「協創」促す機能と美の融合オフィス「出社率高まる」三井デザインテック
エントランス
ハローウィンのこの日(10月31日)、わが国民を熱狂させた大谷翔平が所属する西海岸の王者ロサンゼルス・ドジャース(ナ・リーグ)と、本塁打王アーロン・ジャッジを擁する東海岸の王者ニューヨーク・ヤンキース(ア・リーグ)との48年ぶりの夢のワールドシリーズ第5戦があったのだが、試合がどうなろうと全く興味はなかった。唯一の関心事は、同業のF記者が絶賛した三井デザインテックの銀座オフィスが美しいかどうかを確認することだった。
エントランスに入ってほとんど瞬時に心が踊り、取材を終えた30~40分後には感動で胸がふるえた。案内していただいた同社フェロー/エグゼクティブクリエイティブディレクター・見月伸一氏、広報担当の(記者がアンチ巨人&西武ファンを知ってか知らずか)巨人ファンというNさんと美大出身のOさん(二人でON、逆だとNO)に感謝申し上げる。
①有楽町駅前のサクラの街路樹
②板橋・浮間公園のメタセコイア(左)と③東銀座駅すぐのメタセコイア
本題に入る前に写真①②③を見ていただきたい。①の写真は、JR有楽町駅前の東京交通会館前に植わっている街路樹だ。樹形からしてケヤキではないかと思ったのだが、よく見るとサクラだった。樹齢はわからないが、人間にしたら芳紀まさに十八か(サクラは雌雄同株だが)。千鳥ヶ淵や井の頭公園のような池のほとりではなく、何のストレスもないフラットなところで、強剪定などされていないからこのような美しい自然樹形を描いているのだろう。これこそが「フラクタル」現象だ。
②の写真は、戦後、米国から昭和天皇に献上されてから爆発的に全国に広がったメタセコイアで、板橋区・舟渡公園で撮影したものだ。樹高は30mにもなるはずだ(阿佐ヶ谷駅前の落葉したメタセコイアはビュッフェの絵画を見るようで最高に素晴らしい)。
③の写真は、東京メトロ東銀座駅を降りてすぐの同社本社ビルにも近い、公開空地に植えられているメタセコイアだ(本来、こんな狭い空間に植えるものではない)。虐待というべき強剪定がされていた。至るところからひこばえを茂らせ、必死に生きようとていた。
千葉大学名誉教授・藤井英二郎氏は三鷹市で行われた講演会で「強剪定された街路樹をみて多くの人々は無意識でストレスを感じているんです。感じていながら気づいていない。これは不幸です…強剪定された街路樹は委縮した心と社会の表れです」と喝破した。
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オフィス見学取材が決まったとき、ぜひとも聞こうと思っていたことが一つあった。丹下健三が「(建築物は)機能的なものが美しいのではない。美しいもののみが機能的だ」と専門書で書いていた。この言葉が頭の隅にこびりついており、マンションを見るときも街を歩くときも、美しいか醜いか機能的かそうでないかをずっと考えてきた。
そこで次のような図表をつくった。丹下の言が正しいとすれば、右の図表になる。その逆だと左だし、機能性と美が重なり合うこともありうるとしたのが真ん中だ。
そして、お会いした方すべてに聞いてみた。ちょうど出合わせた同社取締役専務執行役員ライフスタイル事業本部長・玉留勇輝氏はためらいなく左を指さした。Oさんは「理想は真ん中」と答えた。Nさんは「多様性」などと回答を避けた。見月氏は当初明言しなかったが、記者とのやり取りの中で「私も丹下さんに近いかもしれない」と話した。
新オフィスは、狭義の意味でデザイン性にこだわったのではなく、協創を生む機能性も重視したまさにユニバーサルデザインにしたということだ。建築家もデザイナーもそして我々も目指すべきなのは美と機能が重なり合う究極の「フラクタル」ではないか。
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三井デザインテック新本社オフィス「CROSSOVER Lab」は2021年7月、「銀座6丁目-SQUARE」に移転したもので、1~3階の延べ床面積1,512坪(同社のプレス・リリースと記者の記事参照)。最先端のABW研究×クロスオーバーデザインをテーマに、社内外の組織の垣根を超えた「協創」を促し、Well-Beingな空間でイノベーションを誘発する新たな働き方の実現を目指している。
ここでは、見月氏の説明と記者の感じたままの印象を紹介する。まず、エントランス。目に飛び込んできたのは天井まで届く両開きのナグリ仕上げのドアだった。同社は2016年、ロンドンで行われた著名なデザイナーやデザイン会社が結集したハイエンド向けホテル関連資材展示イベントで審査員特別賞を受賞したのだが、その時もこのナグリ仕上げを提案した。初めて挑戦するナグリを見事に仕上げた英国人の職人魂に、見月氏は「匠に国境はない」と感銘を受け、新オフィスのドアにも象徴的に取り入れたという。
エントランス正面の壁がまた美しい。見月氏から説明を受けるまで分からなかったのだが、ビス、蝶番、塩ビパイプなどの建築資材をアートにしたものだった。1階の「CORDs(Crossover Design salon)」には和テイストが多用されていた。アクセント壁にはえもいわれぬ珊瑚珠色か紅柑子、藍染の一種である浅葱色が用いられていた。光の当たり具合で変化するグラデーションの演出も見事だ。
2階の執務フロアはフリーアドレスで、ネイバーフッドエリアがたくさん設けられており、「協創」を促す仕掛けが随所に施されていた。カラーリングは暖色系が多用されており、これもリラックスできる空間に仕上げるよう計算されているに違いないと感じた。
3階フロアは一変して「白」が基調だった。記者は小躍りした。美しいのはやはり白だ。見月氏に「私は女性がもっとも美しいと感じるのは白と黒」と話したら、見月氏も同じ考えのようで、目の前のNさんとOさんに視線を向けた。二人とも白と黒だった。3階にはこのほか、社外の顧客も招くことができるキッチン&バー、屋外テラスSORANIWA(空庭)も設置されている。
屋外テラスSORANIWA(空庭)
もう一つ気が付いたことがある。1階も2階も3階も内装仕上げはほとんどスクエアなのだが、3階の一角だけアール形状にした出入り口があった。これまた空間をシームレスにつなぐ計算がされていると思った。何の違和感も覚えなかった(最近の建築物はアールが流行のようで、三井不動産レジデンシャル「パークコート青山 ザ・タワー」や森ビル「麻布台ヒルズ」などマンションにもたくさん用いられている)。ただ、使い方を誤ると今風に言えばダサくなる。
意外だったのは緑だ。フェイクグリーンは一つもなく、観葉植物はすべて本物だったのは予想した通りだったが、その数はそれほど多くなかった。過剰な緑はマイナスに働くことを考慮したのだろう。
肝心な新オフィスの生産性の向上について。見月氏は「これは数値化が難しいが、号令をかけているわけではありませんが、出社率が高まったのは確か。コロナ禍で在宅・リモートが浸透した一方で、リアルな人のつながりが重要なことから、どこの企業も戻ってくるよう呼び掛けているが、なかなか難しいのが現状」と話した。
これも同感だ。号令・命令でなく、出社したくなるような環境を企業は整えないといけない。三井不動産・植田俊社長も「行きたくなるような街づくりを進める」という趣旨の話をしていたのを思い出した。
見月氏
デザインウォール
1階「CORDs(Crossover Design salon)」
1階「CORDs(Crossover Design salon)」
デジタルアート
2階アート
2階執務室エリア
2F minä perhonen と協働した WEB BOOTH
2階PJエリア
2階Quiet standing
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同社は昨年8月、芥川賞作家の小川洋子さんを本社に招き、小川さんの作品「ことり」(朝日新聞出版)の朗読会を行ったと聞いた。会場は前述した「CORDs」で、見月氏があいさつし、Nさんがナビゲーターを務め、小川さんが朗読したのだという。
小川さんが芥川賞を受賞したのは1991年で、作品は「妊娠カレンダー」(文藝春秋)だ。Nさんにも小川さんにも申し訳ないが、記者はその翌年、丸山健二「千日の瑠璃」(1992年、文藝春秋)に出会ってから、他の小説をほとんど読まなくなった。丸山文学に触れると〝中毒〟になる。ほかの小説を読むのはばかばかしくなる。
女性作家で名が浮かぶのは、大好きな宮尾登美子(「櫂」もいいが「岩伍覚え書」が最高にいい)と、記者と同世代の小池真理子(本人が両性具有と言っているように男性の性愛が描ける稀有な作家)だ。よく読んだのは野上弥生子、宮本百合子、佐多稲子、金子みすゞ、林京子、杉本苑子、津村節子、角田光代、高樹のぶ子、高村薫、桐野夏生、笙野頼子(記者の高校の同窓生)あたりまでだ(1982年、59歳のとき自死した江夏美好の「下々の女」、吉永小百合さんが主人公になった中里恒子の「時雨の記」はとてもいい)。小川さん(62)のような若い方(受賞時29歳)の作品は生理的に受け付けなくなっている。例外は最近では西加奈子さんくらいか。男性作家も同じだ。
先の朗読会は定員25名に対し200名の応募があったため、同社は落選した人も視聴できるようYouTubeにアップした。
そのURLを送ってもらったので視聴し、「ことり」を図書館で借りた。400字にして487枚。ストーリ-は、兄を、母を、父を相次いで亡くして独り暮らしになったおじさん(50代半ばか)が「ことり」(メジロ)の世話をするようになり、やがて自らも「ことり」に看取られながら人生の幕を閉じるという、ごくありふれた家庭の日常を描いたものだ。
パラパラとページを繰っていたら、「(おじさんに)即座に老人は言った。『鈴虫は女性の皮脂を好むのでね。特に処女の脂を』」(166ページ)というくだりに出会った-朗読会のURLを視聴して、小川さんは冗談が通じない方だと思ったが、全然そうでないことが分かった。(小生は、モンゴルの馬乳酒を「処女の聖酒」と名付けた。「百年の孤独」の100倍は売れるはず)
この小説の主人公のほかに大きな役割を果たしているメジロだが、今は法律で捕獲も飼育も禁止されているが、記者の小さい頃はそんな法律はなかったので、面白いように獲れた。モチノキの樹皮をすりつぶして捕獲した。飼育も楽で、すぐ人に慣れた(スズメは鳥かごに入れると暴れ、竹ヒゴに体当たりしてほとんど〝自死〟した)。
実は、「千日の瑠璃」も障がい者の少年与一とオオルリの出会いから物語が始まる。小川さんと丸山さんに共通するのは〝人間に対する愛〟だ。小川さんの36作品が35か国で読まれていることなど全然知らなかったが、多分、すべての作品に「愛」が貫かれているからだろうと思う。(丸山文学はその逆に、外国語に訳されたものはほとんどないはずだ。理由はいろいろあるのだろうが、記者は、丸山文学は結構難解ですらすら読めるものではなく、短い文章に込められた意味は深く、それを他国語に翻訳するのはほとんど不可だと思っている)
同社オフィスのライブラリーには、小川さんが選本した「未来に残したい文学作品10選」も展示されている。V.E.フランクル「夜と霧」、武田百合子「富士日記」、川端康成「掌の小説」、清少納言「枕草子」、テネシー・ウィリアムズ「ガラスの動物園」、内田百閒「件」、フィリパ・ピアス「トムは真夜中の庭で」、谷崎潤一郎「春琴抄」、ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」だ。
記者は、「夜と霧」もいいが、若い方にはクロード・モルガン「人間のしるし」、トマス・キニーリー「シンドラーズ・リスト」、大岡昇平「レイテ戦記」・「俘虜記」も是非読んでいただきたい。それと丸山健二。
三井デザインテック、本社オフィスのライブラリーで小説家 小川洋子氏が選本した「未来に残したい文学作品 10 選」を展示
ナグリ仕上げのドア
デザインウォール
デザインウオール
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取材後、記者の野球記事やこだわり記事も話題になり、双方で年間数十万件のアクセスがあり、こだわり記事でアクセス数が1万件を超える記事も少なくないと話した。検索が可能な2013年以降の「こだわり記事」で「三井デザインテック」「三井倶楽部」に触れた記事へのアクセス数で1万件超は2件ヒットした。約1万3,000件の「三田ガーデンヒルズ」と約1万件の「パークマンション三田綱町」だ。「コンドルが設計した『綱町三井倶楽部』」「横浜MIDベース タワー」などの記事へのアクセス数も数千件ある。
今回の銀座オフィスの記事は、見月氏から「1万件を超えますかね」と聞かれたが、残念ながらそれは期待できない。「こだわり記事」を読まれる方大半はマンション記事を期待されているのだろう。他は極端に少なくなる。今回は1,000件届くかどうかではないか。
しかし、記者はアクセス数を稼ごうなどとは全然思っていない。〝記事はラブレター〟-この記事を参考にして働きやすいオフィス環境を整える会社が1社でもあればうれしいし、デザイン会社に就職しようと考えている学生さんはぜひ三井デザインテックを加えていただきたい。オフィス内をメディアや一般に公開した住宅・不動産会社を記者は三菱地所、三菱地所ホーム、積水ハウス、旭化成ホームズくらいしか知らない。
ナグリ仕上げの両開きドア
1階「CORDs(Crossover Design salon)」
ニコライ・バーグマン氏の作品(1階)
雑草に見るフラクタル現象(東銀座で)
三井デザインテック新本社『CROSSOVER Lab』開設(2021/7/15)
第一園芸独自に考案したオフィス空間デザイン三井デザインテック新本社に採用(2021/8/11)
「ビニール(フェイク)はよくない」フラワーアーティスト ニコライ・バーグマン氏(2023/12/6)
坪1300万円でどうか旧逓信省庁舎跡地の三井&三菱「三田ガーデンヒルズ」(2022/4/30)
今日は丸山健二「千日の瑠璃《究極版》」(求龍堂)の主人公・少年世一の命日(2020/6/18)
もう一つのターナーを見た三井デザインテック綱町三井倶楽部でセミナー&懇親会(2019/11/20)
横浜市内最高単価520万円に納得三井不レジ「パークコート山下公園」が好調(2017/12/22)
ターナー発見椿姫乾杯の歌に「ブラヴォー」三井デザインテックセミナー・懇親会(2017/12/4)
わが意を得たり人工植物は販売促進に逆効果三井デザインテック調査研究(2017/9/25)
今度は横浜のど真ん中人気必至の横浜公社「横浜MIDベースタワー」(2016/1/28)
令和6年9月住宅着工 首都圏は持家、貸家、分譲とも増加
国土交通省は10月31日、令和6年9月の新設住宅着工統計をまとめ発表。総戸数は68,548戸(前年同月比0.6%減、5か月連続の減少)で、内訳は持家19,350戸(同0.9%減、34か月連続の減少)、貸家31,033戸(同4.4%増、先月の減少から再びの増加)、分譲住宅17,921戸(同7.0%減、5か月連続の減少)。分譲住宅の内訳はマンション7,651戸(同6.1%減、2か月連続の減少)、一戸建住宅10,110戸(同8.2%減、23か月連続の減少)。
首都圏の総戸数は前年同月比11.5%増で、持家(同0.9%増)、貸家(同20.8%増)、分譲住宅(同6.0%増)とも増加した。
首都圏マンションは、着工戸数3,657戸(前年同月比24.1%増)で、都県別は東京都1,602戸(同13.3%増)、神奈川県1,416戸(同82.0%増)、埼玉県291戸(同38.9%減)、千葉県348戸(同24.7%増)。1~9月は38,764戸(同3.1%増)で、都県別は東京都19,853戸(同0.3%減)、神奈川県11,325戸(同9.1%増)、埼玉県3,904戸(同4.8%増)、千葉県3,682戸(同2.4%増)。
アパートメントホテル5社が結集・怪気炎 市場規模は現在4,000室⇒30万室へ
左から北川氏、保坂氏、藤岡氏、橋本氏、大谷氏
アパートメントホテル事業を展開するコスモスホテルマネジメント、霞ヶ関キャピタル、セクションL、リクリエ、NSKRE(日鉄興和不動産)ホスピタリティの5社は10月29日、業界動向セミナーを開催し、既存ホテルが取りこぼしている海外からの中長期滞在利用に対応し、爆発的に拡大することが見込まれるインバウンド需要に応えていくとそれぞれ怪気炎を上げた。セミナーには、専門紙記者や同業関係者、投資家(企業)など約40名が参加した。
プレゼンテーションを行ったのは、客室数1,434室(2024年9月現在、以下同じ)のコスモスホテルマネジメント代表取締役社長・藤岡英樹氏、726室の霞ヶ関キャピタルHospitality and Culture Division Vice President・保坂賢太郎氏、224室のセクションL共同創業者/取締役・北川旭洋氏、269室のリクリエ取締役・橋本将崇氏、145室のNSKREホスピタリティ社長執行役員・大谷宗徳氏。それぞれ約10分間、各社の事業規模、特徴などについて語った。
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記者は「アパートメントホテル」が新しいホテルカテゴリーとして認知されるかどうかわからないが、選択肢が増えるのは結構なことだ。ラグジュアリーホテル、シティホテル、宿泊特化型、ビジネスホテル…などと峻別する定義はないはずだが、ラグジュアリーもシティホテルも宿泊特化型も多様なニーズを取り込むプランを最近は備えている。
もう一つ、注目しているのは三菱地所が外資と組んで展開しているフレキシブル賃貸住宅だ。定義は、月ぎめ家具付き賃貸住宅で、オンラインでの契約・契約期間の変更、申し込みから入居まで数日間、家具・家電・水道光熱費込みのオールインクルーシブル、24時間365日のトラブル対応、多言語によるサポートなどが特徴だ。業態としてはアパートメントホテルとそれほど変わらない。違いを強いてあげれば、宿泊・契約日数だろうが、フレキシブル住宅も契約日数を短縮することは容易なはずだ。三菱地所などは現在、1,000室規模の市場を2030年には約10倍の10,000室に拡大するとしている。
この他、外国人向けサービスアパートメント、シェアハウス、民泊、外国人留学生向け宿舎、サ高住などもあり、大混戦を展開するかもしれない。
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新型コロナが世界に蔓延し、わが国の2020年の訪日外客数は約412万人、2021年は約25万人、2022年は約383万人へ激減し、昭和の一桁時代に逆戻りした。コロナが猖獗を極めた2020年5月、アパホテルは「アパ直限定素泊まり2,500円プラン」キャンペーンを張り、業界のひんしゅくを買った。ホテルの身売り・倒産も相次いだ。コスモスイニシアがアパートメントホテル「MIMARUを立ち上げたときからずっと取材してきた小生は、藤岡氏がかわいそうで、会っても顔をそらし知らんぷりしたものだ。
あれから3~4年。不死鳥のようにホテル業界は復活した。どれほどすごいか、藤岡氏か示したデータを示そう。
アパートメントホテルに限らないが、「MIMARU」客室単価は、2019年比2.0倍の47,836円で、STRの1.4倍をはるかに上回っている。
コスモスイニシアの2025年3月期第一四半期決算の宿泊事業は売上高72億35百万円(前年同期比85.6%増)、セグメント利益23億32百万円(前年同期比179.1%増)を計上した。主力のレジデンシャル事業の売上高84億92百万円(前年同期比58.1%増)、セグメント利益2億79百万円(前年同期はセグメント損失4億45百万円)を利益面で上回り、全セグメント利益26億70百万円の大半を稼ぎ出している。
他社がオペレーションの効率化に力を入れているのに対し、同社が運営している27施設で働くスタッフは148人で、藤岡氏は「フレンドリーな顧客対応に力を入れている。リピーターが多いことに、その効果が表れている」と差別化を強調した。
藤岡氏
霞ヶ関キャピタル・保坂氏は「一般的なホテルは稼働率が40%以上でないと黒字化は難しいが、当社ブランドは徹底した省人化オペレーションによって20%でも黒字になる。運営客室数は2026年には2,000室に拡大する。アパートメントホテルは、アパ(約11万室)の3倍、約30万室の需要がある」と語った。
保坂氏
セクションL・北川氏は「当社は不動産、ホスピタリティ、テクノロジーを兼ね合わせているのが特徴で、GOP(営業利益)率は業界最高水準の60~70%。今後はゲスト同士が交流できる施設に力を入れていく」と話した。
北川氏
リクリエ・橋本氏は「当社は国内向けに力を入れてきた。オンラインで対応できるものは福岡オフィスで対応し、チェックインの内製化、テック、生成AIの活用を進めていく。リノベ企画も検討していく」と語った。
橋本氏
NSKREホスピタリティ・大谷氏は、前職が東急不動産だったことを明かし、「すでに11施設の用地を手当て済みで、5年後には1,000室体制、将来的には2,000室を目指す」と抱負を述べた。(大谷氏の話を聞きながら、どこかで聞いた声だと思っていたが、東急不動産の記念碑的マンション「ブランズタワー豊洲」の記者発表会で当時、東急不動産執行役員住宅事業ユニット首都圏住宅事業本部本部長として「即日完売を目指す」と語った方で、RBA野球大会にも出場したことがあるとか=記憶にないので選手としては活躍していないのではないか)
大谷氏
アパートメントホテル業界動向セミナー(新橋プレイス 4階 AP新橋Eルームで)
フレキシブル住宅市場現在3~4%⇒2030年には15%へ三菱地所イベント(2024/10/4)
「参入は歓迎。市場が育つ」MIMARU・藤岡社長アパートメントホテル勉強会(2023/3/9)
外国人に人気のホテルTOP20にコスモスイニシア「MIMARU」3施設(2019/8/9)
東急不ほか 全1,152戸の「豊洲」事業説明会に40名超の報道陣 〝愛〟に反応(2019/2/18)
高評価に驚愕コスモスイニシア7件目「MIMARU京都新町三条」に体験宿泊(2018/10/17)
〝骨太ニッチ〟アパートメントホテルで独走コスモスイニシア第一弾「上野」開業(2018/2/2)
小田急バス×ブルースタジオ なりわい賃貸第二弾「meedo(みいど)」開業へ
なりわい賃貸住宅「meedo(みいど)」
小田急バスとブルースタジオは10月26日、全13戸と店舗営業も可能なシェア店舗を備えた、なりわい賃貸住宅「meedo(みいど)」の上棟イベントに合わせて現地見学会・説明会を開催した。小田急バスが保有するバスターミナルに、ブルースタジオが企画・設計監理を行うプロジェクトで、2022年のグッドデザイン賞ベスト100を受賞した「hocco(ホッコ)」に続く第2弾。来春に開業する予定。
建設するのは、延床面積47.20~64.59㎡の店舗可の「あきない住居タイプ」3戸、50.20~53.80㎡の店舗可の「なりわい居住タイプ」4戸、延床面積50.20~59.20㎡の店舗不可の「なりわい住居タイプ」3戸、延床面積67.90~72.04㎡の「住居専用タイプ」3戸の合計13戸と、居住者だけでなく地域の飲食店営業も可能な23.45㎡のシェア店舗。すべての住居はUa値0.46の国際基準レベルの高性能で、4.3~25.25㎡の多目的に利用できる土間がついている。
地域レジリエンス機能として、施設のシンボルとなる井戸(深井戸)、ハイブリッド照明、かまどベンチ、マンホールトイレ、充電設備、防災ベンダーを整備する。
「meedo(みいど)」は、施設のコンセプトである〝水と人々の営み〟のシンボルである井戸を掘り、計画地の周辺は「絵堂(えどう)」集落であったことから歴史を継承するために名付けられた。
説明会でブルースタジオ専務取締役/クリエイティブディレクター・大島義彦氏は、「三鷹駅からバスで30分近くかかるバスターミナルの住宅地。遠いところだからこそ、生活の延長として自分を表現できるよう企画した。3年前に完成した『hocco(ホッコ)』では毎月のようにイベントを行い賑わっているように実績もある。究極の専門店になる」と語った。
物件は、JR中央線三鷹駅南口から「晃華学園東」行き小田急バス28分「晃華学園東」バス停隣接、または京王線つつじヶ丘駅北口から「深大寺」行き京王バス7分「晃華学園」バス停徒歩数分、調布市深大寺東町2丁目の第一種低層住居専用地域、第一・二種中高層住居専用地域に位置する敷地面積約1,774㎡、建物は木造2階建て延床面積約299㎡のA棟(住居5戸・店舗1軒)、延床面積約498㎡のB棟(住居8戸)。工期は令和6年5月~令和7年3月。事業主・貸主は小田急バス、建築設計監理はブルースタジオ、施工はジェクト。
左から小田急バス取締役不動産ソリューション部長・下村友明氏、同社取締役社長・早川弘之氏、大島氏
模型
なりわい賃貸住宅「meedo(みいど)」
◇ ◆ ◇
大島氏は、〝ターミナル〟〝終点〟〝終着点〟を何度も口にした。この言葉から受ける印象は、♭落ち葉の舞い散る停車場は悲しい女の吹き溜まり だから今日もひとり 明日もひとり…過去から逃げてくる♭奥村チヨさんの歌謡曲だろうし、記者は、同世代の破天荒な生き方をした大好きな作家の一人、白川道の「終着駅」を思い出しながら複雑な気持ちで話を聞いていた。
しかし、終点は始発点でもある。身振り手振りの大島氏の熱弁に、この「meedo(みいど)」は人生をリセットし、新たなスタートを切るターニングポイントになるのではないかと考えるに至った。「究極の専門店」とは言いえて妙だ。肩肘を張らず、自分らしい生き方ができる。13の物語を奏でるのではないか。
Ua値0.46の賃貸住宅など市内は言うまでもなく小田急線、京王線のバス路線を駆け巡ってもここしかないはずだ。井戸は、50m掘削してくみ上げるもので、大腸菌などは検出されなかったという。飲料水として利用するにはハードルは高そうだが、国分寺崖線の湧き水だろうから冷暖房としての役割を果たすのではないか。
大島氏
隣接地の生産緑地では柿がたわわに実っていた
2024年グッドデザイン賞 不動産各社が受賞 ブルースタジオ・はちくりはうす金賞(2024/10/16)
地域の歴史・文化を継承し、コミュニティ育む ブルースタジオ 練馬区「種音(たね)」(2024/5/12)
裏山の借景活かし 断熱等級6クリア ブルースタジオ 賃貸住宅「SUNKA(サンカ)」(2023/12/26)
爛漫の春満喫 「hocco(ホッコ)」イベントに1000名超 小田急バス×ブルースタジオ(20224/2)
雲散霧消した不動産流通推進センターに対する積年の疑問 「嫌悪施設」取材
約40年にもわたる積年の不審・疑問がこの日2024年10月25日、きれいさっぱり払しょくされた。こんなうれしいことはない。疑問とは、不動産流通推進センターに対する記者の考え方で、それが完全な思い違い、偏見であることが取材で分かったからだ。
取材とは、この日実現した「物流施設が嫌悪施設になっている」(資料参照)ことに関する取材だ。同センター教育事業部統括参事・金子雅生氏と同センター教育事業部専門次官兼開発課長・櫻井弘久氏は、物流施設を「嫌悪施設」と決めつける意図は全くなく、不動産取引を円滑に進めるためには、重要な事項の不告知、不実告知を定めた宅建業法第47条第1号ニの「宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境…宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」については、事前に調査し、相手方に説明し、了解を得ることが必要と話した。
それともう一つ、同センターの前呼称「不動産近代化センター」を現在の「不動産流通推進センター」に変更した経緯を聞き(これは書かない)、記者が40年間にわたって抱き続けてきた不信感・疑問も雲散霧消した。
そればかりか、お二人は宅建士の最高位に位置付けられている「宅建マイスター」(現在約670人)事業を担当されており、今後「宅建マイスター」を取材するきっかけを与えてもらった。以前、「宅建マイスター」試験に挑戦したことがあるが、全然歯が立たなかった。「宅建マイスター」の頭脳がどうなっているのかとても興味がある。
◇ ◆ ◇
取材をお願いしたのは、今から6年前の2018年5月、当時の三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(現、顧問)は大勢の記者団の前で「もはや物流施設は嫌悪施設ではない」と語った言葉が頭の中にこびりついているのと、現在、シンガポールに本拠を置く日本法人「日本GLP」が計画している昭島市の「昭和の森ゴルフコース」など約65haを含む81.5haにも及ぶ物流拠点「玉川上水南側地区地区計画」(素案)の行方が気になっているからだ。
この点については上段で書いた通り。考えないといけないのは物流業界だ。具体的な事実に基づき「物流施設は嫌悪施設ではない」ことを地域住民らに説明・証明する必要があるのではないか。施設で働く人はみんなエッセンシャル・ワーカーだ。
(添付資料)物流施設が嫌悪施設になっていることに関する取材のお願い
貴センターのホームページ「不動産相談」(掲載日:2016年2月、重要事項説明における「嫌悪施設」の調査範囲)では、「通常『嫌悪施設』と言われるものには、騒音や振動の発生、煤煙や臭気(悪臭)の恐れ、危険を感じさせる、心理的に忌避されるものなどがあるが、嫌悪施設の明確な定義はないと言わざるを得ない。嫌悪を感じるかどうかは個々人により判断が異なり、また、時代背景や技術の進歩により嫌悪感が薄れることもあり、一概に言えない。宅建業者はそれらを踏まえ、説明すべきかどうかの判断をせざるを得ない」としながら、<住宅地近辺における主な嫌悪施設>として、「騒音や振動の発生」生じさせる施設として「大型車両出入りの物流施設」を例示されています。
私も、物流施設は小規模なものを除き、建設が許可されるのは工業系用途地域のみなので「嫌悪施設」と理解していましたが、添付いたしました記事の通り、「物流施設はもはや嫌悪施設ではない」と語り、街づくり、地域共生に力を入れている事業者がいます。
そこで、「物流施設」を嫌悪施設から除外することはないか、除外するには何が必要かなどを取材形式でお聞きしたいと思います。
売上高、営業利益、営業利益率とも拡大・向上大和ハウス事業施設(物流)事業(2024/10/12)
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「不動産近代化センター」の呼称変更については2014年と2015年に書いた記事を添付する。次のように書いている。
「この呼称についてはもう30年も前から変更すべきという記事を書いてきたし、直接訪ねて呼称変更を〝お願い〟したことがある。(この日10月25日、2~3人の方に対応していただいたが、けんもほろろだったのを思い出した)
なぜか。当時、記者はデベロッパーを取材していたのだが、不動産業界に『近代化』なる言葉が付けられた公益法人があるのに驚いた。『近代化』なる言葉は歴史の教科書に出てくる『戦前』のことだ。『もはや戦後ではない』と経済白書が謳ったのは昭和31年だ。どうして昭和の50年代にもなって『近代化』をわざわざつけなければならないのか不思議に思った。
確かに『全国宅地建物取引業協会連合会』(全宅連)という会員数が約11万(当時約14万)を擁す、主に街の不動産会社などからなる業界団体があり、『前近代的』と思われる部分も少なくなかった。
しかし、それでも大手デベロッパーや大手流通会社は良好な街づくりや住宅供給を行っており、他の業種を含めトップランナーだと記者は思っていた。『近代化』などと言われると、自分自身が時代遅れの俗物と言われているような気がした。
そこで『近代化』が付された団体があるかどうか調べた。今でこそネットで検索できるが、当時は電話帳やらその他の刊行物を調べ、『近代化』が付いている団体は不動産流通近代化センターのほかには、昭和44年に設立された財団法人東京タクシー近代化センターしかないことを突き止めた。東京タクシー近代化センターは平成14年に『東京タクシーセンター』に呼称変更されているので、現在、『近代化』のついている団体は不動産流通近代化センターしかないはずだ。」
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以上の記事で書いているように、30年昔(当時)といえば、記者が業界紙の記者として働きだしてから数年経過したころだ。全宅連系の会社が主な事業とする賃貸管理業は、時代遅れの「礼金」なる商習慣にかじりつき、墨守していた(今でもそうだろう)。今は、外国人に「礼金」は通用しないはずなので〝room charge〟(飲食店などの「お通し」「突き出し」はそう呼んでいるのではないか)とでも説明しているのだろうか。
記者は幸か不幸か、全宅連担当になったことは一度もないが(マンション・建売住宅担当にしてもらうよう当時の編集長に直談判した)、「前近代的」な業界を取材することなどしたくなかったし、「俗物」にもなりたくなかったのは事実だ。
今でもそうだろうが、不動産業界紙は取材対象ごとに、例えば行政、大手デベロッパー、ハウスメーカー、流通業界、賃貸業、中小業界団体などに分かれており、しかも数年ごとに配置換えが行われる。これでは絶対自立した記者にはなれない。業界紙も変わらないといけない。
81.5haの物流「GLP昭島プロジェクト」敷地内に4.5haの樹林地開発に疑問の声も(2024/9/21)
「近代化」が消えた 近代化センターが「不動産流通推進センター」に名称変更(2015/4/20)
唯一残っていた「近代化」が消える 不動産流通近代化センターが名称変更(2014/11/4)
大成建設・三井不動産など わが国初の超高層ビル屋上に風力発電実証実験
大成建設とチャレナジーは10月23日、三井不動産の協力を得てわが国初の超高層ビルの屋上に垂直軸型サボニウス式風車「サボニウス式風車」を30階建て「横浜三井ビルディング」に設置し、2025年4月から実証に向けた実験を行うと発表した。
「サボニウス式風車」は、従来の水平軸型プロペラ式風車「プロペラ式風車」には風車の風切り音や発電モーターの振動などの問題に加え、広い設置面積を要することや所定の風速や風向が安定しないと効率的な発電ができないことなどの課題があるのに対し、①装置の設置に必要な面積が小さく、軽量なため、設置場所の選定や組立が容易②全方位からの風を受けて24 時間連続で悪天候時でも発電が可能③低騒音・低振動で、バードストライクを回避可能-などの特徴がある。
チャレナジーは、東日本大震災に伴う福島の原発事故をきっかけに日本のエネルギー問題に着目し、次世代に安心安全なエネルギーを供給することをミッションに設立された。
ポラス 木造建築の研究・情報発信拠点「ポラステクノシティ」来春竣工
「ポラステクノシティ」(完成予想図)
ポラスグループは10月21日、吉川美南駅東口周辺地区土地区画整理事業地内で建築中の木造建築の研究・情報発信拠点「ポラステクノシティ」を2025年3月に竣工すると発表した。
「ポラステクノシティ」は、住まいに関する技術展示スペースと地域住民のふれあいの場としてのイベントスペースからなる「交流と学びの場」「事務所」としてのオフィス棟、開発現場を見学できる実験棟・研究棟、注文住宅のモデルハウス4棟で構成。3棟ともZEB数値を達成し、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)を申請する予定しており、BIM活用(国土交通省補助事業「建築BIM加速化事業」利用)により、完全ZEB により3棟合計で年間杉10,214本分、森林面積11.3ha分のCO2排出削減効果があるとしている。
オフィス棟・研究棟は、一般流通材と大断面集成材、住宅用の金物を使用。75分準耐火木造建築であるオフィス棟は環境省「建築物等のZEB化・省CO2 化普及加速事業」に採択されている。
実験棟は、3階建ての戸建住宅サイズを室内に納め、様々な住宅性能実験を行うため982.5㎡の空間に12000mmの天井高を実現。大断面集成材を使用するほか、高さ3550mmのCLT耐力壁3段重ね(総高さ12000mm)とする。
施設は、敷地面積約6,002㎡、オフィス棟(木造3 階建)は延べ床面積約2,236㎡、研究棟(木造3階建)延べ床面積約1,327㎡、実験棟(木造1階建)の延べ床面積約1,050㎡。この他、注文住宅モデルハウス4棟(体感すまいパーク吉川美南)。竣工予定は2025年3月頃。
オフィス棟内部
実験棟内部
研究棟内部
港区の億万長者 納税者の1%1,500人超 激増に拍車かける億ション続々竣工へ
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東京都港区の課税標準額が1億円超の納税義務者(以下、億万長者)は令和6年7月末現在、1,523人となり前年度から131人増加したことが分かった。納税義務者に占める億万長者の割合は1.0%となり前年度より0.1ポイント増加、初めて1%台に達した。8年前の令和28年の957人(納税者に占める割合0.7%)の実に約6割増だ。億万長者が納めた1人当たり所得割額は約2,500万円と桁違いで、得割額総額は約380億円。区全体の所得割額の36.2%を占めている。
また、課税標準額が1,000万円超の納税者の割合は19.8%(前年度比1.2ポイント増)で、所得割額に占める割合は76.9%(同4.2ポイント増)となった。
令和5年度の東京都の納税義務者数は約757.1万人(23区531.5万人、市町村225.6万人)で、課税標準額が1億円超の納税者は5,584人(23区5,173人、市町村411人)となっており、都民の億万長者の27.3%の人が港区に住んでいることになる。
港区の億万長者の増加に拍車をかけているのが高額マンションの供給増だ。専有面積が30㎡でも億ションとなる三井不動産レジデンシャル「三田ガーデンヒルズ」(1,004戸)、世界貿易センタービル他「ワールドタワーレジデンス」(389)、森ビル「麻布台ヒルズ」(約1,400戸)などの高額マンションが今年末から相次いで竣工する。三井不動産レジデンシャルのシニア向け「パークウェルステイト西麻布」(全400室)の入居も始まった。
また、区内には建て替えや再開発マンションが目白押しで、この数年間に4,000~5,000戸が計画されており、坪単価は2,000~3,000万円以上となると予想される物件も少なくない。
このほか、港区の課税状況で興味深い数値がある。これまで課税標準額が10万円以下の納税者は3,000人前後で推移していたが、令和6年度は637人に激減、構成比も2~3%台から0.4%へ下げた。これは、定額減税による所得割が非課税になったことの影響と思われる。
アッパーミドル・富裕層さらに増加 5人に1人が課税標準額1,000万円超東京都港区(2024/9/18)
コロナ禍でも億万長者は11.4%増の1,392人令和5年度の港区所得割額は2.4%減(2023/10/15)
2024年グッドデザイン賞 不動産各社が受賞 ブルースタジオ・はちくりはうす金賞
ブルースタジオ「はちくりはうす」
日本デザイン振興会は10月16日、応募があった5,773件から「2024年度グッドデザイン賞」1,579件を発表した。最高賞である「グッドデザイン大賞」の候補となる「グッドデザイン金賞」20件には、住宅・不動産業界からはブルースタジオ・竹村眞紀「障害者シェアハウス+シェア店舗『はちくりはうす』」が選ばれた。また、「グッドデザイン・ベスト100」には大和ハウス工業「神社・地域と共に歩む老人ホーム『黒鶴稲荷神社+アズハイム大田中央』」、東急不動産・石勝エクステリア・東急コミュニティー「生物多様性保全に寄与する長期景観管理計画」が選定された。「グッドデザイン大賞」1件は11月5日に決定・発表される予定。以下、主な住宅・不動産会社の受賞作。順不同
「黒鶴稲荷神社+アズハイム大田中央」
ブルースタジオ 「障害者シェアハウス+シェア店舗『はちくり』」「総合住宅展示場のセンターハウス」
東栄住宅 「木造住宅用制震ダンパー/東栄セーフティダンパー」「地盤改良工法/R-Evolve パイル」「宅地開発手法/簡単に地図から消せる道」
住友不動産 「プレミアム.J 立川」「南麻布レジデンス」
日鉄興和不動産 「グランリビオ浜田山」
大東建託 「ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場」
相鉄不動産 木造マンション「KNOCKSゆめが丘」
AQ Group 「木造平屋建て 構造実験棟」
三菱地所グループ 「ベネチ庵/アラビ庵」「MUFG PARK/LIBRARY」「田町タワー」「ザ・パークハウス グラン 神山町」「ザ・パークハウス 南麻布」 「ザ・パークハウス 京都河原町」
ミサワホーム 「be in harmony」
トヨタホーム 「トヨタホーム 国立ブリックコート」
旭化成ホームズ 「子育て共感賃貸住宅『ヘーベルメゾン BORIKI』」
MIRARTHホールディングス(ミラースHD) 「レーベン上田中央 GALLDEA」「『防災重要事項説明書』の発行・説明」
三井不動産レジデンシャル 「パークタワー勝どきミッド/サウス」「パークホームズ西池袋」「パークホームズ吉祥寺北 ザ ガーデン」「SOCO HAUS KORAKUEN」「パークアクシス新宿百人町」「すまいとくらしから循環型社会を実現『くらしのサス活 Circular Action』」
近鉄不動産 「ローレルコート上本町五丁目」
日本エスコン 「SEVENS VILLA 軽井沢」「TOPAZ 江坂」
野村不動産ホールディングス 「森を、つなぐ」東京プロジェクト」「プラウドシティ豊田多摩平の森」「プラウド阪急塚口駅前・ソコラ塚口クロス」「シビックプライドを醸成する取組『街の推し応援活動』」
大和ハウス工業 「神社・地域と共に歩む老人ホーム『黒鶴稲荷神社+アズハイム大田中央』」「公園一体広場+研究施設&ホテル『Research Gate -TONOMACHI-』」
コスモスイニシア 「イニシア芦屋レジデンス」「コスモグラシア蔵前テラス」「古材を活用した買取再販リノベーションマンション」
伊藤忠都市開発 「クレヴィア新御徒町」
阪急阪神不動産 「ジオ四天王寺一丁目」
リストデベロップメント・リビタ 「複合シェアオフィス「12 KANDA」
東京建物 「MEIJIPARK(都立明治公園)」「Brillia 京都鞍馬口」
ポラスグループ 「フレーベスト秋津 -OKUNIWA-」「アンテナモデル」「リーズン馬込沢 SuBaCoプロジェクト」「ベルフォート北本」「東京ストリームサイト」「国産無垢再生パネル」「未来輪区 ~共助と共生を育む街~」「『ステイパス』のある風景」「開発する全ての戸建て分譲地・入居者を対象としたコミュニティ支援プログラム」「育実(はぐくみ)の丘大宮」「南の台木造倉庫」「令和最小限住宅4×4『造りすぎない家』」「SPDスリム中間水切り」
東急不動産ホールディングス 「REEN AGENDA for BRANZ」「コンフォリア東新宿」「東急プラザ原宿『ハラカド』」「Forestgate Daikanyama」
大京 「リジェ南山」「コンパクトマンション向け可動テーブル一体型キッチン」
モリモト 「ディアナコート祐天寺レジデンス」「ピアース用賀テラス」
安田不動産 「デュシタニ京都・植柳コミュニティセンター」「「plaNECT 薬王寺」「HAMACHO FUTURE LAB」
「ブランズ自由が丘」
大東建託 賃貸住宅のCLT使用量 2028年までに8倍に ZEHにも対応
CLTを採用した賃貸住宅共用部イメージ図
大東建託は10月15日、環境性能が高く住宅の脱炭素化を促進するCLT工法を採用するとともに、ZEH仕様にするため太陽光パネルを搭載した新商品「CLT DK-ZEH」を2024年10月から販売開始し、同社のCLT使用量を2028年までに現在の8倍とする目標を策定したと発表した。
配布資料によると、記者説明会に臨んだ日本CLT協会業務推進部・小玉陽史氏は、なぜCLTが話題になるかについて、国内森林資源は積極活用する時代に突入しており、2050年カーボンニュートラルに向けて世界各国が走り出していることなどを指摘。「(同工法の採用を考えている顧客が)特に知りたいこと」として、コスト的には54㎡のヴィラ型宿泊施設を例にとり、木造軸組工法+CLT屋根の坪単価は134万円であるのに対し、木造在来工法は136万円、S造は158万円であることを紹介。このほか、環境性能が優れ、国の支援策、助成制度があることなどを上げた模様だ。
また、同社技術開発部次長・岡本修司氏は、同社のCLTの取り組みとして、2019年9月、国内初のCLT賃貸住宅商品「Forterb(フォルタープ)」を開発、その後、2020年には日本最大級のCLT大屋根の未来展示場「ROOFLAG」をオーブンし、2023年にはLCCM認定を取得したCLT工法による戸建て賃貸住宅の建設、2024年には「ForterbⅢ」の販売を開始したことなどを話したと思われる。
CLT材(スギ)
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どうして上段で「配布資料によると」「模様だ」「思われる」などと書いたか。理由を説明しよう。実は、記者が説明会場となっていた経団連会館に着いたのは10時30分。開始まで30分あるので、カフェで煙草を吸って5分前に会場に向かったところ、途中で同業の記者の方から「今終わったよ」と告げられた。開始は11時ではなく、10時だったのを確認しなかった記者がばかだった。
お詫びをするため会場に着いたら、広報担当の方が同社技術開発部CLT開発課課長・末廣英章氏を紹介してくれた。木造ファンの記者が一番聞きたかったのは、CLTと親和性があるはずの2×4のほかに、在来工法や鉄、コンクリなどとの混構造によるハイブリッド建築物についてだった。
なぜかといえば、AQ Groupは今春、純木造8階建て新社屋を完成させたが、建設に当たっては特殊金物などを使わず、プレカット工場で製材・加工され、普及している一般流通材をモジュール化、グリット化させて完成させたからで、坪単価も145万円で収めたからだ。
この点について、末廣氏は「当社の賃貸住宅の8割は2×4なのでCLTとの親和性は高い。在来工法とは床など水平方向での組み合わせは可能だが、柱、壁などは難しい。しかし、岡山県では水回りを在来工法にしてCLTを採用した事例がある。当社も開発を進めたい」と語った。ぜひとも在来工法とCLT工法の連携を進めていただきたい。
ハイブリッドについて。記者は、建築物に限らず森羅万象、すべての事象を測る物差しは〝美しいかそうでないか〟〝本物か偽物か〟-ただそれだけだ。絶対的な美など存在しないし、本物か偽物かも見方にもよるので怪しいものだが、誰が何と言ったって、「木」は美しい。同社の「ROOFLAG」もそうだし、直近では隈研吾氏の作品「日本アロマ環境協会(AEAJ)3階グリーンテラス」も、日建設計が設計・監理を担当した「木材会館」も最高に素晴らしい。
CLT協会もすべての「木」にかかわる関係者にお願いしたいのは、木の環境性能やコストだけでなく、「木」が人にもたらす視覚・嗅覚・触覚などの効果を可視化・数値化していただきたいということだ。AIを活用すれば瞬時にはじき出せるのではないか。そうなれば、毎度毎度、他の工法と比べてコストが高いとか低いとかなどの論議は吹っ飛ぶはずだ。
コンクリファンにも元気づけの一言。今から14年昔だ。長谷工コーポレーションの日本初の長期優良住宅認定マンション「ブランシエラ浦和」のネイキッドルーム(技術展示)記者発表会が行われたのだが、「打放しコンクリートに記者の目は吸い寄せられた。思わず触ってみた。ツルツルだった。ひび割れもムラも気泡痕も砂利のザラザラ感など全くなかった。特殊な型枠を用い、この日のために表面を研磨したのだろうと思った。
この疑問を同社技術推進部門長期住宅企画推進室チーフスタッフ・小林仁司氏にストレートにぶつけた。そうではなかった。広報IR担当執行役員の岡田裕氏は『当社の技術担当スタッフが〝ほおずりをしたいぐらい〟と語ったぐらいで、私も驚いている。鏡のように蛍光灯の光が反射しているでしょう』と語った」と記事にした。コンクリも負けるな。
久慈東高と菊池農業高のプレゼンに感動全国5,499校が参加「みらい甲子園」林野庁(2024/10/10)
坂本氏の遺志継ぎ隈氏代表のmore treesと日本一人口が少ない野迫川村森づくり協定(2024/10/6)
「木は熟した」街並みを木造化するビルダー組織化へAQ Group新社屋は坪145万円(2024/4/22)
セーフティネット登録住宅90万戸の96%は1社に集中氷解した疑念と深まった謎(2024/3/28)
「頬擦りしたくなる」打放しコンクリート 長谷工の「ブランシエラ浦和」ネイキッドルーム(2010/3/15)
「価格に見合う価値あり」 長谷工の「ブランシエラ浦和」(2010/1/15)