1人当たり街路樹 最多は江戸川区の8.9本 1本当たり維持管理費は1.5万円
pdf はこちら1.pdf
一般社団法人・東京都造園緑化業協会の「平成30年度東京都緑化白書」を基に東京都区市の街路樹の本数・維持管理費などを調べた。
「白書」は、「緑行政に携わる多くの関係者および都民の皆さんとともに東京都の緑行政の取り組みについて情報を共有化し、ともに東京の緑環境づくりを考えていく一助」(白書)とするため、東京都都市緑化基金の助成を得て各自治体に対するアンケート結果をまとめて発行されているものだ。
これによると、平成29年度末現在の都道、区道、市町道(島しょ部は除く)の街路樹総本数は1,115,885本で、内訳は都道等が59%、特別区が30%、市町が11%となっている。街路樹の維持管理費用は、総額で約111億円で、内訳は都道等が約5割、区道が約3割、市町道が約2割となっている。
街路樹本数を区市ごとに見ると、もっとも多いのは江戸川区の約61,000本で、八王子市の約38,000本、世田谷区の約25,000本、足立区の約23,000本、江東区の約18,000本、府中市と町田市の約16,000本、大田区の約11,000本、葛飾区の約11,000本がベスト10。
人口1人当たりの街路樹本数は、トップが約8.9本の江戸川区で、以下、千代田区の約8.1本、八王子市と稲城市の約6.7本、府中市約6.2本、多摩市の約5.3本などが続く。1人あたり最も少ないのは約0.7本の西東京市で、品川区、杉並区、豊島区、練馬区、小金井市、清瀬市が1本以下となっている。
維持管理費がもっとも多いのは江戸川区の約6.7億円で、約3.1億円の江東区、約3.0億円の葛飾区、約2.8億円の大田区、約2.6億円の足立区、約2.5億円の町田市などが続く。
街路樹1本当たりの維持管理費がもっとも多いのは日野市の約4.7万円で、以下、約3.7万円の北区、約3.5万円の武蔵野市、約3.4万円の小金井市、約3.4万円の台東区が続く。もっとも少ないのは1,498円の清瀬市で、3,442円の品川区、4,144円の武蔵村山市、4,085円の港区、5,619円の八王子市、5,185円の東村山市など10区市で1万円を下回っている。
人口1人当たり最多は千代田区の1,884円で、中央区の1,199円、多摩市の1,157円の3区市が1,000円以上。もっとも少ないのは清瀬市の12円で、品川区の32円、東村山市の61円、港区の86円、武蔵村山市の87円の5区市が100円以下。
◇ ◆ ◇
このデータからよく分かるのは、江戸川区の街路樹の多いのが突出しており、八王子市、世田谷区、足立区、江東区、府中市、町田市、大田区、葛飾区などが多いのは区。市域面積が大きいのもその要因の一つと思われる。1人当たり本数がもっとも多い江戸川区の約8.9本のほかでは、千代田区が8.1本と2位になっているのが注目される。
江戸川区の街路樹が多いのは、同区が長年にわたって緑化に力を入れてきた成果だ。同区は昭和46年に「環境をよくする10年計画」を策定し、平成16年には新たに「江戸川区みどりの基本計画」を策定。樹木数と公園面積の目標「区民一人あたり10本10㎡」を掲げ、取り組んでいる。
なぜ、江戸川区は緑化事業に力を入れているのか。その理由について、同区に37年間勤務していた千葉大園芸学部卒の海老澤清也氏が共著「街路樹は問いかける」(岩波書店)で、下水整備と一体的に道路整備を進めてきたこと、当時の中里喜一区長の街づくりに対する「決意」とそれを支えた土木技術職の「使命感」が大きいと記している。
そして、街路樹の管理に必要なのは、①行政目標②人員数③予算④技術力⑤使命感⑥発注だとしている。
区内の新小岩駅南口、平井駅、船堀駅、東大島駅、葛西駅などを歩くと公園・緑の多さがよく分かる。千代田区の街路樹の多いのは、区道もさることながら都道などが計画的に整備されてきたからではないか。美しい街並みのエリアが多い。
わが多摩市は平成30年4月1日時点で街路樹7,873本と遊歩道8,612本に区別しているためで、合計では16,485本となっており、実質的には1人当たり本数は約8.9本に達しており、江戸川区(同区が遊歩道を街路樹に含めているかどうかは不明)と肩を並べる。最近は、維持管理費を抑制するため、公園や団地の樹木と競合する街路樹を間引きしているとも聞く。
不思議なのは、区市によって1本当たり維持管理費の差が大きいことだ。最小の清瀬市の4,198円と最多の日野市の約4.7万円とでは10倍以上の開きがある。これほどの差が出るのは、各区市とも計画的に予算を計上しているはずで、単年度ではなく前後1~2年間の推移をみないと実態はつかめないのかもしれない。
例えば港区。港区の平成30年度の維持管理費は約2.2千万円だが、平成24~26年度の決算数字から計算すると1年度当たり約1.0億円となっている。
参考までに平成30年度の全区市の維持管理費約55億円を全街路樹約36万本で割ったら、1本当たり維持管理費は15,355円となった。関係者から街路樹1本の剪定費はおおよそ1万円と聞いている。これに植栽桝や低木などの整備費用を加えると約1.5万円くらいになるはずた。
街路樹にはこれだけの維持管理費がかかっていることをわれわれは知っておいたほうがいい。そして、その街路樹の価値を定量化、見える化する取り組みを関係者には行っていただきたい。
最後に、「これからの樹木の安全管理を考える」をテーマに令和3年3月1日に行われた同協会主催の座談会で語った同協会の山下得男氏の声を紹介する。
「我々造園業が培ってきた技術は世界に誇るもので、それは世界も認めていることですが、それが発揮できなくなっています。これを活用できるようにすることが社会にとっても有用であると考えています。それと、いくら健全育成していても、近接施工で根が切られてしまうことで、不健全になってしまう樹木が本当に多いです。欧米ではそうならないようルール化されています。日本にはそのルールすらないことを皆さんに知っていただき、これからに向けての仕組みづくりをしていかなければならないと思っています」
街路樹に関する記事は、「牧田記者のこだわり記事」(https://www.rbayakyu.jp/rbay-menu-kodawari)にアクセスし、「街路樹」で検索していただくと100本以上はヒットするはずなので、参照していただきたい。
江戸川区 小松川境川親水公園
船堀駅前
野村不 円滑化法を用いた敷地売却事業に着手 築42年のマンションをオフィスビルへ
「高輪交陽ハイツ」
野村不動産は8月16日、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(円滑化法)を用いた敷地売却事業に着手したと発表した。港区の築42年の分譲マンションを同社のオフィスビルシリーズ「PMO」に建て替える。
従前の分譲マンション「高輪交陽ハイツ」は1980年竣工の12階建て全106戸。2013年に実施した耐震診断の結果、耐震強度不足が判明し、また設備配管の劣化等建物の老朽化問題を抱えていることが判明し、その後、2016年から建て替えを含む再生の検討が開始された。同社は2019年8月、事業協力者として参画し、4つの手法(①建て替え②マンション用地としての敷地売却③複合建物用地としての敷地売却④オフィス用地としての敷地売却)による再生方針を検討・協議をかさね、JR高輪ゲートウェイ駅の開業や品川駅周辺再開発プロジェクト着工などオフィス立地として適した環境であることから、2019年12月にオフィス用地として敷地売却を推進することが決議された。
物件は、都営浅草線泉岳寺駅から徒歩1分、JR高輪ゲートウェイ駅から徒歩8分、港区高輪2丁目に位置する敷地面積約250坪、10階建て延床面積約1,700坪の「PMO 高輪(仮称)」。竣工予定は2024年度。
国土交通省のデータによると、2022年4月現在、円滑化法による敷地売却事業は17件、うちマンションの除却に至ったものは6件で、令和3年3月末現在の東京都のデータでは敷地売却事業の事例は7件。
億ション最高峰「広尾GH」 コスモスイニシアのリノベ見学 坪787万円は超割安
「広尾ガーデンヒルズ」
美女なら小野小町か、山に例えるなら富士山(不二山)-億ションの最高峰「広尾ガーデンヒルズ(広尾GH)」のリノベーションマンションを見学した。コスモスイニシアが公開を開始したもので、南向き66.71㎡の2LDKが何と15,900万円(坪単価787万円)。価値観は人それぞれだが、著しく上昇している新築・中古相場からして、記者は少なくとも坪1,000万円以上、坪1,500万円でも驚かない。
物件は、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩5分、渋谷区広尾4丁目の第2種住居専用地域(建ぺい率60%、容積率300%=当時)に位置する敷地面積約6.6ha、イーストヒル~M棟全1,228戸のうちの11階建てL棟(94戸)。専有面積は66.71㎡(2LDK)、価格は15,900万円。竣工は1984年1月。売主は三井不動産、三菱地所、住友不動産、第一生命。施工は清水建設、大林組、鹿島建設、三井建設、三菱建設。設計は三菱地所設計、圓堂建築設計事務所。駐車場は37台。管理はいずみ建物。
主な基本性能・設備仕様は、セントラル給湯、天カセエアコン2台、天井高2400ミリ、居室カーペット敷きなど。
同社は今年3月に取得。5月からリノベーション工事を行っていた。リノベーション内容は、キッチン ・ユニットバス ・洗面化粧台・トイレ・壁、天井クロス・玄関タイル・浄水器・照明などを交換し、玄関に新たにニッチを設けている。
同社流通事業部商品企画部建築課チーフの髙橋晴彦氏と鈴木暁子氏によると、管理組合の規約により水回り部分の移動や、カーペット敷部分の変更は不可などの制約は受けたものの、設備機器、建具などを一新し、LDKに隣接する居室(6.3畳大)はLDKと一体利用できるようにガラス引き戸にすることで現在のニーズに対応したという。
リノベ後のLDK
主寝室(7.6畳大)
窓からの借景
窓からの借景
◇ ◆ ◇
「広尾ガーデンヒルズ」は、昭和57年11月の第1期分譲開始時にモデルルームを見学し、抽選会の模様を取材した。竣工後も外観は何度も見ているが、完成後の建物の中に入るのは今回が初めてだった。
分譲開始時の昭和57年といえば、供給が激増する一方で、2戸に1戸の割合で売れ残るなど最悪期だった。マンション業界を救済するため二重価格表示が許されたのもこのころではなかったか。
最悪の市況下ではあったが、「広尾」は爆発的に売れた。当時の記事を紹介する。「1期187戸の専有面積は約44~156㎡、価格は3,590万~1億5,770万円(最多価格帯7500万円台)、坪単価は251万円だった。抽選は57年11月9日に行われ最高209倍、平均40.8倍で即日完売した。来場者は4,754組…申込者の属性は、①年齢は35~60歳で、ほぼ5歳刻みで同じ比率②年収は800万円台~1億5,000万円台が約半数③居住地は城南、城西が35%、その他都内が24%④職業は大手企業の管理職以上、会社経営者、医者、外国人、弁護士、不動産、サービス業など⑤買い換えは約60%――など…抽選日当日…ほとんどの人が(抽選に)外れて帰る中、7,000万円台の住戸を引き当てた銀座クラブの独身の美人ママ(39歳)が興奮気味に次のように語った。『7,000万円台のマンションが当たりました。嬉しくって歓声を上げそうになったのですが、周囲の人に悪いと思い、トイレに駆け込んで喜びをかみしめました。私、今日が39歳の誕生日なんです。資金計画? 四谷の30坪のマンションを売れば何とかなります。これで4回目の買い替えです。現地には30回ぐらい足を運びました』」
坪単価251万円というのは当時でも割安感はあったが、マンション不況下で坪200万円を超える物件は都心の一部に限られており、専有面積が広めの住戸が多かったため、お金持ちしか買えなかった。それでも40㎡台の住戸は3,000万円台で買えた-今なら準都心部でも40㎡で6,000万円はするはずだ。「広尾」の販売時期、価格などを以下に紹介する。
販売時期 分譲ゾーン 戸数 最多価格帯 坪単価
57/11 イーストヒル 227戸 7300万円台 251万円
58/4 ノースヒルL棟 94戸 7400万円台 254万円
58/9 ノースヒルNO棟 188戸 7800万円台 262万円
59/2・6 センターヒルGH棟 162戸 9600万円台 292万円
59/2・9 ウエストヒルIJK棟 272戸 6800万円台 262万円
60/4 サウスヒルD棟 79戸 1億2900万円台 426万円
60/9 サウスヒルF棟 63戸 1億6000万円台 420万円
当時の記事
◇ ◆ ◇
あれから40年。39歳にして4度も買い替えした銀座の美人ママさんは結婚されたのか。転売に成功していたら、4~5億円が転がり込んだはずだ。ひょっとしたら5つも6つもマンションをお持ちかもしれない。お元気ならもう80歳のおばあちゃんだ。
さて、ここからが本題。冒頭に坪単価は最低で1,000万円、1,500万円でも驚かないと書いた。レベルの高い単棟型のいわゆるビンテージマンションは100棟はくだらないだろうが、「広尾GH」のような優れたランドスケープの多棟型のマンションはほかにまずない。空前絶後だろう(三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンス「三田ガーデンヒルズ」に注目しているが、ランドスケープは「広尾」に迫れないと思う=この「三田」は坪単価1,300万円と予想したが、もっと高くなるか)。
「広尾」の基本性能・設備仕様は時代遅れの部分があり、駐車場台数が少ないのは難点だが、敷地内外のケヤキなどの樹木はまだまだ成長段階だ。景観の美しさは見事という他ない。それだけではない。真夏の地表温度を20度は下げ、エリア一帯の気温も2~3度は下げているはずだ。
最近の駅近タワーマンションなどは信じられない価格になっているが、緑環境、外観の気品・風格などは「広尾」の足元にも及ばない。「広尾」の中古の坪単価を最低で1,000万円とはじいたのは、新築が異常な値上がりをしており、つられるように中古価格もまた著しく上昇しているからで、そのように評価しないと釣り合わないからだ。
そして、この秋、われわれを仰天させる高単価のマンションが続々供給されるはずだ。第一弾の広尾駅から徒歩2分の三菱地所レジデンスの定借「ザ・パークハウス南麻布」のモデルルーム見学会が8月22日に行われる。
街並み
街並み
街並み
歴史は繰り返す――バブルから何を学んだのか(2008/10/27)
新宿、渋谷など都心5区の累計感染率は20%超 都のコロナ感染者
人口は令和4年1月現在。累計感染者は8月12日現在。このほか都外190,859人、調査中1,892人
都心部5区の感染者は5人に1人-東京都の累計コロナ感染者は8月12日現在、2,328,574人となり、総人口13,794,933人(2022年1月1日現在)に占める割合は16.88%で、新宿、渋谷、港区、中央、目黒の5区は20%を超えるなど5人に1人の割合に達している。
23区で累計感染者がもっとも多いのは世田谷区の171,244人で、以下、大田区の133,057人、江戸川区の128,442人の順。累計感染率のもっとも高いのは新宿区の21.85%で、渋谷区21.29%、港区20.96%、中央区20.23%、目黒区20.05%の5区が20%を超えている。もっとも低いのは16.54%の練馬区。23区の感染率は18.42%となっている。
市部の感染率は13.51%で、23区に隣接する調布市(15.42%)、武蔵野市(15.18%)、狛江市(15.10%)の3区が15%超となっている。
全国の感染率がもっとも高いのは沖縄県で、8月13日現在、累計感染者は416,722人となっており、人口416,722人(2022年7月1日現在)に占める割合は28.38%にのぼっている。
千葉大名誉教授・藤井氏など専門家20氏の声 建築ジャーナル特集「木を伐るな2」
一般社団法人 街路樹を守る会の代表で、千代田区議会の神田警察通りの街路樹イチョウ伐採決定に反対する活動を行っている愛みち子氏に月刊誌「建築ジャーナル」2022年6月号(6月1日発行)を頂いた。同氏が企画した特集「木を伐るな2」が約30ページにわたって掲載されており、ルポ記事のほか同氏など約20人の専門家がそれぞれの立場で活動・取り組みを紹介し、論陣を張っている。
特集は「木を伐るな2」であるように、同誌が最初に「木を伐るな」の特集を組んだのは2018年1月号だ。東京オリンピック開催決定を機に、電線地中化、道路拡幅などを理由に街路樹や公園樹木の伐採工事が次々と計画、実行されているときだった。
記者は、この特集の存在を知らなかったのだが、今年7月1日付の記事で「昨年、93歳で亡くなった生態学者の宮脇昭氏は『木を植えることは命を守ることだ』と語った。その伝でいえば、街路樹伐採は人間の命を奪うこと同じではないか。その是非を今回の問題は投げかけている。人を殺していいのかと」書いた。
宮脇氏が「木を植えよ!」(新潮新書)を著したのは2006年だ。それから12年後の2018年1月に「木を伐るな」の特集記事が掲載され、さらにその4年後に「木を伐るな2」が発刊されるということは何を意味するのか。「木を植えよ」と「木を伐るな」は同義語のようではあるが、「伐れ」「伐るな」の人間の二項対立に、物言わぬ街路樹が危機的状況に置かれている現状を反映しているのだろう。
特集記事全体に対する感想としては、筆者一人当たりの記事は写真を含めて1~2ページが多く、制度の概況紹介にとどまっているものも少なくないのでやや消化不良ではあるが、短い文章の中にきらりと光り、肺腑をえぐる言葉がちりばめられている。多くのことを学んだ。
日本庭園学会会長などを歴任した千葉大学名誉教授・藤井英二郎氏の、同行記者の質問に答える形で語る指摘がとくに鋭い。
神宮外苑の再開発計画で1,000本の樹木が伐採されることに対して、「絵画館に向かう芝生の両側にテニスコートをもってくるというのは、まったくだめです。この広がりこそ折下さんが狙っていたポイントで、それを台無しにする。こんな計画があっていいわけがない」「間違った剪定の仕方をおこなっているからお金がかかるんです。枝先を詰めるからよくない」「杜のスタジアム? うそだよ」「息も絶え絶え。今年の夏が越せるかどうか」などと辛らつだ。神田警察通りの街路樹については、「車道側は4.5m以上に枝を張らせればいいのです」という。大丸有の美しい街路樹についても「中国の纏足と同じ。人間として許してはいけない」と手厳しい。
首都圏の街路樹は藤井氏の「車道側は4.5m以上に枝を張らせればいいのです」とは真逆だ。樹高を電柱の高さ(12mが多い)より低く抑えるため、先端をぶった切っている。2階建て(約6m)と同じくらいのもたくさんある。
◇ ◆ ◇
樹木医で吉岡緑地の代表取締役・吉岡賢人氏は「所有者の都合によって樹木を植えたり伐ったりすることは自由であるものの、請負者に選択の余地はなく、ただ負け続ける宿命にある」と綴り、「街路樹の剪定管理において最も重要な部分はブラックボックスとなっており、ほとんどの場合において誰にも指摘されることはない。それぞれの樹木に登って作業した人間でしか知りえない情報が山ほどあるからで、遠目に見ただけで樹木の異常に気が付くことができる観察眼の持ち主は稀である」と書く。
皆さんはいかがか。記者はこれを読んで胸が痛くなった。ここ20年間というもの、取材などで街に出るときはいつも街路樹を眺めている。月に20日にして年間で240回、20年間で4,800回だ。電信柱のようにぶった切られているのに我慢がならず、「街路樹が泣いている」というタイトルの記事を書き始めたが、その数は数十本に及ぶ。
また、自ら居住する団地の樹木剪定も仲間らと行っているのだが、ひこ枝、徒長枝、ふところ枝、からみ枝などを伐るのにとどめ、強剪定はしないことにしている(仲間からいつも下手くそといわれるが)。
樹木剪定で学んだことは、樹木はほっといても美しい樹形を描き、よほどのことがない限り、2~3年で自ら修景するということだ。コロナ禍で樹木剪定が中止になったが、わが団地の緑は一層輝きを見せている。強剪定すればするほど、必死で生きようと狂ったように荒れる。人間と同じだ。
なので、多少は樹木や人を見る目はあると思っているのだが、「ただ負け続ける宿命」にある造園・剪定業に携わる人に悪態をついても思いを寄せたことはなく、「遠目に見ただけで樹木の異常に気が付くことができる観察眼」など持ち合わせていない。
ほとんどの人もそうではないだろうか。極端な例だが、二和向台の強剪定されたイチョウは枝葉をそぎ落とされているので、何の木か知らない地元の人がいた。街路樹に名札を付けている自治体も圧倒的に少ない。〝見ざる言わざる聞かざる〟は〝見せず言わせず聞かせず〟という意味に代わった。
◇ ◆ ◇
共著「街路樹は問いかける」(岩波書店)の著者・海老澤清也氏は「日本の街路樹は世界にも稀な哀れな姿である」と書き起こし、世界標準は「樹冠拡大」であるのに対し、わが国は「樹冠縮小」が基本であると批判する。また、米国は街路樹の経済的価値を数式化する「i-Tree」を完成させたと述べている。
「i-Tree」については小生も紹介したが、「日本の街路樹は世界にも稀な哀れな姿である」には驚いた。外国は中国・北京とモンゴルしか知らないが、目視した限りでは比較にならないほどわが国のほうが優れていると思った(中国は砂漠化に危機感を抱いており、緑化事業に力を入れているとは聞いたが)。
記者は最近、1991年に設立された日本景観生態学会の存在を知ったのだが、学会ホームページには「生態学、造園学、農村計画学、緑化工学、林学、地理学、応用生態工学、土木工学、建築学など、専門分野の異なる多様な研究者や技術者が『景観』をキーワードとして集まり、互いの視点を活かし合いながら意見交換を行ってきています」「景観は、今までにも増して急速に、また激しく変化し、そして、土地利用上の対立や生態的基盤の劣化が顕在化しています.今、そのような問題の解決に有効な土地利用や地域計画の手法、地域生態系の管理技術を確立し、それが活かされていくしくみを構築しなければなりません」とある。
このほか、1995年12月に設立された環境経済・政策学会もある。同学会の目的には「経済学、政策学および関連諸科学を総合し、環境と経済・政策の関わりについて理論的・実証的な研究活動、ならびに国際的な研究交流を促進する」とある。
これらの学会と行政、民間が連携して「世界にも稀な哀れな姿」を何とか打開してほしい。
◇ ◆ ◇
特集にはこのほか、仙台市建設局百年の杜推進部公園管理課施設管理係長・降幡賢太郎氏の「杜の都・仙台の街路樹について」、名古屋市緑政土木部緑地部緑地維持課緑化係長・篠塚泰伸氏の「街路樹再生なごやプラン」の取り組み、2020年に全国初の街路樹に焦点を当てた「埼玉県議会街路樹を考える議員連盟」を立ち上げた発起人・石川忠義氏の活動報告、千代田区議会議員・大串博康氏の街路樹保護と育成に関する取り組み、樹木医・冨田改氏の「日本の街路樹は2㎡足らずの空間に何十年も閉じ込められますが、欧米では12㎡の地中を確保して、街路樹の生育環境に配慮している」などの記事がある。
仙台市の街路樹が素晴らしいのは記者も実感している。来年4月に全国都市緑化仙台フェアが開催されるようだが、機会があったら取材したい。埼玉県内のみじめな街路樹をたくさん見ているので、議連の活動に期待したい。鋭い質問に区役所担当者をたじたじにさせ、街路樹伐採を決めた議会決定に瑕疵があることを認めさせたのも大串氏だ。
樹木医になるには、7年以上の実務経験のほか、日本緑化センターの研修も受けなければならず、樹木に対する知見だけでなくかなり高度な技術も必要と聞く。資格的には任意資格なのだろうが、国家資格に格上げしてはどうか。そうすれば、千代田区のように樹木医の診断を無視などできないはずだ。
気になることを一つ。全国の街路樹は圧倒的に落葉樹が多い。四季によって移り変わる景観をよしとする考え方が背景にあるのだろうが、街路樹は常緑樹がいちばんいいのではないかと思う。わが多摩市の街路樹は約1万本だが、うち2割近くはシラカシ、クスノキ、マテバシイ、ヤマモモなどの常緑樹だ。
街路樹伐採やめて 住民の監査請求棄却 千代田区監査委員 区のアリバイ作り追認(2022/7/1)
中古マンション 成約価格は2ケタ上昇 7月の不動産流通市場 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は8月10日、首都圏の7月度の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は前年同月比3.4%増の3,104件となり、7か月ぶりに前年同月を上回った。㎡単価は同12.9%上昇の68.51万円(坪226.1万円)となり27か月連続、成約価格は同11.1%上昇の4,348万円で26か月連続、それぞれ上昇した。専有面積は同1.5%縮小の63.46㎡となった。
地域別では、成約件数は横浜・川崎市と埼玉県以外の各地域が前年比で増加し、千葉県と神奈川県他は7か月ぶりに前年同月を上回った。成約㎡単価はすべての地域が前年比で上昇が続き、東京都区部は27か月連続、横浜・川崎市と埼玉県は26か月連続、千葉県は24か月連続、神奈川県他は20か月連続、多摩は17か月連続で前年同月を上回った。
中古戸建て住宅は、成約件数は前年同月比5.8%減の1,176件となり、7か月連続して前年同月を下回り、成約価格は同8.5%上昇の3,791万円で、21か月連続して前年同月を上回った。
風致地区の高台立地 設備仕様レベルも高い JR西日本プロ・大和地所レジ「横濱山手」
「プレディア横濱山手パークヴィラ」
販売好調のJR西日本プロパティーズ(事業比率70%)と大和地所レジデンス(同30%)「プレディア横濱山手パークヴィラ」のモデルルームを見学した。山手駅から徒歩15分とややあるが、「根岸森林公園」へは徒歩3分の全75戸で、販売開始の7月から約1か月間で40戸が成約済み。
物件は、JR京浜東北・根岸線山手駅から徒歩15分、横浜市中区滝之上の第1種中高層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率150%)に位置する6階建て全75戸。専有面積は63.27~100.28㎡、坪単価は260万円強。現在先着順で販売中の住戸(9戸)の専有面積は63.27〜78.49㎡、価格は4,598万~6,948万円。竣工予定は2023年8月下旬。設計はスタイレックス。施工は日本国土開発。竣工予定は2023年8月下旬。
7月1日から販売開始し、第1期1次23戸が登録完売したほか、これまでに40戸が成約済み。反響は1,000件超、来場者は200件。登録者の居住地は市内4割を含む県内が6割、都内が3割弱、そのほか千葉、静岡、関西、宮城、広島など広域にわたっている。いずれ住もうと考えている人や、家族が近くに住んでいるなど何らかの縁がある人が目立つという。
現地は、根岸森林公園に徒歩3分のほか聖光学園に近接する標高40mの風致地区の高台。建物は3棟構成で、標準階は南向き9戸:東向き7戸(他に西向き1戸)。主な基本性能・設備仕様は、奥行き2mのオープンエアスペース(一部除く)、リビング天井高2450ミリ、天然御影石キッチンカウンター及びキッチンサイド天然石貼り、キッチンタッチレス水栓、食洗機、天然御影石洗面カウンター、ミストサウナ、浴室ドアタオル掛け2本、タンクレストイレなど。
モデルルーム
オープンエアスペース
◇ ◆ ◇
〝1番人気〟という84㎡の南東角住戸のモデルルームがいい。全開放サッシとバルコニーに設置されているウッドデッキのオープンエアスペースがリビング・ダイニングとの一体感を演出し、とても広々とした空間に感じられた。
また、居室と廊下側双方から出入り可能且つ収納豊富な「ビッグウォークインクローゼット」を採用。さらには、玄関やリネン庫にも収納のこだわりを感じられ、設備仕様も高く高級感があり、機能的な設備が充実。この物件は快適で楽しい毎日を過ごせそうだ。
ほかでは、専有面積を約76㎡確保しているからできることだが、3400ミリ×1200ミリ(1.2坪)の玄関・土間スペース付きがいい。廊下幅も1000ミリだ。隣り合う洋室(6.1帖)との壁は構造壁でないから、取り払えば8帖大のスペースとなる。オプションで提案したらヒットするのではないか。
日機装の除菌・消臭装置「Aeropure」 野村不動産の「床快full」に標準装備へ
概念図
日機装は8月10日、同社の深紫外線LED「Sumiray」を用いた組込式空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)シリーズD」が、野村不動産の「プラウド御茶ノ水」に採用されたと発表した。
同社の「エアロピュア シリーズD」を野村不動産が2019年から展開しているセントラル空調システム「床快full空調」に向けカスタマイズし、「UVクリーンユニット」として製品化することになったもの。
「UVクリーンユニット」は、深紫外線LEDと光触媒を組み合わせた除菌消臭技術を搭載。Wのパワーで菌やウイルスを抑制する「業界トップクラスの性能を誇っている」(リリース)製品。
「プラウド御茶ノ水」は、東京メトロ丸ノ内線御茶ノ水駅から徒歩6分(JR御茶ノ水駅から徒歩7分)、文京区湯島二丁目に位置する13階建て全98戸。専有面積は60.42 ~101.06㎡。竣工予定は2024年2月下旬。施工は前田建設工業。販売開始は10月。
野村不動産は、今後の「プラウド」にこの「UVクリーンユニット」を採用していく。
◇ ◆ ◇
野村不動産が「床快full」を最初に採用したのは2020年分譲開始の「プラウドタワー亀戸クロス」で、その後「プラウド文京千駄木」「プラウド高田馬場」に採用している。
このほか、三菱地所ホームは今年4月、日機装の深紫外線LED水除菌モジュール「PearlAqua」を搭載した加湿システムを開発し、全館空調システム「エアロテック」と連動させた新商品を発売開始しており、三菱地所レジデンスは「エアロテック」を搭載したマンションをいくつか分譲している。
また、三井不動産レジデンシャルも昨年から分譲開始した「パークコート神宮北参道 ザ タワー」の3住戸に全館空調と同様の機能を持つ冷暖房システム「AirLOGY」を採用。標準化するための実証実験を進めているようだ。
凄い!全館空調、二重&樹脂サッシ採用 野村不「亀戸」934戸 単価300万円台半ば(2020/2/19)
「念願の過乾燥を解決」 加湿システム搭載「エアロテック」発売 三菱地所ホーム(2022/4/27)
潜在的需要をデザイン 企画ヒット 内と外、地域をつなぐ ポラス「南流山」
「Be GRACE(ビー・グレイス)南流山 紡ぐ家」(庭にフェンスがないのが分かる)
ポラスグループの中央グリーン開発は8月9日、南流山の土地区画整理事業地内の分譲戸建て「Be GRACE(ビー・グレイス)南流山 紡ぐ家」のメディア向け見学会を行った。駅から徒歩8分の全4棟で、〝ウチ・ソト・トナリ〟を緩やかにつなぎ、さらに地域とのコミュニティにも配慮した意欲的な商品企画が光る。
物件は、JR・つくばエクスプレス南流山駅から徒歩8分、流山市南流山2丁目流山都市計画事業木地区の第一種低層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率120%)に位置する全4棟。土地面積は約162㎡(49坪)、建物面積は約101㎡(30坪)~約116㎡(35坪)、価格は6,980万~7,480万円。施工はポラテック。構造は木造2階建(在来工法)。建物は完成済み。引渡予定は2022年11月10日。
現地は、最低敷地面積が135㎡と定められている土地区画整理事業地内の一角で、戸建てやアパートなどか建ち並ぶ低層住宅街。保育園・幼稚園が徒歩3分、小学校が徒歩8分、中学校が徒歩5分。スーパーなどの3つの商業施設が徒歩10分圏。このほか3つの公園が徒歩10分圏内。
全体敷地はそれぞれ6mの北側と西側道路に接道。4棟とも①タイルテラス・モダン和室付き②2階バルコニーを内側に取り込んだ主寝室-ランドリールーム-洗面-浴室一体型③中庭に面したリビングと多目的ルーム付き④上部吹抜けの広い土間付き-の個性的な異なるプランなのが特徴。
主な設備は、2台カースペース、天井高2.7m×サッシ高2.2mリビング、階段ステップ15段、食洗機・浴室暖房乾燥機・床暖房・エコワン・電動シャッター・宅配ボックス、挽板・無垢材多用など。
販売・申し込み状況は、5月27日から資料請求を受け付け、これまで反響は約300件。反響者の居住地内訳は流山市26%、松戸・柏市13%など千葉県内が48%、都内は29%。来場者は約40組で、夫婦、または小さいこどものファミリーがほとんど。7月30日から販売開始し、3棟が成約済み。成約者は都内居住者が中心。
同社設計部部長・鎌田浩之氏は、「当初は5棟も考えたが、コロナ禍でお家時間が増え、家の中に閉じこもり、家と外の関係が分断されているのではないかと強い危惧を抱いており、中間領域を設け内と外、更には隣の家や地域・街とゆるやかにつなぐように設計した。プランは万人受けするものではなく1棟1棟異なるものにした。設備仕様レベルも引き上げ、感動していただけるよう完成販売にした」と企画意図について話した。
同社ブランディング課プロモーションチームリーダー・萩原誠氏は、「購入予算を引き上げて購入を検討された方と、最初から購入をあきらめた方に分かれた。おおたかの森や南流山にはこの種の分譲戸建ての供給事例はほとんどない」と語った。
モデルハウス(1号棟)
モダン和室(正面の南側の窓を下側に、しかも小さくし、壁は外壁と同じような色にしているのが味噌)
◇ ◆ ◇
いつものように、現場に着くまで価格はいくらかを考えた。土地は30~40坪で、価格は4,000~5,000万円台だろうと。これなら〝母になるなら、父になるなら〟の流山だから売れるのは当然だろうと。
予想はものの見事に外れた。区画整理地であることを忘れていた。予想は外れたが、鎌田氏と萩原氏の話を聞いて納得もした。都内などでは20坪そこそこの敷地の、緑などまったくない長屋のような戸建てが今も昔もたくさん分譲されている。鎌田氏は「家と外の関係が分断されているのではないか」と語ったが、記者もそう思う。
ところが、同社グループの春日部の調整区域、東浦和、新松戸、みのり台などの分譲戸建ても、この前取材した旭化成ホームズの賃貸併用住宅も同じだ。この種のプランを受け入れるユーザーは一定数存在するのは間違いない。みんな〝隣近所や地域とつながりたい〟という潜在的な意識を持っている。
それを顕在化させるため、隣家との間にフェンスを設けずピンコロによる境界線とし、2・3号棟の間にポールベンチを設けたデザインは、規模は小さいけれども社会課題を解決しようという意義は大きい。デザインとは、単なる意匠デザインではなく様々な課題を解決するソリューションであることを分かりやすく伝えた。この企画に拍手喝采だ。
取材の案内が届いたときは、断ろうかとも思った。年間3,000戸超も販売する同社グループのたかが4棟の販売現場が好調だからといって、記事にする「か・ち・も・な・い」し、この日は夕方から横浜のマンションの取材が入っていた。移動時間は徒歩を含めて東京-名古屋間と同じだ。炎天下で疲れるだけだと。
しかし、〝取材にNOは言わない〟現場主義をモットーとする記者だ。受けることにした。大正解だった。得るものはたくさんあった。
吹抜け付きの土間空間(4号棟)
2階にランドリールームを設けた2号棟(天井は開閉できる天窓を設け、階下から吹抜けを通じ風が抜ける工夫も凝らされている。手前の南側の黒い部分は敢えて壁にしているのも特徴)
2号棟と3号棟のポールベンチ(フェンスはなく、南側にも抜けている)
野村不パートナーズ マンション管理適正評価制度 全管理組合への説明完了
マンションの管理状態を★の数(★5つから★なしの6段階)で評価するマンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」がスタートし、東急リバブルの不動産情報サイト「中古マンションライブラリー」が表示第一号として先に掲載を開始した。
掲載された19物件のうち★5つ(特に優れている)は6物件で、野村不動産が分譲した「プラウドタワー武蔵小杉」「プラウド大阪同心」「プラウド葛西」の3物件が半数を占めた。そこで、野村不動産グループの取り組みについて聞いた。次のような回答があった。
マンション管理事業の野村不動産パートナーズは、マンション管理適正評価制度だけでなく、管理計画認定制度も合わせて2022年1月から、同社が管理している全物件の管理組合理事会に制度の説明を開始し、3月までに完了。4月以降は改めて両制度の内容・活用するメリット・登録申請フローなどの説明を行っている。
中古マンションの仲介を担当する野村不動産ソリューションズは、制度の拡大をにらんで不動産情報サイト「ノムコム」への掲載を検討している。
マンション管理協は、向こう3年間で12,000組合の登録を目標に掲げている。
東急リバブル 「マンション管理適正評価制度(★の数)」評価掲載スタート(2022/8/3)