「まちづくりGX」は都市局のメイン事業になるか 国土交通省の会合を傍聴して
第21回都市計画基本問題小委員会(国土交通省 合同庁舎3号館)
国土交通省は11月25日、第21回都市計画基本問題小委員会を開催し、まちづくりのグリーン化について議論した。
政府は今年6月、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」を発表し、新しい資本主義に向けた計画的な重点投資として①人への投資と分配②科学技術・イノベーションへの重点的投資③スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進④GX(Green Transformation=グリーン・トランスフォーメーション)及びDX(Digital Transformation=デジタル・トランスフォーメーション)への投資-の4つを掲げ、④では今後10年間に官民協調で150兆円規模のGX投資を実現すると謳っている。政府は7月、首相を議長とする「GX推進会議」を設置し、国土交通省も9月、斉藤鉄夫国交相を本部長とする「国土交通省グリーン社会実現推進本部」を設立している。
今回の小委員会はこのような経緯を経て開催されたもの。会合を振り返って同省都市局都市計画課課長・鈴木章一郎氏は「これまで緑に関する取り組みは制度設計も含めて弱かったのではないかという反省があり、世の中の価値観が変わってきたのを受け、なるべく多くのプレーヤーの方に参加していただこうというのが今回のテーマの底にあった。委員の方々から多くの示唆を頂いた。携帯の話も頂いたように、緑が多機能であるがゆえに、緑の定義を含めてわれわれの頭も整理しないといけないと痛感した」と総括した。
GXは、脱炭素社会を目指す文脈からすれば、Green (グリーン)=緑ではなく、多義的な意味を持つ。都市計画の観点から具体的にどのようなGXの取り組みを行うかが大きなテーマになっている。
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オンラインも可能だったが、リアルで傍聴した。同省から配布された資料は55頁もあり、日本政策投資銀行の「ESG投資・インパクト投資の潮流と評価について」(10頁)と参考資料「13頁」合わせると78頁にもわたる膨大なものだった。資料冒頭に都市緑地のグリーンインフラとして23の機能(効果)が記載されていた。「緑の価値」が余すところなくフォローされていると思った。GXのテキストになるはずだ。
これらの機能(効果)については誰もが認めるところだが、現実はどうかというと、緑被率(みどり率)は年々下がり、生物多様性は喪失されつつあり、都市農業は生活の糧として成り立たなくなり、森林・林業は危機に瀕している。
これを劇的に転換するにはどうしたらいいのかが今回の「まちづくりGX」のテーマだ。論点は①都市の緑地の確保や向上を図るための民間資金導入の可能性について②森林への都市の貢献のあり方について③市街地整備と一体となったエネルギーの面的利用について④自治体における「まちづくりGX」の位置づけについて-の4項目。
黒澤幸太郎・専門委員(むつ市都市整備部都市計画課長)は「『まちづくりGX』は市民に説明しやすい。国土交通省都市局のメインの事業になる」とエールを送ったが、記者は④の自治体の「まちづくりGX」に対する認識の薄さが大きな壁になると感じた。村木美貴委員(千葉大学大学院工学研究院教授)も「(何かは聞き取れなかったが)日本は欧州と比べ2周くらい(地球規模なのか400mのトラックか)遅れている。〝見える化〟と言われても、見に行かないと見えないではないか」と指摘した。
配布資料もそのことを裏付けている。例えば、都市計画区域設定を行っている自治体(n-1,375)に対する国土交通省が行ったアンケート調査。2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みについて自治体に聞いたところ、「目標なし」は66%にのぼっている。
また、市町村マスタープランにおける緑地保全・緑化推進の位置づけの設問でも、立地適正化計画で「位置づけなし」が57/70にのぼり、緑の基本計画に立地適正化計画に係る記載がある市町村は5.2%(36/692)にしか過ぎない。
記者も、これまで都市公園や街路樹、緑被率(みどり率)などについて取材してきた限りでは、首都圏自治体のこの種の取り組みは全然進んでいないどころか「緑の価値」について全く認識していないと思わざるを得ない。都市公園がどのように利用されているか実態を把握しておらず、どこにどのような樹種の街路樹が植えられているかも答えられず、墓標のように強剪定されることに何の痛痒も感じていない担当者が多すぎる。千代田区は、健全な街路樹を「枯損木」(「枯損木」の言葉すら知らない職員も多い)として処分を決定した。
国土交通省がいくら旗振りしても、自治体が積極的に取り組まないと前に進まない。絵に描いた餅だ。どなたかの委員が「自治体頑張れ」と叱咤激励した。(記者は、同省が令和2年に立ち上げた、個人参加資格も含めた多様な主体の参画による「グリーンインフラ官民連携プラットホーム」に期待している)
中川雅之・臨時委員(日本大学経済学部教授)もこのあたりの現状を踏まえてか、「テーマが多岐にわたり一般的すぎる。都市計画決定部局として具体的にどうすればいいか論点を整理すべき。森林への貢献と言われても都市と森林の関係性を明らかにしないと論議は進まない」と指摘した。
さらに、横張真・臨時委員(東京大学大学院工学系研究科教授)も「一口にグリーンと言っても文脈は様々。多様な概念をきちんと整理しないといけない。『まちづくりGX』も、個別の役割や機能の高度化ばかりを追求するのでなく、携帯情報端末のようにオールインワンであることの特性を伸ばすよう、その施策のあり方にかかわる発想の転換が必要」と話した。
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記者は、この種の会合で決まって海外との比較が論じられるのに辟易している。外国は中国とモンゴルしか知らないし、日本語しか話せないので劣等意識もあるのだが、わが国のあらゆる社会・経済指標は先進国の中で最低レベルだと指摘されると、それがどうしたと言いたくなる。
だが、しかし、政府のGX・DXに関する資料の中に「米国市場の企業価値評価においては、無形資産(人的資本や知的財産資本の量や質、ビジネスモデル、将来の競争力に対する期待等)に対する評価が大宗を占める。日本市場では、依然として有形資産に対する評価の比率が高く、企業から株式市場に対して、人的資本など非財務情報を見える化する意義が大きい」とあったのには〝ガラパゴス〟と揶揄されても仕方ないと思った。村木委員の手厳しい批判も心地よく響いた。
村木氏のほかにも「GXの見える化」が遅れているという指摘が相次いだ。「ESG投資・インパクト投資の潮流と評価について」話した日本政策投資銀行ストラクチャートファイナンス部・井栄階一氏も「私見」としながら「ESG投資家は定量的かつ客観的な評価を重視する」とし、わが国にはそれが欠けていると指摘した。
このことと関連する例を一つ。欧米では樹木などのグリーンの価値をを定量的に計る「i-Tree」が定着しているようだが、わが国は一部の研究家でしか流通していない。鈴木都市計画課長が「緑が多機能であるがゆえに、われわれの頭も整理しないといけないと痛感した」と話したように、数えきれないほどあるグリーン・みどりの価値を誰もが分かる定量的な指標で示さないといけない。
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斉藤大臣と幹部の方にお願いが一つある。小生は、扇千景氏が国交大臣に就任したとき、希望していた文部大臣などではなかったことから「冷や飯を食わされた」と語ったのに腹を立て、就任記者会見の会場で「冷や飯とはどういう意味か」と詰め寄ったことがある。今でも国交省と職員を冒涜するものであり、即辞任に値する暴言だと思っている。
その点、国交大臣を務められた齊藤氏の先輩、公明党の冬柴鐵三氏は立派だった。退任するとき国交省の職員を「わが国のシンクタンク」と称えた。
前書きが長くなった。何を言いたいかといえば、そんな優秀なシンクタンクが働きやすいよう国交省の本館である合同庁舎3号館に喫煙所を復活していただきたいということだ。
隣接する2号館の駐車場わきに喫煙所はあるのだが、3号館から喫煙所までは往復で6~8分かかる。喫煙時間を3~4分とすると10分以上だ。1日6回利用すると1時間を超える。これは職員にとっても国交省にとっても大きな損失だ(喫煙中に名案が浮かぶこともあるが)。
いったい、どれくらいの損失か計ってみた。写真を見ていただきたい。左は25日の会合が始まる午後5時前の灰皿だ。目視したところ吸い殻は40本くらいか。水に沈んで見えない層もあるはずで、その数は少なく見積もっても80本はある。ちょうど灰皿の水を入れ替える時だった。作業している方に聞いたらほぼ2時間置きで1日4回だという。
右の写真は、取材を終え帰るときの午後7時過ぎだ。やはり同じくらいの吸い殻が捨てられていた。
そこで計算した。灰皿は全部で8つ。2時間ごと4回掃除すると80×8×4=2,560本だ。これを労働時間に置き換えると2,560本×10分÷60分=427時間だ。職員の労働時間を8時間とすると、実に427÷8≒53人分だ。一人年間200日働くとすると53×200=10,600人分(来庁者含む)の貴重な時間と莫大な金額が浪費される計算だ。これに、タバコが吸えないことによるストレスをお金に換算したら…これも〝見える化〟していただきたい。
17時前の吸い殻(左)と19時過ぎの吸い殻(合同庁舎2号館で)
健全な街路樹を「枯損木」として処分 問われる住民自治 千代田区の住民訴訟(2022/11/12)
億万長者の人数&所得割額が激増 過去最多 アッパーミドルも漸増 東京都港区
日本一お金持ちが多い東京都港区の課税標準額1億円超の富裕層(以下、富裕層、またはお金持ち、億万長者)が令和4年5月現在、前年度より241人増の1,250人となり、この層の所得割額総額は前年度より65.8%増の約280億円となり、人数、所得割額とも過去最多だった令和元年度を上回った。われら庶民は相次ぐ値上げラッシュに青息吐息だが、お金持ちはまったく関係なし。〝富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる〟-聖書の言葉は健在だ。
別表をしかと眺めていただきたい。港区が公表している課税標準額段階別納税者・所得割額の推移をみたものだ。
課税標準額とは、総所得から様々な控除額を差し引いた住民税(市町村民税・都道府県民税)の計算の基礎となる金額で、住民税は「均等割額」(都民の場合は区市町村民税3,500円+都民税1,500円)と「所得割額」(課税標準額の10%)からなる。
これによると、富裕層は令和元年度に人数、所得割額とも最多となり、その後はコロナの影響などで減少していたが、令和4年度は一転して激増。人数、所得割額とも過去最多を更新した。
総所得割額から単純に総所得を推計すると、富裕層一人当たり約2.2億円となる。納税者の1%に満たないお金持ちが住民税の3割超を払っている-感謝すべきことなのか、それとも格差社会を呪うべきなのか…。
注目すべきなのは、億万長者だけでなく、課税標準額が1,000万円超(アッパーミドルと呼ぶ)もまた着実に増加していることだ。令和4年度のこの層は25,893人(全納税者に占める割合17.7%)で、5年前の平成29年度より5,129人(同2.7ポイント増)増加している。
富裕層が激増したことについて、区の課税課は「転入もそれほど増えているわけでもなく、外国人の動向にも変化はなく、お金持ちが株などで儲かったと分析しています。IT企業の社長さんも区内に多く住んでいます」と話した。
なるほど。だが、しかし、わが国の日経平均株価は昨年5月末の28,860円から今年5月の27,279円へとむしろ下落している。一方、米国のダウ平均は過去最高値圏ではあるが、昨年よりは下落している。
記者は、やはり不動産価格が上昇しており、その売買差益も所得を大幅に増やしている大きな要因ではないかとみている。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)のデータによると、今年10月の首都圏中古マンション成約坪単価は229万円で30か月連続、在庫坪単価は243万円で57か月連続でそれぞれ前年同月を上回っている。23区の中古マンションの坪単価は340万円で、2020年10月の272万円から25.3%も上昇している。新規登録単価上昇も続いており、先高観も強い。
また、東京カンテイは今年10月末の都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)の70㎡換算の中古マンション価格は前年同月比16.4%増の9,950万円と13か月連続で上昇したと発表している。
株と不動産-錬金術の王道は今も昔も変わらないということか。
億万長者100人減少 人口も25年ぶり減 日本一裕福な港区財政 コロナが直撃(2021/10/13)
課題山積、前途多難 道・街に背を向ける建物「FUN MORE TIME SHINJUKU」
「FUN MORE TIME SHINJUKU」(京王プラザホテル東京前で)
11月19日から始まった、ファンモアタイム新宿実行委員会が主催し、東京都が共催し、住友不動産、大成建設、東京ガス、京王電鉄、野村不動産、都市再生機構が協賛する「FUN MORE TIME SHINJUKU」の街を歩いた。
三菱地所が中心になって行っている「Marunouchi Street Park」のような賑わいを期待していたのだが、新宿副都心4号街路に用意された椅子に腰かける人はなく、都民広場(議会棟前)のイベント参加者は数えるほどで、新宿中央公園は目視した限り一番賑わっていたのは喫煙所だった。期待は見事に裏切られ、失望から絶望に代わった。課題山積だ。
〝口ワル〟なのがよく似ている分だけ小生と相性が悪いハシブトかハシボソかは判別できないカラスは、残飯あさりで生活習慣病を患っているのか〝バーカー、バーカー〟と訳の分からないことを口走り、どこかは知らない塒に帰っていった。
都民広場のイベント
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まず、都民広場を訪ねた。人工芝の上では何やらイベントが行われていた。利用者は10人いるかどうか。「誰でもピアノ」も隅っこに置かれていたが、白いビニールに覆われていた。気を付けても見つからないはずだ。
少しはイベントに貢献しようと、「ビールを飲んでいいですか」と主催者らしき人に尋ねた。「売っているかどうかは分かりませんが、コンビニが地階にありますから」と言われたのでセブン・イレブンに入った。酒類は売られていなかった。
仕方なくタバコだけ買ったのだが、酒類の販売が解禁となった20年くらい前にタイムスリップしたかのような気がした。近くのレストランは閉まっていたが、看板には「おつまみ290円~」「2時間食べ放題・飲み放題3,580円~」「晩酌セット1,280円~」(「2」の部分は上書きされていた。値上げしたのか値下げしたのか)と表示されていた。路地裏の飲み屋と一緒だ。
そこで、都財務局に確認した。コンビニでは酒類を販売しないよう当初から指導しているとのことだった。
そんなこともあるのかと、県歌の〝(ダ)さいたまー、(ダ)さいたまー〟の軽快なメロディの電話呼び出し音が流れる埼玉県にも電話した。職員健康支援課によると、タバコは第2庁舎の屋上で吸えるが、1店あるコンビニでの酒類の販売は禁止しており、飲食店もコロナ禍で酒類の提供を中止しているとのことだった。
官公庁はみんな右へ倣えなのだろうと考え、ほかの県庁に聞くのをあきらめた。役所を利用する住民もそうだが、職員はストレスがたまらないのか、仕事の能率はどうなるのか、かわいそうになった。締め付けが厳しいから、時にはうっぷんを爆発させ、住民に対し権力を振り回すのではないか。
〝誰でもピアノ〟(新宿住友ビルのピアノではない。サクラでいいから誰か弾くべき)
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いい加減な公園管理にもあきれ果てた。都庁の隣にはデッキで結ばれた約88,000㎡の新宿区立新宿中央公園がある。学生のとき、彼女とベンチに座り、しっかりと手を握りあい永遠の愛を誓ったところだ。
愛は雲散霧消したが、あの頃はもっと活気があった。初冬のこの日は人もまばら(スターバックスはそこそこ人の影は見られたが、禁煙なので小生は利用しない)。一番賑わっていたのは公園入口近くの端に唯一設けられている喫煙所で、常時30人くらいが利用していた。この喫煙所の数十倍もありそうな広場では、喫煙所とほぼ同数の人がやはり端っこのベンチに腰かけていた。人は隅っこを好む習性があるのか。
公園の禁止事項もまた凄い。列挙する。①騒音を出すこと②飲酒による迷惑行為③自転車走行(自転車は降りて押してご通行下さい)④球技(ビニールボールを除く)⑤火気の使用・花火⑥犬の放し飼い・フンの不始末⑦動物への餌やり⑧タバコを吸うこと⑨歩きスマホ⑨自動車/バイク/電動キックボードの乗入れ⑩スケートボード⑪動植物を捕獲又は傷つける、その他施設の破損⑫園内の貼り紙、広告⑬ゴルフクラブ、金属バットなどの使用⑭その他、公園の形を変えたり、傷つけたり、汚したりすること、危険及び他の利用者の迷惑となる行為、適切な用途以外の使用…どうして飲酒と迷惑行為を結び付けるか。酒とたばこを禁止したのはヒットラーであり、イスラム国だったではないか。事なかれ主義を貫徹するお上に唯々諾々と従うわれら庶民にも問題がある。
問題といえば、区の公園管理だ(指定管理者:一般財団法人公園財団を代表とする昭和造園、日建総業、小田急電鉄)。みどり土木部みどり公園課は、この新宿中央公園を含め公園の利用者がどれくらいいるかなどの実態調査を行っていない。利用実態を把握せずしてどうして円滑な公園管理ができるのか。
国土交通省は先に「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会」(委員長:蓑茂壽太郎東京農業大学名誉教授)の提言をまとめた。多様な利活用ニーズに応え、地域の価値を高め続ける「使われ活きる公園」を目指すべきとし、そのためには従来の公園整備・管理運営から「都市アセットとしての利活用」「画一からの脱却」「多様なステークホルダーの参画」の3つの変革が必要とするものだ。
この「検討会」の提言に照らし合わせれば、区の公園管理も3つの変革が求められていると思うが、実態を知らないのだから何が課題かもわからないのではないか。前途多難だ。
そもそも、この新宿副都心4号街路に沿った建物は新宿住友ビル、新宿三井ビル、東京建物・新宿センタービルを除き、都庁も大学もホテルも道や街に開かれた造りになっていない。
新宿中央公園
公園入口の喫煙所
喫煙所に貼られているステッカー(これで受動喫煙が防げるなら結構なことだが、喫煙者を絶滅危惧種に指定してほしい)
喫煙所前の広場
公園入口に掲げられている禁止事項(もう悪意としか思えない)
ある都心部のビルの谷間に蝟集する喫煙難民(小生も含め20人以上が利用していた)
新宿副都心エリアで社会実験「FUN MORE TIME SHINJUKU」11/19~11/27(2022/11/4)
「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)
女性職人だけで建てる「女性1棟プロジェクト」 ケイアイスター不動産
ケイアイスター不動産グループのケイアイクラフトは11月14日、女性職人だけで新築住宅を1棟建てるプロジェクト「女性1棟プロジェクト」を立ち上げたと発表した。
同社は、2014年度から社員職人として採用する「クラフトマン制度」を発足。2015年から女性活躍推進の取り組みとして、産休・育休の制度改正を行い、2017年にダイバーシティ推進室を設立。女性管理職の登用や建設現場での女性の現場監督が増えたことをきっかけに女性の現場監督専用の作業服を制作するなどの取り組みを行ってきた。2015年に厚生労働省から子育てサポート企業「くるみん」の認定と、2017年は同省から女性活躍推進企業「えるぼし」に認定され、2019年と2020年は東証・経済産業省による「なでしこ銘柄」に2年連続で選定されている。
現在、8名の女性クラフトマンが大工職、内装工などで活躍している。
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おそらく女性クラフトマンの声を反映した取り組みだろう。2016~2017年だから5~6年前だ。「じゅうたく小町部会」を取材し、建築現場で働く女性の悩みなどを聞いている。建築現場の仮設トイレは使いたくなくて、時間をかけてもコンビニなどを利用するという人もいた。
その時の記事のアクセス数は3,000件近くあった。東日本大震災でも仮設トイレは利用せず、わざわざ十数分もかけて駅のトイレを利用したという女性の話も聞いた。男性もそうかもしれないが、女性にとってトイレは大きな問題なのだろう。女性ばかりだと、ストレスは少しは軽減されるのか。
「建設現場の仮設トイレ利用しない」 「じゅうたく小町」会員の声をどう聞くか(2017/5/30)
労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して(2016/11/26)
知る人は懐かしく、知らない人は行きたくなる 地所「TOKYO TORCH」仮囲いアート
「TOKYO TORCH Park」仮囲いアート
三菱地所が11月1日から掲出している「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に整備する「TOKYO TORCH Park」の仮囲いアートを見学した。全国1,741市町村すべての写真撮影を達成した写真家・仁科勝介氏と連携したもので、全長63m、高さ3mに全47都道府県の写真がそれぞれ1枚ずつ掲出されていた。どこにでもありそうな日常風景ばかりだが、だからこそ鑑賞する人の心を揺さぶるのだろうと思った。設置期間は2022年11月から2024年9月の予定。
下手な小生のコメントなど書かない。江東区木場に住んでおり、常盤橋タワーをよく利用するという20~30代の子ども連れの女性が全てを語ってくれた。
「普段意識しないメジャーでもない都道府県のありのままを見ることができるのがとてもいい。知っている人は懐かしいと思うでしょうし、知らない人は新鮮に映り、行ってみようと考えるかもしれません。新しい発見ができる」と。
三菱地所関係者も仁科氏も小躍りして喜びそうなコメントだ(まさか三菱地所関係者ではないだろう)。小生も嬉しくなって、仁科氏が大学生のとき2年間休学して、2年を待たずに全国47都道府県の全1,471区市町村を全て踏破したこと、旅費はアルバイトして稼いだことなどを伝えた。
左から静岡、愛知、三重、滋賀(岐阜の方には申し訳ない)
左から埼玉、千葉、東京、神奈川(柵があるのでうまく撮れない)
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仁科氏の著書「ふるさとの手帳」(KADOKAWA)を図書館で借りて読んだ。約300頁に写真は1~2枚から多い頁では20枚以上掲載されている。その数はざっと4,000枚か。旅行雑誌、ガイドブックによくある名所旧跡、景勝地はむしろ少なく、田舎のどこにでもありそうな日常の風景が切り取られている。
添えられているエトキ(キャプション)も、わが故郷・三重県を例にとると「気づけば稲穂は黄金色(いなべ市)」「江戸時代の風情を残す河崎へ(伊勢市)」「いつもの道路(度会町)」「友人が作ってくれた朝食(伊勢市)」「美味しいみかんあります(御浜町)」「土佐犬のゆりこさん(亀山市)」などといった具合だ。伊勢神宮も赤福も的矢の牡蠣も登場しない。全頁が「旅の決めごとはひとつ。『訪れたまちで写真を撮ろう』」(はじめに)で貫かれている。
仁科氏は著書で「市町村一周は遠い夢だった。全てのまちを巡った後、一体どんな景色が目の前に広がるのだろう。ただ知りたくて、旅に出た。そして旅は終わり、様々な景色が教えてくれた答えはシンプルだった。『知らない景色は、永遠にあるのだ』と。市町村を全て巡ろうが、日本を知ったつもりになんて到底なれない。行ったことがある、ないの問題でもない。知ることに並行して、何も知らない自分に気づく。市町村という果てしない単位は、終わりのない景色をわたしに見せてくれた」と綴り、「旅をしていたわたしは、主人公ではない。旅をすることで、何者かになりたかったわけでもない。踏切を駆ける列車、風に揺られる木漏れ日、雨でも咲く花々、誰かの散歩道。訪れた先々で出会ったわたし以外こそ、旅の主人公であった」「この本を読んでくださったみなさんも、わたしにとっては主人公である」(おわりに)と締めくくっている。
皆さんにも鑑賞をお勧めだ。隣には学生さんが経営する47都道府県地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」があるし、仮囲いの前は常盤橋タワーだ。レストランで食事しながら観るのがいい。小生は白ワインを1杯飲んだ。ハッピーアワーとかで550円だった。仁科氏風に書けば「日本一の街のど真ん中でワインが550円とは」(東京)か。
わが故郷・三重県の宣伝も一つ。東京建物の本社がある東京建物八重洲ビルの地階には「伊勢角屋麦酒 八重洲店」が入居している。いい店です。
東京建物八重洲ビル
わが国初の「5階建て純木造ビル」/「カベワンGP」7度目V アキュラホーム
「5階建て純木造ビル」
アキュラホームが川崎住宅公園に11月5日オープンしたわが国初の「5階建て純木造ビル」モデルハウスを見学した。一般流通材とプレカット技術で建設できる「普及型純木造ビル」のモデル棟で、①混構造ではない木造軸組工法による5階建て②免震構造ではなく耐震構造で特殊金物を使用していない③実物大耐震実験で強度を実証-しており、組子格子デザインの構造壁や柱を極力「現し」で表現しているのが特徴。
モデルハウスは木造ビルを普及させるために開発したもので、木造軸組工法による5階建て延べ床面積約439㎡。1階が店舗、2階が事務所、3階が賃貸住宅、4・5階がオーナー向け専用住宅を想定した複合ビル。
同社は、今後1年から1年半の間に同様のモデルハウスをさいたま市、錦糸町などで建設し、木造ビルの普及を目指す「Re:Treeプロジェクト」を本格化する。さいたま市で着工した純木造の8階建て新社屋は2年後に完成する。
モデルハウス1階
「現し」の組子格子デザイン
階段室にも木造デザインを採用
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同社はモデルハウスオープンに先駆け11月4日メディア向け見学会を行っており、同社常務執行役員・井草健二氏が約40分にわたって説明・質疑応答した。そのビデオを視聴した。
井草氏は冒頭、木造の歴史について触れ、13万戸の家屋が全壊、44万戸が焼失した関東大震災と、1959年の伊勢湾台風の被害をきっかけに、「木造禁止令のような規制が進んだ結果、木造は劣勢に回った」と口火を切り、「この20年間は、技術者や学者などの取り組み・研究により歪んだ部分、世界観を是正する時代で、『仕様規定』から『性能規定』に変化した時代」と述べた。
そして、関東大震災から100年を迎えた今年は、地球温暖化防止、脱炭素社会実現に向けた「黎明期」と話し、「さらに改善を進め、向こう2年間で木造ビルは本格的に普及する」と語った。
一方で、本格普及のためには、「コストの壁」「工法の壁」「偏見の壁」の3つの壁を乗り越えるのが課題で、コスト的には、今回のモデルハウスは鉄やコンクリとほぼ同様ではあるが、工期が予定より延び労務費がかさみ、無駄な柱や梁もあるとし、競争力を高めるためには構造計算をできる設計者の育成も欠かせないと語った。
4階から5階の階段室
3階賃貸スペース
5階バルコニー
5階
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木造ファンの記者も、井草氏が語ったように「純木造ビル」が日常の街並みになることを願っているのだが、一つお願いしたいことがある。木造の「断熱性」「調湿性」「快適性」「デザイン性」などの「優位性」のエビデンスデータを各社で共有し、定量的に示すことで〝見える化〟を図ることだ。
同社の施設では、さいたま北支店とつくば支店がある。社員の病気が減ったとか生産性が向上したなどのデータは集まっていないのか。
第5回「カベワンGP(壁‐1グランプリ)」で優勝したアキュラ・チーム匠
同社は11月11日、ものつくり大学(埼玉県行田市)が主催して10月22日、23日に行った第5回「カベワンGP(壁‐1グランプリ)」にアキュラ・チーム匠として参加し、通算7度目のトーナメント優勝を達成したと発表した。
同社グループの耐力壁は、「柔よく剛を制す」をコンセプトに開発した「檜三四郎」で参戦。面材を使用せず、木材は国産材のヒノキとシラカシにより3本の横枠と4本の縦貫で構成され、横枠への縦貫のめり込みにより、高耐力と高い靭性を兼ね備えたもの。
「カベワンGP」は、東京大学・稲山正弘教授が阪神淡路大震災の後、木造は弱いという偏見を払拭し、構造耐力の向上や技術者の育成などを目的にスタートした前身の「木造耐力壁ジャパンカップ」から計25年間続く大会。今年はハウスメーカー、ゼネコン、大学や専門学校の研究者グループなど10組が参加した。
同社グループの耐力壁開発に加わっている稲山教授は「埼玉県でアキュラホームの新しい8階建ての社屋が着工しました。この社屋は耐震構造を純木造で実現しています。『耐力壁ジャパンカップ』からチーム匠でやってきた経験が、高強度の耐力壁の開発の礎となって8階建てに至っている」とコメントしている。
「檜三四郎」
健全な街路樹を「枯損木」として処分 問われる住民自治 千代田区の住民訴訟
神田警察署通りⅡ期道路整備区域のイチョウ(左は「テラススクエア」の公開空地の樹木)今年5月撮影
東京都千代田区が進めている「神田警察通り」の街路樹であるイチョウ並木の伐採工事の是非を問う住民訴訟の第1回口頭弁論が11月8日東京地裁であり、伐採工事の中止を求める住民ら原告3人は、「区は私たちと3回話し合いの機会を持ったと主張いているが、単なるアリバイ作りにしか思えない」「伐採決定は全くの寝耳に水。区には『住民の声』を聞くシステムや機能が働いていない」「区職員の虚偽の答弁に基づく議会決定は無効。誰のためのまちづくりか」とそれぞれ述べた。次回は2023年1月17日13:30から703号法廷で行われる。
口頭弁論後、原告側は記者会見を行い、訴訟代理人弁護士・大城聡氏は「区の行ってきたことには重大な瑕疵がある。住民の声は反映されず、住民自治が無視されている。極めて前代未聞の事態」と区を批判。虚偽答弁によって議決された決議は無効、違法であり、健全なイチョウを「枯損木」として伐採するのは、地方自治法2条14項、地方財政法4条にも違反すると主張した。
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最初に旗幟を明らかにしておく。記者は原告でも被告の側でもないが、街路樹の味方だ。まずは、20代の女性原告の口頭弁論の一部を紹介する。
「『人中心のまちづくり』を謳っていながら、こうした地域住民を分断してまでなぜ木を伐らなくてはならないのでしょうか。街に『賑わい』さえあれば、住民間の溝が深まり続けても良いのでしょうか。なぜ区民が『まちづくり』に参画できないのでしょうか。私たちは道路拡張工事に反対しているのではなく、ただ一期工事でそうしたように、イチョウを残して道路整備をしてほしいだけです。なぜ立派な前例がありながら、同じような工事を使用としないのでしょうか。環境まちづくり部の職員には、いったい誰のためにまちづくりをしているのか今一度考えて頂きたいです」
「今回の沿道整備にあたり、区は当初イチョウの木を保存した上で整備を進めるとしていました。しかし、ごく一部の地元住民とデベロッパーのみが参画している沿道整備推進協議会の中で一方的に当初の計画を変更し、伐採の意向を決めました。さらには、区自らがガイドラインに定めた意見公募や住民説明会などを一切行わず、計画の変更を区民に周知することはありませんでした。区議会に対しては虚偽の答弁を行うなどし、故に区議会はその誤った情報に基づき本件を議決しました。事業者である大林道路との工事請負契約書には、樹木診断結果に反し、二期区間のイチョウが『枯損木』と記載され、工事契約が締結されました」
この原告の「誰のためのまちづくりか」との訴えには、日ごろ再開発事業などを取材している記者はドキッとしたのだが、大きな争点になりそうな「枯損木」について。
「枯損木」であるかどうかは樹木医の診断を受けて決定するのが一般的で、千代田区も事前に診断を受け、健全であることを確認している。にもかかわらず、区の担当者は「枯損木」として住民に説明し、工事契約書に記載したことの是非が問われている。
原告側は、不要な支出を禁じる地方自治法2条14項(地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない)、地方財政法4条(地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない)を新たな盾として行政の不法行為を難じるようだ。
この問題について、先の住民監査請求に対する監査結果は「契約書に添付された種別内訳書の『種別・細別・内訳』欄には、『枯損木』との記載があるが、これは東京都積算基準(道路編)の施工単価を適用したことからその施工単価名称(枯損木伐採工)を引用したものである。また、同じ契約書に添付された図面には『枯損木』とではなく『高木』と記載されており、本件街路樹が『枯損木』ではないという点については、本件工事契約の発注者である区と請負者である大林道路とが共通認識に立っていたものであって、本件工事契約に錯誤による瑕疵があったとはいえない」と住民の訴えを棄却している。
区の担当者は「神田警察通り沿道整備推進協議会」で「枯損木」と説明し、その後「枯損木」でないことを認めている。工事業者との契約では「高木」としているから瑕疵はないと主張している。
イチョウの立場からすると、これは都合のいいように言葉を使い分ける二枚舌、三枚舌といわざるを得ない。監査委員が「錯誤による瑕疵」はなかったというのを言い換えれば「確信犯による不法行為」だ。どうして「支障木」としなかったのか。これならまだ一理ある。
健全な街路樹を「枯損木」として殺処分することはあるのかについて、東京都と「つくばの財産である街路樹を守り育てていく」と五十嵐立青市長が宣言しているつくば市にも聞いた。そのような事例は双方ともないということだった。千代田区のケースはやはり異例のようだ。
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もう一つ、原告の「『神田警察通り沿道賑わいガイドライン』が街路樹伐採に都合のいいように改変され、区議会での虚偽答弁に使われた」という主張も大きな争点になりそうだ。この「ガイドライン」は法的根拠があるのかどうかという問題だ。
区は、当初ガイドラインに盛り込まれていた「豊かに育った既存の街路樹を活用する(白山通りのプラタナス・共立女子前のイチョウなど)」の文言を、誤字脱字の訂正のように軽微な変更事項として課長権限で「など」を削除した。この是非が問われている。
これも難しい問題だ。行政が定めるガイドラインには条例、その他の法令条項が明示され、行政や住民に対して命令・禁止する権限を有するものも少なくないと解されるが、今回の「ガイドライン」はそれに該当するのか。
記者は、「等(など)」は法的に例外を設けない、すべてを捕捉する極めて行政側に都合のいい助詞だと思う。区が「など」を削除したのは、例外を認めないという強い意志が働いたからだと考える。これを原告らは突き崩すことができるか。
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もう一人の原告の口頭弁論を一部紹介する。
「私が疑問に思うのは、そもそも行政が区民の意見を聞いた、とする『神田警察通り沿道整備推進協議会』とはどういうものだったかという点です。沿道協議会は、13の町会長及び商店会や観光協会からの代表者、有識者2名、行政担当者など合計21名で構成され、その委員は千代田区長が任命(略)果たしてこの沿道協議会で了承したことが、『住民の総意』であったかどうかということです。(略)沿道協議会には『住民の声』を聞く十分なシステムや機能がなかったのではないかと思われます」
任意団体である町内会会長が果たして住民代表になりうるかという問題だ。これも難しい問題だ。ただ、「協議会」は「沿道整備推進」と名付けられているように、沿道整備を推進するのが目的だ。だからこそ、区と区の別動隊である都市再生機構が樹種の変更の必要性を訴え、住民アンケートも街路樹伐採を誘導するような中身になっている。
一連の「協議会」の議事録などを読む限り、町内会は上意下達の区の下請け機関になり下がっていと言わざるを得ない。街路樹伐採に賛成の人だって、都合のいいように利用され、利用価値がなくなると「枯損木」「支障木」としてごみのように捨てられる可能性もあるといったら失礼か。ある原告は「街路樹伐採に反対する人と賛成する人に分断されたという意味では双方とも被害者。加害者は千代田区」と話した。これは本質をついている。
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馬鹿馬鹿しくて書く気にもならないのだが、イチョウ(果実)が臭いとか、落ち葉が排水溝を防ぐとかの意見について。
確かにイチョウの実は悪臭を放つ。しかし、イチョウを含めた街路樹の果たしている役割をもう一度冷静になって考えて頂きたい。「臭い」というのであれば、もっとも「臭い」のはわれわれ人間ではないか。小生は今でも恥じているのだが、かつてわれわれ日本人は「臭い」といってニンニク臭のする人を嫌悪、排除した。「臭い」「汚い」「醜い」などはむやみやたらに用いるべきではない。人は死ねばみんな死臭を放つではないか。
落ち葉の処理に困るというが、サクラの花と同様、イチョウほど散り際が見事な落葉樹はそうない。受忍責任について考えて頂きたい。
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神田警察通りの賑わい創出について。
記者は前途多難だと思う。この通り面する施設を西から東に向かって列挙すると、共立女子学園・防災センター・学術センター-学士會館・興和一橋ビル-テラススクエア・神田税務署・神田警察署-錦町トラッドスクエア-寿ビル・正則学園・錦城学園-神田スクエア・竹橋スクエア-島津製作所などだ(千代田通りまで)。
これらのうち、総合設計制度などの適用を受けて道路側に公開空地を設けているのはテラススクエア、錦町トラッドスクエア、神田スクエアくらいだ。あとは、総合設計制度ができる前だろうからやむを得ない部分もあるが、ほとんどが道路と街に背を向け、敷地いっぱいに建物を建てている。賑わいを生み出す飲食・商店も少ない。ヨウコウザクラを植えても賑わうのはほんの1~2週間だ。桜が散れば閑古鳥が鳴くのではないか。
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長くなるのでもうやめるが、最後に沿道協議会で発言された住民の声を紹介する。
「私は、祖父が明治34年に、この地に製函業をはじめまして、それから、震災、戦火を免れまして、ずっとここに住んでおります。私が生まれまして、80年弱になりますが、私はこの木とともに、生活してきたと思っております…皆さん、どんなにこの木に思いを込めて頑張って復興なさったんだろうなって、そういう思いが近頃すごく思うんです。それを、それだけ見守ってくれたイチョウを、じゃあ邪魔だから、いらないからって伐るのはとってもいたましいと思います…あんなに今までの歴史を見守ってくれた木々を、このまちの歴史がなくなってしまうんじゃないかと、ものすごくそれが悲しいです。だから皆さんいろいろ、思いはおありだと思いますけれど、ともかく、その木のためにでも、少しでも議論を重ねて、何か妥協点を見出していけたらなって思います」
「我々は、いつも日陰にいる者ですから、いつも思うことは(イチョウを)残していただきたいなと思っているだけです」(車椅子利用者)
記者はこの「我々は、いつも日陰にいる者」の言葉に肺腑をえぐられた。と同時に、今回の裁判では「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル」(青空文庫)、そして〝伐れ、伐るな〟の罵詈雑言にも泰然として聞き流す物言わぬ街路樹の尊厳が認められるかどうかだと思っている。
色づくことも許されず6mくらいで強剪定されているケヤキ(久喜市・南栗橋駅近くで)
狂っているのは人間か 〝手足〟をもぎ取られ発狂しそうなケヤキ(同上)
街路樹伐採やめて 住民の監査請求棄却 千代田区監査委員 区のアリバイ作り追認(2022/7/1)
住民監査請求の行方 街路樹の価値の可視化必要 千代田区の「街路樹が泣いている」(2022/5/18)
民主主義は死滅した 千代田区のイチョウ伐採 続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/13)
野村不・JR東日本 板橋駅直結の再開発 12月着工へ マンションは388戸
野村不動産と東日本旅客鉄道は11月9日、共同で推進している「板橋駅板橋口地区第一種市街地再開発事業」の権利変換計画の認可を10月28日に受けたと発表した。2022年12月の着工、2027年6月の竣工を予定している。
事業は、JR東日本管内の駅で初となる駅施設に直結した住宅を含む複合開発で、敷地面積約3,860 ㎡、34階建て延べ床面積約51,200㎡。住宅は388戸の予定。設計・監理は東急建設、JR東日本建築設計。施工は東急建設。商業施設運営はアトレ(予定)。
ウルトラ・スーパーラグジュアリーホテル 三菱地所「Torch Tower」に誘致
「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」外観(提供:三菱地所設計)
三菱地所と東京センチュリーは11月8日、東京駅日本橋口前で開発を進めている「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」街区の「Torch Tower」高層部ホテルにウルトララグジュアリーホテル「Dorchester Collection(ドーチェスター・コレクション)」を誘致すると発表した。開業は2028年度の予定。
Dorchester Collectionは、世界5つの都市(ロンドン、パリ、ミラノ、ローマ、ロサンゼルス)で9つのホテルを有するウルトララグジュアリーホテルブランドで、わが国では初となる。2023年には中東エリア初のホテル「The Lana, Dubai」をオープンする。
記者発表会に臨んだ三菱地所執行役社長・吉田淳一氏は「TOKYO TORCHはプロジェクトビジョン〝日本を明るく、元気にする〟を掲げ、東京の玄関口にふさわしい街づくりを進めている。ホテルはその象徴としての重要な位置づけ。Dorchester Collectionとパートナーを組むことを決定したのは、その哲学に強く共感したからで、場所、歴史に応じた強い個性を持ち、それが伝説に残るホテルを手掛けられている。そして、何よりも『人』を大切にしていることに感銘を受けた。ゲストだけでなく従業員を大事にしており、その人と人のつながりが生み出すホスピタリティが真のラグジュアリーにつながっている。同社が長年培ってきた文化とホスピタリティを吹き込むことにより、この場所でしかできない『唯一無二の体験』をこのホテルは提供できるものと確信している」と語った。
また、Dorchester Collection CEOのChristopher Cowdray(クリストファー カウドレー)氏は「本ホテルは、日本のウルトララグジュアリーホテルを代表し、新たなベンチマークとして位置づけられることになると確信している。東京はアジアの玄関口であり、世界的にも重要な都市であることから、弊社の成長戦略にとって欠かせない場所。私どものビジョンである“We Care”の哲学と価値観を同じくする三菱地所(ブランドスローガン「人を想う力、街を想う力」)と東京センチュリーとパートナーシップを組み、共に歩めることを大変光栄に思います」と述べた。
TOKYO TORCHは、日本・東京の玄関口として「都心観光の核」となることを目指して建設が進められており、日本一の高さとなる62階建て高さ約390mの「Torch Tower」の53階~58階部分にホテルは設けられる。延べ床面積は約21,400㎡。客室数は110室(予定)。「Torch Tower」の着工予定は2023年度。設計監理は三菱地所設計。施工は未定。59~60階には大丸有初の賃貸レジデンスが併設される。
左から東京センチュリー執行役員副社長・中居陽一郎氏、吉田氏、Christopher Cowdray氏
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熱のこもった発表会だった。記者は、ド―チェスターは、小説に登場するイギリス南部の都市であることくらいしか知らないので、このホテルブランドの価値がいかほどか全く見当もつかなかったのだが、スタッフ約4,000人のうち35%が勤続25年以上で、レジェンドと呼ばれる高齢者の方もいるとか。「競合しても負けない」と自信を見せたのは、人材教育・ホスピタリティの質が高いからだろうと理解した。それを支えているのは哲学だろう。
理解はしたのだが、関係者が「ウルトララグジュアリーホテル」「スーパーラグジュアリーホテル」「唯一無二」を連発したのには面食らった。数えたわけではないが、1時間30分の会見の間にそれぞれ4~5度は飛び出した。
これらの言葉からストレートに「超高級ホテル」と書いても隔靴掻痒。読み手にはなんのことやらさっぱりわからないはずだ。書き手のリテラシー、想像力が問われていると思うから、宿泊料金がいくらになるか以下に大胆予測してみた。
記者は、ここに分譲マンションを建てたら坪単価は最低3,000万円と読んでいる。しかも上層階という条件などを加味すると坪単価は4,000万円から5,000万円になるはずで、10坪(33㎡)だと3億円から5億円。分譲すれば瞬く間に売れるはずだ。
この予想はかなり自信があるのだが、ここからが難しい。ホテル価格は変動制で、ましてや海外市場のことなどまったく分からないからだ。ヒントになるのは、最近の同社の大丸有の様々な取り組みと、吉田社長の言葉「マンションなどは『唯一無二』といってもすぐ真似られる。今回のホテルは常にブラッシュアップして他には真似できない本物を追求していく」だし、関係者が語った「マーケットトップを目指す」の言葉だ。となると、おおよその見当はつくのだが…〝ウルトラマンホテル〟〝スーパーマンホテル〟になりそうということに留めよう。
Sky Hill(提供:三菱地所設計)
ロビー(提供:Dorchester Collection)
車寄せ(提供:Dorchester Collection)
移動商業店舗事業拡大へ 三井不/分かったようで分からない「豊洲」の街
移動店舗「焙煎豆珈琲屋RR COFFEE」
三井不動産とグループ会社のShareTomorrowは11月7日、移動商業プラットフォーム「MIKKE!」が11月で事業開始1周年を迎えたのを機に記者説明会・体験会を開催し、この1年間の事業を振り返るとともに、出店エリアの拡大、新サービスの導入、ロゴのアップデートなどを行うと発表した。
「MIKKE!」は、出店会社へ「車両」「場所」「顧客情報」を提供することで、新たな販路拡大と未開拓の顧客層へのアプローチを狙った移動商業プラットフォームで、この1年間で出店場所は50区画、出店店舗は200店舗、顧客基盤は3.5万人(利用者約6万人)の実績を積み上げてきた。
こうした実績を基に、今後は出店エリアを東京湾岸エリアに近接するゾーンから都内主要エリアに拡大し、出店場所もマンションや商業施設中心だったのを、駅前高架下、スーパーマーケット、有料老人ホームなど多様化させ、新サービスとして場所貸しプラン「&MIKKE! SPOT」を導入する。
また、従来のサービス名称「MIKKE!」から「共生・共存」の理念を象徴する三井不動産グループロゴ「&」マークを付加した「&MIKKE!」へアップデートした。
新しいロゴ
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豊洲公園での体験会では、サントリーホールディングスが運営しているその場で豆を挽きコーヒーを淹れる「焙煎豆珈琲屋RR COFFEE」を利用した。深々炒りで400円。小生が毎日淹れているコーヒー(200gで1,500円)よりおいしかったので、同じ値段の豆を買おうと思ったが、自宅にはコーヒーミルがないのであきらめた。
小生が「これは美味しい」とほめちぎったからでもないだろうが、ペット用のバギーに子犬を載せた(乗せたか)若い女性グループが群がってきた。この「焙煎豆珈琲屋RR COFFEE」はヒットすると直感した。「RR」には「いつの時代にも私たちに欠かすことのできない、人間らしい生命の輝きを取り戻すこと(Restoration)。そんな当たり前の幸福を、お客様と一緒になって目指す、ヒト懐っこいコーヒー屋(Roasters)です」(同社ホームページ)の思いか込められている。
媚びを売る犬は好きではないが、あまりにもけたたましい鳴き声に小生は反応し、インタビューを敢行した。その子犬は1歳4か月の♀の独身で、飼い主の女性は「香りに敏感なの。カメラを向けるとそっぽを向くの」と代返した。
傍にいたおとなしいもう1匹は4歳の♂の独身だった。♀犬はコーヒーの香りではなく、♂犬のフェロモンに刺激されたからだと小生は結論づけた。そろそろ色気づく年ごろだ。♂犬だって独身かどうか怪しいもんだが…。
同社の担当者3人ともしばし歓談した。糖尿の小生は体に良くないと言われるのでビールは飲まないことにしているのだが、同社の「TOKYO CRAFT」にほれ込み、最近は毎日のように1本飲んでいる。なので「どうしてビールを売らないのか」と聞いたら、検討中とのことだった。
また、同社の工場見学ではビール、ウイスキー、ワインをただで頂いたこともあるので、その話をしたら「お客さん優先なので、ウイスキーを含めて(ただで)飲めない」とぼやいていた。社長!そんなケチなことしないで、溺れるほど飲ませてやっていただきたい。
車両店舗では酒類の提供はなかったので、坂茂氏が設計した芝浦工大のレストラン&カフェに向かった。大学祭とかでレストランは休み。カフェでワインとクロワッサンを注文した。720円だった。店のスタッフから「教職員じゃありません? そうでしたら30%引きになります」と聞かれた。とっさに「そうです」と答えようと思ったが、〝嘘つきは泥棒の始まり〟ときつく親から諭されてきたので、「ハイと答えると証明するものは必要ですか」と返したら、身分証明書が必要ということだった。
芝浦工大ではもう一つ驚いたことがあった。通りかかった男女2人組の学生さんに坂茂氏のことを話したら、「坂茂? 」全然知らなかった。「何年生? 専攻は? 」と畳みかけたら、双方とも1年生で建築学部ではなかった。それにしても坂茂氏を知らないとは。SNSの情報は氾濫しているのに肝心のことは知らない。世の中はどこか狂っている。
狂っているといえば、信じられない光景を目の当たりにした。オフィス「豊洲フロント」の前のけやき通りには見事な街路樹が植わっていたのだが、明らかにサクラと思われる樹木に「イチョウ」の名札が付けられていた。誰かのいたずらだろうとは思ったが、針金は樹木に食い込んでおり、昨日今日のことではないことも分かった。道路管理者はどうしているのか。
世界を独り占めしている1歳4か月の♀犬(左)とおっとりした4歳の♂犬(大人の世界も一緒か)
「イチョウ」の名札が付けられたサクラ
美しい豊洲の街並み
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名札といえば、さすが三井不動産。記者説明会会場となった同社の「豊洲ベイサイドクロス」ビルの公開空地にはクロマツ、クロガネモチ、ケヤキ、イロハモミジ、シマトネリコ、ヤブニッケイ…樹齢数十年と思われる立派な樹木が植えられており、名札も付けられていた。豊洲エリアは計画的に整備されてきたこともあるが、総じて街路樹のレベルは高い。マンションが人気になるのもうなずける。(公園など区が管理する施設には名札などない)
「ららぽーと豊洲」では嬉しいこともあった。「牧田さん、どうしたの? 」とだしぬけに声をかけられた。すぐ、RBA野球の名物男で三井不動産リアルティの野球部関係者だと分かった。「ららぽーと豊洲」には同社の店舗があり、宮沢りえさんのTVCMもここで撮影されたそうだ。
以上、記事は4時間かけて歩いた成果だ。現場取材は楽しい。「あなたはマンションに詳しいかもしれないけど、何もわかっていないわよ」かみさんが言い放った。狂っているのは小生か。
「豊洲ベイサイドクロス」の公開空地(手前はクロマツ)
「豊洲ベイサイドクロス」の見事なクロガネモチ
宮沢りえさんの撮影が行われた三井不動産リアルティの店舗
まさに紙わざ ヒントは「6」 坂茂氏が設計した芝浦工大のレストラン&カフェ(2022/10/25)