長野市の公園問題 制度疲労の法、希薄な人間関係、報道姿勢…社会課題を露呈
多摩の空に希望の虹を見た(12月13日13:30ころ、京王相模原線若葉台駅近くの車内から)
昨日(12月12日)のことだった。見るとはなしにどこかのテレビを見ていたら、「子どもの声がうるさい」との「一人の近隣住民の苦情」を受け、長野市の公園の廃止が決まり、公園廃止について荻原健司市長が会見を開いた模様が映し出された。
この報道に記者は条件反射のように反応した。「一人の苦情」-人数にではない。都市公園が住民の反対によって廃止されることなどありえないからだ。
都市公園法第16条(都市公園の保存)には「公園管理者は…みだりに都市公園の区域の全部又は一部について都市公園を廃止してはならない」と規定されている。
この「みだり」の文言は、小生そのものの「みだら」を連想させ、その意味も〝むやみやたら〟と解されるので嫌いなのだが、いずれにしろ、法は都市公園の廃止はそれなりの理由なしに廃止してはならないと規定している。
長野市の都市公園条例の第14条(都市公園の区域の変更及び廃止)でも、「市長は、都市公園の区域を変更し、又は都市公園を廃止するときは、当該都市公園の名称、位置、変更又は廃止に係る区域その他必要と認める事項を明らかにしてその旨を公告しなければならない」とある。
市条例が市長に求めている「その他必要と認める事項」として、「地域住民の苦情」は必要ではあるが十分ではないはずだ。法治国家だ。地域住民の賛成や反対で行政や法律が捻じ曲げられてはならない。ましてや、施設は地域住民の平穏な生活を維持するための公園・遊園地であり、児童施設だ。その施設が発する音を〝騒音〟と解釈するのであれば、幼稚園・保育園、小中学校なども〝嫌悪施設〟と判断されることになりかねない。市長は、廃止に至った正当な理由を示さなければならないと考えた。
それを怠り、報道されていることが事実であれば、市の決定は都市公園法、長野市都市公園条例に違反する恐れがあると思った。
そこで、長野市の公園緑地課に電話で問い合わせた。担当者は次のように話した。
「当該遊園地は都市計画法、都市計画条例に基づく位置づけではなく、市独自の都市公園に準じる施設として2004年から運営しているもので、敷地は契約期間の定めがない借地。『子どもの声がうるさい』との苦情を受け、近接する児童センター、小学校、保育園と12の区長会(自治会)と協議を重ねた結果、100人以上の子どもが利用している遊園地で声を出さないで遊ばせるのは不可能という結論に達した。この結論をもとに区長会が『廃止』の決断を行い、市へ廃止するよう要望書を提出し、市は10月1日付で、通学区でもある8区長会に所在する住民への回覧を行った。回覧に対する反対意見は2件寄せられたのみ。遊園地の設置と廃止はいずれも区長会の要望に基づくもので、その決定には瑕疵はない」
さらに、「市では、開発行為に基づく公園などの公共空間設置基準(3,000㎡以上はその3%)に設置されたものを法律に準じる遊園地として管理している。市内に都市公園は約210か所あるが、遊園地は約520か所もあるのはそのため。市民の方々に都市公園と遊園地の違いをきちんと公開・説明してこなかったことは反省しなければならないが、一人当たりの公園面積は人口減少により増えるが、その分、公園の維持管理費は増大し財政を圧迫する。これは当市だけでなく全国の自治体の課題」とも話した。
◇ ◆ ◇
この公園緑地課の担当者の話をどう受け止めるか。デベロッパーの用地担当、商品企画担当の方はよくお分かりだろう。小生は、この担当者の話を聞きながら、2020年に取材した「THEパームス相模原パークブライティア」の提供公園のことを思い出した。是非、その記事と一緒に読んでいただきたい。ここでは詳述しないが、「児童公園(街区公園)」は問題が山積する。
今回の問題をセンセーショナルに取り上げたメディアにも問題があるが、これをきっかけに、「児童の健全な遊び」「児童の健全な育成を図る」目的の児童福祉法の改正を含め、再検討する機会にしてほしい。「児童遊園」「児童公園「街区公園」を区別できる人はほとんどいないはずだ。
一般社団法人日本公園緑地協会「全国中核市等における公園緑地の課題に関する調査研究」(平成28年)は、「500㎡以下の狭小公園については、「公園の統廃合」や「機能分担」等が望まれており少子高齢化・人口減少時代の到来を受け、かつて児童のための公園として整備されてきた小規模公園の利用が極めて低く、社会的ニーズとの乖離がある」と指摘している。
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市の対応について。瑕疵はないと思うが、問題がないわけでもない。「(法律・条例に)準じた」という文言は微妙で、解釈によってはどのようにも受け止められるからだ。法律と同じ効果・拘束力があると考える人もいれば、法律・条例ではないから、判断は行政に委ねられると解する人もいるのではないか。
もう一つは、区長会(自治会)は果たして地域住民の代表かという問題だ。記者は千代田区の神田警察通りの街路樹伐採の是非を巡って区と地域住民が裁判で争っているのを取材しているが、区側は町内会長らで組織する街づくり協議会を通じてきちんと説明したと主張し、街路樹伐採に反対する原告らは〝寝耳に水〟とし、町内会の長は住民代表でないと反発している。
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縷々述べてきたが、今回の問題がわれわれに突き付けているのは生活騒音・臭いとは何か、嫌悪施設とは何かということだ。音でいえば、子どもの声もそうだが道路、飛行機、鉄道、救急車、パトカー、新聞配達(バイク)、風鈴、ピアノ、念仏、夫婦喧嘩、ハイヒール、ネコの交合、年寄りのしわぶき、夫(または妻)のいびき…全てが嫌悪され、臭いでは隣家のニンニク、タバコの臭いを何とかしろという声だ。
記者は、これらの問題はほとんどすべて人と自然、人と人のコミュニケーションの欠如から発生していると考えている。30年も昔か。横浜ペット裁判を取材したことがある。マンション管理規約でペットの飼育が禁止されているのに、仲介業者の〝大丈夫でしょう〟という説明を鵜呑みにして大型犬と一緒に入居した購入者が、管理組合に訴えられて敗訴した。入居者は退去することになった事件だ。
そのマンションの現場に足を運んだ。マンションは環七に面していた。居住者に話を聞いたが、玄関を開けっぱなしだと声はほとんど聞き取れなかった。そのマンションの悲劇だったのは、南傾斜の敷地の目の前にマンションが建ったことで、中層階以下の住戸の眺望が奪われたことだった。多分、居住者のストレスは最高潮に達していたはずだ。だからといって、ストレス源の環七や隣接マンションを訴えたところで勝てるはずはない。そのストレスのはけ口に被告をしたと今でも思っている。
何か起きると弱者を〝寄ってたかって叩く〟世の風潮、白と黒の区別をあいまいにする白内障社会も問題だ。今回の問題は、わが国か抱える社会課題を象徴的に顕在化させたと言える。
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長野市の行政資料から、一通り都市公園や緑に関する施策を読み込んだ。わが多摩市や江戸川区には劣るかもしれないが、水準以上だと思う。
同市の平成31年度の一人あたり都市公園面積(遊園地含む)は8.71㎡(目標は10㎡、多摩市は13.64 ㎡、江戸川区は11.31㎡、東京都は約5.76㎡)であり、一人当たりの公園・緑地予算は4.1千円(多摩市は土木費含み3.1万円)だ。
緑の将来像に「心かよう美しい緑のまち ながの」と描き、緑化施策として①緑化樹木配布②ながの花と緑大賞③ながの花と緑 緑育フェスタ④保存樹木等指定事業⑤保存樹木等管理補助金⑥街路樹愛護会報奨制度などを行っている。
「まちづくりGX」は都市局のメイン事業になるか 国土交通省の会合を傍聴して(2022/11/27)
健全な街路樹を「枯損木」として処分 問われる住民自治 千代田区の住民訴訟(2022/11/12)
「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)
「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動(2021/4/28)
相模原市初の「児童公園(街区公園)以外の提供公園第1号」 トーセイ「相模原」(2020/8/7)
「住宅新報」「週刊住宅」も1面はつまらない 豚のように木に登ろうではないか(2019/3/12)
なぜ農学、環境、家政学者の会合はおおらかなのか 国交省「都市公園あり方検討会」(2015/3/17)
「産業デベロッパー目指し、日々妄想」植田俊・三井不動産次期社長
植田氏(左)と菰田氏(東京ミッドタウン日比谷で)
三井不動産は12月9日、社長交代人事を発表し、同日、次期の代表取締役社長 社長執行役員社長に就任する同社取締役専務執行役員・植田俊(うえだ たかし)氏と、代表取締役会長に就任する同社代表取締役社長 社長執行役員・菰田正信氏が出席して、社長交代に関する記者会見を行った。両氏からはとても興味深い話・エピソードが飛び出した。
会見の冒頭、菰田社長は2011年6月に社長に就任してから12年弱(退任時では11年9か月)を振り返り、「就任時は東日本大震災の直後で、リーマンショックの傷がいえない時だったが、これまで若干実績を積み上げてきた」と語った。
具体的には、「イノベーション2017」で①街づくりの進化②スマートシティの実現③グローバル化の戦略課題にスピード感を持って推進した結果、6年間で営業利益は6倍、純利益は2倍という高い目標を達成したことなどを話した。
2018年に策定した「ビジョン2025」では、①持続可能社会の実現②デジタルイノベーション③グローバルカンパニーの進化-などを掲げ、コロナ禍で経常利益は1,000億円近い減益(2021年3月期)となったが、3年が経過し、コロナの収束が見通せるようになり、今期の営業利益は過去最高の3,000億円を達成できる見通しが立ったと述べた。
社長交代ついては、「『ビジョン2025』達成の道筋が見えたことから、その先は次世代のリーダーにバトンタッチするのがふさわしい」と決断。「後任の植田専務は私の右腕として、業績向上に大きく貢献した立役者」と紹介。「人物、見識、能力はもちろん社内外の人望も厚く、リーダーシップを発揮して新時代を切り開いてくれると確信している」と称え、「植田専務は相手の立場に立ってものごとをよく考える。『妄想』の言葉に象徴されるように、既成概念にとらわれない自由な発想で、新たな三井不動産を切り開いてほしい」とエールを送った。
今後の国内外の市場・展開については、「政治経済の動向、地政学的なリスク、気候変動など先行き不透明感は極めて高いが、私も植田新社長とともに社業の発展に全力を尽くしていく」と語った。
印象に残っている事業としては、米国ハドソンヤードでの2つのプロジェクトを「常識を覆して」成功に導いたことと、菰田氏も10年以上かかわった「柏の葉」のスマートシティの街づくりプロジェクトをあげた。
辛かったことについては、「人を集め、街を創るのが仕事のわれわれにとって、コロナ禍で〝人を集めるな〟と言われたのは辛かった」と率直に語った。
記者は、これまでの菰田氏の実績、同社の業績の推移などから、やり残したことなど一つもないだろうと質問したら、菰田氏は「そんなことはない。たくさんある」とし、日本橋川の再生が2040年になっていることをあげた。(小生はかつて、岩沙会長が「わたしの生きている間に再生してほしい」と語ったのを忘れない。あと20年後だ)
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菰田氏の挨拶を受けて、植田次期社長は「社長の命を受け、その使命の重大さと責任の重さに身が引き締まる思い。本日は、わたしがどんな人間であるか、どんな思いを持っているかお話ししたい」と切り出し、次のように語った。
「わたしが歩んできたビル事業の職歴からして、さぞかし皆さんは、三井不動産の保守本流を歩いてきた男だろうと思われるかもしれないが、実際は、来春で丸40年の会社人生を迎える中で、日本橋本社勤務は2009年からの10数年のみ。それまでの長い間は支店や出向などを繰り返し、外からの目線で三井不動産という興味深い企業グループを見つめてきた。
最初の配属先は、今では百数十人の規模になっている横浜支店だが、当時の横浜事業課はわずか4人のスタートだった。今では清算されて存在しない、6年半勤務した三井不動産ファイナンス時代では、バブル崩壊後の不良債権処理に取り組んできた。毎日が砂を噛むような厳しい仕事だった。10年以上勤務した三井不動産投資顧問は金融危機の直後で、リートなどの証券化ビジネスを立ち上げた。
これらの勤務を通じ、今ではなかなか経験ではないディープで濃厚・濃密な会社人生を送ってきた。その時々で多くの社内外の方々に助けられながらやりぬいてきた自負がある」と振り返った。
どのような考え方をしているかについては、「大切にしているのは『妄想』『構想』『実現』という言葉。一人ひとりの突拍子もない妄想に大義があれば仲間が集まり構想になり、実現につながるという、この三段論法を自己実現に向けて常に心がけている」と語った。
不動産業のあり方については、「わたしの経験からして、確かにビル、商業施設などハードな建物をつくり、街づくりを行う意味では不動産デベロッパーだが、これらの事業を通じて産業競争力を強くし、発展させるプラットフォーマーであることを考えると、産業デベロッパーではないかと考えている。つまり、不動産や街づくりなどは手段であって、当社の本質は産業デベロッパーでありプラットフォーマーである」と述べた。
さらに、同社のこれまでの事業を紹介し「わたしがライフワークとしているライフサイエンスをはじめ、日本橋には宇宙、スタートアップ企業、アカデミアが集まり、新たなビジネスが生まれている。今後も取り組みを強化し、産業デベロッパーとして企業や社会、それを構成する人々の発展と成長に貢献していく」と述べ、「当社の羅針盤である『ビジョン2025』の次なる発展形をどこかでお話ししたい。産業デベロッパーとしての『妄想』『構想』『実現』にご期待頂きたい」と締めくくった。
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記者は、植田氏から「日々妄想」「産業デベロッパー」「よそ者、馬鹿者になれる」「日本橋をライフサイエンスの聖地にする」「おせっかいな大家」などのフレーズがポンポン飛び出したのに驚きはしたが、同時になるほどとも思った。
まず「妄想」。妄想とは、「広辞苑」(岩波書店)によれば「①〔仏〕(モウゾウとも)みだりなおもい。正しくない想念。徒然草『所願皆-なり』②〔心〕根拠のない主観的な想像や信念。統合失調症などの病的原因によって起こり、事実の経験や論理によっても容易に訂正されることがない。『誇大-』『被害-』『関係-』-・しょう【妄想症】パラノイアに同じ」(広辞苑)とある。
また、「日本国語大辞典」(小学館)には「(-する)ありえないことを、みだりに想像すること。みだらな考えにふけること。また、そのような想像。空想。夢想」とある。
記者もそうだが、読者の方も植田氏の「妄想」を辞書通り受け取ってはいないはずだが、普通ではなさそうなことは分かる。「日本橋をライフサイエンスの聖地にする」という植田氏のビジョンを聞いたとき、菰田社長は「これは大風呂敷ではないか」と疑ったというエピソードを明かしたことからもそのことがうかがい知れる。
つまり、植田氏の妄想とは、常識的な考えからするとありえない空想、絵空事ではあるが、その常識的な考えが間違っていると仮定したら、妄想こそが事実・現実となる。
記者は、この植田氏の話を聞きながらもう20年くらい前、同社の幹部が〝みだり〟に「不動産はソリューションビジネス」と語っていたのを思い出した。つまり、不動産業は課題解決業だと。今流でいえば社会課題解決業だ。
植田氏が「日々妄想」と語ったのは、この考え方と通底する。絶えず不動産業の現実を凝視し、疑ってかかる姿勢を貫いていると理解できる。そのヒントは、前段で紹介した植田氏の発言の中にある。
約40年の職歴の中で、30年弱は外から、そして、その後の十年余は内から三井不動産の事業を見続けてきたということだ。双方から世界を眺めることで、内外に抱えている課題=妄想をたくましくし、構想として練り上げ、実現してきた。この三段論法の正しさを証明して見せたということだろう。菰田社長は植田氏の発想の豊かさ、交渉能力の高さ、粘り強さを絶賛した。
同じようなことを写真家の今森光彦氏が先の積水ハウスのフォーラムで話した。今森氏は写真を撮るときは被写体と距離を置き、冷静な目で俯瞰し、同時に被写体の中に入り込むようにして、中から見える世界を写し取り、自然と人間の関係性を明らかにするのだと。
「産業デベロッパー」という文言は、植田氏が初めて用いたのではないか。一般的には大手デベロッパー=総合デベロッパーとして理解されている。しかし、劇的に変化、多様化する経済・社会では、従来の発想では課題を解決することは難しいと植田氏は強く感じているのではないか。「産業界に入り込まないとじり貧の一途」とも語った。
〝よそ者、馬鹿者〟〝おせっかいな大家〟として産業界にイノベーションを巻き起こす姿勢を植田氏は示した。BtoCはもちろんBtoBへの事業展開が加速度的に進むのではないか。
「日本橋をライフサイエンスの聖地にする」-この「聖地」にはさすがに驚いたのだが、同社が2019年5月に行った「賃貸ラボ&オフィス」事業開始に伴う記者会見で、当時、同社常務執行役員だった植田氏は「この種の事業は欧米ではけた違いの規模で行われているが、わが国には市場そのものがない。具体的な事業規模は現段階で申し上げられないが、マーケットメークし、当社の6番目の新しい事業に育てたい。『コミュニティ』の構築、『場』の整備、『資金』の提供を3本柱とし、わが国がライフサイエンス産業における世界に冠たるアジアナンバーワンの地位を確立することに貢献する」と話している。(植田氏には、当時書いた、小生の妄想でもある「新木場」をライフサイエンス拠点にできないかと質問したかったのだが、その機会はなかった)
意外だったのは、苦い思い出を記者団から質問された植田氏の答えだった。「辛いことはすぐ忘れる」と前置きしながら、三井不動産投資顧問に出向していたときの2001年9月17日、防衛庁檜町庁舎跡地を1,800億円で同社など6社が落札した舞台裏を明かした。
「当時は、金融危機が収束しておらず、お金を集めるのが大変な時期で、何とかタイムリミット直前の6月に2,200億円のファンドを組成することができた。落札日は娘の誕生日なのでよく覚えているのだが、その1週間前には日本ビルファンドの上場(記者は当日初値で株を買った。そこそこ儲かった)があり、大変な9月だった。しかし、ふたを開けたら2番札の入札価格が1,200億円とかなり差があったことから、高値で入札したのではないかと文句も言われた。そのとき仲間で話し合ったのは、僕らいつか『プロジェクトX』に出ようと。テーマは決まっていて『金のないのに入札に臨んだ男たち』。結果としていいプロジェクトになった」
小生は、この落札が決まる半年前、「落札価格は1,850億円」と予想した全10段の記事を書いた。それがほぼ的中して快哉を叫んだのを思い出す(外れたら袋叩きにあっていたか)。資金集めの担当者が苦労していたことなど初めて聞いた。そんなに厳しかったのか。記者の仕事も取材先の中に潜り込まないといけないということか。
三井不動産 植田俊(たかし)専務が社長に 菰田社長は会長へ 岩沙会長は相談役へ(2022/12/9)
様々な目線でかつてない試み実現 東大・藤田誠卓越教授 「三井リンクラボ柏の葉1」(2022/6/22)
住宅不可の151ha〝処女地〟新木場にライフサイエンス拠点 三井不の新事業(2019/6/1)
三井不動産 植田俊(たかし)専務が社長に 菰田社長は会長へ 岩沙会長は相談役へ
植田氏(左)と菰田氏(東京ミッドタウン日比谷で)
三井不動産は12月9日、社長交代、代表取締役の異動について発表。2023年4月1日付で取締役専務執行役員・植田俊(うえだ たかし)氏が代表取締役社長 社長執行役員に、代表取締役社長 社長執行役員・菰田正信氏が代表取締役会長に、代表取締役会長・岩沙弘道氏が取締役にそれぞれ就任する。
岩沙氏は、2023年6月開催予定の株主総会で取締役を退任し、同社相談役に就任する予定。
植田氏は1961年2月生まれ。1983年4月、三井不動産入社。横浜支店事業課、三井不動産ファイナンス、三井投資顧問などを経て、2011年4月、執行役員ビルディング本部副本部長、2015年4月、常務執行役員 ビルディング本部副本部長、2020年6月、取締役 常務執行役員 ビルディング本部長、2021年4月、取締役 専務執行役員(現任)。
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同社は同日、植田氏と菰田氏が出席して、社長交代に関する記者会見を約1時間にわたって行った。両氏からはとても興味深い話・エピソードが飛び出した。詳細は明日以降に紹介します。
小中学も出展、花咲く和紙、むかつく酒、昆虫ビジネス、ホタテ殻…「SDGs Week」
Nano Cellulose Vehicle(ナノセルロースヴィークル)
昨日は、「SDGs Week EXPO 2022」見学取材でもっとも印象に残った、木製廃パレットや建築足場古材をヴィンテージ家具に変貌させる「PALLET HOUSE JAPAN」を紹介した。今日はとても嬉しくなったブースを紹介する。
見学を開始して1時間くらい経過したころか。出店者はわが国を代表する大企業や官公庁の大きなブースが競い合うように並んでいたが、一番隅っこに1ブース1坪くらいの大学・教育機関コーナーがあった。大半は全国の大学だったが、だからこそひときわ目立ったのは杉並区立浜田山小学校5年生と立命館慶祥中学校のブースだった。
浜田山小学校の「緑のカーテンをつくろう」プロジェクトは、SDGsの言葉すらなかった10年前から〝地球温暖化が大変だから〟〝わたしたちにもできることがあるはず〟として5年生(今年は133名)の教育プログラムに取り組んでいるもので、ゴーヤの土づくりから定植-摘心・誘引-温度測定-エコ調理まで行っている。活動を広げるため、育てたゴーヤの苗を各家庭に販売し、出展費用2万円をねん出しているというから凄いではないか。
ゴーヤの緑のカーテンづくりは、全国の小・中学校でも浸透しているはずだが、その成果・効果をきちんと報告しているところなんてあるのだろうか。
立命館慶祥中学校は北海道江別市に位置することから、市のPRに貢献しようと特産品などを紹介していた。生徒さんが来場者に説明する光景はなんとも微笑ましいものだった。
浜田山小学校5年生「緑のカーテンをつくろう」
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ドランカーの記者にとって、もっとも嬉しかったのは全国の棚田で生産された米を原料にした名酒が試飲できたことだった。1杯10ccで100円。「むかつく」「泣かす酒」「上勝」「棚田」の4銘柄を飲んだ。「むかつく」は山口県長門市の地名「向津具(むかつく)」で、「泣かす酒」も山口県周南市の「中須地区」に由来するというから面白い。ラベルだけで売れるのではないか。
日本の棚田共同展示コーナーでは、全国の美しい棚田212か所を紹介する家の光協会「全国棚田ガイド」(2017年刊)を正価2,500円のところ特別価格1,000円で買った。1か所見開き2ページで、美しい棚田の様々な情報が得られる。
試飲した日本酒
◇ ◆ ◇
絵画を趣味とする小生の興味を引いたのは、NTT ArtTechnologyのデジタル絵画だった。世界の名作49作品をデジタル処理し、光通信によって配信するサービス。見た目には本物とほとんど変わらない。オフィス、病院、その他の公共施設向けで、レンタルプランは初期費用が57,300円~、月額費用は80,000円~。価格が安くなれば一般家庭へも普及するかもしれない。
デジタル絵画
◇ ◆ ◇
山梨県身延町の和紙のものづくり技術に種子を漉き込んだ再生紙・シードペーパー「花咲く和紙」も夢がいっぱい詰まったアイデア商品だ。紙としての役割が終わっても、水に浸すと発芽し、花が咲き、土に還る。なんだかわれわれ人間の一生のように思えてくるではないか。
種子はなんでもいいわけではないとのことだが、太古の種子が発芽した例もある。そのうち何代も先の家族にメッセージとして贈る時代がやってくるかもしれない。
「花咲く和紙」
◇ ◆ ◇
昆虫ビジネスが脚光を浴びているようだ。今回の「SDGs Week EXPO 2022」でもコオロギ(オールコセイ)やバッタ(弘前大学)を養殖し、食用に利用するブースが展示されていた。コオロギのかりんとうを試食したが、少し硬く甘かったので酒のつまみにはどうか。ポテトチップスのようにスライスしたものは普及するのではないか。
バッタは、わが国でも佃煮として食用として利用されていた。エスカルゴ、ハチ、サワガニ、スズメ…などもそうだが、慣れないと食べられない。これが課題だ。
「コオロギは地球をすくう」
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甲子化学工業の廃プラスチックとホタテ貝殻を混ぜ合わせて製作したヘルメットのデザインが素晴らしかった。普通のヘルメットよりやや重く感じたが、様々な形態に加工できるそうで、いろいろな用途に応用できると思った。もう少ししっかり取材すべきだったか。カキ殻を消臭剤にしたブースもあった。
ホタテ殻を用いたヘルメット
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これまで小さなブースばかり紹介してきたが、このほかにも注目すべき出展は数えきれないほどある。環境省の電動部材すべてに次世代半導体材料 GaN(窒化ガリウム)を使用した電気自動車All GaN Vehicle(オールガンビークル)、車体に CNF(セルロースナノファイバー)を活用した Nano Cellulose Vehicle(ナノセルロースヴィークル)、住友商事マシネックス/近畿大学 リエゾンセンター/ナニワ炉機研究所による光合成に起因するほぼ全ての植物から形成できる固形燃料バイオコークス、エプソンの使用済みの紙から新たな紙を生産するオフィス製紙機「PaperLab」などには人だかりができていた。
「SDGs Week EXPO 2022」は、主にBtoBを対象とするイベントだからやむを得ないが、ハウスメーカー・デベロッパーの出展はほとんどなったのは残念だった。
バイオコークスのブース
全国24か所のホテルを有する大和リゾートの全株式 556億円で売却 大和ハウス
大和ハウス工業は12月8日、同社の100%子会社・大和リゾートの全株式・貸付債権をジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズ(JHRA)がアセットマネージャーを務める恵比寿リゾートへ譲渡し、大和リゾートが運営するホテル「ロイトン札幌」を信託受益権化し、譲渡することを決定したと発表した。株式譲渡、債権譲渡の総額は556億円。譲渡実行日は2023年4月3日。
株式譲渡、債券譲渡について同社は、ホテル業界の環境変化、施設の老朽化、新型コロナの影響などから経営環境が大きく悪化していることから、「大和リゾートのホテルが持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、ホテルを専門分野として不動産投資運用を行なう資産運用会社であるJHRAの専門的な知識やノウハウを活用することが大和リゾートの価値最大化とサステナブルな成長に資すると判断し、『ロイトン札幌』についても、事業展開における効率性を勘案した」としている。
大和リゾートは1973年設立。現在全国で24か所のホテルを運営。2022年3月期の売上高は188億円(2020年3月期は462億円)、経常損失56億円(同1億円)、純損失69億円(同10億円)。
日ハム新球場「Fビレッジ」内にワーケーションオフィス 三菱地所が開設
「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」オフィス(完成予想図)
三菱地所は12月8日、北海道日本ハムファイターズの新球場「北海道ボールパークFビレッジ」内にワーケーションオフィス「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」を来年3月に開設すると発表した。施設は和歌山県・南紀白浜、長野県・軽井沢、静岡県・熱海、静岡県・下田、神奈川県・箱根に続く「WORK×ation プロジェクト」6拠点目。
施設は、北海道北広島市Fビレッジの新球場「ES CON FIELD(エスコンフィールド)HOKKAIDO」のレフトスタンドに位置する「TOWER 11(タワー・イレブン)」の延床面積82.8㎡。構成はパークサイド1室(46.7㎡)、フィールドサイド1室(36.1㎡)の2部屋。各部屋にWi-fi、プロジェクター、ホワイトボード、ディスプレイ、OAタップ、文具などを設置する。
同社は、フレキシブルなワークスタイルに対応する商品・サービスを提供するため2018年8月からワーケーション事業を展開しており、今回の施設はFビレッジ内での野球観戦をはじめとした様々なアクティベーションとのコラボレーションにより「イノベーション創出体験」「新たな観戦体験」を創造する。
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球場内でのこの種の施設は、三井不動産などが東京ドーム内のプレミアムラウンジをワークスペースとしてワークスタイリング会員向けに提供するのを取材している。アンチ巨人の記者だが、素晴らしい施設だと思った。横浜スタジアムにもあると聞いた。
北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO」では、徒歩1分の日本エスコンのマンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」全118戸が分譲開始からわずか8か月で完売し話題となった。
また、デベロッパーの野球がらみの話題では、ヤクルト村上選手が三冠王を達成したことから、トップスポンサーである〝好立地、ぞくぞく〟のオープンハウスが「東京の家 3億円」をプレゼントして、3億円を超える広告・宣伝効果(記者の予想)をあげた。
購入者の4割が道外 日本エスコン 日ハム新球場に隣接マンション118戸完売(2022/9/21)
東京ドームをワークスペースとして提供 通年利用検討か 三井不動産ほか(2022/4/20)
村神様 祝56号!三冠王も確定 オープンハウス「1億⇒3億円の家」に大幅増額(2022/10/4)
「世界でうちだけ」 10年で半額、20年で全額買戻し PALLET HOUSE JAPAN
PALLET HOUSE JAPANのブース
12 月7日(水)~12月9日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催されている日本経済新聞社主催「SDGs Week EXPO 2022」を半日かけて見学取材した。会場の広さは約26,000㎡、出展ブースは350くらいあったか。一通り回った中でもっとも印象に残ったのは、産業廃棄物でもある木製廃パレットや建築足場古材をヴィンテージ家具に変貌させる事業を展開しているPALLET HOUSE JAPANのブースだった。
素晴らしい作品が展示されていた「WOOD DESIGN AWARD 2022」のコーナーを見た後だった。一見して廃材を利用したものであることが分かるテーブルに目が吸い寄せられた。「いいデザインですね」と声を掛けたら、大町浩社長は、記者が尋ねもしないのに次のようにまくし立てた。
「このような廃材を利用して家具を製作しているのは世界に2つ(もう一つはどこか話さなかった)。釘などが残っているので製品にするのは結構難しい。珍しい事業であることからテレビなどメディアで取り上げられるようになり、今年は11本。時間にしたら2時間超。昨年からだと18本。関西企業ではうちがもっとも露出度が高いでしようね。わたしは『吉本』出身で、坂田利夫の2番弟子(1番ではなかったようだ)」
肝心の値段を聞いた。「このテーブル? 15万円くらい。10年間使ってくれたら半額で、20年間なら売った値段で買い戻す特約付き。こんなことをしているのは世界中でもうちしかない。もともと廃材なので、全額で買い取っても再販できる自信がある」
なるほど。さすがもと芸人だ。落ちもある。「(会社が)潰れたらごめんね」
大町氏(こんなポーズを記者は注文したわけではない。念のため)
PALLET HOUSE JAPANのブースは日本ウッドデザイン協会のブースの隣にある
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同社のホームページで調べた。創業は2014年3月。「誰もやらない、誰もやれない」を理念に、世界的インテリアブランドを目指すという。本社所在地は大阪府東大阪市水走3-3-7、TELは072-966-8010、営業時間は年中無休(AM10:00 〜PM6:00)。
「坂田利夫」と言われても、あああの人かとしか思い浮かばない記者だが、日本だけではなく「世界初」の企業と巡り合うことができた。これも何かの縁か。現場取材はこれだから楽しい。「SDGs Week EXPO 2022」は3日間で6万人の来場者を見込んでいる。
「すべての人、すべての領域をにじませるのがアート」 三菱地所&東京藝大 連携協定
吉田氏(左)と日比野氏(提供:三菱地所)
三菱地所と東京藝術大学は12月6日、包括連携協定を12月5日に締結したと発表。産学連携を強化することで、大手町・丸の内・有楽町エリア(大丸有)で、アートが有する力を介することで企業・個人のクリエイティビティを高め、ビジネスアイディアの発見と新しい産業の創出を促進するのが目的。
今後、大丸有エリアでの「藝大アートセンター」構築に向けて、双方のリソースを活用し、ビジネスセンターに求められるアートの役割について研究し、社会人・学生向けプログラムを研究・提供する寄附講座を開講する予定。
両者は2007年以来「藝大アーツイン丸の内」を開催しており、様々なアートイベントでの連携を深めてきた。
三菱地所執行役社長・吉田淳一氏は「藝大との協業をより一層強化し、双方の知見・ノウハウを活用すると共に、アートを触媒として、大丸有エリアに立地する企業や近接するアカデミアとの連携・協業を推進することで、日本の豊かな未来を創造していく」とコメントしている。
東京藝術大学学長・日比野克彦氏は「三菱地所と藝大の目指す社会は、イメージする力を基盤に構築していくという共通したところがある。三菱地所が持つまちづくりの知見を元に、丸の内地域でのアートアクションの実践や、アート×エコビジネスによるアート・リーディングプログラムを作り、社会的課題の解決へ、そして未来の地球へ貢献していく。アートは個々の違いをそれぞれの特性として認識し、その差異がひとりひとりの心を動かすことができるもの。すべての人たち、すべての領域を滲ませることができるのがアート」とコメントしている。
本日COP15開幕 生物多様性の情報開示焦点 積水ハウスのフォーラムから
「都市の生物多様性フォーラム」(左からアナウンサー木佐彩子氏、八木氏、菊池市、河村氏、仲井氏、村松氏、今森氏、河口氏=神田スクエアで)
積水ハウスが11月30日に開催した「都市の生物多様性フォーラム」をアーカイブで視聴した。12月7日(日本時間8日)にカナダで開幕するCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)第2部を見据えた基調講演やディスカッションが行われた。同フォーラムは昨年11月の第1回に続く第2回目。
基調講演では、積水ハウス代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、同社「5本の樹」計画と琉球大学のビッグデータシステムを共同検証し、世界初の都市の生物多様性の定量評価システム「ネイチャー・ポジティブ方法論」をオープンデータ化してから1年経過したことを踏まえ、「この1年間で予想外の嬉しい取り組みが3つあった。一つは都市緑化機構さんと連携して企業緑地の生物多様性評価を強化すること、二つ目は教育分野への展開、三つ目は東京大学とのウェルビーイングの共同研究が始まったこと」などと同社の生物多様性の取り組みが前進していることを報告した。
これを受け、国際自然保護連合日本委員会事務局長・道家哲平氏は、多くの国・団体から「情報開示義務がなければ、政府も企業(金融)も、目隠しして空を飛ぶようなもの」との声があることを紹介し、COP15では企業の生物多様性の取り組み状況を開示し、義務化すべきという論議が行われる可能性を示した。
このほか、環境省大臣官房 総合政策課 環境教育推進室長・河村玲央氏は同省の環境教育プログラムについて、都市緑化機構企画調査部主任研究員・菊池佐智子氏は同機構の「SEGES(シージェス)」の「育てる」「都市オアシス」「計画(つくる緑)」についてそれぞれ報告した。
このあと行われた、積水ハウスESG経営推進本部環境推進部スペシャリスト・八木隆史氏が司会役とする、写真家・今森光彦氏、千葉大学非常勤講師でNPO法人生態教育センター理事、生態計画研究所主席研究員・村松亜希子氏、立教大学特任教授で不二製油グループ本社CEO補佐・河口眞理子氏3氏によるディスカッションでは、生物多様性の取り組みは点から線へ、さらに面的に広げなければならないことが強調された。
仲井氏
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フォーラムの全てを紹介する余裕はないが、出身地・大津市の45年間も管理が放棄された、シカやイノシシも避けて通る山林や耕作放棄された農地を取得し、自ら農業も行っている写真家の今森氏が興味深いことを話されたので紹介する。
今森氏は写真を撮るときは被写体と距離を置き、冷静な目で俯瞰的、鳥瞰的に眺め、そしてその被写体の中に入り込むようにして、中から見える世界を切ると話した。そうすると自然と人間の関係性がよく分かるのだという。
記者が好きな作家・丸山健二氏は、同じようなことを語っている。丸山氏は、小説を書くうえでもっとも大事なのは人間やものを徹底して観察することだとし、例えていえばカメラだと話している。サングラスをかけているのは、目を保護するためでもあるが、じろじろ眺めていることが相手に悟られないからだという。丸山氏の小説には、人間だけでなく動植物、あるいは無機物を主人公にしたものが多い。
生物多様性を考えるとき、今森氏や丸山氏のような視点が必要だと思う。人間と自然界の関係性をしっかり捉えることだ…小生などは自分の物差しでしかものごとを測れないが…。
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演壇に飾られていた樹木がまた素晴らしい。同社に樹種を聞いた。シラカシ、アオキ、コナラ、イスノキ、ナンテン、サツキツツジ、ユズリハ、ハクサンボク、アセビ、タブノキ、カクレミノ、ソヨゴ、アオダモ、アカマツ、ドウダンツツジ、シャリンバイだそうだ。
立地にふさわしい防音室、循環ライブラリ 三井不レジ「文京本駒込」人気
「パークホームズ文京本駒込」
三井不動産レジデンシャルが分譲中の「パークホームズ文京本駒込」を見学した。駒込駅から徒歩5分の全88戸で、入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」のほか、ワークスペース、ピアノ・楽器の練習ができる防音室を備えているのが特徴で、第1期44戸が完売。好調なスタートを切った。
物件は、山手線駒込駅から徒歩6分、東京メトロ南北線駒込駅から徒歩5分、文京区本駒込5丁目の商業地域・第一種住居地域(建ぺい率96.55%、容積率566.57%)に位置する14階建て全88戸。第1期2次(4戸)の登録受付は2022年12月9日(金)~12月9日(金)、抽選日は12月9日(金)。価格は1億458万円~1億4,758万円、専有面積は65.43㎡(1戸)・74.67㎡(2戸)・77.80㎡(1戸)。入居予定は2024年4月上旬。施工は村本建設。
物件ホームページを7月に立ち上げ、案内は10月にスタート。11月25日に分譲した第1期44戸(専有面積57.83~90.52㎡、価格9,058万~20,858万円)が完売。第1期の坪単価は560万円。購入者は子育てファミリーが中心。これまでの反響は2,000件超。
現地は、イチョウ並木が美しい敷地南側の不忍通りに接道しているほか、西側、北側、東側(一部)に接道。建物は内廊下方式で、標準階の住戸は6~7戸、最上階は5戸。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機、キッチン・洗面フィオレストーン天板、食器棚、床タイルなど。
同社都市開発二部事業室・中村信介氏は、「小学校の通学校が文京区内でも人気が高い『3S1K』(昭和小・誠之小・千駄木小・窪町小)の昭和小学校という立地に対する子育てファミリーの評価が高く、電子ピアノを備えた防音室や『循環ライブラリ』などの共用部施設も支持されています。競合物件は多くありません」と語った。
基壇部の外観デザイン
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ワークスペースや防音室、「循環ライブラリ」の共用施設がアッパーミドルの子育てファミリーに受けているのだろう。坪単価からして大半は1億円超の価格だが、凄い売れ行きだ。
インター・プロデュースの澤村正人氏による三層構成のデザインがいい。とくに書架に蔵書が並ぶシーンをモチーフにした基壇部がとても印象的だ。また、1戸1戸のプランもよく練られているのも人気の要因の一つだと思う。ワイドスパンが中心で、北向きだが57㎡のプランでも間口は7770ミリ。よくある田の字型はひとつもない。
循環ライブラリ
現地(クレーンの立っている部分)
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三井日本橋タワー5階に設けられている同社の日本橋サロンを訪ねるのは初めてだったが、同業他社の常設モデルルームと比較して勝るとも劣らないのは間違いない。
全体の広さは数百坪ありそうで、受付カウンターは江戸切子のデザインがあしらわれており、ラウンジ正面には「三井」の象徴でもある越後屋の店章(家紋)が染められた幅5mはありそうな暖簾が目を射た。日本橋を中心に忠実に再現したジオラマも目を引く。床も突板仕上げ。接遇スペースのテーブルは本物の原木で、椅子も本革張り。
これだけで来場者を圧倒するはずだが、74㎡のコンセプトルームの基本スペックも価格に見合うレベルだし、華美でないカラーリング・デザインも優れている。
「三井の住まい 日本橋サロン」
接遇スペース
入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」 三井不レジ「文京本駒込」(2022/8/6)
会話ができ、音も香りも風も吹く 日本橋「未来ののれん展」11/11まで開催(2019/11/2)