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アルヒ 本当に住みやすい街大賞
順位 2023年 2022年 2021年 2020年 2019年 2017年
1 西八王子 辻堂 川口 川口 赤羽 南阿佐ヶ谷
2 流山おおたかの 川口 大泉学園 赤羽 南阿佐ヶ谷 勝どき
3 新小岩 多摩境 辻堂 たまプラーザ 日暮里 赤羽
4 保谷 大泉学園 有明テニスの 柏の葉キャンパス 川口 三郷中央
5 辻堂 海浜幕張 大井町 入谷 柏の葉キャンパス 戸塚
6 たまプラーザ たまプラーザ 王子 勝どき 南千住
7 新川崎 花小金井 小岩 武蔵小金井 南千住 大泉学園
8 川越 月島 花小金井 小岩 千葉NT中央 千葉NT中央
9 東村山 船堀 千葉NT中央 ひばりヶ丘 小岩 小岩
10 鶴ケ峰 新秋津 浦和美園 東雲 矢向 浮間舟渡
アルヒ 本当に住みやすい街大賞 シニアランキング
1 浜町 ひばりヶ丘 武蔵小山 木場 大泉学園  
2 西白井 稲毛海岸 南大沢 大泉学園 神田  
3 大泉学園 相模大野 平塚 平塚 印西牧の原  

 

 年末に発表される「流行語大賞」や「今年の漢字」と張り合う意図もあるのか、今年もARUHI(アルヒ)の「本当に住みやすい街大賞2022」(大賞)が先日発表された。ほぼ毎日チェックする不動産流通研究所「R.E.port」は触れず、週刊住宅と住宅新報が報じたばっかりに知ることになった。善と悪も正と邪も、白と黒も右も左も区別がつかなくなった世の中だ。ほっとけばいいのに、頭の片隅にかすかに残っている正義感が頭をもたげたので書くことにする。今回で3度目だ。来年は書かなくて済むようになってほしい。

 さて、その大賞。始まったのは2017年だ。アルヒは「理想ではなく、実際にその地域で〝生活する〟という視点から、ARUHIのサービスをご利用のお客さまの膨大なデータを基に、本当に住みやすい街を選定することで、人々の住まい選びの参考になることを目的」とし、「これらのデータを基に、住環境、交通の利便性、教育・文化環境、コストパフォーマンス、発展性の5つの基準を設定し、住宅や不動産の専門家が参画する選定委員会による公平な審査」のもと選定したと発表した。

 そのリストをみて記者は驚いた。上位にランクされた「南阿佐ヶ谷」「勝どき」「赤羽」は〝いい街〟だとは思ったが、当時、マンションの売れ行きが最悪だった「三郷中央」が4位に入っており、ほとんど供給がない「浮間舟渡」がベスト10入りしていたからだ。その他ベスト10入りした街のレベルならほかにも数えきれないほどあると思った。

 馬鹿馬鹿しくて無視を決め込んだのだが、その後も大賞はお笑いタレントなどを起用して大々的に宣伝され、それを無批判に報じる業界紙の無神経さにいささか腹を立て、一昨年と昨年、批判的な記事を書いた。それぞれ約3,000件のアクセスがあったので、読まれた読者もいるのだろう。ご存じない読者の方もいるだろうから、過去6年間の大賞のベスト10を別表に紹介する。

 今年は「西八王子」がトップだ。記者は完全に虚を突かれた。「西八王子」は14年前見学した野村不動産「プラウド西八王子」以後、一回も訪れていない。再開発で街が一変でもしたのだろうかと、選定理由を読んだら、八王子IC付近に次世代型複合商業施設が予定されており、JR八王子駅は生活圏で、3LDKのマンションが4,000万円台で、新築戸建てが3,000万円台で購入可能とあった。

 なるほど。その論法が成り立つなら、価格上昇が著しい主要駅の隣駅が〝本当に住みやすい〟駅・街になるということだ。わが京王線でいえば、「調布」の先の「西調布」「京王多摩川」、「聖蹟桜ヶ丘」の先の「百草園」、「京王多摩センター」の先の「京王堀之内」、「南大沢」の先の「多摩境」(この多摩境は昨年ベスト10入りしている)ということか。

 これはこれで分かりいい。毎年ベスト10入りする駅は乱高下どころか、月光仮面やスーパーマンのように突如現れ、たちまち消える理由の説明がつく。

 今年2位に浮上した「流山おおたかの森」もその一つなのだろうが、小生は異論はない。〝母になるなら〟〝父になるなら〟でヒットした井崎市政のお陰だと思う。ただ、この駅・街はもう10年以上前から人気になっている。いまさらという観は否めない。

 このほかの駅・街には触れないが、不思議なのは、「大賞」と「シニアランキング」のいずれかに唯一6年連続ランクインしている「大泉学園」だ。記者もいい街だとは思うが、この程度(失礼)の街は首都圏に100か所も200か所もあると思う。アルヒや選考委員、あるいはその関係者が住んでいるのではないかと勘繰りたくなる。

 不思議といえば、西武線は「大泉学園」を含め「ひばりヶ丘」「保谷」「新秋津(秋津)」「東村山」「花小金井」の6駅がランクインしていることだ。これは先に書いたように「石神井公園」や「所沢」の前後の駅で、狭小戸建ての〝メッカ〟の一つであるからだろう。

 この伝でいえば、街のポテンシャルは西武線に負けない京王線は過去6年間で「多摩境」「南大沢」2駅しかなく、小田急線も「相模大野」のみというのも納得できる。

 大賞の審査委員長を務める住宅ジャーナリスト・櫻井幸雄氏も週刊住宅12月19日号のコラム記事で「ブーイングもあるがインパクトも大」とし、「無名とも言える街が多く選ばれたり、昨年大賞の辻堂が今年5位に下がったりするのが、『本当に住みやすい街大賞』の特徴」とし、「なぜ、そのようなことが起きるかというと、『直近1年間で、フラット35の利用者が多かった街』を選考対象としているから。フラット35だから、利用者は年収500万円前後が多くなる。平均的な方々だ。『普通の人』がマイホームを買いやすい街から、諸条件を勘案して、ベストな街を選ぶ」「ために、マイナーな駅でも再開発によって、一気に大賞に輝くことがある。大賞となったものの、その後人気上昇で価格も上がれば、順位が落ちる」と述べている。

 櫻井氏が「ブーイングもあるが」としているのは、小生以外も批判的にみている業界関係者も多いということだろうが、「大賞となったものの、その後人気上昇で価格も上がれば、順位が落ちる」としているのは自己撞着だ。自らマイナーな駅を〝住みやすい〟と持ち上げながら、価格が上昇し〝普通の人〟が買えなくなったらお役御免と切り捨てる。

 これはあまりにも消費者を馬鹿にしていないか。フラット35の利用者は〝普通の人〟が多いのは記者もよく分かるが、取得能力からして〝理想の住宅〟購入をあきらめざるを得ず、次善の選択肢として、いくつかの選好要因を捨てることでマイホームを手にするという、普通の人の厳しい住宅取得環境を大賞は浮き彫りにしている。それを笑いの種にする。その神経が分からない。マッチポンプといったら失礼か。

 そもそも、同社は調査対象となった物件の数を公表していないし、年間20兆円を超える住宅ローン貸出総額に占める同社のフラット35利用者は微々たるものでしかない。大賞を選考した根拠となる利用者の母数、属性などを公表すべきだ。

 だが、しかし、アルヒを通じて住宅を購入された方に罪はない。〝住めば都〟〝痘痕もえくぼ〟だ。どんなマイナーな駅でもいいところはあるものだし、美しいところだけを見るようにすれば、多少の難点など全然気にならなくなる。

 普通の人に住宅を勧める業界関係者の方々も同様だ。十全のマンションも戸建てもほとんど存在しない。難点をカバーする企画でもって良質で安価な住宅を供給していただきたい。

◇        ◆     ◇

 アルヒの本業は、このところの住宅価格と長期金利の上昇により苦境に立たされているようだ。

 住宅金融支援機構のデータによると、2021年度のフラット35の申請戸数は94,705戸(前年度比86.3%)、実績戸数71,788戸(同86.0%)、実績金額22,127億円(同86.4%)となっている。2021年度の住宅ローン新規貸出額は約21兆円で、6年連続20兆円を超えているが、フラット35の利用者は漸減傾向にある。

 一方、フラット35の融資実行件数シェアは27%を超え、12年連続シェアNo.1のアルヒの2022年3月期決算の売上高は251億円(前期比6.1%減)、営業利益61億円(同20.6%減)、経常利益42億円(同18.1減)となっており、融資実行業務は121億円(同14.5%減)と大幅に落ち込んだ。融資実行件数は4,691件(同27.1%減)、融資実行金額(累計)は6,580億円(同15.7%減)。

 2022年10月27日には通期予想を下方修正し、売上高245億円(期初予想比11.6%減)、営業利益45億円(同28.6%減)、当期利益31億円(同27.96%減)を見込んでいる。期末配当予想も30円から25円に減配する予定。

 この業績について、代表取締役社長CEO兼COO・勝屋敏彦氏は「フラット市場は非常に厳しい環境にある。物価高、建築費の上昇を要因とする住宅価格の上昇のほか、長期金利の上昇によって固定金利より変動金利を選択される人が増加したのが要因。今後はSBIグループのTOBにより連結子会社になったが、変動金利にも対応できるよう守備範囲を広げ、シナジー効果の創出に期待している」などと決算説明会で話している。

頂門の一針、蜂の一刺しにならないが アルヒ「本当に住みやすい街大賞」批判(2021/12/12)

不快な臭い芬々 〝住みやすい〟街ランキング調査 無聊をかこつ記者のつぶやき(2020/12/14)

大健闘? それとも? 野村不動産「プラウド西八王子」(2008/11/5)

 

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「レテ テニスクラブ」

 大田区西馬込でフィットネスクラブ及びテニスクラブ・スクールなどを運営するレテ(代表取締役:河原弥生氏)は2023年1月4日、会員制テニスクラブ「レテ テニスクラブ」をリニューアルオープンする。12月20日、施設がメディアに公開された。樹齢100年超と思われる敷地内の巨木の借景が見事だ。

 「レテ テニスクラブ」は、〝テニス×住居×庭〟をコンセプトにテニスコート、クラブハウス、カフェ「カフェ ド レテ」、集合住宅「Lilas d’Été(リラ ド エテ)」からなり、200年以上の歴史を持つ敷地約2,000坪の屋敷に植えられていたと思われるスダジイ、サクラ、サルスベリ(百日紅)、ミカン、ツツジ、アジサイなどの巨木が植わっている。

 「Lilas d’Été(リラ ド エテ)」はフランス語で、「リラ」は「百日紅(サルスベリ)」、「レテ」は「夏」、つまり「夏のリラ」という意味。旧家のシンボルツリーとしてサルスベリが植わっていたという。

 施設は、都営浅草線西馬込駅から徒歩5分、大田区西馬込2丁目の第一種低層住居専用地域(容積率150%)に位置する敷地面積約1,269㎡、RC3階建て延床面積約1,378㎡。用途はテニスクラブハウス+カフェ+集合住宅。集合住宅の専用面積は48.00~53.87㎡、賃料は175,000円(坪1.2万円)~216,000円(坪1.3万円)。設計はオンザインパートナーズ、ランドスケープデザインはSOLSO(DAISHIZEN)、サインはUMA、施工はキクシマ。

 テニスコートはオムニコート:3面/ハードコート:2面。テニスクラブは入会金(税込):80,000円、月会費(税込):プレミアム会員 44,000円(土日、祝日を含む午前7時~21時)、フルタイム会員29,700円(土日、祝日を含む午前9時~18時)、ウィークディ会員19,800円(土日、祝日を除く午前9時~18時)、モーニング会員22,000円(土日、祝日を含む午前7時~午前9時)。火曜日は定休日。

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ショップ

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カフェ メニューの一種

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クラブハウスラウンジ

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 日本選手が出場する国際大会はテレビで視聴するが、テニスはさっぱりわからないので、クラブハウスの料金が高いのか安いのか分からないし、設備仕様についてもコメントのしようがない。

 しかし、施設の特徴の一つである敷地南側に配されている庭園と賃貸住戸については〝素晴らしい〟と断言できる。

 まず、庭の樹木。写真を見ていただきたい。オーナーの河原氏は「全体敷地は2,000坪、樹木の樹齢は200年以上かも」と話したように、常緑緑のスダジイやサルスベリ、イロハモミジなどの巨木は幹回りの太さからして樹齢は100年前後部あるのはほぼ間違いない。施設の門扉は本物のロートアイアンだ。

 惜しいのは、周囲は1低層であることも考慮されてか、隣接の建築物の樹木も含めてみんなかなり強剪定されていることだ。樹高はせいぜい10mくらいか。地域で話し合って貴重な樹木の保護・保存をしていただきたい。大田区には保護樹木制度もある。市も積極的に関与すべきだと思う。

 賃貸住戸の設備仕様は普通だと思ったが、過半の住戸からは庭の借景が眺められるし、富士山を眺望できる住戸もあるので、その価値を考慮すれば賃料は〝超割安〟だと思う。分譲マンションだったら、敷地南側の住戸は坪400万円をはるかに突破し、設備仕様によっては坪500万円でも売れるはずだ。参考までに伊藤忠都市開発「クレヴィア西馬込」の記事を添付する。

 併設されているカフェではキーマカレーやホットサンド、コーヒー、スイーツも試食させてもらった。とてもおいしかった。

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全景

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エントランス(門扉はロートアイアン)

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スダジイ

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サルスベリ

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賃貸住戸(木調ルーバーが印象的)

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オーナーから頂いたみかん(「1個100円で譲ってください」とお願いしたが、受け取ってくれなかった。酸味は強いが、市販されているものと遜色ない。ベンチはヒマラヤスギ)

ディスポーザー、玄関手洗い収納標準、選べる洗面、伊藤忠都市開発「西馬込」(2022/6/19)

 

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「ファインコート新百合ヶ丘グランレガシー」

 「次世代ZEH+」をクリアした三井不動産レジデンシャルの都市型戸建て「ファインコート新百合ヶ丘グランレガシー」を見学した。小田急線新百合ヶ丘駅から徒歩910分の全29区画で、第1工区18区画のうち1217日に抽選分譲した第1110戸が最高6倍、平均3.2倍で即日完売した。1億円前後の高額ながら、住環境に恵まれた希少立地が人気の要因だ。

 物件は、小田急線新百合ヶ丘駅から徒歩9分~10分、川崎市麻生区万福寺4丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率80%)に位置する全29区画(建築確認未取得区画11区画含む)。建築確認済みの第1工区18区画のうち第1110戸の土地面積は土地面積は125.20132.60㎡、建物面積は97.36113.28㎡、価格は8,690万~12,490万円。建物は202210月竣工済。構造・工法は木造2×4工法2階建て。施工は三菱地所ホーム(8区画)、エステーホーム10区画)。

一次エネルギー消費量を25%以上削減(ZEH20%以上)し、発電設備などにより再生可能エネルギーの自家消費を拡大する「次世代ZEH+」を満たしており、主な省エネ・創エネ設備は太陽光発電、「HEMS」、アルミ樹脂複合サッシ、LowEガラス、エネファーム、TES温水式床暖房(キッチン含む)、24時間換気システム、EV充電設備などのほか、一部にV2HVehicle to Home)を採用。

物件ホームページを7月に立ち上げて以降の問い合わせは約860件。11月から集客開始してからの来場者は、小田急線沿線を中心に約110組。1217日に抽選分譲した結果、最高6倍(2住戸)、平均3.2倍で即日完売した。購入者の約63%は地元の麻生区住民、他は地域に地縁のある人など。年代は30代の半ばから40代の半ばが中心。

現地は、土地区画整理事業により開発され、1区画の最低敷地面積が125㎡以上と定められている住宅地の一角。同社の調べによると、過去5年間に新百合ヶ丘駅圏内徒歩10分圏で供給された分譲住宅は8物件あるが、29戸の規模は最大という。

住戸プランは、天井高約2.7m1821畳のリビング・ダイニング・キッチン、DEN、アイランドキッチン、マルチスペース、メーターモジュール階段など。

同社横浜支店営業室主管・水越敏彦氏は「来場者のみなさんに〝ワオッ〟と驚いていただけるようリビング・ダイニングの広さと高さを確保しました。お客さまの評価ポイントがもっともむ高いのは立地環境です」と語った。

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 京王線多摩センター居住の記者は、街のポテンシャルは新百合ヶ丘に負けないと思っているのだが、多摩センターだったらまず今回のような価格では売れない。せいぜい8,000万円だろう。

 新百合ヶ丘駅に近い中古マンションの価格も新築時価格より高い物件もあると聞いて、これまたびっくりした。三菱地所レジデンスなどが近く分譲する「ザ・グランクロス多摩センター」(289戸)は、新百合ヶ丘の中古よりは高い値が付くはずだが、かといって東京建物「ブリリア聖蹟桜ヶ丘」(773戸)の坪270万円を上回ることができるかどうか。京王プラザホテル多摩も来年1月で閉店となる。新百合ヶ丘との〝格差〟はどんどん広がっている。

「次世代ZEH+」について。記者は窓面の大きさに驚愕したのだが、これこそが「次世代ZEH+」の凄さの象徴だ。「ZEH」のよさは住んでみないと分からない部分も多いが、ZEHMを満たしている三井ホームの賃貸木造マンション「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」の居住者アンケートの記事を添付する。

 マンションも分譲戸建てもZEHは必須要件で、これからは加速度的に広まるはずだ。

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1号棟(左)と16号棟のモデルハウス

木造賃貸&ZEH-M 満足度は98% 三井ホーム「稲城」入居者アンケート(2022/12/3

市況を考慮か 割安の「プライムアリーナ新百合ヶ丘」(2008/3/11

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「Otemachi One Garden」(写真は記者撮影の★以外は全て三井物産と三井不動産提供)

 三井物産と三井不動産は12月16日、「Otemachi One」の緑地空間「Otemachi One Garden」をオープンし、両社による複合開発「Otemachi One」完成させた。

 「Otemachi One Garden」は広さ約6,000㎡で、うち約3,000㎡が芝生広場を中心とするイベントスペース。敷地は憩う、潤う、賑わう、働く、思索するなど7つのゾーンで構成され、中・高木約300本、低木約6,600本を植樹。敷地西側の皇居と大手町エリアの緑ネットワークの形成と生物多様性の保全、緑地空間の創出に貢献する。年間11トンのCO2を固定化すると試算されている。

 オープンを記念して同日、世界的なフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン氏によるフラワーライブパフォーマンスと、イルミネーションの点灯式が実施された。ニコライ・バーグマン氏は、「普段は多様な色を取り入れた作品は少ないですが、Otemachi One Gardenの多様性の意味を込めて、様々な色を取り入れた作品をライブパフォーマンスで制作しました」と語った。

 イルミネーション点灯式では、200個以上のランタンが灯され、幻想的な夜の 「Otemachi One Garden」が演出された。イルミネーションは2023年2月14日まで実施される。

 また、12月25日(日)までオープニングイベントとして「Winter Bloom」が開催され、マルシェやフードトラックのほか、来場者に花がプレゼントされる。花は茎が曲がっていることや規定サイズよりも小さいことなどで市場に出すことができない「規格外の花」を一部使用する。

 「Otemachi One」は、東京メトロ大手町駅直結の敷地面積約20,900㎡、31階建て三井物産ビルと40階建てOtemachi Oneタワーからなるオフィス、商業、多目的ホール、ホテルなどからなる延べ床面積約358,700㎡の複合施設。設計・監理は日建設計・鹿島建設、施工は鹿島建設。竣工は2022年2月。

 「Otemachi One Garden」は、敷地面積約6,000㎡。設計・監理は日建設計・鹿島建設、施工は鹿島建設。ランドスケープデザインはoffice ma。竣工は2022年12月。

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歩道はサンタセシリアクラシック

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ニコライ・バーグマン氏

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 当日はメディアツアーも実施されたので取材した。フラワープレゼントコーナーには長蛇の列ができており、この日用意された約400本(輪)の花はまたたくまになくなった。

 何人かに話を聞いた。30代の女性は「お花が好きなので、おうちに持って帰り飾ります」と話した。30~40代の男性にも声を掛けたら、ほとんどが「妻へのプレゼント」と語った。(「夫へのプレゼント」と語った既婚者と思われる女性はひとりもいなかった)

 インペリアルフォレストのベンチに腰掛け、軽食を取りながら歓談していた40代の女性3人組は「日本風ではなく、ヨーロッパの庭のようなのがとてもいい」「四季の移り変わりが楽しみ」と語った。

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 区域面積のほとんどが商業系用途地域の千代田区だが、区の緑被率は23.22%(平成30年)で23区内では練馬区に次いで高い。区域面積約11.6平方キロメートルのうち約12%を占める約2.3平方キロメートルの皇居があるためだが、大手町・丸の内・有楽町・永田町地域の緑被率は23.89%と、皇居を除いた区の平均緑被率20.4%を上回っている。

 エリア内には16.2haの日比谷公園のほか、「大手町川端緑道」約9,400㎡、「大手町ホトリア」広場約3,000㎡、「大手町の森(大手町タワー)」約3,600㎡、「丸の内パークビル」広場1,500㎡などがある。

 今回の「Otemachi One Garden」は、水景の演出やゆったりとした歩道空間とベンチが設けられているのが優れている。

 このほか、エリア内では三菱地所が開発中の「TOKYO TORCH」には約7,000㎡の大規模広場「TOKYO TORCH Park」も予定されており、皇居を含めた大丸有エリアの緑被率は、海外の主要都市と比較してどこにも負けないのではないか。街のポテンシャルを左右するのは緑だ。

 ただ、この種の取り組みでは、積水ハウスの「新梅田シティ」の約8,000㎡の「里山」がもっとも優れていると小生は思う。惜しいのは「Ootemori」だ。自然の森は素晴らしいが、森と人をつなぐ演出が足りない。散策できるようにしてほしい。

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★内堀通りのクスノキ(左が「Otemachi One Garden」)

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★「Ootemori」

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「濠プロジェクト」(提供:三菱地所)と★「大手町ホトリア」

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★積水ハウス「新・里山」

知る人は懐かしく、知らない人は行きたくなる 地所「TOKYO TORCH」仮囲いアート(2022/11/15)

台湾由来の幼虫(ヤゴ)都心で初めて確認 三菱地所「濠プロジェクト」見学(2022/6/5)

〝アホぬかせ、東京目指しとんとちゃうねん〟淀屋橋odona前で「桜SAKEフェスタ」(2019/4/8)

田舎の原風景を見た 積水ハウス「新・里山」(2010/4/8)

 

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「ETOWA KISARAZU(木更津)」

 コスモスイニシアは12月16日、国や地方自治体の公共施設などを活用したアウトドアリゾート「ETOWA(エトワ)」の2施設目「ETOWA KISARAZU(木更津)」を開業する。前日の15日、同社代表取締役社長・高智亮大朗氏と木更津市長・渡辺芳邦氏が出席してオープンセレモニーを実施し、施設をメディアに公開した。

 施設は、木更津東ICから車で5分、JR内房線木更津駅からタクシーで25分、木更津市下郡に位置。開校が1873年(明治6年、当時下郡小学校)で、平成31年3月に閉校となった木更津市立富岡小学校跡地を10年間借り上げ、コンバージョンしたもの。宿泊施設として2棟1区画の4ベッドキャビン(6区画)と1棟1区画の2ベッドキャビン(9区画)の全15区画、オリジナルのBBQピットを校庭に整備。校舎1階の入り口をエントランスに、保健室をマーケットに、校長室をミーティングルームに、職員室は地元のコーヒーショップ「THE COFFEE」を誘致して宿泊者以外も利用できるカフェラウンジにそれぞれリノベーションし、シャワールーム、みんなのトイレを設置している。

 デザイン監修は第一弾の「ETOWA KASAMA(エトワ笠間)」と同様アクタス。ログ小屋「IMAGO」の施工はアールシーコア。宿泊料金は繁忙期:28,000円/人、閑散期:20,000円/人(BBQその他飲み放題・食べ放題、朝食付き)。チェックインは18:00~20:00、チェックアウトは11:00~13:00。

 セレモニーで高智氏は、「当社は『Next GOOD 』をミッションに掲げ、2020年から新規事業の一つとして『会(エ)と話(ワ)』をコンセプトに『ETOWA(エトワ)』事業に取り組んでおり、今回は『笠間』に次ぐ第2弾。海あり山ありの豊かな自然に恵まれており、温泉もアウトレットもある。わたしたちの原風景。この恵まれた立地を生かし、非日常を演出しました。た。今後は宿泊機能だけでなく、教育、サテライトオフィス機能など様々なニーズを取り込み進化させ、地域に貢献することを約束いたします」と挨拶した。

 渡辺氏は、「この種の施設は市内で2件目。卒業生の方も感無量と話されたように、たくさんの思い出が詰まっている小学校。賑わいを取り戻していただき、自然と調和したSDGsの取り組みを推進している木更津市への支援、協力を賜りたい」と述べた。

 同社の公的不動産の有効活用の取り組みとして、第一弾の「ETOWA KASAMA(エトワ笠間)」が2020年7月に開業している。

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高智氏(左)と渡辺氏

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2棟1区画の4ベッドキャビン

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挨拶する高智氏

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 何に感動するかは人それぞれだが、記者は敷地内に植わっているヒバ、オリーブ、スギ、ケヤキ、ヒノキ、モミジ、イチョウ、キンモクセイ…に圧倒され、畏怖の念すら覚えた。

 イチョウの胴回りは1m超、スギも1m近くあった。樹齢は開校時に植えられたとすれば約150年も前だ。樹木に畏怖の念すら覚えた。開校が明治6年(1873年)というから今から149年も昔、西郷隆盛、木戸孝允、板垣退助、大隈重信、岩倉具視らが活躍した時代だ。

 その後、日清・日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、第二次世界大戦、終戦、平和憲法、エネルギー革命、高度成長、バブルの発生と崩壊、東日本大震災…夏の暑さにも冬の寒さに耐え、風雨に晒されながら、樹木は悠久の時を刻み続け、生徒を見守り続けてきた。

 外貌は決して美しいとは言えない。ひこばえだらけで樹皮ははがれ、苔むし、腰(幹)は曲がっており、醜悪ですらある。だからこそ大きな価値があると思った。生きる意味、価値をわれわれに教えてくれると。

 もう一つ、この学校には大きな財産がある。校門には「ありがとう」と廃校の言葉のほかに、小学校校歌とともに全卒業生の名前が石碑に刻み込まれている。明治時代の男性徒は助七、蔵之助、寅吉、菊松、清吉…などで、女性徒はふで、ひな、みや、はる、くに、こう…ほとんど全てが平仮名だ。

 考えてみれば、平民が姓名を名乗ることを許されたのは明治3年(1870年9月)の「平民苗字許可令」が始まりだ。だとすると、これらの名前はその〝はしり〟だ。

 市の教育委員会によると、同小学校の開校時の生徒数は記録残っておらず、記録に残っている明治8年の卒業生は8名、廃校になった平成31年の在校生は28名、うち卒業生は5名。145年間トータルの卒業生は4,426名とのことだ。石碑にはこの方々とその家族の歴史が刻まれているということだ。

 学校は廃校になったが、同社と市の連携により歴史は次世代に引き継がれることになった。無限の可能性を秘めたプロジェクトだと思う。高智社長は「ここをハブとして地域の活性化に貢献したい」とも語った。

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スギ(左)とカエデ

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ケヤキ(左)とイチョウ

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〝145年間 ありがとう〟

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校歌と全卒業生の名前が刻まれた石碑

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 渡辺市長はあいさつの中で「卒業生は感無量」と話したので、記者は卒業生にもコメントを取ろうと、カフェラウンジで談笑していた来場者に「長老の方はいらっしゃいませんか」と声を掛けた。小生と同じくらいと思われる年配の方が「いるいる、90近い男が。外にいるはず」と話した。

 頼んだコーヒーを頂くのを待ちきれず、すぐ外に飛び出し、ひときわ高い身長の方がそうだろうと目星をつけ「すいません、年齢が90近い長老の方がいらっしゃるとか」と声を掛けた。どんぴしゃり。同市教育委員会教育長・廣部昌弘氏だった。

 廣部氏は「年齢じゃなくて身長でしょう。わたし? 187cm、年齢は62歳。卒業したのは昭和47年。同級生は1学年35人。全校生徒で150人くらいではなかったか。校舎は木造で、一部2階建てでした。勉強? 児童会長を務めました。スポーツ? ソフトボールをやってました。廃校になったのは残念ですが、再利用していただくことになってよかった。地元の方々も喜んでいる」と語った。

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〝90近いのは年齢じゃありません〟廣部氏

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富岡小学校(before)

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校長室(before)

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職員室(before)とカフェラウンジの床(after)

コスモスイニシア 公共施設を活用したアウトドアリゾート「ETOWA(エトワ)」第一弾(2020/6/30)

 野村不動産ホールディングスは12月14日、新しい代表取締役社長兼社長執行役員グループCEOに取締役副社長兼副社長執行役員の新井聡氏が、会長には代表取締役社長兼社長執行役員グループCEO・沓掛英二氏が2023年4月1日付でそれぞれ就任すると発表した。現会長の永松昌一氏は4月1日付で、野村不動産顧問に就任する予定。

 新井氏は、1965年6月3日生、愛知県出身。1988年3月、東京大学経済学部、同年4月、野村證券(現野村ホールディングス)入社。2011年4月、同社執行役員、2014年4月、同社常務執行役員、2017年4月、野村ホールディングス執行役員・野村證券執行役兼専務執行役員、2019年4月、野村證券代表取締役兼副社長執行役員、2022年4月、野村不動産ホールディングス顧問・野村不動産取締役(現職)、2022年6月、野村不動産ホールディングス取締役副社長兼副社長執行役員(現職)。

 

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「TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI」(丸ビル3・4階)

 三菱地所は12月14日、「丸ビル開業20周年・新丸ビル開業15周年×『TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI』オープニングイベント」として、メディア向け「丸ビル・新丸ビルリニューアル事業概要説明・丸の内エリアメディアツアー」開催した。「TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI」は12月15日オープンする。

 三菱地所運営事業部長・安達晋氏は、「丸ビルの店舗は80店舗のうち約40%の33店舗が入れ替わる。地下1階には20店舗からなる『マルチカ』がオープンする。外観も従来のモノトーン中心から暖色系を多く取り込んだ。新丸ビルの7階にはテラス席やバーカウンターなどを備えたカジュアルな空間を設ける」と語った。

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)関東カンパニーカンパニー社長・ 安田秀敏氏は、「現在、『SHARE LOUNGE 』を国内17店舗、海外2店舗で展開しているが、1999年に開業した『SHIBUYA』はコロナ禍でも来場者は200%伸びているように全体として売り上げは増加している。今後、商業⇒オフィス⇒レジデンス⇒ホテルへ展開し、近い将来100店舗に拡大する。丸の内エリアは半径500m内に居住者は50名しかいないが、様々なイベントを開催するなどして若い女性などのニーズを取り込んでいく。大丸有の賑わい創出の一助となり、『三菱地所と次にいこう。』に伴走していきたい」と話した。

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安田氏(左)と安達氏

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時間によって色が変わる丸ビル共用部の照明(左)と1階の群馬県嬬恋のクリスマスツリー(イベント終了後は植え戻すという)

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「TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI」の9,900円の会議室/1時間

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オンライン会議などで美しく映るLED照明の「女優ライト」付き個室ブース(男性も利用可)

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今女性に人気というガラスペン

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 記者はコロナが発生するまでは、東京駅直結の三菱地所の北口ビルディング(丸の内オアゾ)」に勤務していた。東京駅は毎日利用してはいたが、移動はほとんど地下通路だったので、地上に出ることはなかった。コロナ禍でオフィスは移転したが、三菱地所の「大丸有」や三井不動産の「日本橋」などの取材で訪れる機会は多く、この3年間で50回くらいは降り立ったはずだ。

 何が変わったかといえば、コロナ感染を避けるため地上を利用するようになったことだが、驚いたのは、丸の内仲通り1階の飲食店など利用する人は子育て世代と思われる女性やシニア層が圧倒的に多く、男性は少ないということだ。声を掛けたりもしたが、居住地は地元の千代田区民は少数派というかほとんどなく、周辺の中央区、江東区、文京区(港区、渋谷区は少ないと思った)などだ。電車を利用すれば30分圏内か。

 なぜわざわざ電車を使って東京駅に集まるのかと考えると、街並みが美しいということが一番の要因だと思う。丸ビル、新丸ビルなどは100尺ラインを採用し、歴史的な街並みを保存し、総合設計制度を活用することで足元の公開空地を確保し、都道や千代田区道の街路樹との調和を図っているのが他のエリアと異なる点だ。これは、三菱地所が中心となって取り組んできた大丸有エリアマネジメント協会の果たしている役割が極めて大きいはずだ。

 今回の丸ビル・新丸ビルリニューアル事業は、大丸有エリアの回遊性を高め、シームレスにつなぐことに力点が置かれ、女性を中心とした子育てファミリー層を従来に増して呼び込もうとする戦略が読み取れる。

 新規にオープンする化粧品店などは訳がさっぱり分からなかったが、丸ビル3・4階に開業する「TSUTAYA BOOKSTORE NARUNOUCHI」は、オフィスワーカーはもちろん子育てファミリー、シニア層のニーズを取り込んだもので、圧倒的な支持を集める可能性を秘めていると思った。

 何が素晴らしいかといえば、約8万冊を有す書店部分も合わせ延べ床面積は約550坪で、「SHARE LOUNGE」は「代官山」の約200坪を超える最大の約214坪あることだ。設えられている家具、ソファー、床材、観葉植物などは本物がふんだんに用いられている。2層吹き抜け部分は7~8mはありそうだった。

 そして、なによりいいのは利用料金だ。飲み放題・食べ放題のソフトドリンクプランは1,650円/1時間(1日利用は5,500円)、アルコールプランは2,200円/1時間(延長30分1,100円)のほか、7,150~9,900円/1時間の8名利用可の会議室(ドリンク料金は別、持ち込みも可)もある。

 このほか、新丸ビル7階に設けられる「丸の内ハウス」は、飲み物などの持ち込みが可能なバーカウンター、緑をふんだんに取り込んだ空間、個室感覚で利用できるパーゴラ席などカジュアルな施設に生まれ変わる。これは間違いなく若い人を中心に人気を集めるはずだ。

 この日(12月14日)は、今回で7度目という「Marunouchi Street Park」(Winter)が行われていた。何度見てもいい。いっそのこと千代田区道を廃道して通年利用の「Street Park」にしてはどうか。

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「Marunouchi Street Park 2022 Winter」

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「Marunouchi Street Park 2022 Winter」(右の白い部分は座ると暖かいホットベンチ)

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新丸ビル敷地内の仲通りテラス

落葉のメタセコイアとよく似た常緑のセンペルセコイア 名前つけて 大手町仲通り(2022/10/30)

フレンチトースト、サラダのチーズは絶品 丸ビル「THE FRONT ROOM」試食会(8/29)

の内仲通り ウォーカブルな街づくり「Marunouchi Street Park 2022 Summer」(2022/8/3)

丸ビル20周年 エリア歩行者・店舗数は3倍 「今も変化・進化の真っただ中」吉田社長(2022/9/6)

最高に素晴らしい! 学生が経営する「アナザー・ジャパン」TOKYO TORCHIに開業(2022/7/27)

街路樹に溶け込むアート 三菱地所&彫刻の森 第43回「丸の内ストリートギャラリー」(2022/6/29)

消化不良なのが残念だが素晴らしい農園 三菱地所「大手町ビル」リノベ完成見学会(2022/5/26)

日・韓・台・泰・越南…多国籍飲食街 黒白迫り京王カラーもかすむ「ミカン下北」(2022/4/9)

 

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多摩の空に希望の虹を見た(12月13日13:30ころ、京王相模原線若葉台駅近くの車内から)

 昨日(12月12日)のことだった。見るとはなしにどこかのテレビを見ていたら、「子どもの声がうるさい」との「一人の近隣住民の苦情」を受け、長野市の公園の廃止が決まり、公園廃止について荻原健司市長が会見を開いた模様が映し出された。

 この報道に記者は条件反射のように反応した。「一人の苦情」-人数にではない。都市公園が住民の反対によって廃止されることなどありえないからだ。

 都市公園法第16条(都市公園の保存)には「公園管理者は…みだりに都市公園の区域の全部又は一部について都市公園を廃止してはならない」と規定されている。

 この「みだり」の文言は、小生そのものの「みだら」を連想させ、その意味も〝むやみやたら〟と解されるので嫌いなのだが、いずれにしろ、法は都市公園の廃止はそれなりの理由なしに廃止してはならないと規定している。

 長野市の都市公園条例の第14条(都市公園の区域の変更及び廃止)でも、「市長は、都市公園の区域を変更し、又は都市公園を廃止するときは、当該都市公園の名称、位置、変更又は廃止に係る区域その他必要と認める事項を明らかにしてその旨を公告しなければならない」とある。

 市条例が市長に求めている「その他必要と認める事項」として、「地域住民の苦情」は必要ではあるが十分ではないはずだ。法治国家だ。地域住民の賛成や反対で行政や法律が捻じ曲げられてはならない。ましてや、施設は地域住民の平穏な生活を維持するための公園・遊園地であり、児童施設だ。その施設が発する音を〝騒音〟と解釈するのであれば、幼稚園・保育園、小中学校なども〝嫌悪施設〟と判断されることになりかねない。市長は、廃止に至った正当な理由を示さなければならないと考えた。

 それを怠り、報道されていることが事実であれば、市の決定は都市公園法、長野市都市公園条例に違反する恐れがあると思った。

 そこで、長野市の公園緑地課に電話で問い合わせた。担当者は次のように話した。

 「当該遊園地は都市計画法、都市計画条例に基づく位置づけではなく、市独自の都市公園に準じる施設として2004年から運営しているもので、敷地は契約期間の定めがない借地。『子どもの声がうるさい』との苦情を受け、近接する児童センター、小学校、保育園と12の区長会(自治会)と協議を重ねた結果、100人以上の子どもが利用している遊園地で声を出さないで遊ばせるのは不可能という結論に達した。この結論をもとに区長会が『廃止』の決断を行い、市へ廃止するよう要望書を提出し、市は10月1日付で、通学区でもある8区長会に所在する住民への回覧を行った。回覧に対する反対意見は2件寄せられたのみ。遊園地の設置と廃止はいずれも区長会の要望に基づくもので、その決定には瑕疵はない」

 さらに、「市では、開発行為に基づく公園などの公共空間設置基準(3,000㎡以上はその3%)に設置されたものを法律に準じる遊園地として管理している。市内に都市公園は約210か所あるが、遊園地は約520か所もあるのはそのため。市民の方々に都市公園と遊園地の違いをきちんと公開・説明してこなかったことは反省しなければならないが、一人当たりの公園面積は人口減少により増えるが、その分、公園の維持管理費は増大し財政を圧迫する。これは当市だけでなく全国の自治体の課題」とも話した。

◇        ◆     ◇

 この公園緑地課の担当者の話をどう受け止めるか。デベロッパーの用地担当、商品企画担当の方はよくお分かりだろう。小生は、この担当者の話を聞きながら、2020年に取材した「THEパームス相模原パークブライティア」の提供公園のことを思い出した。是非、その記事と一緒に読んでいただきたい。ここでは詳述しないが、「児童公園(街区公園)」は問題が山積する。

 今回の問題をセンセーショナルに取り上げたメディアにも問題があるが、これをきっかけに、「児童の健全な遊び」「児童の健全な育成を図る」目的の児童福祉法の改正を含め、再検討する機会にしてほしい。「児童遊園」「児童公園「街区公園」を区別できる人はほとんどいないはずだ。

 一般社団法人日本公園緑地協会「全国中核市等における公園緑地の課題に関する調査研究」(平成28年)は、「500㎡以下の狭小公園については、「公園の統廃合」や「機能分担」等が望まれており少子高齢化・人口減少時代の到来を受け、かつて児童のための公園として整備されてきた小規模公園の利用が極めて低く、社会的ニーズとの乖離がある」と指摘している。

◇        ◆     ◇

 市の対応について。瑕疵はないと思うが、問題がないわけでもない。「(法律・条例に)準じた」という文言は微妙で、解釈によってはどのようにも受け止められるからだ。法律と同じ効果・拘束力があると考える人もいれば、法律・条例ではないから、判断は行政に委ねられると解する人もいるのではないか。

 もう一つは、区長会(自治会)は果たして地域住民の代表かという問題だ。記者は千代田区の神田警察通りの街路樹伐採の是非を巡って区と地域住民が裁判で争っているのを取材しているが、区側は町内会長らで組織する街づくり協議会を通じてきちんと説明したと主張し、街路樹伐採に反対する原告らは〝寝耳に水〟とし、町内会の長は住民代表でないと反発している。

◇        ◆     ◇

 縷々述べてきたが、今回の問題がわれわれに突き付けているのは生活騒音・臭いとは何か、嫌悪施設とは何かということだ。音でいえば、子どもの声もそうだが道路、飛行機、鉄道、救急車、パトカー、新聞配達(バイク)、風鈴、ピアノ、念仏、夫婦喧嘩、ハイヒール、ネコの交合、年寄りのしわぶき、夫(または妻)のいびき…全てが嫌悪され、臭いでは隣家のニンニク、タバコの臭いを何とかしろという声だ。

 記者は、これらの問題はほとんどすべて人と自然、人と人のコミュニケーションの欠如から発生していると考えている。30年も昔か。横浜ペット裁判を取材したことがある。マンション管理規約でペットの飼育が禁止されているのに、仲介業者の〝大丈夫でしょう〟という説明を鵜呑みにして大型犬と一緒に入居した購入者が、管理組合に訴えられて敗訴した。入居者は退去することになった事件だ。

 そのマンションの現場に足を運んだ。マンションは環七に面していた。居住者に話を聞いたが、玄関を開けっぱなしだと声はほとんど聞き取れなかった。そのマンションの悲劇だったのは、南傾斜の敷地の目の前にマンションが建ったことで、中層階以下の住戸の眺望が奪われたことだった。多分、居住者のストレスは最高潮に達していたはずだ。だからといって、ストレス源の環七や隣接マンションを訴えたところで勝てるはずはない。そのストレスのはけ口に被告をしたと今でも思っている。

 何か起きると弱者を〝寄ってたかって叩く〟世の風潮、白と黒の区別をあいまいにする白内障社会も問題だ。今回の問題は、わが国か抱える社会課題を象徴的に顕在化させたと言える。

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 長野市の行政資料から、一通り都市公園や緑に関する施策を読み込んだ。わが多摩市や江戸川区には劣るかもしれないが、水準以上だと思う。

 同市の平成31年度の一人あたり都市公園面積(遊園地含む)は8.71㎡(目標は10㎡、多摩市は13.64 ㎡、江戸川区は11.31㎡、東京都は約5.76㎡)であり、一人当たりの公園・緑地予算は4.1千円(多摩市は土木費含み3.1万円)だ。

 緑の将来像に「心かよう美しい緑のまち ながの」と描き、緑化施策として①緑化樹木配布②ながの花と緑大賞③ながの花と緑 緑育フェスタ④保存樹木等指定事業⑤保存樹木等管理補助金⑥街路樹愛護会報奨制度などを行っている。

「まちづくりGX」は都市局のメイン事業になるか 国土交通省の会合を傍聴して(2022/11/27)

健全な街路樹を「枯損木」として処分 問われる住民自治 千代田区の住民訴訟(2022/11/12)

「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)

「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動(2021/4/28)

相模原市初の「児童公園(街区公園)以外の提供公園第1号」 トーセイ「相模原」(2020/8/7)

「住宅新報」「週刊住宅」も1面はつまらない 豚のように木に登ろうではないか(2019/3/12)

なぜ農学、環境、家政学者の会合はおおらかなのか 国交省「都市公園あり方検討会」(2015/3/17)

 

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植田氏(左)と菰田氏(東京ミッドタウン日比谷で)

 三井不動産は12月9日、社長交代人事を発表し、同日、次期の代表取締役社長 社長執行役員社長に就任する同社取締役専務執行役員・植田俊(うえだ たかし)氏と、代表取締役会長に就任する同社代表取締役社長 社長執行役員・菰田正信氏が出席して、社長交代に関する記者会見を行った。両氏からはとても興味深い話・エピソードが飛び出した。

 会見の冒頭、菰田社長は2011年6月に社長に就任してから12年弱(退任時では11年9か月)を振り返り、「就任時は東日本大震災の直後で、リーマンショックの傷がいえない時だったが、これまで若干実績を積み上げてきた」と語った。

 具体的には、「イノベーション2017」で①街づくりの進化②スマートシティの実現③グローバル化の戦略課題にスピード感を持って推進した結果、6年間で営業利益は6倍、純利益は2倍という高い目標を達成したことなどを話した。

 2018年に策定した「ビジョン2025」では、①持続可能社会の実現②デジタルイノベーション③グローバルカンパニーの進化-などを掲げ、コロナ禍で経常利益は1,000億円近い減益(2021年3月期)となったが、3年が経過し、コロナの収束が見通せるようになり、今期の営業利益は過去最高の3,000億円を達成できる見通しが立ったと述べた。

 社長交代ついては、「『ビジョン2025』達成の道筋が見えたことから、その先は次世代のリーダーにバトンタッチするのがふさわしい」と決断。「後任の植田専務は私の右腕として、業績向上に大きく貢献した立役者」と紹介。「人物、見識、能力はもちろん社内外の人望も厚く、リーダーシップを発揮して新時代を切り開いてくれると確信している」と称え、「植田専務は相手の立場に立ってものごとをよく考える。『妄想』の言葉に象徴されるように、既成概念にとらわれない自由な発想で、新たな三井不動産を切り開いてほしい」とエールを送った。

 今後の国内外の市場・展開については、「政治経済の動向、地政学的なリスク、気候変動など先行き不透明感は極めて高いが、私も植田新社長とともに社業の発展に全力を尽くしていく」と語った。

 印象に残っている事業としては、米国ハドソンヤードでの2つのプロジェクトを「常識を覆して」成功に導いたことと、菰田氏も10年以上かかわった「柏の葉」のスマートシティの街づくりプロジェクトをあげた。

 辛かったことについては、「人を集め、街を創るのが仕事のわれわれにとって、コロナ禍で〝人を集めるな〟と言われたのは辛かった」と率直に語った。

 記者は、これまでの菰田氏の実績、同社の業績の推移などから、やり残したことなど一つもないだろうと質問したら、菰田氏は「そんなことはない。たくさんある」とし、日本橋川の再生が2040年になっていることをあげた。(小生はかつて、岩沙会長が「わたしの生きている間に再生してほしい」と語ったのを忘れない。あと20年後だ)

◇        ◆     ◇

 菰田氏の挨拶を受けて、植田次期社長は「社長の命を受け、その使命の重大さと責任の重さに身が引き締まる思い。本日は、わたしがどんな人間であるか、どんな思いを持っているかお話ししたい」と切り出し、次のように語った。

 「わたしが歩んできたビル事業の職歴からして、さぞかし皆さんは、三井不動産の保守本流を歩いてきた男だろうと思われるかもしれないが、実際は、来春で丸40年の会社人生を迎える中で、日本橋本社勤務は2009年からの10数年のみ。それまでの長い間は支店や出向などを繰り返し、外からの目線で三井不動産という興味深い企業グループを見つめてきた。

 最初の配属先は、今では百数十人の規模になっている横浜支店だが、当時の横浜事業課はわずか4人のスタートだった。今では清算されて存在しない、6年半勤務した三井不動産ファイナンス時代では、バブル崩壊後の不良債権処理に取り組んできた。毎日が砂を噛むような厳しい仕事だった。10年以上勤務した三井不動産投資顧問は金融危機の直後で、リートなどの証券化ビジネスを立ち上げた。

 これらの勤務を通じ、今ではなかなか経験ではないディープで濃厚・濃密な会社人生を送ってきた。その時々で多くの社内外の方々に助けられながらやりぬいてきた自負がある」と振り返った。

 どのような考え方をしているかについては、「大切にしているのは『妄想』『構想』『実現』という言葉。一人ひとりの突拍子もない妄想に大義があれば仲間が集まり構想になり、実現につながるという、この三段論法を自己実現に向けて常に心がけている」と語った。

 不動産業のあり方については、「わたしの経験からして、確かにビル、商業施設などハードな建物をつくり、街づくりを行う意味では不動産デベロッパーだが、これらの事業を通じて産業競争力を強くし、発展させるプラットフォーマーであることを考えると、産業デベロッパーではないかと考えている。つまり、不動産や街づくりなどは手段であって、当社の本質は産業デベロッパーでありプラットフォーマーである」と述べた。

 さらに、同社のこれまでの事業を紹介し「わたしがライフワークとしているライフサイエンスをはじめ、日本橋には宇宙、スタートアップ企業、アカデミアが集まり、新たなビジネスが生まれている。今後も取り組みを強化し、産業デベロッパーとして企業や社会、それを構成する人々の発展と成長に貢献していく」と述べ、「当社の羅針盤である『ビジョン2025』の次なる発展形をどこかでお話ししたい。産業デベロッパーとしての『妄想』『構想』『実現』にご期待頂きたい」と締めくくった。

◇        ◆     ◇

 記者は、植田氏から「日々妄想」「産業デベロッパー」「よそ者、馬鹿者になれる」「日本橋をライフサイエンスの聖地にする」「おせっかいな大家」などのフレーズがポンポン飛び出したのに驚きはしたが、同時になるほどとも思った。

 まず「妄想」。妄想とは、「広辞苑」(岩波書店)によれば「①〔仏〕(モウゾウとも)みだりなおもい。正しくない想念。徒然草『所願皆-なり』②〔心〕根拠のない主観的な想像や信念。統合失調症などの病的原因によって起こり、事実の経験や論理によっても容易に訂正されることがない。『誇大-』『被害-』『関係-』-・しょう【妄想症】パラノイアに同じ」(広辞苑)とある。

 また、「日本国語大辞典」(小学館)には「(-する)ありえないことを、みだりに想像すること。みだらな考えにふけること。また、そのような想像。空想。夢想」とある。

 記者もそうだが、読者の方も植田氏の「妄想」を辞書通り受け取ってはいないはずだが、普通ではなさそうなことは分かる。「日本橋をライフサイエンスの聖地にする」という植田氏のビジョンを聞いたとき、菰田社長は「これは大風呂敷ではないか」と疑ったというエピソードを明かしたことからもそのことがうかがい知れる。

 つまり、植田氏の妄想とは、常識的な考えからするとありえない空想、絵空事ではあるが、その常識的な考えが間違っていると仮定したら、妄想こそが事実・現実となる。

 記者は、この植田氏の話を聞きながらもう20年くらい前、同社の幹部が〝みだり〟に「不動産はソリューションビジネス」と語っていたのを思い出した。つまり、不動産業は課題解決業だと。今流でいえば社会課題解決業だ。

 植田氏が「日々妄想」と語ったのは、この考え方と通底する。絶えず不動産業の現実を凝視し、疑ってかかる姿勢を貫いていると理解できる。そのヒントは、前段で紹介した植田氏の発言の中にある。

 約40年の職歴の中で、30年弱は外から、そして、その後の十年余は内から三井不動産の事業を見続けてきたということだ。双方から世界を眺めることで、内外に抱えている課題=妄想をたくましくし、構想として練り上げ、実現してきた。この三段論法の正しさを証明して見せたということだろう。菰田社長は植田氏の発想の豊かさ、交渉能力の高さ、粘り強さを絶賛した。

 同じようなことを写真家の今森光彦氏が先の積水ハウスのフォーラムで話した。今森氏は写真を撮るときは被写体と距離を置き、冷静な目で俯瞰し、同時に被写体の中に入り込むようにして、中から見える世界を写し取り、自然と人間の関係性を明らかにするのだと。

 「産業デベロッパー」という文言は、植田氏が初めて用いたのではないか。一般的には大手デベロッパー=総合デベロッパーとして理解されている。しかし、劇的に変化、多様化する経済・社会では、従来の発想では課題を解決することは難しいと植田氏は強く感じているのではないか。「産業界に入り込まないとじり貧の一途」とも語った。

 〝よそ者、馬鹿者〟〝おせっかいな大家〟として産業界にイノベーションを巻き起こす姿勢を植田氏は示した。BtoCはもちろんBtoBへの事業展開が加速度的に進むのではないか。

 「日本橋をライフサイエンスの聖地にする」-この「聖地」にはさすがに驚いたのだが、同社が2019年5月に行った「賃貸ラボ&オフィス」事業開始に伴う記者会見で、当時、同社常務執行役員だった植田氏は「この種の事業は欧米ではけた違いの規模で行われているが、わが国には市場そのものがない。具体的な事業規模は現段階で申し上げられないが、マーケットメークし、当社の6番目の新しい事業に育てたい。『コミュニティ』の構築、『場』の整備、『資金』の提供を3本柱とし、わが国がライフサイエンス産業における世界に冠たるアジアナンバーワンの地位を確立することに貢献する」と話している。(植田氏には、当時書いた、小生の妄想でもある「新木場」をライフサイエンス拠点にできないかと質問したかったのだが、その機会はなかった)

 意外だったのは、苦い思い出を記者団から質問された植田氏の答えだった。「辛いことはすぐ忘れる」と前置きしながら、三井不動産投資顧問に出向していたときの2001年9月17日、防衛庁檜町庁舎跡地を1,800億円で同社など6社が落札した舞台裏を明かした。

 「当時は、金融危機が収束しておらず、お金を集めるのが大変な時期で、何とかタイムリミット直前の6月に2,200億円のファンドを組成することができた。落札日は娘の誕生日なのでよく覚えているのだが、その1週間前には日本ビルファンドの上場(記者は当日初値で株を買った。そこそこ儲かった)があり、大変な9月だった。しかし、ふたを開けたら2番札の入札価格が1,200億円とかなり差があったことから、高値で入札したのではないかと文句も言われた。そのとき仲間で話し合ったのは、僕らいつか『プロジェクトX』に出ようと。テーマは決まっていて『金のないのに入札に臨んだ男たち』。結果としていいプロジェクトになった」

 小生は、この落札が決まる半年前、「落札価格は1,850億円」と予想した全10段の記事を書いた。それがほぼ的中して快哉を叫んだのを思い出す(外れたら袋叩きにあっていたか)。資金集めの担当者が苦労していたことなど初めて聞いた。そんなに厳しかったのか。記者の仕事も取材先の中に潜り込まないといけないということか。

三井不動産 植田俊(たかし)専務が社長に 菰田社長は会長へ 岩沙会長は相談役へ(2022/12/9)

様々な目線でかつてない試み実現 東大・藤田誠卓越教授 「三井リンクラボ柏の葉1」(2022/6/22)

住宅不可の151ha〝処女地〟新木場にライフサイエンス拠点 三井不の新事業(2019/6/1)
 

 

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植田氏(左)と菰田氏(東京ミッドタウン日比谷で)

三井不動産は129日、社長交代、代表取締役の異動について発表。202341日付で取締役専務執行役員・植田俊(うえだ たかし)氏が代表取締役社長 社長執行役員に、代表取締役社長 社長執行役員・菰田正信氏が代表取締役会長に、代表取締役会長・岩沙弘道氏が取締役にそれぞれ就任する。

岩沙氏は、20236月開催予定の株主総会で取締役を退任し、同社相談役に就任する予定。

植田氏は19612月生まれ。19834月、三井不動産入社。横浜支店事業課、三井不動産ファイナンス、三井投資顧問などを経て、20114月、執行役員ビルディング本部副本部長、20154月、常務執行役員 ビルディング本部副本部長、2020年6月、取締役 常務執行役員 ビルディング本部長、20214月、取締役 専務執行役員(現任)。

◇      ◆     ◇

同社は同日、植田氏と菰田氏が出席して、社長交代に関する記者会見を約1時間にわたって行った。両氏からはとても興味深い話・エピソードが飛び出した。詳細は明日以降に紹介します。

 

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