三井不レジ・日鉄興和・三菱地所レジ・不燃公社 麻布十番駅近接の2.5ha再開発

三井不動産レジデンシャル、日鉄興和不動産、三菱地所レジデンス、首都圏不燃建築公社の4社は9月18日、参加組合員として事業参画している港区三田一丁目の「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」の組合が9月10日付で認可を受けたと発表した。
麻布十番駅に近接する約2.5haの区域で、約1,450戸の共同住宅をはじめオフィス、店舗、公園を一体で開発するとともに、麻布十番エリアへつながる動線を設け、緑あふれる広場や歩行者空間を整備してエリア全体の回遊性・利便性を高める。
事業地は港区三田一丁目3番他、区域面積は約2.5ha。建築面積は約10,430㎡、延べ床面積は約181,130㎡。事業推進コンサルタントはアール・アイ・エー。竣工予定は2027年。
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都心部の再開発プロジェクト始動が相次いで発表されている。マンションの戸数にしたら1万戸はくだらない。2万戸くらいではないか。
ここも場所はよく知っている。三井不動産レジデンシャル「パークコート麻布十番ザ タワー」、住友不動産「シティタワー麻布十番」に隣接するエリアだ。駅と直結されれば徒歩2分だろう。
所在は「麻布十番」ではないのと、高速道路が走っているのをどう評価するかだが、現時点で販売されれば坪単価800万円以下はあり得ない。あと7年、日本経済が活気を取り戻していたら坪1,000万円は超えるのではないか。それまで生きていられるかどうか。
〝オール地域〟の学生シェアハウスPJ なか安・住宅工営・日本工学院八王子専門学校

最終審査発表会(なか安で)
東京都八王子市の老舗料亭「なか安」と地元不動産会社「住宅工営」、昭和62年開校の日本工学院八王子専門学校の3者は9月10日、地域の再生・活性化を図るため老朽化し使用されなくなった老舗旅館をリノベーションし学生シェアハウスに再生するプランを専門学生から募る「明日も楽しみで”たまんない”〜学生シェアハウスdesign project @暁町〜」の最終審査発表会を開催し、各賞を決定した。(写真はは記者撮影以外全て住宅工営提供)
56案のうち最終審査に残った15案の中から最優秀賞には井上汐里さんの「Inner Terrace(照らす)House」が選ばれた。光と風を取り込んだアイデアが評価された。
井上さんは「手描き感を出すため、図面の色も自分で塗ったりした。努力が実ってうれしい」と目を潤ませた。
次位の優秀賞には齋藤亜紀さんと星川雅人さんが受賞し、さらに「暮らしを、design。賞」に西川茉季葉さん(SDGs部門)、村松陸さん(地域コミュニティ部門)と小林菜々子さん(SNS発信部門)、特別賞には芹澤匠太郎さん(なか安代表取締役・宮﨑昌久氏)、山田健太さん(学校法人片柳学園理事・黒須隆一氏)、佐藤真心さん(日本工学院八王子専門学校副校長・山野大星氏)がそれぞれ選ばれた。
オンラインによる最終審査発表会オープニングには、住宅工営より協力依頼したという、建築家の隈研吾氏からの学生に向けたエールメッセージ動画も上映されたそうだ。

最優秀賞の井上汐里さんの「Inner Terrace(照らす)House」

最終審査発表会(なか安で)
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同プロジェクトは、創業87年の老舗料亭・なか安の1972年竣工の9階建てビルのうち、同社が2003年に旅館業から撤退してから使用されなくなった4~6階部分(1フロア56坪)をリノベーションし、学生向けシェアハウスとして再生しようというもの。
なか安から相談を受けた創業51年の住宅工営・齋藤祥文社長は日本工学院八王子専門学校と連携して学生向けシェアハウスとして再生することを考え、今回のプロジェクトを立ち上げた。同社はこれまで2,000戸以上の建売住宅を供給した実績があり、齋藤社長は3代目だそうだ。
プロジェクトには同校の建築学科の3年生56人が授業の一環として参加。今年6月からすべてリモート授業で取り組んでいる。
齋藤氏は、「普通のマンションやアパートにリノベーションしてもこれからは事業として成り立たなくなる。いかに新しい価値を創造するか。学生さんには『箱があってプランを描くことは誰でもできる。新しい価値を吹き込むことが大事』と話しました。これから具体的なプラン作りに入るが、学生さんのアイデアを最大限生かしていく。来年3月までに完成させたい。これからの住宅事業はコミュニティがキーワードとなる」などと語った。

住宅工営の店舗(背後にはSDGsをあしらった壁:記者撮影)
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このプロジェクトは、週刊住宅の記者から聞いて知った。大手デベロッパーやハウスメーカーが主催するこの種の取り組みは何度か取材しているが、〝オール地域〟に意義があると思い取材をお願いした。書き足りない部分は、転載・引用の了解も得られたので、添付した同紙の記事を参照していただきたい。過不足なく書かれていると思う。
なか安は記者も一度、利用(接待、つまりただ)したことがある。庭園が美しく個室型なのでゆったり寛ぐことができる。
かつては多摩エリアの社会・経済圏の核だった八王子市だったことを納得させる料亭だと思う。シェアハウスが完成したらまた取材したい。
※8月3日付週刊住宅の記事

前提条件は?だが「道」のテーマが最高にいい ポラス第5回「学生・建築コンペ」(2018/6/23)
次代へ道を開くか「広がる通りみち」 第8回 「三井住空間デザイン賞」(2014/10/23)
先行逃げ切りか まくり一発か レベル高い 大和ハウス「プレミストタワー白金高輪」

「プレミストタワー白金高輪」
大和ハウス工業が10月中旬に分譲する「プレミストタワー白金高輪」を見学した。富裕層向けマンションはこの半年間1物件も見学していないので他社物件はよく分からないが、この物件は立地も設備仕様レベルも高い。価格を抑制気味なのは、全部で供給が2,000戸近くにのぼる大激戦エリアで他社に影すら踏ませない先行逃げ切りを目論む(後出しだからまくり一発か)戦略とみた。
物件は、東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線白金高輪駅から徒歩1分、港区高輪一丁目の商業地域に位置する35階建て全280戸(非分譲住戸127戸含む)。専有面積は33.06~117.15㎡、第1期(戸数未定)の予定価格は5,700万円台~26,600万円台(最多価格帯10,900万円台、13,600万円台、13,800万円台)、坪単価は650万円くらいになる模様。竣工予定は令和4年11月上旬。施工は西松建設。デザイン監修は建築家・光井純氏。ランドスケープ・外観照明デザインは近田玲子氏。販売代理は三井不動産レジデンシャル。
現地は、白金高輪駅から徒歩1分、国道1号線に接道。従前の「パシフィック高輪マンション」(1970年竣工63戸)と「トーア第二高輪マンション」(1979年竣工93戸)の共同建て替えマンション。同社は2017年2月、円滑化法に基づく建替組合の参加組合員として事業に参画した。
敷地はほぼ正方形で、総合設計制度の適用を受け、敷地四方を緑で囲っている。地下2階に車寄せとオーナーズサロン、地下1~3階は店舗、トランクルーム、自転車置き場など、3階の共用部には2つのラウンジ、オーナーズキッチン、インナーコリドーを設置。住戸は4階からで、標準階1フロア8~10戸構成。最上階は6戸。
主な基本性能・設備仕様は制振構造、Low-Eガラス、キッチン・洗面・トイレカウンター御影石、二重床・二重天井、ディスポーザー、食洗機、リビング天井高最大2800ミリ、コロンボ製ドアノブ、天井カセット型エアコンなど。
販売を担当する同社東京本店東京マンション事業部営業部第二課販売事務所長・宮本章司氏は、「(大激戦のエリアですが)他社に負けないよう都心部のプレミストシリーズの中で最高レベルに仕上げました。最上階の105㎡タイプは抽選になりそうです。第1期は40~50戸供給を目指しています」と自信をのぞかせた。

エントランスホール(完成予想図)

105㎡モデルルーム

玄関のオブジェ

洗面ボウル
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コロナの影響で富裕層向けマンションのモデルルームを見学するのは半年ぶりだったが、基本性能・設備仕様レベルは間違いなく坪単価650万円に見合うどころかそれ以上の価値があると見た。
見学する前は立地条件からして高値追及するなら坪700万円もあると考えたが、ひょっとすると同社は競合関係、販売戦略など総合的に判断して坪650万円くらいに設定し、早期完売を狙うのではないかと予想した。つまり高値挑戦はしないと結論づけた。
その読みは的中した。いま分譲中の周辺物件より単価は安いはずだ。しかし、安いからといってレベルが低いかといえばそうではない(競合物件の取材は申し込んではいるが実現はしていないので断言はできないが)。物件ホームページにはモデルルーム、設備仕様などについては触れられていないが、いくつか写真を撮ったので紹介する。どこの億ションと比較しても負けないレベルにあるはずだ。
105㎡のタイプはオプション仕様だが、設えられている家具・調度品、面材などは全て一級品だ。玄関ホール、リビングダイニングに敷かれている絨毯はふかふかで、玄関ホールに掲げられているオブジェは息を吞む程だし、日本酒はフランク・ミュラー(小生は知らなかったが、かみさんは名前だけは知っていた…そのレベルか)、ガラス食器類はバカラ、江戸切子、カチッと閉まるドア、把っ手はコロンボ、食洗器はミーレ、キッチン天板はセラミックス、織り上げ天井、天井高2800ミリ…ひっくるめると数千万円だろう。中グレードの70㎡のタイプもほとんど標準仕様で、こちらもグレードは高い。
販売事務所(サロン)も、同社はこれまでも「六番町」「赤坂翠嶺」など豪華な造りにしていたのでそれほど驚きはしなかったが、白い色調のアールを多用したデザインが美しい。2階のモデルルームへの階段幅は2.5mくらいあり、天井には高価そうなシャンデリアがさりげなく飾ってあった。
競合物件も取材してレポートしたい。双方が面子をかけて戦えば戦うほど、得をするのは購入予定者だ。販売代理の三井不動産レジデンシャルは競合物件の売主に名を連ねているが、それぞれ物件担当者同士で激しいバトルが勃発するのか、こちらも興味がある。

販売事務所(サロン)

販売事務所
大和ハウス工業 白金高輪駅1分のマンション共同建て替え284戸 着工(2019/7/29)
三菱地所 常盤橋PJの街区名称「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に決定

「Torch Tower(トーチタワー)」
三菱地所は9月17日、東京駅前で開発を進めている「東京駅前常盤橋プロジェクト(大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業)」の街区を「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に、2021年6月末竣工予定の東京駅圏最高峰の高さ約212mのA棟を「常盤橋タワー」に、2027 年度竣工予定の高さ日本一となる約390m B棟を「Torch Tower(トーチタワー)」にそれぞれ名称決定したと発表した。
同プロジェクトは、東京圏の国家戦略特別区域計画の特定事業として2016年度に都市計画されたが、追加的に都市計画変更手続きを行い、「Torch Tower」に都心最高層クラスの展望施設、約100室の国際級ホテル、約2,000席の大規模ホールなどを整備するほか、1階から8階の外周部に約2㎞の空中散歩道と、屋上には約2,500㎡の屋上庭園を整備。街区全体では、約7,000㎡の大規模広場や親水空間、常盤橋公園など全体で約2.0haの屋外空間を創出する。
「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」という街区名称には、「Torch」のもつ「灯り」のイメージと、プロジェクトビジョン「日本を明るく、元気にする」想いが込められている。
発表会に臨んだ同社執行役社長・吉田淳一氏は、「10年以上前から検討してきたプロジェクトの概要がまとまった。現在はグローバルな競争が激化し、国内の社会課題も山積し、不確実性が増しているが、だからこそ停滞感を払しょくするためにも明確で分かりやすい〝日本を明るく、元気にする〟をコンセプトにした。日本一の高さ390mというシンボル性にふさわしい唯一無二の街づくりを推進していく」と語った。
「Torch Tower」は高さ約390m、地下4階地上63階建て延べ床面積約約544,000㎡。B1-6Fが商業施設、3F-6Fがホール、7Fがフィットネス、7F-53Fがオフィス、57F-61Fがホテル、62F・RFが展望施設。着工は2023年度、竣工は2027年度の予定。施工は未定。
「常盤橋タワー」は高さ約212m、地下5階地上38階建て延べ床面積約146,000㎡。B1-3Fが商業施設、3Fがカフェテリア、9F-37Fがオフィス、8Fがラウンジ。2021年6月末に竣工する予定。施工は戸田建設。
街区全体の設計監理は三菱地所設計が担当し、「Torch Tower」の頂部デザインには藤本壮介建築設計事務所主宰・藤本壮介氏、低層部デザインには永山祐子建築設計事務所主宰・永山祐子氏、広場デザインにはFd Landscape代表・福岡孝則氏を起用する。事業全体に占める同社の事業費は約3,500億円。

左から福岡氏、藤本氏、三菱地所執行役員常盤橋開発部長・茅野静仁氏、吉田社長、三菱地所執行役副社長・谷澤淳一氏、三菱地所設計常盤橋プロジェクト室長・松田貢治氏、永山氏

吉田社長

-ホール外装

親水空間

親水空間

広場空間

ホテルロビー

低層部
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コロナ禍でデベロッパー各社は〝自粛〟を決めているが、同社と同社グループは今回を含めて5度目の発表会を行った。プレス・リリースでは伝えきれない新しい事業や新商品の特性を経営陣が直に伝える姿勢がうれしい。今回も、報道陣と同じくらいの数十人のスタッフは全員SDGsのバッジを胸につけていた。
今回の発表会で記者がもっとも注目したのは「Torch Tower」の1階から8階の外周部に設置する約2㎞(往復4㎞)の空中散歩道だった。
ビルの高さが日本一というのは宣伝効果としては大きいかもしれないが、世界レベルからすれば問題にならない高さだし、約54.4haの延べ床面積も他に負けるし、全体で2.0haの屋外空間も、これより広いプロジェクトはほかにもあるはずだ。
しかし、ビルの外周にこれほどの空中散歩道を整備するのはわが国初ではないか。道路幅は約4mで、8階までの高さは約50mだそうだ。随所に緑も設置するという。マラソンのように走るのは禁じられるようだが、約5㎞の皇居一周とともに東京の新しい名所の一つになるかもしれない。

「常盤橋タワー」
三菱地所ホーム 木造の常識を覆す新構法「FMT」 富裕層・非住宅用途に照準(2020/9/4)
桑の街路樹もある由緒ある地名に立地 タカラレーベン「八王子」順調スタート

「レーベン八王子MARK GATE」(物件ホームページから)
タカラレーベンが分譲中の「レーベン八王子MARK GATE」を見学した。JR八王子駅から徒歩9分、京王線八王子駅から徒歩8分の全63戸で 、7月から分譲しており、順調なスタートを切った。
物件は、JR中央線・横浜線・八高線八王子駅から徒歩9分、京王線京王八王子駅から徒歩8分、八王子市元横山町2丁目の近隣商業地域・準工業地域に位置する12階建て全63戸。専有面積は57.59~72.73㎡、坪単価は220万円強。竣工予定は2021年9月上旬。設計・監理・施工は山田建設。売主は同社のほか陽栄。
現地は、平安時代後期から鎌倉時代にかけて勢力を誇った武蔵七党の一つ「横山党」に由来する「元横山町」に位置し、建物は往時の繁栄を忍ばせる「桑」の街路樹が植えられている「桑並木通り」と「北大通り」が交差する地点に立地。
住戸は西向きで、最低でも約6.0m、中心で6.4~7.0m、最大で9.1m確保したワイドスパンが特徴。主な基本性能・設備仕二重床・二重天井、二重サッシ、食洗機、たからの水など。
販売を担当する同社第2営業グループ第1営業部3課課長・亀岡芳弘氏は、「お客さまの評判はいいですよ。二重サッシを採用しているのはうちだけだし、モデルルームの評価も高い。分譲価格は抑制気味」と話した。
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同社のマンションはたくさん見学しているが、見た途端、記者が〝業界のレディ・ガガ〟と呼ぶ同社取締役兼執行役員・髙荒美香氏をすぐ思い出した。髙荒氏と初めてお会いしてからもう十数年経過するが、業界の常識を破ったモデルルームの造りに圧倒され、すぐファンになった。同社のイメージを劇的に変えた功労者だと思う。調べたわけではないが、髙荒氏絡みの記事のアクセス数は数万件に上るはずだ。
亀岡氏が「髙荒取締役 のセンスは抜群。いつも勉強させられる。ここも髙荒取締役のモデルを踏襲したものですが、従来と比べやや落ち着いたもの」と話した。
亀岡氏に他の見学推奨物件を聞いたら「『検見川浜』は凄い人気になっています。こちらもぜひ」と勧めてくれた。見学してレポートしたい。
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立地について。現地は、JR八王子駅から一直線の「桑並木通り」に面している。記者はマンション見学の際は必ず街路樹をチェックする。沢山記事も書いてきた。駅から現地に向かう途中、おやっと思った。「桑並木通り」とあるのに街路樹にはマロニエ(トチノキの仲間)が植えられていたからだ。
八王子と言えば養蚕で栄えた街だ。もう道路の名前にしかその名残は残っていないのかと寂しい気持ちになったのだが、5分くらい歩いてから突如、街路樹の樹種が変わった。何の木か全然分からなかった。これまで見たことがない樹木だった。
そこで、葉っぱをちぎって家に帰り調べた。「桑」だった。だしぬけにむしゃむしゃ、ザワザワと桑の葉っぱをついばむ無数の蚕の記憶がよみがえった。昔は小生の家も納屋で蚕を飼っていた。佃煮を食べた記憶はないが、桑の実はよく食べた。
街を歩けば、養蚕の街の名残はあちこちにあるのではないか。
「女性には体内マーケがある」〝業界のレディ・ガガ〟タカラレーベン髙荒氏(2018/2/22)
野村不・旭化成不レジ 秀和レジデンス第1号「秀和青山レジデンス」建て替えへ

「秀和青山レジデンス」建て替え後の完成予想図
野村不動産と旭化成不動産レジデンスは9月16日、渋谷区の秀和レジデンスシリーズ第1号の「秀和青山レジデンス」のマンション建替組合の設立が認可されたと発表した。
「秀和青山レジデンス」は1964年(昭和39年)、著名な建築家・芦原義信氏の設計により建てられた地上8階建ての秀和レジデンスシリーズ第1号物件。築後56年が経ち、建物の老朽化や耐震性の不足などの問題を抱え、2014年頃から建て替えの検討が開始され、両社は2017年に事業協力者として参画していた。
建て替えに当たっては、渋谷区初の「マンション建替法に基づく容積率の特例緩和制度」を活用。十分な緑化を施した2つの広場状空地や歩道状空地(幅2.0m)を設け、地域の安全性・快適性を高め、地域の街並み整備に寄与する計画にしたため容積率の緩和を受け、容積率500%から655.40%へ約155%割り増しを受ける。建て替え後は地下2 階地上26 階建てマンションとなる。
物件は、東京メトロ渋谷駅から徒歩6分、JR山手線渋谷駅南口から徒歩9分、渋谷区渋谷三丁目、敷地面積約1,926㎡、従前延べ床面積約9,457㎡(建て替え後約19,037.39㎡、以下同じ)、8階建て(26階建て)、耐震構造(免震構造)、容積率不明(655.40%、基準容積率500%)、竣工年月1963年6月(2025年2 月予定)、専有面積約42~約174㎡(約44~約121㎡)。コンサルタントは再開発計画技術。設計はIAO 竹田設計。

安藤忠雄氏を超えた? 青木茂氏×三井不 「氷川台」リファイニング見学会に200人超

「ヴァロータ氷川台」
リファイニング賃貸マンション「ヴァロータ氷川台」の完成見学会が9月15日行われた。青木茂建築工房が設計監理、三井不動産レッツ資産活用部が総合企画、三井不動産レジデンシャルリースが商品企画・サブリースをそれぞれ担当するもので、見学会はメディアを除き5部(5回転)構成で、コロナ対策として1部当たり来場者を40人に制限したにもかかわらず、全て満席の人気となった。
同事業は、昭和51年に建設された築44年の老朽化した共同住宅を建て替えることなく、新築の7割程度の建築費で新築並みにリファイニングしたもの。青木工房と三井不動産が共同で行うリファイニング事業としては5物件目となる。
現行法に適合させるため、既存不適格となっていた塔屋を解体することで増築を可能にし、バルコニーの一部専有化、屋外廊下の屋内化、エントランスの増築、エレベーターの設置などを行ったのが特徴。
内外装仕上げでは、南側外壁にカーテンウォールを採用し、従前外壁を500ミリ突出させて約2.5㎡の専用部を増築。さらに、袖壁と庇の内側は木調の金属板とし、専有部内の壁と天井を外壁と同じ色調のシナ合板とすることで外と内の連続的な演出するとともに、空間的な広がりを感じられるようにしている。
三井不動産関係者によると、従前の賃貸は老朽化、間取りの陳腐化などで賃料は近隣相場より低く、入居率も芳しくなかったという。リファイニング後の賃料は新築相場の約95%を確保している。全19戸のうち9戸に申し込みが入っている。
物件は、東京メトロ有楽町線・副都心線氷川台駅から徒歩3分、練馬区氷川台3丁目に位置する敷地面積約795㎡、建ぺい率33%(許容60%)、容積率109%(同200%)、4階建て延べ床面積869㎡の賃貸マンション。昭和51年完成。日影規制が既存不適格となっていた。
リファイニング後の建ぺい率は47%、容積率は114%、延べ床面積は1,143㎡。令和2年9月完成予定。
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リファイニング事例はかなり取材しているので、ちょっとやそっとではもう驚かなくなったが、ここにも目から鱗の〝建築の魔術師〟青木茂先生の技術がふんだんに盛り込まれている。
最たるものは、塔屋を解体すること(これがどのような意味を持つかよく分からないが)で既存不適格要件を回避し、増築を可能にしたことだ。写真の南側の増築部分の面積は約2.5㎡だ。業界関係者ならよくご存じのはずだ。立地条件からすれば、分譲マンションなら坪単価は300万円をはるかに超える。仮に坪320万円としよう。つまり、2.5÷3.3×320=242万円相当の価値を増大させた。利回り5%として12万円だ。
貸付面積を確保するため、南側にあった既存エントランスを北側に移動させ、しかも東京都建築安全条例17条規定(アプローチ部分は幅員3m必要なのに2.5mしかなかった)に適合させるためにエントランスアプローチの庇を南側まで延長させ遵法性を確保しているのもうなってしまった。

before afte(袖壁・庇の処理と、外壁と内部空間の連続性を演出しているのが特徴)

エントランスアプローチ(庇をつけているのがよく分かる)

従前の建物
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青木先生にお会いできるのを楽しみにしていた。今回の見学会は、メディア向けを除き5回転。コロナ対策として定員はそれぞれ40名に限定したが、全て満席となり、200名を突破した。制限しなかったら何名集まったのか。参加者は不動産や銀行関係者が中心のようだった。リファイニング人気は衰えを知らない。
比較するのもどうかと思うが、この日(15日)は、添付した安藤忠雄氏が設計・デザインした日本財団「THE TOKYO TOILET」の一つ「神宮通公園トイレ」(あまやどり)のお披露目見学会が行われた。安藤氏が元気な姿をみせ、約30分にわたりコンセプト、建築美、都市計画などについて語った。メディアは30社で50人だった。
安藤氏と青木氏とは知己の関係にある。青木氏は平成30年2月10日、首都大学東京特任教授の退任記念講演会を行った。青木氏は設計事務所を開設して間もない1970年代の後半、安藤氏が企画したヨーロッパ旅行に参加したのだが、エピソードとして次のように語っている。
「車を買うために貯めていた100万円を、妻の了解を得て、安藤氏が企画したヨーロッパ旅行に注ぎ込んだ。旅行中、安藤氏からは『お前、なにも知らんなぁ、阿保やなあ』と言われ続けた。この前、お会いしたとき初めて褒められた。この間35年間を要した」
それからまた時を経て現在、来場制限しても200人超集められる見学会などわが業界にまずない。安藤氏がこのことを知ったら〝俺を超えるような阿呆なことするな〟と驚愕するのではないか。リファイニングは世界の建築手法になるはずだ。
青木氏は「コロナ? 月4週のうち3回はあちこち飛び回っている。かみさんとの濃厚接触? むしろ増えた」と語った。
肝心なことを書き忘れた。青木氏は、リファイニングの普及・拡大を図るため一般社団を立ち上げ、認定書などを交付することで銀行などへの申請書類の統一化、業務の迅速化を行うと話した。今年11月に正式オープンするという。

青木氏(平成30年撮影)
美しい公衆トイレ 発信できた 安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団プロジェクト(2020/9/15)
大和ハウス工業「平和台」 同社初の「ZEH-M Ready」 申し込み殺到 早期完売へ(2020/9/15)
三井不動産×青木茂建築工房 リファイニング「初台」で見学会 過去記事も紹介(2019//12/8)
駅4分の1低層 息をのむほど美しいサペリの建具 三菱地所レジ「代々木上原」(2018/12/14)
省エネ対策に感服 三井不動産+青木茂建築工房 「林マンション」リファイニング完成(2018/3/30)
青木茂建築工房×ミサワホーム 「千代田富士見」のリファイニング見学会に450名(2018/3/1)
リファイニング建築の考案者 首都大学東京特任教授・青木茂氏が退官へ 記念講演会(2018/2/13)
ミサワホーム&青木茂建築工房 千代田区富士見のリファイニング建築見学会に250名(2017/11/9)
三井不&青木茂建築工房 築52年の市場性ない共同住宅をリファイニングで再生(2017/10/16)
三井不動産&青木茂建築工房 練馬区のリファイニング見学会に200名(2017/3/27)
築44年の寄宿舎をリファイニング手法で賃貸に一新 見学者100名超 青木茂建築工房(2016/12/21)
建築の魔術師・青木リファイニングの真髄を見た 「竹本邸」完成見学会(2015/11/17)
「リファイニング」に熱い視線60坪の建物見学に250人殺到 青木茂建築工房(2015/3/11)
リファイニング建築のすごさを見た 「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」完成(2014/3/24)
全てが腑に落ちる 首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(20143/19)
再生建築学の設置を 青木茂氏が三井不動産のセミナーで語る(2013/12/10)
千駄ヶ谷のリファイニング建築に見学者300人(2013/11/12)
「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ

「神宮通公園トイレ あまやどり」(写真提供:日本財団)

「美しい日本表現できた」安藤氏
既報の建築家・安藤忠雄氏(79)が設計デザインを担当した日本財団「THE TOKYO TOILET」の一つ、「神宮通公園トイレ」(あまやどり)が供用開始されたのに伴い、9月15日、安藤氏が約30分にわたり熱弁をふるった。約30社50人のメディア関係者が駆け付けた。
この種の独立型の公衆トイレを手掛けるのは初めてという安藤氏は、「2年前、話を聞いたときは費用もかかるし本当かな、大丈夫かなと思ったが、日本の〝売り〟の一つは清潔で美しいことにある。これをテーマに世界に発信したいと考えてデザインした。コロナを意識したわけではないが、風通しもよく、美しい公衆トイレとして世界に発信できたのではないか。宝石と同じように、小さいなりに大きな発進力があることを示せた。公園を見直すきっかけにもなる」などと語った。
他の作品については、「他の先生の作品は見ていないが、それぞれ緊張を持たれ全力投球されているのにびっくりした。話題にもなっているガラス張りは透けて見えたらどないすんねんと思ったが、その〝危険感〟がいいのではないか」と感想を述べた。

駆け付けた報道陣

内部(写真提供:日本財団)

安藤氏(左)と笹川氏
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記者は次のように質問した。
「先生、わたしはこれまで7か所のうち4か所を見学しました。先生のこのトイレが一番好き。日本だけでなく、世界の公園トイレのモデルに間違いなくなるはず。世界から同じものを作ってくれとオファーがあったらどうされますか。設計デザイン、著作権の帰属など権利関係はどうなっているのですか。外観ですが、縦格子はアルミ合金を採用されていますが(隈研吾さんが得意とする…これはぐっと堪えて)、木造では具合が悪いのですか。それと、こんなに美しいと、入った人が出て来なくなるんじゃないか、行列ができるトイレになるんじゃないかと心配ですが、いかがですか」
安藤氏は次のように答えた。
「世界からオファーがあったらどうするか、これは日本財団さんがどうされるかにもよる、ちょっと答えられない。アルミを使ったのは耐久性と衛生面を重視したから。木造は考えていなかった。入った人が出て来なくなったら、そりゃ困る」
世界からのオファーの質問を引き継いだ日本財団の常務理事・笹川順平氏は、「実はインド、ベトナム、中国、ヨーロッパなど世界中からオファーがあるが、決まっていない。今回のプロジェクトはメーカーのTOTOさん、施工の大和ハウス工業さんの力が合わさって実現したもの。メンテナンスも含めてよく検討しないと、そのまま輸出してうまくいくか不安もある」などと慎重な構えを示したが、まんざらでもなさそうだった。
「先生、コロナ気を付けてくださいよ」「コロナ? ついそこまで来よったが、逃げていきよった」

「大和ハウスさんもようやった。親分(社長)というもんは売上ばかり言うたらあかん。今回のように社員がやりたい仕事を取らなあかん」
縦格子の円形平屋デザインが美しい 安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ」完成 日本財団(2020/9/7)
日本財団 渋谷区公園トイレ整備に17億円 「西原一丁目」完成/真逆の児童遊園(2020/8/31)
大和ハウス工業「平和台」 同社初の「ZEH-M Ready」 申し込み殺到 早期完売へ

「プレミスト平和台」
大和ハウス工業が9月20日抽選分譲する「ZEH-M Ready(ゼッチ・マンションレディ)」に採択された「プレミスト平和台」を見学した。9月12日から登録申し込みが始まっており、15日現在、40戸に申し込みが入っている。絶好のスタートを切った。坪単価316万円もリーズナブルで早期完売は間違いない。
物件は、東京メトロ有楽町線・副都心線平和台駅から徒歩3分、練馬区北町6丁目の第一種中高層住居専用地域・近隣商業地域(地区計画により高さ規制13m)に位置する4階建て60戸。第1期(47戸)の専有面積は38.05~77.62㎡、価格は3,498万~8,158万円(最多価格帯6,500万円台)、坪単価316万円。登録申し込みは9月20日(日)まで。販売代理は野村不動産アーバンネット。施工は不二建設。
現地は、現在工事中の放射第35号線道路から一歩入った地区計画により高さ規制13mの第一種中高層住居専用地域(一部近隣商業地域)に位置。敷地南西側は区立公園に隣接。2方道路の角地。従前は宅地・マンション。道路を挟んだ対面にスーパー・ライフ、南側はヤマダ電機。
建物はコの字型で、南西向き住戸が36戸、南東向きが12戸、北西向きが12戸。
主な基本性能・設備仕様は、「ZEH-M Ready(ゼッチ・マンションレディ)」に適合させるため、窓は全て二重サッシ(アルミサッシ+樹脂サッシ)を採用、二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ、御影石キッチン天板、食洗機など。
同社東京本店東京マンション事業部営業部第一課 販売事務所長・戸村氏は「2月からの累計反響数は約1,500件。ものすごい数です。最近は周辺に供給物件もなく、年内完売を目指します」と手ごたえを感じていた。
同社としては今回が初のZEHマンションだが、次々と申請しているという。

模型(北西側)
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同社のニュース・リリースを読んで、間違いなく売れると読んだが、立地条件とモデルルームの質を確認したくて見学をお願いした。
第1期47戸の登録を開始したばかりですでに40の申し込みがあるように、お客さんから高い評価をもらっていることが分かる。
モデルルームの出来は文句なしにいい。いまどき坪300万円台の前半でキッチンカウンタートツプに御影石を標準装備しているものはほとんどなくなっている。二重サッシにしているのは、ZHH基準を満たすためなのに納得した。
前回の記事でも書いたが、完成予想図は北西側立面図のためこのようなデザインとなった。

現地(南西側から)
コスモスイニシア 新社長に髙智亮大朗常務 高木社長は会長へ

髙智氏
コスモスイニシアは9月14日、同社常務執行役員ソリューション本部本部長・髙智亮大朗(たかち りょうたろう)氏が代表取締役社長に就任し、現代表取締役社長・高木嘉幸氏は代表取締役会長に就任すると発表した。10月1日付。
髙智氏は1967年4月14日生まれ(53 歳)。1990年4月、同社入社。2015年4月、同社執行役員レジデンシャル本部西日本支社支社長、2019年4月。同社常務執行役員、2019年6月、同社取締役(現任)、2020 年4月、同当社常務執行役員 ソリューション本部本部長 同本部カスタマーリレーション部部長
同本部賃貸事業部事業部長(現任)。

