「パーカーズ」とのコラボ リノベマンション コスモスイニシア「大森山王」

「ドルチェ大森山王」
コスモスイニシアがフラワーショップ「青山フラワーマーケット」を運営するパーク・コーポレーションの空間デザインブランド「parkERs(パーカーズ)」とコラボレーションしたリノベーションマンション「& plants life」第1弾「ドルチェ大森山王」を見学した。
物件は、JR京浜東北線大森駅から徒歩7分、大田区山王2丁目に位置する1974年6月竣工の3階建て全17戸の3階住戸で、専有面積は67.95㎡、価格は4,780万円(坪単価232万円)。分譲会社は勧業不動産(現、日本土地建物)。
リビング・ダイニングの天井にフックを施し、観葉植物を吊り下げることができるようにし、ダイニングテーブルにつけられるプランターを設え、ハーブなどをその場で料理に添えることができるよう演出している。
玄関にはマンション中庭のシンボルツリーをイメージした植栽を設え、寝室には心地良い水音と一輪挿しを合わせ、五感で自然を感じられる空間としている。
さらに、引き渡しから1年間、「青山フラワーマーケット」が選んだミニブーケを毎月届ける。
同社は、周辺環境や間取り条件にふさわしいリノベ物件を対象に年間10戸程度の販売を目標にしている。

玄関

テラス(螺旋階段を上ると屋上専用テラス)

6月に届けられるアジサイ
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「parkERs(パーカーズ)」とコラボした同社のマンション・戸建ては結構見学しているが、リノベマンション初というこの物件もなかなかいい。
建物は旧耐震だが、写真にあるように雰囲気のあるマンションだ。リノベに当たっては独自に調査を行い、設備仕様などを一新しており、二重床構造(サッシは共用部分なので単板ガラス)。専用のバルコニープランターボックスと、らせん階段上は約63㎡の屋上テラス付き。その他キッチンカウンター、収納、ピクチャーレール付き。
玄関の観葉植物は中庭のシンボルツリー・ヤマモモをイメージしたシェフレラで、水遣りは2週間に一度でいいそうだ。
ダイニングには1~3週間に一度の水遣りでいいコチョウラン、エスキナンサス、ペペロニアが、テラスにはハーブがそれぞれ植えられていた。寝室の水音の演出もいい。
全て込みで4,780万円(坪単価232万円)というのは割安感があると思うがどうだろう。仮にこの土地に新たなマンションを建築したら、坪単価は400万円近くするのではないか。7年前に見学した駅から徒歩8分のモリモト「アールブラン大森山王」は坪294万円だった。
こんなにいいのだから、年間10戸は少なすぎる。その倍は販売できるのではないか。

「ドルチェ大森山王」


中庭のヤマモモ(これは雄株か)

植え込みに密生していたドクダミ
緑に囲まれた心地よい暮らし提案 リノベマンションで展開 コスモスイニシア

イメージ図
コスモスイニシアは5月24日、「& plants life」をコンセプトに、緑に囲まれた心地よい暮らしを提案するリノベーションマンションの展開を開始し、第一弾の「ドルチェ大森山王」の販売を開始したと発表した。
フラワーショップ「青山フラワーマーケット」を運営するパーク・コーポレーションの空間デザインブランド「parkERs(パーカーズ)」とコラボレーションし、植物を設えたインテリアデザインを施し、毎月花またはハーブを届けるサービスを提供する。
「ドルチェ大森山王」では、リビング天井に京都の伝統工芸である京金網「金網つじ」製のオリジナルプランターを吊り下げ、ダイニングにはテーブルにつけられるプランターを設え、ハーブなどをその場で収穫し、料理に添えることで食卓を豊かに彩る。玄関にはマンション中庭のシンボルツリーをイメージした植栽を設え、寝室には心地良い水音と一輪挿しを合わせ、五感で自然を感じられる空間としている。
◇ ◆ ◇
パーク・コーポレーションについて触れよう。同社の売上高は2008年に48.1億円(店舗数71店)だったのが、2018年は84.2億円(同103店)へ75%も増加している。三井不動産の2019年3月期売上高は1兆8,611億円で、2009年3月期の1兆3,600億円と比べ37%の増加だ。
花き業界と不動産業界を単純に比較はできないが、リーマン・ショック後の景気の後退を受け、花き出荷額は漸減している現状を考えれば同社の伸張は注目すべきことだし、わが業界にも参考になるはずだ。
伸長の秘密は、同社の井上英明社長のブログにあるような気がする。以下、いくつか紹介する。
「常に常にお客様の立場から考える、花屋の立場からお客様のことを考えるのではなく、レジを出てお客様の横に立って同じ目線で考える。ただただお客様のことだけを考えて判断して欲しいと思います。店長の立場や社長の立場などは決して考える必要はありません」
「お客様は、‘モノ’として花を求めていらっしゃる訳ではありません。ディズニーランドと同じ様に、素敵な‘時間’や‘空間’が欲しくて、花を求めにいらっしゃるのだと思います」
「花の本質、それは‘時間’であり‘空間’、一言で言えば‘Time & Space’と言えると思います」
「お客様の喜びを自分の喜びと感じられるような価値観を持った人間の集まりでありたいと思います」
「利益だけを考えたら、1輪のバラを100名のお客様に提供するより100本のバラの花束を一人のお客様に提供した方が楽でいいに決まっています。350円の小さなブーケを100個作って100名のお客様に接客するより、35000円のラン1鉢を販売した方が楽に決まっています。しかしそれでは我々の存在意義がないと思います」
「park corporationは基本理念を大切に、人間にとって当たり前の環境と考える ‘花や緑に囲まれた心ゆたかな生活’を『一人でも多くの方に』届けたいと真に願っており、日々各店にご来店いただいたお客様の数を把握するようにしています」
どうだろう。デベロッパーの分譲事業と同じではないか。モデルルームは〝モノ〟ではあるが、同時にこのマンションを購入すればどのような〝素敵な時間や空間〟を過ごせるか、プロとして提供するサービスでもある。
用地・建築費の上昇で基本性能・設備仕様はどんどん低下している。床も壁も建具・家具もみんなケミカル製品だ。だからこそ、モデルルームに飾る観葉植物は本物を使用してほしい。
本物の植物は高い、管理が大変、長持ちしないなどと考える人は多いが、そんなことはない。小生の自宅の専用庭にほったらかしにしているサボテンは50年くらい経つし、スパティフィラムはどんどん増殖を続けている。
添付した写真は、オフィスの小生の机の上に置いているポトスだ。定期的に観葉植物を手入れしにくる業者さんが剪定して捨てるポトスの葉っぱを貰って、ペットボトルに入れて育てたものだ。水遣りは2週間に一度。これで2年くらいか。枯らしたことは一度もない。白い花はどこの道端にも咲いているドクダミを摘んできたもの。つまり全てただ。
小生がマンションの販売担当だったら、雑草として見向きもされない草花を摘んできて、「ほら、これがイヌノフグリ(女性には気を付けたほうがいいが)」「ニワゼキショウってこんなにかわいい」「ドクダミはみんなに嫌われるが、お客さまみたいに(おばあちゃんに対しては逆効果)とても可憐でしょ」「この土筆は原爆にも負けなかったのですよ」などと会話を交わす。
井上社長の「350円の小さなブーケを100個作って100名のお客様に接客するより、35000円のラン1鉢を販売した方が楽に決まっています」はヒントになる。モデルルーム来場者数の把握は、〝一人でも多くの方に豊かな暮らしを提案したい〟からと言い切れるかどうか考えたほうがいい。
分譲価格にオンされる「商品券」のプレゼント(実質的に購入価格の先払い)などもやめたほうがいい。
高くない歩留まり率を念頭に、できるだけたくさんの来場者を集め、掬い取ろうという底引き網漁法は根本的に改めるべきだ。疲弊するだけだ。
コスモスイニシアの「parkERs」とのコラボが素晴らしかった戸建て「グランフォーラム練馬田柄」の記事を添付する。「ドルチェ大森山王」も見学してレポートする予定だ。

記者のデスクに置いているポトス
レベル高い分譲戸建て再確認 小田急不動産「リーフィア経堂四丁目」

「リーフィア経堂四丁目」
小田急不動産が6月中旬に分譲する戸建て「リーフィア経堂四丁目」を見学した。閑静な住宅街に位置する全10戸で、プレミアム仕様の住戸は価格に見合う価値はあると見た。
物件は、小田急線経堂駅から徒歩13分・千歳船橋駅から徒歩7分、世田谷区経堂四丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全10戸。土地面積は100.26~125.48㎡、建物面積は93.36~133.63㎡、予定価格は9,900万円台~16,000万円台(最多価格帯12,000万円台)。建物は竣工済み。構造・規模は木造2階建て(2×4工法)。施工は東急建設。
現地は、区画整理事業によって前面道路が6m以上確保されている良好な住宅街の一角。
全体敷地は邸宅が建っていたところで、各住戸の外構は風格を漂わせる門塀と植栽を施し、ロートアルミ門扉・装飾、リーフィアをデザインしたサイン付きとしているのが特徴。一部私道はインターロッキング舗装。
約6.25mの南側公道に面した4住戸はビルトインガレージ付き(一部住戸除く)で、主な基本性能・設備仕様は、リビング天井高2,800ミリ、玄関吹き抜け、1620バスルーム、フィオレストーン天板、バックカウンター・吊戸棚(一部住戸除く)、Low-Eガラス、樹脂素材を採用したハイブリッドサッシ、良水工房、スピーカー付きダウンライト(2か所)、エコカラットなど。


8号棟1階LDK
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久々に同社の分譲戸建てを見学した。先月末に同社の「リーフィア南大沢〈ガーデンズ〉」を見学・取材はしているが、モデルハウスは見ていない。
第一印象は、かつてたくさん見た同社の都市型戸建てと基本的にはレベルは変わっていないということだ。植栽は豊かだし、同社のブランド〝リーフィア〟をアレンジしたアルミ製サインなど細かなデザインも施されていた。全体的なレベルは高い。これが確認できて嬉しかった。
〝これはいい〟と思ったのが、玄関、洗面などの床や巾木に採用されていた御影石・タイル調のフローリングだった。ほとんどの人は本物の御影石だと思うはずだ。どこの製品だったか聞くべきだったか。
スピーカー付きダウンライトもいい。これを見るのは4物件目か。パナソニック製で、音がすごくいい。スマートスピーカーと連動させればいろんな音楽が楽しめる。ある現場で〝西武ライオンズの応援歌かけて〟と言ったらちゃんと歌ってくれて感激した。
一つ注文をつけるなら廊下・階段のメーターモジュール化だ。最近は一部のハウスメーカー、デベロッパーの戸建てにしか採用されなくなっただが、同社は他のデベロッパーに先駆けて建坪が30坪でも極力メーターモジュールを採用した。

外構

玄関フローリング
「宿泊事業」倍増、シニア向けも6案件 コスモスイニシア 中期経営計画
コスモスイニシアは5月22日、2019年3月期決算&中期経営計画2021説明会を行った。高木嘉幸社長は前・中期経営計画が目標通り達成できたことから、次期計画では「Next GOOD」のミッションを掲げ、2012年度売上高1,350億円(2018年度1,046億円)、営業利益81億円(同54億円)、自己資本比率30%(同23%)を目指すとし、すべての経営活動におけるCSVの実践~SDGs/ESGを意識した経営を行うと話した。
軌道に乗ったアパートメントホテル事業を「ソリューション事業」から区分し、新たに「宿泊事業」セグメントを設け、売上高220億円(2018年度101億円)、営業利益28億円(同19億円)に拡大する。
前期計画のふりかえりでは、5期連続の増収・営業増益を達成し、売上高・営業利益は3か年累計計画を上回り売上高1.2倍、営業利益1.5倍に拡大(対2015年度)、配当も7円(2015年度)から11円(2018年度予定)へ増配を継続していることなどを説明。
アクティブシニア向け分譲マンションは6号プロジェクトまで内定していると話した。
働き方改革「WSI(Work Style Innovation)」では、2015年3月期と比較して2019年3月期は残業時間42%減、休日出勤日数99%減、有休休暇取得44%増となり、営業利益は208%増となった。
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2018年3月末までに稼働した8カ所のアパートメントホテルの平均稼働率は82.2%、平均客室単価は2.5万円、平均滞在日数は2.9日間で、宿泊者の国別内訳は日本8%、台湾26%、中国12%、香港10%、韓国7%、その他アジア15%などで、ほぼ想定通りのようだ。
記者も京都のホテルで体験宿泊したが、利用者には好評のようだ。他も同じようなホテルに参入しつつあるようだが、創業者利得を享受できるのではないか。
記者が注目しているのは「工事事業」だ。売上高150億円(2018年度117億円)、営業利益5億円(同4億円)、構成比率11%(同)としているが、この事業を担うコスモスモアは「HARUMI FLAG」のマンションギャラリーの施工を受注したように、デザイン・設計・企画力は高い。
ただ、セグメント名称の「工事事業」はいかがなものか。設計、デザイン部門であることを分かりやすくしたほうがいいのではないか。展開次第では長期的に売上高300億円(三井デザインテックは2017年度334億円)くらいに伸ばせるのではないか。
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全体として決算説明・中計説明会はとても分かりやすいものだったが、一つ希望を言えば、主力のレジデンシャル部門は競争が激しく、今後も伸長は難しいのは分かるのだが、商品企画、例えば〝魅せる玄関〟や、戸建てのリビング天井高5m、リビング-バルコニーのフラット化などについて高木社長には触れてほしかった。
〝山菜の女王〟腰油と一緒だ。同社の事業規模は大手デベロッパーと比べれば小さいが、商品企画は突出しており業界をリードしている。
同業の記者やアナリストの方もお金、数字では計れない価値を見出すことに力を注いではどうか。小生などは大手・中小まったく関係ない。優れた商品企画・デザインに出会えることに無上の喜びを感じる。
〝業界のイチロー〟目指すのか 絶好調の住友不 マンション「銀座東」竣工

「シティタワー銀座東」(後ろが三井不動産レジデンシャルのマンション)
住友不動産は5月23日、大規模免震タワーマンション「シティタワー銀座東」が完成したのに伴う記者見学会を開催。「DEUX TOURS(ドゥ・トゥール)」にも設けた「SOHO」タイプも公開した。5月下旬から入居を開始する。
物件は、東京メトロ日比谷線八丁堀駅から徒歩5分、JR東京駅から徒歩20分、中央区湊二丁目に位置する22階建て全492戸(うちSOHOは88室)。専有面積は44.28~83.95㎡(SOHO34.54~44.99㎡)、坪単価は455万円。2019年1月29日に竣工済み。設計・施工は五洋建設。空地率を50%以上確保したゆとりある配棟計画が特徴。
2017年8月に販売を開始してからこれまで約2,020組の来場者を集め、全体の6割が契約済み(SOHOは約3割)。
マンションの契約者は30~40代(57.3%)のパワーカップルや60代以上(19.4%)のシニア層が中心。全体の5割強が2次取得者。用途は6割強が実需。従前の居住地は23区内が全体の6割強。
SOHOは、専用のエントランス、エレベーター、メールボックスなどを設け、宅急便発送やタクシー手配などの業務を取り扱う「コンシェルジュ」や、会議や打ち合わせに利用できる「ミーティングルーム」も整備。価格は4,529.4万~5,941.6万円。
契約者の年齢は30歳代(17.6%)、40歳代(29.4%)、50歳代(17.6%)、60歳代(35.4%)と幅広く、職業は会社役員・経営者(42.1%)、会社一般職(26.3%)、会社管理職(5.3%)、無職(26.3%)、現居住地は中央区(21.0%)、港区(15.8%)、23区他(15.8%)、その他(47.4%)。東京オフィスとして地方の人が利用するケースが多いという。
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SOHOにもっとも関心があった。設備仕様はほとんど普通のマンションと変わらない。ゲストルームやスカイラウンジも利用できる。
契約条件として、会社として登記する必要があり、不特定多数の人が出入りする職種や「居住のみ」は不可。契約者はSOHO利用として賃貸することも可能。賃料は17.5万円(坪1.6万円)/月。
約3割が契約済みというのは多いのか少ないのかわからないが、今後普及するのではないか。

植栽
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見学会では、同社広報担当者が「新築マンション供給戸数の年次別推移(1973~2018年)」「首都圏マンション平均価格と借入限度額の推移」「平均価格と基準金利の推移」「メジャーセブンの供給戸数とシェアの推移」の表をもとに、現在のマンション市況は決して悪くないことなどをレクチャーした。
「メジャーセブンの供給戸数とシェアの推移」では、メジャーセブンの供給シェアはリーマン・ショックまでは24~28%だったのが、2008年に29%に上昇、その後はどんどん比率を高め、この8年間は39~46%で推移している。供給会社は2001年が410社だったのが、2018年1~11月は112社になっているとしている。

高層界からの東京駅方面の眺望(眼下に公園、小学校、由緒ある神社)
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昨日も書いたのだが、同社の中期計画では、分譲事業は「量を追わず利益重視で販売ペースをコントロールしていく」「競争激化の用地取得環境が続く中、『好球必打』で着実に確保する方針は継続する」としているので、いったい「好球必打」とはどう意味か、西武ファンの記者はそれぞれロッテファン、阪神ファンの同社広報担当者に次のように質問した。
「好球必打のプロ選手はロッテにも阪神にもいない(双方のファンは怒るか)。西武の山川は本塁打をよく打つが、三振も多い。秋山も打率はせいぜい3割5分。いったい誰に例えればいいか」
返ってきた答えが面白い。「イチローさんは自分が好きなコースはボールでもヒットにする。それと同じ。うちが『好球』と判断した土地を『必打』するということ。三振? ありだと思います」
なるほど。同社が今後どのような用地を仕入れるか注目することにしよう。同社も「競争激化の用地取得環境が続く」と見ているように、マンションデベロッパーはみんな仕入れに苦労している。ストライクだけ狙っていたら、まず買えない。
それにしても、同社は今期計上予定戸数5,300戸に対し期首時点で約80%(前年約65%)が契約済というからすごい。三井不動産の75%を上回る。マンションデベロッパーの〝イチロー〟を目指すのか。
分譲事業は「好球必打」(住友不)「量から質(中身)」(三井不)の時代の流れ加速(2019/5/22)
三井不動産レジデンシャル「パークシティ中央湊ザ タワー」竣工見学会(2017/11/27)

隣の公園(記者は「禁煙」は「禁止」にかかると、つまり吸っていいのかと理解したのだが…)
分譲事業は「好球必打」(住友不)「量から質(中身)」(三井不)の時代の流れ加速
分譲事業で営業利益率10%を確保するのは困難 各社の2019年3月期決算数字(2019/5/22)
分譲事業で営業利益率10%を確保するのは困難と書いた。別格は住友不動産だ。2019年3月期の「不動産販売事業」は売上高3,318億円、営業利益471億円(営業利益率14.2%)だ。今期計上予定戸数5,300戸に対し期首時点で約80%(前年約65%)が契約済というから絶好調というほかない。
しかし、第八次中期経営計画(2020/3~2022/3)では「第七次で実現した高水準の利益規模を維持する」としながら、「量を追わず利益重視で販売ペースをコントロールしていく」「競争激化の用地取得環境が続く中、『好球必打』で着実に確保する方針は継続する」と戦略の転換を匂わせている。量的拡大の時代は終わったとみるべきだ。
2019年3月期の売上高、営業利益、経常利益、純利益とも過去最高を更新するなど非の打ちどころのない好決算となった三井不動産の分譲事業はどうか。
投資家向け・海外住宅分譲を含めた売上高は前期比311億円増の5,307億円、粗利益率は38.4%(前期24.7%)と伸び、営業利益は150億円増の980億円(営業利益率9.3%)となった。
これらの結果に対して、経理部長委嘱の執行役員・富樫烈氏は「営業利益率9.3%はとても高い水準」とし、マンション分譲が大幅に増加し、前期比372億円増の554億円となった海外事業については「出来すぎ」と語った。
期末契約済み戸数はマンション4,331戸、戸建て119戸合わせ4,450戸となり、今期マンションの計上予定戸数3,400戸の進捗率は約75%。
完成在庫はマンション141戸、戸建て30戸を合わせて171戸で、計上戸数に対する割合は4.5%しかない。
三井不動産も〝量から質(中身)〟に完全に移行していることを次の表から知ることができる。
表は、同社の過去11年間のマンション・戸建ての計上戸数、完成在庫、売上高の推移を見たものだ。
戸数は2014年3月期にマンション・戸建て合わせ7,473戸を計上したが、その後は漸減しており、2019年3月期は3,754戸に減らしている。ほぼ半減だ。
しかし、売上高は約17%しか減らしていない。なぜか。1戸当たりの価格を比較するとその理由がはっきりする。2014年3月期は1戸当たり4,618万円であるのに対し2019年3月期は7,594万円だ。実に64%も上昇している。最近は戸建てよりマンションの価格のほうが上回っているのも特徴だ。
同業他社と比較して、アッパーミドル・富裕層向けで圧倒的な差をつけているのが見て取れる。確実に利益が確保でき、在庫も出さない戦略を徹底しているとみた。(東京建物の2018年12月期の分譲の売上高は726億円で、1戸当たり単価は7,351万円と高い)

分譲事業で営業利益率10%を確保するのは困難 各社の2019年3月期決算数字
今週の業界紙「住宅新報」と「週刊住宅」の1面はともに主要不動産会社の2019年3月期決算概要記事で、「旺盛な不動産需要が追い風」(住宅新報)「根強いオフィス、投資需要」(週刊住宅)として、最高決算が相次いだことを報じている。集計対象は住宅新報が31社、週刊住宅は63社。
これはこれで有難いのだが、住宅新報の表は売上高、経常利益、純利益の前期実績と今期業績予想しかなく、週刊住宅もこれらに営業利益を加えているのみだ。
これでは専門紙としては不十分だ。読者の立場からすれば、これらの数字だけではなく、例えば営業利益率、セグメント別、「ROA(総資産利益率)」、「ROE(自己資本利益率)」なども知りたい。
◇ ◆ ◇
両紙の表を基に電卓を叩いて、各社の営業利益率をはじいてみた。大手では住友不動産がトップで21.8%、以下、三菱地所18.1%、東京建物17.1%(2018年12月期)、三井不動産14.1%、野村不動産HD11.8%、東急不動産HD8.9%の順。
数値が高いのはビルや投資事業、不動産活用が中心の会社で、京阪神ビルディング36.2%、ダイビル25.4%、サンフロンティア不動産25.0%、平和不動産23.6%などとなっている。
その他、売上げが多い会社の営業利益率はプレザンスコーポレーション16.9%、エフジェー・ネクスト12.3%、スターツコーポレーション11.7%などが高い数値を示している。
分譲が主力の会社では日本エスリード12.4%、日神不動産7.8%、飯田グループHD7.2%、タカラレーベン7.6%、明和地所6.0%、ケイアイスター不動産5.7%など。長谷工コーポレーションは11.0%。
表中に森ビルと森トラストが抜けていたので調べたら、森ビルは5月21日発表で、売上高2,461億円、営業利益611億円(営業利益率24.8%)、森トラストは5月16日発表で、売上高1,748億円、営業利益344億円(営業利益率19.7%)だった。
大和地所レジデンスも5月22日に発表し、売上高367億円、営業利益45億円(営業利益率12.3%)となっている。
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これらの数値から分かるのは、分譲事業〝単品〟で利益率10%を確保するのは容易でないことだ。プレザンスコーポやエフジェー・ネクスト、日本エスリードは極めて好調ということができるが、3社とも投資向けやコンパクトマンションの比率が高いのが好調な要因ではないか。
その意味では、ほとんどがファミリー向けの大和地所レジデンスの利益率の高さは注目に値する。商品企画力の反映だと思う。
半年で330~340戸成約 驚嘆すべき売れ行き 全678戸の野村不「吉祥寺」

「プラウドシティ吉祥寺」完成予想図
前回の「プラウド南阿佐ヶ谷」に続いて、売れ行き好調の野村不動産「プラウドシティ吉祥寺」を紹介する。吉祥寺駅からバス便の全678戸の大規模だが、約半年で330~340戸を成約するなど驚嘆すべき売れ行きだ。
物件は、JR中央線吉祥寺駅から徒歩23分(バス約10分)、三鷹市下連雀五丁目に位置する敷地面積約26,405㎡、8階建て全678戸。専有面積は68.59~83.70㎡、坪単価は262万円。売主は同社のほか日清紡ホールディングス(土地売主)。竣工予定は2020年1月中旬。施工は長谷工コーポレーション。
同社は昨年12月、第1期140戸を即日完売したと発表しているが、その後も順調に売れており、これまでに370戸を供給し、330~340戸を成約している。来場者は約3,600組。
現地は、日本無線三鷹製作所の跡地。敷地内に商業施設、認可保育園、学童施設、バス停を設けるとともに、既存樹の樹高25mのヒマラヤスギ2本をエントランスに残し、緑地率を30%超に高め、「ABINC認証」を取得することなどが特徴。隣接地には同社のシニア向け住宅(サービス付き高齢者向け住宅)も建設する。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2.45(3階以上)~2.5m(1・2階)、御影石キッチンカウンター、ディスポーザー、食洗機、Low-Eガラスなど。

バス停とヒマラヤスギ
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吉祥寺、または三鷹駅からバス便の三鷹市内のマンションの取材を20件くらいはしたはずだ。売れ行きがよく印象に残っているのは大成有楽不動産「オーベルグランディオⅠ」(177戸)、「オーベルグランディオ吉祥寺II」(284戸)だが、緑被率の高い住友不動産「シティテラス吉祥寺南」(268戸)もいい物件だった。
価格上昇局面の数年前、同社は数百戸単位の完成在庫を出し利益率も落としたが、ここにきてまた勢いを取り戻しつつある印象を受ける。その原動力はやはり商品力であり販売力だ。
「吉祥寺」の販売事務所は商品特性をよく表現できている。第一に「住みたい街ナンバーワンの吉祥寺」を前面に打ち出していることだ。バス便は苦にならないどころか、徒歩でも駅に着くことを訴え切れているのも奏功しているのかもしれない。資料には「井の頭公園」には徒歩5分とあり、バス便についても、「徒歩0分」に屋根付きのバス停を設けるとある。(デベロッパー各社は〝駅近〟を強調することは一方では自らを苦境に陥らせることを理解すべき)
4×6mもある巨大な360分の1のジオラマ模型は立地特性を分かりやすく見せている。別のやはり同じくらいの大きさのマンションの模型、壁面展示では低木も含め2万本の植樹をおこない、緑被率を高め、充実した共用施設の〝見せる化〟も図っている。
水回りを共用廊下側に配した排水竪管から最大14m離しても設置可能な排水システム「Mi-Liful(ミライフル)」を採用し、水回りをバルコニー側に設置した2つのモデルルームの出来もいい。
競合すると思われる定期借地権付きの「三鷹」のマンションと比較し、所有権付きの優位性もしっかりと訴えている。
さて、ひとつ提案だ。半年で半分売れたのだから、残りも半年で完売できればいいのだろうが、そう簡単ではないはずだ。わずか半年で992戸を完売した「富久クロス」では、ユーザーから募ったアイデアを1000個の「イゴゴチ」にまとめ、シアターには「第九」の音楽を流した。長いマンションの歴史で「第九」をシアターに流したのは後にも先にもこの物件しかないはずだ。
「富久クロス」で「第九」を流したのだから、今度は記者の好きなヘンデル「水上の音楽」はどうか。井の頭公園の池、住宅地内の緑のテーマにぴったりではないか。バラの香りを館内に漂わせれば来場者は感動するはずだ。アルプスの爽やかな風も吹かせたらどうか。
気になったことも一つ。建物の高さ25m規制だ。この物件に限ったことではないが、高さ規制を緩和して公開空地を増やしたほうがはるかにマンションも街もよくなるはずなのに…。

木造ゲストハウス
駅1分、敷地南側は1低層でワイドスパン 高単価の野村不「南阿佐ヶ谷」完売へ

「プラウド南阿佐ヶ谷」完成予想図
販売好調の野村不動産「プラウド南阿佐ヶ谷」と「プラウドシティ吉祥寺」を見学した。高単価ながらプランが素晴らしい「南阿佐ヶ谷」から紹介する。
物件は、東京メトロ丸ノ内線南阿佐ヶ谷駅から徒歩1分、JR中央線・総武線 阿佐ヶ谷駅から徒歩9分、杉並区成田東四丁目に位置する14階建て99戸。専有面積は36.21~75.48㎡、坪単価は440~450万円。竣工予定は2020年3月下旬。施工は矢作建設工業。売主は同社のほか矢作地所。デザイン監修は南條洋雄氏。
今年初めからモデルルームをオープンし、3月に第1期80戸を分譲してからこれまで97戸を成約。残りは2戸と好調。来場者は約650件。
現地は、三方道路で敷地北側は青梅街道、南側は第一種低層住居専用地域が広がる商業地域立地。
建物は基壇部に光の演出を施すなど印象的なデザインとし、住戸は内廊下方式の1フロア8戸(2階は3戸)構成で、南向きはファミリータイプ、北向きはコンパクトタイプ。主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高約2,650〜2,750ミリ、天井カセットエアコン、食洗機、ディスポーザー、吊戸棚など。

基壇部
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読者の皆さんはどう思われるか分からないが、〝即日完売のプラウド〟のブランド力と、駅から徒歩1分、三方道路で敷地南側が1低層という立地と抜群のプランであることから判断して売れるのは当然と見た。
70㎡台の南向きの間口は約6.8m・7.7m・7.9mで、南東向き、南西向きも約9.3m、9.8mあり、北向き36㎡のコンパクトも6.7mある。
リビング天井高も最近ほとんど見なくなった2,650〜2,750ミリ確保しているのもいい。

南向き71㎡(間口は7.9m)
すてきナイス社長 木暮氏から杉田氏へ交代 平田会長、日暮副会長は辞任 強制捜査受け
すてきナイスグループは5月20日、同日付で代表取締役社長・木暮博雄氏が取締役に退き、新しい代表取締役社長に取締役・杉田理之氏が就任したと発表した。
今年5月16日、証券取引等監視委員会の強制調査と横浜地方検察庁による強制捜査を受けたのに伴い、今後の取締役会の意思決定等をスムーズに行うためとしている。
また、代表取締役会長兼CEO・平田恒一郎氏は代表取締役および取締役、子会社ナイスの代表取締役および取締役を、代表取締役副会長・日暮清氏は代表取締役および取締役、ナイス取締役をそれぞれ辞任した。
杉田氏は1958年2月14日生まれ。1983年4月、同社入社。2011年6月、ナイス取締役常務執行役員資材事業本部長、2018年6月、ナイス代表取締役社長、2019年5月、すてきナイスグループ代表取締役社長兼ナイス代表取締役社長(現任)。
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非常に残念だ。記者は、平田氏がアメリカ留学から帰られたころから取材しており、RBA野球に参加されていること(小暮氏は選手、監督として出場経験あり)、さらに同社が森林・林業の再生、木材の普及に力を入れていることなどからずっと応援してきた。
野球選手を通じてアットホームな社風が伝わってきて、とても好きなチームの一つでもある。
強制捜査を受けた日の前日15日、平田氏が理事を務める不動産協会の総会・懇親会があり、平田氏は7~8人の部下を従え精力的に動き回られていた。小暮氏の姿はなかったように思う。

