4月の中古マンション・戸建てとも成約減り、価格上昇続く 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は5月13日、首都圏の2022年4月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,094件(前年同月比9.7%減)で4か月連続して前年同月を下回った。成約坪単価は226.8万円(同16.3%上昇)で20年5月から24か月連続、成約価格は4,363万円(同14.0%上昇)で20年6月から23か月連続してそれぞれ前年同月を上回った。専有面積は63.5㎡(同1.9%縮小)となった。在庫件数は37,360件(同9.3%増)、在庫坪単価は240.1万円(前年同月比13.3%上昇)となった。坪単価は18年2月の190.1万円から51か月連続、26.3%上昇している。
地域別では、成約件数はすべての地域が前年比で減少が続き、埼玉県は前年比2割台、横浜・川崎市と多摩、千葉県は1割台の減少となった。成約単価はすべての地域が前年比で上昇が続き、東京都区部は24か月連続、横浜・川崎市と埼玉県は23か月連続、千葉県は21か月連続で前年同月を上回った。
中古戸建ての成約件数は1,190件(同11.7%減)となり、4か月連続で前年同月を下回った。成約価格は3,664万円(同7.6%上昇)となり、20年11月から18か月連続で前年同月を上回った。土地面積は前年比3.5%縮小し、建物面積は同3.1%縮小した。
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中古市場のことはいま一つよく分からない。毎月の成約件数はこの1年間3,000件前後で推移している一方で、成約単価・価格、在庫坪単価がどんどん上昇し、在庫も積みあがっているのをどうとらえればいいのか。
成約坪単価は24か月前の20年5月は171.7万円から32.1%、成約価格は23か月前の20年6月の3,541万円から23.2%それぞれ上昇したことになる。単価の上昇幅のほうが大きいのは、その分専有面積が縮小しているためで、21年5月の65.08㎡から11か月連続して縮小している。
問題はこの先どうなるかだが、さっぱり分からない。可処分所得はこのところ伸びているようだが、円安による物価高は家計を直撃し、新型コロナも第7波が懸念され、ロシアのウクライナ侵攻も収束する気配がない。
中古市場と連動する新築住宅市場は、マンションの着工戸数が減少していることから供給は減ることになるだろうが、分譲価格を左右する建築資材・労務費が上昇するのは間違いない。価格はすでに一般的な世帯の取得限界を超えている。大幅なローン金利の引き上げはないと読んでいるが、マインド一つで新築も中古も市場は崩れる可能性があるとみている。
この1か月の新築マンション市場は来場者が減り、成約も伸び悩んでいるという声を聞いた。これまで市場のターニングポイントはなぜか正月休み明け、ゴールデンウイーク明け、夏休み明けが多い。踊り場に差し掛かっているのかもしれない。現場取材が激減しているのも不安を増大させている。
業界初 屋上・外壁からの漏水18年保証 CO2排出量38%削減 三井不レジ「志木」
「パークホームズ志木コンフォートテラス」
三井不動産レジデンシャルは5月10日、業界初となる屋上・外壁からの屋内漏水18年保証の高耐久部材をマンションに採用すると発表した。これにより試算上、国土交通省ガイドライン推奨周期と比べて60年間で大規模修繕工事回数を2回減らすことが期待されるとしている。第一弾の「パークホームズ志木コンフォートテラス」を7月から分譲開始し、今後順次展開する。
高耐久部資材は、建物外皮の劣化抑制効果が期待される①タイルはく離・はく落防止性能が優れる外壁タイル張りに「有機系接着剤」②屋上アスファルト防水に「高反射塗料」③耐候性・耐久性にすぐれた外壁シーリング材-の3点セットからなる。
これにより、マンション業界では初めてとなる新築時の屋上および外壁から屋内への漏水保証について、現行の10年間から18年間に延長し、大規模修繕工事を長周期化することで、運用段階のライフサイクルCO2排出量を約38%削減できるとしている。
「パークホームズ志木コンフォートテラス」は、東武鉄道東上線志木駅から徒歩7分、埼玉県新座市東北1丁目に位置する8階建て135戸。専有面積き56.66 ~83.24㎡。竣工予定は2023年11月上旬。施工は長谷工コーポレーション。販売開始予定は2022年7月中旬。
第2回グリーンインフラ優秀賞受賞 フージャース「つくば」のマンション
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
フージャースホールディングスは4月28日、グループ会社のフージャースコーポレーションの「デュオヒルズつくばセンチュリー」が第2回グリーンインフラ大賞「生活空間部門」優秀賞を受賞したと発表した。
グリーンインフラ大賞は、国土交通省が事務局を務める「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」において、グリーンインフラに関する優れた取組事例を表彰し、広く情報発信することを目的に令和2年度に創設された表彰制度。第2回グリーンインフラ大賞では、全国から応募のあった27件の取組事例から、国土交通大臣賞(4件)と優秀賞が発表された。
「デュオヒルズつくばセンチュリー」は、茨城県つくば市の公務員宿舎跡地開発。産官学及び地域との連携の下、敷地境界線をシームレスにつないだ空間設計、開発地隣の公園(つくば市所有)の緑化リニューアルを行い、公園とマンションの敷地境界を取り払い、エリアに地元で人気のベーカリーカフェを誘致。公園の価値を維持する仕組みづくり及び地域コミュニティの場の創出のためのボランティア団体「つくばイクシバ!」を立ち上げ活動を行っている。公園利用人数は、リニューアル前後で283%増加した。
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とてもいい表彰制度だと思う。同社の「デュオヒルズつくばセンチュリー」は見学取材しており、記事にもしているのでぜひ読んでいただきたい。このような取り組みが全国に広がることを期待している。「公園」を住民から切り離すことしか考えていない自治体には刺激となるはずだ。
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「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」が発行した令和4年3月版「グリーンインフラ事例集」には100を超えるプロジェクトが掲載されている。デベロッパーが参画したプロジェクトも10件はある。分譲マンション事例はフージャースコーポしかないはずだ。
気になったのは、プラットフォームの会員構成だ。会員は都道府県と市町村の一号会員、関係府省庁の二号会員、民間企業、学術団体の三号会員、個人の四号会員からなり、2022年1月現在、一号は81、二号は9、三号は404、四号は838の合計1,332会員(設立当初は409会員)と増えてはいるのだが、一号会員は少なすぎる。全都道府県が会員になっているとすれば、市町村会員はわずか34にしか過ぎない。
何かにつけ官主導ではうまくいかないのは分かるが、都市公園などは各自治体が管轄していることを考えれば市町村会員が圧倒的に少なすぎる。各市町村を参画させることが課題ではないか。
「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動(2021/4/28)
坪1300万円でどうか 旧逓信省庁舎跡地の三井&三菱「三田ガーデンヒルズ」
「綱町三井倶楽部」庭園からの完成予想図
三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスが4月25日に発表した旧逓信省簡易保険局庁舎跡地(1929年竣工)の大規模マンション「三田ガーデンヒルズ」に注目している。今年最大どころか、両社が2007年に分譲した定期借地権付き「広尾ガーデンフォレスト」以来の究極の億ションになるとみているからだ。
物件は、東京メトロ南北線・都営大江戸線麻布十番駅から徒歩5分、都営三田線芝公園駅から徒歩10分、港区三田一丁目の第二種住居地域・第一種文教地区に位置する敷地面積約敷地面積 25,246.㎡、14階建て他全1,002戸。専有面積は29㎡台~370㎡台。竣工時期は2025年3月。設計・施工は大成建設。
分譲マンションとしては港区最大となる敷地面積約25,000㎡で、両社が共同で「ガーデンヒルズ」を分譲するのは「広尾ガーデンヒルズ」以来38年振り。敷地南側にジョサイア・コンドルが設計した歴史的建築物「綱町三井倶楽部」を望む立地であるのも特徴の一つ。
国内最大規模となる全戸ZEH-Orientedを取得する予定で、電気・ガスともに CO2排出量実質ゼロとなるサービスを導入、太陽光発電と中圧ガスを利用したオンサイト発電を有事の際にも活用するなどレジリエンス機能も強化する。
この他、帝国ホテルと提携したコンシェルジュをはじめワークスペース、ジム、ゴルフラウンジ、サウナや岩盤浴、シアタールーム、ミュージックルーム、カフェラウンジ、 バー、レストラン(店舗)などの共用施設、サービス提供を予定している。
設計デザインは、東京ミッドタウン日比谷を手掛けたホシノアーキテクツがメインで、新丸ビルを担当したロンドンを拠点に国際的活動を行う建築設計事務所ホプキンスアーキテクツが国内マンションのファサード・デザインに初参画。旧逓信省簡易保険局庁舎を一部保存・再生する。起伏がある敷地を利用して既存樹を含む植栽約130種による約7,700㎡のランドスケープを計画している。
中庭
旧逓信省簡易保険局庁舎階段室
旧逓信省簡易保険局庁舎 入口
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現地の旧逓信省簡易保険局庁舎は入ったことはないが、何度も眺めてはため息をついた。〝ここにマンションが建ったらどんな素晴らしいものになるか〟と。目の前はジョサイア・コンドルが設計した数少ない現存建築物「綱町三井倶楽部」があり、三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田日向坂」「パークマンション三田綱町」のほか、アパの高級賃貸マンション「THE CONOE三田綱町」、イタリア大使館、オーストラリア大使館、三田共用会議所、元神明宮(元祖神社)、赤羽小学校、都立三田高校などがある。
麻布十番駅近くでは約1,450戸のマンションを含めた「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」も進行中だ。
両社は今秋に販売サロンを開設すると発表した。メディア見学会も行われるはずだが、いつものように単価予想を試みる。ズバリ坪単価は最低1,300万円、1,500万円もあると見た。
根拠は、これまで分譲された大規模億ションのなかでもっとも住環境に恵まれており、最高レベルの基本性能・設備仕様が期待できるからだ。
比較する物件はないが、現地に近接する三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田日向坂」(18戸)が参考になる。2011年竣工物件で、リストグループが開発した高額物件に特化したAI査定システム「mAI List(マイリスト)」が昨年の価格上昇率トップに上げたマンションだ。分譲当初の平均価格約2.4億円(平均面積128.24㎡)から約4.0億円へ坪単価は625万円から1,022万円へ1.6倍に上昇している。
もう一つ、2014年分譲の三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町」(98戸)もある。坪単価725万円で瞬く間に完売した。ネットで調べたら、現在の中古価格は1,000万円を突破している。「THE CONOE三田綱町」も坪単価1,000万円超で分譲されると思われたが、急きょ賃貸に変更された。
これらより低くなることはありえない。ただ、戸数が多く、目先の社会経済動向も読みづらいので坪1,500万円となると自信はない。1,300万円くらいが妥当ではないか。自信はない。外れたからと言って責任は取らない。
帝国ホテルイメージ
究極の億ション 三井&三菱 「広尾ガーデンフォレスト」(2007/2/23)
三井不レジ・日鉄興和・三菱地所レジ・首都圏不燃公社 麻布十番近接の2.5ha再開発(2020/9/19)
「麻布霞町」を超えるか 三井不レジ「パークマンション三田綱町ザ フォレスト」(2014/7/4)
歴史は繰り返す――バブルから何を学んだのか「広尾ガーデンヒルズ」分譲開始は坪251万円(2008/10/27)
コンドルが設計した「綱町三井倶楽部」を観た 三井デザインテックがセミナー(2015/10/22)
価格の安さだけでない 植栽・外構 多彩な設備で差別化 大京「中浦和」
「ライオンズ中浦和フォレストフォート」
大京がゴールデンウイーク明けに分譲する「ライオンズ中浦和フォレストフォート」を見学した。物件コンセプトを"木立の中の別荘"としているように、価格を低く設定し、〝木〟を前面に打ち出した植栽・外構と機能的な設備仕様とすることで、差別化を行っている。
物件は、埼京線中浦和駅から徒歩7分(武蔵浦和駅から徒歩18分)、さいたま市南区関2丁目の第一種住居地域、第二種住居地域に位置する7階建て全111戸。5月13日に分譲予定の第1期(32戸の予定)の専有面積は66.07~84.19㎡、価格は未定だが坪単価は220万円になる模様。竣工予定は2023年8月1日。設計は安宅設計。施工は斎藤工業。売主は同社のほか大栄不動産。
現地は、敷地北側の志木街道のほか東側と西側に接道。敷地はL字型で、志木街道は都市計画道路があるため、建物は敷地から約7.7mセットバックさせ、南向き53戸、東向き26戸、西向き32戸の3棟がウッドデッキ・高木を配した中庭を囲むように配棟。約40mのアプローチにはサワラなどの高木を植える。別所沼公園には徒歩11分。
主な基本性能・設備仕様は、直床、扁平梁、2070ミリサッシ、リビング天井高2400ミリ、食洗機、顔認証、非接触エレベーター、引き戸多用、エコガラス、換気機能付き玄関ドア、ワークスペースとして利用できる窓付き1.5畳大の納戸(全住戸の約2割)など。共用部には宅配ボックスとメールボックスを一体化した宅配ボックス「ライオンズマイボックス」のほか、半個室とWi-Fiを完備したラウンジを設置する。
同社本店事業推進二部部長・小川新氏は、「〝木〟をイメージしたデザインや様々な機能を盛り込んだ商品企画が高い評価を頂いています。第1期では南向き中心の32戸の販売を予定しています。武蔵浦和のタワーマンションと競合はしていません」と話している。
エントランス
中庭
ワークスペースにもなる約1.5畳大の納戸
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モデルルームを見学する前に現地を確認した。倉庫とマンション、戸建てなどが混在しており、準工エリアではないかと思った。前面の道路幅10mの志木街道は交通量が多く、歩道も整備されておらず、街路樹などもないので坪単価は220~230万円くらいだろうと予想した(住環境がよければ坪単価250万円でも売れると考えた)。
ここで緑環境について。さいたま市は全域だと約48%と高いが、市街化区域では約29%だ。同社のマンションが所在する南区は23%で、最低の中央区の22%に次ぐ低さだ。記者が住む多摩市の緑被率は53.9%で、23区は24%であることと比較していただきたい。埼京線沿線には低層住居専用地域は一つもない。
この緑被率の低さはさいたま市に限ったことではなく、近隣の戸田市、川口市、蕨市などにも言えることだ。武蔵浦和にはタワーマンションが林立し、都内への利便性が高いために価格はどんどん上昇している。10年くらい前は坪200万円台の前半から中盤だったのが、今では350万円くらいになっている。
価格が髙いか安いか、これは検討者が評価することなのでこれ以上書かないが、武蔵浦和駅周辺の緑も貧しい。
話を元に戻す。大京のマンションを検討している人は市内居住者が多数を占めるはずで、緑環境はこれが普通と判断すれば、それほどマイナス評価しないのだろう。同社もよく弁えたもので、"木立の中の別荘"を前面に打ち出し、別所沼公園に近いことをアピールしている。
76㎡のモデルルームはよくできていた。前段で紹介したように、設備仕様レベルは高いと評価して単価予想を上方修正した。坪220万円というのは検討者も納得するのではないか。
リビング天井高が2400ミリなのは、市の建築物の絶対高さ規制が20mと定められているからだ。このことについてはたくさん書いてきた。何をかいわんや。どうして合理的根拠など一つもない20mにするのか。1層を3.1~3.3mとし、その倍数に定め誘導すればデベロッパーはみんな最低2500ミリを確保するはずだ。わが国の都市計画は根本的に見直す必要がある。
現地
武蔵浦和駅西口ロータリー(街路樹はモッコク)
武蔵浦和駅西口ロータリー
樹脂サッシ、ミストサウナ…水準以上 大成有楽不のコンパクト「両国」
「オーベルアーバンツ両国」
大成有楽不動産が6月に分譲する「オーベルアーバンツ両国」を見学した。都営大江戸線両国駅から徒歩3分、京葉道路に面した全49戸のコンパクトマンションで、防音・遮熱対策に樹脂サッシを採用しており、その他設備仕様レベルも水準以上だ。商品企画に手抜きはないとみた。
物件は、都営大江戸線両国駅から徒歩3分、JR総武線両国駅から徒歩8分、墨田区緑一丁目の商業地域に位置する14階建て全49戸(事業協力者住戸8戸含む)。第1期(戸数未定)の専有面積は33.77~40.74㎡、予定価格は3,900万円台~5,500万円台(最多価格帯4,100万円台・4,200万円台)。坪単価は400万円台の前半になる模様。竣工予定は2023年6月下旬。設計・監理は安宅設計。施工はライト工業。
現地は、敷地北側の歩道を挟んで京葉道路に隣接。建物は、幅員約35mの京葉道路の拡幅計画があるため、歩道から約4.2mセットバックして建設。基準階は1フロア3~4戸。全戸北向き。
主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高約2,500ミリ、二重サッシの居室側は樹脂サッシ、床暖房、ミストサウナ、三ツ口コンロ、タンク横のキャビネット付きトイレ、壁付洗面水栓、コスメポケット、浴室タオル掛け、全住戸Wi-Fi(1か月1,980円)、物干しポールなど。
同社マンション事業本部マンション事業部事業室主任・篠大智氏は、「問い合わせは約300件、4月2日からのモデルルーム来場者は70件超。うち約7割の方が単身女性。立地や収納の多さ、設備仕様等が評価されています」と話した。
樹脂サッシ
トイレ(TOTO製だったか、収納付きでタンクなしに見えるのがみそ)
三ツ口コンロ(単身者向けに提案したのが受けている)
洗面
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コロナ禍で、コンパクトマンションの取材も激減しており、他社物件との比較も難しいが、33㎡のモデルルームはよくできていた。間口を約4,000ミリ確保しているため、約9.4畳大のLDKのほか約2.6畳大の居室も設置されている。
特筆したいのは、昨年末に見学した「ライオンズミレス新中野」もそうだったが、二重サッシ・樹脂サッシが採用されていることだ。樹脂サッシの効用をご存じない方が多いが、アルミサッシ枠と比較にならないほど断熱性能が高い。結露など全く心配ない。
このほか、ミストサウナ付きなどもコンパクトでは珍しいのではないか。天井高も約2,500ミリ確保している。同社としては初採用したという洗面のコスメポケットは、女性に評判とのことで必須アイテムなのだろう。三ツ口コンロが好評なのは驚いた。同時に使いこなせる人はまずいないはずだが、鍋などを置くスペースとして必要なようだ(なるほど)。
坪単価は相場並みか。23区内では軒並み400万円を突破してきている。早期完売のカギは、他社物件との差別化をアピールできるかどうかだろう。
建設現場
緑道と玉川上水に一部隣接 1低層の45戸 「リストレジデンス武蔵野御殿山」6月分譲
「リストレジデンス武蔵野御殿山」
リストグループのリストデベロップメントは4月21日、武蔵野市御殿山アドレスで約9年ぶりのマンションとなり、玉川上水に一部面した第一種低層住居専用地域の「リストレジデンス武蔵野御殿山」を4月1日に着工し、6月下旬に販売開始すると発表した。
物件は、JR・東京メトロ東西線三鷹駅南口から徒歩6分、武蔵野市御殿山2丁目の第一種低層住居専用地域に位置する3階建て全45戸。専有面積は58.11~92.10㎡。竣工予定は2023年7月上旬。
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記者は、この種の分譲住宅に関するプレス・リリースは基本的に書かないことにしている。犬が人を噛めばニュースになるが、デベロッパーがマンションを分譲するのは当たり前で、そのままコピペしても書く「か・ち・は・な・い」。
しかし、ホームページでも確認した。敷地の一部は御殿山通り・玉川上水に面し、井の頭公園まで徒歩8分とあるではないか。この通りは何度か通ったことがある。最高に素晴らしい。これは書く価値がある。
設備仕様レベルにもよるが、坪単価は最低で500万円、条件のいい住戸は600万円をはるかに超えるのは間違いない。モデルルームがオープンしたら、取材を申し込んでレポートしたい。
価格が安くても手抜きしない 大和地所レジ「ヴェレーナシティ藤沢」に見た企業姿勢
「ヴェレーナシティ藤沢」モデルルーム(この空間提案をできるデベロッパーは他にあるか)
「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」に続き、「ヴェレーナシティ藤沢」と「ヴェレーナグラン湘南藤沢」を紹介する。販売は順調で、前者はバス便だが、70㎡以上でも価格が4,000万円台という価格の優位性があり、後者は徒歩12分とグレード感があるのが評価されているという。
「ヴェレーナシティ藤沢」は、JR・小田急江ノ島線藤沢駅から徒歩23分(バス約6分、バス停徒歩1分)、藤沢市藤が岡三丁目の第二種住居地域、第一種低層住居専用地域に位置する7階建て全102戸。先着順で分譲中の住戸(7戸)の価格は4,168万〜4,798万円(専有面積72.89〜77.17㎡)。坪単価は200万円。竣工予定は2023年4月中旬。施工は長谷工コーポレーション。昨年10月から販売開始しており、現在、進捗は80%。
現地はヒルトップの大学の寮跡地で、道路を挟んだ南側は第一種低層住居専用地域。敷地の目の前にバス停があり、通勤時間帯は数分置きに藤沢駅行が走っているという。
建物は全戸南向きで、全邸オープンエア付き住戸(オープンエアリビング・バルコニー付きは24戸)。主な基本性能・設備仕様はリビング天井高約2450ミリ(最上階は約2500ミリ)、直床、ディスポーザー、食洗機、2段タオル掛け、メーターモジュール廊下、バルコニースロップシンクなど。共用施設はオーナーズラウンジ・ライブラリー・サロン・ガーデンなど。
「ヴェレーナグラン湘南藤沢」は、JR・小田急江ノ島線藤沢駅から徒歩12分、藤沢市川名字森久の第一種住居地域、準工業地域に位置する7階建て全33戸。先着順で分譲中の住戸(3戸)の価格は4,768万〜5,228万円(専有面積65.27〜70.28㎡)。坪単価は243万円。竣工予定は2022年7月下旬。施工は大洋建設。販売開始は10月からで、残りわずか。
建物はワンフロア5戸構成で、角住戸は13戸。中住戸2列は東向きワイドスパン(7.5・9.0m)。主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、御影石キッチン・洗面カウンター、食洗機、ミストサウナ。2段タオル掛け、バルコニースロップシンク、メーターモジュール廊下(一部除く)など。
同社マンションギャラリー次長・大竹喜章氏は、「双方とも販売は順調。『シティ』は、6月頃までに完売できそう。購入者の2割が都内。70㎡以上の3LDKが4,000万円台前半で買えることが評価されており、バスも頻繁に走っているのでハンディにはなっていません。『グラン』も設備仕様のグレードが高評価をいただいている」と語っている。
「ヴェレーナグラン湘南藤沢」
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「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」の記事と一緒に読んでいただきたい。湘南エリアの他社のマンションをそれほど取材していないので断定的なことは言えないが、基本性能・設備仕様レベルはどこの物件と比較しても負けないと思う。
例えば「シティ」。住戸プランは最低70㎡を確保し、15列あるスパンのうち6mのショートスパン(今はそう呼ばないかもしれないが)は2列(スパン)しかない。他は6.2mが6列、6.4mが5列、7.3mが2列(角住戸)だ。
坪単価はバス便ということもあり200万円と安いが、ディスポーザー、食洗機、御影石カウンター、2段タオル掛け、ミストサウナ、メーターモジュール廊下幅などを標準装備としている。この単価でこれほどの質を確保しているマンションがあったら教えてほしい。まずないはずだ。
どのような物件でも〝手抜き〟をしない企業姿勢がここにある。スロー アンド ステディ ウィン ザ レース(SLOW & STEADY WIN THE RACE)-追い風だろうと向かい風だろうと、生活者目線の商品企画を忘れないことが結局生き残るということだ。
モデルルーム
希少の海に近い1低層 水準以上の基本性能・設備仕様 大和地所レジ「茅ヶ崎東海岸」(2022/4/12)
充実した共用部 浴室にはタオル掛け 新たな賃貸マンション提案 三井不レジ「錦糸町」
「パークアクシス錦糸町スタイルズ」オープンダイニング
三井不動産レジデンシャルは4月15日、専用部と共用部の機能を見直し、選べる朝食、シェア、サブスクなどのサービスを提案した新しい形の賃貸マンション「パークアクシス錦糸町スタイルズ」(96戸)が竣工したのに伴うプレス内覧会を行った。記者は通常の賃貸では考えられないほど共用部が充実しているのと、20数社のメディアが駆けつけていたのにダブルショックを受けた。
物件は、JR錦糸町駅から徒歩10分、都営新宿線菊川駅から徒歩9分、墨田区江東橋五丁目の準工業地域に位置する敷地面積約788㎡(238坪)の7階建て延べ床面積約2,499㎡の96室(建築基準法の用途は「寄宿舎」)。専用面積は15.35~18.00 ㎡、賃料は11.6万円~/月。建物は3月25日に竣工。入居可能日は4月中旬以降。
テレワークの普及や在宅時間の増加などによりライフスタイルが変化・多様化しているのに対応するもので、入居者が必要な機能を必要なときに選択して利用できるのが特徴で、専用部はユニットバス・洗面・トイレを含めた約15~18㎡に抑えている。
その一方で、約120㎡の共用部(全体のレンタブル比は70%だそうだ)に各種の施設を配置。単身者の課題とされる朝食・テレワークに対応するため朝食は200円から450円まで和洋食4種から選べるようにしたほか、夕食は定食や丼など栄養バランスに配慮したメニューを用意、外食のようなメニューをワンコイン未満で提供する。
このほか、リモート会議用の個室やブースなどのワークスペースを設置。シェアキッチン、ランドリー、ブックセレクト、共用備品・調理器具貸出しサービス、洗濯代行、家具のサブスクサービス、レンタサイクルなども行う。
また、SDGsに貢献するためグリーン電力を使用するほか、食事を提供するLEOCと連携してフードロス削減・脱プラスチックの取り組みも行い、共用部のドリンクにはプラスチックストローやカップを使用せず、マグカップ、紙カップ、紙ストロー、紙蓋を採用し、コーヒーは全てフェアトレードコーヒーにする。
賃料設定に関するメディアの質問について同社賃貸住宅事業部 事業グループ室長・神谷正樹氏は、「共用部の充実のほか定額制の水光熱費、各種の無料サービス、ネット環境を考慮すれば一般的な賃貸マンションの相場と比べ相応ではないか」と語った。
シェアキッチン
ブース席
朝食メニュー(450円、これに飲み物が付く)
450円の〈WAKE(ヌードルプレート)〉(左)と300円の〈FUN(パンケーキプレート)〉
ブックセレクト
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記者は、共用部で赤の他人と緩やかにつながる生活スタイルはいま一つ理解できないのだが、今回の賃貸マンションは分譲マンションの商品企画にも生かせるというのが率直な感想だ。分譲価格を抑制するため、共用部を充実させ専有面積を圧縮する流れは加速するのではないか。
まず共用部。この種の規模の賃貸としては充実しているのは間違いない。写真の朝食メニューが高いか安いか判断できないが、これにフェアトレードのコーヒーが付くし、ビールなどを飲むのも自由だ。飲酒でいえば、同社は1時間500円の飲み放題も1年間期間限定で企画しているという。
ブックセレクトコーナーは有隣堂とコラボしているもので、常時400冊が備えられており無料で読める(居室に持ち込みは不可)。書籍の入れ替えには居住者の声を反映させるという。
次に専用部。建築基準法での用途は「寄宿舎」なので台所がなく、広さ、天井高最大2350ミリ(最大は2480ミリ)というのはともかく、浴室にはタオル掛けがきちんと付いていたし、タンク付きトイレも郊外分譲マンションに採用されているものと遜色ない。直床のフローリングは二重床のそれと同じくらいしっかりしている。物干しポールとピクチャーレール付きの部屋もあった。もちろん飲酒・喫煙も可能(共用部は禁煙)だし、友だちなどを入室させるのも自由だ。
ランドリー(男性用洗濯機7台、乾燥機7台、女性用5台)
浴室タオル掛け
物干しポール
「パークアクシス錦糸町スタイルズ」
床暖房もタオル掛けもなし 経済設計の極み それでも海好き惹きつける 相鉄不「平塚」
「グレーシア湘南平塚海岸」
中央日本土地建物「バウス平塚」を取材したあと、相鉄不動産がほぼ同時期に分譲開始した「グレーシア湘南平塚海岸」を見学した。中央日土地の物件が駅の傍なら、こちらは目の前がすぐ海。〝贅肉〟をそぎ落としたコンセプトが奏功したか、全100戸のうち海側の29戸を中心に33戸に〝赤いバラ〟が付いていた。
物件は、JR平塚駅から徒歩17分(平塚駅からバス6分、徒歩2分)、平塚市龍城ケ丘4丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する5階建て全100戸。専有面積は62.99~88.84㎡、価格は2,900万円台~5,600万円台(最多価格帯3,900万円台。現在分譲中の住戸(40戸)の坪単価は196万円(全体予定は175万円)。竣工予定は2023年1月下旬。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、元公務員宿舎。目の前の防砂林-道路(橋)を渡るとすぐ海(表示は海まで3分)。海岸では、防砂林を伐採する計画に反対する地域住民がいるため着工は中断されているが、市民協働の森、レストラン、スポーツフィールド、カフェなどからなる「湘南海岸公園龍城ヶ丘ゾーン整備計画」がある。
建物は、コの字型で、海側の南向きが50戸、東向きが32戸、西向きが18戸。主な基本性能・設備仕様は直床、リビング天井高2480ミリ(最上階は2450ミリ)、良水工房など。床暖房はなく、浴室タオル掛け、食洗機などはオプション。間口6m以下も40戸ある。共用施設としてカームラウンジ、シェアストレージ、オーシャンビューテラスなど。南向き1階住戸には約12㎡のテラスと約10㎡の専用庭付き。
今年3月から分譲開始し、これまでに南向き29戸(分譲中の21戸の坪単価222万円)、東向き2戸(分譲中の12戸の坪単価154万円)、西向き2戸(分譲中の7戸の坪単価201万円)、合計33戸が成約済み。
販売担当者によると、予想以上の売れ行きで、購入者は海好きの人が多く、他社物件との競合は少ないという。
海に渡る橋の上から現地を写す
眼前の海は遠浅になっていないので遊泳禁止とか(泳げるところまでは10分くらいとか)
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相鉄不動産といえば、今年1月、坪単価717万円でも圧倒的な人気を呼んでいる「THE YOKOHAMA FRONT」(ザ ヨコハマ フロント)を見たばかりだ。
大激戦の「平塚」はどんな商品企画で勝負するのだろうとわくわくしながらモデルルームを見た。あにはからんや。その〝シンプルさ〟に唖然茫然するほかなかった。
これまでもこの種の経済設計のマンションを見学したことはあるが、今回はその極みだ。地域の需要ニーズを熟知するデベロッパーと、設計・施工のプロでしかなしえない技だ。コンセプトを明確に打ち出し、ターゲットを絞り込めば〝売れる〟ことを示した好例ではないか。
単価設定にもうなってしまった。海に面した側でも、前面の砂防林のマツも高さは5層分あり、最上階でも海が見えるかどうかは微妙とのことで、それほど高値に設定していないが、海の眺望が望めない東向き、西向きは価格を極端に低く設定している。
そこで小生は考えた。海の映像をカメラに、波の音を収音マイクに収め、室内にリアルに画像とともに音を楽しめるようにしたらどうだろう。その費用はどれくらいか分からないが、そうすれば価格をもっと上げられると。
太陽光を採光し、居室内に照らし出すシステムを採用すればマンションの値付けを劇的に変えられるとずっと昔から思っているのだが…。
敷地西側の道路を挟んだ防砂林
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