なぜ多摩センターはないのか 長谷工アーベスト「住みたい街(駅)ランキング」不思議
長谷工アーベストは6月27日、首都圏居住のモニターを対象に実施したWEBアンケート形式による「住みたい街(駅)ランキング」の調査結果をまとめ発表した。有効回答数は3,166件。
首都圏総合ランキングは、「吉祥寺」が調査を開始して以来15回連続の第1位、第2位は「横浜」第3位は「大宮」。「大宮」は前回13位からの浮上。
このほか「中野」が15位から6位に、前回18位の「立川」が7位に、前回11位の「赤羽」が8位に入り、初のトップ10入り。
ポイント制を加えた都県別ランキングでは、東京23区は「新宿」、東京市部は「吉祥寺」、神奈川は「横浜」、埼玉は「大宮」、千葉は「船橋」がそれぞれ1位。
◇ ◆ ◇
この種のランキングが発表されるたびに記者はうんざりする。アンケート回答者の居住地、年代、家族数などは全てトータルしてパーセンテージでしか公表されない。知りたいのはそれぞれどのような層のひとが「住みたい街(駅)」にどんな魅力を感じているのか、さらにまた、記者は最も大事だと思っているのだが、その「住みたい街(駅)」に住める可能性についての調査が欠落しているのが決定的に問題だと思う。そもそも「住む」とはどういうことなのかあいまいだ。
ベスト3の「吉祥寺」「横浜」「大宮」は、マンションなら坪単価は場所によっては500万円以上で、もっとも安くても徒歩圏なら250万円はくだらない。アンケート回答者のうち購入できる人は果たして何人いるか。「吉祥寺」も「大宮」も雑多な街だし、「横浜」だっていいのは、山手、桜木町の一角だ。
「新宿」と「渋谷」がそれぞれ4位、5位に入っているのも解せない。記者は、「渋谷」の高級住宅街を除けば住むところではないと思っている。「新宿」はキャッチバーにつかまって有り金全てを吐き出させられたところだし、「渋谷」は永遠の愛を誓った場所ではあったが、見事に捨てられた場所でもある。今でもトラウマになっている。
それならどうして「東京」はベスト20にも入らないのか。小生はお金があったら、「東京」に住みたい。皇居を見降ろすのは畏れ多いが、坪単価にしたら最低でも坪3,000万円の価値があると思う。
「赤羽」が8位なのは結構なことだと思う。いま長谷工コーポレーションが施工したマンションが分譲中だし、北区も〝住めば北区〟のキャンベーンを展開しているのが奏功したのかもしれない。
だがしかし、もっとも理解できないのが、どうしてわが「多摩センター」は東京市部のベスト10にも入らないことだ。ベスト10には「吉祥寺」「調布」「府中」「八王子」「高尾」の5つの京王線沿線の街(駅)が入っているのは嬉しいが、「多摩センター」が無視され「高尾」が入るなんて信じられない。
同社のニュース・リリースには、1位の「吉祥寺」について「住みたい街ランキングの常連の街であり、自然と都会的な部分のバランス感覚が優れていると感じるから。道を一本入ると庶民的な雰囲気が今なお漂っていて、飲食店数が多いので住みやすそうだと感じます」(20代・単身)とのコメントが付いているが、これはこのままそっくり「多摩センター」にも当てはまることだ。
一つひとつ書かないが、多摩センターほど広範囲に歩車分離の街が形成されているところはわが国にない。少なくとも街を歩いていて、車が突っ込んでくるリスクは皆無だし、子どもも大人も交通事故にあう可能性は極めて少ない。
デパートはなくなったが、ホテルがあり宴会もできる。コンサートホールだってある。飲食はみんなチェーン店になってはまったが、絶滅危惧種の草花をめでることもできる。風俗系の店もラブホテルだってあるし(なくなったか)、京王閣、府中競馬場にも近い。長谷工の立派な研究所だってあるではないか。
同社も含めこれから調査する機関は、アンケートを実施する際に、街(駅)の特徴や土地やマンションの相場なども伝えるべきだと思う。だれもが実現できない街(駅)を「住みたい街(駅)」ランキングとして調査する意味なんてどこにあるのか。みんな〝住めば都〟ではないのか。
記者がアンケートするなら、「住みたい街(駅)」ランキングではなく、「住める街(駅)」ランキングだ。こちらのほうが消費者の役に立つ。そのうち自分でやろうかしら。
地所ホーム、積水ハウスと富裕層向け三重奏・三つ巴 三井ホームの新大久保モデル
三井ホーム「新宿北モデルハウス」
三井ホームが新宿・新大久保駅前の「ハウジングステージ新宿」内に先に完成させた「新宿北モデルハウス」を見学した。昨年4月に発表した「ラングレー」と同じコンセプトで、北欧のパイン材を用いた総木製窓と、ウエスタンレッドシダ―のウッドパネルと深い陰影を演出する軒の外観デザインが特徴の3階建てだ。
「ラングレー」のモデルハウスは昨年4月にも浜田山住宅展示場で見学し、記事にもしているのでそちらを参照していただきたい。
他社のモデルハウスがほとんど外観は木なのか鉄なのかコンクリなのか分からないのに対して、同社のモデルは明らかに木で出来ていそうな外観なのが木造ファンの記者は気に入った。
それと、これが最大の特徴でもあるのだが、「浜田山」のそれと異なるのは延べ床面積313㎡(94坪)の3階建てであることで、3階部分約31坪を全てベッドルーム(20.7畳大)・パウダールーム(8.3畳大)・ドレッシングルーム(7.2畳大)に充てている提案がいい。これほど広い夫婦のみの(あるいは一人か)空間提案を見たことがない。これは支持されるはず。さらに言えば、同じくらいの夫婦別室の提案もあっていいが…。
◇ ◆ ◇
新宿・新大久保駅前にある「ハウジングステージ新宿」内のモデルハウスを見学したのは今回で3度目(ほかに何棟か見ているのだが、取材目的でなかったので書かない)。明らかに富裕層向けだった。
すぐ比較したのは、積水ハウスのモデルハウスだった。積水のモデルハウスについては6月5日付の記事で「最高に素晴らしい。カッシーナとコラボし、一分の隙もないモノトーンの空間を見事に演出している。モデルハウスを芸術品の域まで高めた商品だ。
何に例えるべきか迷ってしまうのだが、ミロのヴィーナス像はどうだろう(実在の女性に例えると差しさわりがある)。
だがしかし、あまりにも美しく近づくことも触れることもためらわれそうで、金持ちでも品格がない人は怖気づくのは必至で、住みこなすのは容易なことではないのではないか」と書いた。
今回の三井ホームのモデルハウスは確かに美しいのだが、こちらはうつせみの人、例えば同社のCMに長く登場した吉永小百合さんとか現在の菅野美穂さん(最近お笑いタレントと結婚した三井不動産のCMに出ていた何とかさんはちょっと違うか)も「素敵!」と声を上げそうな、絵画で言えば小磯良平の描く凛としたかつ楚々とした美人画のような美しさだ。
一つ難点を指摘すれば、1階の階段室には観葉植物が置かれていたのだが、みるからにフェイク。これはいかがなものか。三菱地所ホームの「ボタニカル」をテーマにした「浜田山ホームギャラリー」や、家の中に中低木を取り込んだ「ONE ORDER」を意識したのかもしれないが、それを超えないと意味がない。せっかくの素晴らしい空間が台無しだ。
いずれにしろ、三菱地所ホーム、積水ハウス、三井ホームの3つのモデルハウス(住友林業も加わるか)がこの住宅展示場内の富裕層向け三重奏を奏で、かつ三つ巴戦を演じるのではないか。住友不動産のモデルハウスは秋に完成するのでぜひ見学したい。
リビング階段の下の観葉植物が気になった
積水ハウス モデルハウス(バスルーム)
木の美しさを全面に 天井高3m実現 三井ホームが新商品「LANGLEY(ラングレー)」(2018/4/11)
分譲戸建て工事額・坪単価・広さ 長野県が1位 平成30年度 国交省住宅着工統計から
⇒PDFの画像文書1.pdf
別表は、国土交通省の住宅着工統計から平成30年度の分譲戸建て住宅の都道府県別戸数、1戸当たり工事予定額、坪単価、1戸当たり広さを調べ一覧にしたものだ。
この表から何が分かるか。まず、着工戸数。戸数が多いのはトップの東京都をはじめ神奈川、埼玉、愛知、千葉、大阪の順。逆に少ないのは鳥取、島根、徳島、高知、長崎の順。
戸数が多いのは大都市圏であり、少ないのは人口の少ない県であるのは当然だが、宮城県、広島県、熊本県などが比較的多いのは自然災害の影響か。
一戸当たり工事予定額は全国平均で1,564万円(坪単価49.8万円)となっており、多くの都道府県は平均値の前後の数値になっている。しかし、長野県は2,109万円と突出しており、隣の山梨県が1,933万円で2位。台風対策のためなのか高知県、沖縄県、三重県が1,800万円を超え、北海道、島根県なども比較的高い。低いのは宮崎県の1,383万円で、全国で唯一1,400万円を割っている。以下、福井県、滋賀県、和歌山県、石川県などが続く。
坪単価は全国平均で49.8万円。トップは長野県の60.4万円で、以下、沖縄県、高知県、山梨県などが50万円台の後半。低いのは福井県の41.6万円で、石川、滋賀県、群馬県などが続く。長野と福井では実に18.8万円の差がある。
一戸当たりの広さでは、全国平均は31.4坪。全国でもっとも広いのは長野県の34.9坪。以下、岐阜県、富山県、三重県、福井県、石川県が続く。狭いのはもちろん地価が高い東京の28.6坪で、京都府、青森県、神奈川県などが30坪を切っている。長野と東京の差は6.3坪。12畳大以上だ。
◇ ◆ ◇
面白いのは長野県だ。どうして住宅にお金を掛けるのか理由は分からないが、豪雪対策か地震対策か、健康住宅が浸透しているためか、それとも「海こそなけれ物さわに 万(よろ)ず足らわぬ事ぞなき」の長野県歌を知らない人はいないという勤勉で自立心が強く、反中央集権的県民性によるのか。少し昔だが、学校の図書館には「資本論」が備えられていたそうだ。
長野県宅地建物取引業協会事務局に聞いた。「個人的な見解ですが、土地が30坪の分譲戸建てなどはほとんどなく、車がないと動けない山岳部も多く、寒冷地でもあり、車が置けるスペースや防寒対策に費用をかけたりしているからではないか。飯田グループ? ほとんど聞きません。圧倒的に多いのは大手のハウスメーカー」とのことだった。
◇ ◆ ◇
もう一つ、分譲戸建てのガリバー企業、飯田グループホールディングスの影響が全国の分譲戸建て市場に大きな影響を及ぼしていると考えざるを得ない。
同社グループの2019年3月期の売上計上戸数は44,677戸で、単純比較はできないにしろ2018年度の住宅着工戸数の実に30.9%を占める。1戸当たり価格は2,678万円。土地代と建物価格の割合は分からないが、建物価格は坪30万円台のはずで、圧倒的な価格優位性を誇っている。
参考までに同社グループの空白区を紹介すると、富山県、鳥取県、島根県、高知県、長崎県、宮崎県の6件のみ。
ヒートショック予備軍 最多は千葉・宮崎 最少は長野 リンナイが都道府県ランキング(2018/11/3)
ポラス2019年3月期 売上高2,163億円 分譲戸建て契約2,654棟 ともに過去最高
中内氏
ポラスグループは6月24日、2019年3月期決算を発表。売上高は2,163億円(前年比8.4%増)、営業利益は129億円(同5.2%増)、経常利益は137億円(同7.2%減)、当期純利益は38億円(同9.7%減)となり、売上高は過去最高、2,000億円を初めて突破した。
セグメント別では、分譲住宅契約が2,654棟(同15.4%増)と過去最高となり、マンションも「浦和美園」や「新越谷」が好調で、契約戸数は468戸(同82.8%増)とこちらも過去最高。
戸建て注文住宅の契約棟数は576棟(同15.7%減)となり、分譲と注文の合計契約棟数は3,230棟(同8.3%増)となった。
プレカット事業などを手掛けるポラテックは、5工場体制による生産量の拡大や木造非住宅の強化により、売上高は810億円(同6.6%増)となり3期連続で過去最高を更新。
その他、仲介手数料は23億円(同7.6%増)、リフォーム受注高は79億円(同8.3%増)。
2020年3月期の連結業績予想は、売上高2,250億円(前年比4.0%増)、経常利益150億円(同9.0%増)としている。
発表会に臨んだ中内晃次郎・ポラスグループ代表は「2019年は創業50周年の記念すべき年であり、次の50年を誇りある未来にすべく『自他共存』の経営を推進し、圧倒的に美しい街づくり、デザイン・技術に優れた住まいの提案によるエリアシェアの強化を進める」と語った。
◇ ◆ ◇
記者が驚いたのは、品川典久・中央住宅社長が、総じて好調に推移している分譲住宅について語った中で、「江東、墨田などの城東エリアは、1宅地12、3坪の4,000万円を切る価格ありきの市場の中で苦戦している。数年前の年間140~150戸をピークに販売棟数は減少しており、昨年度は78棟に落ち込んだ。深刻な状況。より豊かな暮らしを提案する当社の経営理念からしてそのような戸建てとは競争したくないが、対策を考えないといけない」と話したことだ。
記者は、昭和50年代から60年代の前半にかけて徹底してミニ開発を批判する記事を書いた。定義は難しいが、概ね一宅地が30坪以下の数棟現場の建売住宅とした。
当時、都内の各区は開発指導要綱でミニ開発を排除する動きを示していたが、ひどい事例では、例えば60坪の土地に開発申請時は長屋として申請し、完成後は切り離した実質一宅地15坪の建売住宅がかなり供給された。ミニ開発のほとんどが建基法違反だった。そのような住宅を専門に分譲する業者が暗躍した。
事態を重く見た都市銀行などは一宅地30坪未満の戸建て分譲に対しては融資をしない措置を取った。
その後、時代は変わった。違反建築物はかなり減ったはずで、都市型戸建てに都市型3階建ても加わり、平成14年の都市計画法の改正により、自治体が面的な規制により最低面積を定めやすくなった背景もあり、一概に狭小住宅を「悪」と言えない市場(住宅は「幸せ」を売る商売であり、消費者が支持するものを「悪」と決めつけるのは難しい)が形成されているのも事実だ。
それでも、この問題は等閑視できない。どうして一宅地12、3坪の分譲が可能なのか、各区の対応はどうなっているのか、銀行融資はどうなっているのかなど時間をかけてでも取材して記事にしたい。
品川社長、そんな家とも呼べないような戸建てと競争などしないでいただきたい。きれいさっぱりそんなエリアと決別すべきだと思う。自治体の首長は、街のポテンシャルを引き下げるような戸建てをどうして放置しているのか。銀行はどうなっているのか。
品川氏
◇ ◆ ◇
決算発表会は記者懇親会とセットで行われているもので、記者も末席を汚している。懇親会ではいつも同社グループの料亭のような飲食店がつくった1500キロカロリーはありそうな弁当が配布され、酒も提供される。
記者はカロリーを気にしながら、きれいな女性からビールを勧められて断るのも失礼だと思い、一生懸命食べかつ飲んでいたら突然、「牧田さん、何かありませんか」と同社の広報マンから声がかかった。
一瞬ひるんだが、ただで弁当を貰いビールを飲ませてもらったのに何もしゃべらなければ、もう二度と声がかからないのではと思い、同社のマンションと戸建てについてひとこと話した。
マンションについては、「ルピアグランデ浦和美園」の商品企画を褒め、戸建てでは、数年前に三井不動産レジデンシャルが分譲してよく売れた「ファインコート浦和美園」の施工がポラテックであり、三井レジは「施工がポラスグループ」であることをパンフレットで大々的に扱ったことを紹介した。
広報マンは「うちの物件の取材をたくさんやってください」とまぜっかえしたので、「それは違う。ポラスの物件の取材ばかりしていたら、他社の商品企画がわからない。たくさんみて比較検討することが大事」だと言い返してやった。
どうもハウスメーカー担当の記者の方は、デベロッパーのマンションや戸建てを取材しない。これじゃ正確な市場を把握できないと思う。最近の分譲戸建てのリビング天井高が高くなってきたのは、間違いなくポラスの影響だと思う。
建築基準不適合物件は約3,800棟 前回発表より倍増 大和ハウス工業
大和ハウス工業は6月18日、建築基準の不適合問題に関する外部委員会の「調査報告書」を発表し、前回4月12日に公表した数値にデータ漏れがあり再調査した結果、建築基準不適合物件は戸建て・賃貸を含め追加棟数は1,885棟にのぼり、前回発表時の1,878棟と合わせ合計3,763棟に増加したと訂正。同時に再発防止策を発表した。
外部調査委員会は「調査を進めるなかで、驚きを禁じ得なかったことは、日本を代表するハウスメーカーである大和ハウス工業が、型式適合認定制度の在り方について、あまりにも迂闊に集団的な誤信を起こしてしまった経緯である」「大和ハウス工業は、本件不備により社会的信頼を損なったことを虚心坦懐に受け止めて、今後の改革に活かしていただくことを期待する」としている。
型式適合認定制度の理解・認識不足 大和ハウスの建基法不適合問題 外部調査委報告(2019/6/2)
「機能的な快適性」「手が届く上質」目指す Jプロ新ブランド「プレディア府中西府」
「プレディア府中西府」完成予想図
JR西日本プロパティーズのマンション新ブランド〝PREDEAR(プレディア)〟の「プレディア府中西府」を見学した。最高のブランド名で、商品企画もなかなかいい。
物件は、JR南武線西府駅から徒歩2分、府中市本宿町1丁目に位置する8階建て全20戸。専有面積は57.84~72.76㎡、現在先着順で分譲中の住戸(3戸)の価格は4,238万円~4,948万円。坪単価は237万円。竣工は2019年4月、入居は2019年9月下旬。設計・施工・監理は風越建設。販売代理はCity Innovation(シティイノベーション)。
現地は、西府駅前通りの二方道路の角地。建物は内廊下方式で、基本階は1フロア3戸(7~8階は2戸)構成。住戸プランは59・70・72㎡が中心。主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、御影石カウンター、食洗機、ソフトクローズ収納、リビング天井高2450ミリ、横入り玄関(一部)など。
建物完成後の4月27日から完成販売を行っている。
◇ ◆ ◇
西府駅圏のマンション取材は今回で3回目だった。いつものように駅に降りて単価予想をした。3年前見学したタカラレーベンの近接マンションは坪230万円だった。それよりも間違いなく高く、250万円くらいだろうが、同社はそんなに高くしないで240万円くらいにするのではないかと考えた。
最初、販売担当者から220万円くらいと聞いて、そんなはずはないと思ったら、やはり平均は237万円だった。どんぴしゃりではなかったが、ほぼ的中した。二方道路の角地の立地であることを考慮すれば間違いなく早期完売すると読んだ。
プランもなかなかいい。59㎡(6戸)の北西角住戸はL字型キッチンが約4.1畳大で多目的に利用できるスペースを確保している。70㎡(6戸)の南東角住戸9300ミリのワイドスパン、72㎡の南西角住戸(6戸)は多面採光。
◇ ◆ ◇
同社の不動産企画部企画グループ長・前川元氏(不動産鑑定士)らに新ブランド〝PREDEAR(プレディア)〟について説明を受け、これはいいとすぐ思った。大手デベロッパーのブランドに負けないからだ。
さて、皆さん、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産、東急不動産、東京建物、大和ハウス工業のマンションブランド名はご存じだろう。改めて書くまでもないが、それぞれパークホームズ、(ザ・)パークハウス、プラウド、ブランズ、ブリリア、プレミストだ。
もうお分かりだろう。みんな「ハ行」から始まる。ここに割って入る意図があるのかどうか知らないが、前川氏によると新ブランドは、特別な意味を表わす「PREMIUM(プレミアム)」と、大切な人への想いやつながりを表わす「DEAR(ディア)」を掛け合わせた造語で、「三菱重工のものづくりへのこだわりを引き継ぎ、JR西日本グループが大切にしてきたまちづくりを通じて『機能的な快適性』と『手が届く上質』の両方の価値を兼ね備えたレジデンスの供給を目指す」そうだ。
今回の商品企画では、横入り玄関、ソフトクローズ収納、広めのキッチンスペース、二段の浴室タオル掛けなどにその哲学・思想が盛り込まれていると見た。
◇ ◆ ◇
一つだけ気になった点がある。モデルルームのインテリアだ。これはみんないわばお飾りだから、記者がとやかく言う問題でもないが、たくさん置かれていた観葉植物は全てフェイクで、造作家具類も安物ではなかったが決して高価なものではなかった。これが「手が届く上質」なのかもしれないが、せっかくのプランがみんな安物に見えた。白粉を塗りたくったモデルルームも考えものだが、もう少し上質な空間を演出してもお客さんに失礼にはあたらないのではないか。
次は「プレディア横浜三ツ沢」をお届けする。
モデルルーム
驚天動地の「週刊住宅」「住宅新報」元編集長・顧問の本多氏のインタビュー記事
あ然、呆然、驚天動地-いかなる言葉でもってしても形容しがたい、もう絶句するしかない、あきれ果ててものも言えない(だから書くのだが)記事がわが業界紙の「週刊住宅」6月17日号に掲載された。8ページ建ての最終面(つまり裏表紙)の書籍紹介コーナートップに、競合紙の「住宅新報」の元編集長で顧問でもある本多信博氏の書籍「認知症にならない暮らし方 百歳住宅」(プラチナ出版社)のおためごかし※の紹介文だけならまだしも、何と全6段の4分の3くらいのスペースを割いて、本人のインタビュー記事を紹介しているのだ。
インタビーで語っている本多氏の発言も聞き捨てならない内容が含まれているのだが、これは後述するとして、よりにもよってお互いライバルと言ってよい業界紙が一方の元編集長・顧問が書いた本をインタビュー付きで、しかも題字下で紹介するなど常識的には考えられないことだ。さらにまた、住宅新報も本多氏も相手を〝格下〟と考えているのかもしれないが、そんな企画記事に無分別にも乗るなんて、狂っているとしか言いようがない。双方が痴呆状態に陥っているのではないか。
例えは適当でないかもしれないが、朝日新聞が読売新聞を、あるいはその逆をヨイショするようなもので、これはもうメディアの自殺行為だ。かつて、東急不動産の金指潔会長が「このままでは生き残れない業界紙」と苦言を呈したのを忘れたか。
こんな紙面を見ると、何だか負け犬がお互いの傷をなめあっている絵図そのものに思えてきて実に不愉快だ。ひょっとしたら両紙は持ちつ持たれつの兄弟紙か。そういえば、住宅新報の元編集長は現在、週刊住宅の記者として記事を書いている。私事だが、小生は同業の記者にはほとんどお友達がいないし、言葉もあまり交わさない。
※おためごかしとは、他人(ここでは本多氏)を持ち上げているように見せかけて実は自分(週刊住宅)の利益をもくろんでいるという意味。そのわけは、プラチナ出版は週刊住宅が破綻したあとに同社の社員らが2017年5月に立ち上げた会社であることからもこの言葉がぴったり。
◇ ◆ ◇
「聞き捨てならない」と書いたのは次の部分だ。
本多氏は、「住まいは生活習慣病の源」と持論を述べた後、「認知症を患いづらい住まいとは」という週刊住宅の記者の質問に対して「1年を通じて四季を感じられる住まいである…脳を活発に動かせる環境づくりが重要…その意味からマンションより戸建住宅のほうが認知症になりづらい家作りを実践しやすいと思っている」「認知症になりやすいのは独り暮らし」などと語っている。
さらにまた、積水化学の住宅カンパニーの「認知症の早期発見、重症化予防プロジェクト」を紹介し、「住友林業や東急不動産、東京建物などが高齢者向けの住まいに先導的に取り組んでいる」とも述べている。
「住まいは生活習慣病の源」なのかどうかはよくわからないが、小生の糖尿病は住まいと関係ない。言うまでもないことだが、食生活に問題がある。飲酒によって何かの病気を発症したとしても、やはり住まいとは関係ないはずだ。ただ、劣悪な住環境が生活習慣病を発症する要因になるかもしれないことについては否定しない。
しかし、認知症と住まいを関係づけるのは暴論だ。本人も話しているように認知症発症メカニズムは解明されていない。つまり、分からないのだ。分かっていないことについて勝手にしゃべるのもまた自由で、だからこそそう話しているのだろうが、マンションや戸建てを中心に約40年間取材している小生は承服しかねる。
「マンションより戸建てのほうが認知症になりづらい」とか「認知症になりやすいのは独り暮らし」などと、専門家の疫学的な調査研究を根拠に、したり顔で話すのはやめたほうがいい。
貴殿が「家庭内における役割分担と決まりごとに対する郷愁がシェアハウスの台頭の陰にある」(やや意味不明)と絶賛するシェアハウスはマンション形式が絶対的に多いはずで、だとすればシェアハウスは認知症の巣窟・予備軍にならないのか。圧倒的に独り暮らしが多いサ高住もまた認知症患者を発生させる「先導的役割」を果たすことになりはしないか。認知症発症率はマンションが少ない地方のほうが高いという研究も報告されている。
「このままでは生き残れない業界紙」 東急不動産HD・金指潔会長が苦言(2017/3//9)
欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するものWebとの融合・連携 ④(2018/4/5)
住宅リフォーム 今年度からGDP統計に反映 規模は数兆円か
住宅リフォーム推進協議会(代表理事:國井総一郎・ノーリツ社長)の定時総会後の懇親会が6月14日行われ、初めて取材した。勝手が違うし、リフォームのことはよく分からないので早々に退散した。
唯一の成果は、住宅リフォーム統計が今年度からGDPの統計に反映されることだった。
現在、住宅リフォーム工事の着工届が必要な延べ床面積が10㎡以上のものは「建築物着工統計」に反映されており、住宅投資に含まれているが、着工届を必要としないものについては、計算が難しいためGDPには含まれていない。
このため、平成26年3月に閣議決定された「公的統計の整備に関する基本的な計画」に基づき、国土交通省は平成28年度から「建築物リフォーム・リニューアル統計」調査を開始し、今年度からGDP統計に含まれることになった。
建築物リフォーム・リニューアル調査によると、平成28年度の受注高は約10兆1,358億円、29年度は8兆6,578億円(住宅投資額は16.0兆円)だ。
住宅リフォームがGDP統計に反映されたらどれくらいの増額になるのかわからないが、数兆円はGDPを押し上げることになるのか。
しかし、国民生活センターに持ち込まれる住宅リフォームに関する相談件数はずっと年間1万件くらいで推移しているはずだ。GDP統計に反映されるのは結構なことだが、悪徳業者を排除する取り組みも必要だ。
「愛」をテーマに坪400万円に挑戦 7月下旬にモデルオープン 東急不ほか「豊洲」
「ブランズタワー豊洲」完成予想図
東急不動産は6月14日、NIPPO、大成有楽不動産、JR西日本プロパティーズとともに開発を進めている湾岸免震タワーマンション「ブランズタワー豊洲」の報道陣向け見学会を行い、モデルルームを7月下旬にオープンすると発表した。
物件は、東京メトロ有楽町線豊洲駅から徒歩4分、江東区豊洲5丁目に位置する開発面積約24,000㎡の48階建て全1,152戸。専有面積は43.41~219.44㎡、価格は未定だが、75㎡で9,000万円前後、坪単価は400万円になる模様。施工は熊谷組。販売開始は10月上旬。現在、資料請求・問い合わせは約7,000件。
現地は「東電堀」や「豊洲ぐるり公園」に隣接。敷地内にスーパー、保育所を設置する。敷地の一部は豊洲西小学校増築棟用地として江東区に譲渡する。街のにぎわいを創出するエリアマネジメント手法を採用するのも特徴。
モデルルームは、もっともタイプが多い75㎡と60㎡のコンパクトと100㎡の3タイプ。リビング天井高2650ミリ、廊下幅1.1m(75㎡)、キッチン・洗面・トイレカウンターは御影石、バックカウンター・吊戸棚標準装備など。
見学会で同社住宅事業ユニット 首都圏住宅事業本部 執行役員本部長・佐藤 知之氏は「資料請求・問い合わせは想定を超える約7,000件に上っており、期待されていることを感じる。『HARUMI FLAG』と同時期に分譲できることに喜びを感じている」と話した。
「HARUMI FLAG」との競合について関係者は「晴海はこれからの街であるのに対し、豊洲は成熟した街。競合することはあまりない」と否定した。
◇ ◆ ◇
記者はシアター画面に最初に流れたコピー「愛が長続きするタワー。」に反応した。いったい結論をどうするのだろうかと。締めのコピーは「愛は(マンションの)日常の中に存在する」だった。
これに感動したのだが、と同時に心配にもなった。愛ははかなく壊れやすく脆い。愛と憎しみは紙一重、憎しみにだって転化、点火する。多くの人は「永遠の愛」を一度は誓う。しかし、わが国の離婚率は35%に上るというではないか。
それほど愛は難しい問題だ。永遠のテーマと言われるゆえんだ。それでもか、だからか、みんなこの問題に触れるのを避けたがる。このシアターを見た同業の記者の皆さんのうちどれだけの人が心に残っただろうか。皆無と言っては失礼だろうが、聞き流した人が圧倒的に多いはずだ。来場者も同じだろう。心に残らなければ、愛をテーマにした企画担当者、コピーライターの「愛」はどこに行くのか。愛して返しの愛がないことほど空しいことはない。まだ「嫌い」と言われるほうが救われる。
何を言いたいのか。「返しの愛」を受ける工夫を行えということだ。これまで「愛」をテーマにしたマンションはあっただろうか。どこかのモデルルームで「幸せを感じるとき」をテーマに来場者にメモのような形で書いてもらい、ボードに張り出しているのを見たことがある。記者が販売担当なら、モデルルーム来場者(成約者)を対象に大真面目で「愛」をテーマにした作文コンクールをする。審査員には著名な作家を呼び、賞金総額はこのマンションの戸数にちなんで1億1,520万円にする。これを実施したら受賞者はもちろん購入者は絶対記憶に残る。これからのマンション販売はどうやって消費者を参加させるかだと思う(掲示板も工夫次第で使える)。
さて、ではこのマンションに住んだら「愛」は成就するのか、本当に長続きするのか。それを見える形で示す必要がある。ここでは一つひとつ上げないが、数えたら100くらいはあるのではないか。記者がもっとも「愛」を感じたのはリビング天井高2650ミリだし、廊下幅が約1.1m(75㎡)、バックカウンター・吊戸棚が標準装備、キッチン・洗面・トイレ天板は御影石などもいい。「水辺」をアピールするのも効果的かもしれない。
エリアマネジメントは結構なことだが、これは消費者に分かりづらい。伝えきれないのではないか。そうではなくて、例えば「愛の実践(実現)プロジェクト」とでも言いかえたら、ほとんどの人は興味を示すのではないか。
来場者に徹底して「愛」を伝えること、そして作文のような形で「返しの愛」を呼び起こすような具体的な取り組みを行えるかどうかが、このプロジェクトの成否のカギを握っているような気がしてならない。
坪単価400万円への挑戦も納得だ。100㎡以上が92戸もあるのは大変だろうが、いま23区の〝駅近〟の100㎡マンションはほとんど1億円を超える。ここに住めばお金では買えない「愛」を手に入れることができることを訴えてほしい。記者のモットーは「人生は愛」「記事はラブレター」だ。
「HARUMI FLAG」との競合についてはあまり書かない。〝湾岸ならどこでもいい〟人は有明なども含めて悩ましい選択になるだろうが、分譲単価は100万円以上異なるはずで、商品力が売れ行きを左右するのではないか。
東急不ほか 全1,152戸の「豊洲」事業説明会に40名超の報道陣 〝愛〟に反応(2019/2/18)
ポラテック プレカット「名古屋工場」が稼働 全国で月産5,200棟体制へ
「名古屋工場」
ポラスグループでプレカット事業を展開しているポラテックは6月6日、100%子会社ポラテック西日本の新工場「名古屋工場」の稼働を5月21日から開始したと発表した。
名古屋工場は、臨海部に立地し、物流拠点としての役割を担っているのが特徴。愛知県海部郡飛島村木場1丁目に位置し、敷地面積約12,702㎡、延床面積約6,896㎡。月産能力は羽柄材/5,000坪、合板加工/3,000坪。社員数10名。配送エリアは愛知県、岐阜県。初期投資額は14億円。
同社のプレカット工場はこれで茨城県、滋賀県、宮城県、静岡県、佐賀県の5拠点、構造材生産能力は月産合計176,000坪(1棟34坪換算で約5,200棟分)となり、プレカット業界最大手。