全国24か所のホテルを有する大和リゾートの全株式 556億円で売却 大和ハウス
大和ハウス工業は12月8日、同社の100%子会社・大和リゾートの全株式・貸付債権をジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズ(JHRA)がアセットマネージャーを務める恵比寿リゾートへ譲渡し、大和リゾートが運営するホテル「ロイトン札幌」を信託受益権化し、譲渡することを決定したと発表した。株式譲渡、債権譲渡の総額は556億円。譲渡実行日は2023年4月3日。
株式譲渡、債券譲渡について同社は、ホテル業界の環境変化、施設の老朽化、新型コロナの影響などから経営環境が大きく悪化していることから、「大和リゾートのホテルが持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、ホテルを専門分野として不動産投資運用を行なう資産運用会社であるJHRAの専門的な知識やノウハウを活用することが大和リゾートの価値最大化とサステナブルな成長に資すると判断し、『ロイトン札幌』についても、事業展開における効率性を勘案した」としている。
大和リゾートは1973年設立。現在全国で24か所のホテルを運営。2022年3月期の売上高は188億円(2020年3月期は462億円)、経常損失56億円(同1億円)、純損失69億円(同10億円)。
日ハム新球場「Fビレッジ」内にワーケーションオフィス 三菱地所が開設
「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」オフィス(完成予想図)
三菱地所は12月8日、北海道日本ハムファイターズの新球場「北海道ボールパークFビレッジ」内にワーケーションオフィス「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」を来年3月に開設すると発表した。施設は和歌山県・南紀白浜、長野県・軽井沢、静岡県・熱海、静岡県・下田、神奈川県・箱根に続く「WORK×ation プロジェクト」6拠点目。
施設は、北海道北広島市Fビレッジの新球場「ES CON FIELD(エスコンフィールド)HOKKAIDO」のレフトスタンドに位置する「TOWER 11(タワー・イレブン)」の延床面積82.8㎡。構成はパークサイド1室(46.7㎡)、フィールドサイド1室(36.1㎡)の2部屋。各部屋にWi-fi、プロジェクター、ホワイトボード、ディスプレイ、OAタップ、文具などを設置する。
同社は、フレキシブルなワークスタイルに対応する商品・サービスを提供するため2018年8月からワーケーション事業を展開しており、今回の施設はFビレッジ内での野球観戦をはじめとした様々なアクティベーションとのコラボレーションにより「イノベーション創出体験」「新たな観戦体験」を創造する。
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球場内でのこの種の施設は、三井不動産などが東京ドーム内のプレミアムラウンジをワークスペースとしてワークスタイリング会員向けに提供するのを取材している。アンチ巨人の記者だが、素晴らしい施設だと思った。横浜スタジアムにもあると聞いた。
北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO」では、徒歩1分の日本エスコンのマンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」全118戸が分譲開始からわずか8か月で完売し話題となった。
また、デベロッパーの野球がらみの話題では、ヤクルト村上選手が三冠王を達成したことから、トップスポンサーである〝好立地、ぞくぞく〟のオープンハウスが「東京の家 3億円」をプレゼントして、3億円を超える広告・宣伝効果(記者の予想)をあげた。
購入者の4割が道外 日本エスコン 日ハム新球場に隣接マンション118戸完売(2022/9/21)
東京ドームをワークスペースとして提供 通年利用検討か 三井不動産ほか(2022/4/20)
村神様 祝56号!三冠王も確定 オープンハウス「1億⇒3億円の家」に大幅増額(2022/10/4)
「世界でうちだけ」 10年で半額、20年で全額買戻し PALLET HOUSE JAPAN
PALLET HOUSE JAPANのブース
12 月7日(水)~12月9日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催されている日本経済新聞社主催「SDGs Week EXPO 2022」を半日かけて見学取材した。会場の広さは約26,000㎡、出展ブースは350くらいあったか。一通り回った中でもっとも印象に残ったのは、産業廃棄物でもある木製廃パレットや建築足場古材をヴィンテージ家具に変貌させる事業を展開しているPALLET HOUSE JAPANのブースだった。
素晴らしい作品が展示されていた「WOOD DESIGN AWARD 2022」のコーナーを見た後だった。一見して廃材を利用したものであることが分かるテーブルに目が吸い寄せられた。「いいデザインですね」と声を掛けたら、大町浩社長は、記者が尋ねもしないのに次のようにまくし立てた。
「このような廃材を利用して家具を製作しているのは世界に2つ(もう一つはどこか話さなかった)。釘などが残っているので製品にするのは結構難しい。珍しい事業であることからテレビなどメディアで取り上げられるようになり、今年は11本。時間にしたら2時間超。昨年からだと18本。関西企業ではうちがもっとも露出度が高いでしようね。わたしは『吉本』出身で、坂田利夫の2番弟子(1番ではなかったようだ)」
肝心の値段を聞いた。「このテーブル? 15万円くらい。10年間使ってくれたら半額で、20年間なら売った値段で買い戻す特約付き。こんなことをしているのは世界中でもうちしかない。もともと廃材なので、全額で買い取っても再販できる自信がある」
なるほど。さすがもと芸人だ。落ちもある。「(会社が)潰れたらごめんね」
大町氏(こんなポーズを記者は注文したわけではない。念のため)
PALLET HOUSE JAPANのブースは日本ウッドデザイン協会のブースの隣にある
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同社のホームページで調べた。創業は2014年3月。「誰もやらない、誰もやれない」を理念に、世界的インテリアブランドを目指すという。本社所在地は大阪府東大阪市水走3-3-7、TELは072-966-8010、営業時間は年中無休(AM10:00 〜PM6:00)。
「坂田利夫」と言われても、あああの人かとしか思い浮かばない記者だが、日本だけではなく「世界初」の企業と巡り合うことができた。これも何かの縁か。現場取材はこれだから楽しい。「SDGs Week EXPO 2022」は3日間で6万人の来場者を見込んでいる。
「すべての人、すべての領域をにじませるのがアート」 三菱地所&東京藝大 連携協定
吉田氏(左)と日比野氏(提供:三菱地所)
三菱地所と東京藝術大学は12月6日、包括連携協定を12月5日に締結したと発表。産学連携を強化することで、大手町・丸の内・有楽町エリア(大丸有)で、アートが有する力を介することで企業・個人のクリエイティビティを高め、ビジネスアイディアの発見と新しい産業の創出を促進するのが目的。
今後、大丸有エリアでの「藝大アートセンター」構築に向けて、双方のリソースを活用し、ビジネスセンターに求められるアートの役割について研究し、社会人・学生向けプログラムを研究・提供する寄附講座を開講する予定。
両者は2007年以来「藝大アーツイン丸の内」を開催しており、様々なアートイベントでの連携を深めてきた。
三菱地所執行役社長・吉田淳一氏は「藝大との協業をより一層強化し、双方の知見・ノウハウを活用すると共に、アートを触媒として、大丸有エリアに立地する企業や近接するアカデミアとの連携・協業を推進することで、日本の豊かな未来を創造していく」とコメントしている。
東京藝術大学学長・日比野克彦氏は「三菱地所と藝大の目指す社会は、イメージする力を基盤に構築していくという共通したところがある。三菱地所が持つまちづくりの知見を元に、丸の内地域でのアートアクションの実践や、アート×エコビジネスによるアート・リーディングプログラムを作り、社会的課題の解決へ、そして未来の地球へ貢献していく。アートは個々の違いをそれぞれの特性として認識し、その差異がひとりひとりの心を動かすことができるもの。すべての人たち、すべての領域を滲ませることができるのがアート」とコメントしている。
本日COP15開幕 生物多様性の情報開示焦点 積水ハウスのフォーラムから
「都市の生物多様性フォーラム」(左からアナウンサー木佐彩子氏、八木氏、菊池市、河村氏、仲井氏、村松氏、今森氏、河口氏=神田スクエアで)
積水ハウスが11月30日に開催した「都市の生物多様性フォーラム」をアーカイブで視聴した。12月7日(日本時間8日)にカナダで開幕するCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)第2部を見据えた基調講演やディスカッションが行われた。同フォーラムは昨年11月の第1回に続く第2回目。
基調講演では、積水ハウス代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、同社「5本の樹」計画と琉球大学のビッグデータシステムを共同検証し、世界初の都市の生物多様性の定量評価システム「ネイチャー・ポジティブ方法論」をオープンデータ化してから1年経過したことを踏まえ、「この1年間で予想外の嬉しい取り組みが3つあった。一つは都市緑化機構さんと連携して企業緑地の生物多様性評価を強化すること、二つ目は教育分野への展開、三つ目は東京大学とのウェルビーイングの共同研究が始まったこと」などと同社の生物多様性の取り組みが前進していることを報告した。
これを受け、国際自然保護連合日本委員会事務局長・道家哲平氏は、多くの国・団体から「情報開示義務がなければ、政府も企業(金融)も、目隠しして空を飛ぶようなもの」との声があることを紹介し、COP15では企業の生物多様性の取り組み状況を開示し、義務化すべきという論議が行われる可能性を示した。
このほか、環境省大臣官房 総合政策課 環境教育推進室長・河村玲央氏は同省の環境教育プログラムについて、都市緑化機構企画調査部主任研究員・菊池佐智子氏は同機構の「SEGES(シージェス)」の「育てる」「都市オアシス」「計画(つくる緑)」についてそれぞれ報告した。
このあと行われた、積水ハウスESG経営推進本部環境推進部スペシャリスト・八木隆史氏が司会役とする、写真家・今森光彦氏、千葉大学非常勤講師でNPO法人生態教育センター理事、生態計画研究所主席研究員・村松亜希子氏、立教大学特任教授で不二製油グループ本社CEO補佐・河口眞理子氏3氏によるディスカッションでは、生物多様性の取り組みは点から線へ、さらに面的に広げなければならないことが強調された。
仲井氏
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フォーラムの全てを紹介する余裕はないが、出身地・大津市の45年間も管理が放棄された、シカやイノシシも避けて通る山林や耕作放棄された農地を取得し、自ら農業も行っている写真家の今森氏が興味深いことを話されたので紹介する。
今森氏は写真を撮るときは被写体と距離を置き、冷静な目で俯瞰的、鳥瞰的に眺め、そしてその被写体の中に入り込むようにして、中から見える世界を切ると話した。そうすると自然と人間の関係性がよく分かるのだという。
記者が好きな作家・丸山健二氏は、同じようなことを語っている。丸山氏は、小説を書くうえでもっとも大事なのは人間やものを徹底して観察することだとし、例えていえばカメラだと話している。サングラスをかけているのは、目を保護するためでもあるが、じろじろ眺めていることが相手に悟られないからだという。丸山氏の小説には、人間だけでなく動植物、あるいは無機物を主人公にしたものが多い。
生物多様性を考えるとき、今森氏や丸山氏のような視点が必要だと思う。人間と自然界の関係性をしっかり捉えることだ…小生などは自分の物差しでしかものごとを測れないが…。
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演壇に飾られていた樹木がまた素晴らしい。同社に樹種を聞いた。シラカシ、アオキ、コナラ、イスノキ、ナンテン、サツキツツジ、ユズリハ、ハクサンボク、アセビ、タブノキ、カクレミノ、ソヨゴ、アオダモ、アカマツ、ドウダンツツジ、シャリンバイだそうだ。
16年ぶり分譲が持家を上回るか 地方のマンションにも注目 国交省 10月住宅着工
国土交通省は11月30日、2022年10月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は76,590戸(前年同月比1.8%減)で3か月ぶりの減少。利用関係別内訳は持家21,834戸(同18.7%減)で11か月連続の減少、貸家31,996戸(同7.3%増)で20か月連続の増加、分譲住宅21,841戸(同4.8%増)で3か月連続の増加。分譲住宅の内訳はマンション9,298戸(同10.2%増)で3か月連続の増加、一戸建住宅12,462戸(同1.4%増)で18か月連続の増加となった。
首都圏マンションは4,633戸(前年同月比37.9%増)で、都県別では東京都3,359戸(同62.5%増)、神奈川県344戸(同33.1%減)、埼玉県274戸(同60.6%減)、千葉県656戸(同690.4%増)。
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記者が注目しているのは、持家と分譲住宅の着工戸数だ。1~10月では持家は212,008戸(前年同期比10.7%減)で、分譲住宅は214,645戸(同5.6%増)となっており、分譲住宅が2,637戸上回っている。残り2か月。分譲住宅が持家を上回れば2006年(平成18年)以来16年ぶりとなるが…。
もう一つの注目点は近畿圏とその他地方のマンションの着工戸数だ。今年1~10月では、近畿圏は20,704戸(前年同期比16.0%増)で、その他地方は20,591戸(同19.4%増)と拮抗している。
その他地方の着工戸数が近畿圏を上回ったのは平成20年以降で平成20年、同29年、令和3年の3度ある。今年はどうなるか。
東京大学&積水ハウス 庭の生物多様性とメンタルヘルスに関する共同研究
イメージ図(提供:積水ハウス)
東京大学大学院農学生命科学研究科と積水ハウスは11月30日、生物多様性と健康に関する共同研究を2022年12月1日から開始すると発表した。身近な庭の自然とのふれあいが、居住者の自然に対する態度・行動や健康に及ぼす影響を総合的に検証するもので、この種の試みは世界初となる。
同研究科は、都市の生物多様性の保全や生態系サービスの活用に関する研究を行っており、2020年に緑地の利用頻度と家の窓からの緑の景色という2つの自然経験の尺度が、都市住民のメンタルヘルス(自尊心、人生の満足度、幸福度、鬱・不安症状、孤独感)とどのように関連しているのかを検証。その結果、緑地の利用頻度が高い人だけでなく、窓から緑が良く見える家に住む人もこれら5つのメンタルヘルス尺度が良好な状態にあるという結果が得られたとしている。
今回の共同研究では、同科保全生態学研究室が構築した分析手法と同社の「5本の樹」計画を組み合わせて研究することで、「生物多様性の豊かな庭の緑」が「人の健康・幸せ」にどのような影響を与えるかを科学的に検証する。
同科准教授・曽我昌史氏は共同研究について「積水ハウスの保有する全国の植栽データによって、これまで検証が難しかった『庭の生物多様性と健康および自然に対する考え・行動の関係性』が世界で初めて総合的に検証されることになります」とコメントしている。
積水ハウスは2001年から「5本の樹」計画として〝3本は鳥のため、2本は蝶のため〟に、地域の在来樹種を植える取り組みを行っており、2019年から行っている琉球大学久保田研究室・シンクネイチャーとの共同検証では、生物多様性の劣化が著しい都市部で植樹を行ってきた効果が確認されている。
「5本の樹」計画で樹木を植える際、顧客が望む樹種を積水ハウスに聞いた。別表がそれだ。同社によると、地域によっては樹種が異なるとのことだ。以下に特徴を紹介する。
ソヨゴは常緑の中木で、赤い実がなることから庭木として人気も高い。シラカシは常緑樹で、地質にもよるが樹高は20mくらいになる。強剪定すると枝葉が繁茂するので注意が必要とされる。
イロハモミジはよく知られた落葉樹。基本的には剪定は行わないとされている。アオダモはバットの材利用としてよく知られた落葉広葉樹。樹高も10mくらいにしか成長しないので、庭木としてよく植えられる。
エゴノキは落葉小高木。白い小さな花が咲き、庭木や公園などによく植えられる。ヤマボウシも庭木や街路樹によく用いられる落葉樹。初夏に白い花を咲かせる。クロガネモチは常緑広葉樹。冬季に真っ赤な実を付ける。美しい樹形を描く。街路樹としても用いられる。
「物流」に「AI」 ドライバーに「愛」 大和ハウス&日立物流 コンテスト説明会
左から加藤氏、秋葉氏、佐藤氏、坂村氏、浦川氏(羽田イノベーションシティで)
大和ハウス工業、日立物流、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の3者は12月1日、ロジスティクスデータ活用コンテスト「大和ハウス工業 スマートロジスティクス オープンデータチャレンジ」を2022年12月9日から開催すると発表した。同日、メディア向け説明会を実施した。大和ハウスグループはこれまでこの種のコンテストを3回行っており、今回が4回目の開催。
コンテストは、日立物流の安全運行管理ソリューション「SSCV-Safety」(Smart & Safety Connected Vehicle)から得られる実際の物流(ロジスティクス)システムのデータを公開(オープンデータ化)し、その有効利用方法を競うもの。AIをはじめとしたデジタル技術を用いた新たなサービスやアプリケーションの提案を、国内外問わず一般の方から募集する。
また、コンテストの趣旨への理解を深めてもらうためのTRON(トロン)シンポジウム「2022 TRON Symposium -TRONSHOW-」(開催日:2022年12月7日~12月9日、場所:東京ミッドタウン)の中で、「『大和ハウス工業 スマートロジスティクス オープンデータチャレンジ』シンポジウム」(12月9日(金)15時00分~16時30分)を開催する。
物流業界では人手不足や長時間労働といった課題を抱えており、コンテストを通じて大和ハウス工業と日立物流が目指す「スマートで安全な物流」を、デジタル技術と開発者の知恵を借りして実現するのが目的。
説明会の冒頭、大和ハウス工業取締役常務執行役員 建築事業本部長・浦川竜哉氏は、「労働時間の上限規制が適用される2024年問題をはじめ、人手不足、労働環境など物流業界は大きな課題を抱えており、今回のコンテストが持続可能な物流業につながることを期待している」と語った。
羽田みらい開発SPC統括責任者、鹿島建設開発事業本部事業部長・加藤篤史氏は「『HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)』は、当社や大和ハウス工業さんら9社連合の先端技術と日本文化の融合をキーワードに、新産業創造・発信拠点として開発を進めているもので、デジタル基盤整備、クリーンエネルギー、無人自動車運転、警備ロボットの実装を進めている」と街づくりについて説明した。
東洋大学情報連携学部INIAD学部長、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所長・坂村健氏は「データの公開はここ10年間で世界的に広がっており、本流・潮流になっている。私も関わった東京都の新型コロナのオープンデータもその一つ。大和さんはこの種の取り組みでもっとも積極的」と称えた。
日立物流執行役専務 営業統括本部長・佐藤清輝氏は、「2015年の半年間に同じ事務所で3件の漫然運転による事故が起きたのがSSCVを開発するきっかけ。ドライバーを被害者にも加害者にもさせない、事故を未然に防止するのが目的。2016年以降、社内の1,300台に導入したが、事故はゼロ、コストはCO2排出量を7.4%削減し、車両コストは9,000円/月/1台削減した。最初は〝どうして監視されなきゃいかんのだ〟といった声もあったが、家族も安心なことからみんな喜んでもらっている。システムのリース料は1事務所当たり月額1,000円。物流業界は99%がアナログの世界。みんながシステムを共有することでドライバーのなり手が増え、収入も増えるようにしたい」と語った。
フレームワークス代表取締役社長CEO・秋葉淳一氏は「以前から佐藤さんに話をうかがっており、オープンデータはとても大きな価値があると思っている。ドライバーだけでなく、いろいろなケースで活用ができるのではないか」と話した。
コンテストの応募期間は2022年12月9日(金)~2023年6月30日(金)。表彰式は2023年8月の予定。募集内容は、日立物流の安全運行管理ソリューション「SSCV-Safety」から得られデータ・映像を活用した作品(アプリケーション、Webサービスなど)と研究論文。賞金総額: 500万円(最優秀賞200万円、優秀賞50万円×4本)、その他特別賞。
詳細は専用サイトhttps://daiwa-open-challenge.jp
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大和ハウス工業から説明会の案内が届いたときは、物流はよく分からないし、車の免許を持たず、スマホすら満足に扱えず、ユビキタスやトロンの意味もさっぱり分からないので、スルーしようかと考えたが、説明会会場の未来都市「天空橋」で何か新しい発見もあるかもと取材を申し込んだ。
結果は大正解。知らないことばかりに衝撃を受け、必死になって説明者の言葉をメモした。
とりわけ、日立物流の佐藤氏の話は〝目からうろこ〟だった。佐藤氏の強い意志、熱意が技術者を動かしたのだろう。同社の経営理念には「日立物流グループは 広く未来をみつめ 人と自然を大切にし 良質なサービスを通じて 豊かな社会づくりに 貢献します」とある。
「SSCV-Safety」には、①車両の位置情報②加速度情報③ドライバーのバイタルデータ(測定日時、体温、血中酸素濃度、血圧(最高血圧・最低血圧)、自律神経機能値、運転中の疲労度と注意レベル)④ヒヤリハット発生イベントデータ(イベントの種別、日時、位置情報など)⑤ヒヤリハット発生時の映像-が搭載されているが、ヒヤリハット発生時の映像を瞬時に「伐り出し」できるものは他にないということだった。
記者はドライバーだけでなく他の用途にも活用できないかと質問した。佐藤氏は「バスでのトライアルは始まっており、消防車、生協、弁当配達などから引き合いがある。個人? 可能性としてはあるが…」と話した。
佐藤氏の話を聞きながら、記者は4年前の大和ハウス工業のTVCM「物流×AI」を思い出した。役所広司さんは「物流×AI」の「AI」を日本語の「愛」に置き換え〝物流の未来を変えるんだ 「愛」をローマ字にすると「AI」になるんだ 「AI」は、そうなんだ、「愛」なんだ〟と躍った-〝ドライバーを被害者にも加害者にもさせない〟-これも「愛」だ。
書き忘れた。隣接の「羽田エアポートガーデン」もいいが、「羽田イノベーションシティ」もまたいい。喫煙所は各所にある。マンションを建設したら申し込みが殺到すると思うが、地区計画はどうなっているのか。
羽田イノベーションシティ
何かのイベントのようで数百人の女性が詰めかけていた
大和ハウスの新TVCM 「物流×AI」が最高に面白い(2018/1/5)
スイート、温浴施設が素晴らしい 住友不「ヴィラフォンテーヌ羽田空港」12/21開業(20222/10/7)
持続可能なみかん産地目指し協定 三重県御浜町、積水ハウス、クラダシなど5者協定
右から大畑氏、関藤氏、中尾氏、パーク七里御浜代表取締役社長・辻利文氏、ツーリズムみはま代表理事・湊賢一郎氏
三重県御浜町、積水ハウス、クラダシ、パーク七里御浜、一般社団法人ツーリズムみはまの5者は11月28日、「御浜町における食品ロス削減及び特産品のPRに向けた連携協定」を締結したと発表した。
積水ハウスとマリオット・インターナショナルが推進する地方創生事業「Trip Base 道の駅プロジェクト」の地域活動の取り組みとして積水ハウスが主導したもので、「Kuradashi」での商品の販売をはじめ、各者が協力して担い手不足による未収穫産品の解消や不揃い、規格外果実の加工によるフードロスの削減、一次産業における消費行動への変容を促すとともに、御浜町のPRと地域活性化を目指すのが目的。
具体的には、全国の大学生・大学院生を対象に12月12日(月)~12月18日(日)、社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」を実施する。定員は6名で、道の駅パーク七里御浜に隣接する「フェアフィールド・バイ・マリオット・三重御浜」を学生の宿泊場所として利用し、学生は担い手不足により未収穫となってしまう可能性のあるみかんの収穫を支援するほか、学生が収穫したみかんを、道の駅パーク七里御浜内のジュース工場でみかんジュースに加工する。期間中に学生と役場職員の意見交換会も実施する予定。
クラダシは、フードロスや地方創生に興味のある学生が日本全国の人手不足で悩む地域・農家を訪れ、収穫支援や現地での交流を行う社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」を2019年から実施しており、参加学生の旅費や滞在費、食費などすべて同社が設立したクラダシ基金から拠出している。
積水ハウスは、「未知なるニッポンをクエストしよう」をコンセプトに、道の駅と隣接するホテルを拠点として、「地域の知られざる魅力を渡り歩く旅」を提案し、地域や自治体、パートナー企業とともに、観光を起点に地域経済の活性化を目指す地方創生事業「Trip Base道の駅プロジェクト」を展開している。
2020年10月から開業したホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」は現在、9道府県20か所(約1,600室)を展開。2025年には26道府県、約3,000室規模への拡大を目指している。
協定式に臨んだ御浜町町長・大畑覚氏は、「町は長年にわたって年中みかんがとれる町として産業支援を行っているが、近年は高齢化や人口減少により収穫が困難になってきており、雇用も伸びていないのが現状。今回の協定が食品ロスの解消と街のPRにつながると期待している」と話した。
クラダシ代表取締役社長・関藤竜也氏は「当社は〝ソーシャル・グッド・カンパニーであり続ける〟をミッションに、〝日本で最もフードロスを削減する会社〟をビジョンにそれぞれ掲げている。会社設立以来、1万トンの食品ロスの削減を実現したことから様々な賞も受賞している。今回の協定で、町の未来が明るくなるよう事業を推進していく」と語った。
積水ハウス開発事業部トリップベース事業推進室長・中尾茂樹氏は「地方創生、持続可能な社会の実現を目指す非常に意義深い協定。地域を元気にするため全力で応援していく。同様の取り組みをこれからも展開していく」と述べた。
御浜町は三重県のほぼ南端に位置する人口約8,100人の町。「年中みかんのとれるまち」をキャッチコピーに様々な品種のみかんが栽培されているが、近年は高齢化や後継者の減少による担い手不足、それに伴う遊休農地や耕作放棄地の増加、農地の集積の停滞、獣害の増加などの課題を抱えている。町は「第6次御浜町総合計画」の重点プロジェクトの一つに「みかん産地の再生」を掲げている。
5者連携模式図
◇ ◆ ◇
三重県出身の記者は、御浜町は町名だけは知っていたが、和歌山県境に近い最南端なので行ったことはなく、「年中みかんがとれる町」であることも知らなかった。とてもおいしいさんまの丸干しの産地ではなかったか。今回の協定で〝全国区〟になりそうなので、とても嬉しい。
そしてまた、このような社会貢献型インターンシップがあることも全然知らなかった。三菱地所の学生が経営する「アナザー・ジャパン」も最高に素晴らしいと思ったが、「クラダシチャレンジ」は労働力を提供するだけで旅費、滞在費、食費が掛からず、役場の人たちと意見交換できる。大学にもよるだろうが、単位も取れるはずで、申し込みが殺到するのではないか。近ければ、飛んで行って取材したいのだが…。
ミカンの収穫作業
「フェアフィールド・バイ・マリオット・三重御浜」
「森を、つなぐ」東京プロジェクト始動 野村不HD 奥多摩町と協定
「つなぐ森」全景
野村不動産ホールディングスは11月28日、東京都奥多摩町が保有する約130haの森林について30年間の地上権設定契約を2022年9月に締結し、地産地消を目指す「森を、つなぐ」東京プロジェクトの取り組みを進めると発表した。
森林の川上(林業)⇒川中(加工)⇒川下(消費)をつなぎ、森林サイクルを再構築し、地球環境保全、土砂災害防止機能、水源涵養などの森林の有する多面的機能の回復に貢献するのが目的。
「つなぐ森」は約130haで、樹種はスギ、ヒノキの人工林が74.2%、広葉樹の自然林が25.8%。主伐、間伐、植林などを適切に行うことで、30年間で森林のCO2吸収量は約16,600t (森林放置時の約1.4 倍)を見込んでいる。管理は東京都森林組合に委託する。
伐採を予定しているのは約500㎥で、2025年に本社機能を移転する「芝浦プロジェクト」のトライアルオフィス床に「つなぐ森」の木材を活用するほか、同社グループの事務所、店舗などの内装材や住宅・オフィスにも活用していく予定。
奥多摩町は東京都の面積の約1割で、面積の94%を森林が占め、都民の水源地として知られているが、伐採適齢期を迎えているにも関わらず伐採されない森林も多く、人口はかつての約15,000人から3分の1の約5,000人に減少。空き家の発生などの社会課題も抱えている。
同社と同町が2021年8月に締結した「持続可能な社会の実現に関する包括連携協定」では、地元の産業・雇用の創出などにも貢献していくことが盛り込まれている。
オンラインの記者説明会で同社執行役員サステナビリティ推進担当 兼 コーポレートコミュニケーション部、サステナビリティ推進部担当・中村篤司氏は「伐採を予定している500㎥は多くはなく、現段階で住宅の構造材として利用することはコスト、耐火基準などの壁があり難しい。まずは身の丈から始め、脱炭素社会の実現に貢献するよう取り組んでいく」と話した。
「森を、つなぐ」伐採シーン
師岡伸公・奥多摩町長(左)と沓掛英二・同社代表取締役社長