三菱地所 ロイヤルパークホテルを吸収合併 保有と運営の分離進める
三菱地所は2月15日、同社と完全子会社ロイヤルパークホテル(RPH)、ロイヤルパークホテルズ アンドリゾーツ(RPH&R)の組織を再編し、4月1日付で同社を吸収合併存続会社、RPHを吸収合併消滅会社とすることを決定したと発表した。
同社は2021年8月にRPHを完全子会社とし、2022年1月27日にはRPHのホテル運営機能と不動産保有機能を分離し、ホテル運営機能を同社の完全子会社RPH&Rに承継させることを決定しているが、今回、不動産保有機能を同社が承継することにしたもの。
同社は今回の決定により、一体的・有機的なグループホテル経営を進化させ、運営・開発・アセットマネジメントの各分野の役割・機能を更に強化し、ホテル事業の成長拡大を図っていくとしている。
2021年3月期のRPH&Rの売上高は9,775百万円、営業損失は7,343百万円、RPHの売上高は3,063百万円、営業損失は2,841百万円。コロナの影響を大きく受けている。
堀口会長の生まれ故郷・佐渡にアウトドアアクティビティ拠点 サンフロンティア不

「佐渡アウトドアベース」
サンフロンティア不動産は2月15日、同社創業者で現取締役会長の堀口智顕氏の生まれ故郷・新潟県佐渡市の玄関口である両津港ターミナル至近にアウトドアアクティビティの総合拠点「佐渡アウトドアベース」を3月19日(土)にオープンすると発表した。運営は同社グループのサンフロンティア佐渡(代表取締役社長:堀口智顕氏)が行う。
「佐渡アウトドアベース」は、両津港ターミナルから徒歩4分、大通りを挟んで向かい側には道の駅が所在するアクセスのよい立地。“人と人 人と自然をつなぐ”をテーマに、佐渡の様々な観光資源と地域の魅力を繋ぎ、訪れる方々の体験型観光を支える、佐渡に初めて誕生するアウトドアの拠点。
館内には総合案内、ツアー販売窓口、アウトドアショップ、レンタルコーナー(自転車、釣り・トレッキング用品レンタル)、シャワー、更衣室、カフェ、休憩所、イベントスペースなどを兼ね備え、「アドベンチャーツーリズム」を総合的にサポートする設備と機能を備えている。


ショップ

釣り・トレッキング用品レンタル
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同社は、日本トライアスロン連合(JTU)のオフィシャルスポンサーで、新潟県佐渡市とJTU共催の「佐渡国際トライアスロン大会」を応援しており、大会に参加した同社社員を取材したことがある。
堀口さん、社員から日本代表になれる選手を育ててほしい。RBA野球大会も頑張ってほしいが、ロートル揃いでは多くを望めない。
台湾の義援金に謝意を込めて 前人未到の挑戦 沖縄から台湾へ150キロのリレー遠泳(2011/9/12)
“仕掛学”でポイ捨て削減&街の美化実現 コスモスイニシア 大阪のマンション

「コスモスイニシア南森町ギャラリー<Good enough Gallery>」
コスモスイニシアは2月15日、大阪大学大学院経済学研究科・松村真宏教授の監修のもと、大阪市の分譲マンション「イニシア大手前」(84戸)のモデルルーム「コスモスイニシア南森町ギャラリー<Good enough Gallery>」に近隣住民も気軽に立ち寄れるカフェを併設し、ごみのポイ捨て行動をなくす取り組み「Good enough Garden」を開始したと発表した。
マンションギャラリーは、Osaka Metro 谷町線南森町駅から徒歩1分にあり、周辺に商業施設が多く、ゴミのポイ捨てが目立っていることから、「無理やり行動を変えさせようとするのではなく、つい行動を変えたくなるように仕向ける」“仕掛学”を提唱している松村教授の監修のもと、マンションギャラリー前に花や木を植えたプランターを置き、“水やりをしてもらう仕掛け”を施している。また、カフェ内にはパネルと投票札を設置し、マンションギャラリー前に植える植物の種類について投票してもらい、もっとも票数が多かった「ハーブ」を採用した。
1月18日からプランターを設置したことで、設置前に見られたたばこの吸い殻や空き缶などのポイ捨てが、設置以降はほとんど見られなくなったとしている。
同社は新築分譲マンションの建設エリアで、すごしかたを街から考える活動「マチカツ」に取り組んでおり、今回の活動もその一環。

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面白い取り組みだ。この種の取り組みでは、〝立ちション〟をなくすため地蔵さんを置いたらそのような行動を取る人がなくなったという話を聞いている。
不動産業界ではサンフロンティア不動産やケン・コーポレーション、山万、日新ハウジングなどの社員による地域清掃活動が知られており、ナイスは仲介店舗に「住まいるCafe」を併設している。マンションギャラリーにそのような仕掛けを施した事例などないのではないか。首都圏でもやってほしい。
東京建物 2021年12月期決算 売上高は5期連続過去最高 ビル、マンションなど好調
東京建物は1月14日、2021年12月決算を発表。売上高は3,404億円(前期1.6%増)、営業利益は587億円(同18.4%増)、経常利益は462億円(同1.7%減)、純利益は349億円(同10.0%増)となった。売上高は5期連続で過去最高を更新、純利益は6期連続で増益を達成した。
売上高、営業利益が増加したのはビル事業が堅調に推移したことと、マンション分譲事業、投資家向け物件売却が好調に推移したため。経常利益が減少したのは、海外事業の一部プロジェクトで事業計画の見直しを行い、投資損失108億円を計上したため。期末配当は当初予想の24円から3円増配して27円にする。
セグメント別では、ビル事業は「Hareza Tower(ハレザタワー)」(東京都豊島区)が通期稼働し、投資家向け物流施設の開発に注力したほか、中規模オフィスビル、都市型ホテルなどの新規開発を推進した結果、売上高は1,556億円(前期比7.7%増)、営業利益は444億円(同10.0%増)となった。
住宅事業は、分譲マンション計上戸数は前期の1,196戸から1,109戸へ減少したが、戸当たり単価は6,485万円(前期5,388万円)へ上昇、粗利益率も24.4%(前年同四半期22.4%)となったことなどから、売上高1,205億円(前期比21.6%増)、営業利益170億円(同137.6%増)と増収増益。
竣工在庫は83戸(うち契約済み37戸)となり、前期末の177戸(うち契約済み27戸)から大幅に改善。未計上契約戸数は1,968戸(前期末1,314戸)に達している。
2022年12月期の通期予想は、売上高3,600億円(前期比5.7%増)、営業利益600億円(同2.1%増)、経常利益600億円(同29.7%増)、純利益400億円(同14.4%増)の増収増益を見込む。年間配当も59円(前期51円)へ増配する予定。
目に物見せる目[me]は何者だ 驚愕の積水ハウス「SUMUFUMU TERRACE 青山」

「SUMUFUMU TERRACE 青山(スムフム テラス アオヤマ)」
積水ハウスが2月1日に開設した「SUMUFUMU TERRACE」の第5弾、「SUMUFUMU TERRACE 青山(スムフム テラス アオヤマ)」を見学した。東京メトロ銀座線外苑前駅から徒歩1分の一等地に位置し、約70坪のスペースはガラス張りで、100本を超える中低木・シダ類が植えられており、アートギャラリーそのもの。デベロッパーが展開するマンションギャラリーやハウスメーカーの住宅展示場などとは全く異なる。唖然とするほかなかった。
「SUMUFUMU TERRACE」は、「家族みんなが住むコトに〝フムフム〟納得しながら家づくりをしてほしい」という想いを込めた〝新拠点〟で、「青山」は昨年11月にオープンした「新宿」「立川」「錦糸町」、12月に開設した「池袋」に続き5か所目。
施設デザインはデザイナー・佐藤オオキ氏が率いるデザインオフィスnendoが担当。〝庭〟に着目したガラスと植物で仕切られた回廊型の空間で、足を進めるにつれて家づくりのアイデアがどんどん膨らんでいく体験を得られる仕掛けを施している。
特徴の一つは、絵本作家の荒井良二氏や写真家の石川直樹氏、アートチームの目[mé]、東京藝術大学などの学生のアート作品などが展示されており、購入も可能になっていること。
場所は、東京メトロ銀座線外苑前駅1b出口から徒歩1分(数十秒)、港区南青山2丁目の「D-LIFEPLACE南青山」の1F。公開されている広さは約70坪。営業時間は10:00~18:00(休館日:火曜日・水曜日・夏季休暇・年末年始)。入場は無料だが、原則として予約制。コーヒーなどの飲み物のサービスも受けられる。

アート作品が展示されている回廊型のギャラリー

ふんだんに植えられている緑
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見学を申し込んだのは、佐藤オオキ氏がデザインを担当していることをプレス・リリースで紹介されていたからだ。見学する前は、デベロッパーの総合マンションギャラリーのようなものだろうと想像していたが、全然そうではなかった。冒頭に書いたようにアートギャラリーそのものだった。すぐ賃料を計算した。坪5万円はくだらないはずだ。
それ以上に驚いたのは、〝売らんかな〟の雰囲気が全くなかったことだ。申し込めば家づくりや家探しなどの相談にも応じるとのことだったが、営業担当がぴったりとくっつき、手八丁口八丁の売り込みをするイメージが強いマンションギャラリーなどとは天と地ほどの差があった。
アート作品は、好みもあるので何とも言えないが、記者は東京藝大の鈴木萌恵子氏の1点6.6万円、全6点の作品にほれ込んだ。(記者は油絵を描くので多少の審美眼はあると思っている)
目の玉が飛び出し、息が詰まりそうなほど驚いたアートもあった。「目[me]」の「matter α」作品だ。
撮影は不可だったので、もらったパンフレットのコピーをそのまま紹介する。「一見してどこにでもありそうな石。しかし、実は、目[me]によって極めて精緻に、長い時間をかけて、別の実在する石から手でトレースコピーされた驚愕のオブジェクト。注文が増えれば、その数だけ同じ〝どこにでもありそうな石〟が、複数の家に同時に出現します。アートとは、オリジナルとは、価値とは何か? を揺さぶる目[me]らしい作品」とある。
サイズ・素材はH65×W160×D120ミリ、砂、石、岩の粒子ほか。納期は約3か月。価格は990,000円(税込)。
皆さん、価格は桁違いではない。0の数は間違っていない。何と1個99万円だ。コピーには〝一見してどこにでもありそうな石〟とあるが、何度見てもどこにでも転がっていそうなただの石だ。広大な砂漠の中からダイヤモンドを探し出すことはほとんど不可能であるのと全く逆だ。ただの石ころ(砂岩のはず)に99万円の値段を付ける目に物見せる目[me]とは何者だ。神をも恐れぬ所業として断罪されても記者はしらないぞ。
だが、しかし、目[me]にも言い分がある。やはりパンフレットから引用する。「制作の始まりは、川へ行き、無数に転がる石の中から、思い描く形の完璧な〝普通の石〟を探すこと。それをオリジナルとして、もう一方の石は、砂を硬化させて形を作り、体積、苔、傷、模様など細部にいたるまですべてを模倣し(彼らはその工程をレタッチと呼ぶ)、まったく同じ〝石〟をこの世に存在させる。また、その中で、オリジナルと、制作した石をシャッフルし、ひとつを川に投げる。彼らでさえも、いま手元にあるのがオリジナルか、制作した石なのか分からないのだ」
ン? 99万円の価値があるのはオリジナルの石なのか、それとも模倣の石なのか。化学分析したらすぐ分かるのではないか。

外壁材もアートとして展示されている

「目[me]」アーティスト・荒神明香氏、ディレクター・南川憲二氏、インストーラー・増井宏文氏 写真:阿部 健(Takeshi Abe)氏
Wリビングの提案がいい コスモスイニシア「イニシアクラウド渋谷笹塚」(2016/10/24)
売却価格は安すぎる 「ザ・プリンス パークタワー東京」だけで1,500億円の価値あり
当欄2月10日付で「プリンスホテル売却へ30か所で1,500億円は安すぎないか/西武は分譲に力入れて」の記事を書いた当日、西武ホールディングスは、子会社プリンスホテル(PH)が保有する「ザ・プリンス パークタワー東京」などホテル・レジャー施設31物件をシンガポールの政府系ファンドGICに約1,500億円で譲渡すると発表した。2021年5月13日に公表した中期経営計画に基づき、より強固な財務・事業体質を構築するための経営改革の一環で、譲渡による帳簿価額を前提とした譲渡益は800億円程度となる見通し。
譲渡する施設の運営は昨年末に設立した「西武・プリンスホテルズワールドワイド(SPW)」が行い、PHは2022年4月1日付で「西武プロパティーズ」に吸収合併、「西武プロパティーズ」は「西武リアルティソリューションズ」に商号変更する予定。
「西武リアルティソリューションズ」は総合不動産会社として今後本格化する品川・高輪・芝の再開発事業や軽井沢・箱根などのリゾート事業を強化し、向こう10年間に国内外のホテル拠点を84か所から250か所に拡大するとしている。
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発表された施設31か所のうち記者が知っているのは「ザ・プリンスタワー東京」「サンシャインシティプリンス」「ザ・プリンス京都宝ヶ池」しかない。知らないことは書けないが、「ザ・プリンスタワー東京」の〝価値〟だけでも1,500億円あると思っているし、創業から60年以上の「苗場プリンス」を含む31施設で簿価を基準にした譲渡益は800億円にしかならないのは理解できない。なぜそんなに安いのか。「ザ・プリンス パークタワー東京」を詳しく見てみよう。
「ザ・プリンス パークタワー東京」は、都営大江戸線赤羽橋駅から徒歩2分、都営三田線芝公園駅から徒歩3分、港区芝公園四丁目に位置。1990年(平成11年)、都市計画法第59条4項(特許事業)の認可を受けて建設されたもので、従前は昭和の時代から親しまれていた西武鉄道所有の「芝ゴルフ練習場」だった。
敷地面積は約3.7haで、30階建て延べ床面積約9.1haの全603室。客室面積は約28~325㎡。宿泊料金はホームページによると約7万~254万円。設計は丹下都市建築設計、施工は鹿島建設。開業は2005年4月。
ホテルに何を求めるかで評価は変わってくるが、記者は都内のラグジュアリーホテルの中でベスト10入りするのではないかと思っている。
なによりも素晴らしいのは四方八方が芝公園という立地・眺望だ。こんなホテルは他にない。設備も充実しており、客室面積も平均40㎡以上だ。文字通り「西武・プリンスホテルズワールドワイド(SPW)」にふさわしいホテルだ。
仮に、何の法的規制もないと仮定したら、地価相場からして坪1,300万円でも安いはずなので、敷地の評価額はざっと1,500億円だ。ここにマンションを建てたら坪単価800万円以下はありえず、販売総額は数千億円になるはずだ。
ただ、実際はこのホテルには減価要因もある。前述したように都市公園と一体として開発する条件付きの特許事業だからだ。容積率の規制も受けており、他の用途に変更することなどはまず認められない。西武がこのホテルを売却の対象にしたのは法的規制が強いからということも考えられる。
もう一つは稼働率の低さだ。このホテルはコロナ前からも稼働率の低さが指摘されていた。PHはホテルブランドを最上位の「ザ・プリンス」から「グランドプリンス」「プリンス」「プリンス スマート イン」まで4つに分けているが、「プリンス」が圧倒的に多いためか、あるいは「西武」のイメージがいま一つであるためか、「ザ・プリンス」の浸透度はいま一つのようだ。ブランディングに課題がありそうだ。外資系ホテルに学ぶ点は多い。
さらに言えば、これはPHだけの問題ではないが、わが国のホテルの格付けだ。現在、フォーブスの「5つ星」を筆頭とする日本ホテル格付けが知られてはいるが、それほど浸透しているとも思えない。旅行代理店のサイトも肝心の質についてはどこも触れていない。わが不動産情報サイトと同じだ。
それにしても売却価格は低すぎる。不動産鑑定の仕組みはどうなっているのか。GICにしてみればどうしても手に入れたかった物件であり、西武としては名を捨てて実を取ったということか。
プリンスホテル売却へ30か所で1,500億円は安すぎないか/西武は分譲に力入れて(2022/2/10)
成約件数は大幅減ながら価格・単価上昇続く 首都圏の1月の中古住宅市場 レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は2月10日、首都圏の2022年1月度の流通市場動向をまとめ発表した。
中古マンションの成約件数は2,760件(前年同月比20.7%減)、成約坪単価211.8万円(同11.5%上昇)、成約価格は4,149万円(同10.0%上昇)、専有面積は64.65㎡(同1.3%縮小)。
地域別では、成約件数はすべての地域で減少。東京都区部と横浜・川崎市、神奈川県他は前年比で2割を超える大幅減となった。成約単価はすべての地域が前年比で上昇が続き、東京都区部は21か月連続、横浜・川崎市と埼玉県は20 か月連続、千葉県は18か月連続で前年同月を上回った。
中古戸建住宅は、成約件数は前年比17.9%減の2ケタ減となり、成約価格は前年比で7.0%上昇し、20年11月から15か月連続で前年同月を上回った。土地面積は前年比で3.8%縮小、建物面積は同マイナス 0.2%となった。
プリンスホテル売却へ 30か所で1500億円は安すぎないか/西武は分譲に力入れて
西武ホールディングスが保有する国内のプリンスホテル約30施設を売却するとメディア各紙が報じている。例えば2月5日付朝日新聞。同紙は「東京都港区の『ザ・プリンス パークタワー東京』、『札幌プリンスホテル』(札幌市)、『グランドプリンスホテル広島』(広島市)など30施設」を「シンガポール政府系の投資ファンド『GIC』に売却する方向で検討していることがわかった」と報じた。
これら一連の報道に対して西武HDは2月7日、「現時点で決定した事実はございません」とコメントを発表した。
各紙の報道と西武HDのコメントから判断して売却の方向で検討しているのは事実のようだ。具体的な金額や施設名が報じられているのは、どこかがリークしたのだろう。
この報道に、60余年、西武ライオンズをずっと応援し、西武不動産などを取材してきた記者は相当のショックを受けている。昨季、西武ライオンズは42年ぶりに最下位に転落し、先に西武建設の売却が決定されたばかりだ(セブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武も売却する方向で検討されているとの報道はさておく)。
「西武」「プリンス」ブランドはどうなるのか、そんなに深刻なのか。調べてみた。確かに業績は最悪だ。
プリンスホテルの2021年3月期の売上高は699億円、営業損失は429億円、純損失は606億円だ。収益を悪化させているのは固定費の負担だ。営業費用1,129億円のうち人件費は34.3%に当たる387億円で、水道光熱費58億円、清掃・洗濯費45億円、借地借家料55億円のほかに「その他」が333億円に上っている。コロナ前の2019年3月期の売上高2,031億円、営業利益231億円(営業費用は1,790億円)、純利益146億円と比較して、売上高が66%減なのに、営業費用は37%しか減っていない。「所有」と「運営」一体型の事業形態がコロナの直撃を受けたことがよく分かる。
西武HDは昨年5月に「総合報告書2021」を発表し、その中で代表取締役社長・後藤高志氏は「社長メッセージ」として次のように述べている。
「従来、プリンスホテルは、『保有』と『運営』の一体構造で売上や利益を取り込むビジネスモデルで展開し、稼働率も高く収益をもたらしていました。しかし、コロナ禍で需要が瞬間蒸発したため、資産を保有することで生じる固定費の負担が重石となりました」とし、今後は「ホテル業では、一部資産を売却・流動化し、保有を継続するホテル資産は不動産事業へ移管します。これにより、プリンスホテルはホテルオペレーターとして、西武プロパティーズはアセットホルダーとして開発を進めるなど役割を明確にして、『攻め』を意識した体制のもとで事業を展開していきます」
後藤社長がいうように「保有」と「運営」一体型のホテル事業はコロナの直撃を受けた。外資系ホテルはみんなそうであるように、分離するのが時代の流れのようだ。
それにしても国内の全49施設のうち30か所も売却し、その額が1,500億円というのは安すぎないか。1か所平均で50億円だ。売却後も運営は当分「プリンス」として継続するというから、従業員の雇用も確保するという条件付きなのが売却価格を押し下げているのか。あと1年、2年辛抱すれば需要は回復するような気がするのだが…。
ともあれ、西武ファンとしては残される「シティ」と呼ばれる都心部のホテルのイノベーションに期待したい。いかに都心の「プリンス」の価値が高いかを紹介する。
西武HDの発表資料によると、グループが所有する東京23区の不動産は約46万㎡(大手デベロッパーを上回る規模=西武HD資料)にも達する。その大半は品川・高輪・芝のホテルだ。
具体的に紹介すると、「ザ・プリンス さくらタワー東京」「グランドプリンスホテル高輪」「グランドプリンスホテル新高輪」の合計敷地面積は約8.8haで、「品川プリンスホテル」は約4.0haだ。合計で約12.8ha。これは8.5haの「六本木ヒルズ」や6.8haの「東京ミッドタウン六本木」を超える。これに、東京タワーや増上寺に隣接する約5.0haの「東京プリンスホテル」、芝公園内の約3.8haの「ザ・プリンスパークタワー東京」、約3.0haの「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」を合わせると約24.6haにもなる。
これら7つのホテルの土地を時価評価したらいくらになるか。公示地価を参考に推測すると坪2,000万円として約1.5兆円だ。しかし、立地条件や規模かかして実際に入札されたらはるかに高い値段が付くはずだ。
品川・高輪の再開発計画は決まっていないが、リニア新幹線、高輪ゲートウェイの開発とともに脚光を浴びることになる。「プリンス」には世間をあっと言わせる新機軸を打ち出してほしい。
ただ、西武HDが中期経営計画で掲げるアフターコロナ後の「最良、最強の生活応援企業グループへ」のスローガンには一言いいたい。
「最良、最強の生活応援企業グループ」の中核をなすのはもちろん鉄道事業だが、もう一つの柱である不動産事業を担う西武プロパティーズを「総合不動産会社」(後藤社長)と称するのには疑問を呈さざるを得ない。
2021年3月期の西武HDの不動産事業は売上高553億円で、営業利益は154億円だ。不動産事業を担う西武プロパティーズの主な事業は商業施設やオフィスの賃貸業だから、これくらいの利益を確保するのは当然だ。むしろ23区に46万㎡の不動産(鉄道路線は入っていないはずだ)を所有する会社にしては事業規模が小さすぎる。土地の有効活用ができていないということになる。
肝心の開発力も縮小する一方だ。西武プロパティーズはもう10年くらい前から目立った分譲マンション・戸建て事業を行っていない。JVマンションはあるが、みんな〝ぶら下がり〟だ。西武線沿線はデベロッパーの分譲事業の〝草刈り場〟になっている。情けない。堂々とトップシェアを占めてほしい。
同業他社はどうか。売上高・利益とも桁違いの東急や近鉄はともかく、売上高は小田急、阪急阪神、相模鉄道、西鉄などに負けているのではないか。売上高は西武より少ない京急や東武もコンスタントにマンションを分譲している。不動産事業は微々たるものしかない京王も、「稼ぐ力」を強化するため、タカラレーベンが保有していたサンウッドの株式を取得した。リビタとともに不動産事業の拡大を打ち出している。
分譲事業はリスクも大きく、同業他社と足並みを揃える必要はないかもしれないが、「最良、最強の生活応援企業」を消費者に印象づけるのは分譲住宅だ。住民の足になっているのだから親しみもあり、大手デベロッパーとも互角以上戦える強みもある。まず差し当たって老朽化が目立ち、施設の陳腐化も目立つ「新宿プリンス・新宿PePe-ペペ」「BIGBOX高田馬場」の建て替えを提案したい。マンションなら坪600万円以上になるはずだし、何よりも「西武」のイメージを一新できる。
書き忘れた。わが埼玉西武ライオンズの2022年3月期第3四半期の売上高は189億円(前年同期比46.1%増)、営業損失は4億円(前年同期の営業損失は40億円)と改善した。
北京オリンピック女子アイスホッケーチーム〝スマイルジャパン〟は予選1次リーグを1位で突破したが、全23選手のうち8人が「SEIBUプリンセスラビッツ」所属だと西武関係者から聞いた。次戦の準々決勝戦は強豪のフィンランドだそうだが、がんばれ!スマイルジャパン!
北海道最高峰は坪415万円 大和ハウス他「ONE 札幌ステーションタワー」始動

「ONE 札幌ステーションタワー」
大和ハウス工業は2月8日、参加組合員として事業参画している「札幌駅北口8・1地区市街地再開発組合」の中心をなす札幌市最大・最高層の分譲マンション「ONE 札幌ステーションタワー」(48階建て624戸)の記者発表会を行った。記者はオンラインで参加した。
物件は、地下鉄東豊線・南北線さっぽろ駅から徒歩2分、札幌市北区北8条西1丁目に位置する48階建て全624戸(一般分譲対象外住戸82戸含む)。専有面積は44.81~227.99㎡、売主は同社(事業比率35%)のほか住友不動産(同25%)、東急不動産(同25%)、NIPPO(同15%)。設計・監理は大成建設・ドーコン。施工は大成建設・伊藤組土建・スターツCAM共同企業体。着工は2020年7月。竣工予定は2023年12月。
物件の1階~3階は商業施設、2階・3階は芸術・文化施設、5階にはテレワークもできる個室ブースを備えた「オーナーズラウンジ」や「コミュニティラウンジ」「オーナーズサロン」、23階・24階の「ゲストルーム」は 6戸用意。29階には「スカイラウンジ」と「パーティールーム」を設ける。一般分譲住戸は1LDK~4LDKまで60以上のプランを用意し、高層階には天井高2.7mのプレミアム住戸を設けている。
30階以上の第1期244戸の登録申し込みを2021年11月27日~12月4日に受け付け、これまでに226戸を成約している。専有面積は49.69~227.99㎡、価格は5,160万~5億円(最多価格帯9,300万円台)、平均坪単価415万円。78戸が億ション。
契約者は、年齢は30代が約8%、40代が約22%、50代以上が約 70%、家族数は1~2人が約70%、・居住地は北海道内が約70%(うち市内が約55%)、北海道外(主に首都圏)が約30%。用途は実需が45%、セカンドハウスが40%、投資が15%。
再開発事業は、JR札幌駅北口から約200mに位置する開発面積約2.1haの大規模複合再開発プロジェクトで、マンションのほかオフィス・商業施設・多目的ホール(劇場)などからなるA棟と、ホテルからなるB棟の2棟で構成。札幌駅北口の活性化と札幌の玄関口に相応しい都市空間の形成を目指す。
発表会で再開発組合理事長・田中重明氏は、「スタートは30年以上前の1988年。その後、経済状況の変化などに左右され、紆余曲折があった。2014年に都市計画の決定があり、2019年の組合設立に至った。北口は北大のキャンパスにも近い住宅地。街づくりに貢献したい」と語った。
大和ハウス工業執行役員マンション事業本部長・富樫紀夫氏は、「4社の力を結集したプロジェクト。市では今後再開発ラッシュが続くが、その皮切りとして、新しい札幌の顔としていいスタートを切りたい。再開発組合の30年の想いをつなげたい」と述べた。

オーナーズラウンジ

ゲストルーム デラックスツイン
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仙台と米沢市、蔵王より北には一度も行ったことがなく、札幌のマンション市場はさっぱり分からないが、坪単価はいくらになるかはとても興味があった。
横浜駅直結マンションの第1期が坪単価700万円を突破し、大阪・堂島は坪560万円、名古屋駅圏も坪400万円なので、札幌駅ともつながる最高峰ならこの単価もありかなと思う。
契約者の30%が首都圏居住者を中心とする道外というのもよく理解できる。断熱性能が気になったが、醜悪な顔を晒したくはなかったので、質問は控えた。
最高2.7億円の住戸に申し込み5件 〝プラウドシーズン〟の歴史に刻む 野村不「成城」

「プラウドシーズン成城コート」
野村不動産は2月7日、平均価格が2.3億円の第1期5戸が即日完売した「プラウドシーズン成城コート」(全6区画)の現地をメディアに公開した。小田急線成城学園前駅北口のさくら並木通りをまっすぐ進み、四差路を左折した徒歩8分の建ぺい率40%、容積率80%の第一種低層住居専用地域に立地。「成城アドレス」の一等地で、垂涎の的であるのは間違いない。
公開された最高価格2.7億円のモデルハウスは敷地面積約170㎡(51.69坪)、建物面積約173㎡(52.62坪)。1階は約34㎡のビルトインガレージ、ホール、8.0畳大の主寝室、洗面室、1822の浴室、ストレージなどで、2階は28.3畳大のLDK、5.8畳大の洋室2室、屋上スカイバルコニーなど。
主な基本性能・設備仕様は、リビング天井高3m、Low-Eガラスの2.7mハイサッシ、全館空調システム、床はオーク材の挽板フローリング、シーザーストーンキッチン・カウンター天板、漆喰壁、内法1.05m階段、カッシーナの調度品、格子デザイン引き戸、本革ドア把手など。
商品企画について、同社住宅事業本部戸建事業部推進一課課長・吉井浩介氏は、「外構も建物形状も従来の分譲戸建てとは異なる都市型デザインとした。外構は御影石、鉄平石、タイルなどを多用した石垣、石張り、電柱の地下化など成城らしいシンボリックなものとし、建物は、水平・垂直ラインを強調したシャープなデザインとフレーム、ガラスを強調したデザインにした」と語った。
販売状況については、同社住宅事業本部戸建営業部営業二課長・松本真木夫氏は「12月末にホームページを開設し、1月8日にモデルハウスを公開するまでの2週間でエントリー数は信じられないほどの1,200件に達し、第1期5戸には最高価格2.7億円の住戸は5件、全体で10件の申し込みが入った。見学に5組、10組の方が並ぶほどの人気になったが、ほとんどの方は当社の『プラウドシーズン』を知らない方だった」と話した。

最高価格の住戸

格子デザインの壁・引き戸

サッシ

外構
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今回の見学会は、「成城」は分譲戸建て「プラウドシーズン」の歴史に名を刻む物件であり、今後この種の高額戸建てを積極的に展開するという意思をアピールするためだと理解した。
現地は「成城アドレス」の一等地。従前は邸宅だったそうだが、よくぞこんな土地を仕入れられたものだ。最高価格2.7億円の住戸の競争倍率が5倍になったというのも納得の商品企画だ。価格については、敷地、建物も50坪以上でこの価格はむしろ安いのではないか。
設備仕様レベルは、照明の当たり具合で微妙に表情を変える左官仕上げの漆喰壁や、三協アルミ製の重厚なハイサッシが目を引いた。
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同社の分譲戸建てについて少し紹介する。野村不動産ホールディングスは先の2022年3月期第3四半期決算で、2022年3月期通期業績予想を売上高6,700億円(2021年10月発表時増減なし)、営業利益860億円(同4.9%増)、事業利益880億円(同4.8%増)、経常利益770億円(同4.1%増)、純利益510億円(同3.0%増)と上方修正、各利益はいずれも過去最高となる見通しとし、年間配当予想も5.0円増配し90.0円とすると発表した。
増益をけん引しているのは住宅部門で、今回上方修正した事業利益の増額分40億円のうち20億円が同部門だ。粗利益率は前年同期の21.6%から23.5%に改善した。今期売上計上予定戸数4,300戸に対して第3四半期末の契約進捗率も100.9%に達している。
記者が注目したのは完成在庫の減少だ。第3四半期末の販売中の完成在庫は前年同期の239戸(うち分譲戸建て18戸)から121戸(同0戸)へほぼ半減し、未販売の完成在庫も前年同期の190戸(同11戸)から66戸(同0戸)へと3分の1へ激減している。完成在庫率の低さは、大手デベロッパーの中では三井不動産と双璧をなす。
同社の分譲戸建ての最近の計上戸数は400戸前後で推移しているが、第3四半期末で完成在庫がゼロというのに驚いたので、松本氏に聞いてみた。松本氏は「私は18年間、在籍していますが、完成在庫がゼロというのは皆無ではないような気がしますが、記憶にないくらい珍しいことです」と話した。

現地近くの「さくら並木通り」

