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「Park Nova(パーク・ノヴァ)」

 ロンドンを拠点にする建築家・リサーチャー集団・PLPアーキテクチャー(日本事務所所在地:東京都、駐日代表:中島雷太氏)6月17日、「ガーデン・シティ」として名高いシンガポールの一等地・オーチャードに建設する21階建て高級タワーマンション「Park Nova(パーク・ノヴァ)」のデザインを公開した。

 「バイオフィリア(生命愛)」や「ウェルネス」をキーコンセプトに、タワー全体を緑で覆い、オーチャード(英語で"果樹園")という街の歴史コンテクストや緑豊かな立地に寄り添い、最大54世帯収容のビルを騒音や大気汚染から守るためのデザインとなっているのが特徴。

 2〜5室からなる各住居は、床から天井まで続く開放的な掃き出し窓により、室内外がシームレスに繋がり、太陽の光を取り込みながらも緑化によってプライバシー空間を確保している。共用施設に瞑想スペースやジム、スカイテラスなどを整備。シンガポールの建築物環境性能評価システム「Green Mark」のゴールド認証を取得する予定。

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 海外のマンションは、中国とモンゴル以外は全く知らないが、シンガポールには凄いマンションがあるものだ。いったい価格はいくらになるのか。わが国でもどこかがやらないか。外観はこの前見学したサンフロンティア不動産「+SHIFT NOGIZAKA」に似ているようで似ていない。「パークノヴァ」は三井不動産レジデンシャルがかつて分譲していたマンションブランドの一つだ。

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 同社に価格、面積などについて問い合わせた。その回答があった。「一番小さいマンションの床面積は133㎡、1番大きいペントハウスで548㎡。販売価格については、270㎡で約1400万シンガポールドル、548㎡のペントハウスで約3400万シンガポールドル」とのことだ。1 シンガポールドル=約82 円とすると、ペントハウスは日本円にすると27.9億円か、坪単価は1,679万円。

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「+SHIFT NOGIZAKA」

駅1分 乃木神社に隣接 建築・内装費に315万円/坪 サンフロ「+SHIFT NOGIZAKA」(2021/4/21)

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 新型コロナの緊急事態宣言期限の6月20日まであと3日となった。政府は、沖縄を除く他の都府県の宣言を解除し、まん延防止等重点措置に切り替えると伝えられている。記者が気掛かりなのは、感染経路不明比率がこのところずっと6割を超えていることだ。

 6月8日(火)から6月15日(火)の8日間の東京都の感染者は3,000人で、このうち感染経路不明者は1,927人、経路不明比率は64.2%に達している。国の基準では「感染者が急増」「医療供給体制に支障」段階のステージⅢに該当する。

 経路不明比率は、大阪府が60%を超えるなど他の道府県でも上昇傾向にあり、気になる材料だ。その理由は、感染率が高いとされる変異株の影響なのか、あるいは感染症対策業務に追われている医療・介護現場や保健所が疲弊しているためか、積極的疫学的調査に限界があるのか、厚労省はきちんと説明すべきではないか。

 この問題について考えるヒントを日本看護協会が与えている。同協会会長・福井トシ子氏は4月23日、国民と同協会会員向けに発信したメッセージの中で、医療・介護現場からの「悲痛な叫びに胸が締め付けられる」「(医療・介護現場は)限界に近付いている」と語っている。

 また、同協会は令和4年度税制改正要望の中で、看護職員は2人にひとりの割合で何らかの暴力・ハラスメントを受けており、さらに労災支給決定事案のうち看護師の精神障害割合が高く、そのほとんどが女性で約半数は30代以下としており、ストレスの要因は患者からの暴力や悲惨な目撃が8割、発生時刻は深夜が多いと、深刻な勤務環境の改善を求めている。

 経路不明比率が5割を割らないのは、このような保健所を含めた過酷な医療・介護現場の労働環境にもあると思わざるを得ない。

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 高齢者のワクチン接種が進むにつれて感染者に占める高齢者の感染比率が低下傾向にあるなど、光明も見えてきた。

 別表・グラフに70歳以上の感染者と感染比率を示した。これによると、5月下旬までの比率は10%前後で推移していたが、6月に入ってからは7%を割る日が多くなっている。今後は職域接種の効果も期待できそうだ。

 大和ハウス工業は6月16日、同社の環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」の実現に向けた新たな取り組みとして、森林破壊ゼロの達成に向けた4つの木材調達の方針を策定したと発表した。

 今回策定したのは、①森林破壊ゼロの方針を策定しないサプライヤーからの木材調達は原則禁止②人権問題に関する方針を策定しないサプライヤーからの木材調達は原則禁止③トレーサビリティが確保された木材のみを調達④これまで木材調達調査の対象としてきた構造材や下地面材、桟木、フロア材に加えて、型枠合板パネルや主要設備、建具、クロスも追加-の4項目。

 同社は2010年10月、森林破壊ゼロに向けた木材調達の取り組みを開始。森林管理の国際機関による認証を受けた木材や再生木材などの利用を推進しており、同社グループの評価基準に基づくSランクの木材比率は2019年度には約94%まで向上している。

 「Challenge ZERO 2055」では、創業100周年となる2055年までにグループ、グローバル、サプライチェーンを通じて「環境負荷ゼロ」の実現を目指しており、2030年までに建設する建物における木材の調達に伴う森林破壊をゼロにし、2055年までに全事業における材料調達による森林破壊を根絶することを目指している。


 

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 オープンハウスは6月14日、ユニバーサル園芸社と協働して「ONE TREE MAKE A FOREST PROJEKT」を5月から始動したと発表した。
 同プロジェクトを通じ戸建てに住むすべての家庭が一本以上の木を持つことが当たり前になることを最大の目標としており、植栽の品質管理・施工・アフターサービスはユニバーサル園芸社が担当する。植栽に当たっては、単なる戸建ての緑化だけではなく、「アイキャッチ」「目隠し」「シンボルツリー」といった機能を持たせる。初年度の植樹目標は1万本。

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 記者は緑が街のポテンシャルを左右する重要な指標の一つであることを信じており、積水ハウスの「5本の樹計画」をほめたたえてきた。10年近く前からはタイトルに「街路樹が泣いている」を付けた記事も書き、マンションや戸建ての植栽についてもその都度優れたものを紹介してきた。モデルルームの観葉植物も〝フェイクをやめろ〟などとしつこいほど記事にしている。

 今回のオープンハウスの「家庭に1本以上が目標」というのは、積水ハウスが昨年、植樹累計が1,600万本に達したと発表したのと比べると、売上げ1兆円を目指す企業としてはいかにも少ないとは思うが、いわゆるパワービルダーが分譲する戸建ての猫の額もない庭はコンクリートで固められ、ぺんぺん草も生えないものが圧倒的に多いことを考えると、業界の流れを変えるプロジェクトになることを期待したい。

納得の即日完売 デザイン・設備仕様レベル高い ポラス「市川菅野」16棟(2021/5/2)

積水ハウス 「5本の樹」計画 植樹累計が1,600万本突破(2020/4/14)

またまた「街路樹が泣いている」 千代田区 街路樹伐採で賛否両論(2016/9/8)

越谷レイクタウンで見た雑草すら生えない建売住宅の一群(2014/4/29)

街路樹が泣いている ~街と街路樹を考える~⑧(2012/6/5)

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「ピアース渋谷」

 モリモトが7月下旬に分譲する予定の「ピアース渋谷」の現地を見学した。2023年11月完成予定の「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」に近接する全67戸で、周辺には近年の分譲事例がほとんどないことから、価格(坪単価)がいくらになるか注目される。

 物件は、JR渋谷駅から徒歩7分、東急東横線代官山駅から徒歩12分、渋谷区桜丘町の商業地域(建ぺい率80%、容積率500%)に位置する敷地面積約594㎡、15階建て全67戸。専有面積は27.66~69.33㎡、価格は未定。竣工予定は2022年11月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。デザイン監修はA.A.E.一級建築士事務所。施工は日本国土開発。販売予定は2021年7月下旬。

 現地は、施行面積約2.6haの「渋谷駅桜丘口地区」、2.1haの「ネクスト渋谷桜丘地区」再開発事業地やセルリアンタワー、渋谷インフォスタワー、渋谷区文化総合センター、「センチュリーフォレスト」などに近接する商業地エリアの一角。敷地は南側と北側に接道。

 住居は3階~14階が1フロア5戸、最上階が1フロア5戸構成。角住戸比率は80%超、専有面積は27・34・35・45・69㎡。

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建築現場(南道路)

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建築現場(北道路)

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 見学する前は、立地条件によっては坪単価800万円もありうると考えていたが、敷地規模、道路付け条件、高値追求しない同社の販売戦略などから、最上階は坪800万円もありうるが、平均坪単価は最低で650万円、アッパーで坪700万円と読んだ。

 的中するかどうか、自信はない。外れたら謝るほかない。コンパクトマンションは単価よりグロスが重視されるので読みづらい。

〝ちがいを ちからに 変える街。渋谷区〟に沿う 東急不などコンソーシアム連携(2021/4/6)

感動的ですらある鹿島建設「センチュリーフォレスト」(2012/1/25)

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「バウス西大島」

 中央日本土地建物グループは6月14日、子会社の中央日本土地建物が開発中のマンション「バウス西大島」の第1期105戸の登録申し込みを6月12日から開始したと発表した。物件会員登録数は1,500件超となっている。

 物件は、都営新宿線西大島駅から徒歩7分、江東区北砂三丁目の準工業地域に位置する13階建て全183戸。第1期105戸の専有面積は45.02~80.21㎡、価格は3,578万(坪262万円)~7,598万円(同313万円)。竣工予定は2022年6月下旬。設計・監理は安宅設計。施工は新日本建設。販売代理は東京建物。

 小名木川沿いの立地を活かし、建物外観は「水景庭苑邸宅」をテーマにした2 棟構成で、共用部に「ワークラウンジ」や認可保育園(2023年春開設予定)を併設し、生鮮宅配ボックスを設置する。

 住戸は70㎡台の3LDK が中心。平均11%以上の収納率を確保し、一部プランには、BAUSオリジナルの「コアクロ」を用意し、約3.2畳のウォークインクローゼットをテレワーク用の書斎やドレスルームとして利用できるようにしている。

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「MIXINK(ミキシンク)」イメージ

 三菱地所レジデンスは6月14日、キッチンと洗面化粧台を合体させた新しい住設機器「MIXINK(ミキシンク)」をタカラスタンダードと共同開発し、第一号として品川区西五反田の賃貸マンション「ザ・パークハビオ」に導入すると発表した。

 従来の賃貸マンションは、水回りの制約を受け、画一的な間取りプランになりがちだったが、同社は多様化するライフスタイルの中で他の選択肢もあるのではないかと考え、賃貸マンションの仲介業務に携わるグループ会社へヒアリングした結果、 顧客の物件選択の決め手は「生活スペースの広さ」であることから、「MIXINK」の開発に至った。

 キッチンと洗面所のスペースを「MIXINK」でまとめることで、居室が7.0畳から8.3畳に拡大でき、居室内にワークスペース(デスク、椅子、書類棚)を創出することを可能にしたという。

 「MIXINK」は、調理にも洗面にも利用可能な流し台と、調理に必要なIHコンロやレンジフード、洗面化粧台に欠かせない鏡、調理器具や洗面用具も十分入れることができる仕様となっている。

 物件は、都営地下鉄浅草線五反田駅から徒歩2分、品川区西五反田二丁目に位置する14階建て全61戸。専用面積は25.11~50.71㎡。竣工予定は2022年12月。

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「ザ・パークハビオ」

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 ありうるプランだ。分譲マンションにも採用できる。伊藤忠都市開発はシャワー室のみで浴槽をなくした分譲物件「神楽坂」を供給した。記者は「人間洗濯機」が開発されれば約1畳大の浴室は省けるし、大幅なコストダウンにつながると思っている。


 

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「クリオ江ノ島 計画」(奥のマンションは大京のマンションか)

 コスモスイニシアのリノベーションマンション「シーサイド片瀬江ノ島」の取材に向かう途中、小田急線片瀬江ノ島駅からは徒歩4~5分か、境川とすばな通りに面し、「ライオンズタワー片瀬江ノ島」に隣接する一等地に明和地所の「クリオ江ノ島 計画」の看板がかかっていた。

 早速メモをした。所在地は藤沢市片瀬海岸一丁目、敷地面積は約1,581㎡、建ぺい率44.5%、容積率360%で、建物は13階建て延べ床面積約6,679㎡の69戸。竣工予定は2023年4月。

 いくらで分譲するかもはじいた。坪単価は条件の悪い住戸でも最低250万円、最高は坪300万円を突破する特殊住戸もあるかもしれないが、平均では坪300万円はしないと読んだ。実需が中心だろうが、リゾートとしての購入も想定されるので自信はない。

 同社にも連絡した。「坪単価につきましては、まだ何も決まっていない状況でございまして、お答えすることはできません。現在、オープンに向けての準備を進めており、恐らく来月下旬くらいになるかと思われます」(広報)とのことだった。

バブル時 坪450万円⇒リノベ 坪211万円 コスモスイニシア「湘南タワーズ」分譲(2021/6/10)

 

 


 

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「湘南タワーズ」

 コスモスイニシアが5月末から分譲開始した郊外型リノベーションマンションの第1弾「湘南タワーズ」と「シーサイド片瀬江ノ島」を見学した。郊外型リノベマンションは、リモートワークの増加により、都心のオフィスに毎日通勤する必要がなくなり、郊外・近郊エリアへの近距離移住に関心が高まりつつあるニーズをとらえたもの。

 「湘南タワーズ」は、江ノ島電鉄江ノ島駅から徒歩3分、小田急江ノ島線片瀬江ノ島駅から徒歩7分、藤沢市片瀬海岸1丁目に位置する1991年竣工(築31年)の14階建て全40戸。分譲当初の売主はミサワホーム、施工は間組。分譲住戸は6階の角住戸で専有面積93.56㎡、価格5,980万円。リビング天井高は2500ミリ。

 住戸からは境川を眼下に、片瀬江ノ島海岸-江ノ島が眺望できるのが特徴。玄関に3.3畳の土間スペースを設けているほか、ワークスペースを1部屋設置。内装は白色やブルージュ、床に突板を採用するなど木目を基調にまとめている。

 「シーサイド片瀬江ノ島」は、江ノ島電鉄江ノ島駅から徒歩3分、小田急江ノ島線片瀬江ノ島駅から徒歩7分、藤沢市片瀬海岸1丁目に位置する1987年竣工(築34年)の11階建て全78戸。分譲当初の売主はハイネス恒産・力建。施工は西松・古久根・建設共同企業体。分譲住戸は3階の角住戸で専有面積75.33㎡、価格4,280万円。リビング天井高は2400ミリ。

 住戸からは片瀬山が眺望でき、玄関には4.4畳のガラスの引き戸を採用した土間スペースを設置。靴を脱がずにそのまま入れるようにしている。リビングダイニングキッチンは青色やブルージュが基調。床は突板。すでに購入希望者がいるという。

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「湘南タワーズ」室内

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「湘南タワーズ」土間スペース

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「湘南タワーズ」リモートワークスペース

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「シーサイド片瀬江ノ島」室内
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「シーサイド片瀬江ノ島」土間スペース

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 同社の「INITIA &リノベーション」はこれまで結構見学している。今回は片瀬江ノ島の立地特性に合わせ、土間スペースを設置しているのが特徴で、床を突板仕様にしているのがいい。

 「シーサイド片瀬江ノ島」の分譲当初の売主がハイネス恒産・力建と聞き、なつかしさが込み上げた。ハイネス恒産の創業社長には何度も取材した。力建は明大野球部出身者をたくさん採用し、RBA野球で大京と覇権を争った。

 「湘南タワーズ」の売主がミサワホームで、バブル期の物件なのを全然知らなかった。見学で説明を受けたのは同社流通事業部の商品企画部建築課・藤澤駿氏、同部流通一部一課・荒金愛美氏、同部アクイジション二課・藤田未来氏で、みんな若く、素晴らしい名前に舞い上がった記者は、バブル期のマンション市場はどのようなものだったかを知らせようとサービス精神を発揮して、「このマンションの分譲当初の坪単価は450万円くらいではないか」と当てずっぽうで話した。

 すると、記者に大恥をかかせようと考えたのか、藤澤氏が分譲時のパンフレット・価格表を目の前に広げた。何と100㎡で価格は1億3,900万円とあるではないか。坪単価は459万円だ。最高価格は1億4,267万円(33坪)で、億ションでないのは16戸しかなかった。

 記者の予想はズバリ的中した。読者のみなさんは、事前に調べたのだろうと疑うかもしれないが、記者はそのようなことはしない。若いときなら事前にチェックしたかもしれないが、横着になったいまは出たとこ勝負だ。なぜ的中したかだが、40年もマンションを見続けていると、相場というものが見えてくるのだ。

 同社が分譲する「湘南タワーズ」の坪単価は211万円、「シーサイド片瀬江ノ島」は187万円。高いか安いかを判断するのは記者ではない。同社はこの2物件のほか「クリオ片瀬江の島壱番館」も分譲する。

 片瀬江ノ島は、海好きの記者にはたまらない街だ。取材より1時間早く着き、ビールを飲みながら海岸を散歩した。波と戯れる小さな子どもや肌もあらわな若い女性が目を楽しませてくれ、コロナをしばし忘れさせてくれた。

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「湘南タワーズ」バルコニーからの眺望

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片瀬江ノ島海岸

「パーカーズ」とのコラボ リノベマンション コスモスイニシア「大森山王」(2019/5/27)

 ソニーグループ発のSREホールディングスが経済産業省と東京証券取引所の「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021」のグランプリに日立製作所とともに選定されたことを一昨日紹介した。名だたる大企業を抑えてわが業界からグランプリを獲得したのはとても嬉しいのだが、この会社のことはいま一つよくわからないところがある。

 同社は選定発表の3日前の6月4日、「首都圏の駅別中古マンション価格騰落率を調査」と題するニュースリリースを発表しているが、これが実に不可解。なんだかAIに翻弄・嘲笑されているようで気分がよくない。不動産流通業は労働集約的な業種だと思っていたが、AIが幅を利かす時代に突入したのか。

 調査は、駅から徒歩15分以内、築5~15年、専有面積50㎡以上、間取り1R以外という条件を設定し、2020年1~3月の中古マンション成約価格と2021年3月末時点での不動産価格推定エンジンを用いたAI査定価格を70㎡換算して比較し、その騰落率を算出したというものだ。

 ランキングとして発表されているのは首都圏175駅圏で、調査は住宅評論家の櫻井幸雄氏と共同で企画し、調査結果の分析を同氏が行ったともある。

 このレポートを読んで疑問に思ったことがある。レポートには「中古マンション成約価格」の元データに関する説明がないことだ。同社の企業規模からして首都圏175駅圏の成約価格を得ることは不可能なはずだし、同業から異端児扱いされている同社が他の大手不動産流通会社から成約価格の情報提供を受けることなどもありえない。成約価格の元データを明らかにしないのは調査レポートとして体をなさない。

 記者は、成約価格はレインズ情報によると推測するのだが、レインズは「レインズから取得した成約情報は、購入や売却等を検討する顧客に対して取引価格を設定する場合の『意見の根拠』としてのみ明示することができる」としており、成約情報を広告・宣伝などに利用することを禁じている。レポートは広告・宣伝ではないにしろ、釈然としないものを感じる。

 さらに腑に落ちないのは、成約価格とAI査定価格を比較することの可否だ。AIであろうと宅建士であろうと査定価格をいくらにするかは勝手だろうが、それと成約価格を比較することの意味はどこにあるのか。業界では成約価格より査定価格が1~2割高くなるのは常識だ。むしろ、中古市場が好転していることを考えれば、騰落率が100%以下の駅圏が47もあるのが不思議だ。

 ランキングとして発表されている具体的な駅圏についても触れてみよう。

 同調査によると、騰落率が139.9%でトップの西武池袋線ひばりケ丘の成約価格は3,376万円(坪単価159万円)で、AI査定価格は4,723万円(坪単価223万円)となっている。

 ひばりケ丘駅圏の成約価格が坪159万円というのは〝安い〟と感じなくもない。同駅に限らず西武池袋線は新築も中古も他の沿線に比べ〝割り負け〟していると記者は思っている。

 一つ例示する。2007年に分譲された駅前の西武不動産販売他「ひばりタワー」322戸だ。記者は当時、各地のタワーマンションが相次いで高値を更新していたのを考慮し、坪単価は300万円前後と予想したが、実際に分譲されたのは坪285万円くらいだったはずだ。高額住戸は完売までかなり時間がかかった。

 いまこの「ひばりタワー」をAIに査定させたら坪250万円くらいではないか。しかし、平均坪単価223万円というのはありえない価格ではないか。

 もう一つ、西武池袋線と同じように〝割り負け〟が著しいわが京王相模原線の京王多摩センター駅圏はどうか。レポートでは、成約価格は3,804万円(坪単価179万円)で、AI査定価格は3,701万円(坪単価174万円)となっており、ランキングでは156位だ。

 駅近の免震「ザ・パークハウス 多摩センター」は「ひばりタワー」に負けない坪250万円くらいで、街のポテンシャルは多摩センターのほうが上だと思うが(もちろん異論もある)、AI査定価格はひばりケ丘駅が坪223万円で、京王多摩センターは49万円も安い174万円なのか。AIに〝根拠を示せ〟といえば答えてくれるのか。

 ランキング2位の日暮里駅のAI査定手価格7,566万円(坪単価357万円)というのは新築並みの価格だ。これもあり得ない。

 同社のホームページには「業界最高水準の精度を誇るAIが、人間では処理できないほどの大量なデータや様々な条件から売却の推定価格を算出します」とある。

 その結果、今回の査定価格がはじき出されたとしたら、われわれには反論の余地はないのか。DX銘柄審査員は同社を「破壊的なビジネスモデル」と絶賛した。われわれはAIにひれ伏し、盲従していいのかというひねくれ根性が頭をもたげてくる。

 そういえば、「DX注目企業2021」(カスタマーケア部門)に選定された東急不動産ホールディングスの東急リバブルは同社の「投資用区分マンションAIマッチングシステム」が「営業経験5年以上の担当者が行う物件選定と遜色ないレベルを実現したと発表した。同業他社も含めAI同士、さらに宅建士を交えて戦ったらどこが勝つのか、雌雄を決してほしい。小生が知るRBA野球関係者の宅建士はAIに絶対負けないと信じる。

DX銘柄2021グランプリ 日立製作所とともに不動産業のSREホールディングス(2021/6/8)

ヤフー&ソニー不 〝マンション流通革命、はじまる。〟サービス開始(2015/11/5)

東急リバブル 営業職5年以上と遜色ない物件選定AIマッチングシステム開発・稼働(2021/3/31)

駅近の免震 最初で最後 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 多摩センター」(2014/6/6)

「ひばりタワー」に反響3000件 単価は超割安? (2007/5/11)

 

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