横浜市×アキュラホーム×イケア 体験型「SDGsハウス」公開
「SDGsハウス」
アキュラホームは8月1日、「SDGs未来都市・横浜」の実現を目指すための中間組織「ヨコハマSDGsデザインセンター」のコーディネートにより、イケア・ジャパンと連携したSDGsの17ゴールに貢献する住まいや暮らし方を提案する「SDGsハウス」を同社の港北展示場で公開した。
「SDGsハウス」は、同社が昨年5月、CLTを採用したモデルハウス「キラクノイエ」の設備・家具・備品にイケヤが開発した商品を展示しているもので、各商品がSDGsのどのゴールを目指しているかを分かりやすく説明しているのが特徴。9月30日まで公開される。
再生ポリエステル繊維で作られたテーブルクロス・クッション
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国連が提唱するSDGsをテーマにしたイベントを取材するのはこの1週間で3度目だ。他の記事と合わせて読んで頂きたい。国も企業も国民もSDGsを目的意識的に取り組み始めたということか。
今回の「SDGsハウス」で興味を引かれたのは、イケアが開発したテーブルクロスやクッションなどだった。使用済みのペットボトルを再生ポリエステル繊維として蘇らせたものだった。商品化されるのは間違いないと見た。
記者は再生ポリエステル繊維についてはよく分からないのだが、かなり普及しているようだ。弊社の女性社員の制服も全てではないが、再生ポリエステル繊維で作られたワンピースを着ている。新入社員が選んで購入したという。記者は触らせてもらったが、手触りは感は普通の洋服と変わらない。洗濯するとしわが寄りやすいというのが難点のようだ。
値段が高いか安いか判断のしようがないが、これもSDGsの取り組みの一つと思えば堂々と胸を張れる。
写真ではよく分からないが、キッチン扉もプラスチックから再生された製品
全役員がSDGsバッジ 住林は障がい者による手作り木製 熊谷組は市販のメタル製(2019/7/26)
〝世界に発信〟 企業×自治体 先進的SDGs取り組み事例紹介「City Lab Ventures」(2019/7/25)
「HARUMI FLAG」「著しく利益増」の「著しく」とは当初売上計画の1%
7月30日付の住宅新報は「HARUMI FLAG」の第1期分譲戸数は「SEA VILLAGE」の一部211戸と、「PARK VILLAGE」の一部389戸の合計600戸で、平均の分譲坪単価は302万円であると報じた。記者が知る範囲で600戸の平均単価について報じたのは同紙だけだ。これはクリーンヒットだ。
ただ、この単価は同紙が全600戸の販売価格を全専有面積で割って算出したというより、工業市場研究所の美濃部康之取締役がコメントしているように、おそらく工業市場研究所が計算したものと思われる。(間違っていたらごめんなさい)
記者は、第1期の分譲戸数はこれくらいが適当だと思う。単価については、オリンピック選手村として一時利用される特殊要因を考慮しなければしごく妥当な価格だと思う。
今回分譲される日本設計が設計を担当し、長谷工コーポレーションが施工している運河に面した「SEA VILLAGE」はもっとも優れていると思っていたし、日建ハウジングシステムと三井住友建設が設計し、三井住友建設が施工を担当している公園に面する「PARK VILLAGE」も条件がいいので価格(単価)が高くなっても不思議ではないというのが率直な感想だ。
販売戦略として価格が高いほうから売るか低いほうから売るかは一概に何とも言えないが、価格の高いほうから売るというのは正解だと思う。〝ここに住みたい〟という人は一定数いるはずで、そうしたユーザーに最前席を用意するのは当然だ。
今後の市況はいまひとつ読めないが、第1期以降に分譲される住棟は単価が下がるのではないかと思うので、4月26日付で書いた坪単価280万円予想を現段階で修正する必要はないと考えている。
一つ、新しいことを付け加えるなら、都とデベロッパーとの間に当初交わされた譲渡契約で「著しく利益が上がった場合は、譲渡金額について協議する」条項について、「著しく」とはどの程度かということが明らかになった。
小池百合子都知事が7月26日の記者会見で、記者団の質問に次のように答えているので紹介する。
「この条項については、全ての住戸の引渡しが完了しまして、収益が確定した時点で分譲予定収入、1%を超える増収があった場合には、敷地譲渡金額の変更について協議することといたしておりまして、その増収分については、経費などを除いて折半するという確認書を今年の5月に事業者側と取り交わしたということで…」
つまり、全住戸の販売が完了・引き渡しが終了した時点で、当初提出された計画より売り上げ・利益が1%以上上回ったら、その利益を折半するということだ。
1%とはまた厳しいような気がするが、双方とも批判にさらされたくないということだろうし、透明性を高めるのもいいことだ。
では、いったいどれくらいの上昇が許容範囲かということだが、記者は当初予想の250万円の10~15%増の275~287.5万円くらいと考える。
これくらいなら都民も納得するはずで、都も収入増となりデベロッパーも潤う。結果として購入者にも利益が還元されるということだ。三方よしとはこのことを言う。いま係争中の裁判でもこの1%ルールは都側に有利に働くと見た。
仮にこれ以上の利益を出したら、それこそ〝適正〟に売却価格をはじき出した不動産鑑定士の顔に泥を塗ることになり、法の存立そのものが危うくなると思う。裁判の行方だって分からなくなる。
地所レジから専有卸受け分譲 タカラレーベン「上尾」1年で全183戸完売の勢い
「レーベン上尾GRAN MAJESTA」完成予想図
タカラレーベンの売れ行き好調マンション「レーベン上尾GRAN MAJESTA」を見学した。昨年12月、三菱地所レジデンスから専有卸を受け分譲開始。販売担当は「商品企画も販売事務所、モデルルームもほとんど地所レジさんが行ったもので、当社はほとんど手を付けていない。売れ行きがいいのは、地所レジさんのブランド力もある」と話している。
物件は、JR高崎線上尾駅から徒歩7分、上尾市上町2丁目に位置する11階建て全183戸。専有面積は63.36~94.35㎡、第5期(戸数未定)の価格は2,900万円台〜5,200万円台。坪単価は190万円。竣工予定は2019年12月下旬。設計・監理・施工は木内建設。デザイン監修はWe+Fvision石倉雅俊氏。
現地は、創業120余年の老舗「酒蔵 文楽」と蕎麦と一品料理店「東蔵」に隣接。敷地は二方道路の角地。三菱地所レジデンスが2007年に取得し、2018年年3月に建築確認済み。ホームページで資料請求を募り、販売事務所も完成した段階で、タカラレーベンが譲り受けたもの。
建物は南西向きが長辺で、南東向きが短辺のL字型。主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2450~2550ミリ、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナ、たからの水など。
同社第1営業グループ第1営業部1課係長・水嶋和也氏は次のように語った。
「用地は2007年、旧藤和不動産さんが取得。2018年着工したものを販売直前に当社が取得した物件で、上尾駅圏では3年ぶりの新規分譲です。これまでの来場者は800件弱。埼玉県では『シントシティ』に次ぐ多さ。営業は8人体制、1日3クールでも対応できないときもあり、朝の8時と夜の7時枠を追加するほどでした。地所レジさんのブランド力も売れ行き好調の一因だと考えています。完成までまだ5カ月あるので竣工完売が期待できそうです」
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上尾のマンション見学は、住友不動産が2012年に分譲し、人気になった「シティタワー上尾駅前」(全297戸)以来7年振りだ。
物件は、三菱地所レジデンスから専有卸で取得したものであるのは事前に知っていたが、まさか販売事務所やモデルルームの設営まで済んだものを取得したものだとは知らなかった。地所レジが標準装備にしている浴室の上下可動式フックス付きスライドバーまでそのままだった。
立地もなかなかいい。敷地の南側は老舗「酒蔵 文楽」とその店舗が隣接し、大きな駐車場もあるので前面が開けている。
設備仕様レベルを考慮すると、単価もリーズナブルなものだと思う。どうして地所レジが自ら売らなかったのが不思議だ。
モデルルーム
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上尾のマンション見学は、住友不動産が2012年に分譲し、人気になった「シティタワー上尾駅前」(全297戸)以来7年振りだ。
物件は、三菱地所レジデンスから専有卸で取得したものであるのは事前に知っていたが、まさか販売事務所やモデルルームの設営まで済んだものを取得したものだとは知らなかった。地所レジが標準装備にしている浴室の上下可動式フックス付きスライドバーまでそのままだった。
立地もなかなかいい。敷地の南側は老舗「酒蔵 文楽」とその店舗が隣接し、大きな駐車場もあるので前面が開けている。
設備仕様レベルを考慮すると、単価もリーズナブルなものだと思う。どうして地所レジが自ら売らなかったのが不思議だ。2007年の用地知湯得だから、リーマン・ショックの影響があったのかもしれない。
現地
大和ハウス工業 白金高輪駅1分のマンション共同建て替え284戸 着工
完成予想図
大和ハウス工業は7月29日、高輪一丁目の共同建替計画マンションの着工を8月に行うと発表した。
地下鉄東京メトロ南北線、都営三田線白金高輪駅から徒歩1分の2棟の分譲マンションと隣接の3敷地を計画敷地として建設される35階建て全284戸のタワーマンションとなる。同社が取得する保留床は分譲マンションとして2020年度にモデルルームを開設し、販売開始する予定。専有面積は29.73~117.15㎡。施工は西松建設。事業主体は高輪一丁目共同建替計画マンション建替組合。
従前のマンションは、1970年(昭和45年)に建設された「パシフィック高輪マンション」(63戸)と1979年(昭和54年)竣工の「トーア第二高輪マンション」(93戸)。
建物の老築化、耐震性への不安、居住者の高齢化、空き住戸の増加などの課題に対応するため、HOU一級建築士事務所立案による総合設計許可を適用して最大割増容積を取得し、2010年1月に近隣数棟による「共同建替検討委員会」を発足。その後検討を重ね、2016年5月に「建替え決議」を可決。2017年2月、円滑化法に基づく建替組合の設立認可(参加組合員:大和ハウス工業)。
坪単価は700万円を超えるかどうか 東京建物ほか 山手線内最大級「白金ザ・スカイ」
「SHIROKANE The SKY(白金ザ・スカイ)」完成予想図
東京建物は7月29日、同社を幹事会社とする長谷工コーポレーション、住友不動産、野村不動産、三井不動産レジデンシャル5社JVによる〝住・商・工・医〟再開発複合マンション「SHIROKANE The SKY(白金ザ・スカイ)」のプロジェクト発表会&モデルルーム内覧会を行った。1993年以降に分譲された山手線内のマンションの規模としては最大の1,247戸の規模で、モデルルームは8月24日にオープン、10月下旬に第一期の販売を開始する。これまでの資料請求は約4,500件。
物件は、東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅から徒歩3分、港区白金一丁目に位置する45階建て東棟・19階建て西棟・4階建て低層棟の3棟の全1,247戸(非分譲477戸含む)。専有面積は23.94~147.10㎡、価格は未定。設計・監理は梓設計。デザイン監修は光井純アンドアソシエイツ建築設計事務所。施工は大林・長谷工建設共同企業体。完成予定は2022年12月下旬。
従前の現地は、住宅・工場・事務所・商業などが混在し、建物の老朽化、敷地北側に流れる古川の増水被害などの課題を抱えていたエリアで、2004年に「白金のまちを考える会」が発足し、2013年の都市計画決定、2015年の「白金一丁目東部北地区市街地再開発組合」設立を経て、今回着工に到ったもの。5社は参加組合として事業に参画している。
再開発によって、質の高い居住環境を整備するとともに、土地の集約化、周辺道路や歩行者空間等の整備や幹線道路沿道の電線類の地中化などを行い、あわせて事務所や工場など既存都市機能の維持と機能更新を図る。
分譲棟は45階建てと19階建ての分棟・分節構成とし、周囲の街並みと調和させながら、ランドマークとなる印象的なデザインとし、西棟には屋上庭園も設置する。
発表会に臨んだ東京建物執行役員プロジェクト開発部長・田代雅実氏は「『白金』は再開発の聖地であり、今後も発展が望めるポテンシャルの高いエリア。5社のノウハウを注いで賑わいの創出と歴史を継承して、コミュニティあふれる新しい街づくりを進める」と語った。
ランドスケープ入り口
中央広場
田代氏(左)と同社プロジェクト開発部事業推進グループ グループリーダー・櫻井晋氏
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最大の関心事である価格(坪単価)について。小生は、発表会会場である記者と単価の賭けをした。小生は「坪700万円以下はあり得ない。800万円と聞いても驚かない」というもので、その記者は「坪650万円。700万円台に載ったら食べ放題の焼き鳥を奢る」と話したので、小生は逆に「700万円を割ったらあなたが指定する店で食べ放題の焼き鳥を奢ってやる」と言い放った。
残念ながら坪単価については、箝口令が敷かれているのか、田代氏をはじめみんな口を閉ざした。今日の段階ではどちらが勝つか勝敗は不明だが、小生が勝つような気がする(負けたってこの記者の行きつけの店の焼き鳥はせいぜい1本100円ちょっとだろう。30本食べてもたかが知れている。小生はそんなに安い焼き鳥は好きではない)
断言するが、賭けに勝ちたいから書くのではない。言うまでもないことだが、品川-品川ゲートウェイ-高輪―白金-三田エリアは〝国際都市〟の中心部として生まれ変わる。小生は、仮に東京駅でマンションが分譲されたら坪3,000万円(ある大手デベロッパーの役員は5,000万円と話したが)だと考えているし、主要な山手線エリアは1,000円を超えると見ている。現段階で「白金」はさすがに1,000万円の値はつけられないが、今回の建物が完成する頃の相場は、よほどの世界を震撼させる出来事が起こらない限り800~1,000万円になると読んでいる。
仮に坪650万円で分譲されたら申し込みが殺到する。〝どうしてそんな安値で分譲するのか〟と、今回の売主に名を連ねていない高輪・三田で約580戸を予定している三菱地所レジデンスを筆頭に内外から批判が殺到するのではないか。
東京建物は坪単価600万円の「目黒」で、都心・準都心部のマンション相場を一挙に引き上げた実績もある。ここはデベロッパー代表として高値に挑戦すると見たし、坪700万円を割るようなら情けない。
肝心のモデルルームの出来はどうか。142㎡のタイプは天井高が3200~3500ミリあり最高に素晴らしい。坪2,000万円でも安いかもしれない。他の80㎡と92㎡のモデルルームもよくできている。天井高は2,550ミリ以上。バックカウンター・収納も標準装備。
光井氏のデザインはいつものように素晴らしいが、さすが梓設計だ。プランもいい。ワイドスパンの横入り玄関タイプが多く、モデルルームタイプは玄関・ホール・廊下スペース全体としては小さくし、その一方で玄関・ホールは〝魅せる〟工夫を凝らしている。サッシも天井までのハイサッシとしている。
東京都のマンション環境性能表示でも満点に★一つ欠ける14点を獲得している。最近の基準で満点の★15個を獲得しているのは三井不動産レジデンシャル「パークシティ武蔵小山ザ・タワー」1物件しかなく、14個も10物件あるかどうかだ。
27階ゲストルーム
27階スカイラウンジ
平田元会長の独断専行が粉飾決算招く 住宅事業伸ばせ すてきナイス再生に期待
粉飾決算容疑ですてきナイスグループの元代表取締役会長兼最高経営責任者・平田恒一郎(71)ら3名が7月25日に逮捕されたのに衝撃を受けたが、その前日(24日)にすてきナイスグループから発表された本件嫌疑に関する「第三者調査報告書」には、平田容疑者らが有価証券報告書の虚偽記載を指示したことを示す内容が赤裸々に報告されている。
報告書は174ページにもわたる浩瀚なものだが、冒頭の部分で平田氏の独断専行が嫌疑を招いた要因であり、限りなく〝黒〟であることを匂わせている。引用するのもためらわれるが、二度とこのようなことが行われないよう他山の石にするためにも有益であると判断したので紹介する。
報告書の第2章「創業家一族の影響力」では次のように述べられている。
「平田恒一郎氏は、ナイスグループ各社の部長以上の人事権を掌握していた。また、新会社の設立や主要なマンションの販売等多くの事業を自ら指揮ないし監督し、職務の内外において厳しい姿勢で経営にあたっていた。例えば、新築マンションの完成後、未販売物件(完成在庫)が残った場合、完売になるまで会議等において毎回、住宅部門の役員に起立の上謝罪させたり、『清く、正しく、まじめなナイス』という行動規範を示し、自ら定めた『ワイシャツは白』、『役員は喫煙禁止』、『ゴルフ禁止』等の決まりに違反した役員の降格を命じるなどしていた」
「平成27年3月期においては、何事も平田恒一郎氏の了解を得ずに進めることができない状況にあった。また、すてきナイスを含むナイスグループ各社においては、平田周次氏及び平田恒一郎氏という創業家の意向に反しないようにするという企業風土が醸成されることとなり、特に平田恒一郎氏に対して意見を述べることすら躊躇するような状況となっていた」(28~29ページ)
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「ワイシャツは白」の是非はさておき、喫煙も飲酒もゴルフも個人の趣向の問題で、役員だからと言って禁止するのはどうかと思うが、「清く、正しく、まじめなナイス」は小生も何度も聞かされている。これほど立派な行動規範、生き方はない。いつもそうありたいと思っている。
それだけに、平田氏の言動は信じられない。平田氏は赤字を出すことを極度に恐れていたとも報告書にあるが、有価証券報告書の虚偽記載を指示することの重大さをどう認識していたのか。免震マンションやパワーホーム、CLTの活用などまじめな事業を展開している会社のやることではない。創業社長の息子・穴吹英隆氏が社長を解任され、会社も破綻した穴吹工務店の事例を思い出した。穴吹氏も若いころは腰の低い方だった。
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粉飾決算の舞台となった平田氏が実質的なオーナーであるザナックを「益出し」として利用したのは否定できないようだ。
報告書は、ナイスとナイスエストが所有していた土地や店舗、マンション(75室)をザナックに売却し、平成27年3月期に売上高を約30億円、売却利益を約4億円計上した案件では、「すてきナイスでは、連結の範囲に関する会計基準及び実務上の判断基準を遵守して判断していたとは言えず」(40ページ)、「ザナックの本店事務所の面積はわずか7.4㎡であって、そこに設置されている主な備品は、机、キャビネット、会議用テーブルが各1つと椅子6脚のみである」(77ページ)で、入退室は、ナイスからの出向により管理され、預金通帳、実印、印鑑などもナイスが保管し、経理業務もナイスが行なっていたと報告。
結論として、「実現主義の原則」要件を満たしておらず、会計上認められないと断定している。
また、「ザナックという会社は、すべての意思決定をナイスが行なっており、主体的に経営を行うような会社ではなく、実質的にナイスグループが自由にコントロールすることができる、いわゆるペーパーカンパニーである。このため、上記の取引はいずれも、ザナックがその合理的な経営計画の一環として主体的に行ったものではなく、ナイスグループが、決算対策のためや、対外的に売却済みであることや他社のマンション計画であることを装うため等、専らナイスグループの目的のために、都合よく財貨の移転が行われたように、法形式を整えたにすぎない」(103ページ)
「ナイスグループにおいては、直接又は間接に大半の株式を有している子会社でありながら非連結子会社としていた会社に加えて、実質的にナイスが支配して意のままに扱い得るグループ外支配会社が存在しており、とりわけグループ外支配会社には、ナイスグループにおいて取り扱いにくい事業や取引を行わせてきており、そのような非連結子会社及びグループ外支配会社の不適切な利用の一環として、今回のザナック関連案件が実施されたものとみことができる」(175ページ)と指弾している。
小生は、売れ残りマンションを建設会社や関連会社、取引先に買わせたデベロッパーの話をたくさん聞いているが、このような架空取引は上場会社のやることではないのは確かだ。
◇ ◆ ◇
第三者委員会は、同社の従業員と役員合わせ441名にアンケートを実施し、333名から回答を得ている。
具体的には、ザナック案件については言及する回答者が一定数あったほかは、①架空売り上げ計上に関与、あるいは役職員が関与したり、指示したりするのを見聞したことがあるのは全体の6%②他の会社との不適切な取引に関与したり、見聞したことがない人は97%③回答者の92%が自ら又は周囲の従業員が、利益追求と比較して、法令や倫理を重視する姿勢を有していると答えた④ナイスグループは法令や倫理を重視する企業文化・企業風土を有している会社だと思っている人は92%⑤上司の指示に法令や倫理の観点から問題があると思われる場合に、それを上司に言える、または上司以外の同僚に相談できる企業文化・企業風土があるか否かの質問に対しては、あまりないと答えた人は33%、ほとんどないと答えた人は5%-などが報告されている。
この結果に記者は安堵した。当然のことではあるが、92%の従業員も役員も「ナイスグループは法令や倫理を重視する企業文化・企業風土を有している会社」だと思っていることは、この会社は健全であることを示しているし、今回の事案を経験したからだろうが、法令順守に関する社内研修・教育体制の充実を求める声が37%あるのにも納得した。
すてきナイスグループは、この報告書も参考にしながら再生の道を歩むことになる。杉田理之社長は存じ上げないが、取締役の木暮博雄氏(前社長)はRBA野球大会に出場され、監督としても采配を揮っていた方だ。
今の野球部もベテランと若手が機能するいいチームだ。ナイスのいいところである〝アットホーム〟な風土を引き継いでいる。選手の皆さんには、野球部が主導して会社を元気にする気構えでこの難局を乗り切ってほしい。
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小生の取材フィールドである分譲住宅事業についてひとこと。同社の何よりの強みは地域を熟知している人材だと思う。同社はワンストップで様々なお客さんのニーズに対応するため、分譲と仲介・賃貸の垣根を取り払い、人的交流を進めている。これはやがて花を開くはずだ。
その人材からして同社の分譲事業はもっと伸ばせる余地があると思う。同社グループの2019年3月期の住宅事業の売上高は637億円で、内訳は戸建てが298億円、マンションが92億円、管理が246億円だ。一方で、営業利益は3億円で、売上高営業利益率は0.5%にしか過ぎない。ほとんど儲かっていないことになる。同規模の他社は4~5%は確保しているのと比べ極端に低い。
マンションも戸建ても同社が基盤とする横浜・川崎を中心とする神奈川県の競争は厳しいが、利益を生む事業に転換するのはそう難しいことではないと思う。
何よりも、「お客様の素適な住まいづくりを心を込めて応援する企業を目指す」経営理念はどこにも負けないからだ。この理念の具現化こそ免震マンションだ。免震マンションの供給実績7,471戸に上り、首都圏ではナンバーワンだ。
ただ、免震だけでは勝てない。最近のニーズを考えると立地条件に恵まれた用地の仕入れは必須要件で、商品企画の充実を図らないと生き残れない。基本性能・設備仕様レベルを向上させ、競争力を高めるべきだろう。商品企画では、コスモスイニシア、大和地所レジデンス、モリモトなどは参考になるはずだ。
地域の有力企業などと連携して街づくりなどに注力すれば年間500戸、250億円くらいには伸ばせるのではないか。
戸建てはよく分からないのだが、年間700~800戸というのは限界ではないか。背伸びしないでいただきたい。圧倒的な価格競争力がある飯田グループと競うのは容易なことではないし、大手デベロッパーなどとの競合も避けられない。長期優良住宅「パワーホーム」は大きな武器なのだろうが、何かが欠けているようにも思える。現場を取材して、その何かを探りたい。
CLTはこれから伸びる。先駆企業として事業拡大が望める。「木造ゼネコン®」のトップランナーになれるはずだ。
すてきナイス 元会長・平田恒一郎ら3人逮捕 粉飾決算容疑 横浜地検(2019/7/25)
ナイス逆転勝ち 山本スクイズ外す好判断 村尾が猛打賞 東急リバブル 先制及ばず(2019/7/10)
富士山に登らなくて済む!? 忙しいママ・パパ向け ナイス「DIWKS PARFAIT」(2019/1/13)
ナイス 同社国内最大 延べ床5,000㎡の軸組「久喜ことぶき苑」特養見学会に200名(2018/9/8)
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ナイス 常識破りの「住まいるCafe」来館者は前年度比8倍増9.6万人(2014/4/3)
ナイス 桁外れの地域貢献「ヨコハマ オールパークス」が完成(2012/3/16)
9階建て玉川学園学生寮や10階建て大林組研修施設など 国交省 木造先導プロジェクト
国土交通省は7月26日、「木造先導プロジェクト2019」(第1回)について一般建築物6件、木造実験棟1件のプロジェクトを採択したと発表した。プロジェクトは次の通り。
【一般建築物】
大崎市鳴子総合支所庁舎等複合施設建設事業(地上2階建て延床面積1,745㎡、補助限度額82,422千円、講評:2層通しのCLTパネルを使用し、内部架構の簡易化や現しでの利用を可能とした木造建築)
中央大学多摩キャンパス学部共通棟新築工事(6階建て延べ床14,500㎡、補助限度額15,803千円、講評:CLT耐震壁の一部を現し仕上げにするなど構造材として積極的に木質材料を使いつつ、木を見せるための工夫が図られている
玉川学園学生寮建設工事(9階建て延べ床6,147㎡、補助限度額300,000千円、講評:9階建て学生寮を木造軸組構法と免震構造により建設する計画であり、これまでの木造建築の階数を大きく上回る規模のプロジェクト)
(仮称)OYプロジェクト計画(10階建て延べ床3,497㎡、補助限度額300,000千円、講評:10階建て大林組研修施設を木造軸組構法と免震構造により建設する計画。これまでの木造建築の階数を大きく上回る規模のプロジェクト)
京丹波町新庁舎整備事業(2階建て延べ床4,906㎡、補助限度額153,668千円、講評:地域産材を活用して、まちづくりとまちの防災の拠点となる新庁舎を建設するプロジェクト)
旧岡山市立福谷小学校改修計画(3階建て延べ床2,450㎡、補助限度額25,337千円、講評:校舎を事務所及び工場(育苗施設)に用途変更する、コンバージョン。一部の既存RC壁にCLT耐力壁で耐震補強を行う)
【木造実験棟】
CLT遮音実験棟新築工事(2階建て80㎡、補助限度額30,000千円、講評:国内に少ないCLT建築物の遮音性能を検証するための実験棟)
全役員がSDGsバッジ 住林は障がい者による手作り木製 熊谷組は市販のメタル製
「みどりとSDGsセミナー」(熊谷組本社で)
住友林業と熊谷組は7月24日、協業推進セミナー「みどりとSDGsセミナー」を開催。三井住友信託銀行 フェロー役員兼チーフ・サステナビリティ・オフィサー・金井司氏がESGやSDGsの最新の動向、同行の取り組みについて講演したほか、金井氏と熊谷組 設計本部 副本部長・羽迫英男氏、住友林業緑化 生物多様性推進室長・伊藤俊哉氏のトークセッションが行われた。
セミナーには熊谷組の関係者を中心に約200名が参加。熊谷組 代表取締役社長・櫻野泰則氏、住友林業代表取締役副社長・佐藤建氏ら両社の役員・幹部らも多数参加した。
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最大の収穫は、住林は役員・執行役員のほぼ全員25名が愛媛県新居浜市の子会社で働く障がい者が手づくりで作った木によるSDGsバッチを付けており、今後、部長クラスにも配布すると聞いたことだった。
佐藤副社長に「わたしにも一つください」とおねだりしたが、「ダメ。これは売りものでもただで配るものじゃない。そんなに簡単に作れない」と断られた。(顔には〝お前のようなSDGsを理解しない者にあげられるわけがない〟と書いてあった)
熊谷組も同じで、この日参加した役員はほとんどSDGsバッジを付けていたそうだ。こちらはアマゾンでも買えるメタル製で値段は千数百円。
佐藤氏
佐藤氏が付けているSDGsバッジ
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この日(24日)の午前中は、「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」主催によるSDGsの先進的取り組みを紹介するイベント(別掲の記事参照)があったので、1日に2度もSDGsの取材ができると、記者はおっとり刀で熊谷組本社の会場に駆け付けた。午前のイベントの参加者は50~60名だったのに対し、こちらは約4倍の200名。両社による画期的な木造建築物の新工法でも発表されるのではないかと胸を膨らませた。
メディアに公開されたのは金井氏の講演の後の後半の部分のみで、その冒頭に住友林業緑化と熊谷組が作成したSDGs・環境不動産の8ページのパンフレットの紹介が行なわれた。
パンフレットの表紙は、二人の子どもが手を繋いで逆光の森を歩くあのユージン・スミスの写真そっくりだったので〝大丈夫か〟と心配になり、事例紹介として熊谷組が施工した台北市の「陶朱隠園(タオヂュインユェン)」や「愛知学院大学名城公園キャンパス」はともかく、35年も前の施工は熊谷組でなかった「三井住友海上火災の駿河台ビル」が掲載されているのにあきれ果ててしまった(住林は素晴らしい木造の非住宅事例がたくさんあるはず)。
トークセッションでも真新しい取り組みは紹介されなかった。この時点で小生のフラストレーションは最高潮に達した。
極めつけは、熊谷組の櫻野社長の締めの挨拶だった。櫻野社長は「恥ずかしながら、熊谷組は(SDGs・環境不動産)の取り組みに後れを取っている。意識を鼓舞してSDGsに貢献したい」と語った。
これは身内に語った率直な声だったのかもしれないが、少なくないメディア(20人くらいいた模様)の前で話してほしくなかった。聞きたくもなかった。
セミナー後、櫻野社長に記者は「後れを取っているというのは、木造建築の耐震・耐火・遮音・コスト全てという意味か」とストレートに質問した。櫻野社長は「後れを取っているというのは意識の問題。木造建築では10階建ての木造建築を建てるライバルの大林組さんなどに負けない」と答えた。
パンフレット表紙
櫻野氏
〝世界に発信〟 企業×自治体 先進的SDGs取り組み事例紹介「City Lab Ventures」(2019/7/25)
すてきナイス 元会長・平田恒一郎ら3人逮捕 粉飾決算容疑 横浜地検
すてきナイスグループの元代表取締役会長兼最高経営責任者・平田恒一郎(71)、元代表取締役副会長・日暮清(67)、経理担当の元取締役・大野弘(63)の3容疑者が7月25日、金融商品取引法違反により横浜地方検察庁に逮捕されたことを各メディアが報じた。逮捕容疑は、2015年3月期決算でペーパーカンパニーを通じて架空取引を行い、有価証券報告書に4億9,600万円の経常利益があったなどと虚偽の報告を記載したため。
同社は当日、「当社元代表取締役等が逮捕されたことを極めて重く受け止めております」「第三者委員会の調査報告の内容につきましても十分に検討のうえ、可能な限り速やかに再発防止策の策定等の必要な対応を進めてまいります」とコメントした。
◇ ◆ ◇
大変ショックを受けた。この日(25日)、同社が昨夜(24日)発表した174ページにもわたる「第三者委員会調査報告書」を途中まで読み、取材のため出かける昼過ぎに平田元会長らが逮捕されたことを知った。3人とも取材や決算発表会で何度もお会いしており、平田元会長とは、同社に入社したころからのお付き合いで、年齢も近いことなどから親近感があり、免震マンションや木造建築物、CLT活用などについての応援記事を書いてきただけに残念でならない。
唯一の救いは、第三者報告書では一連の粉飾決算は平田元会長らごく限られた役員しか関与しておらず、多くの社員は同社はきちんと法令順守している会社だと思っていたことだ…だからこそ裏切られたという気持ちも大きいだろうが…。
第三者報告書はほぼ目を通したので、気が付いたことを改めて紹介したい。
〝世界に発信〟 企業×自治体 先進的SDGs取り組み事例紹介「City Lab Ventures」
「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」オープンイベント
サスティナビリティ特化型のベンチャーコミュニティ「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」は7月24日、「地域との共創」をテーマとした第1回目のオープンイベントを開催。TBM×神奈川県、ユーグレナ×石垣島、自然電力×小布施町のベンチャーと自治体の共創・連携事例が報告された。
神奈川県のいのち・SDGs担当理事・山口健太郎氏は「『SDGs日本モデル』宣言を世界に向けて発信した。すでに148の企業・団体などの賛同を得ている。県がハブとなって走りながら考え、行動に移していく」と話した。神奈川県は、国からSDGs達成に向けた先導的な取り組みを行っている10の「自治体SDGsモデル事業」に選定されている。
山口氏
県の報告を受けたTBM経営企画本部 ニュービジネスデザイナー・岡澤友広氏は、「LIMEXを世界に向けて発信していく」と語った。LIMEXは同社が開発した主成分が石灰石からなる新素材で、プラスチック代替製品として期待されている。先に同社や県などの22団体・企業から構成される「かながわアップサイクルコンソーシアム」が結成され、2021年の自走を目指している。
岡澤氏
ユーグレナは、ミドリムシの食品化と大規模培養プラント建設に成功し、2005年に設立されたベンチャー企業。へルスケアやエネルギー・環境事業などの多角化を進めており、2014年に東証一部に上場。同社特命担当室テクニカルディレクター・村花宏史氏は、「石垣島はミドリムシの生産拠点で、当社にとって〝聖地〟。ネーミングライツによって商店街を『ユーグレナモール』としたのは大きなメリット」と話した。
村花氏
小布施町役場企画政策課(地域おこし協力隊)・塩澤耕平氏は、「小布施町は40年前から街づくりに取り組んでおり、今後も町内外の企業、団体、大学などとの協働を積極的に」進めていくと語り、塩澤氏の奥さんでもあるながの電力・塩澤美幸氏は「小布施町の使用電力の20%供給を目指すとともに、通信、インフラ、農業、非観光、小売り事業なども展開していく」と夢を語った。
塩澤ご夫妻
小水力発電によって長野県小布施町の約350世帯に電力供給している自然電力エナジーデザイン部マネージャー・佐藤李子氏は「『1% for community』基金事業では、熊本のクラフトビール、こども食堂、塾アブなどいくつか投資先が決まっている」と報告した。
佐藤氏
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わが国のどんどんシュリンクしていく経済社会、齢70のわが身の行く末を考えると世紀末の像しか描けないのだが、この日の若い方たちの熱のこもった報告を聞いて〝日本も捨てたもんじゃない〟と思えてきた。とてもハッピーな気分になった。明るい未来がほのかに見えてくるではないか。
報告の中でもっとも注目したのは自然電力の「1% for community」だ。頭が下がる。
同じような呼称としては「経団連1%(ワンパーセント)クラブ」があるが、これは経常利益や可処分所得の1%を社会貢献活動に拠出しようという活動だ。
経団連の報告によると、2017年度(357社)の社会貢献活動支出合計額は1,997億円で、1社平均は5億9,300万円だ。
これが多いか少ないか、記者は判断材料がないのでよく分からないが、企業の2017年度末の内部留保額は446兆円にものぼっていることを考えると、やはり少ないのではないか。GDP550兆円の1%をSDGsに充当すれば、消費増税と同額になる。SDGsにどんどん投資する企業・団体・個人が増えることに期待したい。
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小生は、BSやCSで毎日のように西武ライオンズの中継を観るのだが、ユーグレナはCMのスポンサーにいつも登場するので名前はよく知っている。
この日(24日)、イベント終了後、同社から乳酸飲料「飲むユーグレナ」が振舞われた。とても美味しかったので、もう1個もらってかみさんに飲ませた。「とても美味しい」とのことで、「30本入り7,020円は妥当な値段」と評価した。
皆さんにもお勧めだ。