23区のマンション「3LDK」75㎡の不思議「≠」専有面積そのまま公表 東京カンテイ
不動産流通研究所の10月29日付「R.E.poot」は「首都圏の3LDK新築マンション、面積徐々に縮小」の見出しを付け、次のように報じている。
「東京カンテイは28日、全国主要都市における2000年以降の3LDK新築マンション専有面積の推移を調査、分析結果を公表した。
首都圏における20年(9月まで)※の3LDKマンションの平均専有面積は、東京23区75.05㎡、横浜市71.39㎡、さいたま市70.15㎡、千葉市71.98㎡。タワーマンション等で面積の広いプレミアム住戸が設定されるケースも多いことから、23区が最も広かった。他の3都市は60㎡台目前となっている」
ここまで読んで、記者は何かの間違いではないかと思った。「LDK」は単に居室の数のみを表示するもので、専有面積と「≠」ではないとはいえ23区の3LDKが最大であるはずがないと。
続けて「R.E.poot」は次のように書いている。
「東京23区の面積帯別構成比率の推移をみると、50㎡台以下が1.1%(20年通年比0.1ポイント低下)、60㎡台前半が7.1%(同0.8ポイント低下)、60㎡台後半が24.2%(同3.2ポイント上昇)、70㎡台前半が38.7%(同4.7ポイント低下)、70㎡台後半10.8%(同1.0ポイント低下)、80~90㎡台12.4%(同2.6ポイント上昇)、100㎡以上5.7%(同0.6ポイント上昇)」
この部分だけ読むと、80㎡以上の供給が増えているほかは全て減少しているので、23区の3LDKが他市より広いのは、この80㎡以上の3LDKをカウントしているからだろうと判断した。
参考までに紹介すると、建築基準法には居室(LDKも含む)の広さに関する規定はなく、あるのは床面積の7分の1以上の採光のための開口部や窓を設けること、換気のための開口部の面積を床面積の20分の1以上確保すること、天井高を2100ミリ以上とすることのみだ。
※「20年(9月まで)」とあるのは「21年(9月まで)」の誤り
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まさか東京カンテイがそのようなデータを公表するわけがないと思ったので、元データに当たった。記者の推測通り、「R.E.poot」の報道は正確ではなかった。東京カンテイのレポートは次のようにある。
「東京23区における専有面積別の新築マンション供給シェアの推移を見てみると、直近にかけては70㎡台(特に広めの「70㎡台後半」)のシェアが縮小する一方で、「60㎡台後半」の存在感が増している。プレミアム住戸に該当する「80㎡台~90㎡台」と「100㎡以上」の合計シェアは10%程度まで縮小する時期もあるが、この10年間では概ね15%~20%の水準を維持している」
つまり、70㎡台のシェアが縮小し、「『60㎡台後半』の存在感が増している」(存在感が増すとは「幅を利かす」という意味だろう)ということだ。なのに、3LDKの面積は23区が最大となっているのは、前段で書いたように「≠」の専有面積とLDK表示を機械的に処理しているからだ。
では、10年以上前の23区の専有面積はどうだったか。リーマン・ショック前の2004年⇒2021年(9月まで)の供給比率は、50㎡以下0.5%⇒1.1%、60㎡台前半4.5%⇒7.1%、60㎡台後半11.2%⇒24.2%、70㎡台前半26.2%⇒38.7%、70㎡台後半24.4%⇒10.8%、80㎡台~90㎡台29.3%⇒12.4%、100㎡以上3.9%⇒5.7%だ。全体として専有面積が大幅に縮小していることが読み取れる。横浜市も同様で、専有面積圧縮は著しい。
面積と価格は不可分なので東京カンテイのデータを紹介すると、2010年の首都圏マンションの平均専有面積は65.40㎡で、平均坪単価は202万円だ。2020年の専有面積は61.09㎡へ6.6%(2.6畳大)縮小しており、坪単価は202万円から328万円へ62%上昇している。
問題は面積と価格だけではない。肝心の基本性能・設備仕様も大きく後退している。例えば敷地面積、用途地域、免震、二重床・二重天井、リビング天井高、外階段側のアウトフレーム、アルコーブ付き、スロップシンク、御影石キッチンカウンター、食器棚、床暖房、食洗機、ミストサウナ、突板フローリング、ワイドスパン…。
東京カンテイにはこれらも調査して公表していただきたい(データは持っているはず)。価格と面積、基本性能・設備仕様は切り離して語れないはずだ。
積水ハウスZEH「グランドメゾン」 2023年度以降は100%標準化
積水ハウスは10月28日、2023年以降に販売する分譲マンション「グランドメゾン」の全住戸をZEHに、また全棟をZEH-M(ゼッチ・マンション)にすると発表した。
すでに2021年度の新規着工案件はすべてZEH、ZEH-M基準をクリアする仕様としており、今後販売する物件のZEH・ZEH-M比率は2021年度が35%、2022年度が85%、2023年度には100%を達成する計画。
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マンションのZEH化については先月9月28日、住友不動産が今後、設計、開発する全ての分譲マンションで「ZEH-M Oriented」を標準仕様化すると発表している。
記者は、これまで首都圏で発売されたZEHマンションを中心に十数件取材しているが、完成して残っているのは住環境にやや難があり、価格がやや高い1物件のみ。他は全て早期完売している。マンションのZEH化は一挙に広まった。
「日本で一番スワローズな家」早くも問い合わせ数件 オープンハウス「北参道」
「日本で一番スワローズな家」の対象となる「オープンレジデンシア北参道ザ・ハウス」
当欄でも紹介したヤクルトスワローズのセ・リーグ制覇を記念したオープンハウスの「日本で一番スワローズな家」に早くも数件の問い合わせが入ったことが分かった。
この企画を発案した同社広報担当者が明かしたもので、「まさか優勝するとは思ってもいませんでした。ヤクルト担当になったのをきっかけに、私もファンになりました。一生懸命応援したかいがありました」と語った。価格8,960(ヤクルト)万円は決まっているが、広さは非公開とのことだった。
「豊富な経験と知見を惜しみなく注ぎ込む」 マリモ・小田急不「厚木駅前」分譲
「厚木駅南地区第一種市街地再開発事業」
マリモと小田急不動産は10月26日、海老名市で初となる厚木駅徒歩1分の市街地再開発事業「厚木駅南地区第一種市街地再開発事業」内の分譲マンション「ファーストリンクレジデンス」プロジェクトのマンションギャラリーを11月6日(土)にオープンすると発表した。販売開始は12月上旬を予定している。
同事業は、厚木駅から徒歩1分、海老名市河原口一丁目に位置する施行面積約1.1ha。事業コンサルタントはURリンケージ・東畑建築事務所。設計は長谷工コーポレーション、URリンケージ。施工は長谷工・馬淵建設共同企業体、佐田建設。参加組合員はマリモ、小田急不動産。
「ファーストリンクレジデンス」は14階建て全201戸(193戸)。専有面積58.53~88.77㎡。
「全国で多数の市街地再開発事業の実績を持つマリモと、首都圏において永年供給実績を積み重ねてきた小田急不動産が、海老名市初の市街地再開発事業のために初めてタッグを組み、両社が携える豊富な経験と知見を惜しみなく注ぎ込み、総力を結集した大規模プロジェクト」(プレス・リリース)
中高層マンション群の最前列 駅近の公園隣接 大和ハウス「王子神谷」
「プレミスト王子神谷」
大和ハウス工業が12月上旬に分譲する「プレミスト王子神谷」を見学した。駅から徒歩2分の公園に隣接した全227戸。問い合わせは約1,700件に上っており人気は必至と見た。
物件は、東京メトロ南北線王子神谷駅から徒歩2分、JR京浜東北・根岸線東十条駅から徒歩14分、北区王子5丁目の第一種住居地域・工業地域に位置する敷地面積約8,262㎡の10階建で全227戸。専有面積は66.91~82.58㎡、価格は未定。竣工予定は令和4年11月下旬。施工は長谷工コーポレーション。売主は同社のほか京浜急行電鉄、長谷工不動産。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、日本製紙の社宅跡地。敷地北側と南側の一部が公園に隣接。道路を挟んだ敷地南側は戸建て住宅街(少し先に10層くらいの公営住宅があるが)。用途地域は一部工業地域だが、嫌悪施設は全くない。保育園、コンビニが目の前にあり、生活利便施設などは徒歩圏に揃っている。
建物はL字型で分節設計。住戸は全て東南・南西向き。住戸プランは60㎡台の後半が112戸、70㎡台が103戸、80㎡台が12戸。主な基本性能・設備仕様は扁平梁、リビング天井高2530~2600ミリ、直床、ディスポーザー、食洗機、バルコニースロップシンク、玄関換気窓、通風スリット入り自動閉じリビングドアなど。共用施設はキッズルーム、パーティルーム、ワーキングルームなど。平置き駐車場は110台。生態系に寄与するABINC認証を取得している。
同社東京本店統括マンション事業部東京マンション事業部第二課販売事務所長・松本諭吉氏は、「フルスペック仕様に仕上がった。6月にホームページを開設して以来問い合わせは約1,700件。この種の駅近で板状の物件は都内では出にくく、かなり東京の広域からお越しいただいています。当社も売主だった『ザ・ガーデンズ東京王子』は中古で坪300万円を超えてきています。第1期は100戸、分譲していきたい」と自信満々だった。
完成予想図
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このマンションについて記者は9月15日に行われた同社の記者レクチャー会で、同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏に「坪単価260万なら飛ぶように売れると思いますが、そこまで安くならない、アッパー280~290万円でいかがでしょうか」と質問した。角田氏は未定としながら「坪250~300万円」を匂わせた。
70㎡のモデルルームは、間口が6200ミリで扁平梁を採用しているのでサッシ高は220ミリ確保できており、外廊下側もアウトフレームを採用し、全戸換気窓付き玄関にしているなどパッシブデザインとしているのもいい。スロップシンクを付けたのは「当社営業のこだわり」(松本氏)のようだ。
住環境も申し分ない。表通りから一歩入っているので道路騒音はなく、物件の周辺には3か所も公園がある。敷地南側は低層住宅街を形成しており、高い建物が立つ可能性も低い。中高層住宅街の最前列に位置する。
問題・課題を探せば、「王子神谷」を知っているマンション購入検討者は多くないということだろう。記者は赤羽に住んでいたことがあるので場所は知っていたが、駅に降り立ったのは初めてだった。URの賃貸や都営住宅が多いというイメージしかない。
あとは競合関係だが、2020年・2021年と2年連続で、ARUHI「本当に住みやすい街大賞」を受賞した川口駅圏の野村不動産「プラウドタワー川口クロス」(481戸)と比較する人は多いはずだ。
これにはコメントしないが、記者は「本当に住みやすい街」に懐疑的で、「住めば、北区東京。」も負けないと思う。単価は「川口」は330万円くらいだろうと思う。「王子神谷」はそれより間違いなく低い。赤羽の再開発マンションは坪400万円を突破するのは間違いない。
隣接の公園(この奥にマンションが建つ)
南側から写す(交通量は多くない)
分譲戸建て御三家とは戦わない 都市部に人的資源移す 大和ハウス(2021/9/15)
「ローカル」の大事さ浮き彫り SUUMO「住み続けたい街ランキング」(2021/10/6)
不快な臭い芬々 〝住みやすい〟街ランキング調査 無聊をかこつ記者のつぶやき(2020/12/14)
「ザ・ガーデンズ東京王子」 販売好調/北区がPRポスター「住めば、北区東京。」(2016/9/18)
祝ヤクルト優勝「日本で一番スワローズな家」1戸販売 オープンハウス「北参道」
東京ヤクルトスワローズのトップスポンサーのオープンハウスは10月26日、スワローズのセ・リーグ制覇を記念して、新築マンション「オープンレジデンシア北参道ザ・ハウス」特別コラボ仕様として「日本で一番スワローズな家」を限定1戸で企画したと発表した。
「オープンレジデンシア北参道ザ・ハウス」は神宮球場まで徒歩9分の好立地であることから、入居時にはペアシーズンチケットをプレゼントするほか、優勝決定戦で使用していたヘルメット(またはキャップ)に選手・監督のサインを入れた特別な記念グッズ、つば九郎が入居祝いを届けてくれるサービスなど“ヤクルトファンのための特典”をたっぷりつけるという。価格は8,960(ヤクルト)万円。
物件は、東京メトロ副都心線北参道駅から徒歩5分、都営大江戸線国立競技場駅から徒歩9分、渋谷区千駄ケ谷2丁目に位置する5階建て全37戸。現在分譲中の住戸(3戸)の専有面積は32.30~77.16㎡、価格は5,780万~11,380万円。竣工予定は2023年1月下旬。売主はオープンハウス・ディベロップメント。
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ヤクルトとヤクルトファン、オープンハウスさん、おめでとうございます。西武ファンの記者はこの日、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ「List Asset Management Masaki Sugiyama investment advisory General Manager」(投資営業部長)・杉山正樹氏と同社広報担当者、DeNAファンの記者の方とこの1年半で3度目の〝飲み会〟を行っており、横浜高校2年生の時、新入生の松坂大輔氏にエースの座を奪われた杉山氏と野球談議・仕事の話に夢中になっていたために、土佐料理にも手を付けず、土佐の名酒「船中八策」もたいして飲めなかった。ヤクルトの優勝は宴たけなわのお開きの段階で知らされた。
アンチ巨人の小生は、どこが勝とうが負けようがどうでもいいのだが、何とわが西武はこの日、対日ハムとの最終戦でわずか2安打しか放てず、9回裏に四球-犠打野選-3塁犠打-敬遠-四球押し出しの0-1サヨナラ負けを喫し、最下位の日ハムに2厘差まで迫られたというではないか。日ハムは優勝がかかっているロッテと2試合残っているので、西武の42年ぶりの最下位は免れそうだが、「今シーズンを象徴するような、最後は悔しい負け」(日刊スポーツ、辻発彦監督)(63)に酔いがいっぺんに回ったのか冷めたのかわからず、ただただ茫然自失の体で、家に帰って寝るまでの数時間というものさっぱり覚えておらず、杉山氏にはバントの仕方、守り方はしっかり聞いたのだが、かみさんに頭をひっぱたかれたような記憶だけがかすかに残っているのみだ…。
二日酔いの兆候は全くなく、頭がさえわたっている翌日の今朝、こうして記事を書いている。西武は横浜高校以下か。「日本で一番スワローズな家」の値段は、面積は示されていないが8,960(ヤクルト)万円とある。三井不動産レジデンシャルの「北参道」との比較は難しいが、早速、オープンハウスに取材を申し込もう。確かに「北参道」は熱烈なヤクルトファンにとって垂涎の的だろう。
小生はかつて、西武球場の手前の下山口駅が最寄りの「椿峰ニュータウン」の購入を考えたことがある。西武ライオンズ栗山選手の2,000本安打達成記念の「栗山巧の家」はどうなったのだろうか。問い合わせはかなりの数に上っているとは聞いたが…。記者も欲しいが、肝心の金がない。
やった!2000本安打「栗山巧の家」発売 西武ライオンズ&西武建設 価格高くないか(2021/9/10)
「有力新人が入った。来年は優勝だ」 オープンハウス光永監督 吠える(2021/7/23)
好立地、ぞくぞく〟 プリンス新高輪に隣接 オープンハウス「高輪」好調(2021/7/21)
リスト杉山Asset Management投資営業部長にNYと横浜で2週連続フルマラソン挑戦(2019/10/18)
松坂世代だ リスト杉山だ 初マラソンで4時間切る快挙 板橋Cityマラソン(2018/3/18)
リストの主砲杉山ピンチ!初戦勝てば準々決勝当日は結婚式(2009/8/24)
印象的な外観デザイン 訴求力のあるギャラリー 大京のコンパクト「蔵前」
「ライオンズミレス蔵前」
大京が一昨日の10月21日(木)第1期40戸の分譲を開始し、広い住戸は抽選になるほどの好調なスタートを切ったコンパクトマンション「ライオンズミレス蔵前」を見学した。坪単価450万円は高いか安いか、これは顧客が判断することだが、約356㎡(108.04坪)のマンションギャラリーには本物の立派な観葉植物を配し、「蔵前」の魅力を余すことなく伝え、商品企画では細部にこだわった外観デザインが印象的だ。
物件は、都営大江戸線蔵前駅から徒歩2分、都営浅草線蔵前駅から徒歩4分。東京メトロ銀座線浅草駅下車から徒歩8分、台東区駒形1丁目の商業地域に位置する15階建て97戸(非分譲住戸10戸含む)。ひ竣工予定は2023年3月10日。設計は現代綜合設計。施工は大京穴吹建設。10月21日(木)から第1期40戸の分譲を開始した。
現地は、表通りから1歩入った商業地域で四方道路に接道。敷地南側と東側は建物と同レベルの建物が建っている。建物デザイン監修はIKAWAYA建築設計代表取締役・井川充司氏。コンセプトは「TAYLOR Made TOKTO」。角を丸め、なめらかな曲面で包み込むような外観デザインとし、階によって窓の形や位置を変え、さらに基壇部や共用部分には松灰という釉薬を用いて焼き上げたオリジナルの陶板を採用。主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2400ミリ、食洗機など。
同社本店事業推進部事業推進一課課長・金井貴幸氏は、「ギャラリーにはエレベータを降りたらすぐ本物の観葉植物が目に入り、コリドーには〝ここに住めばこんな生活ができる〟ことをビジュアルに訴えられるよう地元の街並みやショップ、アート作品などを展示しました。商品企画では、〝売り〟の一つでもある隅田川花火大会を〝砂かぶり〟席で楽しめるように屋上にはテラスを設置しました。資料請求は1,000件近くに達しています」と語っている。
ギャラリーに据えられている本物の観葉植物
北側の外観(左)と南側の外観模型(窓がアトランダムに配されているのが分かる)
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同社は先月9月30日、メディア向け見学会を行っている。記者は各紙が報じた記事でこの物件の存在を知った。各紙は価格について次のように報じた。
「価格は未定だが、おおむね3300万円台から1億2000万円台までを想定しており、平均坪単価は400万円前後と見られる」(住宅新報)
「価格は未定だが、3,3000万円台から1億2,000万円台が目安。坪単価で400万円台の設定になりそうだ」(週刊住宅)
「価格は未定。そのために、予想値になるのだが、1DKを3,000万円以下で販売するのは、むずかしいのではないか、と思われる」(住宅ジャーナリスト・桜井幸雄の現場レポート/先端を読む-687-)
「住戸は、専有面積約25~69平方メートル。1DK・1LDKが59戸、2DK・2LDK・3LDKが35戸、全15タイプを用意」「販売予定価格は、3,300万円台~1億2,000万円台」(不動産流通研究所・R.E.poot)
つまり、みんな隔靴掻痒。記者は同じころ、坪単価が505万円の積水ハウス「グランドメゾン浅草花川戸」の記事を書いた。この価格には驚いたのだが、大京はいくらで分譲するのかとても興味があったので取材を申し込んだ。
同社のコンパクトを取材するのは2017年の「千代田岩本町」以来だったが、外観デザイン、マンションギャラリーの設営にはかなり力が入っている。メディア向け見学会を行った理由がよくわかった。訴求力は間違いなくある。
坪単価450万円が高いか安いか。23区内のコンパクトは2、3年前から軒並み坪400万円を突破してきているので、これもありかと思う。
当面は住友不動産の田原町駅から徒歩4分の「ザ・浅草レジデンス」113戸(記者は坪単価500万円とみたが)と競合しそうだが、大京の担当者は「積水ハウス」と競合していると話している。
現地(北側から写す)
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以下は、前述の記事とはほとんど関係ないおまけ。記者のつぶやきだ。
マンションの取材を始めてから40年が経過する。大京からはマンションのイロハを教わった。昔は鷹揚なもので、広報を通じて取材したことはなく、ほとんど役員クラスから直接情報を得た。原価はどのようにして積みあがっていくか、利益率をどれくらいに設定するかから、近隣対策費にはどれくらいのお金をつぎ込むかまで聞いた。
大京ばかりではない。子会社の扶桑興業(のちに扶桑レクセル)、かろりーな(その後グローベルス、現プロスペクト)、日神不動産、ダイア建設、明和地所、エフ・ジェー・ネクスト、菱和ライフクリエイト(現クレアスライフ)、明和地所、日本エスリード、日本綜合地所(現大和地所レジデンス)、ランド、プレザンスコーポレーション、シーズクリエイト、アンビシャス…OB会社の情報も収集できた。これまでグループ会社も含めて年間平均20~30物件として1,000物件くらいは取材している。
これくらい取材するとマンション市場が把握できる。記事はスピードが命だ。市場は刻々と変わる。旬の情報を読者の方に伝えられたと今でも思う。
ただ、記事にできない情報のほうが多かった。〝書くな〟と言われたことは一切書かなかった。もう時効だから書くが、こんなことだ。
明和地所の創業者、故原田利勝氏は社員の奥さんの月経の周期まで把握しており(なぜだか書くのは野暮)、奥さんの誕生日には必ずお花をプレゼントしたそうだ。生まれた子どもに「利勝」と付けた社員もいた。
大京のCMに出演していた故星野仙一氏とは何度も千駄ヶ谷駅近くの舗道でお会いした。故横山修二氏と面会した後などは満面に笑みを浮かべていた。心なしか胸の内ポケットが膨らんで見えた。
原田氏も横山氏も星野氏もみんな亡くなった。
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取材したこの日(10月22日)はわが西武ライオンズの49年ぶりの最下位を覚悟した日だ。前日は、これまで〝お客さん〟だったオリックス相手に惜敗し、残り1試合で最下位の日ハムに3厘差に迫られた。負け方もひどかった。今から13年前、2008年のあのG.G.佐藤さんの北京オリンピックの悪夢と同じ山野辺外野手の落球が致命傷になった。
取材中は野球のことなどさっぱり忘れていたが、同社の広報担当者は記者の傷口に塩をすり込む意図はなかったはずだが、オリックスファンだと話した。まあ、オリックスが優勝すれば、1995年(平成7年)の阪神淡路大震災以来だ。宮内さん、おめでとうございます。クソッ、山本め、宮城め、2人で11勝も献上した。来年は倍返しだ!
取材の帰り。たばこを吸いたくて蔵前駅周辺を探したが吸えるところは一つもなく、冷たい雨が降るなか悪態をつきながら浅草駅前の「神谷バー」まで歩いた。
生ビールとデンキブランを勧めるメニューには「相思相愛。交互に飲めば、非常に美味しい。どちらかだけでは、もの足りない」とあった。その通りに飲んだ。刺激的で甘い香りが口の中一杯に広がった。
記者を捨てた彼女とここでデンキブランを飲んだのはもう50年も昔だ。〝花を愛せる人になって〟が捨てセリフだった。立ち直るのに3年かかった。
その後10年以上かけてたどり着いたのは〝記事はラブレター〟だ。前段の業界紙の記事に欠けているのはこの「愛」だ。その欠片もないと言ったら失礼か。
坪400万円でも人気 第1期165戸販売完了 総合地所など「NAGOYA the TOWER」
「NAGOYA the TOWER」
総合地所など6社は10月20日、名古屋駅周辺で最高層(地上42階地下1階建て)のタワーマンション「NAGOYA the TOWER」の第2期を11月中旬に分譲すると発表した。
これまでの資料請求数は2,300 件超、モデルルームご来場も700件を超えるなど、2021年9月末時点で総戸数435戸のうち165戸を成約するなど第1期販売を終了している。
購入者の選好理由は「名古屋駅最寄り、かつ42階建ての超高層タワーマンション」「都心でありながら約2,000㎡の豊かな緑が敷地内にある」「バラが咲き誇るプライベート性の高いガーデ ン」「地下駐車場と38階以上の住戸専用の直通エレベーター」「名古屋駅周辺の摩天楼が一望できる地上29階のエグゼクティブラウンジ」「リニアを始めとする名古屋駅周辺の開発計画が多数あり、居住用だけでなく 投資用としても魅力がある」など。
第2期(20戸)の価格は4,118万~11,378万円(最多価格帯7,300万円台)、専有面積は36.17~85.57㎡。
2人暮らしにも対応 食洗機、1418バス装備 伊藤忠都市の賃貸「新井薬師」
「クレヴィアリグゼ中野新井薬師」
伊藤忠都市開発は10月20日、賃貸マンション「クレヴィアリグゼ」シリーズ初となる顔認証システムサービスを「クレヴィアリグゼ中野新井薬師」に導入したと発表した。
物件は、西武新宿線新井薬師前駅から徒歩2分、中野区松が丘1丁目に位置する9階建て33戸/店舗1区画。間取りは1DK・1LDK・2LDK(25.20~47.95㎡)。入居開始日は2021年9月24日。
3タイプからなる住戸は、オンとオフが切り替えられるよう寝室とダイニング空間を区分できる間取りとしたほか、壁一面に設置したクローゼットは、2人暮らしにも対応できる収納量を確保し、全住戸のキッチンに2口コンロと魚焼きグリルを標準装備。
また、1LDK・2LDK住戸にはビルトイン型の食器洗い乾燥機や大型のクローゼット、リネン庫、浴室乾燥機などの設備を完備。1LDK住戸の一部には1418ユニットバスを採用。インターネットにはNURO 光Connectを採用。
1階にはココカラファイン ヘルスケアが展開する「ココカラファイン新井薬師前店」を10月下旬に新規開店する予定。
顔認証システム
活発な法人間取引 「買い」が「売り」上回る 関東圏の中古マンション市場
国土交通省 不動産取引件数・面積データから
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は10月18日、季報Narket Watchサマリーレポート<2021 年7~9 月期>」をまとめ発表した。首都圏中古マンションの成約件数は前年比で7.8%減少し、5期ぶりに前年同期を下回ったが、成約㎡単価は前年比で9.3%上昇し、5期連続で前年同期を上回った。成約価格は前年比で6.6%上昇し、12年10~12月期から36期連続で前年同期を上回った。専有面積は前年比で2.4%縮小した。
中古戸建ての成約件数は前年比で2.8%減少し、5期ぶりに前年同期を下回った。成約価格は前年比で9.4%上昇し、5 期連続で前年同期を上回った。土地面積は前年比で6.9%縮小し、建物面積は前年比で1.3%縮小した。
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記者は1週間前の東日本レインズの月例速報Market Watchサマリーレポート(2021年9月度)でも記事にしたのだが、このところの中古マンション・戸建ての価格の上昇は〝異常〟だと思う。
いったい誰が売り誰が買っているのか、手掛かりを得ようと国土交通省が毎月公表している所有権移転登記データを基にした不動産取引件数・面積データを調べた。これによると、今年の3月の全国の法人⇒法人取引は2008年4月にデータが公表されてから過去最多の取引件数を記録したことが分かった。個人需要もさることながら、不動産会社が介在しているのは明らかだ。
データによると、関東圏の区分所有物件(ほとんどは中古マンション)の2009年の取引件数約9万件のうち、個人⇒個人は約3.7万件で全取引に占める割合は41.5%で、個人⇒法人は約1.3万件で13.9%、法人⇒個人が約3.6万件で40.3%、法人⇒法人は約0.8万件で4.1%だった。
興味深いのは法人間の売買データだ。これは、個人⇒法人の「買い」から法人⇒個人の「売り」を差し引いたもので、2009年はリーマン・ショックの影響で売り一色となっており、差し引きトータルで約2.4万件の売り越しとなっている。その後、2016年12月までの関東圏の各月ごとでは買い越しは2か月あるのみで、売り越しがほとんどだった。
2017年からは個人売買とともに法人間の売買も活発になり、直近の2020年は取引件数約10.4万件のうち、個人⇒個人は約4.7万件で45.5%、個人⇒法人が約2.4万件で23.3%、法人⇒個人が約2.9万件で27.7%、法人⇒法人が約0.4万件で3.4%となっている。
2009年と比較して、個人⇒個人の取引か多いのは当然だが、個人⇒法人の件数は倍近くに増加し、比率的にも9.4ポイント上昇している。また、法人⇒個人は0.7万戸減少し、割合も12.6ポイント減少。法人⇒法人は0.4万戸、比率は0.7ポイントそれぞれ減少している。法人間の売り買いは差し引き4,595件の売り越しとなっているように、2009年とは様変わりしているのが分かる。
今年に入っても法人の買い意欲は旺盛で、全国の今年3月の法人⇒法人の取引件数は811件となり、これまで最多だった前年同月の730件より81件多く、1か月間の取引件数としての最多記録を更新。関東圏でも1~6月の「買い」は約1.4万件で、約1.3万件の「売り」を上回っている。
この差が大きいのか小さいのかよく分からないが、株の世界と一緒だ。投資が目的であれば買ったものは売らないと利益は確定しない。当分の間、中古市場から目が離せない。