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「使ってはいけない絵の具はありません」(「NOHGA×artwine アート体験」で)

 野村不動産ホテルズが運営する「NOHGA HOTEL UENO TOKYO(ノーガホテル上野)」の開業4周年イベントとして11月4日から行われている「NOHGA×artwine アート体験」を6日、見学取材した。参加者は14名。大人になってからは絵を描いたことなどないと思われる人ばかりで、油絵が趣味の記者はハラハラドキドキ、ビールと白ワインを飲みながら観察・鑑賞したが、でき上ってみればみんな素晴らしい作品ばかり。最高の取材ができた。結構なことではあるが、真似するホテルが続出するのではないかと心配になったほどだ。

 イベントは、ノーガホテル上野と「artwine.tokyo」がコラボしたもので、「artwine.tokyo」のエキスパートが画題に合わせたペアリングイメージを伝え、ホテル内レストラン「Bistro NOHGA」のソムリエが厳選したワインとシェフ特製カナッペを楽しみながら、講師によるレッスンを受け、自由にアートを仕上げ、作品は持ち帰りができるというもの。

 イベント・画題(テーマアート)は、11月4日・ゴッホ「ひまわり」、11日・クリムト「接吻」、18日・ルノワール「桃」、25日・葛飾北斎「富嶽三十六景」の金曜日コース(19:00~21:30、限定10名)と11月6日・モネ「睡蓮」、13日・ゴッホ「星降る夜」、20日・アルコールインク、27日・アルコールインクの日曜日コース(15:00~17:00、限定16名)の2通り。

 料金は一人8,800円(税込)。事前予約制で「artwine.tokyo」公式サイトhttps://artwine.tokyo/へ。

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「皆さん、生涯で200作の睡蓮を描いたモネも奥さんを亡くしたときは描けませんでした」

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 絵画教室は珍しくともなんともないが、これは取材しないと悔いが残ると、早速取材を申し込んだ。何に興味を引かれたかといえば、ホテルワインが飲めることと画題(テーマ)だ。記者はワインではないが、このホテルで「TOKYO CRAFT」のおいしさを知ったし、ゴッホ・ひまわり、モネ・睡蓮、クリムト・接吻、ルノワール・桃、葛飾北斎・富嶽三十六景など誰もが知っている絵を、どのように模写・表現するのか見たかったからだ。

 参加者を写さない、写すのは絵のみという条件付きで取材が許可された(1回のみ)。ホテルと、創作過程を取材することを了解していただいた参加者のみなさんにお礼申し上げます。

 取材は、狙い通り大成功。ワインは飲み放題ではないようだが、スタッフは惜しげもなく空のグラスに継ぎ足していたし、キャンパス(6号)、絵具(アクリル)、絵筆、エプロンなどが用意され、講師から失笑を浴びることも怒られることもなく、自由に描けるこの種の教室・イベントなどはまずないはずだ。レベルの高い「プラウド」を取材するのもそうだが、こんな楽しい取材ができるのはめったにない。

 記者が見学した6日のテーマは、モネが86歳で亡くなるまで200作品を描いたという「睡蓮」。参加者は14名。年齢は20代から40~50代のカップルや友人同士か。記者のような年配者はいなかった。

 これは想定内だった。主催者の読み通りだったはずだ。新しい自分の可能性を探ろうとか、美とは何かを突き止めようと考える年寄りなどいるはずはない。

 絵筆など小中学生以来握ったことなどない人かほとんどだったのも納得だ。講師の方が、ウルトラマリンブルーらしきアクリル絵の具で下塗りをするのを皆さんがぎこちなく真似るのを見てすぐそれはわかった。多少なりとも絵を描く人はまず模写などしない。絵画教室などに通っている人は、鉛筆か木炭のデッサンから始まり、モデルやモチーフに向かって車座になって描くのが普通だ。

 だからこそ、最初は期待より不安が募った。講師の指導に忠実に従おうという必死さがひしひしと伝わってきた。それはもう痛々しかった。幼稚園児だってもっとましな絵が描けるのではないかと思ったほどだ。描いているご本人もいったい何を描いているのか見当もつかず、こんなことにお金をかける価値があるのか、家に帰ったら家族に笑われるのではないかと疑心暗鬼に陥ったのではないか。

 ところが、講師の方が「パレットに使ってはいけない絵の具などありません。好きなように描いてください」「さて、皆さん、プルシャンブルーです。藍色と呼ぶ色で濃淡、影を付けましょう」と語りかけたころからか、信じられないほど、どんどんよくなっていった。(プルシャンブルーはブラックより重宝する絵具)

 もう、あれやこれや書かない。皆さんの作品を写真に撮ったので見ていただきたい(うまく写っていないのは記者の腕前でも、皆さんの作品が劣っているからでも断じてない。全ては安物のデジカメのせいだ)。世界に二つとない、唯一無二の傑作ばかりだ。

 その前に断っておく。絵画であろうと音楽、小説であろうと芸術は全て上手いとか下手などといった物差しで測るべきではない。好きか嫌いかだけだ。記者がもっとも好きな作家の一人、丸山健二氏の小説「月は静かに」(新潮社、2002年初版)で、主人公でもある北辺の一角に存在する五百坪の庭は次のように語っている。

 「大所高所からおのれを眺めれば、私が希求してやまず、渇望してやまなかった美などというものは、所詮、束縛を助長する窮屈な尺度でしかなかった。本来大らかで、人間の悟性を超越しているべき美を条件付きの方向に局限してしまうのは、とりもなおさず美そのものの本質に背馳することだった。

美が完全なものであるならば、醜もまた完全なものであらねばならなかった」

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以下、皆さんの作品

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記者の作品 柘榴(油絵 6号)

カテゴリ: 2022年度

 ファンモアタイム新宿実行委員会(代表:一般社団法人 新宿副都心エリア環境改善委員会)は11月19日(土)~27日(日)、“いつもと違う新宿を楽しもう”と銘打って、都心4号街路を中心とした新宿副都心エリア内の公開空地(都民広場を含む)や道路空間(歩道)などを一体的に利活用し、多様な人々の滞在・交流を促進するための社会実験「FUN MORE TIME SHINJUKU」を実施する。

 都庁に隣接する都民広場に芝生広場を設置しイベントを開催するほか、歩道空間には休憩、食事、仕事など自由に使えるラウンジ空間を提供し、スマホで参加する西新宿デジタルウォークラリーを実施する。

 エリアで実施される「大東京商店街まつり」(11月12日~13)、「スマートシティフェスタ」(11月25日~27日)とも連携する。

 イベントには東京都が共催し、住友不動産、大成建設、東京ガス、京王電鉄、野村不動産、都市再生機構が協賛している。

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 協賛企業・団体が少ないような気がするが、結構な取り組みだ。小生は今年、同じような社会実験「Marunouchi  Street Park 2022 Summer」と「BATON PARK-KAWABATA-RYOKUDO-」(BATON PARK)を見学取材している。素晴らしかった。だが、しかし、この種の取り組みで三菱地所が〝独走〟しているのは面白くない。新宿副都心4号街路歩道に植えられているケヤキの巨木の樹齢は、丸の内仲通りのケヤキや大手町仲通りのセンペルセコイアに負けない。

 もう一つ、負けないものがある。住友ビル三角広場に設置されている「誰でもピアノ」だ。これを歩道に引っ張り出したら受ける。オリックスの優勝パレードで賑わった大阪に対抗するなら「つば九郎」を呼んだらどうだ。東京ドームや西武ドームに広告を出している住友不、野村不が難色を示すか。

 一つ注文を付けたい。新宿中央公園入口に設けられていた喫煙所はコロナ禍で撤去された。国土交通省の「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会」は「使われ活きる公園」を打ち出し、画一的な規制の見直しを提言したばかりだ。喫煙所を復活すべきだ。喫煙難民が増えるばかりだ。

「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)

落葉のメタセコイアとよく似た常緑のセンペルセコイア 名前つけて 大手町仲通り(2022/10/30)

丸の内仲通り ウォーカブルな街づくり「Marunouchi Street Park 2022 Summer」(2022/8/3)

 

 


 

 

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「三田三・四丁目地区第一種市街地再開発事業」

 住友不動産は10月31日、同社が事業協力者、参加組合員として参画している「三田三・四丁目地区第一種市街地再開発事業」の中核施設のオフィスタワー棟(地上42階、地下4階)が同社としては初の築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の「ZEB Ready」認証を取得したと発表した。

 同地区は、田町駅に近接する同社としては最大級の総延床面積約22万9千㎡の大規模複合開発。約4haの開発区域にオフィス、住宅、文化・交流施設、商業・生活支援施設、教育施設を含んだ4棟から構成。

 オフィスタワー棟は42階建て延べ床面積約200,000㎡。隣接する同社オフィスビル「住友不動産三田ツインビル西館」の外構と同様の赤煉瓦調のデザインを継承するほか、約15,400㎡の緑地・広場を確保。建物は、高断熱ガラスなどを採用することで断熱性能を高め、高効率な空調・照明機器の導入により、50%以上の一次エネルギー消費量を削減。免震+制振のハイブリッド構造で、標準階面積は4-11階が約3,980㎡(約1,200坪)、12-42階が約2,940㎡(約890坪)、天井高3.0mの整形無柱空間を実現。低層フロアには飲食店舗区画などを整備する。建物完成は2023年3月。

 このほか、三田通り沿いには学校や幼稚園、北側の聖坂沿道には2棟の都市型住宅(225戸)を設ける。全体完成予定は2025年。

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仮囲いアート(提供:三菱地所)

 三菱地所は11月1日、東京駅日本橋口前で開発を進めている「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に整備する「TOKYO TORCH Park」に、全国1,741市町村すべての写真撮影を達成した写真家・仁科勝介氏と連携し、日本全国の魅力を発信する仮囲いアートを作成、掲出すると発表した。

 仁科氏は1996年岡山県生まれ。大学在学中の2018年3月から日本全国1,741市町村を巡る旅を始め、2020年1月に走破した。現在はフリーの写真家として活躍中。著書に「ふるさとの手帖」((KADOKAWA)。仮囲いにはこの写真集に収められている写真を使用する。

 仮囲いは全長63m、高さ3m。設置期間は2022年11月から2024年9月の予定。

 同社は2022年10月から日本ビルなどの解体工事を開始しており、「TOKYO TORCH Park」も一部縮小しているが、引き続いて様々なイベントを行っていく。

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(提供:仁科勝介氏)

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(提供:仁科勝介氏)

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 凄い人がいるものだ。2年弱で全国の市町村を走破するとは。移動に飛行機や電車、バスなどを利用したらまず回れない。バイクなのだろう。野宿してもガソリン代、飲食代などで1日3,000円はかかるはずだから3,000×665日≒200万円だ。尖閣諸島(石垣市)、竹島(隠岐の島町)、沖ノ島(小笠原村)、まほろ町(架空の都市)はスルーしたのだろうが、離島は船か飛行機を利用したはずで、たまにはホテル・旅館に泊まり風呂にも入ったのだろうから、金額はこの倍はかかっているはずだ。お金はどうしたのだろう。親が負担したのか、托鉢でもしたのか。その2年間は休学したのだろうが、単位はどうして取れたのか。その足跡が興味深い。

 ネットで調べた。「ふるさとの手帖」は320ページ、大きさは横長のB5サイズ。価格は3,498円(税込み)とあった。わが故郷・三重県をどのようにシャッターに収め、表現しているのだろう。酒代と比べれば安いものだが、買うかどうかは仮囲いを見学して決めることにしよう。

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(提供:三菱地所)

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 西武池袋本店7階のくらしのデザインサロン、インテリアフロア特設会場で10月22日(土)~11月7日(月)まで行われている「くらしのデザイン展2022」をのぞいた。

 主催しているのは、くらしのデザイン展実行委員会[一般社団法人ケアリングデザイン(代表理事:小野由記子氏)]だ。記者は、もう14年も昔だが、小野氏が手掛けたマンションのモデルルームを見学して惚れ込んだ。小野氏のデザインのどこがいいか。一言でいえば、マンションのモデルルームにありがちな過剰な装飾・演出がなく、とても端正で、抑制されたカラーリングが見事で美しいということだ。

 2013年にケアリングデザインを設立されてからは、マンションのモデルルームを手掛けられるのは少なくなったのがとても残念なのだが、今回の会場でも小野氏ならではのデザインを確認することができた。障がい者のアートを北欧家具に取り込み、テキスタイルとしてコーディネートしているのもその一つだ。写真を添付したので見ていただきたい。

 驚いたのは、ハイブリッドキッチンの提案だった。写真のようにIHとガスコンロを併設しているのが特徴だ。小生もIHが普及しだしたころ、中華料理などは鍋をあおって作るからおいしいのだから、両方を兼ね備えたものにすべきとずっと主張してきた。しかし、そのようなキッチンを採用している物件は数えるほどしかない。

 まだ遅くない。商品企画担当の皆さん、このハイブリッドキッチンを導入していただきたい(トーヨーキッチンはそのような商品がある)。小野さんにコーディネートを依頼すべき(デザイン料をけちり、細かな注文を付けないことだ。モリモトが成功しているのはそのような失礼なことをしないからだ)。小野さんもマンションをもっと手掛けていただきたい…と書いたところで、小野氏が代表を務める小野意匠計画のホームページで「WORKS」を検索したら「DUOSENE豊田」がヒットした。このシニア向け分譲マンションは取材しているが、小野さんが関わっていたことなどまったく知らなかった。

 小野さんのことばかり書いてきたが、今回のイベントはケア、アート、デザインの三つをテーマに「ケア×アート」、「ケア×デザイン」などの切り口からさまざまな展示やアイテムを紹介しており、東京藝大とヤマハが開発した指一本で弾ける自動伴奏付き「だれでもピアノ(R)」や、2022年度グッドデザイン賞を受賞したセルフケアプロダクト約30点が展示されている。皆さんも足を運ばれることをお勧めしたい。

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「くらしのデザイン展2022」会場内

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小野氏による寝室・浴室の提案

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IHとガス併用のハイブリッドキッチン

 

 

 

多点居住(5か所)を実践 有元さん×八木さん 小野さんが進行役FRKのセミナー視聴(2021/3/20)

フージャースHD シニア向け「デュオセーヌ豊田」竣工 半分強が契約済み(2019/8/7)

「モデルルームでは 新鮮な暮らし方の提案が要」小野意匠計画 代表・小野由記子さんに聞く(2008/6/2)
 

 

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「MIMARU東京 池袋」

 コスモスイニシアが11月1日オープンしたアパートメントホテル「MIMARU東京 池袋」を見学した。宿泊者がVRChatを客室内のPCで楽しめる「メタバースルーム」を日本で初めて全室に設置し、パソコンも標準装備しているのが特徴。

 施設は、JR線・東京メトロ池袋駅から徒歩5分、豊島区池袋2丁目に位置する14階建て107室。客室は、40㎡のファミリータイプ(4名定員)24室、和室があるジャパニーズタイプ(4名定員)24室、60㎡の2ベッドルームのスイートタイプ(6名定員)32室、eスポーツが楽しめるゲーミングルーム「Quintet eSports Room」(5名定員)2室など。宿泊料金は4人部屋利用で1泊23,250円〜。

 「メタバースルーム」はマンガ、アニメ、アート、ゲーム、コスプレなど、サブカルの発信地として注目を集める池袋の立地に着目し、アバターを使ってVRChatに参加し、宿泊者同士が情報交換できるもの。

 専用デスクとハイスペックゲーミングPCを5台揃えたゲーミングルーム「Quintet eSports Room」2室ではeスポーツをみんなでプレイできる。

 2階ラウンジは、コミュニケーションエリアとしてイベントやコスプレ体験・撮影スペース企画などを通じユニークな日本文化を発信していく予定。

 また、「NEO IKEBUKURO TOURISM(新しい池袋の旅)」をテーマにサブカル、メタバース、eスポーツ、デジタルなど、次世代の池袋を表現するグラフィックを募集し、最優秀賞に輝いたアート作品でエントランスの壁面を装飾している。

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「メタバースルーム」

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ゲーミングルーム「Quintet eSports Room」

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エントランス・ホールのアート

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 スマホはほとんどが電話機能のみで、頼みもしないのに突如画面にどうでもいいニュースが表示されるのに腹を立て、電車内では本を読むことしかしない小生は、みんなが小さなガラス面に手指をせわしなく這わせるのに感動を覚え、かつ病気ではないかと心配するほどなので、VRChatやeスポーツのどこが楽しいのかさっぱりわからなかった。猫に小判、豚に真珠だ。

 ただ、全室にキーボードとマウス付きのパソコンが備えられているのはとてもいいと思った。画面が大きいので、濁音、半濁音、句読点、促音の間違いもなくなりそうだ。プリンター機能があるのかどうかは聞き逃した。

 エントランス周りには「ゴヨウマツ」などふんだんに植栽を施し、柱の外周をナグリ調仕上げにしている演出もいい。外国人には受けるはずだ。

 それにしても、現地までの池袋駅北口の街並みは凄い。飲食店、ラブホテル、風俗店、宿泊特化型シティホテル、マンションなどが混在している。新宿・歌舞伎町と同じだ。〝なんでもあり〟の商業地だから、これはこれでいいのだろう。

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エントランス

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ゴヨウマツ

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エントランス・ホール

日常と非日常演出 従来の「スイート」とは異なる「ミマルスイート 東京・日本橋」(2022/9/26)

高評価に驚愕 コスモスイニシア 7件目「MIMARU京都 新町三条」に体験宿泊(2018/10/17)

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公園とマンション敷地の垣根を取り払った「デュオヒルズつくばセンチュリー」

 国土交通省都市局は10月31日、「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会」(委員長:蓑茂壽太郎東京農業大学名誉教授)の提言をまとめ発表した。

 令和4年2月~9月にかけて議論・検討を行っていたもので、都市公園は、ポストコロナの新たな時代において、人中心のまちづくりの中で個人と社会の「Well-being」の向上に向け、地域の課題や公園の特性に応じ、多機能性のポテンシャルを更に発揮することが求められているとし、パートナーシップの公園マネジメントで多様な利活用ニーズに応え、地域の価値を高め続ける「使われ活きる公園」を目指すべきであるとしている。

 「使われ活きる公園」の実現のためには、従来の公園整備・管理運営から、「都市アセットとしての利活用」、「画一からの脱却」、「多様なステークホルダーの参画」の3つの変革が必要とし、①グリーンインフラとしての保全・利活用②居心地が良く、誰もが安全・安心で、快適に過ごせる空間づくり③利用ルールの弾力化④社会実験の場としての利活用⑤担い手の拡大と共創 ⑥自主性・自律性の向上⑦デジタル技術とデータの利活用-7つの具体的取組が重要としている。

 また、とりまとめでは「来年、都市公園制度誕生150年目を迎えるこのタイミングを、公園本来の役割と、公園の多機能性、多様な可能性を改めて認識する契機とすべきである」と述べている。

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検討会の議事録からいくつかの意見を以下に紹介する。

 「先進的な地方公共団体では取組が進んでいる一方で、特に技術者がいない地方公共団体では旧態依然の部分が多い。人材育成や公園評価等の地方公共団体を支える仕組みをつくらなければ、前回検討会の成果は完結しないだろう」

 「つくる公園行政の延長線上では成果が出てきている一方、使う公園行政という側面ではあまり進んでいない印象を受ける。つくる公園行政から使う公園行政へシフトしていくという方向性で整理していけるとよい」

 「P-PFI 等で新しい事業については取り組みが進んでいるが、街区公園のような小さな公園、まちなかの公園については各自治体が課題を抱えている状況でもある。そのような公園について、ハード・ソフトを含めてどのようにリノベーションしていくべきか」

 「公園関連のデータについては、台帳など情報が古かったり散逸していたりする公園も少なくない」

 「『つくり育てるみんなの公園』のキャッチコピーはそのとおりだが、もう一歩進んでこれを具体化する明確なキャッチコピー、例えば国としてこれから公園を見直す、再生する、あるいは開放する、それらを全国的に取り組んでいくというメッセージを出した方がいい。公園の評価の話が埋没しつつある。公園の管理を良くするという意味では、評価制度は非常に大事。公園の管理水準の見える化は引き続き検討してもらいたい」(梛野委員)

 「何のために都市公園の柔軟な管理を進めるのかというそもそものところがもう少し明確になるとよい。公園は、SDGsのウェディングケーキモデルの3層(自然環境、社会環境、経済環境)を実現できる場所であり、大きな拠点としてSDGsを発揮していく、持続可能なまちづくりの貢献していける拠点である」(佐藤委員)

 「本検討会の取りまとめは、首長に読んでもらえるものにしなければ前に進まない。その意味でWell-beingといった言葉は非常に重要」(蓑茂委員長)

 「全体として、公園というボーダーの内側の議論に閉じこもっていないか。グリーンインフラの議論において、グリーンインフラは入口であり、出口はグリーンコミュニティの形成ということを訴えてきた。地域コミュニティの形成に公園が果たす役割は極めて大きい。公園の利用だけでなく、公園同士のネットワークをどう考えていくかも非常に重要。民間ディベロッパーがPark-PFI や指定管理に非常に強い関心を持っているのは、公園を核とした地域づくりにどれだけ関与し、新しいビジネスチャンスを生み出していくかという点。パークマネジメントへの興味は、エリアマネジメントへの興味に通じる」(涌井委員)

 「検討項目と論点の組み立ての順番が違うのではないか。一番重視すべきこととして、街の活力を支える発展的な公園利用のあり方が先に来て、次に、そのために誰もが快適に過ごせる公園管理はどうしたらよいか、その中で民の活力をどう利用するのかという組み立てかたが大事ではないか。大きなフレームから、普遍的な部分に戻していくアプローチの方が、政策の議論においては現実的ではないか」(涌井委員)

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 「使われ活きる公園」というタイトルは結構なものだと思うが、逆読みすれば、いかにわが国の公園は使われていないか、活かされていないかを如実に示したものだと受け止めた。涌井史郎委員の「全体として、公園というボーダーの内側の議論に閉じこもっていないか」という指摘は辛らつだし、蓑茂委員長がいみじくも語ったように、「本検討会の取りまとめは、首長に読んでもらえるものにしなければ前に進まない」と思う。

 記者は、とりまとめでも述べられている「十分に利活用されていない公園ストック」が全国約11万か所、約13万haのうちどれくらい存在するか知りたいのだが、「公園関連のデータについては、台帳など情報が古かったり散逸していたりする公園も少なくない」(議事録)とあるのみで、検討会の議事録を読んだ範囲内ではそのような公園の実態を議論した形跡はない。国交省でも全国の公園の利活用の実態を調査したデータは把握していないとのことだ。

 ものごとは実態把握から始めるのではないか。先進事例・成功事例もいいが、悲惨な実態をあぶり出すことが先決ではないか。公園は危機に瀕していると思う。

 このことと関連するのだが、とりまとめでは、「各地方公共団体の緑の基本計画のうち、都市公園の管理の方針に係る記載がある計画は182都市」「都市緑地法運用指針において、36都市の計画で立地適正化計画に係る記載がみられる」「現在、全国に111の協議会が設置されており、イベント実施に向けた調整、新施設・再整備等の方針・計画等を協議内容とする協議会が多い」「ウォーカブル推進都市は、2022年6月30日時点で328都市」などとある。

 これらの数値も圧倒的に少ないのではないか。全国には市の数だけで800近くあり、都市計画区域も1,000か所以上ある。「ウォーカブル」の取り組みは、三菱地所などが推進する素晴らしい「Marunouchi Street Park」を取材しているが、その一方で、千代田区神田警察通り整備では地域住民を分断するような計画が実行されており、この前取材した愛知県一宮市でも「ウォーカブル」の取り組みが行われているが、イチョウ並木は丸裸にされていた。

街路樹虐待は許されるのか、殺していいのか 愛知県一宮市のイチョウは丸裸(2022/10/28)

「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動(2021/4/28)

素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)

激減する利用者 激増する1人当たり占有面積 公園のあり方考える(2020/8/3)

国交省 「都市公園等のあり方検討会」が中間とりまとめ(2015/8/25)

なぜ農学、環境、家政学者の会合はおおらかなのか 国交省「都市公園あり方検討会」(2015/3/17)

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 国土交通省は10月31日、令和4年9月の住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は73,920戸(前年同月比1.0%増、2か月連続の増加)となった。内訳は持家22,248戸(同13.3%減、10か月連続の減少)、貸家30,555戸(同8.1%増、19か月連続の増加)、分譲住宅20,766戸(同10.1%増、2か月連続の増加)。分譲住宅の内訳は、マンションが8,386戸(同15.7%増、2か月連続の増加)、一戸建住宅が12,290戸(同6.8%増、17か月連続の増加)となった。

 首都圏分譲住宅は9,265戸(同24.1%増)で、マンションは3,961戸(同41.7%増)となった。都県別では東京都2,395戸(同68.8%増)、神奈川県1,210戸(同94.2%増)、埼玉県109戸(同61.9%減)、千葉県247戸(同47.1%減)。

 2022年1~9月では持家が190,110戸(前年同期比9.8%減)、分譲住宅が192,795戸(同5.7%増)となっており、分譲住宅が上回っている。

 また、1~9月の分譲マンションは63,555戸(前年同期比1.7%増)で、内訳は首都圏38,491戸(同3.2%減)、中部圏6,778戸(同2.0%減)、近畿圏18,286戸(同15.6%増)、その他19,136戸(同27.5%増)となっており、その他が中部圏や近畿圏を上回っているのが注目される。
 

 

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 今週はほとんど取材の予定が入っていない。暇に飽かせて、国土交通省の平成31年都市計画現況調査をもとに首都圏区市町村の用途地域について調べてみた。何かの参考にしていただきたい。

低層住居指定比率がもっとも高いのはあきる野市

低層住居がゼロなのは江東区、八潮市など30区市

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 まず、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域の低層住居系用途指定の多いところと少ないところから。

 全用途地域に占める割合が50%以上の区市町は34自治体で、もっとも比率が高いのはあきる野市の72.7%。以下、東大和市、日の出町の順。都県別では、埼玉県でもっとも比率が高いのは鳩山町の63.5%、神奈川県は逗子市の60.3%、千葉県は四街道市の55.3%。低層用途指定面積が最も広いのは八王子市で、町田市、世田谷区などが続く。

 低層住居専用地域の指定がない区市町は30自治体。用途指定の大きい順では江東区、八潮市、戸田市、墨田区、千代田区、台東区、荒川区、中央区の順。港区は全用途に占める低層住居は0.1%存在するが、四捨五入するとゼロなので31番目とした。

 都県別の低層住居指定割合では、東京都が37.4%、東京23区が20.4%、埼玉県が18.1%、千葉県が31.4%、神奈川県が31.0%となっている。東京都は意外と高く、埼玉県の割合が低いのが目立っている。

埼玉県神川町は用途指定全てが工業専用地域

工業系地域がないのは箱根町、千代田区など

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 工業系用途地域の占める割合が100%なのが埼玉県児玉郡神川町。用途指定されている33haすべてが工業専用地域。ただ、行政区域面積は2,317haなので、住めない町ということではない。人口は約1万3千人とある。

 神川町を除けば、全用途のうち70.8%が工業系の江東区をはじめ荒川区、袖ケ浦市、神奈川県愛川町、神奈川県中井町、大田区、墨田区、千葉県芝山町が50%以上となっている。袖ケ浦市、愛川町、中井町は工場団地が多く、芝山町は成田空港があるからか。秩父市、横浜市に次いで市域面積が首都圏3番目の市原市は1,975haの工専地域がある。工業系用途が全くないのは箱根町、千代田区、葉山町など8区市町。

商業系用途割合がもっとも高いのは台東区

三芳町、大井町、九十九里町は1%以下

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 商業系用途の占める割合がもっとも高いのは78.6%の台東区。以下、中央区、千代田区、墨田区、湯河原町、港区、豊島区、新宿区、文京区、渋谷区などと続く。少ないのは三芳町、大井町、九十九里町など。

 

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「BATON PARK-KAWABATA-RYOKUDO-」

 一般社団法人大手町歩専道マネジメントと三菱地所が10月24日~30日の7日間、大手町仲通で行った社会実験「BATON PARK-KAWABATA-RYOKUDO-」(BATON PARK)を10月27日見学した。

 BATON PARKは、東京・大手町の歩行者専用道路「大手町川端緑道」の未来の空間活用を見据え、神田と大手町を繋ぐ場所として“外空間”の居方を検証するため。

 「大手町フィナンシャルシティグランキューブ」と「大手町フィナンシャルシティノースタワー」の間に植えられているスギ科の常緑樹センペルセコイアやケヤキの街路樹がとても美しく、歩行者専用道路「大手町川端緑道」とつながっていた。三菱地所が事業参画している2025年竣工予定の「(仮称)内神田一丁目計画」と大手町仲通りは橋でつなぐことになっている。

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「大手町川端緑道」

◇        ◆     ◇

 最初にセンペルセコイアを見たときは樹種が分からなかった。メタセコイアと似ているとは思ったが、メタセコイアは落葉樹だ。そろそろ葉っぱが色づくころなのにその気配がなく、青々と茂っていたので、常緑樹のヒマラヤスギの仲間ではないかと考えた。

 実証実験を行っている担当者が「常緑のセンペルセコイア」と教えてくれた。樹高は10m以上ありそうだったが、幹回りからして樹齢は数十年だろうとみた。

 ネットで調べたらスギ科だった。アメリカなどでは樹高は100mを超えるものもあるそうだ。やっぱり、建築物の「定礎」と同じように、街路樹には名前を付けて、特徴なども分かるようにすべきだ。

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センペルセコイア

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「大手町フィナンシャルシティノースタワー」(左)と「大手町フィナンシャルシティグランキューブ」(手前は「(仮称)内神田一丁目計画」)

神田と大手町繋ぐ“外空間”の居方を検証 三菱地所「BATON PARK」社会実験(2022/10/20)

丸の内仲通り ウォーカブルな街づくり「Marunouchi Street Park 2022 Summer」(2022/8/3)

カテゴリ: 2022年度
 

 

 

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