7/14以降の感染者 累計の半数占める 8月死亡者340人 うち男性66% 都のコロナ
東京都の新型コロナ感染者と死亡者をグラフと表にまとめた。
累計感染者は9月17日現在、370,544人となり、年代別では20代の106,909人が最多で、全感染者に占める割合は28.9%を占めている。以下、30代の73,374人(比率19.8%)、40代の58,685人(同15.8%)の順。人口10万人当たり感染者は2,677となっている。
累計感染者の男女比 男性56.0%:女性44.0%
男女別では男性が207,679人(比率56.0%)、女性が162,865人(同44.0%)。これを年代・男女別にみると、10歳未満は男51.7%:女48.3%、10代は男52.8%:女47.2%、20代が男53.3%:女46.7%、30代が男59.6%:女40.4%、40代は男61.2%:女38.8%、50代は男58.6%:女41.4%、60代は男58.9%:女41.1%、70代は男52.3%:女47.7%、80代は男41.4%:女58.6%、90歳以上は男27.2%:女72.8%となっている。
年代によって微妙に異なるのは、ジェンダー性差(格差)、就業形態、人口構成など複合的な要因が理由と思われる。
直近2か月で累計感染者のほぼ半数 デルタ株の脅威裏付け
累計感染者を若年層が激増し始めた今年7月14日以降とそれ以前では大きな差異がみられる。
これをデルタ株のbefore/afterとすると、7月14日から9月17日現在の感染者は187,593人で、それ以前は182,951人となっており、累計感染者の約半数がこの2か月間で感染したことになる。デルタ株が猛威を振るっていることが数字からもうかがえる。
年代では、20歳未満の感染者はbeforeの15,499人(比率8.5%)からafterの28,214人(比率15.0%)へ人数、比率とも大幅に増加している。20代もbefore の26.9%からafterは30.8%へ3.9ポイント上昇。このほか30代、40代も比率はそれぞれ1.4ポイント、0.7ポイント上昇している。
逆に、ワクチン接種効果だと思われる70歳以上のafterはbeforeから7.4ポイント減少し、人数は約9,800人減少している。同じように60代は半減し、50代も人数、比率ともafterは減少している。
累計死亡者は340人 男性65.6%:女性34.4%
8月の累計死亡者は340人(9月18日現在)で、男女別にみると男性223人(比率65.6%)で、女性は117人(比率34.4%)となっている。調査対象は異なるが、累計感染者の男女比は56.0%:44.0%だから、男性のほうが際立って多いことが分かる。
年代では80代の91人(比率26.8%)が最多で、以下、70代の63人(比率18.5%)、50代の57人(比率16.8)、60代の49人(比率14.4%)となっている。
年代別・男女別では、年代が低いほど男性の比率が高く、高齢者は比率が低くなっているが、これは感染者の男女比を考えると、高齢者もやはり男性のほうの死亡率は高いと言えそうだ。
この点について、厚労省のQ&A(2020年10月時点)では「新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人の割合や死亡する人の割合は年齢によって異なり、高齢者は高く、若者は低い傾向にあります。 重症化する割合や死亡する割合は以前と比べて低下しており、2020年6月以降に診断された人の中では、①重症化する人の割合は 約1.6%(50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)②死亡する人の割合は 約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)となっています。
新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方、一部の妊娠後期の方です。重症化のリスクとなる基礎疾患等には慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、 心血管疾患、肥満、喫煙があります」としている。
選手村裁判 開発法による鑑定手法が適法なら当初の坪単価250万円は妥当
今回の選手村裁判は、鑑定手法・前提条件が異なれば、価格はいかようにもなることが明らかになった。
東京地裁はどのような判決を下すかわからないが、仮に被告の東京都が勝訴すれば、日本不動産研究所が当初はじき出した用地の坪単価32万円(1種8万円=記者推定)による「HARUMI FLAG」の分譲坪単価250万円は極めて妥当な価格で、分譲価格に占める土地価格:建物価格の割合が7%:93%という調整区域か林地に建つマンション並みというのもまた納得できる。
そうなれば、原告側が「原告らの準備書面(15)」で主張する「広大な本件土地を時価の10分の1以下という水準で売却したということで、不動産鑑定制度の信頼性、土地の公正な価格水準を破壊するだけでなく、ひいては将来的には、不動産価格市場の安定性、公平性までもゆがめるものである」という懸念は拭い去れないが、ここでは開発法による今回の鑑定手法が適法ということを前提条件に原告側の桝本鑑定の問題点を指摘することにした。
当初の分譲単価250万円は極めて妥当
「原告ら準備書面(14)」では、「被告側調査価格の問題点」の一つに「販売価格が著しく低額である」とし、「被告側調査報告書ではそもそもマンションの販売(予想)価格について、8年後も含めて十分検討されておらず、70数万円(平米当たり)で想定されていたが(但し、板状棟)、実際の販売価格が平均価格で大体90万円(平米当たり)を超えており、これだけ販売価格が著しく低額であると、調査価格を押し下げることになる。タワー棟はまだ販売されていないが、同様に調査価格91万6,000円(平米当たり)は低過ぎると言わざるを得ない(原告桝本は120万円(平米当たり)と想定)」と述べている。
しかし、これは明らかに間違いだ。調査報告書が作成されたのは2016年であり、開発法手法が妥当とすれば、この手法によって導き出された坪32万円(1種当たり8万円=記者想定)から分譲単価を割り出すと70数万円(坪単価約250万円)は妥当な価格だ。記者はその時点で「アッパーで坪250万円くらいではないか」と書いたが、今でも記事は間違っていないと思う。
よって、販売価格は著しく低額とは言えない。実際の販売価格90万円(297万円)は、むしろ高いと思う。1種8万円という〝ただ同然の価格〟で土地を取得したのだから、それを分譲価格に反映させ、利益は購入者に還元すべきと考えているからだ。
タワー棟の調査価格91万6,000円(坪302万円)も極めて妥当な値段だと記者は考える。桝本鑑定士は120万円(坪396万円)を想定しているようだが、これは価格時点ではありえない単価設定だ。当時(2016年時点)で三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークシティ中央湊」の坪単価は440万円だった。今年から分譲開始された勝どき駅前の再開発マンション「パークタワー勝どきミッド/サウス」でも坪単価は425万円だ。
不動産鑑定を否定する利益折半やるべきでない
さらに言うなら、小池都知事が「最終的な住宅分譲販売収入が当初の想定を1%以上上回った場合、増収分の半額を特定建築者が東京都に追納することで合意した」と2019年7月に発表した特別条項を適用するのは基本的に反対だ。利益折半などというのはやくざのやることだ。不動産鑑定制度を否定し、「開発法」を有名無実化するものでもある。
準備書面はまた、「桝本鑑定士の尋問に対する批判は考慮に値しないこと」の中で「販売単価について」も言及しており、「日本不動産研究所の予想販売価格は、実際の販売価格よりも1㎡当たり15~18万円、割合にすれば20%程実際の価格よりも安く算定していたということである。日本不動産研究所の調査報告は平成28年2月23日付(これは平成28年4月23日付の誤植=記者注)であり、HARUMI FLAGの価格が発表されたのは令和元年7月である。すなわち、日本不動産研究所は、わずか3年5か月後の販売価格について、実際の販売価格と2割もずれた価格を前提に計算していたのであり、この点について水戸部証人は何ら合理的な理由を述べていない」としている。
この指摘も当たらないと記者は思う。そもそもが「開発法」を用いた予想販売価格(鑑定価格)は、先に指摘したように価格時点つまり2016年4月の時点の価格をはじき出したものだ。土地代を1種8万円と想定すれば妥当な単価設定だ。
また、準備書面は「わずか3年5か月後の販売価格について…」としているが、バブル崩壊もリーマン・ショックも3.11も今回の新型コロナも同様だ。一寸先は闇のことなど誰も予測できない。調査報告書はそのような未来予測を含めて価格を算定したのではないのは明らかだ。
ただし、「水戸部証人は何ら合理的な理由を述べていない」というのはよくわからない。記者は民事訴訟のことなどさっぱりわからないが、当事者の原告、被告が嘘をついても罪には問われないはずで、証人も「嘘はつきません」と宣誓しなければ偽証罪に問われないのではないか。
水戸部証人は別の尋問で「覚えていない」を多発されたようだが、不動産鑑定士の資格をはく奪されるのではないかと心配し、金縛りにあって説明できなかったのか。これまた不思議だ。
選手村裁判が結審 「HARUMI FLAG」利益は消費者(購入者)に還元すべき(2021/9/9)
選手村裁判 不可解な調査報告書は2つ&掘削工事の事実ない 原告の準備書面
「晴海選手村土地投げ売りを正す会 第4回総会」(豊洲文化センターで)
昨日(9月18日)の午後6時30分から午後8時過ぎまで行われた「晴海選手村土地投げ売りを正す会 第4回総会」の取材を許可されたので、一部始終を取材した。総会には「正す会」会員と支援者ら約30人が参加した。
「正す会」の代表・中野幸則氏は「長い4年間の裁判の過程で事業の不当性を明らかにした一方で、行政訴訟の参加を足止めするような国や行政の姿がはっきりした。裁判の結果は予断を許さないが、都民の目から見た正しい司法の判断をしていただきたい。悪人をこのままほったらかすようなことはあってはならない。勝利を目指して頑張りましょう」と呼び掛けた。
事務局長の市川隆夫氏は「万々が一(われわれが)勝利した場合、相手も控訴するだろうから長生きしないといけない。負けた場合は、新しい証拠を提出しないといけないし、メディア対策を練らないといけない」などと語った。活動資金は残り7万円しかないことも明らかにした。
弁護団を代表して参加した千葉恵子氏は「(原告側が勝訴しても一銭も入らないのに)被告側の原告に対する批判は言えば言うほど自ら墓穴を掘り進んでいるのではないかと感じた」と一連の裁判を通じた率直な印象を述べた。
◇ ◆ ◇
まず、取材を許可していただいた「正す会」に感謝申し上げる。記者は用意されていたお菓子は頂かなかったが、参加費(資料代)500円をきちんと支払い、座るのもためらわれたので最後尾で立ちっぱなしで話を聞いた。
東京地裁裁判長宛ての「判決にあたっての要請」ハガキも資料封筒に入っていた。「都民に多大な損失を与え、違法・不当に開発業者に奉仕する都政の是正を願う」というフレーズをそのまま受け入れるわけにはいかないので返そうと思ったのだが、返し忘れた。
4年間で150万円しか弁護士報酬が払えず、活動資金は残り7万円しかない「正す会」の財政事情を考えると、これは84円の封書で返すのも失礼なので、カンパでもしようか。
一番の収穫は、被告の東京都(小池都知事)は日本不動産研究所(不動研)にわずか5か月の間に2度にわたり鑑定評価を依頼し、総額約1,810万円を支払っていることを原告側が「原告ら準備書面(15)」で明らかにしていることだ。(原告、被告とも「調査報告書」を鑑定評価書とみなしていないようにも受け取れるが、名称のいかんを問わず鑑定基準に基づいたものであるのは明らかだ。報酬額も半端でない)
「原告ら準備書面(15)」によると、都は平成27年9月25日付で日本不動産研究所と約993万円で委託契約を結び、不動研は同年11月30日を発行日とする「調査報告書」をまとめ、額は約110億円(坪27.1万円、価格時点11月1日)としている。(第1回目)
そして、都は平成28年2月23日付で不動研と約817万円で委託契約を結び、不動研は同年2月23日を発行日※とする「調査報告書」をまとめ、額は約130億円(坪31.9万円、価格時点4月1日)としている。(第2回目)
※これは明らかに誤植。2月23日に契約を結び、同日付で報告書をまとめられるはずがない。「4月23日」の誤りではないか。
それにしてもわずか5カ月の間に、前提条件は若干異なるにしろ、2度にわたって調査依頼する理由はなにか。(平成29年7月の都の住民の監査請求に対する監査報告でも第1回目の調査報告書の存在は明らかにされていない)
更に不可解なのは、被告側の水戸部証人は2回の調査委託があったことを認めたものの、第1回目の調査報告については「分からない」「よく覚えていない」を繰り返したことだ。
「原告ら準備書面(15)」には次のようにある。
淵脇(原告側弁護士) じゃあ、1回目は何だったんですか。(略)
水戸部証人 1回目…もうちょっとそこは私は、申し訳ないですけれども、よく覚えていません。
その後、関連する質問を淵脇氏は2度行っているが、水戸部証人は「いや、そこもちょっと覚えていません」「今頭の中にありません」「ちょっと前のほう(第1回目)、その評価額というものをちょっと覚えていないので」「個別のこういった案件の詳細については、部下にまかせているのはたしかなのでそこでちょっと覚えていません」を繰り返している。
不可解なのはまだある。関係者間では既知の事実であるはずのパシフィックコンサルタンツが平成25年9月に作成した報告書に記載されている110億円について、水戸部証人は額はもちろん、報告書の存在すら知らなかったと証言したことだ。淵脇氏と水戸部証人のやり取りには次のようにある。
淵脇 このパシフィックコンサルタンツ作成の「平成25年9月」の報告書、これをご覧になったことありますか。
水戸部証人 ありません。今回の裁判で初めて、こういうものがあるというのを知りました。
◇ ◆ ◇
この日、桝本不動産鑑定事務所・桝本行男氏も総会に出席されていた。桝本氏は「日本丸」のファンで、年間10回、もう50年も晴海ふ頭を訪れており、選手村の現地をよく知っているとのことだった。
「原告ら準備書面(14)」には、桝本氏は「特に掘削の必要のない地下駐車場を建築費増大の理由としていることは不合理である」とし、「そもそも掘削工事は行われていない」と証言したことが記述されている。
これが事実なら大問題だ。「HARUMI FLAG」のプロジェクトを発表したとき、事業者は駐車台数分(2,318台)を全て地下化すると発表した。裁判でも被告側はこれをコスト増大の理由の一つに挙げている。
桝本鑑定士の証言が事実かどうか、記者も現地見学を申し込んでみる。いま「HARUMI FLAG」の物件概要を確認した。建物は全て地下1階がある。住戸は2階以上だ。記者は地階に平置き駐車場が整備されると思っていたのだが、構造は機械式となっている。ピット式だと可能なのだろうが、地上部分は駐車スペースにならないのか。
選手村裁判が結審 「HARUMI FLAG」利益は消費者(購入者)に還元すべき(2021/9/9)
東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟(2016/8/4)
文句なしにいい 街づくり・基本性能 坪単価280万円か 「HARUMI FLAG」(2019/4/24)
東京BRT初体験 虎ノ門~晴海の終点まで28分 信号31か所、待ち時間6.6分(2021/3/1)
「選手村マンション増収分折半」 選手村裁判の原告団が声明文(2019/9/18)
またも平行線 「早く結審を」(被告)「議事録開示を」(原告)第8回選手村裁判(2020/1/18)
オリンピック選手村裁判 原告側桝本鑑定士の意見書は証拠価値なし 被告側が意見陳述
「HARUMI FLAG」 土地と建物の価格比率は調整区域並みの7:93 算定は妥当
オリンピック選手村住民訴訟も佳境に 原告、被告双方 相手を「著しく」非難
「晴海」坪250万円予想の根拠 「週刊文春」も裏付け 当初単価は244万円と報道
多様な取り組みのトリガーに/三重県 最下位に転落 男性育休フォーラム2021
「男性育休フォーラム2021」
積水ハウスが9月14日開催した「男性育休フォーラム2021」の「見逃し配信」を視聴した。受信・音声環境がとてもよく、ほとんどすべての話の内容を理解することができた。同社代表取締役社長執行役員兼 CEO・仲井嘉浩氏は「フォーラムを多様な取り組みを行うトリガーの第一歩にしていただきたい」とあいさつした。
フォーラムでは、「男性育休白書2021」が発表されたほか、ジャーナリストで東工大准教授・治部れんげ氏がモデレーターとなり、日本ユニシス 代表取締役社長CEO・CHO 平岡昭良氏、サカタ製作所代表取締役社長・坂田匠氏、NPO法人フローレンス代表室長・前田晃平氏、積水ハウス代表取締役社長執行役員兼 CEO・仲井嘉浩氏によるパネルディスカッションが行われた。
また、厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課 課長補佐の加藤明子氏が改正育休法の概要を説明した。
積水ハウスは2018年から「男性社員1か月以上の育児休業(育休)完全取得」を推進し、2021年8月末時点で、取得期限(子が3歳の誕生日の前日まで)を迎えた男性社員1,052名全員が1か月以上の育休を取得。2019年2月以降、取得率100%を継続している。
今回発表された「男性育休白書2021」特別編は、男性の育休取得の「壁」を浮き彫りにする調査結果を報告している。今年6月に育児・介護休業法の改正が行われたが、男性の育休取得率は12.7%(2020年)にとどまっているが、その背景として、マネジメント層の75.0%が「取得して家族を大切にしてほしい」と思いつつ、ほぼ同数の73.8%が「人手不足で会社の業務に支障が出る」と心配していると指摘している。
以下、パネルディスカッションで記者が印象に残った部分を紹介する。
積水ハウス トップダウン⇔ボトムアップ 機能する社風・文化
仲井氏
積水ハウスが育休制度を実施したのは、仲井社長がスウェーデンの郊外スマートシティを見学したとき、ベビーカーを引いていたのは男性ばかりの光景に感銘を受けたのがきっかけとされているが、仲井氏はその経緯について「帰国してすぐダイバーシティ推進部長と人事担当部長に相談し、うちも3カ月の育休制度を実施できないかと話したところ、1週間後にレポートが出来上がりまして、社員約2万人の約10%が対象となり『社長、3カ月にすると決算に影響します』と言われまして、『じゃどうしたらできる』と聞いたら『1か月ならできます』と言ってくれたので進めた」と語った。
記者は、社長の指示とはいえ、育休制度を導入したらどうなるかをわずか1週間の間にレポートに仕上げるそのスピードに驚いたのだが、もともとそのような制度をすんなりと受け入れる風土・文化が同社にあるからだとも思う。
この種の取り組みは経営者のトップダウンでないとうまくいかないとはよく聞くが、世の中がCS(顧客満足)一色だったころでも、同社の営業マンは「CSも大事だが、ES(従業員満足度)を満たしていることが前提」などと話したのを思い出す。ボトムアップも機能していたということだ。何の衒いもなく「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョンに掲げられるのもそうした風土・文化があるからだろう。
日本ユニシス 長期育休は仕事の多様性にも効果
吉岡氏
育休取得率26.7%、平均取得日数99日という日本ユニシス吉岡社長も興味深い話をした。
「当社の生業として常にリノベーションを求めており、リノベーションには多様性が大切なのですが、性別とか国籍を超えて価値観、役割の違いを受け入れてインクルージョンしていくことがとても大事です。ところが、自分自身に多様性がないと(他人との)違いを認めたりリスペクトしたりできないんではないかと。そこで、イントラパーソナル・ダイバーシティと呼ぶんですが、自分自身に多様性をつけてもらおうと、社員には複数の役割を持ってほしいといっているんです。育休を経験すると全く違った役割を持つことになることが分かりました。しめしめと思いましたね。
長い期間(育休を)取り、家事・育児や地域とのつながりを経験することで多様性を高め、違う価値観をリスペクトできる本当の多様性を見つけることができる。当社の育休が平均99日と長いのはそのためです」
同社は来年4月1日付で社名を「BIPROGY(ビプロジー)」に変更する。変更の由来は「多様な人々とともに未来への新たな道すじを照らし出すという想いを込め、光が屈折・反射した時に見える7色(Blue、Indigo、Purple、Red、Orange、Green、Yellow)の頭文字」を取ったそうだ。「多様性」を意識した社名なのだろう。何と面白い会社ではないか。
サカタ製作所 育休100%にしたら出生率6倍
坂田氏
オンラインで参加したサカタ製作所・坂田社長もとても面白い話をした。
同社は2015年、働き方改革の一環として、残業ゼロを目指すため属人化解消、業務の棚卸などを行ったが、男性の育休のハードルは全くなかったという。「育休を希望する社員の話を聞いた2017年の段階で、わたしは男性の育休を知らなかった」と坂田氏は話し、「育休を取った後の男性社員は雰囲気が変わる。びっくりします。怪しげな新興宗教に染まったのではないかと疑いたくなるほど凄く変化する。あとで理由が分かりました。1週間程度の育休取得者は〝おれはやれる〟という達成感があるんですね。育児、家事を手伝っただけで周りにも褒められる。
ちょっと待てくれよ、女性はどうかと考えると、達成感などないですよ。うまくやらなければ批判されることはあっても褒められることはない。ところが、男性も長い間育休を取ると、褒めてなどもらえないですし、達成感もない。その代わり、女性に対する理解が深まる。そしてものすごくいいパパ、いい亭主の顔になる。仕事に向き合う姿勢も変わってくるんですね。そして〝また子ども作ります〟になるんです。実は、当社の出生率は残業ゼロを実現してから3倍に、育休取得100%にしてからは6倍に増加し、いまちょっとしたベビーブームが起きています。当社だけでこれほどのことができる。少子高齢化などの問題解決のヒントはここにあると思います」と報告した。
坂田氏は極めて本質的なことを話した。育休はもちろん子育て・家事労働は男性・女性の区別なくともに負担し、関わることが当たり前となり、この種の「男性育休フォーラム」などが話題にも取材対象にもならない時代にしないといけない。
三重県 職員 育休取得率日本一から「男性の家事・育児力」最下位へ
「男性育休2021白書」には「男性の家事・育児力」都道府県別ランキングが紹介されている。トップは沖縄県で、2位は鳥取県、3位は奈良県だ。
わがふるさと三重県はあろうことか最下位の47位だ。総合スコアは31点で、46位の山口県の43点より10点以上も差を付けられ、最高点の沖縄県の216点を100点満点とすれば三重県は15点、完全に落第点だ。
1年前の前回、三重県の男性職員の育休取得率は日本一として発表されたばかりだ。「男・性育」と読めばわからないでもないが、1年にして日本一から日本最悪に突き落とされるとは…。あれは恥部を覆い隠すイチジクの葉っぱだったのか。鈴木英敬知事は衆院選に出馬するため辞職した。
それにしても「イクメン白書2020」では三重県は18位だったのに、この暴落、凋落の理由が知りたい。
他にも最下位があるのではないかと心配になりネットを調べた。凄いデータがあるものだ。都道府県ランキングで三重県が最下位は焼鳥消費量、男性・女性BMIなどで、そのほか低いものでは姉さん女房比率(44位)、横断歩道での一時停止率(44位)、炭酸飲料消費量(45位)、飲酒費用(46位)などたくさんある。
確かに言われてみると、焼鳥屋なるものは小さいころ見たこともない。BMIが低いのは痩せ型が多いということのようで、これは肥満よりいいことでベスト1ではないか。名前は忘れたが、著名な作家は三重県の女性がナンバーワン(良妻賢母という意味だったような気がする)と絶賛していた。記者もそう思う(良妻賢母という意味ではなく、みんなよく働き、総じて美しいという意味)。炭酸飲料や酒類を飲まないのは本当だろうか。
1位はJUSCO店舗数、イオン店舗数、2016年参議院比例代表:民進党得票率くらいしかない。JUSCO、イオンが1位なのは、ともに発祥は三重県四日市市の旧岡田屋だから当然で、民進党の1位は、かつて同党に所属していた政治家の岡田克也氏が岡田家出身だからだ。
エリアの最高値更新へ 三菱地所レジ コンパクト&ファミリー「赤羽」
「ザ・パークハウス 赤羽フロント」
三菱地所レジデンスは9月17日、「ザ・パークハウス 赤羽フロント」のメディア向け内覧会を行った。赤羽駅から徒歩3分の全70戸で、分譲対象62戸のうち30~40㎡のコンパクトが42戸、60㎡台のファミリーが20戸。駅西口から徒歩3分のマンション分譲は16年ぶりとのことで、生活利便施設も整っていることから、赤羽駅圏では過去最高値の坪単価400万円を突破する可能性が高いと読んだ。
物件は、JR赤羽駅(西口)から徒歩3分、北区赤羽西1丁目の商業地域(建ぺい率80%、容積率500%)に位置する14階建て全70戸(募集対象外住戸8戸含む)。専有面積は30.00~67.58㎡、価格は未定だが、坪単価は400万円を突破する可能性が高い。販売開始予定は2021年11月下旬。竣工予定は2023年1月下旬。施工は村本建設。
現地は、エキュート赤羽、専門店街・ビーンズ赤羽、イトーヨーカドー、ショッピングセンター・ビビオ、赤羽アピレの5つの大規模商業施設や、隈研吾建築都市設計事務所が設計を担当している東洋大学赤羽台キャンパス、1962年(昭和37年)竣工のUR都市機構「赤羽台団地」(3,373戸=順次建て替え中)に近接。
敷地は、幅員約20mの南道路に接道。建物はL字型で、専有面積63~67㎡の北東・南西向きが20戸、30~40㎡台の南西・北西向きが42戸。主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、食洗機、リビング天井高2450~2500ミリなど。共用部にはwi-fi機能を備えたラウンジスペース、ワークスペースを設置し、専有部にもwi-fi機能を整備する。
スマートフォンとインターネットを通じて自宅の様々な機器を連動させる「IoT設備」を導入。外出先から電気錠、エアコン、照明器具、風呂のお湯はり、床暖房などを制御できるようにしている。
サブスクリプションサービス「CLAS」と提携し、同社初の家具・家電のレンタルサービスを提案。家族構成やライフスタイルなどに合わせたり、季節家電を必要な時に借りたりするなど「入れ替える」暮らしや収納の省スペース化が行えるようにしている。また、一箱月額110円で利用できる宅配型収納サービス「サマリーポケット」も利用できる。リビングと洋室の間にLIXILの「デコマド」を初めて採用している。
反響は、この2か月間で1,000件を突破しており、地元3割のほか23区全域からの反響があるという。年代は30~40代が中心。
販売を担当する同社第一販売部販売第二グループ チーフ(販売所長)・益賀夛綾子氏は、「公園が多く、何でも揃う、何でもできる街。赤羽駅圏では販売予定も含め6物件あり、価格は坪340~400万円前後。当社の価格は未定ですが、これらの物件価格を勘案して決めたい」と語った。
モデルルーム(洋室、正面の窓が「デコマド」)
ワンルームタイプのハーフモデル
◇ ◆ ◇
最大の関心事、坪単価について。販売事務所に着いたら、高校が一緒の後輩記者が隣にいたので、先輩風を吹かせようと「見学会では坪単価がいくらになるか予想が当たるようにしないといけない。私は坪単価380万円くらいではないかと読んだ」と話した。ところが、配布資料をみると、前段で書いたようにコンパクトの割合が多いではないか。なので、坪単価400万円でも人気になり完売したタカラレーベンのコンパクトマン「ネベル赤羽」を思い出し、「ひょっとすると坪400万円もあり、立地からして上回る可能性もある」と訂正した。
益賀夛氏は、単価について明言を避けたが、顔には〝立地、設備仕様レベルはうちのほうが高いわよ〟と書いてあった。赤羽駅圏の最高値を更新する可能性は高い。
しかし、高いか安いか、記者はコメントしない。決めるのは検討者だ。ただ、東口の飲み屋街「一番街」は昭和40年代、50年代のレトロな雰囲気が残っている、飲兵衛にはたまらない街だ。コロナが収まったら、「お父さん、頑張ってね」と声を掛けてくれた店に行ってみよう。彼女はコロナから逃げきれただろうか。
蛇足だが、アルヒの「本当に住みやすい街」は信じないほうがいいと思う。「赤羽」は2020年では「川口」に次いで第2位だったのに、2021年には姿を消した。この1年間に赤羽が劇的に変わったことは断じてない。
建設現場
三菱地所レジ マンション単価もバブル後最高値更新 「神山町」は坪800万円台後半(2021/9/15)
エリア最高値圏でも人気 タカラレーベン コンパクト「ネベル赤羽 」(2020/12/18)
「大山町クロスポイント」再開発着工 住友不・フージャースが事業参画
大山町クロスポイント周辺地区市街地再開発組合は9月15日、東武東上線大山駅に近接する再開発事業「大山町クロスポイント」の起工式を9月7日に行ったと発表した。参加組合員として住友不動産とフージャースコーポレーションが事業参画している。
事業地は、大山駅から約300m西方に位置し、「ハッピーロード大山商店街」の一部と周辺住宅地などを含む約0.7haが施行区域。ハッピーロード商店街の道路を挟んだ4街区で構成。総戸数345戸の住宅と低層階に延床面積約4,000㎡超の商業区画を設けた総延床面積約40,000㎡超の大規模複合開発。竣工予定は2024年12月。施工は長谷工コーポレーション。総事業費は約193億円。
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大山駅圏では、ハッピーロードを抜けたところで三菱地所レジデンスが11月に「ザ・パークハウス 板橋大山大楠ノ杜」(187戸)を分譲する。立地条件のよさから、記者は坪340~350万円と予想しているのだが、「大山町クロスポイント」はいくらになるか。
分譲戸建て御三家とは戦わない 都市部に人的資源移す 大和ハウス
大和ハウス工業は9月15日、2021年基準地価に関する記者レクチャー会を開催。マンション事業については同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏、分譲戸建てについては住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ部長・本間生志氏、物流施設事業については建築事業本部営業統括部Dプロジェクト推進室室長・井上一樹氏がそれぞれレクチャーした。
角田氏は、首都圏市場について都心部も郊外部も引き続き需要は旺盛で、価格水準は高値で推移しており、用地仕入れ価格も上昇しており、入札案件では相場の1.2倍の価格で落札されるケースも出始めていると語った。
近畿圏もほぼ同様の傾向を示しており、用地取得状況は近畿圏でも賃貸事業者などとの競争が激化し価格が上昇。地方圏でも首都圏や近畿圏のデベロッパーの参入が相次ぎ、用地取得競争は激化していると話した。
本間氏は、首都圏の1億円超の3階建てを中心に販売は順調としながら、いわゆるパワービルダーの市場占有率が高い北関東などでは苦戦が続いていると語った。
井上氏は、同社の売上高4兆1,267億円(2021年3月期)のうちセグメント別売上高では賃貸住宅と肩を並べる23%に達していることから、今後も海外を含め積極的に展開していくと語った。
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同社のレクチャー会(勉強会)については記事にしてきたが、本間氏は北関東が地盤のケイアイスター不動産や、都心の3階建てを積極展開しているオープンハウス・ディベロップメントなどの具体的な社名を挙げ市場動向について語り、質疑応答の時間も約30分取るなど、他のハウスメーカーやデベロッパーのそれらとは全く異なる。本音で語ってくれるから参加のし甲斐がある。お三方をやり込める記者が現れないかと期待したのが、残念ながらそのような質問は飛ばなかった。記者のような行儀の悪い記者が少ないのは残念だ。
記者は、角田氏に「昨今のマンション価格上昇から、専有圧縮、天井高の低下などの基本性能の低下、設備仕様レベルダウンを差し引くと、実質的な単価上昇は年率にして10%以上ではないか」「『王子神谷』は坪単価260万なら飛ぶように売れると思いますが、そこまで安くならない、アッパー280~290万円でいかがでしょうか」「大激戦の『調布』の坪350万円はコンパクトですので納得します」などと質問した。
これに対し、角田氏は用地費や建築費の上昇が単価を引き上げている主な要因とし、基本性能・設備仕様レベルダウンとの因果関係については明言を避けた。また、「王子神谷」の価格は未定としながら「坪250~300万円」を匂わせた。「調布」については、「単価は安くはないが、女性を中心に反響は多い」と語った。(さっき届いた物件販売のプレス・リリースには、ダイニングテーブル、カフェカウンター、リモート用デスクにもなる多目的キッチンカウンター「Nimonal(ニモナル)」を採用しているとある。これは面白い)
本間氏には、記者は「そもそも建築単価が倍くらい違う分譲戸建て御三家とは争わないで、大手デベロッパーのように都市型に絞り、経営資源もそこに集中したほうがいいと思いますが、いかがでしょうか」とストレートを投げ込んだら、「仰る通り。当社も含め大手ハウスメーカーは互角に戦えない。人的資源を都市部に移すよう着手している」と直球で返してくれた。
記者は前回のレクチャー会の記事で「栃木県は飯田グループ・森和彦会長(4月1日付で名誉会長に就任予定)の出身県で、群馬県はケイアイスター不動産の本拠地だし、中古住宅買取再販最大手のカチタスも本社は群馬県桐生市だ。まるで価格帯が異なる。勝てるわけがない。戦っても現場が疲弊するだけだし、ブランド力の低下を招きかねない。あえて火中の栗を拾いに行くような愚を同社が犯すはずはない」と書いた。
都市型戸建てでは、オープンハウスも伸びてはいるが、一方で三井不動産レジデンシャルと野村不動産の二社は年間数百戸をコンスタントに供給しており、〝二強時代〟が続いている。ここに割り込むのは容易ではないだろうが、外野から眺めるわれわれ記者の立場からすれば、二強に挑戦状を叩きつけられない他のデベロッパー、ハウスメーカーは情けないと思う。
三菱地所レジ マンション単価もバブル後最高値更新 「神山町」は坪800万円台後半
「ザ・パークハウス グラン 神山町」(アルミルーバーが美しい)
三菱地所レジデンスは9月14日、同社のフラッグシップブランド〝ザ・パークハウス グラン〟の第7弾「ザ・パークハウス グラン 神山町」のモデルルームを報道陣に公開した。物件は、高級住宅街として知られる渋谷松濤・神山町エリアの希少な第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積が約4,000㎡の大規模で、坪単価は同社物件のバブル後の最高値を更新する800万円台後半になる。モデルルームの一般公開は9月25日(土)から。分譲開始は10月上旬。
物件は、東京メトロ千代田線代々木公園駅から徒歩9分、東急東横線渋谷駅から徒歩11分、渋谷区神山町の第一種低層住居専用地域の敷地面積約4,031㎡に位置する地上3階地下2階建て全55戸(分譲対象外5戸含む)。専有面積は71.41~160.56㎡、坪単価は800万円台の後半の予定。第1期(9戸)の予定価格は29,000万円台~58,000万円台(専有面積118.74~160.56㎡)。設計・監理・施工は東亜建設工業。売主は同社のほか東急。デザイン監修はキュリオシティ。竣工予定は2023年11月中旬。販売開始は2021年10月上旬。
渋谷駅徒歩圏でありながら、高級住宅街として知られる松濤・神山町エリアの一角で、都心3区で全用途に占める割合は4.1%しかない第一種低層住居専用地域に位置し、しかも敷地面積が4,000㎡超という都心3区で過去3物件しか供給事例がないという希少性が最大の特徴。従前敷地は外国人向け賃貸住宅。
デザイン監修は渋谷を拠点に活躍する「GINZA SIX」などを手掛けたキュリオシティのグエナエル・ニコラ氏。「別荘in渋谷」をコンセプトに日本の美を意識した唯一無二の邸宅を目指す。外観は木調ルーバーを多用することで、コンクリートの存在をかき消す、周囲に調和するデザインとなっている。夜間にはライトアップすることで美しい風景を描き出す。
住戸プランはPP分離を意識した平均104㎡超で、テラス付き12戸、最上階ルーフテラス付き3戸を用意。キッチンはジ―マティック、リビング天井高2600ミリ、突板仕上げの面材多用、全居室天カセ実装、24時間全熱交換換気。個別設計変更(カスタムアイズ)にも対応。各種の予約・手配・取次・紹介サービスも行う。
見学会で同社第一計画部長・浦崎康弘氏は、「ザ・パークハウス グランとしては2019年に竣工した『南青山四丁目』に次ぐ7棟目で、1低層・渋谷区初。これまでのノウハウを生かした最高水準の物件に仕上げた」と語った。
エントランスアプローチ
ルーフバルコニー
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同社から見学会の案内が届いたとき、坪単価は1,000万円と予想した。松濤・神山町ではこのところマンションの供給はほとんどなく、お金持ちの垂涎の的であるからだ。浦崎氏は都心3区(千代田区・港区・渋谷区)の1低層の割合は4.1%と話したが、千代田区には1低層はゼロで、港区もわずか1ha(全用途に占める割合0.0%)しかなく、渋谷区の174.3ha(同11.5%)が都心3区の1低層のほとんど全てを占める。松濤・神山町はそんなエリアだ。
予想は外れたが、そんなに的を外したわけではない。敷地は北傾斜の比高差にして2層(6m)くらいの傾斜地で、建基法では地階に当たる北向き・西向きの70㎡・80㎡台の住戸の単価が低く抑えられているためで、上層階などは坪1,000万円を突破するはずだ。
平均で坪800万円台後半というのは、同社物件のバブル崩壊後の最高値だった2013年分譲の坪800万円の「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」(73戸)を超え、最高値を更新することになる。ちょうどこの日(14日)、東京株式市場の日経平均株価(225種)は3万795円まで上昇し、バブル崩壊後の最高値をつけた。
140㎡のモデルルーム リビング(34畳大、床は突板)
洗面浴室(久々にタオルウォーマーを見た)
茶室(モデルだからいいが、本物の茶室を提案してほしかった)
主寝室クローゼット(いかにも高価そうな衣服がたくさん下げられていた)
社内外で評価された三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」(2014/7/22)
「看取り」も行う新発想 ファーストコーポ・中央住宅・中央日土地 第一弾「南大沢」
左からファーストエボリューション社長・須藤憲綱氏、品川氏、小島氏、高橋氏、中村氏、初澤氏(青山グランドホテルで)
ファーストコーポレーションと中央住宅、中央日本土地建物は9月14日、これまでにないコンセプトの分譲マンションプロジェクト「ウェルビーイングシティ構想」の記者発表会を開催し、第一弾の「CANVAS南大沢」(181戸)のモデルルームを10月2日にオープンすると発表した。
「CANVAS」は、暮らす人の身体的・精神的・社会的な健康状態がバランスよく調和の取れた状態であることを意味する概念「ウェルビーイング」をコンセプトに、様々なサービスの提供を通じて〈〝自分に正直でいい、自分らしく〟をかなえる暮し>を目指す。
発表会の冒頭、登壇したファーストコーポレーション代表取締役社長・中村利秋氏は、「従来の分譲マンションは分譲すれば、その後は管理会社に管理を委託し、入居者と関わることはなかった。新規事業を立ち上げるべく検討を重ねてきた結果、生まれた今回のプロジェクトは、人々の暮らしを支える様々なサービスを提供することで持続可能な社会の構築の実現を目指すもの。3社が力を合わせて成功させたい」と語った。
続いて、中央住宅代表取締役社長・品川典久氏は、「2年前、中村社長からお話を伺い、地域の幸せ、豊かさを追求するという当社の理念に合致すると事業参画させていただくことを決定した。大きな第一歩としたい」と話した。
中央日本土地建物専務執行役員・初澤剛氏は、「今回の新ジャンルは持続的、多面的な未来のシニア住宅時代を切り開くものとして育てていきたい」と語った。
発表会ではこのあと、元フジテレビアナウンサーの小島奈津子氏と後輩の高橋真麻氏によるトークセッションが行われた。
「CANVAS南大沢」は、京王相模原線多摩境駅から徒歩16分、南大沢駅からバス7分徒歩3分、八王子市鑓水二丁目に位置する9階建て全181戸。専有面積は32.47~82.35㎡、価格は未定。竣工予定は2022年10月。設計・施工はファーストコーポレーション。販売代理は伊藤忠ハウジング。
ターゲットは50代から70代で、年齢制限を設けず、子ども世代、孫世代との同居も想定。一般にも開放するレストランを併設しシェフサービスを行うほか、杏林大学病院-新川すみれクリニックとの24時間相談、リモート会議室、節税・自叙伝相談、フィットネス、大浴場、リゾートホテル宿泊優遇、入居者専用畑など多彩なサービスを提供する。橋本駅と南大沢駅を行き来するシャトルバスを運行する予定。
「CANVAS南大沢」
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上段は、プレス・リリースをコピペし、3氏が話したことをそのまま紹介した。ここまで読まれた方は、どのようなマンションかさっぱり理解できないはずだ。発表会に参加された約20名の記者の方も同様のはずだ。記者は発表会が始まってから約30分間、各氏の話を必死でメモし、コンセプト動画も見た。意気込みはよく分かるのだが、肝心の中身がよくわからない。どのようなマンションを分譲するのかさっぱり理解できなかった。
似たようなサービスは、フージャースコーポレーションやコスモスイニシアが展開しているシニア向け所有権分譲マンションや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などにもあるが、シニア向け所有権付き分譲は年齢制限があり、どちらかといえば連れ合いをなくしたお年寄りが一人で入居するケースが圧倒的に多いはずで(コスモスイニシアは都市型なので夫婦入居比率は高いか)、老人ホームもサ高住も法律の規制が多く、そもそも老人ホームは利用権付きが圧倒的に多く、サ高住は賃貸だ。
これらに対し、新構想は住、食、働、遊、学、健、看の7つのテーマを掲げている。そんなサービスを付加したらとんでもない価格になるのではないかなどと考え、出口、結論がさっぱり見通せず、イライラのみが募った。
すると突如、鮮やかな「赤」(朱と呼ぶべきか)のドレスと、対照的な純白のドレスをそれぞれまとった女性二人が登壇したではないか。記者は近眼と老眼のため視力は0.2で、しかも遠目であったので容姿などは全然わからなかったのだが、美しさに見とれそれをよしとし、核心に迫る話題を提供してくれるのではないかと期待した。
しかし、お二人からはそんな話はほとんど出ず、明るく元気なフジテレビパワーなどの話に花が咲いた。
(お二人は元フジテレビのアナウンサーであることは事前に知らされてはいたが、昔はプロ野球ニュースや競馬中継はよく観たが、いまはお笑い番組など興味はないし、最近はほとんど観ないので、小島さんも高橋さんもどのような方か全く知らなかった。小島さんは50歳以上であることを、高橋さんはコロナ禍で出産したことを明かした)
小島さん(左)と高橋さん(共同PR提供=知らないのは記者だけ。かみさんは「昔のフジテレビのトップアナウンサー」と言ってました)
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ここまで訳が分からない記事を辛抱強く読んでいただいた読者のみなさんに感謝します。これからが本番だ。まとまりを欠く起承転結がでたらめな発表会に対し、記者は皮肉を込めて「若い赤と白の女性の方が登場されて、もうコンセプトなとどうでもいいと思いましたが、もう少し具体的なプランを説明していただきたい。坪単価は200万円を下回ると思いますがいかがか」と挑発的な質問をした。
あにはからんや、回答したのは正面に居並ぶお三方ではなく、袖に控えていた方が「価格は未定。申し上げられませんが、コンセプトは老人ホームに近い」と答えた。
…なるほど。記者はもう少しヒントを得ようとその方に駆け寄った。名刺には「ファーストコーポレーション開発事業本部 第一開発事業部長兼シニア専任部長 細川潤」とあった。細川氏は、シニアに限定したくない、「老人」などの文言も使いたくない、看取りもやる、「介護」の問題はお年寄りだけではないなどと話した。細川氏は、自らトータルブレイン出身であることも明かした。
これですべての疑問が氷解した。老人ホームでもサ高住でもシニア向けでもない新しい概念のマンションがどのようなものかおぼろげながら見えてきた。「看取り」までやるマンションなど記者も読者の皆さんも考えたことなどないはずだ。3社はそれをやるというのだ。
まだ詳細は分からないが、記者は質問した「坪単価200万円以下」を取り消し、上方修正する。坪単価250万円は高すぎるような気がする。坪230万円でどうか。コンセプトの具体的な中身を分かりやすく訴えきれれば広範な支持を得るかもしれない。老人ホーム、サ高住、シニア向け分譲マンションの盲点をつく新しい提案になる可能性はありそうだ。
廊下幅最大1300ミリ リビング天井高2500ミリ 大和ハウス「川口並木」
「プレミスト川口並木」
大和ハウス工業が今年5月から契約を開始した「プレミスト川口並木」を見学した。駅から徒歩5分の全55戸で、これまでに供給した44戸のうち31戸が申し込み・成約済み。順調に進捗している。
物件は、JR京浜東北線西川口駅から徒歩5分、川口市並木二丁目の商業・近隣商業地域に位置する10階建て全55戸。現在分譲中の第1期~第2期1次(14戸)の専有面積は61.00~70.52㎡、価格は4,330万~5,940万円(最多価格帯5,400万円台)、坪単価は257万円。竣工予定は令和4年1月下旬。施工は埼玉建興。販売代理は野村不動産ソリューションズ。
現地は商業・近隣商業地域だが、通りから一歩入ったところで交通騒音もそれほどなく、嫌悪施設などもほとんどない。従前は駐車場。
住戸は全戸西向きで、主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2500~2800ミリ、廊下天井高2400ミリ、食洗機、廊下幅最大1300ミリ、間口6300ミリ(一部除く)など。
販売担当者は、「来場者は地元・川口市居住者が中心ですが、都内からも多く、価格の安さ、広さ、利便性が評価されています」と語っている。
エントランス
モデルルーム
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記者は一昨年、駅から徒歩5分で住環境もいいにも関わらず坪単価が214万円という超〝割安感〟のある大京「ライオンズ川口並木グランゲート」(120戸)を取材している。
今回の物件の坪単価257万円というのはやや高いという印象を受けたが、一駅都心寄りの川口駅の再開発マンションは坪340万円、都内・赤羽は坪400万円近くしていることを考えると、検討者も納得の価格なのだろう。
63㎡のモデルルームはよくできている。グループのコスモスイニシアが最近力を入れている〝魅せる玄関〟によく似た廊下幅(収納含む)最大1300ミリと廊下天井高2400ミリの提案が目を引き、テレワークに適したリビングの造作家具(有償)もよかった。スパンは6300ミリ確保している。
そして何より嬉しかったのは、若い女性の販売担当者が何とわがふるさと三重県出身だったことだ。記者は伊勢市の隣町出身だが、この女性の方は名張市だった。名張市は名古屋というより大阪が商圏なので、語尾に「な」が付く〝伊勢のな言葉〟とはややニュアンスが異なったが、それでも優しい語りは来場者にいい印象を与えるはずだ。
同社に入社してから京都に3年、静岡に2年、首都圏は異動になって1年半とのことだった(年齢が分かってしまうではないか)。次の販売物件が決まったら、また取材を申し込むことに決めた。
建築現場
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西川口駅に着いたのが12時過ぎだった。取材の約束時間15時までかなり空きがあったので、どこかタバコが吸え、くつろげる場所はないかと2時間近くうろつきまわったが、全くなかった。すると、モデルルームと目と鼻の先に「喫煙可」の飲食店があった。この種の店には1年半以上も利用したことがないが、もう我慢の限界。意を決して入った。
先客がいた。アンニョンハセヨ、チゲ、アニョー、クンニョー、ビビンバクッパ、チャヒョン、チョンマゲー、ハムニダ、ナムアミダブツ、ハムニダ、♥ Ü{ ♫⍨⍩˙▿˙%?…記者と同じくらいの年齢と思われる女性二人が並んで大きな声で会話を交わしていた。距離は十分あり、飛沫が飛んでくる心配はなかったが、あまりいい気持ちはしなかった。
「ビールあります? 」「ありません」「ノンアルコールは? 」「あります」「じゃ、ノンアルコールのビールください」と注文し、これだけでは悪いと思い「辛ラーメン」を頼んだ。写真に収めた。半分残した。タバコは3本吸った。
歩き回ったお陰で、エフ・ジェー・ネクストの「ガーラ・レジデンス川口並木パークサイド」36戸、名鉄不動産のコンパクトマンション「メイツ西川口」84戸の現場を見ることができた。
これで料金は1,100円