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「ザ・パークハウス 中之島タワー」

 三菱地所レジデンスは2月19日、免震構造マンションとして日本最高階数の55階建て「ザ・パークハウス 中之島タワー」の竣工見学会をメディア向けに行った。市内で4例目となる「CASBEE大阪みらい」最高Sランクを取得し、火災避難時に非常用エレベーターが利用できるようにしたわが国初のマンションでもある。

 物件は、京阪中之島線中之島駅から徒歩2分.大阪市北区中之島6丁目に位置する55階建て全894戸。専有面積は40.77~148.51㎡、坪単価は250万円台。売主は同社のほか住友商事、京阪電鉄不動産、アサヒプロパティズ。設計・施工は竹中工務店。竣工は2017年10月26日。2015年11月、第一期販売開始、2017年12月に完売。

 中之島は大阪都心の梅田に近く、ビジネスや文化など多彩な都市機能をそなえた施設が集積。今後も中之島の地権者企業である朝日新聞社、関西電力など30社からなる「中之島まちみらい協議会」が官と連携して文化・国際・業務ゾーンとして街づくりを進めていく。市は2020年までに大阪新美術館を建設する。

 見学会に臨んだ同社常務執行役員・森克明氏は大阪圏のマンション市場について、「マーケットは現状が続くとすれば年間1.8万戸くらいの供給。駅近、再開発など魅力のある用地にはホテルも含めデベロッパーが殺到しており、取得環境は厳しい。しかし、都心部も郊外部も需要は底堅いものがあり、今後も引き続き堅調に推移する。当社も積極的に展開していく」と話した。

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40階ビューラウンジ

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 大阪は、修学旅行を含めても10回も行っていない。再開発などで都心部の人口は増えているものの東京に圧倒的な差をつけられ、経済は停滞し、財政力が弱く、阪神タイガースも相変わらずで、元気なのはお笑いタレントくらいというイメージしかない。

 マンション市場も首都圏と比べ規模は2分の1くらいで、一等地の価格は3分の1くらいのようだ。しかし、東京の市場と比較しても意味がない。率直に坪単価250万円台の894戸の免震タワーが2年間で完売というのはやはりすごいというべきだろう。リビング天井高も2500ミリ確保されていた。

 同社関西支店事業企画部長・ 林祐輔氏らによると、中之島は東京でいえば「湾岸エリア」に近いイメージだという。確かに北に堂島川、南に土佐堀川が流れ、今後の発展が期待できるという点では湾岸に似ている。坪単価も数年前の豊洲に近い。

 しかし、中之島はそれ以上だ。同世代の作家、宮本輝氏の「泥の河」「道頓堀川」の舞台にもなった。なにより大阪市庁舎があり、ネオ・ルネッサンス様式の日銀大阪支店、国の重要文化財に指定されている大阪市中央公会堂、立派な国際会議場もある。中之島フェスティバルタワーにはコンラッド大阪も昨年開業した。中之島の駅舎はふんだんに天然木が採用されており、ホーム側壁も不燃木材だという。最高に美しい。

 そういえば、ニューヨークもシンガポールも香港もストックホルムもみんな島だ。独自の文化・歴史を生かせば東京とはまた違った味が出せるのではないか。地価が安い分競争力もある。「負けたらあかんぞ東京に」中之島にエールも送りたくなる。

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3階オーナーズラウンジ

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モデルルーム

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外観(手前が堂島川。阪神ファンはここには飛び込まないとか)

坪260万円はすごく安いと感じたが…東急不他「心斎橋SOUTH」竣工 見学会(2017/12/21)

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「パレットコート北越谷 フロードヴィレッジ」モデルハウス

 ポラスグループの大型分譲住宅地「パレットコート」シリーズの企画・開発、設計、販売をする中央グリーン開発は2月17日、元荒川沿いの「パレットコート北越谷 フロードヴィレッジ」の第1次販売を3月3日から開始すると発表。同日、地域自治会、越谷市と協力して進めているワークショップ「未来会議」も含めてメディアに公開した。

 物件は、東武スカイツリーライン北越谷駅から徒歩13分~、越谷市大字南荻島字出津に位置する信用金庫研修所跡地の全64区画。敷地面積は135.30~150.11㎡、建物面積93.77~116.29㎡、価格は未定だが3,000万円の半ばから4,000万円台の半ばの予定。建物は木造在来工法2階建て。

 現地は、元荒川の川沿いに位置することから、北欧の「PASSIVE DESIGN」、「HYGGE(ヒュッゲ)」、「SUSTAINABLE」を採用。川沿いの自然を感じるランドスケープを取り入れ、家族とゆったりと過ごす住空間を提案し、地域の新しいコミュニティづくりを支援する街づくりを目指している。

 見学会に臨んだ同社開発取締役事業部長・戒能隆洋氏は、「昨年行った棟下式には700名を超える方が参加し、施設内の食器・家具などが持ち帰ることができる『お宝発見ツアー』では8割以上がリユースされた。反響は現段階で地元以外には広がっていないが、紹介による来場が多く、手応えは十分。7期に分けてこの1年間で完売したい」と話した。

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23号棟 モデルハウス

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12号棟 モデルハウス

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 記者は昨年の「棟下式」も取材している。その時の記事を参照していただきたい。

 元荒川は名前の通り昔は本流だったのが、江戸時代に熊谷あたりで締め切られ、入間川に付け替えられたためにこのように呼ばれるようになったようだ。北越谷駅とは直線にしたら数分くらいの距離だが、川はかなり蛇行しているため徒歩13分の表示になっている。(渡しを付ければ「矢切の渡し」に対抗できるが)

 モデルハウスの2棟はよくできている。同社の戸建てはたくさん見ているのでもう書かないが、さすが年間3,000戸を販売する会社だ。同業がみたら腰を抜かすはずだ。男性向けのモデルハウスは高さ3mくらいの書棚(ギャラリー)と小上がりの「スタディコーナー」が圧巻。一方の女性を意識したプランは、家族それぞれが多様な用途に使えそうなスペースをリビング周りにたくさん用意しているのが特徴。

 元荒川の冷風を取り込むパッシブデザインもいい。冬は北風が寒いが、夏場は体感温度にして数度は低くなるはずだ。

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街並みパース

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 「未来会議」の取り組みも大賛成だ。どこかに意見を誘導する会議でなく、ワークショップ形式なのがいい。

 この日は、ポラスや市の関係者も含めて20数名が参加していた。「河川敷を公園にしよう、桜を植えよう、遊具を設けよう」「集会所には食堂や居酒屋、カフェが欲しい」などの意見が飛び交った。

 河川敷を管理するのは国か県だ。そこを公園にしたり、占有使用したりするこることはまず許可されない。

 また、「集会所」の定義は明確ではないが、「越谷市まちの整備に関する条例」では公共施設扱いとなり、帰属は市となり、「食堂」「居酒屋」「カフェ」などは許可を得ないと設置できない。当然に建築基準法の建蔽率、容積率(該当地は50%、100%)や用途規制により店舗などは許可されない(非住宅部分が50㎡以下は可能だが)。

 「未来会議」は今後、これらの法律・条例の壁にぶち当たることになりそうだ。あらゆる手法を駆使してこの壁を乗り越えてほしい。近接する文教大学と連携するのもいいし、同社がまとめたCSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)の小冊子も参考になる。この前、取材し記事にした横浜市金沢区の「さくら茶屋」に学んでほしい。基本は「自助」だ。

 市もまた、条例の目的である「長年にわたり育まれた本市の歴史、地勢、社会的環境等に根ざした都市施策の継続及び計画的なまちの整備の推進を図る」(第1条)ことに背馳しないでいただきたい。

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「未来会議」

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 理解できなかったこともある。物件名だ。「フロード(FLOD)」はスウェーデン語で、「川」という意味だそうだ。スウェーデンといえは、全世界で8,900万部(シリーズ全体)が売れた、処女作品にして絶筆となったスティーグ・ラーソンの小説「ミレニアム」を思い出すが、いま戸建てもマンションも北欧ブームだ。各社が競って北欧をテーマにした商品を発売している。

 しかし、ここはストレートに「パレットコート 川沿い(リバーサイド)北越谷」とでもしたほうがよかった。井上陽水の「リバーサイドホテル」が大ヒットしたではないか。

 「毎年1万羽を超える野鴨などの渡り鳥が越冬のため飛来し」「鴨の狩猟期間(11月中旬から翌年2月中旬)に,天皇陛下の思召しにより内外の賓客の接遇の場として使用」(宮内庁ホームページ)されている、対岸の約12,000㎡の宮内庁「埼玉鴨場」にも一言。

 「棟下式」にも思ったのだが、この「埼玉鴨場」には北米などに広く分布する見事なメタセコイアの高木が植わっている。これはこれで美しいが、わが国では絶滅種のメタセコイアが植えられているのは、「1949年、日本と皇室がそれぞれメタセコイアの挿し木と種子を譲り受け、全国各地の公園、並木道、校庭などに植えられている」(ウィキペディア)ためのようだ。地元の人によると戦後、進駐軍が利用していたともいう。

 なるほど。メタセコイアは、わが国がアメリカの軍門に下る象徴的な樹木であるということだ。記者は国粋主義者ではないし、日本国憲法の精神は美しいと思うが、その理由を知ってしまった以上、反米感情が沸々と湧き上がる。「隠された日本の財産」という意味の日本の固有種のスギ(学名:Cryptomeria japonica)に植え替えてはどうか。どう見てもあの大男のメタセコイアは見事に腰が据わったサクラと似合わない。

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このメタセコイアそのものは美しいが、宮内庁「鴨場」にそぐわない 

業界初「棟下式」「お宝発見ツアー」大賑わい700名超 ポラス 開発予定地でイベント(2017/4/16)

住民主導のもう一つの「奇跡の街」 横浜・金沢文庫 西柴団地「さくら茶屋」見学(2018/2/14)

 大京グループのマンション管理事業を手掛ける大京アステージ穴吹コミュニティは2月15日、クオリカが提供する見守りサービス「あんしんリンク」を2 月21日より提供開始すると発表した。

 「あんしんリンク」は、離れて住む親に対して不安を持つ居住者に対して、スマートフォンやタブレット、パソコンなどから簡単に双方向でコミュニケーションを取ることができるサービス。

 例えば、親は家族からの問いかけに対して○×△マーク(「元気です」「すぐに連絡をください」「後で連絡をください」など)を押すことで簡単に回答できる。また、親世帯が外出しているのに人感センサーが動きを感知した場合や、親世帯の在宅時に、あらかじめ設定した温度以上に室温が上昇した場合、通報メールを発信する。

 料金は、両社の管理受託物件に入居する人は初期費用0円、月額1,944円(消費税など込)。

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 結構なことだと思う。しかし、スマートフォンからかかってくる電話をまともに取れない記者のような高齢者はどうするのか。音が鳴るだけで心臓麻痺を起こしそうになる人もいるはずだ。親から頻繁にメールが届いたらノイローゼになる子世帯もいるのではないか。

 いっそ、もちろん双方の了解の上だが、親の身体のどこかにタグを埋め込んで365日24時間、監視できるようにしたらどうか。人権団体から猛反対されそうだが。

 そのうちに、競走馬や肉牛と同じように生まれたときから識別番号を装着することが義務付けられる世の中にならないか。そうすれば犯罪は激減し、去勢馬のようにおとなしい平和な世界になる。

 三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントは2月15日、「(仮称)三井ガーデンホテル京都駅前」計画の概要を決定したと発表した。

 萩乃家が所有する土地に三井不動産がホテルを建築し、三井不動産ホテルマネジメントが三井ガーデンホテルとして運営を行うもの。開業は2019年夏を予定している。

 計画地は、JR京都駅(中央口)から徒歩3分、京都市下京区東洞院通七条下る東塩小路町に位置する敷地面積782.66㎡の10階建て延床面積5,212.53㎡。客室数136室(予定)。設計・施工は佐藤工業。

 これにより、同社グループの京都市内でのホテルは「京都三条」、「京都四条」、「京都新町 別邸」、「京都祇園」に続き5軒目となる。

 昨日(2月14日)、不動産経済研究所が今年1月の首都圏マンション市場動向調査をまとめ発表した。

 新規発売戸数は1,934戸(前年同月比39.7%増)で、月間契約率は65.2%(同3.6ポイントアップ)となった。1戸当たり価格は5,293万円(同23.4%ダウン)、坪単価は260万円(同19.3ポイントダウン)となり、即日完売は三井不動産レジデンシャル「パークホームズ山王二丁目ザ レジデンス」1期4戸の1物件にとどまった。

 この数字をどう読むかだが、その前に、この種のマクロデータに一喜一憂してはならず、慎重に読む必要があることを示そう。

 同研究所の前月2017年12月の首都圏マンションは6,480戸の供給量に対して月間契約率は72.5%となり、好不調ラインの70%を上回った。しかし、この中には、即日完売した「ザ・タワー横浜北仲」1 期730戸と、大和ハウス工業他「プレミスト湘南辻堂」1 期120戸が含まれており、この2物件を除くと月間契約率は68.3%となり、「マンション市場は不調」となる。

 マクロデータをそのまま鵜呑みにすると間違った判断をしてしまう好例だ。

 話を戻すと、1月の即完物件が1物件、しかも4戸のみとは情けない。記者もいやな予感をしていたのだが、このままではこの先悲観的な見方をせざるを得ない。年初は株価の上昇で始まり、日経平均は3万円もあるのではといった景気のいい観測も流れ、デフレ脱却宣言も近いと思われたが、世界同時株安に引きずられるように日経平均株価も急落した。

 それでもわが国のファンダメンタルズは悪くないので、これ以上マンション市場が悪化するとは考えていないが、目先市場は、安倍総理が経済界に要請している春闘の「3%の賃上げ」が実現するかどうかにかかっている。

 実現すれば、3月末に発表される地価公示も上昇・回復基調であるのは間違いなく、過去もそうだったように、市況は活気づく。

 逆に賃上げが不調に終われば、期待感は一挙にしぼみ、このままの底這いが続くのではないか。消費増税は再々延期というわけにはいかないだろうが、10%増税が実施されることになれば多少の駆け込み需要は期待できるかもしれないが、その反動のほうが怖い。

 そうなると、それはそれで結構なことだが、消費者は価格が安い中古(既存)市場に向かう。不動産流通各社も必死で攻勢をかけている。政府の「流通倍増」の後押しを受け、新規店舗の開設からインスペクションやら買い取り保証、つなぎ融資、ホームステージング、ハウスクリーニング、設備保証などなど至れり尽くせりのサービスメニューを用意。新規需要層への切り崩しを狙う。

 そこで、マンションデベロッパーにお願いだ。ビルや商業施設の見学会はたくさん行われているが、マンション見学会は最近減っているような気がしてならない。価格競争ではなく商品企画力を問う見学会を頻繁に行えば、業界は活気づき消費者にも伝わる。需要は創造するものだ。

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「クリオ横濱本牧」

 明和地所が分譲を開始した「クリオ横濱本牧」のモデルルームを見学した。最寄り駅のJR山手駅まで徒歩19分だが、横浜駅までのバス便もあり、同社は「横浜駅圏」をアピールしている。単価も約215万円前後と安く、第1期20戸がほぼ完売した。同社は早期完売を見込んでいる。同エリアでは7年ぶりの供給。

 物件は、JR根岸線山手駅から19分(横浜駅改札口前バス停から急行利用で約16分)、横浜市中区本牧町1丁目に位置する7階建て全66戸。現在、第1期の20戸がほぼ完売。引き続き分譲中の住戸の専有面積は54.72~75.40㎡、価格は3,453.0万円~4,836.4万円。坪単価は約210万円。竣工予定は2019年4月上旬。設計はいしばし設計。施工は南海辰村建設。

 現地は、小学校まで徒歩6分、徒歩10分圏に幼稚園、保育園が複数ある住宅地の一角。建物は山手通り面した7階建て。エントランスアプローチに「前庭」、エントランスホールの先に「中庭」、エレベーターへと続く動線に「通り庭」を設けているのが特徴。

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 「駅から徒歩19分」の広告表示なら、まず売れないと判断しがちだが、同社の読みはそうではない。同社はもともと神奈川県が本拠で、これまで465棟22,139戸(同社公表)を供給している№1デベロッパーだ。需要動向は熟知しているはずだ。

 担当者は「横浜までバスの本数は1時間に20本以上。山手駅までフラットだが、歩いている間に横浜駅に着く。反響はものすごくいい。マンションや戸建てからの買換えも期待できる。『北仲』の価格をみなさんご存じ。価格の安さがアピールできるはず。竣工までに売れるはず」と自信を見せる。

 確かに、横浜やみなとみらい、北仲と比べると単価は半値に近い安さだ。ユーザーがどのような反応を見せるか。

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いつもこのように賑わう「さくらカフェ」(NPO法人さくら茶屋にししば・阿部氏提供)

 今年1月23日付の当欄記事「第2回『』住宅団地再生連絡会議』」で、「8つの先進事例で一番面白かったのはNPO法人さくら茶屋にししば・岡本溢子氏(74)と阿部茂男氏(68)の報告だった」「必ず取材してレポートする」と書いた。約束通り、先週の木曜日(8日)、その活動拠点「さくら茶屋」と「さくらカフェ」を訪ねた。

 「さくら茶屋」は、京浜急行金沢文庫駅から徒歩15分、横浜市金沢区の西武不動産(当時)が昭和40年代に開発した「西柴団地」(約1,700区画)のヒルトップに位置している。2階建て木造の1階部分の空き店舗を利用したものだ。広さは20坪くらいか。

 横浜市の「まち普請」コンペに当選し2005年にオープンして以来、様々な活動を展開し、2006年には国土交通省の「街づくり功労賞」を受賞し、メディアにもしばしば取り上げられている。

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以上、阿部氏提供

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 この種の昭和40~60年代にかけて分譲された首都圏近郊の大規模団地がバブル崩壊と加速する少子高齢化の波に飲み込まれ、コミュニティの維持が困難になり、瀕死の状態に陥っているところもある。5年前、ある「限界集落」をレポートしたときは、影響が怖くて団地名を伏せたほどだ。

 「西柴団地」を中心とするこの地域の高齢化率は、区の高齢化率27.7%(横浜市全体は23.6%)を超えるのは間違いない。にもかかわらず、困難をもろともせず「終の棲家としてこの街を愛し心豊かに楽しく暮らせることを願って」(NPOホームページ)活動している。

 取材の目的はただ一つ-その元気はどこから湧いてくるのか-それを自分の目で確かめることだった。

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「さくら茶屋」(左)と「さくらカフェ」

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レンタルボックス

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 午後1時過ぎ。「さくらカフェ」はお年寄りであふれかえっていた。恒例の「朗読会」で、参加者は約20名。川崎洋、井上ひさし、谷川俊太郎、河合酔茗、茨城のり子などの作家、詩人の名作をみんなで朗読するのだそうだ。(特養や老人ホームのお遊戯とはまったく異なるはず)

 「さくらカフェ」は満席なので、すぐ近くにある「さくら茶屋」に場を移して、取材目的の一つである人気ランチを食べることにした。地元の白ワイン1杯と日替わり中華ランチを注文した。1,080円。

 隣の席では、かつては小野小町か大和撫子かともてはやされたに相違ない女性二人が同じランチを食べていた。西宮市出身のAさん(84)と北海道出身のBさん(88)だ。(記者は嘘を言わない。お二人の顔はさくら色に輝いていた)

 早速、声を掛けた。岡本さんに仲介役になっていただき、写真を撮らせてもらうことにも成功した。以下、二人の会話。記者は、麺がのびるのもお構いなしに二人の会話にほとんど口を挟まず聞いた。

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岡本さんがお勧めの地ワイン「おっぱまワイン」

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記者が食べた「中華ランチ」600円(これに仲間が作ったスモークチーズを頂いた)

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 「ここを買ったのは昭和54年。西武不動産が高級住宅地という触れ込みで建て売りで分譲したの。当時、久我山の社宅に住んでいて、磯子プリンスホテルで抽選があるというので夫は朝4時半に起きて、並んで当選したの。土地が75坪。確か1,000万円くらいだった。バブルのころは1億円以上の値が付いたけど…。不動産屋が売ってくれって言ったけど、買ったらまた同じくらいの値段がするから同じことよね。今? 売らないわよ。不動産さん屋に聞くと、土地が広すぎて値段が高くなるから売れないんだって。でも、ここは温かい、気持ちが。喧嘩などしない。海も近いし、公園もある。夫が死んでから18年かしら。息子が1人いるけど、住んでいるのはわたし一人」

 「わたしの夫は銀行員。25歳で札幌から出てきたのよ。若かったわね。最初に日吉に住んで、そして目黒の社宅だったわよ。うちは74坪。安かったよね。子どもは2人。息子が5年生、下の娘は2歳半のときよ。娘は日航。だから飛行機はただ。北海道? もう親も死んじゃったし、帰ることはないわね。そう、いまは息子夫婦と住んでるの。息子? 今年61歳になるのかしら」

 「Bさんは苦労してるよね。でも若い。ビンビン」

 「…49歳で未亡人になっちゃった。そう、(夫は)病気で死んだの。銀行だったから、保障されてたし、生活は困らなかったわね。わたしね、洋裁をやっていてね、三越の養成所で学んだの。だから、結構繁盛して、次々に注文が舞い込んだの。紳士服も作ったわよ。ほら、ここの椅子のカバーも布は寄付だけど、わたしが拵えたの。いま着ているセーターも自分で編んだのよ。ここはいいわよ、誰かに会える。毎日来てるわよ。時間無制限。食事して、コーヒーを飲んで、馬鹿言って。これからまたお友だちのところへ行くの」

 隣の八百屋の主人(73)にも話を聞いた。「実はわたしは脱サラ。40年やっている。当時は魚屋、米屋、肉屋…何でもあったが、どんどんなくなって。豆腐も地元の手作りのものを置いているし、魚も変なものは売れない。みんな知ってるから。吟味している。花も置いているが、結構売れる。そう、さっきも5,000円の注文があった。後継者? わたしの息子は継がないが、仲間の息子さんがよくやってくれている」

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Aさん(左)とBさん(いわゆる取材用の〝さくら〟じゃありません。たまたま居合わせたさくら色のお二人です)

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 記者が「奇跡の街」と呼ぶ街がある。山万の「ユーカリが丘」だ。このユーカリが丘の開発が始まったのも昭和46年だ。山万はその後、他の事業を捨て、自ら退路を断ってこの街とともに生きていくことを決めた。掲げるスローガンは「千年優都」だ。(「奇跡の街」と「ユーカリが丘」で検索したら、どこかのライターが同じ「奇跡の街」と書いていた。最近だ。村上龍氏もそう呼んだらしいが、これはいかがなものか。気安く呼んでほしくない。ずっと街を見続けているから言えるのだ。記者は10数年前からこう呼んでいる。見出しにも魂を込める)

 この街もまた居住者自らが主導する「奇跡の街」だ。神輿を担ぐ人も乗る人も見る人もみんな〝身内〟だ。〝一人はみんなのために、みんなは一人のために〟-もはやこの言葉は死語かと思っていたが、どっこい生きている。

 平成28年度のNPO法人さくら茶屋にししばの事業報告書には、サロン事業でのランチ提供件数は10,222食で過去最高、歌の集いなどの夜話参加者は延べ403名、認知症カフェ参加者は244名、体操教室には274名、認知症予防のぼたんの会参加者は171名、買い物支援件数は176件、ポールウォーキングには377名、2,800世帯を対象にした毎月発行の広報誌発行には20人が携わり、朝7時30分から8時までの小学生の登校前の朝塾には5名が従事しているなどの数字が並ぶ。収益約1,450万円に対し費用は約1,314万円。人件費はゼロ。ほとんどがボランティアによって賄われている。

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「西柴団地」のメインストリート

「さくら茶屋にししば」など全国先進事例を報告 第2回「住宅団地再生連絡会議」(2018/1/23)

奇跡の街〟山万「ユーカリが丘」「電気バス社会実験」出発式(2009/4/24)

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「Business-Airport Kanda」エントランス 

 東急不動産は2月13日、会員制会員制サテライトオフィス「Business-Airport」の6店舗目となる「Business-Airport Kanda」を3月30日に開業すると発表した。

 東京メトロ銀座線神田駅から徒歩1分、千代田区神田鍛冶町三丁目に位置する約710㎡。サービスオフィス27室、シェアワークプレイス、ミーティングルームなど。運営は同社の100%子会社ライフ&ワークデザイン。賃料はシェアワークプレイス会員のプライベート会員9,000円/月(利用時間8:00~10:00、17:00~20:00のみ利用可)、マスター会員30,000円/月、アドレス会員60,000円/月。サービスオフィス会員100,000円~/月。

 同社はこれまで会員制会員制サテライトオフィス「Business-Airport」を「青山」「品川」「東京」「丸の内」「六本木」に開設している。

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青木氏の退官記念講演会(首都大学東京 南大沢キャンパスで)

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青木氏

 「リファイニング建築」の考案者である首都大学東京特任教授・青木茂氏が平成30年3月末で退官するのを記念する講演会が2月10日、同大学南大沢キャンパスで行われた。大学の関係者のほか設計、不動産、建築、金融機関など幅広い分野から定員いっぱいの約200名が集まり、青木氏の最後の講演に耳を傾けた。

 青木氏は、「首都大学での10年を振り返って」と題し、約1時間30分にわたり、リファイニング建築を中心にこれまでの波乱万丈を語った。

 一級建築士の資格を取得し事務所を開設して間もないころ、転機となった安藤忠雄氏との出会いについて、「車を買うために貯めていた100万円を、妻の了解を得て、安藤氏が企画したヨーロッパ旅行に注ぎ込んだ。旅行中、安藤氏からは『お前、なにも知らんなぁ、阿保やなあ』と言われ続けた。この前、お会いしたとき初めて褒められた。この間35年間を要した」などと会場を笑わせた。

 最後は、「リファイニング建築はマニュアルや指針はまだ日本にはない。調査・企画・再生設計・工事監理の一連の流れと、金融機関との資金調達の枠組みは構築できた。優秀なスタッフも育っており次の世代へつなげたい」と締めくくった。

 退官後にやりたい仕事については、「分譲マンションの再生に取り組みたい。合意形成など大きな壁があるが、行政を巻き込んでスムーズに再生できるようにしたい」と語った。

 記念講演後は南大沢駅近くで退職記念祝賀会を盛大に行った。参加者には全員、青木氏の近著「リファイニング建築が社会を変える」(建築資料研究社)がプレゼントされた。

 青木氏は1948年生まれ、69歳。大分県出身。1971年、近畿大学九州工学部建築学科卒。1977年、アオキ建築設計事務所設立。1990年、青木茂建築工房に組織変更。2006年、首都大学東京大学院工学研究科非常勤講師。2007年、東京大学工学博士号取得、同年、東京事務所開設。2008年、同大学戦略研究センター教授(~2012年)。2013年、同大学特任教授、現在に至る。グッドデザイン賞、日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)など多数受賞。著書は「再生建築 リファイニングで蘇る建築の生命」(2009年、総合資格)など多数。

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青木氏について語る上野学長

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吉川氏(左)と関係者による花束贈呈

以下、主な参加者のコメント。順不同

 首都大学東京教授・吉川徹氏 先生は耐震偽装の時にデビューされ、その後、八面六臂の活躍をされた(メインは青木氏であることを弁えてか、いつもの軽妙な発言はなかった)

 首都大学東京学長・上野淳氏 当時、深尾先生と相談し、世界で一流だったらということで通常の特任教授の採用枠を超えて青木先生を招いた。なによりみんなを元気にしてくれた。わたしと青木先生、深尾先生は同学年の同期(上野氏と青木氏は今年70歳・古希を迎える)

 首都大学東京名誉教授・深尾精一氏 (すごいですね、最近の国土交通省の難しい問題はすべて先生が長として解決されているが)〝困ったときの深尾だよ〟(まんざらでもなさそうだった)僕はまだ68歳だよ

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〝われら同期同学年の古希トリオ〟左から深尾氏(僕はまだ68だよ)、11月に70になる青木氏、8月で古希を迎える上野氏

 都市環境研究所・平嵜大地氏(平成27年3月卒) 先生は学生が圧倒されるエネルギーがある。金融機関と連携することまで仕組みをつくられた。今のコンサルの仕事に役立っている。タイでのワークショップで椙山女学園大の彼女と知り合い、今春結婚することになったが、先生が仲人のようなもの。感謝しかない

 環境未来フォーラム代表理事・前田武志氏(元国土交通大臣) 〝青木ファン〟の一人。わたしは〝コンクリから人へ〟がスローガンだった民主党政権の時に国交大臣になったが、旧耐震などのコンクリ建築物を再生するという、持続可能な国づくりを進めるには青木先生以外にないと思った。この先2025年問題など難しい問題が山積している。先生のリファイニングを何とかシステム化できないか 

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前田氏

 林製作所総務部長・林博之氏  父(78)が「林マンション リファイニング工事」のオーナー。わたしは3代目。あそこにずっと住んでいた

 軽石実一級建築事務所・軽石実氏 わたしは構造が専門。建築全体の中で構造は2~3割。先生は総合的に把握されているからものすごく楽

 建築家・難波和彦氏(東京大学名誉教授)青木先生の博士号論文はわたしが主査として審査した。「住みながら再生」というハードルがもっとも高いテーマを選ばれた。天職といってもいいいが、青木先生は誰も真似ができないリノベーションに関する暗黙知のようなものを持っておられるように思う。僕も71歳だが、青木先生にはあと10年は頑張っていただきたい

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難波氏

 ミサワファイナンシャルサービス社長・田中博臣氏 今度3月1日にも富士見2丁目ビルのリファイニングが竣工する

 三井不動産ソリューションパートナー本部レッツ資産活用部部長・井上純氏 分譲マンションは区分所有法の壁があるので…しかし、ワンオーナーの賃貸はこれからも継続して先生にお願いしたい

 太陽エコブロックスAM営業推進部副部長・大谷卓也氏 当社の社長は先生と30年来のお付き合い。昭和61年に竣工した本社屋は安藤忠雄先生の設計・監理

 コプラス設計部マネージャー・永久正浩氏 これからメディアに発信できる案件がいくつかある

◇          ◆     ◇

 記者は最後列で聴きながら、参加者の様子もしっかり眺めていた。定員いっぱいの会場は、席を立つ人は言うまでもなく、それこそ水を打ったように静まり返った。しわぶき一つ聞こえず、舟をこぐ不届き者など一人もいなかった。青木氏の最後の講義を聴き逃すまいと耳をそばだてていたに違いない。

 時々、少なくとも5回は青木氏が発するジョークに対する笑い声が漏れた。それは建築の専門家でなくては理解できないような隠語ではなく、今年古希を迎える青木先生の活舌に問題があるわけでもなく、素人の記者でも理解できる内容だと思ったが、安藤氏との出会いのくだり以外はさっぱり聞き取れなかった。相当耳が遠くなったことを自覚させられた。

 講義が始まって1時間20分が過ぎた頃か。講演などを聴くのは1時間が限度の記者は〝いつまで続くのだろうか〟と考えていたら、だしぬけに、咳がこみ上げてきた。これ幸いと、そっと会場の外に出た。

 寒い外では学生さんらしきスタッフが受付を行っていた。「さすがですね、首都大学は。居眠りする人など誰一人いない」と声を掛けたら、「好きなことをしゃべり、聴いているだけですから」とこともなげに答えた。

 ついでにタバコを吸おうと思い、喫煙室を尋ねたら「うちの大学は喫煙室は多いほう」とそのスタッフは喫煙室近くまで案内してくれた。学内での全面禁煙を実施する大学は増えているが、さすが首都大学東京だ。

 タバコをゆっくり吸い終えて会場に戻ったら、ちょうど講義が終わった時だった。拍手喝采が会場を満たした。花束贈呈に間に合ってよかった。

「多摩NTにおける人的不良在庫」 吉川徹・首都大教授が軽妙発言(2016/6/6)

三井不&青木茂建築工房 築52年の市場性ない共同住宅をリファイニングで再生(2017/10/16)

 

 

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総合受付(3階)

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吉田社長

 三菱地所は2月9日、新本社ビル「大手町パークビルディング」のオフィスを報道陣に公開した。吉田淳一社長自らがプレゼンし、社員が仕事中にも関わらず担当者が案内し、劇的にファシリティが向上し、社員の士気が高まったことをアピールした。社員食堂では試食会も行った。

 他のチームメンバーと同様、スタジアムジャンパーに身を包んだ吉田社長は、移転の背景・経緯などについて説明。「オフィスを取り巻く環境の急激な変化を先取りし、われわれ自身がオフィス空間の情報を発信し、働き方を変えたりアイデアを伝える必要性が高まっている」と移転の理由を語った。

 そのため「以前は役員が個室の中に閉じこもり、部長が窓際に君臨していた昔ながらの形状」ではなく「物理的にも心理的にも壁をなくした。新本社のコンセプトであるBorderless!Socializing!from MEC PARK、あらゆる境界をなくし、本当の意味で人と人とが繋がり力が発揮できる空間を実現した」と強調。「AIやIoTを取り込みながら生産性の向上、ビジネスモデル革新、ワークライフバランスの向上、人材の確保などこれまで以上にダイバーシティ、働き方改革を進め、好循環を生み出し、実証実験などを通じて街づくりへと展開していきたい」と力を込めた。

 新しいオフィスは大手町駅に直結。皇居に隣接する29階建て延べ床面積約151,700㎡の3~6階部分で広さは約3,600坪。「大手町ビルヂング」から今年1月5日に移転した。

 全体の面積は約2割狭くなったが、共有スペースは面積ベースで2倍に増やし、オフィス全体の3分の1を占めるように設計。画一的な空間ではなく、社員は、その日の業務スタイルによって好きな場所を選べるグループアドレスを採用。役員個室もなくした。

 平面だけでなく縦方向の交流を生み出すためフロア間の境界をなくしているのも特徴。2カ所に配置した「内部階段」は、蹴上を約15㎝、踏み面を約30㎝確保している。

 制度改革では、従来から実施しているフレックス制度(コアタイムは10時から16時)に加え、テレワーク、仮眠、インターバル勤務制度などを導入。

 ビルのテナントでもあるLiquidとコラボし、指紋によるセキュリティと、日本初の指認証と個人口座を連携した社内カフェテリアで利用できる決済システムも導入。将来、街全体で展開することも視野に入れている。

 パナソニックの協力のもと、役員も含めた社員の社内位置情報システムも採用。誰が、どこにいるかも把握でき、カフェテリアや共用スペースの混雑度も一目で確認できる。

 3階の総合受付では、日立製作所のサービス支援ロボット「EMIEW3」が来客者を会議室まで案内する。

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右から吉田社長、久保氏、竹本氏

⑩業務はもちろん打ち合わせや食事にも使えるラウンジ.jpg
多目的に利用できるラウンジ

④オープンスペースでのミーティング.jpg ⑤グループアドレスの執務空間.jpg
職務スペース

◇      ◆     ◇

 昨年2月、大手町パークビルが竣工したとき、本社をここに移転する話を聞いていた。どれほど素晴らしいビルであるかは、添付した記事を参照していただきたい。

 他の業界、会社のことは知らないが、社員が仕事中の本丸オフィスを報道陣に公開する会社はあるのだろうか。さすがに社長室の位置は公表せず、皇居方面や仕事中の社員の写真は不可だったが、記者が知る社員から声を掛けられる場面もあり、その鷹揚さに驚愕した。移転の効果がてき面であることは、様々な数字・データが証明している。

 「大手町ビル他」では約4,500坪(うち共用スペース約10%)が7フロアに分散していたが、「大手町パークビル」では約3,600坪(同約30坪)が4フロアに集約された。この結果、紙出力枚数は約50%、キャビネ本数は約70%削減されたという。

 本社移転に伴うファシリティに対する社員アンケート結果がまたすごい。90%の社員の満足度がアップし、88%が「偶発的なコミュニケーションが増えた」と答え、86%が「企業風土は変わる」と回答。「会議は効率化された」と思う人は89%に達し、「ペーパーストックの取り組みにより業務は効率化されたと思う」人は65%にのぼっている。

 慣れないためか「上司とのコミュニケーションがとりにくくなった」とする回答が27%あった。これについて久保人司総務部長は「問題だとはとらえていない。メンター制を向上させればカバーできる」と話した。

 機能が一新され、社員の士気が高まったことを、執務中の湯浅哲生常務が端的に語った。

 「これまではここより1.5倍くらい広い(6畳大くらいか)の個室で、今回はやや狭くなった(4畳大くらいか)が、壁が取っ払われてスタッフの声が聞こえ、お互いの交流も見えるようになり〝開放〟された印象。機密漏洩? 大事な話は防音室に移るから問題ない」

 社員は上司に近づこうが避けようが、きれいな女性(イケメンの男性)の近くに座ろうと自由だというから驚きだ。「わたし(記者)のような嫌われ者は誰も隣に座らないのではないか」と質問したら、総務部ユニットリーダー兼ファシリティマネジメント室長・竹本晋氏は「大丈夫。席が余るような配置にはしていない」と話した。

 サービス支援ロボット「EMIEW3」は、記者が大きな声を出したためか、西日が目に入ったためか機嫌を損ね、ガラスの壁に激突しそうになり、スタッフが慌てて制する場面もあった。

 「内部階段」を報道陣も3階から6階まで一挙に駆け上がったが、音を上げた記者はいなかったはずだ。

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湯浅常務

⑧文房具からスナック、飲料まで手に入るカウンター.jpg
「PERCH」

⑪フロア間をつなぐ内部階段.jpg ⑭指紋認証_認証の様子.jpg
内部階段(左)と指紋認証セキュリティ

◇       ◆     ◇

 2時間をかけた盛り沢山のプレゼンやオフィス内覧を終えてから、社員食堂「SPARKLE」での試食会が行われた。

 記者はタニタ社員食堂を利用したことがないが、ホテル・旅館のバイキングや役所、図書館、大学の食堂などは何度も利用している。そのレベルはわかっている。「SPARKLE」を運営するノンビの取締役ケータリング事業部事業部長・荒井茂太氏が「ホテルに負けない」と話したときも、半信半疑で聞いていた。

 しかし、朝から何も食べていなかったし、物は試しだ。供された「チェリートマト」10個くらいとサラダを食べた。トマトだけは自信があるからだ。カロリーを抑え、血液と同じ記事をさらさらと書ける効果もあると信じているので、ほとんど毎日食べている。「キャベツ500円は高い」とぼやくかみさんとも、トマトだけは「1個200円の価値はある」と意見が一致する。

 そんな口が悪いが舌が肥えた記者が言うのだから間違いない。この愛知県産のチェリートマトは最高に美味しい。名前の通り佐藤錦の新種かとも思ったほどだ。荒井氏の「ホテルに負けない」言葉に嘘はない。アメーラと比べるとやや酸味に欠けるが、甘さは抜群だ。

 ここでは朝の7時から8時半までは無料で朝食が食べられる。毎日100食を用意しているが、残ることはないという。

③カフェテリア「SPARKLE」_1.jpg
「SPARKLE」

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チェリートマト(中央)

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荒井氏

◇       ◆     ◇

 注文が1つ。各フロアに設置された「止まり木」を意味する「PERCH」。広さ10畳大はあっただろうか。ふんだんに本物の木が使われ、各種飲料やスナックも用意されていて素晴らしいスペースだ。ところが、本物の木にまとわりついている観葉植物は一目見てフェイク(まがいもの)だと分かった。これは興ざめ。なくすか本物を用いるべきだ。社員の諸々の作品を展示するギャラリーもいいのではないか。

 お願いも一つ。勤務中のアルコール禁止について。トイレや仮眠室、シャワー室に閉じこもり、タバコを吸いに何度も席をはずそうと、メタボの社員が何を食べようが何のお咎めがない(60分以上勤務エリアから外れると外出扱いになるという)のに、職務中は酒を飲んではならないという社内規則があるという。

 これが解せない。記者の個人的見解を言わせていただければ、砂糖やらその他の怪しげな甘味料にまみれたスナック、飲料のほうが危険だと思う。「酒は百薬の長」というではないか。

 これこそ実証実験の対象にして、社会に情報を発信していただきたい。酒を少し飲んだからと言って生産性が落ちるとは思えない。逆に能率を上げる潤滑油か触媒のようなものだ。

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靴を脱いでくつろげる小上がりスペース

◇       ◆     ◇

 本社では約800名が勤務するというから単純に3,600坪で割ると一人当たり勤務スペースは約4.5坪になる。ビルの賃料は公開されていないが、まず坪45,000円は下らない。同社が賃借するとすれば一人当たり20万円だ。効果が現れる来年度の決算が楽しみだ。RBA野球部は大丈夫か。

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サービス支援ロボット「EMIEW3」(ちょっと西日がきついよ) 

皇居に隣接 最高級Sクラスの「大手町パークビルディング」竣工(2017/2/14)

 

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