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「オーベル千葉エアーズ」

 大成有楽不動産が分譲中の「オーベル千葉エアーズ」を見学した。東千葉駅から徒歩3分、千葉駅からでも徒歩11分の立地でありながら坪単価は200万円。即日完売してもおかしくない価格だが…。

 物件は、JR千葉駅から徒歩11分、東千葉駅から徒歩3分、千葉市中央区要町3丁目の商業地域に位置する14階建て全78戸。現在先着順で分譲中の住戸(10戸)の専有面積は66.12~74.10㎡、価格は3,298万~4,758万円(最多価格帯3,900万円台)、坪単価は200万円。竣工予定は2023年10月中旬。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。

 現地は、地元の人に良く知られた駅弁・弁当屋の万葉軒の工場跡地で、椿森陸橋に近接。敷地の南側は道路を挟んで葭川が流れ、西側は小公園・要町公園に隣接。2階以上の住戸は全戸南向きで1フロア6戸。66㎡が中心。

 主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2450~2500ミリ、全窓二重サッシ、食洗機、同社オリジナルの収納「O-rangeLABO(オレンジラボ)」、ホームライブラリー、クローゼット一体型スタディインクローゼット(選択制)、浴室タオル掛け1か所など。

 販売状況は、2月にホームページを開設、ゴールデンウィークにモデルルームをオープン。エントリー数は約400件で、来場者は89組。5月30日から第1期20戸を販売開始。これまでに10戸が成約・申し込み済み。

 契約者の約6割が地元居住者、他は市内や船橋市など。DINKS・プレファミリーが多く、3人家族は少ないという。

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ホームライブラリー(左)とクローゼット一体型スタディインクローゼット

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 今年に入って千葉駅圏のマンションを見学するのは、マリモ「グラディス千葉駅前」、新日本建設など5社JV「エクセレント ザ タワー」に次いで3物件目だ。マリモの物件は駅から徒歩2分、新日本建設の物件は千葉パルコの跡地。それでも坪単価は300万円に届かない。埼玉県の浦和駅や大宮駅では坪400万円をはるかに超えているのに、どうして千葉県の県都は取り残されているのか不思議だ(以前から千葉県の物件はそのような評価をされていたが…)。

 今回の物件も、現地を見るまでは信じられないような価格の安さだった。なぜ安いか。ヒントは、椿森陸橋に近接しているため二重サッシを全窓に採用していることと、中央区栄町に近いことだ。記者は名前だけは聞いていたが、栄町に足を踏み入れるのは初めてだった。ファミリー層が二の足を踏むのはよく分かる。しかし、物件を評価するのはマンション購入検討者だ。これ以上書かない。

 もう一つ、タオル掛けについて。小生と一緒に見学した他社の女性記者の方は千葉が地元で5人家族。浴室にはタオル掛けがないが、「使ったら洗濯機に投げ込むだけだから全然平気」とこともなげに話した。1日20枚くらい洗うこともあるという。

 なるほど。人はそれぞれだ。風呂に入る回数を減らす、バスタオルはもっと小型にする、使い回しをする、2度3度使う-こういう習慣のほうが合理的だと思うが、皆さんはいかがか。

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現地

坪270万円 第1期1次100戸 即完スタート 新日本建設など5社JV「ザ タワー」(2022/4/1)

坪300万円の壁厚く…駅2分のマリモ「千葉駅前」はいくらか 競合物件は早期完売狙う(2022/1/17)
 

 

 大和地所レジデンスが先週7月4日抽選販売した期間72年の定期借地権付きマンション「ヴェレーナグラン門前仲町」(75戸)は、64戸に申し込みが入った。最高倍率は7倍で、平均倍率は1.5倍、坪単価410万円だった。申込者の6割が江東区居住者。

 現在、再登録受付中の住戸(11戸)の価格は7,148万~8,598万円(権利金4,043万3,000円~4,863万5,000円含む)、専有面積は62.54~70.06㎡。

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 現地は見学していないが、近くのホテルには宿泊したことがあるので、おおよその見当がつく。表通りから一歩入った大横川に面しており、住むにはいいところだ。

 同社は7月26日にメディア見学会を行うので、取材してレポートしたい。


 

 

 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は7月11日、2022年6月の首都圏の不動産流通市場の動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,003件となり、6か月連続で前年同月を下回り、成約㎡単価は66.99万円(坪単価221万円)となり、前年比12.8%の2ケタ上昇、26か月連続で上昇。成約価格も同9.2%上昇、25か月連続で前年同月を上回った。

 地域別動向では、成約件数は東京都区部以外の各地域が前年比で減少が続き、横浜・川崎市、神奈川県他、埼玉県、千葉県は6か月連続で前年同月を下回った。成約㎡単価はすべての地域が前年比で上昇が続き、東京都区部は26か月連続、横浜・川崎市と埼玉県は25か月連続、千葉県は23か月連続、神奈川県他は 19か月連続、多摩は16か月連続で前年同月を上回った。

 中古戸建住宅の成約物件は前年比13.8%減となり、6か月連続で前年同月を下回った。成約価格は同7.9%上昇し、20か月連続で前年同月を上回った。

 

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「北浦和みのりのプロジェクト」(左側は小学校の敷地)

 ポラスグループ中央住宅は7月8日、「農と住まい・ヒト・モノ・コトがつながる暮らし」をテーマにした全51戸の「北浦和みのりのプロジェクト」記者見学会を行った。浦和駅、北浦和駅、浦和美園駅、東浦和駅4駅が最寄り駅ではあるが、バス便の立地難を逆手に取った商品企画がヒット。3月に分譲した第1期34戸が即日完売するなど、これまで42戸が成約・申し込み済みだ。

 物件は、JR浦和駅からバス12分バス停徒歩7分、北浦和駅からバス11分バス停徒歩7分、さいたま市緑区松木1丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全51戸。土地面積は約110~115㎡、建物面積は100㎡前後、価格は2,980万~4,850万円。建物の構造は在来工法2階建てで、一部を除き完成済み。施工はポラテック。

 プロジェクトは、「見沼の田んぼ」と呼ばれる1200ha以上の農地が近くに奇跡的に残っていることに着想、〝庭で野菜を育てたい〟〝自然が豊かなところで暮らしたい〟〝自分らしい生活をしたい〟など自然・農業・コミュニティを「居・食・住」としてとらえ、分かりやすく具現化しているのが特徴。

 「居」では、自然が多いエリアであることから、ポタジェや緑のカーテン、実のなる木、灯りのいえなみ協定を、「食」では見沼田んぼでの農業体験、ワークショップ、食育・地産地消を考える機会を、「住」では、木の内装材を多用し、安心・安全の住まいをそれぞれ提案。これらが円環となって新たな価値をクリエイトしょうというメッセージを発信している。

 物件のホームページを2月に開設し、3月10日に分譲した第1期34戸は最高4倍で即日完売するなど、これまで42戸を成約・申し込み済み。46%が共働き世帯で、教員など公務員、病院関係者が目立つという。来場者は200組超。購入者の居住地は21%が地元、そのほかは県外を含み中広域に広がっている。

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ポタジェ(背後に隣家の雨水ポンプが見える)

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 現地見学は、東浦和駅から車で案内してもらったので、いったいどこを走っているのか全く分からなかったが、東浦和駅前通りの街路樹はとても美しく、それを車窓から眺めながら、戸建ての価格は、マンションなら浦和、大宮駅圏は坪単価400万円を突破しているので5,000万円くらいではないかと見当をつけた。

 ここで横道にそれる。緑区の道路維持課によると、植えられている街路樹はユリノキ、クスノキがほとんどで、南部建築事務所が管轄する中央区、桜区、浦和区、南区、緑区の5区の街路樹は約13,000本で、中低木を含めると約16,000本。樹種はこのほかニセアカシア、トウカエデ、ハナミズキ、ケヤキが多いという。年間の維持管理予算は約4億円。とくに緑区は他区と比較して圧倒的に緑被率が高いそうだ。

 話を聞いて課題もあると思った。道路維持課は街路樹などの維持管理を担当し、樹種を決めるのは他の部署とのことだ。ここに街路樹が道路の附属物としか位置づけられていない問題がある。街のポテンシャルを左右する街路樹の選定は、専門家を起用し、部署間連携は当然ながら市民も含めて行うべきだ。街路樹をめぐり市民の苦情が多いのは、市民ほの説明が不足し声を聴いていないからだ。市の街路樹に関する公表データも少ない。

 話を元に戻す。予想は大外れ。信じられない〝安さ〟だった。モデルハウスの質は決して低くない。床、壁、建具・家具は本物の木の挽板が採用されている。

 売れ行きにはびっくりしたが、さもありなんとも思った。2年前、同社が春日部市の調整区域内で分譲した「ハナミズキ春日部・藤塚」(全22戸)の見学会でも感じたのだが、駅に近いとか商業施設が整っているとか、そのような利便性に価値を見出す人は圧倒的に多いのだろうが、そうではないと考えている人も一定存在する。そのような人にフォーカスした今回の商品企画がヒットしたということだろう。

 プロジェクト責任者の中央住宅戸建分譲設計本部設計一部部長・野村壮一郎氏は、「従前は自然の森だった用地を取得し、34棟を当初は計画したが、その後隣接地を買い増しして全51棟に変更。生活利便施設は揃っていたがバス便であることから、何かできないかを考え、『見沼たんぼ』に車で5分の立地でもあることから、地元で農業を営むこばやし農園とコラボし、建物だけではなく暮らしをデザインした」と語り、「こばやし農園の小林さんにアドバイザーになっていただき、日常的に『農』を取り込めるように企画した」と同部営業企画設計課係長・酒井かおり氏が話した商品企画が光った。

 同社が3年前に近隣エリアで分譲したときは購入者の47%が地元だったことを兼ね合わせ考えると、コロナ禍で消費者の住宅選好基準は間違いなく変わっている。そのヒントは、さいたま市は人口流入が全国でもっとも多いことにある。

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 見学会で紹介された見沼田んぼは、さいたま市、川口市の2市にまたがる南北約14km、外周約44km、面積約1,258ha。江戸時代に水田確保のために開発されたのが奇跡的に現在まで残り、野菜などが栽培されている。広さは、東京23区内の農地約95ha、皇居の115haとはケタ違いで、千代田区の1,164haにほぼ匹敵する。

 「こばやし農園」は2014年営農開始、2017年株式会社を設立。年間50~60種類の野菜を無農薬で栽培し、「見沼野菜」として販売している。

 社長を務める小林弘治氏は1996年、さいたま市生まれの55歳。浦和高校-慶応大学を卒業後、広告代理店に勤務していたが、「農業には全く縁がありませんでしたが、突然(天から)降りてきた。これが天職だと思い、脱サラを決意しました。今はパートさんを8人雇い、約2haの農地に50~60種の野菜を栽培しています。今年からコメの栽培も開始しました。獣害? クマやサルはいませんが、カラス、タヌキ、ハクビジン、イタチ…それと人間」と話した。

 取材後、現地を案内してもらった。武蔵野線から眺めたことは何度もあるが、そこが見沼たんぼだとはまったく知らなかった。栽培されている野菜はサトイモやナスなどが多く、小林氏も話したように耕作放棄地も多く、目視したところでは2割くらいあるのではないか。営農者の高齢化、後継者難が課題であるのがうかがわれた。

 小林氏は「ロールモデルにしたい」とも語った。難しい問題が立ちはだかっている分だけ「見沼野菜」の可能性もまた大きいと思った。

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小林氏

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見沼田んぼ

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サトイモ畑

調整区域の市民農園付き200㎡邸宅 ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2020/7/3)

 

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カフェ空間「Ground」

 三菱地所ホームは7月7日、本社を国際赤坂ビルから新宿イーストサイドスクエアに移転したのに伴う、様々な機能を実装した新オフィス「TOKYO BASE」をメディアに公開した。

 新オフィスは、三菱地所グループとしては初めてABW(Activity Based Working)を採用し、座席は固定席から自由に選択できるフリーアドレスに変更。全ての社員のパフォーマンスを最大化する「MJH10のワークポイント」を設けた。

 また、カフェ空間や執務エリアに社員が休息するリチャージスペースを設け、構造材を産出する取引先から提供を受けたスギ、ヒノキ、カラマツの間伐材の原木を設置している。

 社会課題への関心・具体的な取り組みを促進できる機能として、国産材、端材を活用したカフェ空間「Ground」、原木5本と人工芝を施し、自然音をハイレゾ音源で再生する音響効果による仮想の外部空間「Mori」、執務エリアと「Ground」を仕切る全面ガラスウォールを採用している。

 さらに、オフィス内でカラマツの苗木を育てる「(仮称)苗木の循環プロジェクト構想」をスタートさせた。

 新本社は、都営大江戸線・東京メトロ副都心線東新宿駅に直結する新宿イーストサイドスクエア7階の延べ床面積571坪(1,890㎡)。デザイン企画は三菱地所ホーム。設計監理はイトーキ。施工はイトーキ、三菱地所ホーム。

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カフェ空間「Ground」受付カウンター

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スギの原木

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 この日(7月7日)、小生は糖尿病の定期検診があり、取材時間には間に合わなかったが、リリースをコピペしたくなかったので、少しは見せてくれるだろうと若松河田駅近くの病院から隣駅・東新宿駅にある同社新オフィスに電車で駆けつけた。

 受付カウンターなどいたるところに木を活用した空間が演出されているのを眺めていたら、広報担当の女性から声を掛けられ、「皆さん、このように願いごとを書かれています。『糖尿が治りますように』とでも書いて下さい」と勧められた。

 七夕といえば中学生のころだ。お金持ちの娘の彼女と貧乏百姓の息子の自分が結ばれるはずがないと思いながらも、満天に広がる天の川の星空を見上げながらはらはらと落涙したものだ。

 そんな甘くて切ない遠い思い出を呼び覚ませてくれた彼女の勧めを無粋に断るわけにもいかず、治るはずもないのに「糖尿が治りますように」と短冊に書いた。

 笹の葉には、「仮想通貨が値上がりしますように」「プードルを飼いたい」「楽しい旅行がしたい」「娘と仲良くしたい」などと、夢も希望も愛の欠片もない我欲に満ちた言葉が書き連ねられていた。書いたのはメディアの方か社員の方か知らないが、七夕はもはや死語だ。東京の空から星が消えてからどれくらい経つのか。

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「Mori」

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「Mori」に設置されているプロダクト

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 彦星と織姫の続き。皆さんは西田佐知子さんの「アカシヤの雨がやむとき」をご存じか。60年安保と同じ1960年にリリースされた歌謡曲で、当時の世相を反映した曲として大ヒットした。70年安保の世代の小生ではあるが、この曲はよく歌った。

 なぜ、こんなことを書くのかというと、先日、三菱地所が新国際ビルに設けた「有楽町SLIT PARK(スリット パーク)」を取材したとき、近くの道路の街路樹にアカシヤ(ニセアカシア)が植えられており、そこからこの曲と清岡卓行の1970年の芥川賞受賞作「アカシヤの大連」を思い出した。太平洋戦争前後の青春期に過ごした中国・大連を舞台に描いた私小説だ。その小説の一部を紹介する。

 「五月の半ばを過ぎた頃、南山麓の歩道のあちこちに沢山植えられている並木のアカシヤは、一斉に花を開いた。すると、町全体に、あの悩ましく甘美な匂い、あの、純潔のうちに疼く欲望のような、あるいは、逸楽のうちに回想させる清らかな夢のような、どこかしら寂しげな匂いが、いっぱいに溢れたのであった。

 夕ぐれどき、彼はいつものように独りで町を散歩しながら、その匂いを、ほとんど全身で吸った。時には、一握りのその花房を取って、一つ一つの小さな花を噛みしめながら、淡い蜜の喜びを味わった…そして彼は、この町こそやはり自分の本当のふるさとなのだと、思考を通じてではなく、肉体を通じてしみじみと感じたのであった」

 「彼女の出現は、急激に、彼の心の奥底に眠っている何かを揺さぶり起こしたようであった…あの不定形な女のイメージが、しだいに輪郭をはっきりさせてきて、まさしく彼女の面影と一致するようになってきたのであった。…それは、彼にとって、生まれて何回目に経験する、大連のアカシヤの花盛りの時節であっただろう。彼は、アカシヤの花が、彼の予感の世界においてずっと以前から象徴してきたものは、彼女という存在であったのだと思うようになっていた」

 「『彼女と一緒なら、生きて行ける』という思いが、彼の胸をふくらませ、それは、やがて、魅惑の死をときどきはまったく忘れさせるようになっていた」

 清岡がこの小説を書いたのは、「アカシヤの雨がやむとき」から9年後の1969年、愛妻(小説に登場する「彼女」、とても美人だったとか)を亡くした47歳のときだった。そして、彼女との別れに踏ん切りがついたのか、その翌年に再婚した。

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 アカシヤの並木と「彼女」を重ね合わせた何と美しい詩的な小説であることか。記者はいま、千代田区の神田警察通り道路整備事業で街路樹のイチョウが伐採されることに対する批判記事を書いているのだが、25歳の女性が住民監査請求を行い、その陳述を監査弁護士が絶賛した。その一部を紹介する。

 「4月27日の深夜、大林道路の職員は私たちの目の前で無残にもイチョウを切り落としました。私たちはその間、区職員と警察に囲まれ、木に近づくことができませんでした。あの日の光景がトラウマとなり、一ヶ月以上が経った今でも工事車両を見ると手が震えます。伐採の瞬間の動画を見れば、胸が締め付けられ苦しくなります。工事をするはずのない日中でさえ、バイクの音がチェーンソーの音に聞こえ、現場に行って木の無事を確認せずにはいられません。もちろん仕事にも支障をきたしています。先ほど述べた、夏の暑さを感じやすい車椅子利用者の方の意見も然り、『イチョウを伐採しないことによる危険性』だけでなく、『イチョウを伐採することによる危険性』も考慮すべきです。

 私は千代田区に生まれ育ち、これまで神田っ子として自分の故郷に誇りを持って生きてきました。神田祭は二年に一度の楽しみであり、生き甲斐でした。しかし、伐採に反対することは同時に、伐採を推進する町会長が治める町会を脱退しなくてはいけないことを意味していました。もちろん神田祭に出ることも許されません。神田っ子にとって神田祭は本当に大切な行事であり、それに出られない、自分の町会の神輿を担げないということを受け入れるには相当な覚悟が必要でした。そもそも町会云々、祭云々以前に、伐採推進派である町会長たちはご近所として私が生まれる何十年も前から家族ぐるみで付き合いのある方たちで、私のことはもちろん赤ん坊の時から知っているような方たちです。私も親のように慕っていたので、このような形で縁を切らざるを得なかったことを非常に残念に思います。これも千代田区が生んだ地域の分断です。千代田区環境まちづくり部は、環境とまちを壊しただけでなく、私たち住民の関係性も、心も全てを壊しました。これ以上大切な故郷を壊されるのは許せません。どうか私たちの声を聴いて頂けないでしょうか。私は一人になっても最後まで闘う覚悟です」

 長々と引用したが、アカシヤもイチョウも同じだ。雨にも風にも負けず、車が撒き散らす排気ガスや騒音、高層ビルによる日陰などに屈せず、まっすぐに伸び、老若男女、金持ちも貧乏人も賢者も愚者も別け隔てなく樹陰を降り注いでいる。人間の数倍は生きられる。そんな伸び盛りの街路樹を「枯損木」などと勝手に決めつけ、死刑宣告をし、処分しようとしている。そんなことが許されていいのか。

 七夕の今日、皆さんも考えていただきたい。同社が目指す「『TOKYO BASE』を起点に地域とつながり再造林や森林保全の大切さを社会に浸透させていく試み」に通じるものがあるのではないか。

素晴らしいの一語 市民に開放を ナイス 本社ビル木質化リノベ/対照的な歩道の雑草(2022/6/27)

「見事」「素晴らしい」監査員弁護士 女性陳述を絶賛 街路樹伐採 住民監査請求(2022/6/11)

壮大な街づくりの一環501㎡の「新国際ビル」路地裏を多目的空間にリノベ 三菱地所(2022/5/27)

 

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 先に国土交通省が発表した2022年5月新設住宅着工戸数に注目している。利用関係別では、持家は21,307戸(前年同月比6.9%減、6か月連続の減少)、貸家は25,942戸(同3.5%増、15か月連続の増加)、分譲住宅は19,595戸(同8.5%減、4か月ぶりの減少)となり、分譲の内訳は、マンションが7,569戸(同19.9%減、4か月ぶりの減少)、一戸建住宅が11,905戸(同0.9%増、13か月連続の増加)となっている。

 2022年1月~5月の持家は99,981戸(同7.2%減)で、分譲住宅の107,553戸(同5.2%増)を下回っている。このまま推移すれば持家は年間で2020年の26.3万戸を下回り、分譲住宅が2006年以来16年ぶりに持家を上回る可能性がある。(2006年の持家は358,519戸で、分譲住宅は379,181戸)。

 持家より上回っている分譲住宅ではあるが、戸数そのものは増えているわけではない。1~5月の着工戸数は10.8万戸(前年同期比5.2%増)で、年間で前年の24.8万戸に届くかどうかた。しかも、この数字は分譲戸建てが数字を引き上げているためで、首都圏マンションは21.898戸(前年同期比8.9%減)となっており、令和3年の48,819戸(前年比11.2%減)をさらに下回りそうだ。

 この数字が高いか低いかよく分からないが、コロナ禍で首都圏人口が減少に転じたことなどを考慮すれば、これが常態化すると見るのが正解ではないか。

 1~5月の首都圏マンション着工戸数を都県別にみると、東京都は11,126戸(前年同期比25.8%減)、神奈川県は5,304戸(同10.0%減)、埼玉県は3,183戸(同78.3%増)、千葉県は2,285戸(同65.3%増)となっており、相対的に価格水準が高い東京都と神奈川県の減少が目立ち、郊外部の埼玉、千葉で増加している。

 これは、コロナ禍でファミリー層は広さや住環境などを重視する層が増えたことを受けて、デベロッパーが用地取得を郊外部へシフトしていることをうかがわせる。郊外部の着工増がどのような影響を及ぼすかだが、かつて埼玉や千葉では年間8,000戸くらい供給されていたことを考えると、直ちに市場を乱すことにはならないのではないか。郊外部を得意としてきた中堅デベロッパーの出番ということもいえる。

 マンションの販売動向についても触れたい。不動産経済研究所の2022年5月の首都圏マンション市場動向調査によると、発売物件は146物件で、供給戸数は2,466戸、当月売却戸数は1,732戸、月間契約率は70.2%だ。

 つまり、1物件当たり平均供給戸数は16.9戸で、このうち70.2%に該当する11.9戸が売れたということになる。1棟当たりの総戸数を50戸とすると、完売まで6期かかるという計算だ。

 このことからも、「月間契約率70%以上が好調ライン」というのはあてにならない。

 同研究所の調査による5月末の販売在庫数が5,881戸という数字からも、必ずしも好調でないことをうかがわせる。この数字は決して適正在庫とは言えない。年間供給戸数を3万戸とすると2割近くが残っていることになる。「4月以降売れ足が鈍っている」というデベロッパーの声もある。

 売れるものとそうでないものの二極化が進行しているとも読み取れる。年間3,775戸を計上しながら完成在庫は82戸(2022年3月期)しかない三井不動産もあれば、2,194戸の計上戸数に対して完成在庫は661戸(同)の東急不動産のような例もある。右肩上がりの市場であれば、完成在庫増そのものは懸念材料にはならないが、周辺物件との競争力を失えば販管費の増大などで収益を圧迫する。優勝劣敗の市場は今も昔も変わらない。

 先ほど、中堅デベロッパーの出番とも書いた。大手デベロッパーにはブランド力で劣る。価格にして10%も20%も差があるのではないか。しかし、その分を補って余りある商品企画を武器にする中堅(失礼)デベロッパーは少なくない。詳しくは書かないが、大和地所レジデンス、モリモト、タカラレーベン、ポラス、新日本建設などがそうだ。記者がいまもっとも興味があるのは、そうしたデベロッパーの出現だ。

 

 マンション管理業協会は7月5日、マンションの管理状態を★6つの段階で評価・表示する不動産情報サイトの第1号は東急リバブルとなったと発表した。

 同協会が令和3年に開発に着手した「マンション管理適正評価制度」に基づいて評価されるもので、中古マンション取引は、立地や間取り、築年数といった情報が評価・購入形成要因の主流となっており、管理状態のレベルはあまり重要視されていないのが実情。購入検討の早い段階から対象物件の管理情報が開示されることにより、適切に管理されているマンションが市場で評価されるようにするのが目的。

 評価制度は管理体制、建築・設備、管理組合収支、耐震診断、生活関連の5つのカテゴリーから構成され、総合点を「特に優れている」★5つから「優れている」★4つ、「良好」★3つ、「改善の必要あり」★2つ、「問題はあるが情報開示あり」★1つ、「(情報開示がなく)管理不全の疑いあり」★なしの6段階で表示される。評価を受けるかどうかは管理組合の任意。

 東急リバブルのホームページ「中古マンションライブラリー」(URL:https://www.livable.co.jp/mansion/library/)では常時88,000 棟以上の分譲マンションデータが公開されており、6段階評価の公表は今夏から。

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 いよいよ「マンション管理適正評価制度」がスタートする。興味深いのはどれくらいの管理組合がこの制度を利用するかだが、同協会は「普及してみないと分からない」としている。

 そして、さらに注目されるのは、6段階の分布だ。これも始まってみないと分からないが、マンション管理問題に詳しい横浜市立大学教授・齊藤広子氏は「わたしの調査では、横浜市の築30年以上のマンションのうち4%は管理不全の兆候があり、その一方で『優』(★4つ)以上は45%以上。二極化している」と報告している。だとすると、「管理不全の疑いあり」とレッテルが張られるマンションは、任意である制度を利用しない可能性もある。

 だが、しかし、そのようなマンションを積極的に購入しようという消費者は果たしているのか。結局、情報開示しないマンションは市場からパージされるのか。

 

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施設外観

 

 三井不動産は7月4日、大阪府門真市のパナソニック工場跡地約164,000㎡で開発を進めているA街区の施設名称を「三井ショッピングパーク ららぽーと門真」(ららぽーと門真)と「三井アウトレットパーク 大阪門真」(MOP 大阪門真)と決定し、2023年春の開業を予定していると発表した。

 ファッションや食などの日常的な買い物体験のほか、国内外のブランドショッピングに加え、様々な体験型エンターテインメントを提供し、ワンストップで満喫できる、従来の枠を超えた商業施設を目指すとしている。

 「門真」の施設の開業に伴い、1995年3月に開業した「三井アウトレットパーク 大阪鶴見」は2023年3月に閉館する。

 施設は、京阪本線・大阪モノレール線門真市駅から徒歩約8分、敷地面積は約116,700㎡(約35,300坪)、店舗棟は鉄骨造地上4階建て、立体駐車場棟は鉄骨造6層7段2棟。延床面積は約196,800㎡(約59,500坪)。店舗数は約250店舗。基本設計は石本建築事務所。実施設計・監理・施工は竹中工務店。

 計画では、A街区のほかB街区の分譲マンション約5,600㎡(三井不動産レジデンシャル)、C街区の会員制倉庫型店舗約34,000㎡(コストコホールセールジャパン)、D街区の事業所約7,700㎡(東和薬品)も計画されている。

 

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ポラスの先導的モデル街区「浦和美園E-フォレスト」

 ポラスグループの2022年3月期決算を先に紹介したが、同社の発表会は十分時間を割き(1時間半)、メディアの質問にも丁寧に答えるのがいい。小生は同社の分譲戸建てやマンションを結構見学しているので、遅行指標の決算数字にはあまり興味はないのだが、配布される40ページくらいの資料はなかなか興味深い。同社グループの商圏の分譲戸建て・注文住宅市場をほぼ完ぺきにとらえているからだ(どうしてそのようなことができるのか不思議)。

 その一つ、同社グループ商圏エリアの分譲戸建て市場平均価格(以下、市場)と同社グループの平均価格((以下、同社)の「差」がそうだ。

 さいたま地域(上尾市含む)では、市場は4,090万円であるのに対し、同社は4,685万円、その差は595万円だ。越谷地域(春日部、越谷、草加、三郷、吉川、八潮など)の市場は3,589万円なのに対し、同社は4,192万円、その差は603万円。常磐地域(松戸、柏、流山、野田、我孫子、鎌ヶ谷)の市場は3,549万円で、同社は4,242万円、その差は693万円だ。年度によってその差は縮まったり拡大したりしているが、過去4年間でみるとその差は500万円前後で推移している。

 一方で、同社商圏エリアでの着工戸数に対する同社のシェアは13.3%(前年比0.6ポイント増)で、本拠の越谷地域は20.3%(同2.4ポイント増)にのぼっている。2022年度予測では、市場着工20,156戸に対し同社着工は2,903戸なので、シェアは14.4%と見込む。

 この数字をどう読むか。市場価格より500~600万円、率にして14~20%高くてもなぜ売れるのか、仕入れを強化してシェア拡大を図ったらどうなるかだが、マンションも含めて同業他社と比較して基本性能・設備仕様レベルはまず負けないと記者は思う。戸建てでいえば、1階のリビング天井高を2.7mとしており、マンションでは100万円前後する収納付きピアキッチンを標準装備していることが象徴している。

 問題は検討者の取得能力だろう。記者は、マンションも含めて一般的な一次取得者の取得限界価格は6,000万円(マンションも同様)とみている。同社の平均価格4,546万円(前年度比405万円上昇)からしてまだ余力はありそうだが、消費者の可処分所得が伸び悩んでいるのは気になる材料だ。

 分譲戸建ての課題の一つでもある質向上では、どこもやっていないZEHレベルに引き上げるべきだと思うが…発表会で中央住宅・品川典久社長は明言を避けた。どこが先陣を切るか。

 商圏やターゲットが異なるので単純比較はできないが、参考までに主な会社の分譲戸建ての直近の売上戸数(または契約戸数)と1戸当たり単価を紹介する。

・飯田グループHD  41,534戸 2,866万円
・オープンハウス     5,546戸 4,206万円
・ケイアイスター不動産  3,604戸 3,451万円
・ポラスグループ     3,050戸 4,546万円
・三栄建設設計      1,990戸 4,260万円
・三井不動産        507戸 7,591万円
・野村不動産        451戸 6,650万円
・積水ハウス      2,261戸   8,469万円※

※積水ハウスの「分譲住宅」は、停止条件付き土地分譲も含まれ、建築設計・請負も含まれる。ZEH比率は新築戸建てと同程度(90%以上)となっている。20221月期の分譲住宅セグメントの売上高は前期比37.6%増の1,914億円で、優良土地の仕入れや営業体制の強化が奏功し、大幅な増収増益となった。また、注文戸建住宅の1棟単価も4,265万円(前期比127万円増)と突出している。

◇        ◆     ◇

 同社グループ商圏エリアの住宅着工戸数と人口動向を見た資料がまた面白い。このテータは毎年発表されるのだが、字が小さくてよく読めないし、商圏エリアで人口が増加するのは当たり前だと思っていたので詳細に読むことなどなかった。今年の資料には「ポラス商圏内には、メインターゲットである25~44歳の住宅一次取得層世代が2.5千人流入超過」とあった。

 すると、同業の記者の方が「昨年の資料には1.6万人流入超過とあるがこれはどうしたことか」と質問した。これには驚いた。桁が違うではないか。

 早速、同社から昨年度の資料を頂いて比べてみた。人口は2020年度の11,222,722人(前年比32,073人増)から11,221,753人(同969人減)へ減少に転じ、25~44歳の第一次取得層の流入出は2020年は16,038人の増加だったのが、2021年度は2,594人増にとどまっている。

 エリア別にみると、2020年度は「さいたま」が8,174人、「越谷」が1,558人、「松戸」が6,304人といずれも流入増となっているのに対し、2021年度は「さいたま」は3,601人、「越谷」は944人とそれぞれ増加しているものの、人数は大幅に減少し、「松戸」は1,951人減となっている。

 区市町別では、2020年は5,317人増のさいたま市、3,442人増の江東区、2,224人増の流山市など26区市が流入増となっていたのが、2021年度は4,648人増のさいたま市、3,218人増の流山市、1,669人増の江東区など流入増は18区市に減少。逆に、江戸川区、板橋区、浦安市、市川市、船橋市などは1,000人以上が減少している。

 「1.6万人増」が「2.5千人増」と激減したのがどのような影響を及ぼすのか。品川社長は「売れるところとそうでないところの二極化が進んでいる。直近4-6月の反響は前年比75%だが、それでもコロナ前を上回っている」と話した。

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 首都圏の人口減少が注目されている。2022年1月現在の人口は36,828,661人(前年同月比73,348人減)で、都県別では東京都が13,988,129人(同48,592人減)、神奈川県が9,231,177人(同5,160人減)、埼玉県が7,336,455人(同7,541人減)、千葉県が6,272,900人(同12,055人減)と全ての都県で減少。東京都は26年ぶり、神奈川県と埼玉県は調査を開始して以来初の減少となった。

 人口減少の最大の要因は、コロナ禍での外国人の人口流失だ。東京都を例にとると、令和2年1月では577,329人だった外国人は令和4年1月には517,881人へ10.3%減少している。もっとも外国人居住者が多かった新宿区は42,598人から33,907人へ実に20.4%減少し、2番目に多かった江戸川区の35,220人(令和2年1月は38,173人)に抜かれ、3番目に多かった足立区の33,138人(同34,040人)とほとんど並んだ。

 総務省のデータによると、在留外国人は2020年6月の約289万人から2021年6月は約283万人へと約6万人減少している。地方都市が一つ消えた数字だ。

 もう一つは、テレワークの定着による首都圏脱出者の増加と思われるが、これは詳細な流入出の調査をしないと分からない。

 総務省のデータによると、2022年5月の市区町村間移動者数は42万3842人と前年同月に比べ6万6049人(18.5%)増加し、外国人の市区町村間移動者数も5万8217人、前年同月に比べ99.3%増加した。この時期は入社、転勤、入学などで移動・異動が多い時期ではあるが、今後どのように推移するか。

 参考までに流入増と流出減の上位10都道府県を紹介する。流入は埼玉県がトップで、流出は千葉県が最多。

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ポラスグループ2022年3月期決算 売上高は6期・経常利益は3期連続過去最高(2022/6/30)

 


 

 

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枯損木撤去作業(6月28日撮影、東京駅近くの大名小路で)

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完全に枯れていることが分かる

 千代田区監査委員は6月17日、千代田区長が大林道路と交わした「神田警察通りII期自転車通行環境整備工事」の請負契約は違法又は不当な契約であり、千代田区長に対し街路樹を伐採、撤去することなく工事を行うことを勧告するよう求めた住民20人による住民監査請求に対して、請求を棄却すると通知、公表した。

 請求は4月21日付で提起されたもので、監査委員は代表監査委員(識見委員:税理士・印東大祐氏)、 監査委員(識見委員:弁護士・野本俊輔氏)、監査委員(議員選出:河合良郎氏)から構成されている。

 同種の住民監査請求はもう一つ5月16日に行われており、2か月後の7月15日までに通知、公表されることになっている。

◇        ◆     ◇

 イチョウをバッサリ切り倒すのと同じように、一刀両断に監査請求を棄却した監査結果に、街路樹の味方である小生は唖然とするほかなかった。

 唯一納得できたのは、監査請求者が道路整備工事契約の締結が都市計画法第2条の趣旨に反すると主張したことについて、監査委員が「都市計画法第2条は都市計画の基本理念を定めるものであり、本件工事契約の締結は都市計画と直接の関係がない」と退けたことだけだった。住民監査請求制度は憲法や法律の理念について論じる場ではないような気がする。

 さらに、「II期工事区間において歩道を有効幅員2メートル以上にすることは区が当然に遵守すべきものである」と監査委員が述べているのは分からないではない。

 しかし。区のバリアフリー法に基づく道路整備や都市施設・特定都市施設のユニバーサルデザイン化の取り組みは「遵守すべき」という割には進んでいない。「東京都福祉のまちづくり条例」で原則とされている「セミフラット形式」は平成30年3月時点で、道路幅員11m以上の区道約49㎞のうち整備されている歩道は約11km、約23%にとどまっており、保水性舗装として整備された歩道は約14km、約28%に過ぎない。

 神田警察通りに面した税務署、学校などを目視した限りでは都市施設のユニバーサルデザイン化も進んでいるとは思えない。

 イチョウを伐採してまで歩道を拡張すべきというのは合理的な考えではない。多少の不便さはあっても、それは受忍責任というものだ。都合のいい時だけ車椅子利用者、障がい者、子ども、ベビーカーを持ち出すのはご都合主義といっては失礼か。

 また、東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルには「沿道の利用状況や道路の交通量等により、歩道の有効幅員2.0m以上を確保することが困難な場合には、少なくとも歩道の有効幅員として1.5mを確保する。この場合、要所に2.0m以上の有効幅員を部分的に確保し、車椅子使用者同士のすれ違いを実現できるようにする」とあるではないか。

 ひどい裁定だと感じたのは、「神田警察通り沿道賑わいガイドライン」に当初盛り込まれていた「豊かに育った既存の街路樹を活用する(白山通りのプラタナス・共立女子前のイチョウなど)」の「など」を削除したのを、監査委員は「部分的な変更」とさらりとかわしたことだ。「部分的な変更」ではないことは弁護士であるお二人の識見委員の方が一番よくご存じのはずだ。

 法律や公文書に使われる「など」は、あれやこれやを例示する副助詞ではなく、その逆だ。脱法行為を排除するため縛りをかけているものが多い。例えば、調整区域内で建築できる都市計画法第34条第1号(店舗等)では、「業種一覧表」に数十種の業種を例示している自治体もあり、コンビニの営業時間を定めている事例もあるほどだ。

 最大の論点である道路整備工事に瑕疵があると監査請求者が主張していることに対し、監査委員が下した「工事契約に錯誤による瑕疵があったとはいえない」という判断も納得できない。

 監査結果では「契約書に添付された種別内訳書の『種別・細別・内訳』欄には、『枯損木』との記載があるが、これは東京都積算基準(道路編)の施工単価を適用したことからその施工単価名称(枯損木伐採工)を引用したものである。また、同じ契約書に添付された図面には『枯損木』とではなく『高木』と記載されており、本件街路樹が『枯損木』ではないという点については、本件工事契約の発注者である区と請負者である大林道路とが共通認識に立っていたものであって、本件工事契約に錯誤による瑕疵があったとはいえない」としている。 

 確かに、区も工事を請け負った大林道路にも錯誤はなかったと思う。双方とも「枯損木」でないことを知りながら、道路の「附属物」である街路樹を処分するために体裁を整えたということだ。これは「錯誤」ではなく「確信犯」だ。

 問題の本質はここにある。CO2を垂れ流す鉄やコンクリ、その他ケミカル製品ならともかく、街路樹は生き物だ。生活環境保全機能、大気浄化機能、緑陰形成機能、交通安全機能、防災機能はもとより都市のポテンシャルなど街路樹には計り知れない価値がある。それを人間の都合で簡単に死刑・殺処分をしていいのかという問題だ。

 ましてや、神田警察通りのイチョウは樹齢約60年(1964年の東京オリンピック時に植えられたという人がいる)だ。人間に例えれば育ち盛りの少年少女だ。しかも、人間と違ってこの先数十年は成長し続ける。100年だって200年だって生きるかもしれない。畏怖すべき存在だ。今伐採してしまったら取り返しがつかない。代替えはきかない。

 昨年、93歳で亡くなった生態学者の宮脇昭氏は「木を植えることは命を守ることだ」と語った。その伝でいえば、街路樹伐採は人間の命を奪うこと同じではないか。その是非を今回の問題は投げかけている。人を殺していいのかと。

 今回の監査結果は、平成23年に区が発表した〝伐採ありき〟の「神田警察通り沿道賑わいガイドライン」のシナリオを完結させるために下請け・補助機関化した町内会組織を操り、アリバイ作りに奔走してきたことを監査委員はコピペするように追認したとしか思えない。

 監査委員に求められる「(倫理規範)監査委員は、高潔な人格を維持し、誠実に、かつ、本基準に則ってその職務を遂行するものとする」(千代田区監査基準第4条)「(独立性、公正不偏の態度及び正当な注意)監査委員は、独立的かつ客観的な立場で公正不偏の態度を保持し、正当な注意を払ってその職務を遂行するものとする」(第5条)文言がむなしく響く。

◇        ◆     ◇

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Screenshot 2022-06-12 at 13-25-58 神田警察通り沿道まちづくり整備構想 - kandakeisatsudoriendomachizukuri-koso.pdf.png

 前段でシナリオと書いた。「ガイドライン」にはイチョウからサクラに植え変えるイメージ図が描かれている。1つ目のイメージ図では、左に葉っぱを落とした冬期のイチョウを配し、右に満開のサクラを図示している。もう一つは歩行空間のイメージ図だ。樹高はイチョウよりサクラのほうが高く、樹形も桜のほうが美しく描かれているのが分かる。協議会でこの図が度々使用されたのは容易に想像できる。町内会関係者に催眠術のようにものすごいバイアスがかかったはずだ。(サクラはだめだとは思っていないが、格が異なる。格でいえば常緑樹のクスノキだし、値段の安いシラカシなどもいい)

 そして、このシナリオは、区と当初から業務委託契約を結んでいた街づくりのプロであるUR都市機構が深く関わっているのではないかと仮説をたてた。次のような質問を行った。そのURから以下の回答があった。(質問⇒回答)

1)どのような立場か(報酬も含めて具体的にお聞きします)⇒「神田警察通り沿道まちづくり整備構想」の実現に向けた、神田警察通り沿道整備推進協議会等の運営支援業務を、千代田区から受託しているものです。(区によると委託契約は平成23年度からで、令和3年度の受託費は約300万円)

2)区の道路整備計画を推進する側に立たれているのか⇒千代田区から受託した協議会運営支援業務として実施しております。

3)司会役を務めることのメリットはなにか⇒千代田区から受託した協議会運営支援業務として実施しております。

4)工事強行に対する住民の抗議活動をどう思われるか⇒工事に関しては、多様な意見があることを承知しており、千代田区において適切に対応されるものと思料します。

5)企業市民として声を出すべきだと思いますが、いかがか⇒多様な意見があることを承知しており、千代田区において適切に対応されるものと思料します。

◇        ◆     ◇

 住民監査請求の現場取材を5月8日夜に行い、近くのホテルに一泊し、さらにその後2回取材した(ホテル一泊)。住民監査請求の陳述を傍聴するのは初めてだった。

 今回の取材を通じて、2012年5月に「街路樹が泣いている ~街路樹と街を考える~」の記事を書いて以来継続して取材してきたことに間違いはなかったことを改めて感じた。

 そもそも街路樹に注目するきっかけはもう30年以上も昔だ。涌井史郎氏が自ら立ち上げた造園会社・石勝エクステリアの社長をされていたときだ。涌井氏は「私は『木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、一歩歩くたびに人生三倍楽しくなる』と子どもに話しているんですよ」と語った。

 一歩歩くごとに人生が三倍も楽しくなるのなら実践しない手はないと、街を歩くときはいつも街路樹を眺めてきた。

 そして、この1週間の間に、涌井氏の考えに通底する千葉大学名誉教授・小林秀樹氏の「複合の視点」と、東京大学卓越教授・藤田誠氏の「様々な目線」がいかに大事かを学んだ。三井不動産と三菱地所のエリアマネジメントの取り組みにも感激した。

 最後に、小坂井敏晶氏著「人が人を裁くということ」(岩波新書)の「あとがき」の一部を紹介する。

 「どんなに正しい決定であっても、それに異論を唱える市民は必ずいる…どんな秩序であっても、反対する人間が常に社会に存在しなければならない。正しい世界とは全体主義に他ならないからだ」

 「国際化の恩恵は、有益な情報の入手などではなく、慣れ親しんだ世界観を見直す契機が与えられることだと私は思う。真の国際化とは、異質な生き方への包容力を高め、世界の多様性を受け留めることではないか。正しいことは、どこにもない。この事実が受け入れられるとき、個性を活かす世界が生まれてくる」

「見事」「素晴らしい」監査員弁護士 女性陳述を絶賛 街路樹伐採 住民監査請求(2022/6/11)

住民監査請求の行方 街路樹の価値の可視化必要 千代田区の「街路樹が泣いている」(2022/5/18)

「苦汁」を飲まされたイチョウ 「苦渋の決定」には瑕疵 続「街路樹が泣いている」(2022/5/14

民主主義は死滅した 千代田区のイチョウ伐採 続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/13)

千代田区の主張は根拠希薄 イチョウの倒木・枯死は少ない 「街路樹が泣いている」(2022/5/12)

ぶった斬らないで 神田警察通りのイチョウの独白 続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/11)

なぜだ 千代田区の街路樹伐採強行 またまたさらにまた「街路樹が泣いている」(2022/5/10)

街路樹が泣いている ~街路樹と街を考える~  ①(2012/5/1) 

様々な目線でかつてない試み実現 東大・藤田誠卓越教授 「三井リンクラボ柏の葉1」(2022/6/22)

「実践派」の千葉大名誉教授・小林秀樹氏 マンション長寿化フォーラムで講演へ(2022/6/18)

 

 

 

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