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「ウォシュレット 一体形ネオレストNX」

 無謀な企て挑戦かもしれないが、今年の取材テーマの一つにトイレを中心とした設備仕様のレベルアップを掲げることにした。目的は、働き方改革と表裏一体をなす主婦、あるいは主夫の家事労働の軽減だ。水回り商品の技術開発は日進月歩している。ハウスメーカー・デベロッパーが最新の商品を採用すれば、間違いなく家事労働の軽減につながるはずだからだ。(記者は家事労働を金額に換算すると年間約350万円とはじいている)

 その第一弾が、わが国トップの衛生陶器メーカーで世界ランキングでも上位と言われるTOTOへの取材だ。

 もう30年くらい前か。バリアフリーがメーカーのテーマになりだしたころ、TOTOが取り組みを強化するというので取材した。同社担当者から「バリアフリーという言葉は死滅すべき。バリアがなくなれば、われわれの部署も必要なくなる」という主旨の話を聞き感激したのをいまでも思い出す。(「国家は死滅する」と言ったのはマルクスだ)

 そして今回。同社広報部東京広報グループ・松竹博文氏は「当社の製品はすべてユニバーサルデザイン(UD)。チェックリストがあり、全てはそれに沿っているかで決定される」と語った。

 業績的には、2018年3月期は売上高5,860億円、営業利益401億円で、リフォームなどリモデル事業は堅調だったが、国内住宅・建設動向の伸び悩み、中国不動産市況の悪化などの影響を受け減収減益となったが、デザインと機能の融合の取り組みが評価され「iFデザイン賞2019」「レッドドット・デザイン賞2019」を受賞。また、社会的責任投資指数「FTSE4Good Index Series」の構成銘柄に3年連続、「Dow Jones Sustainability World Indices (DJSI World) 」の構成銘柄に7度目としてそれぞれ選定されたのも、UDの取り組みと無関係ではないはずだ。

 わがハウスメーカー・デベロッパーはどうか。「当社の商品はすべてユニバーサルデザイン」と言い切れるところはどれだけあるだろうか。

 記者の主な取材フィールドであるマンション・分譲戸建てに限って言えば、もちろん各社ともUDを謳っている。しかし、かつてのニチモや扶桑レクセルのようにUDを理念に掲げ、廊下幅をメーターモジュールにし、トイレドア幅を広げたりしているところは数えるほどしかない。建築費の上昇などで居住面積は縮小し、設備仕様レベルもダウンしている。高齢者のいる世帯で〝バリア〟のない住宅に住んでいる割合は42.4%と過半に達していない。全体的にはUDの取り組みは退行傾向にあるのではないか。

 さて、〝松竹〟というとてもおめでたい名前の松竹氏によると、松竹姓は諫早市など長崎県では珍しくなく、松竹ウメさんもいるそうだ(記者は竹松さんを知っている)。その松竹氏から新宿にあるショールームでトイレや浴槽、水栓などについて説明を聞き、商品を見せてもらった。

 「すべてユニバーサルデザイン」というだけあって、「バリアフリーブック」はとても参考になった。A3版139ページにもわたるもので、UDの約50年の取り組みが紹介されている。うち約半分は介護・車いすが必要になっても住み続けられるプランの紹介で、理想的なプランとしてトイレ、洗面、浴室はそれぞれ1坪サイズを推奨している。これをすべて満たしている分譲マンションはまずない。どこか採用しないだろうか。

 フラッグシップモデルの「ウォシュレット 一体形ネオレストNX」は美しい。「トルネード洗浄」「フチなし形状」「エアインワンダーウェーブ洗浄」「きれい除菌水」「セフィオンテクト」などフルスペックを装備すると価格は60万円台だ。戸建て用の最高位の商品は周辺の部材を含めて百数十万円だった。

 話は男性の尿の飛散に及んだ。松竹氏は、「尿は結構壁などに飛散する。男性も座って用を足すと飛散は軽減する」と話した(ご本人はどうなのか聞き忘れた)。同社のアンケート調査によると「男性ワーカーが実際に小用時に洋式便器を使用する割合は5割以上(57%)」としているが本当だろうか。

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◇       ◆     ◇

 各デベロッパーはマンションにどこのどのようなトイレを採用しているか。早速調べることにした。

 「築地」の6物件(2物件は戦線離脱)約500戸はすべてINAX(LIXIL)の「サティスS」(DV-S716-R2)で、全439戸の総合地所「ルネ横浜戸塚」はTOTOの「TCF2222/2019 NWI」、全36戸の大成有楽不動産「オーベル新川崎」はTOTOの「SH341BAJ」だった。いずれもクラス的には5段階で中くらいか。

 パナソニックの「ビューティ・トワレAWM」は全59戸の同社「パークナード横濱上大岡」で見たが(使用はしていない)、尿が泡立つ糖尿病患者のそれよりもはるかに泡立ちがよく美しかった。JANIS製は全47戸のモリモト「ピアース浅草」に採用されていた。

◇       ◆     ◇

 東急不動産は昨年末、分譲中の「ブランズ北千住」にTOTOの「おそうじ浴槽」を業界としては首都圏で初めて採用すると発表した。これはいい。風呂掃除に1回最低10分、年間300日(利用しない日もある)として、50時間。時給1,000円として約5万円の節約になる。「おそうじ浴槽」の値段は20万円くらい(オプションを含めると50万円くらいか)だから4年間で元が取れる。

 TOTOには浴槽、床だけでなく壁も洗浄し、浴槽に入るだけで洗濯機のように身体を洗ってくれる浴室を開発してほしい。爆発的に売れるのではないか。

 TOTOは水栓にも力を入れている。世界三大デザイン賞と言われる「iFデザイン賞2019」「レッドドット・デザイン賞2019」を受賞したことを松竹氏はアピールした。

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◇       ◆     ◇

 デベロッパーの皆さんへ。設備機器・居住性能の充実・差別化にもっと取り組んでほしい。どんどん比較広告を展開してほしい。現在、トイレに関してはほとんど横並びではないか。せめて物件ホームページ、パンフレットに「グローエ」の水栓と同じようにメーカー、商品名くらい表記すべきだ。

 ユーザーの皆さんへ。モデルルームを見学する際はしっかり商品名をチェックすることをお勧めする。意外な事実がわかるかもしれない。

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最新のトイレ

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NEOREST

首都圏初 浴槽の自動洗浄・お湯はり「おそうじ浴槽」 東急不「北千住」に採用(2019/12/18)

汚れにくく落としやすいトイレ採用 伊藤忠都市開発「日本橋浜町公園」好調(2019/4/1)

富士山に登らなくて済む!? 忙しいママ・パパ向け ナイス「DIWKS PARFAIT」(2019/1/13)

いまどきの30代夫 完璧に家事こなすのは3割 旭化成ホームズが調査(2014/7/12)

女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)

 


 

カテゴリ: 2019年度

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1月28日付住宅新報 12面記事

 128日付住宅新報は、「主要デベロッパーの戸建て供給実績 安定供給の中で戦略に相違 ハウスメーカー規模の注文実績も」と4段見出しの記事を12面トップで報じた。業界紙の揚げ足など取りたくないが、取材姿勢に問題があり、初歩的なミスもあるので看過できない。書いた記者本人はもちろん、書かせた編集長にも考えてほしいので以下にいくつか記すことにした。小生のエールだと受け止めていただきたい。

記事のリードには「主要デベロッパーが供給する戸建て住宅の実績をまとめた」とある。「主要デベロッパー」とは何を指すのか不明だが、まあ、これはよしとしよう。ハウスメーカーは除外されていることが分かる。

次に「分譲マンションの供給が主力のデベロッパーは分譲戸建てを手掛けるのが主流」とある。これは意味不明。書いた本人も分からないはずだ。小生はこの段階でパニック状態。

分譲マンションが主力のデベロッパーと言えば、大京はそうでなくなったし、強いてあげれば明和地所、タカラレーベン、モリモト、大和地所レジデンスなどで、これらのデベロッパーは戸建てを手掛けるのが主流とすれば…数えるほどしかないはずだ。三井不動産や住友不動産、三菱地所、東急不動産などは分譲マンションが主力ではない。

さらに続けて「その一方、注文住宅受注や宅地分譲を中心に展開する企業もある」としている。これも理解不能。デベロッパーの中には注文住宅を手掛けるところは多くはないが、かといって少なくもない。また逆にハウスメーカーだって最近は〝街づくり〟など開発事業に力を入れている。

この傾向はさらに強まるはずだし、デベロッパーとハウスメーカーの垣根などそもそもない。業界紙の勝手で「デベロッパー」「ハウスメーカー」に分け、つまりバリアを設けて、取材体制を敷くところに根本的な問題がある。デベロッパー担当の記者はハウスメーカーのマンションや戸建て分譲を見ないし、ハウスメーカー担当者はその逆にデベロッパーの分譲するマンションや戸建てを見ない。これを改めない限り、記者はいつまでたってもマンションや分譲戸建てを理解することは不可能だろう。担当記者を業態や事業分野に振り分ける陋習というべき取材体制を改めるべきだ。

基本的なミスについて。普通なら4分の1程度に収まるはずの「主要デベロッパーの戸建て供給実績」の表だ。表に記載されているのは14社のみ。先にも書いたが、年間4万数千戸の戸建てを供給する飯田グループはデベロッパーではないのか。表にはないポラス、オープンハウス、ナイス、ケイアイスター不動産などはどう分類しているのか。分かったら教えてほしい。

かわいそうなのは三井不動産だ。表には三井不動産レジデンシャルの18年度の供給実績は「400戸程度」となっている。なるほど、調査は「供給戸数」とあるので、三井不動産の広報担当者は正直にそのように答えたのかもしれない。

しかし、同社の20193月期の分譲戸建ては売上高332億円(前期289億円)、計上戸数475戸(同501戸)、平均価格6,990万円(同5,788万円)、完成在庫30戸(同35戸)だ。同社はずっと以前からこのようにきちんと決算数字を発表している。

ところが、野村不動産の数値は「供給戸数」ではなく、20193月期の計上戸数647戸(前期607戸)をそのまま引き写していると思われる。

計る物差しは一緒にすべきだが、これまで三井に勝てなかった野村はついに計上戸数では三井を捉え上回ったことを表は示している。これは快挙かもしれない。記者はなぜこれを書かないか。

ただ、決算計上戸数は遅行指標であることを忘れてはいけないし、利益率も見なければならない。記者はここに的を絞ってもよかったと思うが、どうして野村が三井を戸数で上回ったか、過去6年間のそれぞれの計上戸数を比較するとその謎が解ける。( )内は三井-野村の順の戸数。

20143月期(916718

20153月期(899859

20163月期(751643

20173月期(639682

20183月期(501607

20193月期(475647

三井は20143月期の916戸をピークにこの5年間で戸数をほぼ半減させている。一方の野村は、明らかに三井を意識して急激に戸数を伸ばして来た。20153月期には鼻差まで迫った。ところが、急拡大に無理があったのか販売ペースは落ちた。2016年以降は600戸台にとどまっているのはそのせいだ。

過去6年間の計上戸数のトータルは三井が4,181戸で、野村が4,156戸となっている。勝負はこれからだ。三井がまた引き離すか、野村はこのままリードを保てるのか。三井の経理担当者は「当社は他社と戸数で争っているわけではない」と話したことがあるが…どうなるか。

もう一つ。住友不動産の断トツの数字にはあ然とするほかなかった。「18年度供給戸数は3,077棟」(他社は「戸」なのにわざわざ「棟」)とし、「ハウスメーカー並みの規模」と書く。この記者も書いている通り、住友の3,000戸は注文住宅だし、分譲戸建てはせいぜい100戸程度だ。記事は完全に破綻している。注文も含めるのなら三井ホーム、三菱地所ホーム、東急ホームズなども入れないと公平ではない。

このようなあり得ない基本的ミスを犯すのも、先に書いたように業界紙記者は身も心も悪弊に分断されているからだ。

参考までに、小生が8年前に書いたデベロッパーの建売住宅に関する記事を添付する。小生も注文が主力の大手ハウスメーカーを対象外とした。理由は簡単。調べるのに時間がかかるからだ。

ついでに言えば、マンションもそうだが、いわゆるパワービルダーと呼ばれる会社とデベロッパー、ハウスメーカーが供給する分譲戸建ては似て非なるものだ。同じ土俵で論じるのは適当かどうか。価格は倍ほども異なる。

さらに一言。きついことを言うようだが、この記者の方は現場を見ていない。記事を読めばすぐわかる。あの鶴岡一人は「グラウンドにはゼニが落ちている」と名言を残し、初代若乃花は「土俵の下には金が埋まっている」と語った。マクロデータをいくらかき回しても、ものは見えてこない。しっかり戸建て現場を取材してレポートしてほしい。

       ◆     ◇

 そのつもりはなかったのだが、新報を取り上げるなら週刊住宅も書かないと公平でないので書く。

 120日付週刊住宅の1面見出しだ。「取引価格は既に天井破り」にはドキッとすると同時に笑うしかなかった。

 〝破る〟のは〝心臓破り〟であり〝おきて破り〟しか小生は知らないし、〝天井を破る〟のは忍者かコソ泥か覗き魔しかいないはずだ。「天井知らず」または「青天井」と書くべきところを間違ってそう表現したのだろう。

が、しかし、確かにリート・ファンドは〝おきて破り〟に限りなく近いという意味では〝天井破り〟は的確に市場を捉えており、そのうちに新語として定着するかもしれない。

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1月20日付週刊住宅の見出し

建売住宅トップ一建設と2位のアーネストワンが激烈な首位争い(2012/7/17

カテゴリ: 2019年度

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「sequence|MIYASHITA PARK(渋谷宮下公園)」

 三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントは1月28日、トップクリエイターと共創した新ブランド「sequence(シークエンス)」を立ち上げ、第一弾に「MIYASHITA PARK(渋谷宮下公園)」、第二弾に「KYOTO GOJO(京都五条)」、第三弾に「SUIDOBASHI(水道橋)」(仮称)を開業すると発表。プレス発表会には三井不動産執行役員ホテル・リゾート本部長・川村豊氏、同社ホテル・リゾート本部 ホテル事業部長・小田祐氏、ウェルカム代表取締役・横川正紀氏、グリフォン代表取締役・齊藤貴史氏が出席し、事業説明・トークセッションなどを行った。会場には100名近いメディアが駆け付けた。

 新ブランド「sequence(シークエンス)」は、「つながり・連鎖・一連の流れ・連続」という意味の単語で、「自分だけの過ごし方を自由に創造・編集し、唯一無二の時間を過ごすことができ、様々なヒト・モノ・コトとの出会いにつながる場所になるように、という想い」を込めている。コンセプトは「SMART」「OPEN」「CULTURE」。

 ブランドロゴは、「sequence」の“s”をシンボル化し、円弧の連なりで構成され、離れたり、近づいたりする線、互いに影響し合う2つの円により、“やさしいつながり”を表現している。

 川村氏は、「初めてホテルを担当したのは入社して間もないころの30数年前。ハワイのハレクラニの〝オハナスピリット〟にとても新鮮に感じた。〝オハナ〟は日本語だと〝家族〟という意味で、ホテルは家族のようにほっとするところというのが原体験。これからはSNS、デジタル化の進展により体験をシェアする、よりクリエイティブに時間を楽しむ時代になる。そうした人の活動に温かく寄り添うことが大事。われわれはオリ・バラのもっと先、中長期的な視点でほっとできる場所をどうしたら提案できるか、新ブランドは3年前からオープンで論議し作り上げてきた。われわれの想いを伝えたい」と、事業意図などについて語った。

 「MIYASHITA PARK(渋谷宮下公園)」は渋谷駅から徒歩3分の18階建て全240室。客室面積は13.7~94.7㎡。平均ルームチャージは3万円前後。企画プロデュース・レストラン運営はウェルカム。設計・施工は竹中工務店。開業は6月11日。

 「KYOTO GOJO(京都五条)」は、京都市営地下鉄五条駅から徒歩3分の9階建て全208室。客室面積は19.5~47.2㎡、中心ルームチャージは2万円前後。企画プロデュース・レストラン運営はグリフォン。フロアデザインはグリフォン、三井デザインテック。設計・施工は三井住友建設。7月22日開業。

 「SUIDOBASHI(水道橋)」は、千代田区神田三崎町2丁目の全119室。開業は2020年秋。

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「sequence|KYOTO GOJO(京都五条)」

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「sequence|SUIDOBASHI(水道橋)」(仮称)

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 同社のホテル取材は今回で20回目くらいか。いつになく関係者の力が入っていたような気がする。

 川村氏が入社当初にハワイのホテル担当になったのが原体験と語り、小田氏、横川氏、齊藤氏によるトークセッションでも魅惑的なフレーズがポンポンと飛び交い、いったいどのような火照目になるのかとワクワクさせられた。

 その模様をここで一つひとつ紹介するゆとりはない。一言一句を聞き逃すまいと必死でメモを取ったが、加齢による書き取り・聞き取り能力の退行、パソコンに頼り切っているための漢字力の低下などにより再現できない。なので、各氏が語った要旨を紹介する。

 小田氏は、「新ブランドに『ホテル』を入れなくて大丈夫かという声が社内にあったが、退路を断ち、腹をくくって腹を割って論議を進めてきた。心象風景として残るような舞台装置をつくった」などと述べた。

 横川氏は、「ホテル計画は普通ハード、デザインから始まるが、今回はソフトから始まった。3年間、様々な規制があるなかで、ほぼ毎週議論してきた。スマートがキーワードだった。『宮下公園』は360度抜けている。窓を大きく取り、小さな縁側を設けた。『水道橋』はバーがメイン。10年後に、海外からもベンチマークとなるような日本のホテルサービス、クオリティを提供できたらいい」と語った。

 齊藤氏は、「チェックイン、チェックアウトの時間を変えるのは大きな壁だったが、24時間、自由に出入りでき、多様な仲間と気楽に出会え、街と繋がりハブになるような空間を演出した。『水道橋』は住宅+ホテル+オフィスを足して3で割ったようなホテル」などと話した。

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左から小田氏、川村氏、横川氏、齊藤氏(東京ミッドタウン日比谷で)

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 一つだけ腑に落ちないことがあった。チェックアウトの時間を14時に設定したのは正解だと思う。ビジネスユースはともかく、観光などでホテルに宿泊し、ゆったり非日常を楽しもうというのに朝早く叩き起こされ、ブロイラーのように食事をさせられるのはまっぴらごめんだ。小生はもう30年くらい前からチェックアウトが10時の旅館・ホテルをほとんど利用したことがない。

 しかし、チェックインの時間を17時というのには腰を抜かすほど驚いた。チェックアウトの時間を14時にするのだから、チェックインはそのような時間にせざるを得ないのは分からないではないが、基本的にはフレキシブルにすべきというのが記者の持論だ。

 予算、目的にもよるが、われわれの年寄りは、14時か15時にホテルに着き、ホテルのデザイン、客室の飲み物、家具調度品、アメニティなどをチェックし、まず煙草を吸いコーヒーを飲み、ルームサービス、レストランのメニューなどを調べ、汗をかいていたらシャワーを浴び、それからホテルで食事するか外に出るかを決めるのが一般的ではないかと思う。

 同社は、事業説明でも宿泊客用のロッカーを備えると話したし、「京都駅前」に試泊させてもらったときも、そのようなサービスを行うことを知っていたが、果たしてどうなのか。

 若い人はどう考えるか、記者より一回りも二回りも若い女性記者数人に聞いた。「九州にはそのようなホテルがある。17時のチェックインはありだと思う」という声が大半だった。なるほど。

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メディア発表会

カテゴリ: 2019年度

 2019年12月29日死去したトータルブレイン代表取締役・久光龍彦(ひさみつたつひこ)氏の「お別れの会」が下記の通り行われる。

~記~

1.日時:2020年2月12日(水)午前11時30分~午後1時00分

2.場所:ホテルニューオータニザ・メイン宴会場階「芙蓉の間」

3.主催:株式会社トータルブレイン 代表取締役佐々木睦氏

4.喪主:久光美映子さん(故人の妻)

 ※式典等は執り行わず、随時献花を受け付ける。同社は香典、供花、供物、弔電などを辞退し、当日は名刺を受付に提示することをお願いしている。

 同社はまた、ホームページに故・久光龍彦氏への追悼メッセージのコーナーを掲載。故人に贈る言葉などを受け付けている。

 問い合わせ先はトータルブレイン電話:03―5575―7761 ホームページはhttp://totalbrain.co.jp/

〝業界の名物男〟逝く トータルブレイン社長・久光龍彦氏 享年79歳 死因は…(2020/1/6)

 

 

 

 


 

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多くの報道陣にカメラを向けられ恥ずかしそうなRobocar® Walk(丸の内パークビルで)

三菱地所など7社は120日から21日、世界初の空港リムジンバス・自動運転タクシー・自動運転モビリティを活用した「マース」(MaaSMobility as a Service)実証実験を実施する。20日、メディア向けに出発セレモニー・撮影会など行った。

午前930分に東京シティエアターミナルで関係者によるセレモニーが行われたのち、11時には自動運転タクシーに乗ったモデルの外国人男性客が丸の内パークビルに到着し、さらにアプリを利用して自動運転モビリティを利用し「丸の内仲通り沿い店舗」に到着するまでの様子が公開された。

実証実験を行うのは東京空港交通、東京シティ・エアターミナル、日本交通、日の丸交通、三菱地所、JTBZMP7社。

ZMPが開発した「Robocar® Walk」の運用費用は月額10万円/台、初期費用は500万円~。

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自動運転タクシーで丸の内パークビルに到着したモデルの外国人客

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 QRコードなるものを一度も利用したことがなく、スマホも満足に扱えず、MaaSの何だかさっぱりわからない記者はちんぷんかんぷん、あっけにとられるほかなかった。

 車の自動運転は却って危険ではないかと思えてならず、道行く人に「こんにちは」と黄色い声をかけ、たどんのような黒目の片方をだしぬけにピンクのハート型に変えたのを見て、〝かわいい!〟などと女性が殺到したらモビリティはパニック状態に陥るのではないかと心配もした。

 それよりも、駅や歩道や建築物のバリアを解消するのが先決ではないのか。京王新線新宿駅のホームからJR新宿駅の中央線ホームまでに7回も階段・エスカレーターを上り下りしなければならない。

それにしても、値段と重さが記者のものより数倍、いや数十倍もしそうなカメラを抱え、モビリティなるものを追っかけるメディアの人たちは何者だ。人数だってマンション取材の2倍、3倍の60名もいた。「北千住」が坪単価380万円で売れたことのほうがよほど報道する価値があると思うが…。

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モビリティに乗り込む外国人客

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この後すぐ、右目がピンク色のハート型に変わった

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記者はロボットより報道陣の数に驚いた

 

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1,000万本の木のストロープロジェクト」イベント(ベルサール八重洲で)

アキュラホームは115日、同社・宮沢俊哉社長が主宰する全国工務店グループSABMSmart Alliance Builder Member)とともに、環境貢献活動として取り組むカンナ削りの「1,000万本の木のストロープロジェクト」を始動すると発表。趣旨に賛同する約50人を招き、製作体験イベントも行った。

木のストローは、わが国の伝統技術である大工仕事のカンナ削りをヒントに木材(間伐材)を厚さ0.15㎜にスライスしたものをストロー状に巻き上げることに成功し開発したもの。201812月に発表して以来、森林保全や廃プラ問題を解決するソリューションとして国内外から注目され、G20大阪サミットやその他、国内外のイベントなどで採用されている。

プロジェクトは、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催の機会をとらえ、世界的な普及を加速させるのが狙い。有馬孝禮・東大名誉教授、末松孝弘・ザ・キャピトル東京ホテル東急支配人、高田光雄・京大名誉教授、中西哲也・元サッカー選手、長野麻子・林野庁木材利用課長、堀木エリ子・和紙作家、三井所清典・芝浦工大名誉教授、吉田倬郎・工学院大名誉教授など多くの人が賛同している。

 製作体験では、〝カンナ社長〟宮沢氏がカンナ削りのプロの腕前を披露し、一般の参加者は嬉々としてストローづくりに励んだ。

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カンナ削りを実演する宮沢社長

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記者が参加したのは、後半の製作体験イベントからだったが、最高に面白かった。参加者の男女比は3:7くらいで、外国人も10名くらい参加していた。

 特に目立ったのは2030歳代の〝美しい〟女性だった。〝木を愛する、環境を大事にする〟女性は身も心も美しいことを改めて確認した。

 何人かに声も掛けた。30代の女性は「環境問題はわたしもそうですが、むしろ主人のほうが熱心。スーパーのレジ袋などは受け取らないことにしています」と話し、20代のカップルは「〝木のストロー〟というワードを初めて知り、面白そうなので参加した。1万人が登録しているユーチューブに流します」と出来栄えに満足していた。

 関係者から、熟練者は5時間で100本製作すると聞いたので、時給1,000円として5,000円÷100本=50円と単価をはじいた。この原価では木のストローが一般家庭に普及するのは難しいかもしれないが、内職ならする人がいるのではないか。

 帰り際に、同社広報課長・杉山正純氏が胸に付けていたSDGsに目が留まり、「これは当社オリジナルの木で作ったもの。売りものじゃありません。予備があります。内緒で上げます」と貰った。この後取材した三井不動産「六本木」ホテルの記事で紹介した。〝穴掘り3年、鋸(ノコ)5年、墨付け8年、砥ぎ一生〟の「カンナ削り全国大会」の記事と合わせて読んで頂きたい。

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杉山氏が付けていたこのSDGsバッジを貰った(左)と大工歴約60年の山徳工務店・石田成徳氏(72)

アーティスティック! 建築・芸術家共演「三井ガーデンホテル六本木」124日開業(2020/1/17

横浜版「SDGsストロー・ヨコハマ」150円で販売開始 麦わらストローはどうか(2019/11/7

アキュラホーム&キャピトル東急 世界初の「木材ストロー」開発・導入へ(2018/12/11

厚さ数ミクロンのカンナ削りの技を競う「第30回全国削ろう会 小田原大会」(2014/11/10

 

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原告側弁護士の千葉恵子氏(左)と淵脇みどり氏(裁判後の日比谷図書館での集会で)

 いわゆる東京オリンピック選手村裁判【事件番号 平成29年(行ウ)第388号】の第8回口頭弁論が1月17日、東京地裁で行われ、被告側の東京都は、原告側主張の裏付けとなっている桝本鑑定士による鑑定評価の問題点の指摘や、開発法に基づく鑑定手法の正当性を盛り込んだ厚さ数センチに及ぶ書面を提出。「論点、争点は明らかになったはず。一日も早く結審していただきたい」と主張した。

 これに対して、都民ら原告側は「『廃棄した』とされる議事録を開示しない限り違法、不正の全貌は明らかにならない。人証申請も検討する」と反論した。

 裁判官は、「(原告側の)調査嘱託申し入れは(裁判に)なじまない。現時点で(裁判は)ズルズルと進んでいる。最終的にどのようにするか、(裁判が)五月雨式に進むことのないようにしていただきたい」と双方に注意を呼び掛けた。

 次回は6月12日、東京地裁419法廷で午後3時に行われることが決まった。

◇       ◆     ◇

 原告、被告の主張はどこまでいっても交わることのない平行線だ。いい加減、手打ちをしたほうがいいと思うが、双方ともその気は全くないようだ。このまままでは2020東京オリンピック開幕日の7月24日までに結審しそうもない。原告側は「会場に横断幕を掲げてやる」と息巻いている。

 争点となっている1:10もの開きがある双方の不動産鑑定評価額は、鑑定手法次第でそのようなものになるということであり、いくら論議しても合意に達することはなく、くんずほぐれつの泥試合となり、結局は裁判の長さだけ徒労感が募り、ぺんぺん草も生えない不毛の地を歩くことになるしかないと、右でも左でもないニュートラルの記者は思えてならないのだが、それぞれの立場だったらどうするか。

 まず。原告側。鑑定額の是非を問うのはもうやめる。いかようにもなることは分かったはずだ。不動産鑑定の権威を貶めたのは大きな成果だ。

 そんなことより、特約条項に盛り込まれている〝利益の山分け〟の不当性を徹底して突く。賭博のてら銭のようなやり取りを許していいのかを都民に問う。

 さらにまた、切り札があるとすれば、あの鳩山邦夫総務相の〝売却価格は安すぎる〟の一声で「かんぽの宿」の売買契約が白紙に戻ったように、政治力に頼ることだ。そんな影響力のある政治家がいるかどうかは知らないが…。

 次いで被告側。原告側が攻め立てる「情報開示」を真正面で受けとめ、堂々と詳らかにしてはどうか。痛くもない腹を探られるのは本意でないはずだ。

 そして、「特殊要因」をもっとアピールする。中央区の陸の孤島に4,000戸を超えるマンションを建設し、市場価格で売れるわけがないではないか。破格の価格で売却したのは、オリンピックを成功させるためであり、もはや取得が絶望的になった安価で良質マンションを都民に分譲することのどこが悪いのかを訴えるべきだ。

 ついでにもう一つ。記者は当初から〝レガシーマンション〟にするのなら、選手村に宿泊するアスリートのサイン、手形、足形、人拓(こんな言葉があるかどうかしらないが、つまり魚拓と一緒のようなもの)を残し、オークションにかけたら数億どころか数十億円の収入が得られるはずと主張してきたが、これはやろうとすればやれることが分かった。

 浅田真央さんや錦織圭さんのCMで知られるエアウィーヴの寝具が選手村の寝具に採用される。同社は何と、オリンピックに参加する選手の体重や体型、筋肉の付き方などを調べ上げ、18,000体の「個別仕様」ベッドを開発したのだそうだ。

 これをそのまま利用すれば、18,000体の人拓が完成する。わが国の金メダリストの人拓なら100万円以上の値がつくはずだし、平均50万円としても100億円近い金が転がり込むではないか。〝利益の山分け〟などというやくざの親分のような、あるいは一度は振った男に復縁を迫るような女々しい愚行を小池都知事は再選を目指すならやめたほうがいい。

◇       ◆     ◇

 この日、最高に盛り上がったのは、被告側男性弁護士が座ったまま裁判官の了解も得ずに発言した場面だ。これに対し、原告側女性弁護士は「座ったまま発言する態度は許せない」(〝そうだ!〟の野次)と息巻いた。

 記者は主にアメリカの法廷小説をよく読む。このようなシーンは度々登場する。裁判官は「法廷侮辱罪で退廷させる」と脅すのが普通だ。

 確かに座ったまま不規則発言をする弁護士は退場させてしかるべきだし、傍聴人に対しても注意を喚起すべきだ。(罵詈雑言の無法地帯となったら、それはそれで見ものだが)

黒白を付ける意味はあるのか オリンピック選手村裁判 双方の舌戦にうんざり(2019/9/18)

「かんぽの宿」売却問題について考える(2009/2/2)

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「財界賞・経営者賞贈呈式」で喜びを語る岩沙氏パレスホテルで)

三井不動産会長・岩沙弘道氏が経済研究所の雑誌「財界」の「財界賞(第64回)」を受賞した。「財界賞」はグローバルに社会に貢献し、広く日本経済を牽引した経済人を対象に選ばれるもの。今回で64回目。1月17日行われた授賞には1,000名超が詰めかけた。

岩沙氏は授賞式で、「身に余る光栄。Jリート創設や都市再生の街づくりを評価されたことは無上の喜び。社長に就任した22年前の不動産市場は資産デフレの極みにあったが、ピンチはチャンスと捉え、健全な市場形成に取り組んだ。Jリート市場は今や64リートが上場し、資産総額は19兆円まで成長した。日本橋、柏の葉、ミッドタウン六本木などの課題解決型の都市再生街づくりも推進してきた。もはやデフレは脱却した」などと喜びを語った。

「財界」の主幹で財界研究所代表取締役・村田博文氏は「Jリートを立ち上げ、不動産と金融を融合させることで金融危機を乗り切り、〝残しながら、蘇らせながら、創っていく〟街づくりをされた」と岩沙氏を称えた。

授賞式ではこのほか、「財界賞特別賞」を受賞したJXTGホールディングス名誉顧問・渡文明氏、「経営者賞」を受賞した日本電気会長・遠藤信博氏、ANAホールディングス社長・片野坂真哉氏、ディー・エヌ・エー会長・南場智子氏、東海バネ工業顧問・渡辺良機氏、エアウィーヴ会長兼社長・高岡本州氏がそれぞれ喜びを語った。

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村田氏

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       ◆     ◇

 記者は岩沙氏が同社社長に就任した1998年の就任会見でいっぺんにファンになった。出身地がわが三重県のとなり愛知県であることもさりながら、テノールに近い声は歯切れがよく美しく、「えー、あー」などの機能語をほとんど使わず所信を表明したからだ。〝この人は間違いなく三井と業界を変える〟と確信した。

 その後の岩沙氏の活躍は読者のみなさんもご存じのはずだ。記者がもっとも印象深いのは2001年(平成13年)の「六本木防衛庁跡地」の落札だった。同社など6社によるコンソーシアムを組み1,800億円で落札した。記者は入札日の半年前に「落札価格は1,750億円」と業界紙紙上で予測し、見事に的中させた。2位グループ以下とは確か400億円の差があったはずだ。

 そればかりでない。〝タイム イズ マネー〟だ。敷地内の埋蔵物発掘作業があったにも関わらず、6年後の2007年(平成19年)330日に開業してみせた。

 その後の「日本橋」「柏の葉」「豊洲」「芝浦」「川崎」などの面開発や「ららぽーと」などの商業施設開発でも他を圧倒した。〝機を見るに敏〟-この言葉にぴったりなのが岩沙氏だ。

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2020ミス・インターナショナル日本代表の寺内千穂さんと

       ◆     ◇

 授賞式後の懇親の場でも岩沙氏は他を圧した。他の受賞者にも多くの方が列をなしたが、岩沙氏の周りには、やや崩れかけた体形を覆い隠すのにぴったりの和服姿の日本橋の料亭女将然の方や才気煥発そのものの女子大の先生など、霊験にあやかろうとする女性が蝟集した。

 誰とでも分け隔てなく接するところが女性にも好かれるのだ。「岩沙さん、女性に持てるんですね」と声を掛けたら「いやいや、こういう日だからだよ」と満面に笑みを浮かべた。

 「財界」を創業したのはわが三重県尾鷲市出身の三鬼陽之助だ。

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「財界賞」は榊原・経団連会長 「経営者賞」に矢野・住林会長 後藤・西武HD社長など(2018/1/21

三井不動産・岩沙社長が経団連副会長に 八面六臂の活躍を期待(2008/2/1)

〝有言実行〟岩沙社長 目標達成に自信みせる(2007/5/10

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「三井ガーデンホテル六本木プレミア」

 三井不動産・三井不動産ホテルマネジメントは、「三井ガーデンホテル六本木プレミア」を1月24日に開業する。六本木駅から徒歩5分の14階建て客室数257室で、グループホテル31施設目。開業に先立つ1月15日、メディア向け内覧会・試食会が行われた。アーティスティックなホテルだ。Studio Akane Moriyama 森山茜氏の2層吹き抜けのファブリックアートは圧巻。

 国内外で活躍する日本の建築家やアーティスト、デザイナーを集結し、国際都市・六本木に相応しい艶やかさと日本らしさを併せ持つデザインを表現しているのが最大の特徴。

 外観・外構は光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所、エントランス・ロビーはテキスタイルデザイナーStudio Akane Moriyama 森山茜氏の2層吹き抜けのファブリックアート、ラウンジはアーティスト言上真舟氏によるガラスアート、レストラン&バーはインテリアデザイナーGLAMOROUS co., ltd. 森田恭通氏…など。

 外観は木目調素材を多用し「折り」を演出したデザインで、ファブリックアートはアルミのコーティングを施した極薄のピンクの布を重ね合わせたもので、オーロラのような不思議な世界を表現。ガラスアートはシンデレラになったような気分にさせ、森田氏は「モダン・アールデコ」で魅了する。

 施設は、東京メトロ日比谷線六本木駅から徒歩5分、港区六本木3丁目に位置する14階建て全257室。客室面積は20.5~63.1㎡、平均客室面積はホテルシリーズのなかで最大の約27㎡。ルームチャージは2万円台から3万円台が中心。フィットネスジムが併設されている。

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エントランス

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ロビー

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ロビーアート

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客室廊下アート

◇       ◆     ◇

 いつもそうなのだが、同社は内覧会後に最上階14階のレストラン&バー「BALCÓN TOKYO」(バルコン・トーキョー)での試食会を行った。

 記者はシャンパンを一杯頂き、もう一杯と何か食べようと長蛇の列に並んだ。と、そのとき、スタッフの方が「これは美味しいですよ。『腰長エビ』。爪の先まですべて食べられます」と「腰長エビ」なる料理を運んできた。

 隣に並んでいたよく知っている若い女性記者は「手が長いんですか」と話しかけたのに、品性に欠ける記者はスタッフに向かって「あなたは手が早いでしょ。わたしは手も足も出ない」と口走っていた。するとそのスタッフは「うまい!」と応えた。

 この二人の絶妙なやり取りを分からないふりをしたのか、女性記者は全然反応しなかったのだが、「腰長エビ」は抜群にうまかった。そこでもう一皿頂き、ついでにシャンパンを立て続けに2杯飲んだ。いい気分で帰る頃には「腰長エビ」はなくなっていた。店長!山菜の女王「コシアブラ」も美味しいですぞ!

 それにしても、同社の広報担当は記者がお願いした取材の件はすっぱり忘れていたのに、シャンパンを3杯でなく4杯飲んだことをなぜ知っていたのだ!

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レストラン

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レストラン個室

◇       ◆     ◇

 この日は、ホテル取材の前にアキュラホームの「木のストロー」イベントを取材した。取材をし終え帰ろうとしたら、同社広報課長・杉山正純氏のスーツの襟元のいつも見るものとは異なるSDGsバッジが目に留まった。

 物欲しげな顔をしていたのを杉山氏は感知したのか、「これは当社オリジナルの木で作ったもの。売りものじゃありません。予備があります。内緒で上げます」とくれた。

 嬉しくなって舞い上がり、早速胸に付けホテル会場で胸を張ったのだが、誰も反応を示さなかった。同業の記者に〝この胸の威光が目に入らぬか〟とばかり見せびらかしたら「何? それ」とつれない返事しか返ってこなかった。〝あんたたちはモグリか〟と出かかったのを必死でこらえた。

 だが、しかし、さすがかみさんだ。ほろ酔い気分で家に帰ったら、コートを会社に忘れてきたのには気が付かないのに、バッジを目ざとく発見するや否や「何よ、それ、みっともない」と、玄関先でバッジを剥がしにかかった。

 剥がされてなるかと記者もすぐさま反撃に出た。ちょうドそのとき、不倫騒動から風向きが変わった小泉進次郎環境相のバッジを付けた姿がテレビ画面に映し出されたので、「ほら、小泉さんだって付けている。そんじょそこらにあるものとは違うんだ」とやり込めたつもりだが、「フン、国会議員先生じゃあるまいし」とまるで取り合わない。

 確かに、SDGsバッジは大きく、いかにもこれ見よがしの善意の押し売りのような嫌みを感じ、付けるのは免罪符のように思えなくもないのだが、記者だって17項目の目標のうち10項目くらいは貢献している。こうなったら意地でも付け続けてやる。

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杉山氏からもらったSDGsバッジ

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津田氏

〝サラリーマン登山家〟津田三佐雄氏(72)が「サラリーマンと二足の草鞋を履いたとてつもない冒険野郎の軌跡と奇跡~5大陸最高峰に挑むと南極物語~」と題する講話を昨年末、OSI研究会(代表:篠原勲氏)の定例勉強会で行った。

「瑞宝中綬章」の受章者で齢85の明大名誉教授・百瀬恵夫氏をはじめ多くの参加者は、息つく暇もない生と死が紙一重の言語に絶する南極(難局)物語にあ然茫然するほかなく、話は1時間半にもわたったにもかかわらず、席を外す頻尿老人は一人としてなく異議を唱えるしわぶき一つ漏らさず、まるで氷原の南極に放り込まれて一瞬にして凍りつき、大人しく聞き入った。

津田氏は1948年生まれ。神奈川県小田原市出身。早大を卒業後、1971年富士フィルムに入社。「40歳以降は札幌、広島、中国、東京本社、医薬品製造の関連会社へと渡り歩き、本業のフィルムからはやや離れた辺境ばかり」(同氏)を歴任。2012年に退社した。

             ◆     ◇

登山の魅力・魔力にとり付かれたのは中学生の頃から。サラリーマンを続けながらヨーロッパアルプス最高峰のモンブラン(4,810m)、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5,895m)、北米大陸最高峰マッキンリー(6,194m)、南米大陸最高峰アコンカグア(6,959m)の登頂を40歳代までに成し遂げた。

 エベレストは何回かチャンスはあったものの、この時代会社の要職にありながら、2か月以上の長期休暇は許されず、ベースキャンプまで3回行くに留まっている。

 5大陸制覇を目指した南極大陸最高峰ビンソンマシフ(4,450m)への道のりは平たんではなかった。最初のトライは1993年。準備は着々と進んだが、富士山トレーニング中に靭帯を断裂。「登頂はできるかもしれないが、下りてこられない」と医師から忠告され断念。

チャレンジ2度目の2017年には、外国隊に参加を申し込んだが、言語や登攀スピードに不安を覚えまたも頓挫。

そして20188月の70歳のとき、「もう体力の限界。これが最後のチャンス」とばかり日本からの公募隊に応募、夢は実現した。メンバーは6名。他は4561歳の熟練者ばかり。津田氏は圧倒的な最年長者だった。

準備には万全を期した。装備は8,000mクラスのものを用意しなければならず、数十万円を掛け全て一新。低酸素室での訓練のほか、ほぼ毎日、ジムで標高差800mの登行、筋トレ、水泳(2,500m)を行った。

メルヴィルの「白鯨」が描いた厳しい自然にたじろぎながらチリ最南端のプンタアレナスを飛び立ったのは1226日。そして翌日の深夜1時、南極大陸の基地・ユニオングレッシャー(UG)に到着した。

それからベースキャンプ(2,100m)-ハイキャンプ(2,750m)-アタックキャンプ(3,750m)-頂上アタック(4,750m)-登頂目前での撤退までの9日間の生と死が紙一重、隣り合わせの想像を絶する過酷な体験談を津田氏はこともなげに語った。いかに南極が過酷であるかを次のように列挙した。

・飛行機はロシアの軍用機、好天の一瞬を狙って飛ぶ

・南極は雪原が広がるのではなく急峻な氷の山脈が連なっている

・ハイキャンプからアタックキャンプへは平均斜度は40度、最大斜度は45度の難所が立ちはだかる。    

・夜がない、音がない、臭いがない、色がない、変化がない

・吐く息は白くならない。液体物はすべて凍る。寝袋の中に抱いて寝る

・荷物は自身で約25キロ背負い、そりに約40キロ。ひたすら歩く

・排泄物、ごみはすべて持ち帰る(排泄物はあまり匂わないそうだ)

 頂上まで残り百数十mの地点で登攀を断念せざるを得なかったが、「登山の目的は登頂することではなく、無事に生還すること」を改めて学ぶことになる。「登頂はできたかもしれない。しかし左耳は感覚を全く失い、恐らく凍傷で切除せざるを得なかったであろう」とも語る。

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       ◆     ◇

 津田氏は、仕事では辺境(富士フィルムの今では基幹事業、しかし当時は周辺事業)をひたすら歩き、変狂(偏狂とは言わなかった)の軌跡(奇跡⇒鬼籍によくぞ入らなかった)を生々しく語った。

「植村直己さんが北米最高峰マッキンレー(現デナリ)で消息を絶った翌年(1985年)、我々はその頂きに立った。そしてその時リーダーであった和田昌平氏が、翌年冬季、南米最高峰アコンカグア南壁を登頂後、消息を絶った。翌年その奥さんの嘉代子さんを伴い、捜索を兼ねて登頂したが、昌平氏の姿を見つけ出すことはかなわず、頂上から離れようとしない彼女を下ろした。彼女は夫の亡霊に取りつくように、夫の登った山々の足跡を辿り始めた。そして1995年ヨーロッパアルプスのグランジョラス(4,208m)で悲劇が起きた。我々の目の前でパートナーとロープで結ばれたまま、岩壁を落ちていった。

 そして翌1996年、今度はグランジョラスで一緒だった岳友、難波康子がエベレストを登頂後遭難した。世界で二人目のセブンサミッターとなった直後の悲劇であった。この遭難は公募隊の功罪を問う事故として、話題を呼び、米国でベストセラーとなり映画化された」

自らも何度も奇跡的に危機を乗り越えた。2012年、エベレストのベースキャンプで突然尿閉塞に襲われた。ヘリで緊急搬送され一命をとりとめたときは、「1日遅れていたら死んでいた」と医者に言われたそうだ。

津田氏は登山の経験からサラリーマンとしての心構えについても言及した。

登頂成功の条件を3つ挙げた。

1)ベースキャンプをしっかり作ること

危機的状態にあっても、戻れるところがあれば再起を期すことができる。会社も個人も同じ。得意分野を持つことだ。

2)パートナーに対して常に自分の状況を伝えておくこと

ザイルを組んだ時からパートナーとは運命共同体だ。ヤバいと思ったら、背伸びせず、パートナーに伝えておけば救うことができる。上司と部下、先輩と後輩、友人、夫婦の間も同じだ。

  3)計画は戦略は楽観的に大胆に、戦術は最悪の事態を想定し、悲観的で緻密、細心であれ。これを逆にすると命を落とす。ビジネスも同じで必ず失敗する。

長期休暇の取得の手順についても語った。最初に了解を得るのは同僚で、次に取引先。外堀を固め、そして上司-社長だそうだ。有給休暇の範囲内であるにもかかわらず、7回の海外遠征の全てが社長決裁であったようだ。

 遠征の前後は無茶苦茶仕事をし、絶対行くという本気度を示し、殺し文句は「仕事の遅れは取り戻せるが、青春は取り戻せません」であったというと同時に「人は私のことを冒険家というが、山での1か月の冒険より、会社の長期休暇の取るまでの道程の方が、長く冒険的であった」という。

  全て周囲を固め同意を得たうえで、最後の難関壁は奥さん。しかし意外な言葉が返って来た。「わたしがダメと言ったらあなたはやめるの」「そういうのって、相談と言わない。宣言でしょ。だったら生きて帰って。死ぬときは捜索隊に迷惑(お金か)が掛からないようすぐ見つかるところで死んで」だという。津田氏は「何だかんだ言っても、死んだら残せるのは保険金だけ」と笑った(掛け金、保険金はいくらか話さなかった)。(サラリーマンはこれを見習うべき。順序を間違ってはいけない)。

しかし後で聞けば、1年前から準備し、そわそわしている姿を見ながら、薄々は「これは何か企んでる」とお見通しであった 奥さんもまたすごい。出掛ける時はいつもと変わらず「行ってらっしゃい」の一言で、決して不安を覗かせるような表情を浮かべず、玄関先か精々バス停までで、決して空港まで見送ることもなく送り出す。振り向きもしない。

「無理をしないでね」とは言うが、内心「無理をしないと山は登れない。しかし無茶はしない」といつも心に誓って出発したという。

そして帰還すると、全身を見渡し、真っ先に確認するのは身体のどこかが欠落・欠損していないかチェックが入るそうだ。

公募隊ついても津田氏は触れ、商業登山が蔓延し、技術が備わっていなくてもガイドが何とかするという安易な募集が遭難事故を起こすと問題点を指摘した。

最後にこれからの計画について語った。

2012年、64歳でリタイアを決意すると、再び冒険心が目覚めたという。体が動き、アドベンチャラスなことができるのは後10年、75歳までと心得「私の夢10年計画」を立てた。

   ヒマラヤ8,000m峰登頂がかなわなければ、14座全てのベースキャンプを巡る

   南極大陸最高峰ビンソンマシフ登頂

   ヨーロッパアルプスのオートルート(モンブランからマッターホルンまで)山スキーで滑走

   シルクロードからポルトガルロカ岬までユーラシア大陸を自転車で横断

   北極点到達

   7つの海をスキューバダイビングで泳ぐ

   宇宙ステーションから空に飛び出し星になる

 70歳を過ぎ、夢計画のほぼ半分を達成したというが、まだまだ挑戦は続く。

 最後に齢85の百瀬氏から質問が飛んだ。「あなたはいくつまで生きるつもりか」

 津田氏の答えは「明日死んでもいいと思って今日を生き、永遠に生きると思って今日も学びたい」

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篠原氏

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百瀬氏

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