マンションの適正な管理を確保するための政策要望 マンション管理業協会
マンション管理業協会(理事長:高松茂・三井不動産レジデンシャルサービス会長)は8月29日、「マンションの適正な管理を確保するための方策に関する要望」を国土交通省に提出したと発表した。高経年マンションの増加と居住者の高年齢化に伴う修繕費・維持管理負担増を軽減するのが目的。要望は次の通り。
【I】マンションの適正な管理を実現するための方策
1.適正な管理に取り組むマンションに係る優遇措置
(1)税制優遇措置
【要望内容】
・管理計画認定マンションや当協会で行うマンション管理適正評価制度において一定以上の評価を得たマンションなどの、適正な管理に取り組むマンションに対するインセンティブとして、対象区分所有者の固定資産税の減税、及び対象中古物件購入時において、所得税の控除、固定資産税・贈与税の減税を適用する制度の創設を検討いただきたい。
(2)住宅金融支援機構によるマンション共用部分リォーム融資(高齢者向け返済特例)及び部分的バリアフリー工事やヒートショック対策工事を行う際のリフォーム融資(高齢者向け返済特例)における優遇措置
【要望内容】
・認定制度の認定、及び当協会で行う評価制度において管理状況について一定基準をクリアし、適正な管理を実施するマンションへの優遇措置として、住宅金融支援機構によるマンション共用部分リフォーム融資(高齢者向け返済特例)の金利について、マンションすまい・る債積立管理組合に適用される金利と同程度に優遇し、マンションすまい・る債積立管理組合は、更なる金利の優遇を検討いただきたい。
なお、同融資の保証料については、減免もしくは免除、または(公財)マンション管理センター指定の「特定管理組合」への適用による保証料の割引を検討いただきたい。
・また、住宅金融支援機構によるマンションの専有部分において部分的バリアフリー工事やヒートショック対策工事を行う際のリフォーム融資(高齢者向け返済特例)の金利優遇や保証料の減免もしくは免除を検討いただきたい。
・上記2つの融資について、併用して融資を利用できる仕組みをご検討いただきたい。
【II】適正な管理組合運営を担保するための法関連の見直しに関する要望
1.マンション標準管理委託契約書の改訂について
【要望内容】
・マンション標準管理委託契約書の改訂を検討いただきたい。
ショック! 木質空間なし 現し論議に決着 RCと木造混構造の特養完成 三井ホーム
「特別養護老人ホーム新田楽生苑」
三井ホームは8月30日、枠組壁工法では国内最大級の木造5階建て「特別養護老人ホーム新田楽生苑(しんでんらくせいえん)」が竣工したのに伴う記者見学会を行った。
物件は、足立区新田1丁目に位置する敷地面積約4,649㎡、5階建て延べ床面積約7,826㎡。建築主は社会福祉法人新生福祉会。設計監理はメドックス。施工は三井ホーム。構造は1階:RC 造/2~5階:木造(枠組壁工法)。用途は特別養護老人ホーム150室、短期入所生活介護施設(ショートステイ)20室、認知症対応型デイサービスセンター、居宅介護支援事務所など。工期は2021年3月着工~2022年8月完成。開所予定は11月。
施設は、足立区が所有する中学校跡地に区が公募を行い、特別養護老人ホーム・ケアハウスなどを運営する社会福祉法人新生福祉会(広島県尾道市)が選定され、同社が施工を担当することになったもの。
建設地は、隅田川と荒川に挟まれた中洲に立地。現行の建築基準法では5階建ての建物をすべて木造で建築する場合、1階を2時間耐火構造とすることが求められるため、経済合理性とプランニングの特性を踏まえ、1 階をRC造、2~5階は木造1時間耐火構造で設計。合わせて防水対策として1階の階高を6m確保している。
木材使用量は2,716立方メートル(うち国産材は22%)。木造建築にすることで試算では炭素貯蔵量(CO2換算)は1,774t-CO2、スギの木(35年生)換算で7,116 本に相当する。
設備面では新クックチル式の厨房を採用するなど、スタッフの働きやすさや作業効率にも配慮している。新クックチル式とは、通常の方法で調理した料理を急速冷却し、細菌の繁殖しにくいチルド(0~3°Cの低温)状態で保存し、必要時に再加熱して提供するシステム。
外観
入口
施工中の現場
施工中の現場
◇ ◆ ◇
同社施設事業本部コンサルティング第二営業部長・十文字将敏氏は冒頭のあいさつで、「地球環境、脱炭素に寄与するよう木材をふんだんに使っているのがポイント。延べ床面積約7,800㎡に対し木材使用量は2,716立方メートル。国立競技場は延床192,000㎡に対し木材使用量約2,000立方メートル。施設面積は25分の1だが、木材使用量は国立競技場より多い。木質感は全くないが、現しで(木材を)使うより実を取る観点で施工した」と語った。
引き続いて、設計監理を担当したメドックス取締役・佐藤憲一氏も、「木質空間は全くない。収益は限られており、経済合理性を考えると、木質感(の論議)は終わった」と言い切った。
両氏から2度も3度も実も蓋もない「木質感は全くない」と言われて、記者は相当のショックを受けた。昨年12月、三井ホーム技術研究所研究開発グループマネージャー・小松弘昭氏が「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し。木の性能、コストなど科学的・合理的なことのほうが大事」と昂然と言い放ったのを思い出した。
特養の入札は、質の確保は当然ながら、価格が最優先されるはずで、事業環境が厳しいのは、宿泊体験をしたことがある記者もよく分かる。痴ほう症の入居者から同じことを何度も聞かされても無視するわけにはいかないし、部屋は個室をあてがわれたが、夜中にカラスのような声を聞かされ、一睡もできなかった。解放された翌日はうちに帰って半日寝込んだ。オンとオフの切り替えができない若い職員が過労、ストレスで精神を病むケースも他の業種より多いのもうなずける。賃金だって20~30万円台で底這いだ。〝現しにしろ〟というのは、部外者のたわごとかもしれない。
しかし、このまま引き下がるわけにもいかず、質疑応答で「御社だって木造は風邪をひかない、喧嘩をしない、仕事の能率が上がる、ストレスが軽減する…などを実証してきたではないか」と食い下がった。これに対し、佐藤氏だったか「木質感に対するニーズはある」との回答にとどまった。
もう黙るしかない。小松さん、十文字さん、佐藤さん。丹下健三は「美しいもののみが機能的」と言ったではないか。三井ホームが吉永小百合さんをCMに起用したのは、この言葉を具現化するものではなかったのか。
あれから30年。サユリトの小生は今でも一番美しいのは吉永さんだと信じて疑わない。住宅展示場のモデルハウスで一番美しいのは三井ホームだ。
…ここまで書くと、小生はどこかのカルト信者のようで、「外貌の呪縛」に取り憑かれている馬鹿そのものだと皆さんは嘲笑するのだろうが、かなり本質的なことを言っているつもりだ。「経済合理性」が全てを支配していることを今回の取材で学んだ。この悪魔のささやきに等しい「経済合理性」なる文言を前に、反旗を翻すことができる人は果たしているか。
共同生活室
多目的ホール
デイルーム&食堂
外貌の呪縛を解き放つか「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏(2021/12/09)
積水ハウス・千葉大健康増進につながる空気環境研究第3段階へ実験棟完成(2017/11/10)
三井ホームわが国初の5階建て2×4工法による特養が完成(2016/5/25)
内装木質化は熟睡長く、知的労働も向上慶大・伊香賀教授が実証(2016/3/22)
三井ホームわが国初の木造(2×4工法)による4階建て耐火建築物(2015/2/28)
フレンチトースト、サラダのチーズは絶品 丸ビル「THE FRONT ROOM」試食会
「THE FRONT ROOM」
HUGEと三菱地所は8月29日、初のカフェ業態として「THE FRONT ROOM」を丸ビル1階9月6日(火)にオープンするのに先駆け、メディア向け内覧会・試食会を開催した。
「THE FRONT ROOM」は、「レストランを得意とするHUGEだからこそ提供できるホンモノ志向のカフェ」というのが謳い文句で、モーニングにはコーヒーと焼きたてのパンを、ランチにはフレッシュなサラダとパスタ、ディナーにはワインやこだわりの一皿を提供する。
「Timeless & Borderless」をコンセプトにシェフ、バーテンダー、サービスマンのプロフェッショナルが、だれもが1日中どんなシーンでもゆったり寛ぐことができるサードプレイスを目指す。
店舗は、丸ビル1F、営業時間:月-土8:00-22:00(日・祝9:00-21:00)、席数: 123席(店内83席/テラス40席)、平均予算:Drink/600円~Food/1,200円~。Instagram:https://www.instagram.com/thefrontroom_marunouchi/
三菱地所の丸ビルは今年開業20周年のアニバーサリーイヤーを迎えており、同カフェがオープンする9月6日(火)を皮切りに、2023年春にかけて段階的なリニューアルを実施するのに合わせ、「Your Palette ―明日を彩る、わたしを選ぼう。―」をコンセプトに様々なイベントや企画も展開していく。(特設サイト:https://marunouchi-palette.com/)
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記者は東京駅圏で取材があると、この前まで営業していた丸ビルの1階のカフェ・レストランや三菱一号館のワインバーをよく利用した。白ワインは1杯600円~というリーズナブルな値段でおいしい。
今回リニューアルした「THE FRONT ROOM」の店舗デザインは従前のそれとは全く異なる。提供された食事はとてもおいしかった。〝売り〟の一つである「SHIBUichi BAKERY(シブイチ ベーカリー)」のパンを用いたフレンチトーストは、とても柔らかいのが特徴。小生は一時期、子どもに食べさせるためフレンチトーストに凝ったことがある。フランスパンの食感も捨てがたいが、このように口の中でとろけるのもまたいい。喫茶室・ルノワールのフレンチトーストと双璧か。
「カラブリア産唐辛子と完熟トマトのアラビアータ」も美味。パスタは固めのショートパスタで、濃厚なトマトの風味がよく引き出されている。癖になりそうだ。(小生はトマトを人の3倍は食べる。糖尿の数値が悪化しないのはトマトのお陰か)
「JAMON SERRANO and FRESH FIG SALAD」と名付けられた野菜サラダは、ブルーチーズに似たチーズが抜群。ワインにとてもあう。何とかクロックムッシュというサンドイッチはよく分からなかった。
バスク風チーズケーキとチョコレート味のガトーショコラも供されたのだが、小生はケーキ類をほとんど食べないので、おいしいかまずいか全然わからなかった。残すのは失礼だと思い、スプーンで食べたのだが、隣の女性がナイフとフォークで食べていたのでとても恥ずかしく、冷や汗が出た。その女性に感想を聞こうと声を掛けた。それまではマスクをしていたのでよく分からなかったのだが、とても可愛い女性は「固めのプリンみたいで、味が濃い目」と話した。
しかし、小生もあのプラスチックの底の突起物を折ると、ゆらゆらと揺れながら崩れることなく皿に収まるプリンは知っているが、味は今回のケーキとは全然違うと思う。
コーヒーは、HUGEが運営するみなとみらいのQUAYS pacific grill(キーズ パシフィック グリル)内に併設する焙煎所、HAMMERHEAD ROASTERY(ハンマーヘッド・ロースタリー)のコーヒーをシングルビーンズで提供する。コーヒー、酒、たばこは嗜好性が強く、小生は毎朝自分で淹れるコーヒーが一番おいしいと思う。
この日供された食事、ケーキ、コーヒーはメディア向けなのでいくらかは分からないが、オープンする9月6日からは食事は1,000円~とか。グラスワインは650円~750円。
この日供された料理とケーキ
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2021年度のわが国のJR駅別乗降客がもっとも多いのは新宿駅(1日平均約52万人)で、2位池袋駅(同41万人)、3位横浜駅(同30万人)となっており、東京駅は4位の約28万人だ。5位は渋谷駅の約25万人。
前年比伸び率は渋谷駅がトップで11.9%(東京駅は4.3%)なので、このまま推移すれば東京駅は渋谷駅に抜かれそうだが、問題は乗降客の数ではない。そこにどのような人がどれだけ滞在し、消費するかだ。そのようなランキングはないのか。
入居者交流会・防災イベントに7割超が参加 ポラス「ONE for 30@清瀬」30棟
オンライン交流会(写真提供は同社)
ポラスグループの中央グリーン開発は8月28日(日)、好調のうちに販売を完了し、引き渡しも済ませた分譲戸建て「ONE for 30@清瀬」(30戸)の入居者交流会・防災イベントをメディアに公開した。イベントには7割を超える22組が参加した。
イベントは10時にスタート。オンラインでの顔合わせ会のあと、提供公園内でリアルの水消火器体験、煙体験などを清瀬消防署の協力のもと行なわれた。
9月1日は、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなみ「防災の日」と定められており、その前後、8月30日から9月5日の1週間は「災害への備え」を啓発する「防災週間」として様々なイベントが行われている。
物件は、西武池袋線清瀬駅から徒歩18分・秋津駅から徒歩16分、清瀬市中里1丁目に位置する全30棟。土地面積は120.19~139.25㎡、建物面積は91.08~106.81㎡、価格は4,380万~5,480万円。昨年10月15日から販売を開始し、今年4月11日に完売。
来場者は378組で、清瀬市が14%、朝霞市が10%、武蔵野市が7%など広域から集客できており、平均年齢は34.8歳。家族数は2.8人。約9割が一次取得層。
敷地の従前は畑で、中央に提供公園を設け、公園を取り囲むように住棟を配置し、ヒメシャラ、カツラ、シラカシ、レッドロビン、ナツハゼ、ミツバツツジなどのシンボルツリーを植栽、木のぬくもりを演出した商品企画が評価されたという。
オンライン交流会(写真提供は同社)
消火器体験コーナー
煙体験ハウス内(甘い香りがしたが、このように全く何も見えない。実際は煙は1秒間に3m流れ、濃度にもよるが一酸化炭素中毒で倒れるそうだ。生き延びるには息をしないこと=30~40秒はできそうだ。これが生死を分ける)
オンライン配信
オンライン配信
「写真? どうぞどうぞ。われわれ公務員には肖像権はありませんから」
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この種のイベントは、記者が入居する大半がお年寄りの団地や、三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス 津田沼奏の杜」で経験しているが、今回は、当然ではあるが、未就学児が圧倒的に多いファミリー層で占められていたのに驚いた。
そして、イベントを取り仕切っていたのが同社野球部の中村氏で、主砲の三瓶氏も参加しているのに嬉しくなった。半年で30棟を販売する企画力・販売力はさすがだ。
RBAのホームページから「ポラス 中村」「ポラス 三瓶」で検索するとそれぞれ20本はヒットするはずだ。
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令和元年版 消防白書によると、出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、全国平均で3.0件/万人で、出火率を都道府県別にみると、もっとも高いのは島根県で4.5件/万人、以下、長野、高知の順。もっとも低いのは、富山県の1.6件/万人で、2位は神奈川県、3位は石川県。富山県は平成3年(1991年)以降連続してもっとも出火率が低い。小さいころから徹底した防災教育が行われているからだそうだ。
「ONE for 30@清瀬」
「ONE for 30@清瀬」
「ONE for 30@清瀬」
安否確認47%⇒64%に伸ばす 「ザ・パークハウス 津田沼奏の杜」防災訓練(2016/4/18)
〝怪物〟対決は積水・生田に軍配 ポラス岩瀬は四球が命取り(2014/7/16)
ポラス逆転勝ち 〝ノーコン〟の汚名返上 岩瀬1死球のみ完投 次があるオープンハウス(2019/6/13)
谷崎潤一郎「陰翳礼讃」の世界 LED照明で表現 東京建物BAG-Brillia Art Gallery-で
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
東京建物は8月26日(金)~9月25日(日)、同社京橋ビル1 階「BAG-Brillia Art Gallery-(バッグ ブリリア アート ギャラリー)」で展覧会「LIVE+LIGHT In praise of Shadows『陰翳礼讃』現代の光技術と』」を開催する。
建築関係者にとってはバイブルとされる文豪谷崎潤一郎のエッセイ「陰翳礼讃」の厠、床の間などの家屋、照明、紙、食べ物、能、化粧、女性美など多岐にわたって論じられている文章の中から印象的な6点をテーマに、現代のLED技術を駆使して表現・展示するもの。
展示スペース「+1」では、「陰翳礼讃」から6つの文章を引用し、日本の伝統素材や工芸品を光と闇の世界で演出。展示スペース「+2」では、LIGHT & DISHESがセレクトした照明とオリジナル照明の販売、及び照明関連メーカーとともに、暮らしを豊かにするツールの展示や照明に関する情報を発信している。
9月23日には企画制作した谷田宏江氏(LIGHT & DISHES 代表)と演出ディレクション遠藤豊氏(ルフトツーク代表)のトークディスカッションをYouTubeでオンライン配信する。
公式サイト:https://www.brillia-art.com/bag/
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
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谷崎自身、相当の助平爺だったようで、短篇小説「富美子の足」などはもう笑うしかない足指フェチの作品だ(映画化もされたようだが小生は知らない)。展覧会でも谷崎のそうした変態趣味や世界観が展示されるのではないかと期待して出かけたのだが、残念ながらそのような展示はなかった。
不思議に思ったのは「陰翳礼讃」の英語表記だった。「praise of Shadows」は直訳したらそうなるのだろうが、青空文庫で確認したところ、谷崎の作品に登場する「陰翳」は22か所、「光」は69か所、「闇」は46か所でも分かるように、単なるものの「Shadows」を論じているわけではない。言葉として「日本」が56回、「西洋」が34回、「愚痴」が6回それぞれ登場するように、西洋化する日本古来の文化を惜しむ文明論を披歴したものだし、日本人のものの見方・考え方を論じたものだ。本文中には「礼讃」は一語もでてこない。
私事だが、小さいころ、真っ暗な部屋に蚊帳を吊るし、その中に蛍を放って楽しんだことがある。しんと静まり返った朝方、雨戸の節穴から光が差し込み、障子に逆さ絵が描き出されることを皆さんはご存じか。
「praise of Shadows」は英語圏の人にはどのように響くのだろうか。マフィアの世界を連想するのだろうか。
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
マンション管理適正評価「★5つ」目指す BELCA賞受賞の東急不「我孫子ビレジ」
「我孫子ビレジ」
東急不動産は8月26日、同社が1977年に開発し、東急コミュニティーが約45年にわたり管理・運営を受託している中高層マンション「我孫子ビレジ」の記者見学会を行った。今年のロングライフビル推進協会「第31回BELCA(Building and Equipment Long-life Cycle Association)賞 ロングライフ部門」を受賞したのを受け、長寿命化の取り組みなどを紹介するため。
物件は、JR我孫子駅から徒歩15分、我孫子市つくし野3丁目に位置する敷地面積約42ha、中高層マンションと戸建てがそれぞれ約1,000戸のほか小・中学校、市役所出張所、銀行、ショッピングセンターなどからなる複合開発のマンション棟。居住棟はSRC/PC部材造の11階建て・14階建て2棟と、PC造5階建て17棟の合計20棟994戸。間取りは3LDK(78㎡)~4LDK(104㎡)。竣工は19777年(昭和52年)。設計監理は東急不動産。実施設計は東急設計コンサルタント。施工は東急プレハブ。管理は東急コュニティー。
見学会の冒頭、管理組合法人専務理事・田中裕実氏は概要、維持管理、長寿命化の取り組みなどについて次のように説明した。
計画にあたっては、公団型住宅から一線を画し、最先端の技術・発想で良好な住環境を作りたいという同社若手設計者の意気込みに会社が応え、ヨーロッパの建築物視察成果を取り入れ、工事を担当する東急プレハブを設立し、SRCとPCの混構造としたのが特徴。土地が持っている「環境色彩」をデザインに導入したわが国初の事例でもある。
専有面積は1戸78㎡とし、スラブ厚は約15cm、ふところ厚15cmの二重床。スラブと床の空間に給水管、給湯管、暖房管、ガス管、生活排水管を設置。各室に暖房用パネルヒータが設置されている。
建物の耐震性については、旧耐震ではあるが、アスベストは含まれていないことを確認済み。また、団地在住の構造設計一級建築士が2006年に構造計算書と評定報告を精査した結果、震度6強の地震に対し、崩壊や倒壊に至るには十分な余裕があることを確認。中層棟は現行耐震基準を満たす。
省エネ改修では、2011年に住棟セントラル式給湯設備をボイラー技士24時間常駐から無人化とし、様々な手法を用いて電力消費を76%、燃料消費を38%削減。
2012年には居住棟の全サッシ窓を省エネ改修(Low-E複層ガラス化)するとともに、受水槽・加圧給水設備の改修を行い、消費電力を58%削減。2013年には玄関扉も一新。照明器具のLED化も実施済み。このほか、ライフラインの改修・増強も行っている。
外構の維持管理では、「緑環境は団地の誇り」という居住者の共通認識のもと、提供公園の管理受託、小公園の整備などを行っている。
長期修繕計画では、建て替えずに100年マンションを目指すため長期修繕36か年計画を策定。現行修繕積立金の変更・借入金なしに、36年間黒字を維持することを決議。マンション管理適正化法認定基準を満たす。建物の維持保全には専門知識・経験が必要であることから、専任理事制度を設け、永続的な維持保全を図るため「営繕タスクフォース」を設置している。
専有部の改修では、細則の改定を行い、居住者の希望に対応。現在、リフォーム申請件数は10~20件/年。大半はフローリングだが、間仕切り壁撤去、キッチン位置変更、WIC設置も多い。高層棟はラーメン構造なのでスケルトン改装が可能(壁式構造の中層棟は制約あり)。
居住者の人口構成は現在70~90代が半数近くで、平均年齢は58歳。入居率は95%。管理費などの滞納率は0.4%。
これら長寿命化の取り組みをアピールするため「第31回BELCA・ロングライフ部門」(選考委員長・三井所清典氏)に応募し、①時代の先端を行く高品位な設計・ 建設②基本構造を維持・保全③省エネ改修を実施④今後の長期維持保全計画-が高く評価され受賞した。同社の物件が同賞ロングライフ部門に受賞するのは、1999年(平成3年)の第1回の「東急ドエル桜台コートビレジ」に次いで2回目。第1回の同部門の受賞作はこのほか「世界平和記念聖堂」「服部時計店」(和光ビル)「パレスサイド・ビルディング」(毎日ビルディングに名称変更)「丸ノ内ビルヂング」(2002年に「丸の内ビルディング」に建て替え)だった。
過去、BELCA賞を受賞した集合住宅は6件で、同社の2物件のほかは「コープオリンピア」「大倉山ハイム3号棟~8号棟住宅」「ヒルサイドテラス1期~5期」「たまむすびテラス」。
受水槽ポンプ室(停電時でも7時間給水が可能)
中層棟
田中氏
◇ ◆ ◇
我孫子を取材するのは、5年前の東レ建設・総合地所「The FORESIS(ザ・フォレシス)」以来5年ぶりだ。この物件の記事でも書いたが、昭和50~60年代の前半にかけて、JR我孫子駅を中心に常磐線、成田線では大量のマンション・戸建てが供給され、活況を呈した。多いときは年間1,000戸超が販売された。
バブル崩壊後も、駅北口徒歩圏では2000年竣工の「エールの丘」(482戸)を皮切りに「シティア」(851戸)「グラン・レジデンス」(731戸)「アクア・レジデンス」(424戸)の4棟約2,500戸のほか、この20年間くらいの間に約2,760戸が分譲されている。総じてレベルは高い。
「我孫子ビレジ」は、同社が昭和56に大規模開発「東急ビレジ」の集大成として「柏ビレジ」を分譲開始した際、当時常務の故・安芸哲郎氏(元東急不動産社長-会長)が熱っぽく語ったのを聞いている。その後、他のマンションや戸建てを見学したときにタクシーの中から眺めたことはあるが、敷地内に入ったのは今回が初めてだった。
取材して、こんなに素晴らしい団地が、しかも昭和52年に建設されていたのに驚嘆した。昭和50年代のマンションといえば、3LDKは18坪(60㎡)が主流で、20坪(66㎡)もあれば〝広めの3LDK〟という宣伝文句が通用した時代だ。そんな頃に、前段で紹介した高性能の中高層住宅にチャレンジした同社の進取の精神は刮目に値する。
そのDNAは居住者に引き継がれている。ただ〝100年マンション〟を目指すための課題も見えてきた。緑環境は申し分ないどころか成長段階だ。敷地内にはシンボルツリーになりそうなメタセコイアの高木は30本くらい植わっていた。シラカシなどの常緑樹も多い。井戸水を利用した遊水路もある。
国土交通省「マンション管理計画認定」を取得し、マンション管理業協会の「マンション管理適正化評価制度」への登録を検討中で、田中氏は満点の「★5つ」を獲得できるのではないかと話した。これらは、中古市場で適正な評価を得るに違いない。大きな武器になる。
問題はソフトだ。中古市場での取引額は坪38万円くらいだと業界紙記者から聞いた。これは〝不当〟に安いと思う。緑環境や居住性能の価値の見える化は必須要件で、先にも書いた同駅北側にある徒歩10分圏内の約2,760戸に負けない戦略を構築する必要があるのではないか。田中氏は若者家族向けにWEBなどで情報を発信していくと話したが、管理組合の活動だけでは限界がある。行政や東急リバブル、東急コミュニティーなどの支援が欠かせない。
そして、同社にはかつて全国の街づくりの見本になった〝街づくりの東急〟から〝団地再生の東急〟としてベンチマークとなるよう力を注いでほしい。
明治大学・園田眞理子教授は、同社も参加した一昨年の「郊外住宅地フォーラム」で「(劣勢の郊外住宅地は)逆転満塁ホームランを打つ可能性がある」と語った。その機は熟していると記者も思う。「東急ビレジ」にはその土壌がある。人材の宝庫ではないか。
このコロナ禍でライフスタイルもワークスタイルも劇的に変化している。「人」「地域」「コミュニティー」「多様性」「SDGs」などのキーワードは「団地再生」と極めて親和性が高い。
高層棟はスキップフロア・両面バルコニーを採用
樹形が美しいネタセコイア
遊歩道(右には井戸水による遊水路)
提供公園(維持管理は市から管理組合が受託)
45分も時間超過Zoomオンライン「郊外住宅地フォーラム」に参加者400人(2020/6/6)
もはや価格の問題ではない 東レ建設・総合地所 我孫子で9年ぶりマンション供給(2017/11/16)
「安芸哲郎お別れの会」に1700名が参会(2007/3/14)
大和地所レジ オープンエアリビング・バルコニー キッズデザイン賞受賞
「オープンエアリビング」
大和地所レジデンスは8月24日、同社の「オープンエアリビング」と「オープンエアリビングバルコニー」がキッズデザイン協議会の第16回キッズデザイン賞」を受賞したと発表した。
「オープンエアリビング」は1999年から導入し、2022年8月供給現在で193物件1,500戸超を供給しており、同じように実用新案登録済みの「オープンエアリビングバルコニー」は2006年から78物件3,100戸超の実績がある。双方とも実用新案登録済みだ。
「オープンエアリビングバルコニー」
◇ ◆ ◇
結構なことだ。この「オープンエアリビング」と「オープンエアリビングバルコニー」はたくさん取材している。
いまでも思い出すのは、「オープンエアリビング」を初めて見たときだ。飛びあがらんばかりの衝撃を受けた(物件は確か南武線の中野島)。当時(今でもそうだが)、マンションの1階住戸は日照や通風、見通しなどが悪いことから売れ行きも悪く、その分だけ価格を下げざるのが一般的だが、同社は1階住戸に「オープンエアリビング」を採用し、しかも価格を中層階並みの価格に設定していた。その企画がヒットした。
「オープンエアリビング」と「オープンエアリビングバルコニー」は、マンションの値付け・商品企画に革命をもたらしたと今でも思っている。
◇ ◆ ◇
この日(8月24日)午後1時過ぎ、同社から受賞のプレス・リリースが届いた。その後、同協議会をはじめ旭化成ホームズの「子育て家族の安心と健康をサポートする『スマートクローク・ゲートウェイ』」、ケイアイスター不動産の「みんなの樹と軒遊びのある暮らし」、積水ハウスの「子育て家族の幸せな大空間『ファミリースイート』」・「PLATFORM HOUSE touch」・「みんなの家!未来の家! 積水ハウスの住育 家づくりから学ぶプログラミング」・「WALL BOX」・「エルミタージュクール」・「アートとともだち」・「”自由な子ども達の居場所”こども発達支援センターひゅーるぽん」(同社は合計7作品)などの受賞リリースが送られてきた。(申し訳ないがすべては紹介しきれない)
同協議会のリリースによると、今回の受賞作品は214点で、2007年からの累計応募数は6,168点、受賞数は3,653点。各大臣賞などの優秀作品は9月21日(水)発表される予定だ。
また、今回の応募作品について「コロナ禍では実測の難しいとされる調査研究の応募数が減少したものの、地域社会との交流や自然や人との繋がりを重視した建築関連の作品の応募の増加傾向がみられました。さらに今回もSDGsを意識し、子どもの創造性や自主性をサポートする製品や空間・サービスの開発・取組なども多く見受けられました」とある。
記者もマンションや戸建ての取材を通じ、人や地域と緩やかにつながり、景観や生態系に配慮した商品企画が評価されていることを強く感じている。全作品のなかでもっとも多いのはポラスグループの13作品だが、キッズデザイン賞受賞は同社のマンションや分譲戸建てが好調なのをで裏付けている。
受賞作214点リストを見たが、小生が気に入ったのはオーパス/ブルーパドル の「前・後・裏・表、どこからでも着れる(ママ=ら抜き)服『ぜんぶおもて』」だ。これはいい。小さいころは靴を左右逆さまに、シャツなどのボタンの掛け違い、裏表に着るのは日常茶飯で、ハンガー付きだったこともある。大人になってもパンツを逆さに穿いて困ったことも、酔っぱらって隣家の玄関ドアを叩いたことも、男を女に間違えたこともある(これはわが人生の最大の蹉跌)。今でもパジャマ、シャツなどを裏表で着ることもあるが、生き方として裏も表もないのには自信がある。
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一つ提案だ。以前からずっと思っているのだが、デザインアワードを統一してはどうかということだ。
記者は、「キッズ」があるのだから「シニア」「エルダー」「オールド」があってもいいし、一番いいのは「ユニバーサルデザイン」だと思っている。「グッドデザイン賞」「IAUD国際デザイン賞」「ウッドデザイン賞」など全て「ユニバーサルデザイン賞」に統合し、それぞれ分野ごとに賞を設けたらどうかと思う。あらゆる商品の「デザイン」は「ソリューション」だと考えているからだ。冒頭に紹介したオープンエアリビング・バルコニーは子どもだけを対象にした商品企画ではない。万人向きだ。たくさんアワードがあると、その分だけ権威・価値が薄れるのではないかと心配だ。
また、審査に当たっては学者・先生だけでなく、一般の消費者が投票に参加できるようなシステムも考えていい。審査委員の方だって、作品を評価するのは基本的には書類のみのはずだ。作品そのものを見ないで評価するのは誤った評価をする危険性もはらんでいる。
金町駅前に40階建て約900戸のタワマン 三菱地所・地所レジ・三井不レジ 再開発認可
「東金町一丁目西地区第一種市街地再開発事業」
三菱地所、三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンシャルの3社は8月24日、事業参画しているJR常磐線金町駅前の再開発事業「東金町一丁目西地区第一種市街地再開発事業」の権利変換計画が東京都の認可を受けたと発表した。
プロジェクトは、JR金町駅北口に位置する約3.0haのエリアで、40階建て超高層マンション(約900戸)を整備するほか、低層部に商業施設、区民事務所、バンケットホールなどの公益施設を計画。低層部の屋上には自動車教習所を再整備する予定。今年10月に第1期工事に着手し、全体竣工は2030年度の予定。
完成予想図
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金町駅周辺では、2009年竣工のコスモスイニシア「ヴィナシス金町タワーレジデンス」(476戸)を皮切りに大成有楽不動産「オーベル金町レジデンス」(119戸)、野村不動産「プラウドシティ金町ガーデン」(421戸)、住友不動産「シティテラス金町」(620戸)、同「シティタワー金町」(840戸)、野村不動産「プラウドタワー金町」(190戸)などがこれまで分譲されている。十年余でざっと6物件2,700戸だ。一つの駅圏でこれほど大量供給されたところは武蔵小杉、所沢、新浦安、品川、豊洲、みなとみらい、多摩センター…などあるが、「金町」もその一つか。
価格もうなぎ上りだ。当初は坪単価は200万円くらいだったのが、今では坪350万円だ。今回の再開発タワーマンションは〝もうはまだなり〟-もっと高くなるのか。街並みは理科大キャンパスが完成したころから一変している。
竹中施工で公園・大学に隣接 住友不動産「シティタワー金町」(2014/9/1)
大成有楽不動産 「金町」エリアで2物件224戸 単価は割安感あり(2014/6/24)
入居者の声を商品企画に生かした 野村不動産「プラウドシティ金町」(2008/11/25)
「1人10色使える」ミレニアル世代のニーズに対応 三井不レジの賃貸「門前仲町」
「パークアクシス門前仲町テラス」
三井不動産レジデンシャルは8月23日、入居者のライフスタイルやワークスタイルなど目的に合わせて利用できる「Mixed PLACE」をコンセプトにした賃貸マンション「パークアクシス門前仲町テラス」のメディア向け竣工見学会を行った。門前仲町駅から徒歩10分の全189戸で、1階に約200㎡の共用施設を、屋上には約55㎡の屋上テラスをそれぞれ設置しているのが特徴。
物件は、東京メトロ東西線門前仲町駅から徒歩10分、江東区古石場二丁目に位置する7階建て全189戸。専用面積は25.00~40.75㎡、(1R~2DK)、月額賃料は11.4万円(坪賃料1.5万円)~20.9万円(同1.7万円。設計・施工は川口土木建築工業。竣工は2022年7月29日。入居開始は8月25日。募集状況は好調という。
「Mixed PLACE」は、IT技術の進化やデジタル化、新型コロナ禍による〝家ナカ時間〟が増加したことで、ライフスタイル、ワークスタイルが多様化する一方、プライベート(自宅)と仕事(職場)の垣根が低くなり、オン・オフの切り替えや運動不足などの課題が浮き彫りになってきていることに対応するもので、「住まう場としての 1st PLACE」、「働く場としての 2nd PLACE」、「くつろいだり、リフレッシュしたりす場としての 3rd PLACE」の機能を融合させたのが特徴。屋上には約55㎡の屋上テラスを設置し、低中木や芝生など緑を配している。
1階の約200㎡には、共用施設として①リラックスゾーン②コンセントレーションゾーン③アクティブゾーン④リフレッシュゾーン-の4つのゾーンを設け、用途や気分に応じて機能や空間を利用できる環境を整えている。
見学会で同社賃貸住宅事業部 事業グループ室長・神谷正樹氏は、「『Mixed PLACE』は、主な賃貸入居者層である20~30代のミレニアル世代の多様なライフスタイル、ワークスタイルに応えられる商品企画としてコロナ前から検討してきた。1st PLASE、2nd PLASE、3rd PLASEすべてを揃えた。十人十色どころか1人10色使えるものにした」などと語った。
同社はまた、同様のコンセプトの門前仲町駅北口から徒歩6分、江東区役所に近い12階建て「パークアクシス東陽町レジデンス」(250戸)も8月31日に竣工させる。専用面積は25.19~50.33㎡。設計・施工は植木組。
共用部分
共用部分
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賃貸マンションはよく分からないのだが、分譲マンションと同様、大規模物件は共用部分を充実させることがテーマになっているようだ。この前見学した同社の「パークアクシス錦糸町スタイルズ」もそうだったが、書棚には約130冊の書籍が備えられていた。今後も毎月10~15冊増やしていくのだそうだ。月に10冊読むとして、過不足ない冊数だ。
芝生や低中木が植えられているスペースには出られず、飲酒・喫煙が不可なのは残念だが、屋上テラスもなかなかいい。
月額賃料は高いような気がしたが、駅から現地までの途中にある大和地所レジデンス「ヴェレーナグラン門前仲町」(75戸)は期間72年の定期借地権付きで坪単価は410万円。それでもよく売れているのだから、駅から徒歩10分の賃貸で坪賃料1.5万円というのは相場なのか。
もう一つの「パークアクシス東陽町レジデンス」は駅に近く、中心市街地なので分譲にしたらよく売れるのではないかと神谷氏に聞いたら、「敷地形状がやや不整形で分譲には不向き」とのことだった。
募集状況は、何をもって「好調」なのかよく分からないが、知らないことは聞かないことだ。文字通り受け取ることにした。
1R
屋上テラス
広尾駅近の定借「南麻布」/聖心女子大が目の前の「広尾」販売へ 三菱地所レジ
「ザ・パークハウス南麻布」
三菱地所レジデンスは8月22日、期間50年の定期借地権付きマンション「ザ・パークハウス南麻布」のメディア向けプロジェクト発表会を開催した。日比谷線広尾駅から徒歩2分の10階建て全26戸で、2階住戸の階高を標準階の約1.5倍の4.5mにした「Class1.5プラン」を採用しているのが特徴。
物件は、東京メトロ日比谷線広尾駅(3番出口)から徒歩2分、港区南麻布5丁目の第一種住居地域(建ぺい率70%、容積率400%)、絶対高さ35m高度地区に位置する敷地面積約414 ㎡の10階建て全26戸。期間50年の一般定期借地権付きで、専有面積は43.84~93.00㎡、価格は未定。完成予定は2023年12月上旬。施工は森本組。販売開始予定は10月下旬。これまでに1,400件の反響を集めている。
現地は外苑西通りに接道。敷地は宗教法人の所有地。対面は広尾学園。7階以上からは有栖川宮公園が望める立地。主な基本性能・設備仕様は二重床・二重天井、標準階高約3m、ディスポーザー、食洗機、御影石・クオーツストーンキッチンカウンター(選択制)、グローエ水栓など。
最終的なプランは確定していないようだが、2階の約60㎡の住戸の階高を約4.5m確保した「Class1.5プラン」が特徴の一つ。この階高を利用した吹き抜け空間のLDKを外苑西通り側に設置し、居室の下段は収納スペースとし、建築基準法92条の規定により専有面積に含まれない天井高1.4m以下のロフトを玄関・土間スペースの上部に設けている。
発表会で同社執行役員パートナー事業部長・林祐輔氏は「2階住戸の階高を約4.5mのスキップフロアとし、LDKは吹き抜け空間、居室の下には収納、ロフト付きとするなど多様なライフスタイルに応える新しい住まい心地を提案した」とあいさつ。
また、同社建築マネジメント部主任・上原那奈氏は「最近の地価・建築費の上昇などでマンションの専有面積圧縮が進み、1970年代に流行した田の字型プランが主流になっているが、デベロッパーの役割として(商品企画などを)進化させる必要があると考え、ワーキンググループを立ち上げ、今回のプランを提案した。三菱地所ホームとも連携して専有面積に算入されないロフトを採用した」と話した。
発表会が行われたのはリニューアル工事が完了した大手町ビル1階の「大手町ギャラリー」で、今回のマンションのほか「ザ・パークハウス広尾」「ザ・パークハウス自由が丘フロント」など都心物件の販売を行っていく。
「Class1.5プラン」イメージ図(手前がLDK。左端の階段がロフトに続く。その左隣のドアの奥が土間・玄関。右上が居室(広さは4畳大か)、右下が収納。イメージ図ではよく分からないが、右端のキッチンの奥に居室に上がる階段がある)
「Class1.5プラン」
「Class1.5プラン」洋室
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まず、価格について。同社は「価格は未定」としているが、記者は立地条件、敷地形状などから総合的に判断して坪600万円~650万円が妥当と判断した。(2007年に分譲された同社と三井不動産の期間50年の定借マンション「広尾ガーデンフォレスト」670戸は坪533万円だったが、物が違う)
外れたらごめんなさいという他ないのだが、今回の発表会で嬉しかったのは、上段で紹介したように、上原氏が最近のマンションの質の退行に言及したことだ。記者も同感だ。最近の間取りプランは40年も50年も昔に逆戻りしている。今回の「Class1.5プラン」は絶対高さ規制35mと関係がありそうだが、ユーザーに支持されるはずだ。コンセプトルームもよくできていると思う。
ただ、この種のプラン提案は皆無ではない。最近では今年3月に竣工した大和地所レジデンス「ヴェレーナグラン赤羽北フロント」があるし、ヒューマンランドもかつて分譲したことがある。一時期は「クロス・メゾネット」も流行った。
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記者は、「南麻布」よりもむしろ「ザ・パークハウス広尾」に注目している。広尾散歩通りから一歩入った6階建て22戸という小さな規模だが、道路を挟んだ対面が聖心女子大のキャンパスという立地が最高にいい。キャンパス内の森を眺められるのは上層階に限られるかもしれないが、住むなら「南麻布」よりこちらだ。坪単価800万円でどうだろう。東大赤門を睥睨する野村不動産「プラウドタワー本郷東大前」の記事も添付したので比較していただきたい。
最後に同業他社とメディアに一言。この日、発表会に参加した報道関係者は約20人とか。先日のあるデベロッパーの極めて優れたマンション見学会の参加者は小生を含めて4人だった。コロナ禍でもきちんと情報を発信する三菱地所はさすがだが、同業他社もアピールできる案件はたくさんあるはずだ。メディアもメディアだ。声が掛からなければ取材しない、しかも大手だけ。流れに身を任す病葉と一緒だ。これでは刻々と変わる市場動向や消費動向を把握することなどできない。事大主義も甚だしいといったら失礼か。
現地
以上3点は取材の帰りに立ち寄った最高に素晴らしい「Marunouchi Street Park 2022 Summer」
広尾駅前のマンション建て替え サンウッド「広尾」販売順調(2019/4/2)
究極の億ション 三井&三菱 「広尾ガーデンフォレスト」(2007/2/23)
天井高3m超、20畳大の床下収納など 大和地所レジ「赤羽北フロント」竣工見学会(2022/3/24)
天晴れ!大和地所レジ 仕入れの妙 商品企画にも生かす「赤羽北フロント」(2020/9/9)
外構・植栽が素晴らしい積水ハウス・相鉄不 低層の 「グランドメゾン武蔵野」(2009/1/16)
東大を睥睨する野村不動産「プラウドタワー本郷東大前」(2010/6/10)
丸の内仲通り ウォーカブルな街づくり「Marunouchi Street Park 2022 Summer」(25022/8/3)