忙中閑 殺・死・盗・暴 あおる野球記事に理解を 〝記事はラブレター〟
関西学院大-日大のアメリカンフットボールの試合で、「一発で潰せ」などという監督・コーチの指示で「違法タックル」を行った選手の行為が物議をかもし、社会問題となり、刑事事件に発展しつつある。
記者はアメフトについては全く知識がないので何とも言えないが、野球に関してはグラウンド内の出来事が刑事事件まで発展したケースは「黒い霧事件」など2、3件しかないはずだ。
刑事事件まで発展しないのは、野球はもとよりスポーツは個々の人間がより強く美しく豊かに生きるための文化であり、娯楽であり、社会通念に照らし合わせ、よほど悪質なプレーでない限り容認しあう暗黙のルールも存在するからだろうと思う。厳密にルールを適用していたらスポーツは成り立たない。
そんなことを考えていたら、アメフトに触発されたのか、過剰反応を示しているのか、RBA野球の取材・記事にナーバスになっている関係者が増えたような気がする。「個人情報だから」と。
もちろん、記者も個人情報の扱いには注意を払っている。ネットの時代だ。以前のように書き手と読み手がキャッチボールのように意思疎通できる時代でなくなってきた。意図とは全く逆に解釈され、拡散する危険性も記事ははらむ。個人の自由と表現の自由、この線引きが難しい。
この問題に逡巡していたら、1行たりとも書けない。勇を揮って書くしかない。基本に据えているのは〝記事はラブレター〟だ。時には勇み足もするし、性格そのものの品性に欠ける表現をすることも少なくない。それでも記事に「愛」を込めれば理解されると信じている。
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野球用語は「殺」「死」「盗」「暴」であふれている。むしろそれを煽っている。
「殺」にはは刺殺、併殺、捕殺、挟殺、封殺があり、三重殺まである。「死」もまた死球、1死2死、憤死にキラー(殺人)もある。「盗」では盗塁がある。「とどめを刺す」「とどめの一発」「撃沈」「暴走」なども当たり前のように使われる。
つまり、たくさん相手を殺したかチーム(巨人は正式には巨人軍)が勝者、勇者となり、たくさん三振に「斬って取る」投手がいい投手として称賛される。打者もまた、相手をねじ伏せる一発逆転のサヨナラ満塁弾を放てる選手が高い評価を得る。それか野球だ。
そもそも野球は戦争に見立てて考案されたスポーツだからだ。とくに、わが国では戦前、鬼畜米英に対する敵愾心を煽る目的もあってそのような言葉に翻訳された経緯がある。
中には「サドンデス」(突然死)が「タイブレーク」(均衡を破る)に変更されたものもあるが、禍々しい言葉であふれている野球はすっかり文化として定着している。
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RBA野球関係者のみなさん、野球は人生を豊かにする文化です。「殺」「死」「盗」「殺」などの戦争用語が頻々と登場するスポーツであるからこそ、それにふさわしい激烈な表現でみなさんを戦場に引きずり込むのが記者の役割だと考えています。どうか記者の意を汲んでいただき、多少の脱線にはご寛恕くださいますようお願いします。
〝羽ばたけないかごの鳥〟国交省 団地再生検討会 エアコンなし 議論白熱 30度超に
第4回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会(第2期)」
浅見氏
国土交通省は6月8日、第4回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会(第2期)」(座長:浅見泰司・東大大学院教授)を開催。住宅団地の再生のために必要な方策について検討を行う上での課題を整理するため、横浜市の取組みや野村不動産のマンション建て替えの実績・課題などに関するプレゼンテーションについて意見交換を行った。
小林秀樹委員(千葉大大学院教授)は、法制度の課題と提言について資料を提出。ポンプ室跡地に高齢者住宅を事業者が建設した例を紹介。エレベーターを増設しなくても団地に住み続けられるとした。専有部分を有する新棟の建設であり、現行法では全員同意が求められる。このため、特別多数決による敷地分割制度があると団地再生事業の推進が容易になると話した。
横浜市の建築局長・坂和伸賢氏は、左近山団地、たまプラーザ駅北口、団地再生コンソーシアムなどについて語った。
同省では今後、近年の制度見直し内容を踏まえ、再生手法の活用や戸建て住宅団地の再生・魅力向上の観点も含めて幅広く検討していく。
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検討会の会場は霞が関の中央合同庁舎2号館。会が始まるや否や、同省担当者は「冷房を予定していたのですが、6月いっぱいはエアコンが使えない決まりになっておりまして、申しわけございません」と切り出した。とたん、暑さが襲ってきた。汗が噴き出した。
冒頭で挨拶した同省・真鍋純大臣官房審議官も「そのような事情で会場は暑くなっている。お詫びいたします」と追い打ちをかけ、これまでの検討会の経緯などを述べた後、最後に「皆さんの論議も熱くなることを期待している」と語って、公務のためか会場を抜け出した。
会場に〝鳥〟残された委員、関係者、傍聴者は80人超。会合は2時間。会が終わってから同省担当者に「気温は何度? 」と聞いても「28度よりは暑いかもしれない。体感温度はひとそれぞれ」とつれない返事しか返ってこなかった。間違いなく30度を突破していたと参加者は感じたのではないか。
この日は欠席した辛口の櫻井敬子委員(学習院大教授)なら、「法そのものが窮屈で、こんな狭くて暑い会場で妙案が出るはずがない」と一喝したはずだ。
世の中はクールビズ一色。しかし、国のシンクタンクである国交省の会議室がこんな劣悪な労働・温度環境で、どうして同省が推進している生産性向上が図れるのか。
記者の事務所はクラシックのBGMが流れ、フェイクでない本物の緑がふんだんに置かれ、わが机の上には鎮静剤の役割を果たしてくれるドクダミが芳香を放っている。
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しかし、最悪の環境ではあったが、会合そのものは真鍋氏の期待した通り議論白熱、沸騰した(と感じたのは記者だけか)。体感温度を2~3度は上げたはずだ。
ここで、団地建替えがなぜ進まないか、いちいち書く時間がない。最小限にとどめる。
野村不動産住宅事業本部マンション建替推進部副部長兼開発課長・目黒朝樹氏らが同社の21件上る建て替え事例や、居住者の負担を軽くするため敷地を二分割し、保留地を確保して建て替えを進めていることを紹介したうえで、一団地の解消が進まないこと、区分所有法や地区計画など法の壁があること、事業採算性があわないこと、権利関係が複雑で事業が長期化するリスクなど課題も多く、部分売却制度はもっと簡便化を図るべきなど話した。
この問題に対して、委員の大西誠氏(不動産鑑定士、竹中工務店特命理事)は、「心情的には野村さんの味方に付きたいが、正直にいって、それは公平性が担保されているのかという疑問も湧く。わがままではないかといわれかねない」と率直な意見を述べた。
そして何より、記者の心を揺さぶったのは、この大西氏と戎正晴委員(弁護士)の法とは何か、生きることとはどういうことかの根源的な核心にズバリと迫った当意即妙の言葉だった。
大西氏は、「マンションに住むと(区分所有)法から逃れられなくなる」と話した。一方、戎氏も、パタパタと扇子が踊っていた会場を皮肉ったのか、「(マンション居住者は)羽ばたけないかごの鳥」と、記者が住むわが多摩ニュータウンそのものの苦境を言い当て、さらにまた「無能力者の扱いをどうするか。法は意思表示をしない人について何の手当もしていない」「都心部はともかく、地方は建て替えの〝タ〟の字も出ないのが現状」などと語った。
だが、しかし、大西氏も戎氏も、どうすべきかについて言及しなかった。これこそが問題だと記者は思ったのでストレートに両氏に質問した。
大西氏には「法から抜け出すにはどうすればいいか」と、戎氏には「〝タ〟の字も出ないわたしはどうしたらいいのか」と。
大西氏いわく。「国交省は法務省とタッグを組んで法の改正(解消とは話さなかった)を図るべき」と。戎氏は「それを論議するのだ」と笑った。
委員の方たちは、あれやこれやの法律から解き放たれ、自由に天空を舞うオオルリのような存在にマンション居住者や記者をしてくれるのか。次回以降に期待だ。
住民主導のもう一つの「奇跡の街」 横浜・金沢文庫 西柴団地「さくら茶屋」見学(2018/2/14)
大和リゾート フラッグシップ「ダイワロイヤルホテルグランデ 京都」9日オープン
「ダイワロイヤルホテルグランデ 京都」
大和ハウスグループの大和リゾートは6月7日、同社のフラッグシップホテル「ダイワロイヤルホテルグランデ 京都」を6月9日にオープンすると発表した。
京都駅八条口から徒歩5分の9階建て延べ床面積約12,717㎡。客室は20㎡のスーペリアダブルから44~81㎡のスイート(最多は25~28㎡のデラックスダブル)まで7タイプ全272室。
エントランスからホテル内部に至るまで「和」テイストのデザインを施し、京都ならではの静かで落ち着いた雰囲気を演出しているのが特徴。
9か国の言葉に対応できるネイティブスタッフが対応し、特別仕様のエグゼクティブフロア(7~9階)では高品質なサービスを提供し、全室に無料のモバイル端末「handy」を用意し、シモンズ社製ベッドを使用。イタリア人シェフによる料理は本場の味だけでなく、日本料理の旨みを巧みに取り入れているという。
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同社のホテルは、わが故郷三重県の志摩にもあるがロビーを一通り見わたし、レベルを判断しただけで、泊ったことはない。
なので、今回のホテルはニュースリリースを引き写すしかない。料金をネットで調べたら、朝食付きのダブル・ツインが約36,000円くらいだった。これも高いのか安いのか分からない。
これが情けない。3年前、オータパブリケーションズ専務・村上実氏に三井デザインテックのイベントでお会いし、驚天動地、仰天、驚嘆、驚愕、感服すると同時に、腹の底から嫉妬した。その時、記事で次のように書いた。
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村上氏は、自らのホームページで「一般読者向けの『月刊ザ・ホテル』編集長時代は年間150日国内外のホテル巡りという体力勝負の時代も経験。…現在毎日必ず1回はホテルで食事をすることをライフスタイルにしています」とある。記者もホテルは究極のマンションだから、名だたるホテルは見てきているが村上氏は桁違いだ。
今はガウディの「サグラダ・ファミリア」に何やら提案することを考えているそうだ。余計なお世話だが、毎日、ホテルで食事したら、ガウディどころかガチョウのフォアグラにならないか。お金はどうして工面するのだろう。
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ホテルもマンションもこれくらい取材しないと、読者の心に響く記事は書けないということだ。村上氏なら一瞬にしてこのホテルのレベルを理解するだろう。
ロビー
すてきナイス 木質繊維断熱材(ウッドファイバー)の普及に注力
すてきナイスグループが木質繊維断熱材(ウッドファイバー)の普及に力を入れる。同社社長でグループのウッドファイバー株式会社の社長も務める日暮清氏が5月31日行われたグループの業況と事業展開に関する説明会で明らかにした。
ウッドファイバーは、断熱性能だけでなく、蓄熱性、調湿性、吸音性、防火性に優れ、なによりも主原料を間伐材などの木材を使用することからエコで製造から建築物の省エネルギーに至るまでCO2削減効果が高いとされている。
しかし、一般的なグラスウールと比較して価格が倍くらいかかるため、公共建築物くらいにしか採用ざれず、個人住宅などにはなかなか普及していない。
この問題について、日暮社長は、「期待されているにも関わらず、(ウッドファイバー)が普及しないのはコスト、価格が合わないからだが、今後は各県に呼び掛けて、各県から丸太を工場がある苫小牧に運び、商品にしてまたその県に戻し、県産材の活用という切り口で営業していく必要がある。また、環境税(地球温暖化対策税)の税収の使い道としても提案していく必要がある」などと、県産材の活用や環境税の使途の切り口で営業していくと語った。
積年の課題 〝大丸有〟に初のホテル 三井不動産「大手町」17日開業
「三井ガーデンホテル大手町」
三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントは6月6日、大手町駅から徒歩3 分の宿泊主体のホテル「三井ガーデンホテル大手町」の記者発表会・内覧会を行ない、6月17日(日)に開業すると発表した。同ホテルブランドとしては21番目で、客室数は5,528室となる。
大手町駅から徒歩3分、東京駅からでも徒歩10分と利便性が高いことから、ビジネスユースのほか観光・レジャー用のニーズも高いとし、「Urban Oasis」をコンセプトに、自然を感じさせる木や緑を共用部分や客室内に多用しているのが特徴。1階に設けたレストランでは滞在スタイルに合わせたオールデイダイニングとする。客室単価は1.7~1.8万円を見込んでいる。
発表会に臨んだ三井不動産ホテル・リゾート本部 ホテル事業部長・小田祐氏は、「世界都市ランキング3位の東京を訪れる観光客はどこを目指すのかといえば皇居や大丸有が上位に位置する。このエリアにホテルを開業するのが積年の課題だった」と語った。
施設は、千代田区内神田2丁目に位置する14階建て延床面積約6.238㎡。客室は18㎡のモデレートタイプ(106室)が中心の全191室。建物所有者は中央土地で、三井不動産が賃借し、三井不動産ホテルマネジメントが転借、運営する。
エントランス
ベーカリーカフェ(緑はフェイク)
◇ ◆ ◇
どこまでもへそ曲がりの記者は、同社ホテル稼働率が90%を超え、外国人と日本人の宿泊客比率が以前は4:6だったのが最近は逆転し、観光・レジャーとビジネスユースの割合も3:7から6:4くらいになっていると小田氏や三井不動産ホテルマネジメント・足立充社長が誇らしげに語っても心を揺り動かされることはなかった。
日常的にホテルを取材している他の記者にとっては周知の事実で、旧聞に属する類のことであるくらいは容易に想像できる。
そんなことより、ビビッときたのは、小田氏が「大丸有にホテルを開業するのが積年の課題だった。2020年度には運営ホテルは1満室を超えるメドが立ち、長期的にはアジアを中心とする海外展開などを考えると燎原の火のごとく拡がるのではないか」と語ったことに対してだった。
今回オープンするホテルは、先にも書いた通り千代田区内神田2丁目にある。「大丸有」は「道」とか「街」のような普通名詞ではなく固有名詞だ。いまから20~30年前、東京都、千代田区、大丸有まちづくり協議会が定めたエリアのことで、内神田はそれに該当しない。ホテルの傍を流れる日本橋川と鎌倉橋がその境界線になっており、ホテルは大丸有のはずれでも入り口でもない。
それでも小田氏が「大丸有」を口にしたのは、三菱地所の牙城である大丸有に楔を打ち込めたことが感無量だったのかもしれなないし、大丸有の本丸にある「(仮称)OH-1計画」ではフォーシーズンズホテルを開業することになっており、大丸有の外堀では先に「東京ミッドタウン日比谷」を開業し、八重洲では「ブルガリホテル」を開設することを発表できたのがよほどうれしかったのだろう。
一方、三菱地所は「大丸有」に「八重洲・日本橋」を加えた投資額にして1兆円を超える「東京駅前常盤橋プロジェクト」を推進中だ。
三井不動産と三菱地所がそれぞれの不可侵の領域に飛車角クラスの拠点を築くのが面白いではないか。
しかし、記者はだからといって全面戦争の展開にはならないと読む。そんな無謀な疲弊するばかりの他社を喜ばすような愚を犯さないはずだ。菰田社長と吉田社長はこっそりと陰で手を握っているのではないか。
小田氏
◇ ◆ ◇
記者のホテルを見る視点、基準が狂っているのかもしれないが、廊下、室内の天井高が2.4メートル(一部最高は2.7メートル)で、トイレ・洗面・浴室は3点セットが採用されているのは理解できない。マンション見学会の3倍くらいの報道陣が駆け付けたのも記者の理解の範疇を超える。
手前の鎌倉橋より内が大丸有
国産針葉樹の特長保持しながら傷つきやすい難点解消 ナイス 無垢の新素材開発
通常の無垢材(左)と「Gywood(ギュッド)」
すてきナイスグループは、スギ、ヒノキ、マツなどの国産針葉樹の軽くて、断熱性が高く、暖かくて美しい特長を保持しながら、表面だけをほどよい硬さにすることで、針葉樹の弱点であった傷つきやすさを解消した表層圧密テクノロジー「Gywood(ギュッド)」を開発した。
平成28年度・29年度林野庁補助事業「新たな木材需要創出総合プロジェクト事業」のうち都市の木質化に向けた新たな製品・技術の開発・普及部門に選定されたプロジェクトで、東京大学、京都大学、京都府立大学、宮崎県木材利用技術センター、ベターリビングとともに開発・研究を行ってきた。
「Gywood(ギュッド)」は、無垢材の表層部のみを高密度化するため、優れた形状安定性、硬いのに軽い、硬いのに温かい、硬いのに衝撃吸収性がある、軽くて切りやすいのにクギききがよい、無添加無垢材という7つの物理的特長を持つ「無垢の新素材」。
同社・日暮清社長は、5月31日行った同社グループ業況・事業展開説明会で「まだ開発途上だが、用途は多様で、わが国の地域創生や林業・木材産業の復権に貢献することを目指す」と語った。
敷地内に建っていた100年超の古民家古木を採用 細田工務店 分譲戸建て「武蔵境」
「グローイングスクエア武蔵境ストロングスマート」
細田工務店は6月5日、築後100年以上の古民家の古材をモデルハウスなどに活用した「グローイングスクエア武蔵境ストロングスマート」の見学会を報道陣向けに行った。価格は未定としているが、すぐ近くには玉川上水が流れる一角で、いったいいくらの値を付けるか。
物件は、JR中央線武蔵境駅から徒歩17分(バス5分、バス停徒歩2分)、西東京市新町5丁目の第一種住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全17区画。敷地面積は110.0~115.56㎡、建物面積は91.86~103.44㎡、第1期(8戸)の価格は未定だが、南道路の住戸は6,000万円台の後半になる模様。規模・構造は木造軸組(在来)工法2階建て。建物は外構を残しほぼ完成済み。
現地は、玉川上水へ徒歩2分、小金井公園も徒歩圏の住宅街の一角。従前の敷地は700~800坪くらいあり、築100年以上の古民家が建っていたところで、オーナーが住まなくなって10数年が経過しているが、その後はケア施設や学童クラブなどとして利用されてきたという。同社が相対で敷地を取得した。
開発に当たっては、近隣住民の惜しむ声を生かすために古材の一部をモデルハウスに残すことを決定した。
建物の解体は、同社の大工チームが建てた順とは逆に1本ずつはがしながら行い、保管し、再生利用した。
再利用に使用したのは、天井板、戸襖、化粧柱、丸太梁、壁面化粧板など。
外構にも古材が使用されていた
◇ ◆ ◇
モデルハウスは2階リビングの約28坪。玄関に入ると、壁には額装が施された一服の絵のような下見板が飾られ、天井板からは昔から使われていたと思われる時代物の照明が吊るされていた。
2階のダイニングには丸太梁が化粧梁として、洗面所の鏡廻りの額装が、床柱には落とし掛け材がそれぞれ採用され、高さ40センチの小上がり部分には大工さんも名前が分からないという硬そうな材質が用いられていた。
この価値をどう見るかだが、古民家風デザインが好きな人にはたまらないのではないか。記者ならもっと徹底してやるが。
玄関(左)と2階洗面所
キッチンからダイニング・リビング写す
ダイニング天井(天井高は3150ミリ)
◇ ◆ ◇
現地の近くに流れる玉川上水の両岸には緑が生い茂り、ひんやりとした冷風が古民家風のモデルハウスを見学したばかりの記者の火照ったほほを撫でた。
川の水量は太宰治が入水心中したほどではないが、つがいの鯉が泳ぐには十分すぎで、付かず離れず、波風ではなくて穏やかな波紋でもって、「ここは住みいいよ」とまだ梅雨前だというのに季節外れの、あるいは〝色鯉〟は季節に関係ないのか秋波をまき散らしていた。
玉川上水(中央に鯉が泳いでいる)
「生きているうちが花よ」「2人に1人がん」 新小岩駅前の商店街を歩く
新小岩駅南口-(これが美しいか)
「足が弱って目が見えなくなって、耳も聞こえなくなった」「90になって独り暮らし? えらいわね」「夜になると寂しい」「そうよね」「だから、電気をつけっぱなしで寝るの」「そう、それがいい。テレビをつけっぱなしという人もいるわよ」「でも、しょっちゅう、2時間おきくらいに起きちゃうの。トイレに行きたくなる」「まだまだ若いわよ」「子どもの世話になりたくないからね。子どもだって、親のために生きているわけじゃないし」「そうよね、わたしも姑で苦労したもの」「そーなの」「生きているうちが花よ」
新小岩駅前のアーケード街「ルミエール商店街」の真ん中に置かれたベンチで二人の後期高齢者と思われる女性が話し合っていた。
◇ ◆ ◇
次の取材まで時間があったので、約1時間、商店街を歩いた。ネオン、看板、立て看とそのコピーをいくつか紹介する。
「コピー5円」(この前のホテルオークラは40円だった)「仏花80円」(花屋)「さらば膝の痛み」(整骨院)「生サーモン(左の店)冷シャンプー(左の店)」「2階ですけど、どうかご安心してお入りください。物件情報量と情熱だけは、どこにも負けません」(間口が狭い宅建業者)
「100円」(回転寿司)「「らぁ麺420円」「4円パチンコ」「古着100円」「新発売いきなり値引き 本体一括0円」(モバイル)「6月羽ばたく飛翔」(トートロジーのパチンコ屋)「万引き警戒」「禁止拍照」「防犯カメラ作動中」「2人に1人ががんと言われています」(何屋だったか。記者も〝お前はダニだ〟と言われたことあり)「閉店セール オール¥30」「24時間営業 大漁」「喫煙ルーム 未成年の方の入室はご遠慮ください」(コンビニ)
「ルミエール商店街」
◇ ◆ ◇
駅前の喫煙コーナーには「葛飾区きれいで清潔なまちをつくる条例」が平成13年3月に施行されたことが紹介されていた。
その条例には、「まちを汚す行為」として、区内の道路・公園その他の公共の場所で「吸い殻・空き缶等をみだりに捨てること」「歩行喫煙をすること」「飼い犬等のふんを放置すること」「落書きをすること」が禁止され、「区の責務」として「きれいで清潔なまちづくりを推進するための施策を総合的に実施する」こと、「区民等の責務」や「事業者の責務」には市が推進する施策に協力することが書かれている。
「守ろうよ わたしの好きな 街だから」
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平成18年に施行された景観法の第一条(目的)には、「この法律は、我が国の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする」とある。
しかし、「良好な景観」「美しく風格のある国土」「潤いのある豊かな生活環境」「個性的で活力ある地域社会」「国民経済及び地域社会の健全な発展」とは何かについては、全文を読んでも全く書かれていない-〝カオスが美だ〟という説もある。
新小岩駅(左)と秋葉原駅のホームの階段(どっちがきれいか)
〝待つわ〟ピアキッチン4割に設置 レベル高いが一層の差別化を ポラス「浦和美園」
「ルピアグランデ浦和美園」完成予想図
ポラスグループの中央住宅は6月1日、グループ最大級のマンション「ルピアグランデ浦和美園」の第1期分譲(50戸)を6月16日(土)から販売開始すると発表した。坪単価は150万円。同社オリジナルの「ピアキッチン」付きを約4割に高め、食洗機、ディスポーザー、バックカウンター・吊戸棚、98センチの廊下幅、複層ガラスなどを標準装備。この単価でこれほどの設備仕様を確保しているマンションはまずない。それをいかに訴えられるかがカギを握る。
物件は、埼玉高速鉄道線浦和美園駅から徒歩8分、さいたま市岩槻区美園東一丁目に位置する15階建て全340戸。専有面積は65.41~83.39㎡、第1期(50戸)の予定価格は2,400万円台~4,500万円台、坪単価は150万円。竣工予定は2020年1月下旬。施工・設計は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、総開発面積約313ヘクタールの「みそのウイングシティ」の一角で、徒歩1分には約14,000㎡の浦和美園4丁目公園が完成し、竣工までに保育園や学童クラブ、クリニック、小学校などが開設される。
建物は、ほぼ南東向きで、平置駐車場が238台、サイクルポートが340区画、近隣住民にも開放する「パームガーデン」、街とつながる「エントランスガーデン」などを整備する。敷地面積12,000㎡には約13,000本の樹木を植栽する。
住戸プランは、「ピアキッチン」付きを132戸(全体の約38%)採用。廊下幅約98センチを確保し、ダウンライトを天井の中央ではなく一方の壁側に寄せることで〝ギャラリー〟空間を演出。ディスポーザーもシンクの端に寄せることで、シンク下の収納スペースが有効に使えるようにしている。このほか、食洗機、「かくれんBOX」などを標準装備、埼玉県初のセキュリティシステム「ワイレモ」を導入している。
見学会に臨んだ同社取締役事業部長・金児正治氏は「12年前、イオンモールがオープンしたのと同時期に172棟の戸建てを分譲したエリア。ここで340戸の大規模マンションを分譲することになって感慨深い。街のランドマークになるよう隣接する戸建て街区との複合開発として位置づけた。2018年3月期のマンション事業の売上高は102億円となり、初めて100億円を突破した。近くシニア向け、コンパクト、つなぐをコンセプトにした新しいファミリー向けも投入し、果敢にチャレンジしていく」などと語った。
「パームガーデン」
◇ ◆ ◇
この日は、梅雨入りはまだなのに初夏のように暑かったのだが、金児氏と同社マインドスクェア事業部 マンションディビジョン部長・中島教介氏、販売代理の長谷工アーベストの担当者がそれぞれ熱く語ったのに圧倒された。
中でも、中島氏がピアキッチンについて触れ、「これまで分譲したマンションのピアキッチン付きは人気が高く、早く売れてしまい、購入できなかったお客さん数十組から『次のピアキッチン付きを待つわ』と仰っていただいている」と語ったことに驚愕もし、さもありなんとも思った。
ピアキッチンは同社が初採用したときから称賛し、折に触れ記事にもしてきた。ショートスパンでは採用が難しいからだろうが、これまでの供給物件では3割くらいしか設置されてこなかったのではないか。
今回は一挙に4割近くに増やす。大正解だ。見出しにはあみんさんの「待つわ」を取った。ただ、いつまでも待たされたらそっぽを向かれるぞ!
キッチンの天井高もしかり。一般的なマンションのキッチンの天井高は2200ミリくらいしかない。床下に通す排水管は勾配を持たせなければならないからだが、ピアキッチン付きはリビング天井高(今回は2500ミリ)と同じ高さで設置できるのが特徴だ。その他の商品企画レベルも高い。
しかし、その一方で注文もある。記者は同社のマンションを8割くらいは見学している。最近では「新小岩」「西大宮」「妙典」などだが、きめの細かい商品企画は舌を巻くほどだ。
一つだけ例を示す。引き戸がいいのは言うまでもなく、最近はどこもソフトクローズ機能付きにしている。これをいち早く採用したのが同社だし、開閉両方をソフトクローズ式にしたのは同社が初めてではなかったかと記憶している。今回の物件はそうではなかった。収納もこれまでの物件と比べ仕上げレベルは明らかに劣る。
坪150万円だからと、他社と同じだからと納得してしまう部分もあるが、同社の戸建てと同様、マンションでも圧倒的な差別化を図り、今後参入する事業でも存在感を示そうとするのであれば、利益率を落としてでも仕様レベルを上げるべきだ。外観も、大規模マンションは分棟はともかく分節手法を用いたデザインにすべきというのが記者の持論だ。
さらに言えば、商品企画レベルの高さをパンフレットやホームページでは訴え切れていないと思う。それしかないのならともかく、価格の優位性だけでは訴求力は弱い。
ついでに、同業の記者にも一言。その商品が優れているか劣っているのか、判断するにはたくさん商品をみないと分からない。ハウスメーカーの記者はデベロッパーのマンションをほとんど見ないのではないか。
見る目を養わないと、いつまでたってもニュース・リリースを引き写すことしかできない。リライターに成り下がっていいのか。
ピアキッチン
ディスポーザーの位置に注目
◇ ◆ ◇
産休・育休から復帰したわが娘のようなマンションディビジョン部の西牟田奈津子氏に約1年ぶりにお会いし、二人の初々しい新入社員を紹介され舞い上がった。もう10年くらい前か、西牟田氏が商品企画開発に熱心だったので、当時、業界の最先端を走っていた大京に頼んで、あるマンションのモデルルームを一緒に見にいったことがある。いまは完全に立場が逆転した。教わるのは記者だ。
もう一つ。帰りの電車でも同社のこれまた育休明けのかわいい神田氏と話すことができたのが何よりうれしかった。阿波踊りより一緒に酒を飲みたい。
販売事務所の入口で、サッカーワールドカップ日本代表に選ばれた浦和レッズの槙野選手の等身大に近いボードに接することができたのは、フェイクの観葉植物を見たのと同程度の印象しか受けなかった。
左端が新入社員の塚本雅美氏と、右端が川尻裕貴氏(左から2人目が槙野選手)
埼玉県最大級 1,400戸の「SHINTO CITY(シント シティ)」始動 東京建物ほか
「SHINTO CITY(シント シティ)」
東京建物、住友不動産、野村不動産、近鉄不動産、住友商事、東急不動産は5月31日、さいたま市新都心エリアで埼玉県最大級の総戸数約1,400戸の分譲マンション「SHINTO CITY(シント シティ)」の開発に着手したと発表した。2018 年秋にモデルルームをオープンする予定。
埼玉県内で駅徒歩5 分以内かつ1,000 戸以上の物件は22 年ぶりの供給で、約2,880 ㎡の緑地空間やオープンスペースを確保し、居住者のコミュニティを支援する。開発に当たって、共用施設は1 万人以上の生活者を対象に実施した「幸せに関するアンケート」に基づく意見をもとに商品・ソフトサービスをHITOTOWAと提携して提案する。
物件は、JR京浜東北線・東北本線(宇都宮線)・高崎線さいたま新都心駅から徒歩5分の都市計画事業北袋町一丁目土地区画整理事業施工地区7 街区に位置する総開発面積26,000 ㎡超の15 階建て約1,400戸。第I・第II街区は約1,000戸で、専有面積は66.40 ㎡~92.15 ㎡。施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は第I街区が2020年12月下旬、第II街区が2021年12月中旬。
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まだ先の話だが、果たして単価はいくらになるか。坪単価230万円くらいだったらよく売れると見たが、そこまでは安くないはずだ。坪250万円はないのではないか。