産、東京建物、URリンケージは7月12日、参加組合員として参画している「国立富士見台団地マンション建替組合」が施行する「国立富士見台団地マンション建替え事業」の権利変換計画の認可を2023 年6月23日に受けたと発表した。
同事業は、国立市初の「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」によるマンション建替え事業となり、事業は、「南北通路の再整備」や「地域貢献施設の整備」、「緑化計画」などが地域の快適性を高め、地域の街並み整備に寄与する計画であると認められ、一般基準の19mから特例基準の25mへ最高高さが緩和された。団地内の既存の雑木林であるコナラやクヌギ等の樹種を交え植えるスペースをつくり、自然環境の向上を持続的に担える緑地を整備する。
物件は、JR中央線国立駅からバス3分・徒歩4分(JR南武線谷保駅から徒歩 9分)の東京都国立市富士見台一丁目に位置する敷地面積約27,371㎡。建て替え前⇒建て替え後の延床面積は約17,106㎡⇒約47,811㎡、戸数は298戸⇒589戸(予定)。構造・規模は5階建て⇒8階建て。着工予定は2024年春、竣工予定は2026年度(予定)。建て替え前の竣工は1965年。コンサルタントは都市設計連合。設計は南條設計室、長谷工コーポレーション。
6月の成約件数3か月ぶりに増加 成約単価・価格の上昇続く 首都圏中古マンション
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は7月10日、首都圏の2023年6月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,111件(前年同月比3.6%増)となり、3か月ぶりに前年同月を上回ったほか、成約坪単価は238.5万円(同7.9%上昇)となり、20年5月から38か月連続、成約価格は4,610万円(同9.0%上昇)となり、20年6月から37か月連続で上昇。専有面積は63.79㎡(同1.0%増)となった。
中古戸建の成約件数は1,138件(同0.6%減)、成約価格は3,750万円(同1.9%下落)、土地面積は140.86㎡(同4.5%縮小)、建物面積は103.77㎡(同0.7%縮小)。
「Essential Company」を目指して 旭化成ホームズ サステナビリティ説明会
左から武藤氏、川畑氏、岡前氏
旭化成ホームズは7月11日、サステナビリティ説明会を開催。代表取締役社長・川畑文俊氏、同社執行役員兼サステナビリティ企画推進部長・武藤一巳氏、同社執行役員兼人事部長・岡前浩二氏が出席し、これまでの振り返りと今後の方針についてそれぞれ説明した。
川畑氏は、同社創業から50周年を迎えた昨年(2022年)4月に「2030年のあるべき姿Vision for 2030」を策定し、「For Society」{For Customer}「For Employee」の3つの目標を掲げ、「Essential Company」を目指すと話した。
具体的には、2022年4月にサステナビリティ企画推進部を発足させ、同年12月には社長直下の代表取締役、専務執行役員、各委員長、外部有識者から構成される「サステナビリティ委員会」を立ち上げ、方針を決定すると語った。
武藤氏は、グループのサステナビリティ方針として、①社会的価値の創出②誠実な業務推進③人権の尊重④環境への配慮⑤人財を活かす職場環境⑥社会とのコミュニケーションの促進と協働-この6つの方針に基づき、社会課題の洗い出しからスクリーニング、評価基準の設定・実施、特定・マッピングにより、「With Customer」「With Environment」「With Employee」「Our Integrity」の観点から18のマテリアリティを策定すると説明した。
マテリアリティに基づいたKPIの一例として「ZEH・ZEH-M」「まちもり」の促進のほか、RE100達成に向けた取り組み、さらには今年7月、国際的イニシアチブ「SBT(Science Based Targets)」で、パリ協定が定めた平均気温上昇を1.5°C以内に収める【1.5°C目標】の認定を取得し、TCFDへの賛同を表明したことなどを紹介した。
「With Employee」について岡前氏は、ダイバーシティの推進、労働安全衛生の確保、生産性の向上、人財の確保と育成、高品質で安全な製品の提供を実践するため、結果を共有し対話を通じて現場力強化を図り、組織と人の成長につなげていくと語った。
野趣に富むジョコビッチの赤・白ワイン試飲会にジヴェリ(乾杯)! セルビア大使館
セルビアワイン先行試飲会(セルビア大使館で)
世界的プロテニスプレイヤー・ジョコビッチの親族が経営するワイナリーから初入荷したワインなど10銘柄を味わえるセルビアワイン先行試飲会が7月7日夕、港区高輪のセルビア大使館で行われた。定員30名は満席で、ワインのほかセルビアの郷土料理も振舞われた。主催者は、Makoto Investments(マコトインベストメンツ)Monde Delicious(モンドデリシャス)事業部。
来賓として出席したアレクサンドラ・コヴァチュ特命全権大使は、「こんばんは。セルビアのワインは古代から生産されており、伝統的な技法による個人ワイナリーが多いのが特徴で、ここ20年間はルネッサンスとも呼ぶべき繁盛記を迎えている。最近では世界最大のワインコンクールで第6位に入賞した」と日本語であいさつした。
元セルビア大使で日本セルビア協会副会長・角﨑利夫氏は、「最近は個人ワイナリーが素晴らしいワインを生産している。本日はジョコビッチを始め固有種であるシラー、プロクパッツ(赤)、タミヤニカ(白)も楽しめる。ジヴェリ(乾杯)!」と乾杯の音頭を取った。
初入荷したのは、赤の「ジョコビッチ シラー2020」と白の「ジョコビッチ シャルドネ2021」の2銘柄と「シラ2021」。「ジョコビッチ」はいずれも通常価格¥9,900(税込み)。「シラ」は通常価格3,080(同)
「ジョコビッチ シラー2020」は、セルビアの固有種シラー100%。「深いルビー色に、ブルーベリー、ブラックベリー、プラムなど黒系果実味溢れる強めの香りにバニラ、タバコ、シダーといった、上品な樽由来の香りが加わります。口に含むとタンニンの特徴がはっきり捉えられますが、ソフトで余韻も楽しめる」というのが触れ込み。
「ジョコビッチ シャルドネ2021」は、シャルドネ100%を使用。「乾燥アプリコット、梨、リンゴの香りと風味に、樽由来のトースト、柔らかなバニラのニュアンス…クリーミーで余韻も長く、芳醇でリッチな白ワイン」とある。
記者が試飲会に参加するのは、2017年11月に行われたのに続く2度目。第三企画代表・久米信廣氏が1990年代から続いたセルビア国内の民族対立と経済の疲弊により、多くの子どもたちが厳しい状況に置かれていることに心を痛め、CSR活動の一環として子どもに学用品を贈呈したり、アーティストに対する支援活動を行ったりしている縁で取材&参加したもの。
アレクサンドラ・コヴァチュ特命全権大使(左)と角﨑氏
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「Dobro veče(ドゥヴゥロヴェーチェ)!」「Zdravo(ズドラーヴォ)!」-記者は会場に入るなり、大きな声で叫んだ。狂人が紛れ込んだと勘違いしたのか、若い日本人女性は記者から逃げた。しかし、セルビアの方々は「Dobro veče(ドゥヴゥロヴェーチェ)!」「Zdravo(ズドラーヴォ)!」と微笑を返してくれた。「こんばんは」「こんにちは」が通じたのだ。
試飲会では、近くの日本人女性から「わたしはもっぱら白で、赤は飲まないのですが、このジョコビッチの赤はとても美味しい」と、白を飲んでいた記者に声を掛けられた。
「わたしもそうです。赤は甘ったるいイメージが強く、ほとんど飲みません。そうですか、そんなに美味しいですか。飲んでみます」(「赤玉ワイン」は馴染めなかった)
早速、ジョコビッチの赤を飲んだ。白もそうだが、一言でいえば「野性的」「ワイルド」。野趣に富み、渋み、苦みがかなり強い。わが国の泡盛をはじめスコッチ、バーボン、ウォッカ、テキーラ、馬乳酒(記者は〝処女の酒〟と名付けた)-これらはみんな「野性的」「ワイルド」だ。これぞ酒だ。
その女性と名刺も交換した。「Flute」の肩書の吉川久子さんだった。しばし歓談し、「今日は七夕。わたしのアルバム『セルビアの思い出』をあげます。わたしが作曲した『セルビアの思い出』のほか『セルビアの子守歌 たなばたさま』など10曲を収録したものです」とCDを頂いた。
吉川さんは、東日本大震災でセルビアから支援を受けたのをきっかけに、ベオグラードなどでコンサートツアーを行っているそうだ。
会場にはもう一人、記者の目を射た女性がいた。ドレスも靴も何から何までワインレッドに包まれていた。声を掛けた。
「赤ワインがこぼれてもいいように」赤で統一したそうで、名刺には「株式会社秋山 代表取締役 ピアニスト(作曲・編曲)秋山治野」とあった。
吉川さんの衣服は「白」、秋山さんは「赤」。この日の試飲会にピッタリのアーティストだ。
前回の試飲会同様、しこたま飲んだ。飲みはしたが、セルビア(旧ユーゴスラビア)の作家ダニロ・キシュ(1935~1985)の「若き日の哀しみ」(山崎佳代子氏訳、東京創元社刊)を忘れることはなかった。キシュは「祖国のために死ぬことは名誉」で「歴史は勝者が書く。伝承は民衆が紡ぎ出す。文学者たちは空想する。確かなものは、死だけである」(同「死者の百科事典」所蔵、119ページ)と書いている。
翌日、冴えた頭で頂いたCDを聴いた。「ドナウ川のささなみ」は若いときによく聴き、はらはらと涙した曲だが、「セルビアの思い出」にもまた胸を締め付けられた。切ない曲だ。ジョコビッチの白にも赤にもあう。
左端が吉川さん、3人目がコヴァチュ氏
秋山さん
秋山さん(左)と吉川さん
以下、参加者の皆さん
セルビア固有品種のブドウから作られたワイン 日本に輸入決定 「ジヴェリ(乾杯)」(2017/11/24)
悲しい歴史を巧みなレトリックで描く キシュ「若き日の哀しみ」(2015/4/11)