時代に逆行・退行する建売住宅 プレ協「エコアクション2020」調査で浮き彫り
プレハブ建築協会は10月29日、環境行動計画「エコアクション2020」の2018年度実績を発表し、大手ハウスメーカー8社の注文住宅のZEH供給比率は51.4%となり、国の掲げる目標を2年先行して達成したと報告した。
調査は、同協会が設置している20社からなる住宅部会のうち供給シェアが高い大手メーカーなど8社で構成されている環境分科会の供給戸数を対象にしたもの。
この結果、8社が2018年度に供給した戸建て注文住宅49,663戸(前年度比6.9%減)のうちZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)供給比率は51.4%(前年度比14.3ポイント増)となり、「2020年度までに過半数」という国の掲げる目標を2年先行して達成した。同協会は「2020年度までにZEH供給比率70%」を掲げている。
このほか、太陽光発電システムを設置する戸建て住宅の供給率は、買い取り価格の低下などの影響を受けつつ、ZEH住宅の普及に伴い59.7%(前年度比3.8ポイント増)と4年ぶりに上昇した。
「エコアクション2020」は、「低炭素社会の構築」「循環型社会の構築」「自然共生社会の構築」「化学物質の削減」「良好なまちなみ形成」の5つを柱に掲げている。
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ZEH供給率が高まっているのは結構なことだ。だが、しかし、他方では時代の流れに逆行・退行している憂慮すべき事態が進行していることも明らかになった。
同協会は、住宅地の緑化を推進するため、敷地面積の40%以上を緑化した建売住宅の供給比率を2020年度までに50%に引き上げる目標を掲げている。2012年度では、会員各社が分譲した建売住宅4,654戸のうち1,935戸、41.6%がこの目標をクリアしていた。
ところが、2018年実績では前年度比8.5ポイント減の22.1%しか達成できなかったことが報告された。
全体の供給戸数は報告されなかったが、建売住宅市場は一部の〝ガリバー企業〟が供給シェアを高める一方で、大手デベロッパーやハウスメーカーはシェアを伸ばせていないと思われるので、2012年度と同じかそれより減少しているものと予想される。(2012年度の全国の建売住宅の着工戸数は125,694戸で、2018年度は138,394戸)
これは何を意味するか。やや乱暴だが、仮に、緑化率が高い住宅を質の高い建売住宅とするならば、〝ガリバー企業〟が供給する建売住宅の緑化率は限りなくゼロに近く(ZEHも同様)、他の大手・中小のデベロッパー、ハウスメーカーの緑化率も高くないことが予想されるので、明らかに良質な建売住宅は減少傾向あると断言できる。
記者は、嫌な気分にさせられるのでもう見なくなったが、一般的な建売住宅を見ていただきたい。もはや〝ミニ開発〟〝猫の額の庭〟は死語と化した-みんなミニになり、庭などなくなったから、敢えてそう呼ぶ意味もなくなった-。敷地はコンクリで固められ、ぺんぺん草も生えない〝長屋〟のような建売りがシロアリのように増殖し、せっせせっせと地球温暖化に〝貢献〟している。
先日、ある建売住宅を見学した。緑が全くないので「これはいかがなものか」と聞いたら、「(コンクリを)剥がせば木は植えられる」との答えが返ってきた。分譲価格は間違いなく安かった。これを甘受(あるいは享受)する消費者がいることも言わなければならない。
ナイス 免震「新横浜」 好調スタート 第一期35戸完売へ
「ノブレス新横浜エスアリーナ」完成予想図
ナイスの好調免震マンション「ノブレス新横浜エスアリーナ」を見学した。全83戸のうち第一期として35戸を10月26日に分譲した結果、32戸に申し込みが入り、今週末までに全戸に申し込みが入るメドがついたようだ。
物件は、JR横浜線・東海道新幹線新横浜駅から徒歩8分、横浜市港北区新横浜1丁目の商業地域に位置する15階建て全83戸。第一期(35戸)の専有面積は42.29~72.00㎡、価格は3,360万~6,400万円。坪単価は270万円。入居予定は2021年3月下旬。施工は合田工務店。10月26日抽選分譲の結果、32戸に申し込みが入った。
現地は、2方道路の角地。商業地域立地だが、嫌悪施設などはほとんどないビルやマンション化が進んでいるエリアの一角。
「新横浜北部地区街づくり協議指針」と「横浜市市街地環境設計制度」に基づき①歩道状公開空地の連続性②にぎわいの創出③地域防災への協力を開発コンセプトにしているのが特徴。
建物は免震構造を採用。住戸は南東向きが4戸、北西向きが2戸の1フロア6戸構成。北西向きの1スパン42㎡以外はファミリータイプ。同社物件の特徴の一つでもある70㎡台の4LDKタイプ2スパン用意している。
販売担当の同社マンション事業部・山本貴之氏は「極めて好調。免震と立地が評価されている」と話している。
モデルルーム
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坪単価はほぼ予想通り。免震の価値を考慮すれば割安か。マンション適地の上昇、建築費の高騰で最近は免震マンションがどんどん減っている。にもかかわらず、同社は愚直に免震を貫いている。歩道状公開空地の確保や地域の防災施設も整備しているのもいい。
欲を言えばもう少し設備仕様レベルを上げてほしかったが、単価からして第一次取得層の限界だ。
「首里城の焼失 慙愧に堪えない」涌井史郎氏 国交省「芝生懇談会」
「芝生懇談会」(第3回)
〝うちなんちゅう〟(沖縄人)の象徴で、世界遺産にも登録されている旧国宝の首里城が10月31日未明焼失した。この日行われた国土交通省の有識者からなる「芝生懇談会」(第3回)の冒頭、座長を務める涌井史郎氏(東京都市大学環境学部特別教授)は沈痛な面持ちで「首里城の焼失は慙愧に堪えない」と語った。
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涌井氏は「首里城は…」と自らの関係について話したのだが、会場となっている国土交通省の会議室はマイクの調子がよくないのか、記者の耳が悪いのか(おそらく両方)聞き取れなかった。
真意を会合の後に聞こうと考えたのだが、記者も6時ころに起き、いきなり首里城が真っ赤に燃えている映像をテレビで見せられ唖然とするほかなく、悪いことにこの日に限って朝食を摂らずに出かけたため、血糖値が下がり(記者は糖尿病と友だち)気分がすぐれず、会合が終わるまで待ちきれず退出したので、残念ながら涌井氏の真意は聞き出せなかった。
おそらく、涌井氏は首里城の復元にも関わっており、〝火災、防火についてきちんと対応策を提案すべきだった〟という自責の念がそのような言葉になったのだと思う。終始うつむき加減で声も小さく、いつもの涌井節は影を潜めていた。
会合そのものも何か新機軸が打ち出されるのではないかと期待したが、真新しいものは示されなかった。ゲストの話題提供として都市再生機構とランドスケープ・プラスの取り組み、事例紹介が行なわれたが、素人の記者だってすでに知っている事例も多く、さらにまた前述したように声が聞き取りづらく、収穫はなかった。ランドスケープ・プラスの平賀達也氏には自らがランドスケープデザインを担当した豊島区新庁舎の維持・管理などについてもっと掘り下げて話してほしかった。
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国交省に取材に行くのは久々だった。危惧していたことが現実のものとなっていた。中央合同庁舎2号館と3号館の間にあった喫煙室がなくなり、立派なスギ材によるベンチのみが置かれていた。かつてはいつ行っても少なくとも10人くらいは利用していたが、ベンチ室に入っている人は皆無だった。3号館のかつては喫煙室だったところも入り口にべたべたと見苦しい醜悪なガムテープで封鎖されていた。
もう馬鹿馬鹿しいから書かないが、これはファッショだ。
腹立ちまぎれにもう一つ。わがかみさんは「あれって(首里城)、木造の3階建てだって? だから燃えちゃうのよね」…これだから建築物の木造化は進まない。反論する元気もない。
これが公共建築物等木材利用促進法の〝見本〟
かつては喫煙所だったスペース(座って吸えるようまた灰皿を置いてくれることにはならないはずだ)
屋上に里山とせせらぎ 格子デザインも美しい 豊島区新庁舎が完成(2015/3/26)
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タバコ消費税は税金の三重、四重取りではないか 愛用タバコの総額据え置きには安堵(2019/10/4)
強まるバルコニーでの禁煙 「共同の利益」に反しないのか(2014/9/27)
郊外住宅団地の再生モデルへ 大和ハウス「上郷ネオポリス」コミュニティ施設完成
「野七里(のしちり)テラス」オープニングセレモニー(右から3人目が芳井氏)
大和ハウス工業は10月29日、郊外型既存戸建住宅団地の再耕(再生)事業「リブネスタウンプロジェクト」の一つとして取り組んでいる、横浜市栄区の「上郷ネオポリス」で建設を進めてきたコンビニ併設型コミュニティ施設「野七里(のしちり)テラス」が完成したのに伴うオープニングセレモニーを実施。同社・芳井敬一社長をはじめ地元関係者など多数が開業を祝った。
同社は、1962年から全国61カ所・延べ7万区画の大規模戸建住宅団地「ネオポリス」を開発しており、開発後40年以上が経過することから、少子高齢化や将来的な空き家・空き地の増加、建物の老朽化など様々な課題を抱えている。
同社は、産官学民が連携して課題解決に取り組むとともに、新たな「まちの魅力」を創出することが必要と捉え、「上郷ネオポリス」と「緑が丘ネオポリス」(兵庫県三木市)で「リブネスタウンプロジェクト」に取り組んでいる。プロジェクトで培ったノウハウを他の団地再生に生かしていく。
「上郷ネオポリス」は、1970年に開発を開始したJR根岸線港南台駅からバス18分、横浜市栄区野七里に位置する約46ha、総戸数868戸。2017年9月現在の高齢化率は約50%、2019年9月現在の空き家率は約2%。
2016年、同社と自治会が「上郷ネオポリスにおける持続可能なまちづくりの実現に資する諸活動についての協定」を締結。同時に明治大学、東京大学、高齢者住宅協会も加わった「上郷ネオポリスまちづくり協議会」を発足させた。
同協議会が実施した住民意向調査の結果、「買い物・交通の不便」「高齢者の見守りや支えあい」などのニーズが高いことが分かったため、横浜市などと協議を重ね、第一種低層住居専用地域にコンビニを設置することを可能にし、今回、コンビニ併設型コミュニティ施設を完成させたもの。
「野七里(のしちり)テラス」は、敷地面積約589㎡、鉄骨造平屋建て延べ床面積約149㎡(コミュニティスペース約58㎡、コンビニ約91㎡)。同社が建物を大和リビングに賃貸し、運営は一般紙や団法人野七里テラスに委託する。コンビニの店長を含めた従業員は地域住民を中心に雇用する。ボランティアによる様々な活動も行っていく。課題であるモビリティの導入も検討していく。
「野七里(のしちり)テラス」は国土交通省の「平成30年度スマートウェルネス住宅等推進モデル事業(住宅団地再生部門)」にも採択されている。
竣工式の後、会見に臨んだ同社・芳井敬一社長は「開発当初のマイホームを実現するという『夢』をかなえたという意味では一定の役割を果たしたが、これほど急速に少子高齢化が進むということは読み切れなかった。当初の『夢』が第一章なら、今回のプロジェクトは『夢』の第二章。産官学民が連携してサポートしていく。(竣工式の)これほど心がこもった祝詞は聞いたことがない」と語った。
また、上郷ネオポリス自治会会長・家成智榮子氏は「素晴らしい施設が完成して喜びと感動で心が震えている」と声を詰まらせた。
横浜市栄区区長・星崎雅代氏は「この取り組みが全国の郊外住宅地の再生のモデルになってくれることに期待している」とエールを送った。
「野七里(のしちり)テラス」
芳井氏(左)と家成氏
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郊外住宅地の再生問題はこの十数年間、熾火のように記者の胸の内にくすぶり続けている。昭和50年代から60年代にかけて建売住宅をたくさん取材し、取得を煽る記事を書いてきた責任を感じているからだ。
これまで、何回か取材もしてきた。その記事も読んで頂きたい。横浜・金沢文庫の「西柴団地 さくら茶屋」、埼玉県鳩山ニュータウンの再生活動を取材したときは心底から感動した。だが、しかし、成功事例はつくれるだろうが、全国に数千カ所もある郊外大規模住宅地の再生は容易なことではないと思う。絶望的ではないかと思わざるを得ない。
だからこそ、今回の上郷ネオポリスの取り組みがモデルケースとなることを祈るほかない。
現在の住宅地
現在の商店街
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一つ、弁解させていただきたい。自治会の事務局長がメディアに向かって「皆さんは限界集落などと書き立てるが、うちの自治会の介護保険利用率は市の最低レベル。このことも考慮していただきたい」との主旨のことを話された。
確かにわれわれメディアは、記事を読む当事者がどのように傷つこうがお構いなし、センセーショナルに書くことのみに重きを置く悲しき習性を持つ。
かく言う記者も7年前、添付した「限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地」の記事を書いた。予想していたことではあったが、あまりにもの惨状に驚き、記事化したときの影響の大きさにおののき、多少のリテラシーを働かせて団地名は匿名にした。それが逆にいけなかったのか、記事にアクセスが殺到した。大マスコミも含め具体的な団地名を教えてほしいとたくさん連絡を受けたが、一切答えなかった。今もってその団地がどこかを口外したことはない。
一つ救われたのは、その団地(地域)の再生に自治体が動き出したことだ。国土交通省にもその取り組みが紹介されている。
事務局長さん、記者などは警鐘を鳴らす程度のことしかできませんが、受けを狙った為にする記事は極力書かないように努力していることを分かってください。
もう一つ。芳井社長は「これほど心がこもった祝詞は聞いたことがない」と話した。記者はこれに反応した。その祝詞を紹介しようと同社広報に頼んで手に入れた。コピー&ペ―ストすればいいと思ったら、何と祝詞そのものを写真に撮ったものだった。
これをワードに書き換えていたら…いま20:30過ぎ…あと少なくとも1時間はかかる。まだ酒も食事もしていない。とりあえず記事だけアップして、祝詞をどうするか考える。神主様、ありがとうございます。芳井社長はこれまでどれくらいの祝詞を聞かれているのか、これも知りたい。
オープン初日のローソン店内(ローソンの部長職以上約500人はSDGsバッジを付けていると聞いた)
店内のトイレ(特別仕様だとか)
鳩山NT活性化を「私自身がアート」藝大卒・菅沼朋香氏「ニュー喫茶 幻」開業(2019/3/23)
住民主導のもう一つの「奇跡の街」 横浜・金沢文庫 西柴団地「さくら茶屋」見学(2018/2/14)
遊び心に溢れた一等地のホテル総合地所「THE LIVELY 麻布十番」11月1日開業
「ルネ麻布十番ビル」
総合地所は10月30日、ホテルと商業のコンプレックスビル「ルネ麻布十番ビル」が完成したのに伴うホテル「THE LIVELY 麻布十番」の関係者見学会を行った。基本設計・デザイン監修をA.A.E.一級建築士事務所が担当し、グローバルエージェンツが運営する客室数62室の遊び心あふれる素晴らしいホテルで、11月1日に開業する。
吹き抜け空間
客室
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「ルネ麻布十番ビル」は9階建で延べ床面積約3,365㎡。東京メトロ南北線麻布十番駅から徒歩3分、麻布十番商店街沿いの鳥居坂と暗闇坂の交差点に立地。マンションなら坪1,000万円どころか1,200万円でも売れそうな一等地。
どのようなホテルになるか楽しみにしていたが、見てすぐ素晴らしいデザインに惚れこんだ。A.A.E.一級建築士事務所の下吹越武人代表は、数々のグッドデザイン賞を受賞されており、記者もいくつか見学している。
なにがいいか。まず、2階のFRONT/ROBBY。建物がそんなに大きくないのは残念だが、8階までの吹き抜け空間のデザインが最高だ。これを見て、かつて長谷工コーポレーションが建てて自社で運営していた京都の「ブライトンホテル」を思い出した。ホテルの中央に大きな吹き抜け空間があり、絹谷幸二氏の大壁画があり、客室は遮音性が高く、広い。
その京都ブライトンとは比べようもないが、フロントデスクに併設したビールがタダで飲める(宿泊者のみ。ワインも提供するよう検討中とか)本皮張りのカウンター付きワークスペースがまたいい。
客室も最近の宿泊特化型ほてるよりやや広めの20㎡以上が中心(ルームチャージは18,000円前後~)。シャワールームのみで、浴槽はない。天井高は最高2500ミリ。最上階の40㎡+テラスの「The Lively Loft」は子どもの滑り台付き4ベッド+ソファーベッドを採用し、ルームチャージは40,000円前後というから割安だ。全体的に濃い藍色を多用しているのが特徴。
一つだけ残念だったのは、最上階の「THE LIVELY BAR」の設えはいいのだが、一部にいかにもフェイクの緑が壁面に掲げられていたことだ。〝画竜点睛を欠く〟-といったら失礼か。
客室
滑り台付き「The Lively Loft」(きれいなロシア出身の女性スタッフが実演してくれた)
2階のロビーラウンジ・ワークスペース
ラグビーW杯級の大激戦・築地 イニシアは突板、全居室床暖、SOHO…で差別化
「イニシア築地レジデンス」建築現場
見方によっては「晴海」でも「豊洲」でもないラグビーワールドカップ2019日本大会クラスの熱いマンション販売合戦が晩秋から初冬にかけて「築地」で繰り広げられる。坪単価はほとんど450万円以上というハイレベルで、トータルで6物件463戸(分譲戸数)もある。みんなよく売れハッピーなノーサイドの結果にはなりそうもなく、ノーガードの肉弾戦に発展する可能性もある。そのうちの一つ、コスモスイニシア(事業比率60%)と大和ハウス工業(同40%)のJVマンション「イニシア築地レジデンス」82戸を見学した。
物件は、東京メトロ日比谷線築地駅から徒歩6分、中央区築地7丁目に位置する12階建て全82戸(事業協力者住戸18戸含む)。専有面積は40.37~75.80㎡、価格は未定だが、坪単価は450万円くらいになる模様。竣工予定は2021年1月下旬。施工は大豊建設。販売開始は2019年12月上旬。
現地は、古い木造建築物もかなり残っている商住混在エリアの二方道路の角地。建物は1フロア南向き、東向きがほぼ4戸ずつ。南向きは40、54、74㎡(上層階の4戸)、東向きは53、54、74・75㎡(上層階の4戸)。コンパクトタイプが中心。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、逆梁アウトフレーム、連窓サッシ、シーザーストーン天板(玄関収納・キッチン・洗面)、突板フローリング、ディスポーザー、ミストサウナ、全居室・床暖房、Low-E複層・耐熱強化ガラスなど。
販売担当者は、他社物件についてはあまり語らなかったが、先行販売した「中央湊」も残りわずかで、今回の設備仕様レベル、モデルルームの〝魅せ方〟などから〝うちはどこにも負けませんよ〟という自信が顔に書いてあった。
〝一脚三役〟の多目的利用が可能なテーブル
逆方向から写す
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売主に大和ハウス工業が名を連ねているが、商品企画はコスモスイニシアだ。モデルルームは54㎡で、玄関を入ってすぐの洋室(5.8畳大)はドアを壁面に収納できるトールスライドドアを採用、リビング・キッチン(15.1畳大)とSOHOなど多目的に利用可能な空間を提案しているのが特徴。
オプションで100万円はしそうな長さ4.1m×幅75㎝のバーカウンター-作業台-ダイニングテーブルとして一体的に利用できそうな提案が際立ったほか、突板フローリング、全居室床暖房、Low-E複層・耐熱強化ガラスなどで差別化を図っている。
接客ブースやモデルルームには本物の観葉植物を置くなど、細かい点でも他社との違いをアピールしている。
接客ブース(左)とモデルルームに置かれていた本物の観葉植物
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冒頭に書いたとおり、築地駅圏ではそれぞれが徒歩数分圏に集中するという以下の物件が供給される。事業協力者住戸を省くと合計で6物件463戸だ。
・コスモスイニシア・大和ハウス工業「イニシア築地レジデンス」82戸(事業協力者住戸18戸含む)
・ワールドレジデンシャル「レジデンシャル築地」40戸
・大成有楽不動産「オーベルアーバンツ銀座築地」55戸
・大和ハウス工業「プレミスト東銀座築地Arc Court」117戸
・大和ハウス工業「プレミスト東銀座築地Edge Court」63戸
・旭化成ホームズ「アトラス築地」161戸(事業協力者取得住戸37戸含む)
モデルルームを見学したのは今回の物件だけなので何とも言えないが、もっとも駅に近く、上層階からは築地本願寺の境内が見下ろすことができるかもしれない旭化成ホームズを除けば、立地条件は似たり寄ったり。上層階でないと眺望が開けない物件も少なくない。坪単価は450万~470万円くらいになりそうで、各社はコンパクトタイプにしてグロス価格を抑制する戦法のようだ。
それにしても、価格は5,000万円以上となり、これほど一挙に同じタイプが供給されればみんなが早期に売れるとは考えづらい。
現段階では、お互いが欠点をあげつらう乱売戦には至っておらず、表向きは〝おててつないで〟〝仲良しこよし〟の相乗効果を狙っているようだ。
だが、しかし、売主の各社はみんな行儀のいい会社だとは思うが、がっぷり四つのスクラムが崩れればあとは蹴ったり殴ったり頭突きをくらわせたりの肉弾戦、血を血で洗う壮絶な戦いに発展しないか。記者のように外野席で観戦するのは楽しいのだが、当事者はキリキリ胃が痛いのではないか。
カギはやはり旭化成ホームズが握る。いくらの値を付けるか。他社は坪500万円を突破する高値挑戦(つまり、その分だけ自社物件が割安に映る)してくれるのを期待しているようだが…。
そういえば、大和ハウス工業の芳井社長は正真正銘の元神戸製鋼ラガーマンだが、体格は旭化成ホームズの川畑社長のほうがはるかに勝る。こんなことを書くと、みんな取材拒否にならないか心配だが、悪意ではなく〝みんな頑張れ〟という記者なりのエールですからご了承ください。
野村不動産 経産省と環境省のそれぞれのZEH-M(ゼッチ・マンション)認定
「(仮称)高田馬場計画」完成予想図
野村不動産は10月29日、経済産業省「超高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」に「(仮称)大阪市北区豊崎4丁目計画」が、環境省「高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に「(仮称)高田馬場計画」がそれぞれ採択されたと発表した。
経産省の事業は、平成31年度省エネルギー投資促進に向けた支援補助金ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業のうち「超高層(住宅用途部分が21層以上)ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」。
環境省の事業は、平成31年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化による低炭素化促進事業のうち「高層(住宅用途部分が6層~20層)ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」。
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この経産省と環境省のそれぞれの事業は、国土交通省との連携によるものだろうが、どこがどう違うのかよく分からない。
一本化すべきだと思うが、「(仮称)高田馬場計画」は外観が素晴らしい。同社の記念碑的マンション「プラウド新宿御苑エンパイア」にそっくりではないか。
ニュースリリースには、高田馬場駅から徒歩4分、新宿区下落合1丁目の敷地面積約2,650㎡、9階建て延べ床面積約9,500㎡の135戸で、2019年6月着工、2021年8月竣工としか発表されていないが、場所によっては高値追求ができるマンションだと思う。もちろん高田馬場駅圏最高値になるのは間違いない。
(注)本日(30日)、同社から場所は下落合一丁目69番1(地番)で、従前は共同住宅、用途地域は準工業地域との回答があった。地番なのでやはり場所は特定できないが、準工なので当初想定した坪単価はないと見た。それでも高田馬場駅最高値となると書いたのに変更はない。
低層住宅地に生活利便施設やサテライトオフィス可能に 東京都 用途地域指定基準改正
東京都は10月23日、新たな「用途地域等に関する指定方針及び指定基準」を施行した。
主な改定ポイントは、①田園住居地域の指定方針・指定基準を新たに整備②活力とにぎわいの拠点等における容積率メニューの追加(容積率800%の指定を可能とする)③住居専用地域における建蔽率の緩和メニューの追加(木造住宅密集地域の不燃化に向け、地区計画の策定や新たな防火規制区域の指定にあわせて建ぺい率80%の指定を可能とする)④低層住居専用地域などにおける用途規制の緩和手法の明示(地区計画の策定などに合わせて用途規制を緩和し、生活利便施設やサテライトオフィス等の立地を推進する)-など。
2019年2月に東京都都市計画審議会から示された「東京における土地利用に関する基本方針(都市づくりのグランドデザインを踏まえた土地利用のあり方)」の答申を踏またもので、「右肩上がりの経済成長を背景とした土地利用の規制・誘導から、将来の人口減少を見据えた安全で魅力や活力の高い都市の創出を図る土地利用へ転換」し、「個性やポテンシャルを最大限に発揮する都市機能の適正配置、国際競争力の強化、都心居住の見直し、集約型の地域構造への再編、都市づくりのあらゆる機会を捉え減少する緑地や農地を守り、増やすための取組、災害に強い都市の実現等を総合的、一体的に推進する必要がある」(同基本方針)から改定にいたったもの。
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「指定基準」は総花的で60ページにも及び、従前の平成16年度施行の「指定基準」との対照表もないので読みこなすのは大変だ。
新たに打ち出されたのは「中核的な拠点」で、地域特性に応じた都市機能の集積を図るため、中核広域エリアの商業地域では容積率800%の指定を可能とする。
また、おおむね環状7号線外側の地域において、主要な駅周辺や身近な中心地に生活に必要な機能を集積させ、その徒歩圏に住宅市街地を誘導し、歩いて暮らせるまちへの再構築を図るとともに、駅や中心地から離れた地域では、みどり豊かで良好な環境を形成するなど、集約型の地域構造への再編を目指す。
さらに、区市町村の創意工夫により地域の実情に応じて特別用途地域や特例容積率適用地区、高層住居誘導地区などの指定も容易にする。
このほか、みどりの量的な底上げと質の向上量的底上げと質の向上を図るため、緑化基準を強化するとしている。
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1低層に生活利便施設やサテライトオフィスの設置を促し、中高層階住居専用地区や特別用途地域の指定を容易にするというのは大賛成。
ただ、平成16年の制度見直しの際に採用された土地の細分化やミニ開発を抑制する最低敷地面積の指定は一部区市にとどまっており、定めていても実効性に乏しいと思われる区は少なくないはずだ。
木密地域の不燃化を促進するため建ぺい率80%の指定を可能としたが、建ぺい率の緩和より、空地の確保、土地の集約化を促し、再開発を容易にする容積率の緩和のほうが良好な街づくりに寄与するのではないか。
建築物の絶対高さ規制についてほとんど言及がないのが残念だ。都の資料によると平成16年の改定により絶対高さを定めたのは3区3市、約420haとあるが、指定によって街並みがどうなったか検証していただきたい。わが国の都市計画の専門家は統一されたスカイラインの美しさを強調する。確かに高さが統一された街は遠くから眺めるにはいいかもしれないが、敷地一杯に建てられた建物が壁のように迫り、街路樹は電柱のようぶった切られ、敷地がコンクリで固められた街を歩いていただきたい。
記者は、商業地域や近隣商業では耐火基準を満たせは100%建てられる法律を改め、道路に面した敷地に緑地・空地を確保するよう求め、その分の容積率を緩和したほうが美しい街ができると確信している。
こんなことを書いても詮無いが、あの国立マンションの明和地所は当初、敷地内にカフェを設け、一般に開放する計画を立てていた。
足立区150㎡以上の宅地開発の1宅地最低敷地66㎡に10月に条例施行(2019/7/16)
建物の高さ規制は居住性、景観美の視点から見直しを(2013/12/7)
都心部で増殖する「狭小住宅」とは何か 「居住の自由」か居住環境の保護か(2019/7/8)
絶対高さ制限の背景にある100尺規制とは(2008/6/10)
首都圏 単身者タイプ(25㎡)の賃貸坪賃料は1万円以上 長谷工ライブネット調査
長谷工ライブネットは10月25日、「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ2019年版(THE RENT MARKET RATE)」を完成させたと発表した。同社が管理している約4.5万戸の賃貸マンションの成約データのほか信頼できるデータ約37万戸を対象に分析したもの。
調査によると、単身者タイプ(面積25㎡換算)のエリア別の平均賃料相場では、都心5㎞圏では南西エリアの港区が12万円台(坪約1.6万円台)でもっとも高く、次いで千代田区・中央区・新宿区が11万円台(同1.5万円台)の賃料水準となっている。
単身者タイプの賃料相場ランキングを見ると、「赤坂見附」・「永田町」・「表参道」駅が151,000円(同19,932円)で1位。東京都下では「吉祥寺」駅が101,000円(同13,332円)、神奈川県では「元町・中華街」駅が100,000円(同13,200円)、埼玉県では「浦和」・「大宮」・「和光市」駅が77,000円(同10,164円)、千葉県では「新浦安」駅が88,000円(同11,616円)でそれぞれ1位となっている。
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同社の調査によると、首都圏の都心から30キロ圏の単身者タイプの賃貸坪単価はほとんど1万円台に乗っている。年間賃料収入は12万円だ。賃貸住宅の実質利回りがどれくらいかよく分からないが、低めの3%とすると土地代込みの投資建築費(購入費)は坪400万円で、5%としても坪240万円となる。
これと分譲マンションとを単純に比較することはできないにしろ、相対的に質が劣る賃貸住宅の賃料が高くなってくると、賃貸を脱出し分譲に走る傾向に拍車がかかる。
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同社には、是非ともセーフティネット住宅についても調査しレポートしてほしい。同制度は、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯などの住宅確保要配慮者に対して入居を拒まない住宅を登録し、国や地方公共団体がバリアフリー化に対する改修費補助、家賃保証を行うものとして鳴り物入りで制度化された。国は2020年度までに17.5万戸の登録を目指している。
しかし、登録制度が始まった2017年10月から現在(2019年10月25日)まで登録されているのは約1.3万戸に過ぎない。目標の10%以下だ。
なぜ増えないのか、どこに問題があるのか、だれも書かない。記者は昨年、現場を取材したことがあるが、これは新たな貧困ビジネスだと思った。このまま放置すると、貧乏人を食い物にするこの制度が隠花植物のようにはびこることになる。添付した記事もぜひ読んで頂きたい。
坪3.5万円!億ション以上 現地見ずに家賃判断 審査は適正か セーフティネット住宅登録制度(2018/11/9)
大激戦地 面積を70㎡以下に抑えたのは正解 伊藤忠都市開発「日暮里」は坪320万円
「クレヴィア日暮里THE RESIDENCE」
伊藤忠都市開発が11月に分譲開始する「クレヴィア日暮里THE RESIDENCE」を見学した。駅から徒歩10分の二方角地に位置する全65戸。坪単価は320万円の予定。
物件は、JR日暮里駅から徒歩10分、荒川区東日暮里5丁目の商業地域・準工地域に位置する12階建て全65戸。専有面積は31.63~65.95㎡、第1期(5戸)の予定価格は4,400万円台~6,900万円台(44.58~65.95㎡)、坪単価は320万円の予定。竣工予定は2020年9月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。施工は南海辰村建設。販売代理は伊藤忠ハウジング。
現地は、駅東口の日暮里繊維街をまっすぐ進み、尾竹橋通りと交差するところで右に曲がり、少し歩いた幅員19mの尾竹橋通りに面した商業地域(一部準工)。建物は1フロア東向きが3戸、西向きが2~3戸構成。東向きは54~65㎡、西向きは31~44㎡のコンパクトタイプ中心。
主な基本性能・設備仕様は。二重床・二重天井、食洗機、リビング天井高2450ミリ、リビング床暖房、良水工房など。
エントランス
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日暮里・西日暮里駅圏もマンション大激戦地だ。〝坪300万円くらいに抑えられたら売れるだろう〟と考えたが、甘くはなかった。近隣物件は軒並み坪300万円を超えている。城東・城北エリアも坪300万円以下はありえないのが相場となりつつある。
販売担当者によると、来場者は他のエリアもどんどん価格が上昇しているのでこの価格に納得されるそうだが、この街を知る地元の人たちは高くなったと感じるそうだ。記者も同じだ。65㎡のモデルルームはよくできている。70㎡以下に面積を抑えているのは正解だと思う。
建設現場
日暮里繊維街