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「Be GRACE(ビー・グレイス)南流山 紡ぐ家」(庭にフェンスがないのが分かる)

 ポラスグループの中央グリーン開発は8月9日、南流山の土地区画整理事業地内の分譲戸建て「Be GRACE(ビー・グレイス)南流山 紡ぐ家」のメディア向け見学会を行った。駅から徒歩8分の全4棟で、〝ウチ・ソト・トナリ〟を緩やかにつなぎ、さらに地域とのコミュニティにも配慮した意欲的な商品企画が光る。

 物件は、JR・つくばエクスプレス南流山駅から徒歩8分、流山市南流山2丁目流山都市計画事業木地区の第一種低層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率120%)に位置する全4棟。土地面積は約162㎡(49坪)、建物面積は約101㎡(30坪)~約116㎡(35坪)、価格は6,980万~7,480万円。施工はポラテック。構造は木造2階建(在来工法)。建物は完成済み。引渡予定は2022年11月10日。

 現地は、最低敷地面積が135㎡と定められている土地区画整理事業地内の一角で、戸建てやアパートなどか建ち並ぶ低層住宅街。保育園・幼稚園が徒歩3分、小学校が徒歩8分、中学校が徒歩5分。スーパーなどの3つの商業施設が徒歩10分圏。このほか3つの公園が徒歩10分圏内。

 全体敷地はそれぞれ6mの北側と西側道路に接道。4棟とも①タイルテラス・モダン和室付き②2階バルコニーを内側に取り込んだ主寝室-ランドリールーム-洗面-浴室一体型③中庭に面したリビングと多目的ルーム付き④上部吹抜けの広い土間付き-の個性的な異なるプランなのが特徴。

 主な設備は、2台カースペース、天井高2.7m×サッシ高2.2mリビング、階段ステップ15段、食洗機・浴室暖房乾燥機・床暖房・エコワン・電動シャッター・宅配ボックス、挽板・無垢材多用など。

 販売・申し込み状況は、5月27日から資料請求を受け付け、これまで反響は約300件。反響者の居住地内訳は流山市26%、松戸・柏市13%など千葉県内が48%、都内は29%。来場者は約40組で、夫婦、または小さいこどものファミリーがほとんど。7月30日から販売開始し、3棟が成約済み。成約者は都内居住者が中心。

 同社設計部部長・鎌田浩之氏は、「当初は5棟も考えたが、コロナ禍でお家時間が増え、家の中に閉じこもり、家と外の関係が分断されているのではないかと強い危惧を抱いており、中間領域を設け内と外、更には隣の家や地域・街とゆるやかにつなぐように設計した。プランは万人受けするものではなく1棟1棟異なるものにした。設備仕様レベルも引き上げ、感動していただけるよう完成販売にした」と企画意図について話した。

 同社ブランディング課プロモーションチームリーダー・萩原誠氏は、「購入予算を引き上げて購入を検討された方と、最初から購入をあきらめた方に分かれた。おおたかの森や南流山にはこの種の分譲戸建ての供給事例はほとんどない」と語った。

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モデルハウス(1号棟)

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モダン和室(正面の南側の窓を下側に、しかも小さくし、壁は外壁と同じような色にしているのが味噌)

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 いつものように、現場に着くまで価格はいくらかを考えた。土地は30~40坪で、価格は4,000~5,000万円台だろうと。これなら〝母になるなら、父になるなら〟の流山だから売れるのは当然だろうと。

 予想はものの見事に外れた。区画整理地であることを忘れていた。予想は外れたが、鎌田氏と萩原氏の話を聞いて納得もした。都内などでは20坪そこそこの敷地の、緑などまったくない長屋のような戸建てが今も昔もたくさん分譲されている。鎌田氏は「家と外の関係が分断されているのではないか」と語ったが、記者もそう思う。

 ところが、同社グループの春日部の調整区域、東浦和、新松戸、みのり台などの分譲戸建ても、この前取材した旭化成ホームズの賃貸併用住宅も同じだ。この種のプランを受け入れるユーザーは一定数存在するのは間違いない。みんな〝隣近所や地域とつながりたい〟という潜在的な意識を持っている。

 それを顕在化させるため、隣家との間にフェンスを設けずピンコロによる境界線とし、2・3号棟の間にポールベンチを設けたデザインは、規模は小さいけれども社会課題を解決しようという意義は大きい。デザインとは、単なる意匠デザインではなく様々な課題を解決するソリューションであることを分かりやすく伝えた。この企画に拍手喝采だ。

 取材の案内が届いたときは、断ろうかとも思った。年間3,000戸超も販売する同社グループのたかが4棟の販売現場が好調だからといって、記事にする「か・ち・も・な・い」し、この日は夕方から横浜のマンションの取材が入っていた。移動時間は徒歩を含めて東京-名古屋間と同じだ。炎天下で疲れるだけだと。

 しかし、〝取材にNOは言わない〟現場主義をモットーとする記者だ。受けることにした。大正解だった。得るものはたくさんあった。

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吹抜け付きの土間空間(4号棟)

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2階にランドリールームを設けた2号棟(天井は開閉できる天窓を設け、階下から吹抜けを通じ風が抜ける工夫も凝らされている。手前の南側の黒い部分は敢えて壁にしているのも特徴)

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2号棟と3号棟のポールベンチ(フェンスはなく、南側にも抜けている)

全68戸にピアキッチン装備 歩留りは実に3割 ポラス中央住宅「南流山」(2022/6/24)

 マンションの管理状態を★の数(★5つから★なしの6段階)で評価するマンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」がスタートし、東急リバブルの不動産情報サイト「中古マンションライブラリー」が表示第一号として先に掲載を開始した。

 掲載された19物件のうち★5つ(特に優れている)は6物件で、野村不動産が分譲した「プラウドタワー武蔵小杉」「プラウド大阪同心」「プラウド葛西」の3物件が半数を占めた。そこで、野村不動産グループの取り組みについて聞いた。次のような回答があった。

 マンション管理事業の野村不動産パートナーズは、マンション管理適正評価制度だけでなく、管理計画認定制度も合わせて2022年1月から、同社が管理している全物件の管理組合理事会に制度の説明を開始し、3月までに完了。4月以降は改めて両制度の内容・活用するメリット・登録申請フローなどの説明を行っている。

 中古マンションの仲介を担当する野村不動産ソリューションズは、制度の拡大をにらんで不動産情報サイト「ノムコム」への掲載を検討している。

 マンション管理協は、向こう3年間で12,000組合の登録を目標に掲げている。

東急リバブル 「マンション管理適正評価制度(★の数)」評価掲載スタート(2022/8/3)

 

 千代田区の神田警察通りⅡ期道路整備計画の議会議決は無効であるとする住民監査請求が先に棄却された千代田区住民は8月8日、道路工事を議決した議会決議は区の職員の虚偽答弁によるものであり、街路樹伐採は区の財産を毀損し、一連の行為は行政の裁量権を逸脱するものであるとして、千代田区を相手取って工事の中止などを求める住民訴訟を東京地裁に提起した。同様の訴訟は今回で3件目。

 原告の住民は今年5月16日、千代田区議会が「神田警察通り二期自転車通行環境整備工事」議案を議決し、工事業者と交わした請負契約は地方自治法違反であるから工事を中止し、公金支出を差し止めるよう求めた住民監査請求を行っていた。これに対し、住民監査委員会は7月14日、議決の違法を基礎づけるような瑕疵は存在せず、議決に基づき締結された工事契約は、違法な契約の締結であるとはいえなとして、住民の訴えを棄却した。

 今回の提訴について、原告女性は「伐採に反対するのは、自分の故郷を守りたいからです。区は『つなぐまち神田』として、『まち』『緑』『歴史』『文化』『人』のつながりを通して、まちの個性と魅力を価値へとつなげるまちづくりを目指すとガイドラインにも記載しています。しかし、環境まちづくり部は、住民の意に反して神田警察通りのイチョウを伐採することで『まち』『緑』『歴史』『文化』『人』を壊しただけでなく、私たち住民の関係性も心も全てを壊しました。街に『賑わい』があれば、地域の分断はどうでも良いのでしょうか。『人中心のまちづくり』を謳っていながら、なぜ地元住民の反対を押し切ってまでイチョウの生命を奪うのでしょうか。私たちは道路拡張工事に反対しているのではなく、一期区間のようにイチョウを残して道路整備をしてほしいだけです。なぜその方法を模索しないのでしょうか。私たち住民の決意も虚しく2本の伐採が強行され、依然伐採中止の決断がなされず毎夜の木守りを余儀なくされていること、住民間の溝が深まり続けていくこと、住民の意思が反映されないまちづくりが行われること、その全てに終止符を打つべく今回住民訴訟の提訴に踏み切った次第です」とコメントを寄せている。

 同様の訴訟は他にもあり、地元住民ら10人は5月6日、街路樹伐採工事は違法として、樋口高顕区長を相手取り、工事代金の支払いの中止などを求める国家賠償請求訴訟を東京地裁に提起している。第1回の公判が7月12日に行われた。

 もう一つは、7月11日、区民20人が工事費の支出差し止めなどを区長に求める住民訴訟を東京地裁に起こしている。

 今後は、国家賠償請求訴訟については単独で、7月11日の住民訴訟と今回の住民訴訟を一つとして公判される模様だ。 

 ◇      ◆     ◇

 今年7月11日に行われた千代田区議会の企画総務委員会の議事録(未定稿)を読んだ。神田警察通り道路整備に関する早期実施、設計変更を求める陳情について論議するのが主なテーマだが、イチョウ並木の伐採に反対する関係者の神経を逆なでし、挑発するかのような区の部課長の発言が目立った。

 「本会議でもご答弁申し上げたとおり…道路の附属物である街路樹の存在が『やむを得ない場合』には該当しないものと認識してございます」(須貝基盤整備計画担当課長)「樹木は、街路樹は道路附属物でございますので、先ほど課長から答弁申し上げたとおり、道路附属物として更新することが可能ですので、それをしていくということが基本だというふうに考えています」(印出井環境まちづくり部長)などと、約1時間の論議の中で6回、念仏のように「街路樹は道路の附属物」と語った。

 街路樹が「道路の附属物」というのは法律用語ではあるが、伐採してしまえば元に戻らない、代替えができない性格を帯びている。今回、是非が問われているⅡ期工事のイチョウ30本は樹齢60年の成長段階にある樹木だ。これまで何度も書いてきたので繰り返さないが、更新が予定されているヨウコウザクラと比較してその効用・価値は全く異なる。

 イチョウを伐採することは、企画総務委員会と本会議で多数決によって議決はされているが、議決に瑕疵があったことは企画総務委員会の委員長自身が認めている。

 また、議事録では一方では「原則」を貫き、他方では「原則」を無視し、さらにまた、関係者の「声」をそのまま取り入れ、学識経験者の「声」は聞き置くだけとするなど一貫性・公平性に欠く発言を部課長は繰り返した。

 記者は先日、三菱地所などが推進する社会実験「Marunouchi Street Park」(MSP)を取材した。素晴らしい取り組みだ。このオープニングセレモニーに出席した樋口高顕千代田区長は「Marunouchi Street Parkなどの先駆的な事例を参考にさせていただき…わが国だけでなく、世界に誇れるウォーカブルな街づくりを進める」と挨拶した。

 国土交通省が令和4年3月1日にまとめた「多様なニーズに応える道路 ガイドライン(案)」でも、合意形成及び事業推進のためには、「『つかう側』の住民・事業者と『つくる側』の行政等が一体となった協働体制を早い段階から構築することが重要である。構想段階では地域住民や関係する事業者等に対し、まちづくりの将来ビジョン又は道路の将来像の実現に向けた基本方針を発信して、取組みへの理解を得ることが重要である」としている。

 今回の区の担当部課長の答弁は、大丸有の街づくりと整合しないのは明らかだし、国の方針に背馳する。〝苦渋の判断〟でもって工事着手を決断した区長と議会の多数派の権力におもねる、卑屈で狡猾な小役人根性を露呈したと言ったら失礼か。民主主義は所詮数の暴力か。

戦争は平和なり

自由は隷従なり

無知は力なり

 (ジョージ・オーウェル「一九八四年」)

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 今回の一連の住民訴訟に接し、記者は五月雨式に住民が行政を訴えるのもいいが、いっそのこと街路樹を原告にして集団訴訟を起こしてはどうかと思う。

 過去にそのような事例がないわけではない。1995年、原告を特別天然記念物の「アマミノクロウサギ」とする訴訟がある。裁判は負けたが、生物多様性を重視する意義は認められた。その後、同様の裁判は各地で提起された。米国では街路樹の様々な価値を定量化するモノサシも一般化しているようだ。

雨にも負けず

風にも負けず

雪にも夏の暑さにも負けぬ

丈夫なからだをもち

慾はなく

決して怒らず

いつも静かに笑っている

 全国の街路樹と、街路樹をこよなく愛す皆さん、団結せよ!

丸の内仲通り ウォーカブルな街づくり「Marunouchi Street Park 2022 Summer」(2022/8/3)

イチョウ伐採に「精神的苦痛を受けた」 住民訴訟の第1回公判 原告が意見陳述(2022/7/12)

「見事」「素晴らしい」監査員弁護士 女性陳述を絶賛 街路樹伐採 住民監査請求(2022/6/11)

 

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杉原氏

 マンション設計・コンサルタント会社のトータルブレイン取締役副社長執行役員・杉原禎之氏(59)にほぼ1年ぶりにお会いし、今年前半の首都圏マンション市場について話を聞いた。

 同社が発行した「2022年前半戦の首都圏マンション市場検証 及び後半戦以降の課題と展望」レポート(Vol.225)には、1~6月の供給量は前年同期比4.2%減の12,716戸で、初月契約率は前年同期比1.2ポイント減の72.1%、平均坪単価は前年同期の309万円から4.4%アップの323万円とある。これらは不動産経済研究所のデータに基づくもので、長谷工総合研究所の「CRI」8月号と同じだ。

 この基礎データについて。不動研は1戸30㎡未満のワンルームや1棟売り、非分譲住戸などを調査対象外(関西圏は30㎡未満を含む)にしているが、住宅着工動向からして「分譲マンション」はこの倍はあるはずで、捕捉率は50%だ。残りの部分はどうなったかも追跡調査すべきだとは思う。

 この問題はさておき、同社レポートの真骨頂は、それらのマクロデータだけではなく、直接各社にヒアリングし、好不調、人気の要因などを公表している点だ。ヒアリング対象となった新規発売物件は270物件で、そのうち90.4%に当たる244物件の回答を得ているから、ほぼ全物件を網羅していることになる。

 杉原氏自身も、毎日3~4社、毎月約50社の幹部や担当者と定期的に情報交換をしている。われわれ業界紙の記者が知りえない、生々しい現場の情報を把握しているのは間違いない。コンサル会社の強みだ。クライアントにとっても極秘情報が外にでる心配がないから、本音を語れる。

 ここでは、頂いた貴重なデータを公表することはしないが、一つだけ、杉原氏の了解を得たので、レポートの雑感(総括)をそのまま紹介する。次のようにある。

◇        ◆     ◇

 2022年の前半戦の首都圏マンション市場は、概ね昨年の好調継続ということになるが、ポイントには割安な郊外マーケットの復調があげられる。所得の上昇が難しい中、都心中心にマンション価格は上昇を続けており、賃貸を脱出したい一般層は中古や割安な郊外マンションを検討せざるを得ず、郊外物件の販売が好転した(23区でも割安な練馬区や城北エリアの販売が好転)。今年前半の売れ行きの特徴の一つに、アクセスが良い割に意外と割安なエリアでの販売好調事例の増加があげられる。

 一次取得層は予算が限られている中、検討エリアを広げてマンションを探し始めている。そしてその際、重要視しているのは、都心アクセスと割安感。そしてその良好なアクセスにも関わらず割安なエリアは、デベロッパーの沿線・エリア(地位)評価が低く、供給側に人気がないエリアである。

 エンドユーザーは、エリアの持つ過去のネガティブなイメージよりも、将来の発展性に期待し、先取りする(しかも過去のイメージはほとんど知らない)ため、デベロッパーサイドも、これまでのエリアイメージにとらわれることなく、アクセスの良さや、将来性が感じられる穴場の路線・エリアを開拓していくことが必要なのではないだろうか。

 デベロッパーは現在4つの不安要素を抱えている。①建築費の更なる上昇(人件費・建築資材・設備の高騰、ZEH-M対応によるコストアップ等)②地価の更なる上昇(マンション用地不足)③住宅ローン金利の上昇④物価高騰と生活防衛意識の高まりによる顧客マインドの低下-である。

 そして、それらを乗り越えるためには、エンドユーザーのニーズ(アクセスと割安感)にもっと応えられる新しい視点での供給戦略が必要であり、そのためには、これまでの固定観念は捨てて、沿線・エリア評価の見直しを行っていく必要があるのではないだろうか。

◇        ◆     ◇

 記者もほぼ同じ考えだ。住宅ローン金利上昇懸念だが、これは懸念が杞憂に終わることを願いたい。仮に金利が0.5%でも上昇したらわが国の経済社会はパニック状態に陥る。住宅購入どころではない。変動金利で借りている人は立ちどころに返済に窮す。ローン破綻が激増し、経営が行き詰まるデベロッパーもリーマン・ショック時の比ではないはずだ。黒田日銀総裁もそのような愚は犯さないと思う。

 さて、問題は、雑感がいう「将来性が感じられる穴場の路線・エリア」の開拓と、「エンドユーザーのニーズ(アクセスと割安感)にもっと応えられる新しい視点」をどう構築するかだ。

 不動産に穴場など存在しないし、現時点で新しい視点などどこも持ち合わせていないのではないか。売れ行きがいいのを背景に、利益を確保するため基本性能・設備仕様レベルをどんどん落とし、競合物件が高値追求してくれることを願い、漁夫の利を得ようとしているのではないか。

 強いてアクセスがよく、割安感のあるエリアをあげるとすれば、マンション空白区ではないか。直近の事例では、日鉄興和不動産・三菱地所レジデンス「リビオタワー羽沢横浜国大」がある。過去10年間にさかのぼって供給が1件もない首都圏駅は100駅を下らないのでは。舎人ライナーを〝穴場〟とする人もいるが、交通利便性よりも緑環境を重視する小生は勧められない。

 他では、小生が注目しているのは東京駅から30分圏内の京葉線南船橋だ。ららぽーとがあり競馬場もある。供給はいつか分からないが、三井不動産レジデンシャルがマンションを分譲する。利便性から言えば坪350万円でも安いと思うが、そんな高値にはならないはずだ。

 もう一つは、現在は地区計画によって居住が不可の新木場だ。規模は皇居より広い151haだ、地区計画を変更し、インフラも整備して複合都市を建設することになるのはそんな遠い将来でもないような気がする。新木場駅から東京駅までは10分だ。

 新しいサービスでは、三井不動産レジデンシャルの大規模修繕工事を長周期化することで、運用段階のライフサイクルCO2排出量を約38%削減する取り組みと、入居者が読み終えた本を次の読み手に届けるサービス「循環するライブラリ」に注目している。基本性能・設備仕様の退行を補って余りある価値があると思う。

 ZEH、全館空調、樹脂サッシは差別化の必須要件になるはずだ。

入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」 三井不レジ「文京本駒込」(2022/8/6)

駅1分の利便性・資産性受けたか 県外が5割 日鉄興和「羽沢横浜国大」好調スタート(2022/6/25)

「しつこく繰り返し」仕上げる月例レポート トータルブレイン副社長・杉原禎之氏(2021/8/31)

 

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「レーベン福岡天神 ONE TOWER」

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  都市圏別マンション着工 PDF表

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 わが業界もすっかり夏休みモードに入ったようだ。長谷工総合研究所の「CRI」8月号は首都圏と近畿圏の「分譲マンション市場動向」を特集にしており、コンサルトント会社のトータルブレインも20ページにも及ぶ「2022年前半戦の首都圏マンション市場動向 及び後半戦以降の課題と展望」と題するレポートを発刊した。これらについては機会を改めて書くことにして、国土交通省の住宅着工のマクロデータから、マンション市場について考えることにした。

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 過去10年間の分譲住宅の着工戸数そのものは25万戸前後で推移しているが、分譲マンションの比率は漸減しており、2021年度は41.4%まで減少しており、2012年度より8.3ポイント下落している。地価・建築費上昇などによる適地難が背景にありそうだ。その一方で、分譲戸建てがメインの飯田グループ、オープンハウス、ケイアイスター不動産などが価格の安さを武器に全国展開を強化している。

 都市圏別では、首都圏マンションは2012年度の約7.2万戸から2021年度は約4.9万戸に、2012年度比31.8%減少。分譲住宅全体に占める割合も2012年度の54.4%から2021年度は45.3%と9.1ポイント下落し、過去10年間で最少を記録した。

 中部圏のマンションは増加傾向にあり、全国に占める割合は2012年度の5.5%から2021年度は8.9%へ伸びている。圏域に占めるマンション比率はこの10年間ほぼ横ばい、30%前後で推移している。

 近畿圏のマンションは年度によって増減が目立つが、全国着工に占める割合はほぼ20%台の前半、圏域に占めるマンション割合は50%台の前半でそれぞれ推移している。

 その他地方の分譲住宅は増加傾向にあり、2017年度に6万戸台に乗ると、2020年度は約5.9万戸と6万戸を下回ったが、2021年度は約6.7万戸と2012年度比48.1%増加している。マンションも年度によって多少の増減はあるが、2021年度は過去10年で最多の約2.3万戸となり、全国に占める割合も過去10年間で最高の22.5%ととなり、近畿圏を抜いた。圏域に占めるマンション割合もほぼ中部圏を上回っている。

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 さらに過去5年間(2017年度~2021年度)に絞って、マンション着工動向を見た。

 トップはもちろん東京都。5年間トータルで17,056戸となり、全国着工戸数550,526戸のうち31%を占めている。ただ、着工戸数の減少傾向は続いており、2022年度は2021年度の29,216戸を下回る可能性が大きい。用地難と価格上昇などが原因と思われる。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)は5年間合計で277,771戸となり、全国の50.5%を占めている。

 2位の大阪府は5年間合計78,633戸で、東京都の46.0%。近畿圏(大阪・滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山)合計は119,659となり、全国の21.7%となっている。

 3位は神奈川県の57,794戸、4位は愛知県の38,062戸。中部圏(愛知・静岡・岐阜・三重)は48,575戸で、全国比8.8%。3大都市圏の合計は446,005戸で、全国に占める割合は81.0%となっている。

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「HIYORI オーシャンリゾート沖縄」

 九州勢の着工増が目立っている。福岡県の5年間の着工戸数は約26,000戸で、埼玉、千葉、兵庫より上位の堂々5位に入っている。

 着工増を象徴するのが、記者も見学取材したタカラレーベン「レーベン福岡天神 ONE TOWER」(153戸)だ。同社の創業50周年記念物件で、圧倒的な人気を呼んでいる。坪単価は書かないという約束なので、紹介できないのは残念だが、過去の博多駅圏の最高値を更新した。

 「福岡天神」が高値更新したことで、他の物件に好影響を与えているのか、西日本鉄道・大和ハウス工業「ブライトクロス博多」(183戸)は、2021年10月1日~2022年3月31日の成約戸数120戸は、九州で分譲された新築分譲マンションの中で最多と、ホームページに公表している。

 リゾートマンション・分譲ホテルなど首都圏の富裕層にも人気が高い沖縄県は13位で、熊本県は16位、長崎県は19位、鹿児島県は20位、大分県は21位。過去4年間は年間平均231戸だった宮崎県も2021年度は673戸と3倍増に近い戸数を着工し31位に浮上した。

 沖縄県では、サンフロンティア不動産の分譲ホテル「HIYORI オーシャンリゾート沖縄」(203室)が今年3月までに竣工完売した。坪単価は350万円だった。

 熊本県では、タカラレーベン西日本は7月29日から熊本市の駅前再開発街区に、ランドマークトなる15階建て3棟構成の「レーベン熊本駅レクシア」(全167戸)の分譲を開始した。坪単価は分からないが、300万円近いのではないか。

 長崎市の中心市街地活性化事業の玄関口に位置する大京・穴吹工務店・三菱地所レジデンス・エヌ・ティ・ティ都市開発・JR西日本プロパティーズの5社JVの26階建て「ライオンズタワー新大工町」(240戸)もホームページを見た限りでは販売は好調のようだ。

 住友不動産は8月12日、宮崎市内過去最大級のマンション「シティテラス宮崎」第1期29戸の登録申し込みを受け付ける。JR宮崎駅から徒歩5分の15階建て全204戸。第1期の専有面積は70.14~75.30㎡、価格は3,180万~5,080万円(最多価格帯3,500万円台)。竣工予定は2024年2月中旬。施工は穴吹工務店。

 同社関係者によると、市内郊外部の一戸建てに住んでいるシニア層の〝都心回帰〟需要を取り込んでいるようだ。

 どうして九州地方のマンション着工が増加しているのか。頻発・激甚化する自然災害や、コンパクトシティ・中心市街地活性化事業などの取り組みなどと関連するのかどうか詳細な分析が必要だ。

 3大都市圏以外では、指定都市を抱える広島県(広島市)が9位、宮城県(仙台市)が12位、岡山県(岡山市)が15位、新潟県(新潟市)が25位にランクされている。

 他では、過去4年間の年間平均は431戸だった茨城県が2021年度は1,405戸に増やし18位に浮上。現在、西日本鉄道・東レ建設・長谷工不動産の3社JV「つくばウェルビーイングプロジェクト」(569戸)や名鉄都市開発「メイツつくば」(166戸)などが分譲されている。

 最下位の福井県は、過去4年間で154戸しかなかったが、2021年は308戸が着工された。タカラレーベン「レーベン福井二の宮CROSS FRONT」(84戸)のほか、福井駅から徒歩4分の28階建て再開発のコスモスイニシア「ザ・福井タワー イニシアグラン」(106戸)が着工増に寄与しているようだ。

 ブービーの山梨県だが、タカラレーベンは、甲府市内の一等地・丸の内一丁目に位置する岡島の百貨店跡地を取得し、28階建て約360戸の商・住複合タワーマンションを建設すると先に発表した。竣工予定は2028年。 

単価の安さに驚愕 立地よく設備仕様レベル高い 駅圏最大級の野村不他「金沢」287戸(2022/7/30)

穴吹工務店 「サーパス」最大級の「新潟万代」329戸 市内初のZEH-M仕様(2022/8/1)

福岡の最高峰 第1期100戸 圧倒的な人気 タカラレーベン50周年「福岡天神」(2022/3/15)

北海道最高峰は坪415万円 大和ハウス他「ONE 札幌ステーションタワー」始動(2022/2/8)

サンフロンティア 所有と投資を両立させたホテルコンド「沖縄」開業 販売も順調(2022/2/23)

坪400万円でも人気 第1期165戸販売完了 総合地所など「NAGOYA the TOWER」(2021/10/20)

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「循環するライブラリ」

 三井不動産レジデンシャルは8月5日、古本買取・販売を展開するバリューブックスと提携し、入居者が読み終えた本を次の読み手に届けるサービス「循環するライブラリ」を、今秋分譲するマンション「パークホームズ文京本駒込」の共用部に導入すると発表した。今後も両社の連携を拡大しながら他の計画物件にも順次展開していく。

 バリューブックスは、オンラインでの古本買取・販売を中心に、実店舗やパートナー店舗での販売、さらには買取できなかった本の一部を保育園や福祉施設に寄贈する「ブックギフト」、移動型書店「ブックバス」などを通じて〝本が循環する社会〟を目指している書店。

 同社には一日約2万冊の本が届き、そのうち値段がつく本は約半数の約1万冊。大半が古紙再生に回るという現状があるなか、持続可能な社会の実現・SDGsへの貢献を目指す三井不動産レジデンシャルと連携することで、マンションのコミュニティ醸成に生かすのも目的の一つ。

 サービス導入1号物件の「パークホームズ文京本駒込」の共用部に2層吹抜けの空間を活用したライブラリを設置。本棚には約1,800冊の蔵書を収め、そのうち約1,500冊を古本から選書、3か月に1度、定期的に100冊程度の入れ替えを行う。

 また、買取金を管理組合に還元することを前提に、入居者が読み終えた本を寄贈するための本棚も設定し、一定期間が過ぎた後はバリューブックスが買取る。

 マンション内の蔵書は、バリューブックスが提供する「オンラインライブラリ」で検索、24時間貸出可能。入居者様同士で書籍のレビューをし合う取り組みの導入も検討している。

 今回の協業について、バリューブックス取締役・中村和義氏は「本が循環するライブラリを一緒につくり上げていくという、弊社としても新たな試み。誰かが大切にしていた本が、次の読み手にわたっていくこと、最後は古紙として再生されていくことだけでなく、物の流れを体感できるような空間をつくり出していく」とコメントを寄せている。

 物件は、JR駒込駅から徒歩6分、文京区本駒込五丁目に位置する14階建て全88戸。完売開始予定は2022年秋。竣工予定は2024年3月。設計・施工は村本建設。

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「パークホームズ文京本駒込」

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 小生は読んだ本は捨てがたく、二束三文にもならないので古本屋にも売ったことはないが、一日中、神田の古本街を徘徊していたこともある。思いがけない古本に出会ったときなどは例えようもない喜びを感じたものだ。昔は貸本屋があったのでよく利用したものだ。自分の本(稀覯本に近いものも結構あるはずだ)を貸し出すのには何の抵抗もないが、そんな手段はないのが残念だ。

 今回の取り組みはとてもいいと思う。パラアーティストのアート作品をマンション共用部に展示・購入できるサービスや、大規模修繕工事を長周期化することで、運用段階のライフサイクルCO2排出量を約38%削減する三井不動産レジデンシャルの取り組みに注目しているのだが、同社はまたマンションに新たな価値を付加した。

 コストはかかるだろうが、同社が分譲するマンションすべてに導入したら数十万、数百万冊に達するのではないか…もっと多いか。

 

 

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大月氏

 旭化成ホームズは8月4日、同社が建設した築1-30年の賃貸併用住宅オーナーを対象に実施したアンケート調査の結果をまとめ発表した。年の賃貸併用住宅の実態とオーナーの意識、家族変化への対応実態を明らかにするのが目的。同日、結果報告を兼ねた第19回「くらしノベーションフォーラム」を開催し、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授・大月敏雄氏が「併用で高まる価値」と題する講演を行った。

 冒頭、同社取締役兼常務執行役員・大和久裕二氏は、「当社は今年創業50周年を迎え、賃貸併用住宅の提案開始から40年が経過した。多様化するオーナー、入居者ニーズに今まで以上の価値を提供できるか再考する目的で、今回の調査を行った」と挨拶。

 調査は、2021年7月から8月にかけて賃貸併用住宅オーナー1,200人に郵送によるアンケート方式で行ったもので、有効回答は685人(回答率74%)。報告書は78ページに及ぶ。以下、主な特徴。

 1)築1-10年の賃貸併用住宅の調査では、平均して敷地面積の1.38倍の延べ床面積で建築されており、都市の高度利用が求められている中で、都市の特性を活かせていることが確認できた
 2)階数が高いほど最上階自宅型が増え、3階建ての約7割が最上階自宅型
 3)くらし価値1:ワンフロアライフ対応住戸は91%、そのうち71%が主要な生活空間が1階、または主要な生活空間にEVでアクセスできるフラットアクセスであり、高齢期も住みやすい住居となっている実態が明らかに
 4)くらし価値2:築21-30年のオーナーの家族人数は、平均3.8人から2.5人まで減少し、年数の経過による家族減への対応が課題。一方ですでに約40%が賃貸住戸に家族・親族が住むことを想定済みで、当初賃貸住戸に家族が居住し、家族減少時に賃貸へ戻す、または賃貸住戸を取り込み家族住戸を拡大する実例も
 5)くらし価値3:賃貸居住者に挨拶をするオーナーが8割。入居者の顔が分かるオーナーは7割で、80代の高齢オーナーでは50代の4倍以上立ち話をするなどの交流をしている実態も
 6)経済価値:賃貸併用住宅メリットとして、ローン返済の軽減(87%)や安定収入、私的年金が得られる(85%)、子どもに将来収入を生む資産が残せる(85%)などの経済的価値が認識されている

 同社は1982年に賃貸併用住宅の仕様化を開始してから2021年度まで累計12,310棟の引き渡しを行っている。

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左から同社二世帯住宅研究所所長・松本吉彦氏、大月氏、大和久氏、同社くらしノベーション研究所所長・河合慎一郎氏(写真提供は旭化成ホームズ)

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左から松本氏、大和久氏、河合氏(写真提供は旭化成ホームズ) 

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 報告書は78ページもありなかなか読みごたえがある。まず、40年間で累計12,310棟の実績について。単純計算すると年間約308棟超だ。国土交通省の2021年度の住宅着工統計の戸建て併用住宅は2,595棟だから、約12%は同社ということになる。これは同業他社と比較して圧倒的に多いのではないか。

 敷地面積は平均219.5㎡、延べ床面積は平均301.8㎡、自宅住戸面積は平均118.7㎡、賃貸住戸面積は平均37.7㎡×3.81戸=143.9㎡、レンタブル比(賃貸住戸面積÷総面積)は、40~60%未満が多いというのはなるほどという数値だ。

 オーナーとテナントとの関係性では、共同型はお茶食事・手土産・立ち話32%(分離型は25%)、挨拶あり58%(同49%)、挨拶なし8%(同17%)となっており、コミュニティが満足度を高めているとしている。これは、一般的な賃貸マンションや分譲マンションにはないはずだ。

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 一つだけ不思議に思ったのは、アンケートの回収率が57%と極めて高く、家賃収入・節税対策・土地活用の経済価値と、ワンフロアライフ・家族変化対応・自由なコミュニティのくらし価値が両立しており、総じてオーナーの満足度が高いのはよく分かるのだが、賃貸入居者の声は紹介されていないことだ。

 後述するように、賃貸住宅は分譲住宅と比べて相対的に質は劣るし、家賃負担も大きい。施主のオーナーも請負の同社も賃貸居住者も満足するという三方良しの構図が成立しているのかということだ。(だから同社の賃貸併用が伸びているのだろうか)

 この点について同社に質問した。入居者アンケートを実施する方向で検討するという回答を得た。一般的な賃貸アパート・マンションとどのように異なるか、オーナーと緩やかにつながる関係をどのように考えているのか、面白い回答に期待したい。

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 大月氏は、上田篤氏の1973年に朝日新聞に掲載された「現代住宅双六」、2007年の日経新聞の「新・住宅双六」から語り始め、分譲戸建ても分譲マンションも入居者の高齢化が急速に進む一方で、賃貸住宅は〝住まわざるを得ない〟事情もあるが、築30年を経ても各世代が一定の割合で入居している数字を示した。

 また、最近は自治体のワンルーム規制によって若年層向けの賃貸マンションが建てづらくなっている一方で、若い人を呼び込もうとする自治体間の〝人口争奪戦〟も演じられており、これまで賃貸と戸建ては異なったカテゴリーとしてとらえられているが、これからは融合させていく必要があると語った。

 そして、同潤会アパートや自らの経験、大規模住宅地内での親子近居・隣居の事例紹介や、地方への移住、十津川村の「高森の家」、寒冷地の「越冬プラン」などの慣らし住み、喜連川の戸建て団地に隣接する雇用促進住宅を町の活性化に活用した事例などを紹介。

 さらに、生業を生むリッチライフの「分離型マンション」、韓国の「連立住宅」、NPO法人による地域の空き家活動、シェアハウス、更には賃貸・シェアハウス・コンビニ・障がい児保育・カフェなど近隣とのコミュニティを緩やかにつなぐ賃貸住宅など多様な住まい方の可能性について語った。

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 記者も、大月氏が賃貸と戸建て(マンションも含めて)複合の街づくりを進めるべきという主張に大賛成だ。もともとわが国の街は、金持ちも貧乏人も若者も高齢者も多様な人々が住み、それぞれが助け合うコミュニティの機能を有していた。

 しかし、高度成長期をきっかけに経済最優先の核家族を基本とする〝nLDK〟という均一的な住宅供給によって都市と地方は分断され、コミュニティは破壊された。バブルの発生・崩壊によって〝住宅双六〟は昭和の遺物として死語となった。核家族そのものも崩壊の危機にあるのが現状だ。

 ごく一部の富裕層を除き、一般的な世帯には多様な選択肢はない。国の持家偏重政策を改めない限り、賃貸と戸建ての融合は絵空事に過ぎないと記者は思う。

 マンションなどの持家は、最近の地価・建築費の上昇で基本性能・設備仕様レベルの退行がどんどん進んではいるが、低金利を背景に住宅ローン控除、税制など手厚い住宅取得支援策によって支えられている。

 賃貸はどうか。オーナーの利回りを最優先するため基本性能・設備仕様は後回しになり、耐震性、断熱性、遮音性などあらゆる面で分譲より劣り、その割には入居者の家賃負担は重い。崩れつつあるとはいえ、いまだに絶対的な住宅不足時代の悪しき商慣習〝礼金〟を墨守し、高齢者の入居を拒否するところも少なくない。賃貸脱出⇒住宅取得志向は強まることはあっても弱まることはないと考える。

 端的な例が、生活困窮者や高齢者、子育て世帯などの入居を拒まないセーフティネット住宅だ。今回のテーマではないのでここでは詳しく書かないが、記者は貧困ビジネスとなんら変わらない住宅が登録されているのを取材したことがある。この制度は、最貧者を閉じ込め、生活再建の道を断つ危険性もはらんでいると思う。

 もう一つ、大月氏が紹介したリッチライフプランについて。これは記者も同社が分譲開始したころ取材したことがある。素晴らしいと思った。しかし最近、同社は供給していない。

 地価・建築費の上昇などで土地が仕入れられないからだろうと思うが、考えてみるとそのような賃貸用のスペースを備えたリスクも伴ったマンションを購入する余力は一般的な需要層にはない。

 仮に分譲坪単価を300万円としよう。自宅用に20坪確保すると6,000万円だ。隣に8坪の賃貸用のスペースを併設すると2,400万円だ。合計で8,400万円。そんなお金を出す余裕があれば自宅用スペースを優先するはずだ。

 かつて、UR都市機構も同じようなαルーム付きマンションを分譲したことがあるが、長続きしなかった。生業として機能するサポート体制がないからだ。

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大月氏(写真提供は旭化成ホームズ)

大東建託 セーフティネット住宅の登録住宅は約45万戸 全国の90%超か(2021/7/14)

激増セーフティネット住宅1年で政府目標の2.8倍 大東建託がけん引/必読の平山論文(2021/7/12)

坪3.5万円!億ション以上 現地見ずに家賃判断 審査は適正か セーフティネット住宅(2018/11/9)

 東急リバブルは8月3日、マンション管理業協会が運営する「マンション管理適正評価制度(★の数)」における管理評価の掲載を同社ホームページ「中古マンションライブラリー」で開始したと発表した。管理評価の掲載は同社ホームページが第一号。

 「中古マンションライブラリー」は現在、88,000 棟を超える分譲マンション情報を掲載している。

サイトはhttps://www.livable.co.jp/mansion/library/

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 早速、東急リバブルのホームページで検索してみた。「★」でも「特に優れている」でもヒットしなかった。

 そこでマンション管理協に問い合わせたら、同協会のマンション管理適正評価サイトhttps://www.mansion-evaluationsystem.org/を紹介してもらった。このサイトで検索したら19件がヒットした。内訳は★5つが6件、★4つが8件、★3つが5件。★5つは「プラウドタワー武蔵小杉」「シティーナ神立」「プラウド大阪同心」「プラウド葛西」「プレミアムフォート柏」「東京フロンティアシティパーク&パークス」だった。

 つまり、東急リバブルのホームページにアクセスし、★5つのマンションを探そうとしても現段階では無理ということのようで、管理協のホームページから探して、リバブルのホームページで詳細を知るという2段階かかるということだ。これは課題だ。ワンストップで探せるようにすべきだ。

マンション管理適正評価3年間で12,000組合登録が目標 マンション管理協(2022/7/15)

「マンション管理適正評価制度」スタート 第1号は東急リバブルのサイト(2022/7/5)

 


 

 

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「Marunouchi  Street Park 2022 Summer」イメージパース

 大丸有エリアマネジメント協会、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会、三菱地所の3者は8月2日(火)~9月11日(日)、社会実験「Marunouchi  Street Park 2022 Summer」を丸の内仲通りで実施する。8月2日には小池百合子・東京都知事、樋口高顕・千代田区長、小林重敬・大丸有エリアマネジメント協会会長、吉田淳一・三菱地所社長などが参加したオープンセレモニーが行われた。

 社会実験「Marunouchi Street Park」(MSP)は、2019年かから実施しているもので、今回は6回目。全長1.2㎞、幅員21m(車道7m+歩行空間各7m)の丸の内仲通りのうち行幸通りから馬場先通りまでの区間を「MSP Refresh Space(丸ビル前ブロック)」「MSP Music Restaurant(丸の内二丁目ビル前ブロック)」「MSP Garden(丸の内パークビル前ブロック)」の3つのブロックに分け、それぞれテーマを設けて社会実験を行う。

 「MSP Refresh Space」は軽い運動や読書ができるリフレッシュ空間として、道路と歩道を一体的に活用した「みんなのライブラリーベンチ」を設置。利用者が「丸の内仲通りで読みたい本」を持ち込み、気に入った本と交換もできるようにしている。「こどもライブラリー」では、夏休み期間に子どもたちが楽しめるよう、絵本が子どもの目線に入るよう工夫されている。車椅子利用者も利用できる卓球台も設けられている。

 「MSP Music Restaurant」は緑を感じながら、音楽と食事が楽しめる空間がテーマ。誰もが弾くことのできる「みんなのストリートピアノ」を設置。また、丸の内仲通り沿道に店を構える「GARB Tokyo」の特設屋外客席として、飲食を楽しめるようにしている。「みんなのテーブル」は、様々な素材・機能・形の椅子と机によって構成された丸テーブルで、子どもから大人、障害のある人まで、みんなが利用しやすいデザインとなっている。

 「MSP Garden」は自然を感じられる丸の内の庭空間として、清涼感ある北海道滝上町産の和ハッカ精油を使用した香り付きドライ型ミストを設置しているほか、芝生でくつろげる休憩所「ごろごろベンチ」や充電スポットを設けたソロワークスペースを設けている。

 オープンセレモニーに参加した小林・大丸有エリアマネジメント協会会長は、「ワークスタイルは、これまでの室内のワークに加え、外部空間にグリーンを配置し、まちなかで働くように変化している。Marunouchi Street Parkはウォークすること、ワークすることを促すための恰好の場所。空間的にも機能的にも日本のオフィス街のこれからのあり方を示していくために、さらに本格的なストリートパークの取り組みを実践していく」と語った。

 続いて登壇した小池都知事は、「都は、『車から人』への街づくりのPark Street TOKYOの活動を後押ししている。この丸の内仲通りは、道路空間に緑を敷き詰め、ファニチャーも車椅子利用の人も楽しめる卓球台もある。いろいろな工夫を取り入れていることに敬意を示したい。東京を持続可能な都市へと高めるためにも、環境に配慮した取り組みHTP(H=House T=Tree P=Person)を進めていきたい。すぐれた環境での生活は安心、心地よさ、活力を与えてくれる」と述べた。

 樋口千代田区長は、「本年6月、千代田区ウォーカブルまちづくりデザインを策定した。Marunouchi Street Parkなどの先駆的な事例を参考にさせていただき、千代田区内の道路を公園に、居心地のよい空間にする取り組みとして今年度は実証実験を展開していく」と話した。

 実験では、サステナブル(持続可能)な空間作りを実践するため、都心の広場・公園的空間の在り方と運営管理方法、都市観光としての場づくりについて検証する。酷暑対策として一部にドライ型ミストを設置するほか、気化熱を利用して表面温度が下がるハイテク芝「COOOL TURF(クール ターフ)」を導入し、天然芝と人工芝(ハイテク芝)での表面温度について比較検証も行う。また、企業のプロモーションに使用できるPRスペースを設け、東京會舘などのキッチンカーに加え、「東京ステーションホテル」と「ザ・ペニンシュラ東京」も期間限定で出店する。

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左から大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会理事長・矢澤淳一氏、小林氏、小池氏、樋口氏、吉田氏

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「みんなのライブラリーベンチ」イメージパース

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「GARB Tokyo」特設屋外客席 イメージ

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丸の内パークビル前ブロック イメージパース

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 このような取り組みが3年前から始まり、今回で6回目を数えることなど全く知らなかった。セレモニー会場となっていた丸ビル前の丸の内仲通りの車は遮断され、ベンチなどで〝占拠〟されていた。70年安保のとき、道路にバリケードを築き、歩道のレンガブロックを砕いて警官に投げる光景は日常茶飯だったし(小生はやっていない。そんな勇気はなかった)、道路占用許可を得て様々なイベントが行われているのは承知しているが、よくぞ警視庁は1か月以上も道路占用を許可したものだ(2019年は100時間限定だったそうだ)。

 ここまでできるのは、三菱地所を中心とする「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会」や「リガーレ(大丸有エリアマネジメント協会)」、三菱地所の活動があったからだろう。

 協議会のその前身「大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会」が設立されたのは1988年。今では正会員66社・団体、準会員10社・団体、賛助会員9社・団体を数える。そして、2002年に設立された「リガーレ」は今年20周年を迎える。

 三菱地所もまた、2020年から大手町・丸の内・有楽町エリアの街づくりを「丸の内 NEXT ステージ」として位置づけ、〝人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台〟構築を目指す「丸の内Re デザイン」の取り組みを加速させている。

 今回もそうだが、同社はコロナ禍でもメディア向け見学会などを積極的に行っている。数えたわけではないがこの3年間で十数回に上るのではないか。デベロッパーの中で情報発信回数は飛びぬけて多いはずだ。

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「みんなのライブラリーベンチ」

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オープンセレモニー会場になった丸ビル前の丸の内仲通り

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 街路樹について。読売新聞社は1994年、「新・日本街路樹100景」を編纂した。都道府県ごとに10景(計470景)を選び、その中から100景を厳選したものだ。関東圏では以下の17か所が選ばれている。

 学園東大通り(茨城県つくば市)、昭和通り(茨城県ひたちなか市)、日光杉並木(栃木県今市市、日光市)、県庁前のトチノキ並木(栃木県宇都宮市)、前橋駅前通りケヤキ並木(群馬県前橋市)、いずみ緑道(群馬県大泉町)、国道463号線(埼玉県浦和市~所沢市)、東京外郭環状道路環境施設帯(埼玉県三郷市~和光市)、あすみ大通り(千葉県千葉市)、常磐平けやき通り(千葉県松戸市)、桜田通り(東京都千代田区)、表参道ケヤキ並木(東京都港区・渋谷区)、絵画館前イチョウ並木(東京都港区)、馬場大門ケヤキ並木(東京都府中市)、山下公園通り(神奈川県横浜市)、国道16号線(神奈川県相模原市)、東海道松並木(神奈川県大磯町)

 記者はこのうち国道沿いの街路樹などを除いた12か所を訪ねたことがある。選定に異論はないが、いま選ぶとしたら、ケヤキを中心とする丸の内仲通りを真っ先に挙げる。単に街路樹が美しいだけでなく、周囲の高層ビルの公開空地や店舗などとしっくり溶けあっており、街の潤いと賑わいを演出している点からみれば、極めて稀有な事例だと思う。

 もう一つ。ウォーカブルな街づくりについて。国は官民連携街づくりを推進しているが、道路や河川、公園などの占用許可制度を抜本的に見直し、もっと簡便な申請制度にすべきだと思う。そして、何よりも地域住民やワーカーのための街づくりであることを忘れてはならない。

 ここでは詳しく書かないが、例えば千代田区の神田警察通り整備計画。樋口区長は、多くの住民の反対を押し切り、「苦渋の決断」として30本のイチョウ並木の伐採工事を強行した。街づくり協議会の原理・原則である公平性、公開性、独立性を無視し、地域のコミュニティを破壊した。

 開発に伴う提供公園を含めた都市公園もしかり。コロナ禍で飲酒・飲食、喫煙を禁止し、どんどん利活用が難しくなっている。まったく利用されない都の都市公園は2割くらいあると記者はみている。実態調査を行ったら驚くべき実態が浮き彫りになるはずだ。

街路樹に溶け込むアート 三菱地所&彫刻の森 第43回「丸の内ストリートギャラリー」(2022/6/29)

壮大な街づくりの一環 501㎡の「新国際ビル」路地裏を多目的空間にリノベ 三菱地所(2022/5/27

イチョウ伐採に「精神的苦痛を受けた」 住民訴訟の第1回公判 原告が意見陳述(2022/7/12)

 

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「小山三丁目第1地区第一種市街地再開発事業」

 三菱地所レジデンス、日鉄興和不動産、大林組の3社は8月1日、「小山三丁目第1地区第一種市街地再開発事業」が都市計画決定されたと発表した。3社は事業協力者として参画している。

 事業地は、東急目黒線武蔵小山駅前の「パルム商店街」の入り口に位置する区域面積約約1.4ha、延べ床面積約127,000㎡。主な用途は住宅約850戸のほか店舗・生活支援施設・駐車場など。竣工予定は2030年ころ。

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 最高の立地だ。駅の反対側では三井不動産レジデンシャルと住友不動産の双方で1,000戸超のタワーマンションが2~3年前に竣工しているが、それ以降の新築マンションはないはずだ。仮に、現状の新築相場を550万円とし、このまま大きな天災・人災がなく、年率2%の経済成長が続くとすれば、竣工までの向こう8年後の坪単価は約644万円だ。これは納得の価格だ。年率5%だとすると坪813万円。これはありえないような気がする。そんな成長率をたどるとはとても思えないからだ。

 これも凄いが、記者が注目しているのは日鉄興和不動産と野村不動産が事業参画している「赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業」だ。事業区域は高橋是清翁記念公園に隣接する約1.2haで、46階建て約640戸の住宅が予定されている。竣工予定は2027年度だ。

 こちらも最高の立地だ。いま分譲されたら坪単価は1,000万円でも安いと思う。

三井不レジ他 武蔵小山駅前の再開発タワーは坪単価470万円 第1期は204戸(2017/11/20)

 

 

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