千葉大学名誉教授「小林秀樹先生を追悼する会」に約210名
「小林秀樹先生を追悼する会」(建築会館ホールで)
昨年(令和4年)10月11日、癌のため亡くなった千葉大学名誉教授・小林秀樹氏(享年68歳)の「小林秀樹先生を追悼する会」が8月5日、港区芝の建築会館ホールで行われた。会場に用意された約210席は満席となり、関係者らが最後のお別れを行った。
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記者は小林先生が亡くなったのを昨日(8月4日)知った。千葉大学のある先生を検索しようとしたとき、小林先生のことが頭によぎり、「小林秀樹」で検索したら、千葉大学工学部小林秀樹研究室のホームページトップに「小林秀樹先生を追悼する会」が表示された。
〝万に一つ〟の奇跡が起きることを望んでいたが、そうはならなかった。神も仏もない。
早速、実行委員会に連絡を取り、追悼の会への出席は許可されたが、遺族の方や関係者への取材は「不可」だった。やむを得ない。
先生、わたしは、先生の若々しくて格好のよさに、先生とほぼ同学年の西城秀樹さんとダブらせ嫉妬しながらファンになり、陰ながら応援し、これから本領を発揮するのではないかと期待もしておりました。
それがかなわなくなった。残念至極。さようなら、先生。先生の後継者が現れることに期待しようじゃありませんか。
献杯!
「実践派」の千葉大名誉教授・小林秀樹氏 マンション長寿化フォーラムで講演へ(2022/6/18)
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駅前の一等地 東京建物 定借「南浦和」好調スタート 坪単価は310万円
「Brillia(ブリリア)南浦和」
東京建物が分譲中の「Brillia(ブリリア)南浦和」を見学した。駅西口ローターリーに面した期間72年の定期借地権付きの全59戸で、第1期28戸に22戸の申し込みが入るなど、好調なスタートを切った。
物件は、JR京浜東北線・武蔵野線南浦和駅西口から徒歩2分、さいたま市南区南本町1丁目の商業地域に位置する期間72年の定期借地権付き15階建て前年同月比70戸(一般分譲59戸、地権者住戸11戸)、他店舗1区画)。専有面積は58.66~74.52㎡、価格は5,299万円~6,899万円。坪単価は310万円。地代は10,257円~13,030円(月額)。竣工予定は2024年11月中旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。デザイン監修はParks Architects。
現地は、従前は駐車場に利用されていたところで、丸広百貨店に隣接。敷地北側は道路を挟んで武蔵野線の高架。建物は南東向きで、1フロア5戸。2LDKが1スパン、3LDKが4スパンの構成。
主な基本性能はZEH-M、二重サッシ、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機、浴室タオル掛け2本など。
4月にホームページを開設し、モデルルームオープンは6月から。これまで約900件のエントリーがあり、モデルルーム来場者は約200組。第1期28戸に22件の申し込みが入っている。大半は市内南区居住者で、この他は市内や川口、蕨市居住者など。都民は少ないという。
販売担当のゲストサロン副所長・川本大喜氏は、「高砂小学校も徒歩圏で、〝塾銀座〟と呼ばれるほど塾も多く、学区とモデルルーム(74㎡)の提案に高い評価を受けています。定借ではありますが、坪300万円台の前半で、始発駅でもる駅に近接、専有圧縮が進む中、70㎡以上を確保している特徴をきちんとお客さまに伝えていく」と話した。
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南浦和駅圏のマンション見学は3年ぶりだが、坪単価は想定内だった。東北沿線居住者の都民の方は荒川越えで、定借の坪単価310万円は高いと感じるかもしれないが、今回の物件が竣工する2024年末の赤羽の再開発マンションは坪500万円を、浦和駅直ぐの再開発物件は坪400万円をはるかに超えるはずだ。相対的に値段が安かった総武線沿線の再開発マンションも軒並み坪400万円を突破することになりそうだ。
モデルルーム
現地
ポラス中央住宅 コンパクトマンション「南浦和」 順調な売れ行き(2020/10/16)
テーマは昭和レトロ 簀戸、サイザル麻、組子…コスモスイニシアのリノベ「代田橋」
「ステーションプラザ代田橋」
昭和レトロをテーマにしたコスモスイニシアの1戸リノベーションマンション「ステーションプラザ代田橋」を見学した。建物再生に取り組んでいるヤマムラとコラボしたもので、古民家の建具・家具が随所に採用されている。好きな人にとってはたまらないマンションだ。
住戸に採用されている広縁の5枚障子戸・洋室ドア・洗面室ドア、組子などは、古民家を残す活動をしている後藤大輝氏から譲り受けたもので、シューズクロゼットはタンスをリメイクしたもの。
物件は、京王線代田橋駅から徒歩1分(笹塚駅から徒歩13分)、世田谷区大原2丁目に位置する1991年竣工の7階建て全71戸の1室。専有面積50.87㎡、価格5,480万円(税込)。坪単価356万円。住戸は西向きで、直床・直天、リビング天井高2500ミリなど。バルコニー側に奥行き120cmの「広縁」を設けているのが特徴。
キッチンはスマートフォンと連動させることで火加減を自動的に調整するガスコンロを、食洗機は液体洗剤をタンクに入れておくと自動で必要な量の洗剤を投入する製品を採用。浴室は浴室乾燥・暖房機能付きで、タオル掛けは2本。
LDK(床はサイザル麻のカーペット)
玄関(左)とトイレ
キッチンパネルに採用されている組子デザインは欄間に用いられていたもの
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同社が7月20日に発表したプレス・リリースだけではよく分からないので、お願いし見学が実現した。
記者は、洋室のクロゼット引き戸に採用されている「簀戸(すど)」にほれ込んだ。昔の小説、書物によく登場する、すだれを障子の枠にはめ込んだ建具だ。すだれは天然の籐を編み込んでいるので、色や太さ、曲がり、間隔が微妙に異なり、開け閉めしたときの2枚の簀戸が描く文様は「紗」のようで美しい。
リビング床全面にはサイザル麻のカーペットが敷かれているのもいい。物件説明をしていただいた同社流通事業部商品企画部建築一課課長・高橋晴彦氏は「天然素材なので汚れるとしみになり、好まれない方もいる」と正直に話したが、素足で歩いたときの足裏の感触は、籐やバンブー(竹)とも異なる。少し荒い砂浜や河原を歩くときに近いか。
安いか高いかは購入検討者が考えることだが、小生のような年寄りのかつての「日常」が再現されている。この価値をどう考えるかだ。共用部分などは見学していないが、分譲竣工が1991年であることから推測して、分譲されたのはバブル期であるのは間違いなく、坪単価は500万円くらいしたはずだ。
駅からエントランスまでは50mくらいだったので、広告表示では「徒歩1分」となっているが、エントランスとは別の出入り口があり、1階のコンビニから駅までは約20m(80mを1分とすると15秒)。ほとんど駅直結というのも特徴だ。
クローゼット引き戸
「簀戸(すど)」
カウンター下収納のデザイン
「昭島」第1期は200戸、坪250万円 「徳山」が完売 大和ハウス マンション説明会
大和ハウス工業は7月31日、「マンション事業計画説明会」を開催し、同社執行役員マンション事業本部長・富樫紀夫氏が今後の展開などについて説明した。戸数競争に巻き込まれる入札案件よりも、同社の総合力を生かし収益重視の付加価値の高い建て替え、再開発、複合案件などに絞り込み、年間4,000億円、2,000戸前後を安定的に供給していくと語った。
同社本体のほかコスモスイニシア、大和ライフネクスト、海外事業を含めたマンション事業の前期売上高は4,843億円で、営業利益は408億円、営業利益率は8.4%で、今期は売上高4,300億円、営業利益は210億円、営業利益率は4.9%を予定しており、地価や建設費の高騰を考慮し、高付加価値物件の供給に絞ることで、量的な拡大から収益・資金効率重視の事業計画へと転換する。
定量的な動向について、首都圏マーケットは23区を中心に高値で推移し、近畿圏は価格上昇基調にあるものの、完成在庫の増加など二極化も進むとしている。
この10年間のマンション市場については、平均価格は首都圏で27.6%、近畿圏で32.6%それぞれ上昇、専有面積は首都圏で6.6%、近畿圏で14.2%狭くなっており、坪単価は首都圏で36.5%、近畿圏で54.2%の上昇となっていると説明した。
今後の展開では、供給戸数を追うのではなく、付加価値の高いマンションに絞り込むことにより、収益力を拡大していくとし、代表的な再開発物件として「ONE札幌ステーションタワープレミスト」(624戸)、「徳山ザ・レジデンス」(100戸)を挙げ、現在、全国で21件の再開発案件に取り組んでいるとした。
マンション建て替えでは「高輪一丁目共同開発事業」(280戸)、「プレミスト北浦和ブライトフォート」(87戸)の事例を、複合開発では「新さっぽろ」(総事業費500億円、マンション220戸)、「プレミスト高尾サクラシティ」(416戸)、環境配慮型としては「プレミスト大濠二丁目」(35戸)、「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」(481戸)、「船橋グランオアシス・プレミスト船橋塚田」(総事業費260億円、戸建て26区画、マンション571戸、賃貸223戸など)を紹介した。ZEH-Mは2024年度以降の物件に100%採用すると話した。
このほか、既築建物再生事業「D's VARIE(ディーズバリエ)」や海外事業、マンション管理方式などについて説明。マンション管理では第三者管理方式を「プレミスト大倉山」(241戸)などで実施すると語った。また、ニセコ、沖縄などでは分譲ホテル事業を視野に入れていると述べた。
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富樫氏の説明でいささか驚いたことが二つあった。
ひとつは、「昭島」の坪単価と第1期の救急戸数だ。
9月中旬に分譲開始する「昭島」の坪単価は250万円で、第1期販売戸数は全戸数481戸の4割超の200戸を予定しており、「9割がたはいけるのではないか」と富樫氏は語った。
物件見学会が行われた5月の段階で、記者はわが多摩センターでいま分譲されているマンションの坪単価250万円と比べると「『昭島』に軍配を上げざるを得ない」と書いたのだが、マンション購入検討者もまたそのように評価しているのだろう。それにしても「昭島」で一挙に200戸とは凄い。モデルルーム見学会で販売責任者の東京マンション事業部販売事務所長・東本剛氏が「来年の6月までに完売したい」と話したのも現実味を帯びてきた。
もう一つは、同社ばかりでな入りのだろうが、地方物件が総じて好調なことだ。
富樫氏が代表物件として紹介した「徳山」。記者は「徳山」といえば徳山曹達しか思い浮かばないのだが、2003年の市町村合併により「徳山市」は消滅し、いまは人口約10万人の周南市となっている。
そんな市の坪単価200万円の再開発物件が2023年12月の竣工前に売れ、富樫氏が「富裕層の方からは100㎡超を期待していたという声が多かったのは想定外」と話したのに驚くとともに納得もした。
地域経済が疲弊する地方都市でも富裕層は一定数存在するはずで、そのような層をターゲットとしたマンション分譲事業はあり得るのだろう。同様の例としてタカラレーベン「レーベン宇和島THE MID TOWER」(42戸)も好調だと聞いた。
考えてみれば、夏はより暑く冬はより寒い、やぶ蚊に刺されながら草むしりをしなければならない旧耐震の戸建てに住むより、マンションのほうがはるかに安心・安全に暮らせる。地方も販売競争が激化しているようだが、まだまだ伸びる余地はあるような気がする。「プレミスト」はともかく「ダイワハウス」のブランドは全国区だ。その強みを今後も一層発揮していくということだろう。
富樫氏は専有面積圧縮についても触れた。この種の発表会で専有圧縮に触れるのはまれなことで、記者は基本性能・設備仕様の退行についても聞きたかったのだが、そんな質問をすればまた嫌われると、思いとどまった。分譲ホテルは伸びるはずだ。
〝東京の軽井沢〟レベル高い 「来年6月までに完売」あるか 大和ハウス「昭島」(2023/5/26)
坪単価520万円でも人気 最終分譲へ 大和ハウス「プレミスト大濠2丁目」(2022/11/1)
実質10か月で300戸超の驚異的売れ行き 大和ハウス「プレミスト船橋塚田」(2020/10/20)
大規模商・住のスマートシティ 大和ハウス他「高尾」はこんな街(2015/6/8)
増大する不動産&不動産業向け融資 「今後気を付けて見ていく」日銀・植田総裁
日本銀行・植田和男総裁は7月28日、会見を行い、金融緩和策の柱である「イールドカーブ・コントロール(YCC)」の運用を柔軟化し、これまで定めてきた長期金利の上限幅「0.5%程度」の基本を維持しつつ、「1.0%」まで容認すると発表した。
会見で、記者団の「一般物価もそうだが、都内23区のマンション価格が1億円を突破したように資産価格の上昇はバブルの様相を呈しているのではないか」という質問に対して、植田氏は「都心部のマンション価格はものすごく上昇しているが、かなりの部分は個別要因によるものだ。それにしても不動産投資、不動産業向け融資などのデータはかなり高い水準で推移しており、今後気を付けて見ていきたい」と述べた。
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YCCの柔軟な運用がわが国の経済、物価にどのような影響を及ぼすのか記者は分からないが、欧米などが利上げに踏み切ったことと無関係ではないはずだ。ここでは、植田氏が「今後気を付けて見ていきたい」と述べた不動産価格について考えた。
日本銀行のデータによると、金融機関の不動産業向け融資はこのところ増え続けており、2023年3月末の融資残高は98兆2,521億円(前年同期は92兆4,286億円)となっており、全融資残高に占める割合は17.0%に達している。個人による貸家業へも27兆7,242億円(前年同期は27兆7,278億円)と高い水準が続いている。双方を合わせると全融資残高の実に21.8%を占める。
国土交通省の「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」では、令和3年度の個人向け住宅ローンの新規貸出額は20兆7,948 億円となり、前年度から9,811億円、2.0%増加した。令和3年度末の貸出残高は191兆5,725億円で、令和2年度末より9兆9,224億円増加している。
不動産経済研究所の調査によると、2022年の首都圏マンション供給戸数は2 万9,569戸(前年比12.1%減)で、1戸当たり平均価格は6,288万円(同0.4%上昇)、坪単価は313.8万円(同1.6%上昇)となった。平均価格は4年連続、坪単価10年連続のアップで、平均価格、坪単価ともに最高値を更新した。
東日本レインズのデータによると、東京都の2022年度の中古マンション成約件数は15,590件(1992年度比316.6%)、坪単価は335.4万円(同131.1%)、価格は5,827万円(同136.0%)、専有面積は57.34㎡(同107.0%)となっている。
坪単価は、過去30年間でもっとも低かった2001年の140.2万円から約2.4倍、価格はもっとも低かった2000年の2,409万円の約2.4倍に上昇している。
これらの数値からすれば、1980年代後半の「土地神話」が生きていたバブル期に近づきつつあるといえなくもないが、当時と現在では大きな違いがある。当時は、金融緩和を背景にだぶつく資金は株と不動産投資に向かった。〝狂乱地価〟〝土地・マンション転がし〟という言葉に象徴されるように、投機が投機を呼ぶ異常な世の中になった。日経平均株価は1989年(平成元年)12月29日の大納会で史上最高値38,957円44銭を付けた。都内の一等地のマンション坪単価は2,000万円、3,000万円に上昇し、価格が10億円以上の〝ネオ億ション〟の造語も生まれた。「広尾ガーデンヒルズ」は瞬間的に坪3,000万円の値を付けた。
現在はどうかというと、海外からの投資マネーが流入し、国内の富裕層などが所得税や住民税、贈与税、相続税の節税対策として不動産を購入するケースも増えてはいるが、基本的には実需が市場を支えている。バブル期はほとんどなかった共働きが一般化した今では、低金利効果とともに高額物件の取得を可能にしている。さらに、単身者やDINKSなど新たな需要層が現在の市場を支えている。
さて、今後どうなるかだが、マクロデータだけで判断すると、首都圏マンションは新築も中古も一般的な世帯の取得限界を超えている。しかし、都心部の坪単価1,000万円超の物件の売れ行きは堅調であるように、富裕層向けはまだまだ伸びる余地はあると記者は見ている。近い将来、坪単価は2,000万円超ところが3,000万円を突破するのではないか。
いまタマゴ1パックの値段は306円で、2021年の217円から4割以上上昇しているそうだが、コンパクトマンションの坪単価はこの1~2年間で400万円は500万円へ、500万円は600へ上昇している。年率で2~3割というすさまじい上昇率だ。投資向けはそれよりさらに高い。
もう一つ、市場を左右する外資の動向だが、これはよく分からない。わが国への直接投資は増加しており、オフィス、ホテル、レジデンス、物流などは海外から見ても有望市場ではないか。
となると、植田氏が「今後気を付けて見ていきたい」というのは、不動産市場の何を見るのだろうという疑問もわいてくる。過熱すれば、かつて行った総量規制という蛇口を締めるような挙に出ることはないと信じたい。
大京穴吹不「マンションデータブック」「マンション管理適正評価制度」掲載開始
大京穴吹不動産とマンション管理業協会は7月27日、全国11万棟超のマンションを紹介する大京穴吹不動産の不動産情報サイト「マンションデータブック」に、マンション管理業協会が運営する「マンション管理適正評価制度」における管理評価の掲載を同日から開始したと発表した。
これにり、同制度の紹介サイトは東急リバブル、三井不動産リアルティ、野村不動産ソリューションズ、アットホームに次いで5社目となる。
ビッグモーター店舗前の街路樹が枯死!? ありえない 断じて許せない
自動車保険の不正請求が問題になっている中古車販売の最大手ビッグモーター(BM)だが、同社の店舗前の街路樹が枯死しているケースが多発していることをメディア各紙は一斉に報じている。そんな馬鹿なことはあるのか。人を殺すことは誰にも許されないように、街路樹を毒殺(除草剤か)する権利などどこにもないはずだ。故意で行ったとしたら断じて許せない。
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2023年7月27日12時00分付の東京新聞は次のように報じた。
「『1本だけ枯れることはあったと思うが、まとまって17本、そこだけ枯れていた』。群馬県の太田土木事務所の担当者は話す。
住民からの通報で、BM太田店前の国道沿いのトウカエデが枯れていることに気付いたのは昨年8月。土壌分析をしたところ、除草剤の成分が検出された。同事務所では除草剤を使用していないため、情報提供を求める看板を設置。太田署に被害届を出した。今年3月に伐採し、今後新たな樹木を植える予定という」
「25日の会見で兼重社長(退任)は『除草はするが、見栄えも悪いし、枯らすようなことは普通しない』などと語ったが、和泉伸二専務(現社長)は『環境整備で、出入り口は前後10メートルにわたり、雑草などを取り除こうと(指導しており)、除草剤をまいて街路樹に影響を与えてしまったことはあると思う』と認めた」
同様のBMの店舗前の街路樹の枯死は全国各市でも報告されており、各自死地位は調査に乗り出し、損害賠償請求も視野に入れているという。
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和泉氏がメディアに語ったことが事実であれば、完全な犯罪行為だ。過失ではない。刑法第261条には「他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」とある。
この問題で気になるのは、どうして今になって発覚したのかということだ。報じられている画像などからして相当以前に枯死していると思われる。当の自治体や近隣住民は不思議に思わなかったのか。我関せず-世の中に蔓延している一種の病気だ。
これをきっかけに、千代田区の神田警察通りの街路樹であるイチョウ並木の伐採についても、東京新聞と朝日新聞を除くメディアは関心を払ってほしい。育ち盛りの健全な樹木に「死刑」を宣告する権利はあるのかという問題だ。(「国家による殺人」である死刑の是非はこの際問わないが)
「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区(2023/7/7)
住民監査請求の行方 街路樹の価値の可視化必要 千代田区の「街路樹が泣いている」(2022/5/18)
生物多様性の純増と算出方法の標準化目指す 積水ハウス&シンク・ネイチャー提携
積水ハウスとシンク・ネイチャーは7月27日、2030年のネイチャー・ポジティブの実現に向けて、積水ハウスの「5本の樹」計画やシンク・ネイチャーの生物多様性ビッグデータ、A Iを活用して、「生物多様性の純増と算出方法の標準化(生物多様性ネットゲイン)」を目指し、共同で推進する連携協定を7月1日に締結したと発表した。
積水ハウスは2001年から生物多様性保全・再生を推進する「5 本の樹」計画に取り組んでおり、その効果を琉球大学理学部久保田研究室とシンク・ネイチャーと共同検証し世界初の都市の生物多様性の定量評価の仕組みを「ネイチャー・ポジティブ方法論」として2021年に公開した。
今回の連携提携によって、「生物多様性ネットゲイン」につながる住宅建設に関する新たな商品・サービス、ビジネスモデル、その他の実現アイデアの創出などを行い、「生物多様性ネットゲイン」を最大化できる植栽の樹種・本数のシミュレーション提案ツールの導入を2024年の春頃に考えているとしている。
「5本の樹」計画は2023年1月現在、年間植栽本数は88.6万本、累積植栽本数は1,900万本を達成。また、シンク・ネイチャーとの共同検証を行い、「5本の樹」計画開始前の2000年を基準として、緑地の劣化が著しい三大都市圏2070年までの変動をシミュレーションした結果、地域の生き物にとって活用可能性の高い在来樹種を植栽することで2030年には37.4%、2050年には40.9%、さらに2070年には41.9%まで生物多様性を回復できることが予測されたとしている。
要諦は「名前」を覚えること 「推しの木図鑑」と「5本の樹」計画に期待(2023/6/29)
「木の居心地を徹底追求・従来間取りを解体」 三菱地所ホーム リフォーム新提案
「KIGOCOCHI(キゴコチ)」イメージ図
三菱地所ホームは7月27日、マンションリフォーム新商品「KIGOCOCHI(キゴコチ)」のティザーサイトを同日オープンし、10月中旬に「三菱地所ホーム みなとみらいショールーム」をリニューアルオープンし、販売を開始すると発表した。
「KIGOCOCHI」は、「KI=木」から得られる「IGOKOCHI=居心地」の良さを徹底的に追求し、都市部マンション居住者向けに「木と寄り添う暮らし」を提案するもの。
デザインはトラフ建築設計事務所が監修。ポイントは①住まいに必要な機能を「コア」と定義し、国産ヒノキ材を使用し、木の塊(コア)として設計②狭い廊下と閉じた個室といった従来の間取りを解体し、柔軟で回遊性の高い空間を可能にする③人間の五感に訴えかける木のディティールや木の経年変化により、使い手に愛着をもたらす-としている。
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リリースには、「木の居心地」を「徹底的に追求」し、「従来の間取りを解体する」とある。意欲的なリフォーム提案のようだ。ショールームを10月中旬にリニューアルオープンするというから、見学して失火見学してレポートしたい。マンション向け全館空調「エアロテック」の外販も進んでいると聞いているので、これについても取材したい。
参考までに。昨日見学取材した、積水ハウスのモデルハウス「HUE(ヒュー)」の2階の8m×6mの無柱空間は全て「木」で覆われていた。家族構成やライフスタイル・サイクルによって間取りを自由に選べ、変更できるものだった。
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記事とは全く関係ないが、この前、ChatGPTに次の質問をした。
「XY軸の0の地点にウサギがいます。Y軸のプラス方向1000mの地点に犬がいます。ヨーイドンでウサギはX軸プラスの方向に時速1000mで走ります。犬はウサギが走る姿を見ながら時速2000mで追いかけます。犬がウサギに追いつくのは何分後でしょうか」
ChatGPTは瞬時に次のように答えた。
「まず、ウサギと犬の初期位置からの距離を計算します。ウサギはX軸の0の地点におり、犬はY軸のプラス方向1000mの地点にいます。このため、ウサギと犬の初期位置の距離は次のように計算できます:
初期位置の距離= √((X軸の距離)^2 + (Y軸の距離)^2)
初期位置の距離= √((0m)^2 + (1000m)^2)
初期位置の距離= √(0 + 1000000) ≈√1000000 ≈1000m
次に、ウサギが時速1000mで走るため、犬との相対速度は次のように計算できます:
相対速度= 犬の速度- ウサギの速度
相対速度= 2000m/h - 1000m/h = 1000m/h
ウサギと犬の初期位置の距離が1000mで、相対速度が1000m/hなので、犬がウサギに追いつくまでの時間は1時間(60分)です」
皆さんいかがか。記者は40年も昔、とても美しい中国人女性(国立大の留学生だった)に同じような質問をしたら、すらすらと答えた。〝日本は負ける〟と思ったものだ。
〝生活を紡ぐ(life knit)〟積水ハウスの新提案モデルハウス「HUE(ヒュー)」
「HUE(ヒュー)」
積水ハウスの新デザイン提案システム「life knit design」を体現したモデルハウス「HUE(ヒュー)」を見学取材した。同社が6月20日に発表したプレス・リリースの「life knit design」の〝生活を紡ぐ(life knit)〟ネーミングはとてもいいと思ったが、どのような提案であるかわからず、見学をお願いし、実現した。約1時間、間取り、建具・家具、仕上げ、カラーリングなどを見て回り、疑問は氷解した。月並みな言葉だが〝シンプル・イズ・ベスト〟だ。
モデルハウスは、テキスタイルデザインを中心に衣服、家具や器、店舗や宿など多岐にわたる空間ディレクション活動を行っているデザイナー・皆川明氏が代表を務める「minäperhonen(ミナ ペルホネン)」とコラボし、「駒沢シャーウッド展示場HUE」に建設したものだ。建物は木造軸組工法2階建て延床面積190.25㎡(1F:103.25㎡2F:87.00㎡)。
コラボが実現した経緯について、積水ハウスR&D本部デザイン設計部デザイン企画グループ グループリーダー足立奈穂氏は、「当社の100年住宅は、安心・安全のハードの部分では実現しているが、世代を超えて幸せに住んでいただける空間を提案できないかと、当社と同じように『せめて100年続くブランド』を掲げる皆川さんと意気投合して実現しました」と語った。
「駒沢住宅展示場」と言えば、名だたるハウスメーカーが妍を競う、豪華絢爛の建物ばかり。2020年には三菱地所ホームの「ROBRA(ロブラ)」、2021年には大和ハウス工業「Wood Residence MARE-希-(マレ)」の富裕層向けモデルハウスを見学している。今回も、同様の建物だろうと考えていた。念頭には同社の「新大久保」のモデルハウスがあった。
ところが、見当は大外れ。マホガニー、チーク、紫檀、黒檀などの高級材は使用されておらず、仕上げ材はごく一般的な住宅に採用されているものだった。モデルハウスにありがちな、個性的といえば個性的だが、押しつけがましい、これ見よがしの家具・調度品もなく、実にシンプル。何の衒いもないものだった。何だか肩透かしを食ったような気分にもなった。
とはいえ、シンプルだからこそ〝皆川ワールド〟を垣間見たような気持がした。わが国の伝統的な染めの技法である草木染めがその一つだ。ソファ、クッション、床、カーテンなどいたるところに施されていた。クッションはプリントではなく、織りによるもの。ソファは使い込むと裏地が浮き上がるよう仕上げられていた。
カーペットには、大小の枯葉のような文様が描かれていた。中庭や高窓から差し込む木漏れ日とともに、自然が織りなす不思議な空間を演出しようという狙いのようだ。(わが家のカーペットのコーヒーやらジュースやらその他もろもろの人生の汚点のようなシミかと思ったが)
同じような仕掛けは、1階南側のスリット窓にも施されていた。ロールスクリーンカーテンの文様が壁や床に写り込んでいた。クッションに用いられている丸い文様は洗面室やトイレの壁などにも採用されていた。
そこはかとない安らぎを覚えたのは1階のLDKだった。コの字形に配置したLiving(9.8帖)-Cozy Corner-Kitchen(8.3帖)は中庭の光と風、緑を取り込めるようにしていた。クチーナのシステムキッチンを採用したKitchenは独立型で、南側と北側に窓付き。その隣のDining(12.2帖)は最大2700~最小2500ミリの勾配天井を採用。天井は無垢のピーラー材(ベイマツの良材)。
全てが没個性的かといえばそうではない。皆川氏の個性がよく表現されているのが、中二階の「トレジャールーム」と名付けられている9.8帖の空間だ。天井高は約4000ミリ、壁の四囲は木製リブパネルで張りめぐらされており、天井は「パンチカード天井」。これは、ミナペルホネンがカーペットを製作する際に、織機にパンチする位置を指示するシートを加工したもので、素材は紙だ。
もう一つ、素晴らしいと思ったのは、遊び心もふんだんに盛り込まれている2階の提案だった。8m×6mの無柱空間を家具・収納のみでFamily hall(6.7帖+4.9帖)、kid's room (4.9帖)、Master bedroom(12.9帖)家族構成やライフスタイル・サイクルによって間取りを自由に選べ、変更できるものだ。ここに「life knit design」の真髄が注ぎ込まれていると思った。使用されている家具・収納の木もシンプルなもので、どのような置物や絵画などにもすんなりと馴染むはずだ。
キッチン(同社ホームページから)
1階リビング
1階リビング(左)と中二階の「トレジャールーム」(カーペットはシミではありません)
Dining(手前)とKitchen
洗面
トレジャールーム
トレジャールーム
Family hallとkid's room
Family hall
◇ ◆ ◇
同社のプレス・リリースには「美しい空間やインテリアは、空間自体が整ったシンプルな構成と素材で成り立っていることを突きとめました」とあり、従来のインテリア提案の課題として「テイストが増えるたびに部材や素材が増えるが、膨大な選択肢がありながらもテイストが違う部材ラインナップのため、組み合わせ方が難しい」とある。
今回の見学を通じて、「建築美」とは何かを改めて考えさせられた。〝シンプル・イズ・ベスト〟-いつの時代も変わらないということか。記者もそう生きたい。
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