近鉄不の矜持を見た 天井高2700ミリ 「港区」「タワー」「海」前面に「浜松町」
「ローレルタワー ルネ浜松町」
近鉄不動産(事業比率60%)と総合地所(同40%)が7月に分譲する「ローレルタワー ルネ浜松町」を見学した。ゆりかもめ日の出駅から徒歩1分の眼前に東京湾が広がる総合設計制度の適用を受けた23階建て全227戸の規模で、階高約3.6m、リビング天井高約2.7m。「港区」「タワー」「海」を前面に押し出す注目のマンションだ。
物件は、ゆりかもめ日の出駅から徒歩1分(浜松町駅から徒歩10分)、港区海岸2丁目に位置する23階建て全227戸。第1期(戸数未定)の専有面積は51.09~140.55㎡、予定価格は5,900万円台〜25,000万円台(最多価格帯7,100万円台)、坪単価450万円。竣工予定は平成31年12月末日。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。デザイン監修はベイシスデザイン事務所。
現地は、準工エリアで倉庫街として知られているところだが、2年前にサンケイビルが分譲した「ルフォン リブレ浜松町」に近接。「ルフォン リブレ浜松町」は都心を向いたマンションだが、こちらは海側と都心側の両方を向いているのが特徴。
建物は、東京都の総合設計制度の適用を受け、広い広場を整備。今回分譲対象の住戸は6階以上で、プランは内廊下方式を採用、東京湾を望める東向きと都心が眺望できる西向きが6:4くらいの割合か。いずれもワイドスパンが特徴。21階以上の間口は約12~18m。
基本性能・設備仕様は、階高を約3.6m、リビング天井高を約2.7m、サッシ高を約2.35mそれぞれ確保、高速道路の騒音対策としては一部二重サッシを採用するほか、JIS規格最高グレードT-4等級に対し約3dB遮音性が高い複層ガラスを採用。このほか二重床・二重天井、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナ、フィオレストーン天板、グローエ水栓、陶器ボウルなどが標準。
新しい提案としては、クレーンにより撮影した全方位の写真をCG加工し、希望住戸からの眺望が想像できるようにするほか、キッチンはIHとガスコンロが選択できるようにしている。
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モデルルームを見て、近鉄不動産が7年前に分譲した「グランド ミッド タワーズ大宮」を思い出した。その時の記事には「埼玉県の最高レベル」「ザ・ペニンシュラ東京も手がけているデザイナー橋本夕紀夫氏がコーディネート…亀甲仕上げの床をはじめ建具・面材は全てクリ、トチなどの突き板の手仕上げによるものだ。天井高は3メートル。廊下幅は1~1.2メートル。ドアはイタリア製だ」と書いた。
今回の物件も、同社の矜持を感じた。並々ならぬ力をこの物件に注いでいることがストレートに伝わってきた。約140㎡の〝Executive〟モデルルームのデザインは鈴木ふじゑ氏だ。玄関・ホールの広さは4畳大近くあり、キッチンは約11畳大、リビング・ダイニングは約26畳大。圧倒的な存在感がある。床は天然石か突板の選択制。キッチンもガスかIHかを選べる。建具もオークの突板仕上げ。
価格が高いような気もしないではないが、浜松町駅圏では三井不動産レジデンシャルの「パークコート浜離宮ザ・タワー」が坪単価600万円で圧倒的な人気を呼んだ。それと比べるのもどうかと思うが、駅から徒歩10分で、ベイブリッジや対岸の夜景に魅せられる人も多いはずだ。
2年前にサンケイビルが分譲した近接する「ルフォン リブレ浜松町」もまずまずの人気になった。その比較からも坪450万円は納得だ。
同社は今年3月、このマンションにわが国で初めて衛星インターネットを導入するとニュース・リリースしたが、希望する全住戸からの全方位の眺望写真が見られるというのは業界初ではないか。こちらのほうがニュース価値があるような気もする。
埼玉県の過去最高レベルマンション 近鉄不動産他「グランド ミッド タワーズ大宮」(2010/6/2)
人気は全国区 坪600万円でも圧倒的人気 三井レジ「パークコート浜離宮ザ・タワー」(2017/1/23)
「めざましテレビ」そのまま 朝から元気 サンケイビル「ルフォン リブレ浜松町」(2015/1/20)
一頭地を抜く コスモスイニシアの都市型戸建て「田園調布 桜坂」「成城」
「グランフォーラム田園調布本町 桜坂」
コスモスイニシアの都市型戸建て「グランフォーラム田園調布本町 桜坂」と「グランフォーラム成城学園前」を見学した。立地条件にふさわしくゆったりとした配棟とし、2階リビングの天井高を4m近く確保し、業界で初めて掃き出し窓をフラット化するなど商品企画が秀逸。価格が1億円台、2億円台であるにもかかわらず人気を呼んでおり、都市型戸建て分野では完全に一頭地を抜いた。ベンチマークになるのは間違いない。
「田園調布本町 桜坂」は、東横線多摩川駅から徒歩10分(東急多摩川線沼部駅から徒歩5分)、大田区田園調布本町の第1種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全8区画。最終期1戸の土地面積は105.21㎡(一部私道負担あり)、建物面積は99.46㎡、価格は9,980万円。建物は平成29年11月竣工済。施工は東急建設。構造・工法は木造(在来壁)・2階建て。
敷地は料亭跡地。地名に「桜坂」が付いているように、切通しの上に位置し、南東側には見事な桜並木が眺望できる住宅街。この立地の魅力を最大限引き出すため、当初予定の9戸を敢えて8戸にし、電線類の地中化、オープン外構、インターロッキング舗装(私道)などでゆったりした景観を演出しているのが特徴。
全棟から桜並木が眺められるようリビングは2階に配し、在来工法とツーバイフォー工法を組み合わせたストローグ社のハイブリッド工法を採用しリビング間口を広くし、かつ天井高(最大約4.35m)を高くし、さらに分譲戸建てでは業界初の掃き出し窓のフラット化を実現、バルコニーにデッキなどを張ればフルフラットバルコニーにできるようにした。玄関・ホールをゆったり取り、床は大判の大理石、下足入れカウンターはフィオレストーン仕上げ。
桜坂 以上「グランフォーラム田園調布本町 桜坂」
「成城学園前」は、小田急線成城学園前駅から徒歩5分、世田谷区成城三丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する全4戸。土地面積は全棟150㎡以上、建物面積は約120㎡。価格は2億円前後。建物は平成29年12月竣工済。施工は東急建設。構造・工法は木造(枠組壁)・2階建て。
ここも、駅から徒歩5分の恵まれた立地条件を最大限引き出すよう当初予定の7戸から4戸に減らし、富裕層のニーズを満たす配棟計画にしているのが特徴。
設備仕様レベルは「田園調布」とほぼ同じだが、ここも2階リビングの掃き出し窓をフラット化することで、最大天井高3.7mの空間と奥行き最大2.7mのバルコニーを一体利用できるようにしている。階段はメーターモジュールを採用。
2階リビングとバルコニーを一体化した床
敷地延長部分 以上「グランフォーラム成城学園前」
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最初に見学したのは「田園調布本町 桜坂」だった。玉川駅からの道を間違えたために、コイも泳ぐ六郷用水遊歩道と桜坂を歩くことになったのだが、切通しの上にかかる赤い欄干の桜橋と道路の両端に植わっている樹齢100年はありそうな桜並木を見た途端、取材を申し込んだ価値があると思った。
「成城学園前」と合わせこの高額戸建てを見学したのには特別の理由がある。記事にもしたが、同社のマンション、戸建ての商品企画を約30年間にわたって担当してきた同社の南光浩氏にインタビューした際、南氏が「今後は高額の戸建てが増えてくる」と話したので、それはどのような商品企画、レベルなのか確認したかったからだ。記者の頭の中にあったのは、これも記事にした「グランフォーラム石神井公園」と「グランフォーラム練馬田柄」だった。この2物件を超えられるのかどうか、あるいは新たなアイデアが盛り込まれているか、それを探るのが目的だった。
道を間違えたために春爛漫の緑陰を楽しんだ半面、15分も歩かされたので悪態もついたのだが、物件を見て〝これは売れる〟と確信した。
特徴などは前段で書いた。何に感動したかと言えば、2階リビングの掃き出し窓がフラットだったことだ。
記者は30年も前から、2階の居室やリビングとバルコニーはフラット化すべきだと主張してきた。これを指摘するたび、各社は〝技術的には可能だが、バルコニーからの浸水を防止するために床から12センチ以上立上がり防水面を施す必要があり、コストもかかる〟などとどこも取り合わなかった。その問題を解決してフルフラットサッシを大和ハウスや積水ハウスは採用した。注文住宅でできるのに分譲でできないはずはないとずっと思ってきた。
それをコスモスイニシアが実現したのが嬉しかった。階段のメーターモジュールもかつて各社が採用していた。ポラスはメーターモジュールどころか1.2m確保したこともあった。ところが最近はほとんどなくなってきた。これは明らかな退行だ。メーターモジュールを標準仕様としているのは積水ハウスくらいではないか。
このほか圧倒的な天井高、ゆったりした玄関・ホール、電線類の地中化、ハイブリッド工法、モデルハウスの本物の観葉植物…都市型戸建ての商品企画では同社が他社を一歩も二歩も先んじた。一つだけ注文を付けるとするならば、屋内空気環境、全館空調だ。
同業他社に一言。「田園調布本町 桜坂」は入札ではなく、ある大手の仲介会社を通じで直接地主から用地を取得したそうだ。なぜ他社がこんな魅力的な土地に触手を伸ばさなかったのか。効率的な区画割を最優先したためのようだが、似たようなものばかり供給していたら競争に疲れるだけだ。9区画を8区画にする、7区画を4区画にする、そんな自由な発想ができない想像力、リテラシーの欠如だ。
玄関・ホール
六郷用水遊歩道
波乱万丈30年の「仕事」を語る コスモスイニシア商品企画部部長兼一級建築士事務所所長・南光浩氏(2018/3/9)
パーク・コーポとコラボ 空間デザイン秀逸 コスモスイニシアの戸建て「練馬田柄」(2017/11/7)
価格に見合う価値あり コスモスイニシア「グランフォーラム石神井公園」(2016/12/3)
1週間に5件 全て売れ行き好調 マンション・戸建ての販売現場に本物の生花・観葉植物
「ルピアコート市川妙典」モデルルーム
いま何が嬉しいかと言えば、わが西武ライオンズの快進撃だ。昨日は8回の段階で0-8の劣勢を覆して9回サヨナラ勝ちを収めるという長いプロ野球の歴史の中で初の快挙をやってのけた。
これと同等くらいに嬉しいのは、この1週間で見学したマンション・分譲戸建ての7現場のうち実に5つの販売事務所・モデルルームに本物の生花・観葉植物が飾られていたことだ。
まずその物件を紹介する。コスモスイニシアの戸建て「グランフォーラム田園調布本町 桜坂」と「グランフォーラム成城学園前」、東京建物・三菱地所レジデンスのマンション「ブリリア一番町」(昨日記事配信)、ポラスのマンション「ルピアコート市川妙典」、住友不動産のマンション「シティハウス中野テラス」だ。
記者は昨年5月、「いい加減にしてほしい モデルルームのケミカル製品・造花の氾濫」という記事を書いた。それが通じたわけではないだろうが、わずか1週間でこれほどの物件のモデルルームなどに本物の生花・観葉植物がセットされていた。喜ばずしていられようか。
そして、さらに嬉しいのは、これから分譲される「シティハウス中野テラス」を除いて全て売れ行きが好調ということだ。もちろん本物の生花・観葉植物を使用したことが販売に好結果をもたらしたなどとは書かないが、来場されたお客さんに好印象を与えたのはまず間違いない。
この4物件については追い追い記事にするが、本物の植物がどのような効果をもたらすか、これまた最近経験した例を一つ紹介する。
記者は、青山1丁目にある、タバコが吸えるいつも生花が飾られているレトロな雰囲気がする喫茶店によく通った。いまでも近くで取材する機会があると必ず利用する。先日、道端に咲いていたハナニラを数本摘んで、その店のカップにそのまま挿した。店の人が気を遣ってくれて、もう1つカップを用意してくれた。
気持ちのいい冷水につかることで生気を増したハナニラを眺めながら煙草をくゆらせていたら、店の女性経営者が「かわいいわね。わたしも造花は嫌いで、いつも生花を活けているけど、この草花で店の空気が変わる。感動しちゃう」と声を掛けてくれた。
誰にも顧みられないような野の草花でも周囲の空気を一変させる力を秘めている。
一生に一度か二度の大きな買い物をするマンションや戸建ての購入希望者に、フェイクだらけの床やら壁やらしか提供できないのだから、せめて観葉植物くらいは本物を使ってほしい。それがお客さんに対する礼儀だ。「本物の観葉植物は手間暇がかかる」という無神経なデベロッパーが少なくないのが全く理解できない。いやなら置かないほうがまだましだ。
「グランフォーラム成城学園前」玄関(カウンタートップはフィオレストーン)
ハナニラ(先日、阪急阪神不動産の戸建て記事では阪神ファンに失礼なことを書いたが、このハナニラの写真を記事に添えた。阪神ファンの怒りを鎮める効果をもちろん狙った。今のところ苦情・抗議は届いていない。ハナニラの効果か)
いい加減にしてほしい モデルルームのケミカル製品・造花の氾濫(2017/5/23)
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日本戸建管理、東宝ハウスHDと提携 首都圏での戸建て管理事業強化
創建グループの戸建て住宅の管理サービスを展開する日本戸建管理(本社:大阪市)は4月18日、東宝ハウスホールディングス(本社:新宿区)と提携し、日本戸建管理の「家ドック」システムを東宝ハウスホールディングスグループ各社に提供すると発表した。戸建住宅では少ない管理に関するサービスを首都圏でも提供するのが狙い。初年度入会者数1,000件を目指す。
「家ドック」は、月1,000円で、定期点検・サポート・メンテナンスなどのサービスが受けられるもの。入会すると自宅の約200カ所点検サービスが受けられ、写真付きの報告書が交付されるほか、適切なメンテナンスのアドバイスが受けられる。
〝住まいに美を〟「@cosme」とコラボ「板橋本町」 新日鉄興和不動産
「リビオレゾン板橋本町ステーションサイド」完成予想図
新日鉄興和不動産は4月18日、〝住まいに美を追求する〟「Plus Be@uty PROJECT」の研究成果を反映した分譲マンション「リビオレゾン板橋本町ステーションサイド」の見学会を行った。日本最大の化粧品・美容の総合サイト「@cosme」メンバーの女性を対象に行った理想の住まいに関するアンケート調査結果を商品企画に盛り込んだ。モデルルームは5月3日(木)からオープンする。
物件は、都営地下鉄三田線板橋本町駅から徒歩2分、板橋区大和町に位置する14階建て全95戸。専有面積は30.44~68.36㎡、予定価格は2,600万円台~5,800万円台、坪単価は300万円弱になる模様。竣工予定は2019年7月中旬。売主は同社のほか大栄不動産。設計・監理は環境デザイン研究所。施工は川村工営。
内廊下方式で、西向き住戸は住居系地域が一望できるが、東側は高速道路に面しているので、その騒音がかなりの難点になる。
今回の物件は、全95戸のうち77戸が約30㎡台のタイプであることから@cosmeとコラボし、「@cosmeメンバー」対象にウェブアンケートを実施(有効回答801件)し、その回答をもとに@cosme編集部と座談会を行うなどして商品企画に反映した。
「美」をサポートするオリジナル洗面化粧台・プランを共同開発したほか、「住みながら美容」を実現する設備として紫外線を遮るLow-Eガラスや天井ナノイー発生器、エステケアシャワーヘッドを採用。このほか食洗機や湿度調整にも活用できる室内物干しを採用し、フロアコンセントを設置し収納スペースに工夫も凝らした。
同社はコンパクトマンションシリーズ「リビオレゾン」を2011年秋に第一弾を販売開始してからこれまで首都圏のみで24物件930戸を供給している。
座談会
洗面化粧台
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約1時間の発表会は、女性の「美容」に関することにほとんど費やされた。企画に参画した@cosme編集部の若い男女2人が参加して同社住宅事業本部開発第三部開発第二グループの和田浩明氏とのトークセッションも行われた。
@cosmeのスタッフは「メーキャップの小物は十数点、多い人は50点もあり、収納しきれない」「メイクは鏡やクローゼットと近いほうがいい」(女性)「女性は時間がないことに対していろいろ工夫している。(プロジェクトに)ワクワクしている」(男性)などと話した。
外見を美しく見せる美の研究に異論はない。これはこれで結構なことだと思う。
記者はかつて三井不動産レジデンシャルが洗面室に自然光を採り入れた戸建てを見学したことがあり、最近では東急不動産の「日比谷パークフロント」に夜の女性に変身する女優ミラーが女子トイレに設置されているのも見た。三井不動産の「東京ミッドタウン日比谷」には、裸で日比谷公園を眺めながらシャワー室が女性用のみに設置されているのも見学した。
ただしかし、これが一番大事なことだと思うが、今回のトークセッションでは体の中身(心)を美しくすることについては全く言及がなかった。これが理解できない。「女性は化粧などしなくても基本的に美しい。素顔と化粧のギャップを見せられるのはたまらない。そんなことより、中身・心を磨くために芸術に親しむとか本を読むことのほうが大事ではないか」と質問したら、女性スタッフは「中身についてもやっています。食べることとか…」と答えた。(記者は心を美しくしたほうがいいと質問したつもりだが)
感心したコメントもあった。28歳のイケメン独身男性スタッフは、「理想の住まいは、女性が笑顔でいることができること」と話した。仰る通りだ。記者も28で結婚するとき「彼女が生涯輝ける星であり続けるように」と誓った。
ところが、彼女が満天の空でキラキラ輝いていたのは子どもが産まれたころまでで、その後は曇天にかくれるように表情が曇り、ときには雷鳴がとどろく土砂降り状態となり、泥酔して朝帰りをしようものなら玄関ドアチェーンを内から掛けられたこともあった。
後悔先に立たず。忸怩たる思いがする。記者の二の舞を演じないように、イケメン独身男性スタッフと同社には連れ合いが笑顔でいられる理想の住まい=夫婦の形を築いてほしい。多少劣悪な居住環境でも女性は美しく輝けると確信している。
もう一つ、興味深い話も聞けた。@cosme女性スタッフは「詐欺メイク」なる文言を発した。男性を欺くためではなく、自分自身を欺くために変身する化粧という意味だそうだ。外出するたびに自らを消す行為をすることが楽しいのか悲しいのか、美しくなろうとするのか醜く見せようとするのか。不可解千万。
記事とは関係ないかもしれないが、自分が「ブス」だと思っている、そしてまた自分が美人だと信じ込んでいる全ての女性に西加奈子さんの「きりこについて」(角川文庫)をお勧めする。「ブス」の呪縛から解放されるはずだ。
ラウンジ
リビングで〝ながら化粧〟ができるフロアコンセント
坪750万円でも好調 「Brillia」最高峰 東建・地所レジ「一番町」 サロンに乃村工藝
「Brillia 一番町」完成予想図
東京建物(事業比率60%)と三菱地所レジデンス(同40%)の「Brillia 一番町」を見学した。半蔵門駅から徒歩3分の番町文人通りなど三方道路の角地で、東京都の総合設計制度の適用を受けた免震マンション。坪単価750万円もさることながら、立地にふさわしいアートを各所に採用するなど「Brillia」の最高峰だ。売れ行きも絶好調。
物件は、東京メトロ半蔵門線半蔵門駅から徒歩3分、千代田区一番町に位置する18階建て全106戸(販売戸数は82戸)。専有面積は74.08~201.89㎡、第2期(戸数未定)の予定価格は14,100万円台~27,800万円台(74.08~106.54㎡)、最多価格帯は18,000万円台。坪単価は750万円。竣工予定は平成31年9月上旬。設計・施工・監理は三井住友建設。デザイン監修は日建設計。
今年3月から分譲開始されており、高層階の坪単価1,000万円超の住戸はすべて完売するなど販売は好調に推移しており、これまでに約半数が成約済み。
現地は、道路を挟んだ対面に高層ビルやマンションが建っており、中層階以下では皇居は一望できないが、番町文人通りの対面はローマ法王庁大使館。戸数が100戸超の番町エリアのマンション供給は過去20年間で4物件しかないのも特徴。
建物は、免震工法を採用しているほか、東京都総合設計制度の適用を受け、サウスガーデンとノースガーデンなど広い空地・緑地を確保。住戸プランは3~14階までは1フロア7戸、15~17階は6戸、最上階の18階は4戸構成のワイドスパンが特徴。
設備仕様は、ポーゲンポール社のキッチン、シーザーストーン、突板面材、陶器洗面ボウル、グローエの多機能シャワーベッド、ミーレの食洗機、ユニオン社のドア把手、オークの突板床、その他はなど。リビング天井高は14階までは2600ミリ、15~17階が2800ミリ、最上階は3200ミリ。
販売担当のゲストサロン副所長・松野尾和樹氏は「ゲストサロンは乃村工藝社を起用。極力お客さま同士が出会わすことがないようにシンプルにし、生花は定期的に替えるえるようにしている。シアターに水を張ったのも乃村さんの提案。150㎡のモデルルームは『ザ・ペニンシュラ東京』を手掛けられた橋本夕紀夫氏がデザインを担当。4ミリ厚のオーク突板床、一脚400万円のトチノキのローテーブル、キッチンメーカーでは最高峰のポーゲンポール社製。お客さまの評価が高く、『Brillia』の最高峰を担当することになって光栄」と話した。
基壇部のガラスファサード(左)とエントランスホール
サロンに掲げられていた生花
コイが泳いでいるように見えるシアターの下に設置された〝池〟
150㎡のモデルルーム(玄関から)
1脚400万円のトチノキのテーブル(左)とクスノキのテーブル
◇ ◆ ◇
ここ数年間に番町エリアのマンションは10件近く見学した。強く印象に残っているのは三井不動産レジデンシャルの「一番町」、東急不動産の「一番町」、大和ハウスの「六番町」などだ。もちろん、過去4物件しかない100戸超の「三番町パークテラス桜苑」(102戸)「ザ・パークハウス グラン三番町」(148戸)「ブランズ四番町」(164戸)も見学している。
これらと比較して、今回の「一番町」のゲストサロン・モデルルームの出来栄えは勝るとも劣らない。東建の畢生の力作だと思う。
サロンに入ってすぐ写真で紹介した生花が目に飛び込んできた。名前を控えるのを忘れたが、かなり著名な方の〝作品〟だったはずだ。大ぶりのこれ見よがしのランの花とは全然異なる。
4つある接客ブースは個室。個室タイプは他社の物件にも多いが、シアターは個室の間に隔壁が設けられているので、隣同士お見合いすることはないようになっていた。
驚いたのは奥行きにして1m以上、幅にして10m以上の、皇居のお濠と実際に設置される水景をイメージした〝池〟がシアタールームに設置されていたことだ。その池には鯉や月、蓮、波紋などが映り込むようになっていた。シアターには次々とその道のプロによるアート作品が展開された。
これだけで、マンションのコンセプトである「和敬清寂」がすんなりと受け入れられた。
マンションの販売事務所の企画を手がけるのは初めてという乃村工藝社が、本格的にこの事業に乗り出したら販売事務所のあり方そのものを一変させるかもしれない。
150㎡のモデルルームも最高の出来だ。〝お客さんの期待以上〟に応えるから感動を呼ぶ。高額住戸から売れていったというのも納得だ。
モデルルーム
その美しさに声を失った 商品企画も秀逸 三井不レジ「パークコート一番町」(2017/2/21)
これぞ正統派の億ション 東急不動産「ブランズ ザ・ハウス一番町」竣工(2017/1/23)
「地価公示日本一」六番町にフェルメールを見た 大和ハウスが億ション(2016/3/14)
じわり浸透 年間100区画供給 阪急阪神不動産の戸建て「ハピアガーデン」
「ハピアガーデン深沢六丁目」
阪急阪神不動産の戸建てブランド「ハピアガーデン」の「深沢六丁目」と「尾山台二丁目」を見学した。「長期優良住宅」認定と「住宅性能評価」の6項目すべてで最高等級を取得することで他社との差別化を図り、きめ細かな工夫を施すことでじわり首都圏で地歩を築きつつあるとみた。そこには強かな計算があると読んだ。
阪急阪神ホールディングスグループは今年4月、不動産事業の再編に伴い、不動産事業の中核会社として阪急阪神不動産(阪急不動産から商号変更)を設立した。記者はこれまで旧阪急不のマンション〝ジオ〟は首都圏に進出してからかなり取材しているが、戸建て事業を展開する旧阪神の〝ハピアガーデン〟は一度も見学したことがないので、お願いして実現した。
「ハピアガーデン深沢六丁目」は、東急田園都市線桜新町駅から徒歩13分、世田谷区深沢6丁目に位置する全2戸。土地面積96.22~97.98㎡、建物面積94.40~97.68㎡。価格は未定。建物は2×4工法2階建て。設計・施工・監理はイトーピアホーム。販売代理はライフステージ。
閑静な住宅街で、1階の北側階段部分に光が差し込む窓を設けているのが特徴。LDKの勾配天井はもっとも高いところで約3800ミリ。
「ハピアガーデン尾山台二丁目」は、東急大井町線尾山台駅から徒歩9分、世田谷区尾山台二丁目の風致地区(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する全3戸。土地面積113.00~119.98㎡、建物面積89.84~94.52㎡。価格は未定。建物は在来工法2階建て。販売代理はライフステージ。
こちらは、風致地区であるため制約が多いが、アウトドアテラスなどと室内を結び、1階の天井高を2号棟のみだが2.7m確保し、かつ周辺に少ない4LDKとしているのが特徴だ。エントランスから主寝室、パティオなどの床はタイル張りで、キッチンカウンターはフィオレストーン。
双方とも「長期優良住宅」認定と「住宅性能評価」の最高等級を取得し、所在が人気が高い住宅地で、戸数が2~3戸、建物は2×4工法と在来、販売代理は大阪が本社のライフステージというところに〝ハピアガーデン〟の戦略が見え隠れする。
同社住宅事業本部 宅地戸建事業部 宅地・戸建事業グループ首都圏担当の平山真悟氏は、「首都圏に進出して6年が経過した。これまで宅地分譲を含めて500区画弱供給してきた。当初は関西と勝手が異なり苦労したが、最近は情報収集も販売も順調に推移している。新体制になりスタッフを増やし、戸数も年間100戸くらいを目指す。長期優良住宅と住宅性能評価は大きなセールスポイントになっている。デザインもマンションの設備仕様を参考に+アルファーしてグレード感を出すようにしている」と話した。
平山氏が話したように大手でも長期優良認定と住宅性能評価を取得しているところはむしろ少ない。同社の主力供給エリアの城西、城南では三井不動産レジデンシャルや野村不動産、その他と競合しそうだが、規模的には三井も野村も小規模はほとんどない。きちんと住み分けがができているように思う。エリアの特性に応じて臨機応変に対応しているようだ。
城西、城南エリアでは他のデベロッパーも虎視眈々、市場に割って入ろうとしているが、この6年間でしっかり地歩を築いてきた同社がそうやすやすと地位を譲るとも思えない。
「ハピアガーデン深沢六丁目」
「ハピアガーデン深沢六丁目」
「ハピアガーデン尾山台二丁目」の現場近くで群生していたハナニラ
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阪神と言えば子会社の阪神タイガースだ。記事とは関係ないが触れざるを得ない。以下は、西武ファン歴60年、アンチ巨人の記者の独断と偏見に満ちた私見だ。関係者は気を悪くなさらないで読んでいただきたい。
思い出すのは昭和60年(1985年)だ。バース、掛布、岡田が巨人・槙原投手からバックスクリーン3連発を放つなど圧倒的な打撃力で日本一(何と相手はわが西武。記者は戦う前から負けを覚悟していた)になった。
ところが、後にも先にも日本シリーズを制したのはこの1回のみ。これは全球団の最少優勝回数タイ記録(楽天も1回のみだが、楽天の歴史は14年。阪神は82年)だ。だいたいが「死のロード」に疲れ果て、失速し、優勝を逸すパターンがずっと続いている。
そればかりか、阪神は〝虎ウマ〟のごとく〝ダメ虎〟を象徴する嫌なニュース、出来事がメディアから執拗に繰り返し報道される。展覧試合で長嶋茂雄氏にサヨナラ本塁打を打たれたのがそうだし、「ベンチがアホやから野球がでけへん」と球史に残る名言を江本孟紀氏に吐かれたのが最たるものだ。
監督と言えば、知的で頭脳的な采配を揮って球界をリードしているわが西武とは真逆の、雑で大雑把な采配がいつも身内からもやり玉にあがる。選手も選手で、素晴らしい力を持ち実績を残しながら、マスコミの餌食になりスキャンダルなどで潰される。
ファンと言えば、負けることに価値を見出すような、マゾヒスト根性をむき出しにし、何かの間違いで優勝などをすると芥にまみれメタンガスが充満する、下手をすると死を差招くことにもなりかねない、もう畏怖するしかない道頓堀川ダイビングを挙行する。
阪神ファンで知られる国際日本文化研究センター教授・井上章一氏が「阪神はやめられない。もうこれは、麻薬だ。アヘンである。『宗教はアヘンだ』というマルクスのひそみにならえば、宗教なのかもしれない」(朝日文庫「関西人の正体」)と言った通りだ。
しかし、それでも本体はびくともしないのが不思議といえば不思議だ。同社の鉄道事業の売上高353億円(平成29年3月期)に対して球団は200億円を突破している模様で、きっちり利益も7億円確保している。いわばドル箱だ。
それはなぜか。東の「東京」に対抗する西の大阪(甲子園は兵庫だが)なのか、首都の「東京」に敵愾心を燃やす関西圏の象徴なのか、誰が名付けたか知らないが「伝統の一戦」なるプロパガンダ、デマゴーグを流布したのも奏功したのだろう。観客動員数は読売巨人軍に次ぐ多さだ。これだけは西武もかなわない。称賛に値する。なんとも羨ましい限りだ。
余談だが、販売代理のライフステージの会社概要を見てびっくりした。何と今年2月に東証一部へ上場変更を果たしたビーロットの子会社とあるではないか。ビーロット・宮内誠社長は、オリックスの元社長、会長でオリックス・バファローズのオーナー宮内義彦氏の息子さんだ。阪神とオリックスはどこかでつながっているのか。ビーロットの長谷川進一副社長からは「夢はプロ野球球団を持つこと」と10数年前に聞いたが、ひょっとしたら阪神かオリックスの球団オーナーになれるかもしれない。
「ハピアガーデン深沢六丁目」の現場近く
「ハピアガーデン深沢六丁目」の現場近くのハナミズキ
工期20%削減 30%省力化 耐火被覆ロボット実用化へ 大和ハウス工業
「耐火被覆吹付ロボット」(「ダイワロイネットホテル東京有明」建設現場で)
大和ハウス工業は4月16日、鉄骨の柱や梁をロックウール・モルタルで耐火被覆吹付する「耐火被覆吹付ロボット」の実用化に向けた実証実験を報道陣向けに公開した。
「耐火被覆吹付ロボット」は、産業用ロボットアームと走行台車、昇降台車を組み合わせたロボットで、通常、鉄骨の柱や梁をロックウール・モルタルで耐火被覆吹付するには3人の職方が必要真野に対し、ロボットを使用することで職方を2人にすることができる。工期を約20%削減し、省力化率30%を目指す。2019年度には実用化する予定。
同社は今後深刻化する人手不足の解消に向けて当ロボットをベースに塗装工事や危険な高所作業への応用など、各種ロボットアーム利用の検討を進めるとともに、BIMと連動させることにより、 ロボットが作業を行うために必要なデータ入力項目を削減し、作業時間の短縮を目指す。
ロボットの開発に至った背景・経緯について、同社代表取締役専務執行役員・土田和人氏は「2025年の建設労働者数は2014年度比で129万人離職し、112万人不足すると推測されている。その不足分を補うには省力化と新たな担い手が欠かせない。そのためにはきつい、汚い、危険の〝3K〟から(高い)給与、(長い)休日、希望(の産業)の〝新3K〟を実現しなければならない。当社は2018年度から建設現場に『4週5休』を導入し、2021年度には『完全週休二日』を実施するロードマップを作成した」などと話した。
人手による吹付作業
吹付作業をするロボット
吹付後のテコ押さえ・検査作業
土田氏
◇ ◆ ◇
実証実験は同社の「ダイワロイネットホテル東京有明」の建設現場で行われ、人手とロボットによるものとの比較が容易にできるように実施された。疑い深い記者は、どこかに人が潜んでおり、遠隔操作で吹き付けているのではないかと質問したが、もちろんそんなことはなかった。ロボットのすごさ、賢さを見せつけられた。
耐火被覆は、建築基準法で定められており、1時間耐火は25ミリ、2時間耐火は45ミリ、3時間耐火は65ミリの耐火被覆吹付を行わなければならず、重要な作業であるにもかかわらず、作業員が不足しており、現場からもロボット化の声が高いという。真夏でも作業着を付け、マスクもつけなければならないので体感温度は40度、50度にもなり汗だくになるという。
ロボットによる作業は、人手と比べてややムラがあり、ガラス繊維とモルタルを混ぜたロックウール・モルタルが周囲に飛散するロスも見られたが、ものの見事にやってのけた。
担当者によると、人手による作業を100点満点とすると、ロボットは8~90点と合格点をつけた。
試作品は数千万円の費用が掛かっているとのことだが、量産化が進めば数百万円に抑えられるという。
君手危うきに近寄らず「(イケメンと口の悪い記者にはロボットが悪戯をするかもしれませんのでとは言われなかったが)少し離れてください」との担当者から事前説明があった。口の悪い記者はターゲットになると理解し、ロボットから離れ難を逃れたが、どこかのテレビ局のイケメンは事前の忠告を無視したために〝君子の交わりは淡きこと水のごとし〟そのもの、泡を吹きつけられ、モルタルの水を浴びたようだ。無害とのことだ)
分譲一筋に30年 〝ルネ〟の総合地所 執行役員・梅津英司氏が語る
梅津氏
卓越した商品企画で話題を提供してきた〝ルネ〟ブランドの総合地所が、長谷工グループ入りして丸3年目を迎える。昨年は創業40周年の年だった。これまで供給した住宅は約65,000戸。この40年の歴史のうちバブル崩壊後の30年間を分譲一筋に歩んできた同社執行役員事業部長・梅津英司氏(52)にこれまでの仕事と今後について話を聞いた。
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同社がどのようなデベロッパーであるかを少し紹介する。
創業は昭和52年5月。安宅産業の住宅部門の営業を継承して設立された。同59年9月に現社名に変更。平成11年10月に永昌不動産を、同21年6月にトータルハウジングをそれぞれ合併。同27年5月、長谷工グループ入りした。
これまで分譲マンションは〝ルネ〟シリーズで約43,000戸、戸建ては約2,400戸、合わせて約65,000戸の住宅を供給している。データはないが、これほどの住宅を供給しているデベロッパーは20社あるかないかだ。
同社が業界に存在感を示したのは昭和61年竣工の「ルネ門前仲町」(467戸)「ルネ蕨」(192戸)「ルネ蒲田」(216戸)「ルネ新宿御苑プラザ」(303戸)の4物件だ。
記者はこの4物件を全て取材している。分譲開始はマンション不況から抜け出す昭和60年ころで、同社は商品企画で業界をリードした。
鮮明に覚えているのは、「蒲田」の物件で、施工トップの長谷工コーポレーション(当時、長谷川工務店)と設計に東急設計コンサルタントを起用して、卓越した商品企画に仕上げたことだ。1階住戸を専用駐車場付きとしたのは業界初ではなかったか。「新宿御苑」は基本性能・設備仕様をアップさせたコンパクトマンションの草分け的な物件で、申し込みが殺到した。
前身が商社だけあって〝いいとこ取り〟に長けていると感嘆したものだ。
梅津氏は平成2年の9月入社だ。「わたしが入社したころは、土地を見ないで買い付けしていた物件もありました」と当時の状況を梅津氏は振り返る。
ところが、まさに頂上に上ったとたんに梯子を外されるようにバブルは崩壊する。平成2年9月の首都圏マンション月間契約率は2年8か月ぶりに70%を割った。
「わたしが担当した最初の物件は綾瀬駅からバス便の、所在地は八潮市の『ルネ綾瀬』。全48戸のうち約8割に申し込みが入ったのですが、キャンセルが続出し、結局売れたのは4戸のみでした。坪単価は250万円? いえそこまでいきませんでした。ワイドスパンのいい物件だったんですが…。それから戸別チラシ配布や銀行、業者回りなどに明け暮れました」
「チラシの配布は戸別ですから、公団住宅は大変でした。エレベーターがなく、階段を上り下りしなければなりませんでしたから。頭は使わなくて済んだのですが、さすがに疲れましたね。いまは懐かしいですが…」
そこから塗炭の苦しみが始まるが、同社が破綻しなかったのは、メインバンクの住友銀行とのパイプが太かったからに違いない。
そして平成12年、「ルネアクシアム」(721戸)が業界を唖然とさせた。「半分も売れない」と読んでいた業界関係者をあざ笑うかのように、何と全戸を一挙に販売し、6,510組の来場者を集め平均4.8倍の競争倍率で即日完売した。一挙供給の即日完売戸数の多さでは昨年の「ザ・タワー横浜北仲」第1期の730戸がバブル崩壊後では最多だが、それまで17年間この記録は破られなかった。
「あれはすごかったですね。東武鉄道野田線新船橋駅から徒歩10分、当時は周辺に何もなかったですからね。普段静かな町が、土日は大渋滞になりました」
人気の要因は、坪単価110万円台という価格の安さもあったが、需要を喚起するため、タレントで画家の城戸真亜子氏や映画監督の崔洋一氏など数人の専門家のアイデアを盛り込んだ企画が見事にヒットした。
その後、〝モックン〟こと本木雅弘氏を起用して人気になった三菱地所レジデンス「Wコンフォート」などの〝タレントマンション〟が続々供給されるようになった。歴史をつくったマンションだった。
現在の商品企画の参考にもなりそうなので、もう少し具体的に物件の特性について触れておく。特徴は、①全住戸の35%が100㎡以上、90㎡以上は6割以上②スラブ厚は29センチ③崔監督は〝女人禁制・18歳未満立ち入り禁止〟の〝男のラウンジ〟を提案④外周部は幅5mの歩道と2列の桜並木を整備⑤託児施設を設置⑥100%自走式駐車場⑦販売代理はプラン別に長谷工アーベストと三井不動産リアルティ(当時、三井不動産販売-など。
当時の記事
「どうしてそんなことができたかと言えば、当社の社員は旧安宅を始めいろいろな会社からの個性派集団、寄せ集め集団で、しかも仕入れから企画-販売まで一気通貫でやってきましたので、みんなプロ意識が強く、アイデアマン揃いでした。
永昌不動産が分譲したバス便の全戸100㎡の『津田沼』もそうですし、『ルネ御殿山』も代表作です。大浴場付きは10棟くらい供給しました。1999年竣工の全488戸の『アクアフォレスタルネ稲毛』、2003年竣工の全758戸の『東京サーハウス』、2009年竣工の全191戸の『リージェントハウス大森西』なども印象に残る物件です。『稲毛』はビオトープなどを採用して環境共生に取り組んだ物件ですし、『サーハウス』は大浴場付きで共用部に高級家具のカッシーナを約8セット設置しました。『大森西』には400万円かけて本物の火を使った暖炉を採用するなどこだわりました。カネがかかってもいいものを造ろう、入居者が満足していただけること、それが何よりの広告だという文化がありました」
梅津氏の口からは次々と記憶に残るマンションの名前が飛び出した。
記者も「津田沼」や「東京サーハウス」はよく覚えている。「津田沼」は常識では考えられないプランがヒットした。「サーハウス」は今では当たり前だが、当時は最先端の「健康」をテーマにしたマンションだった。
即日完売を報じた「週刊住宅」721戸はこの月の埼玉県の全供給物件の戸数と同じとある
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戸建てについても触れておきたい。同社は約30年間にわたって全1,261戸の「白岡ニュータウン」を開発・分譲してきたが、そのノウハウを2016年分譲の「ルネテラス船橋」(34棟)に注ぎ込んでヒットした。
詳細は当時の記事を参照していただきたいが、梅津氏は戸建てについても次のように語った。
「戸建ても強化します。狙いは都心の高額ですが、(用地が)買えているのは郊外で、思いと実際は若干異なるのですが、『白岡』や『船橋』のような街をきちっとつくったものを供給していきたい」
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今後の事業展開について、梅津氏は「これまで情報を共有する、継承するという風土がやや欠けていた」と反省し、次のように締めくくった。
「いま当社グループはかなり意識が変わってきました。エンジンがかかったともいえます。商品企画に関する研究会を頻繁に行っています。今後も他社にないもの、総合地所らしいものを提供していきます。ライバル? 仲間もたくさんいますので、名前は伏せていただきたいのですが〇〇には負けませんよ」と。
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梅津氏は「RBA野球は出たり出なかったり。あれはどこと戦ったときか(三井のリハウス戦)。小雨が降る日で、うちの投手が四死球ばかり出すので球が飛んでこなかった。仕方がないのでグラウンドの四葉のクローバーを摘んでいた」と話したので、RBA野球についても触れざるを得ない。
RBA野球大会は今年で30周年を迎えるが、同社チームはこれまで23回出場しており、通算成績は29勝45敗、勝率は.392。参加当初は好投手・長島を擁し、強豪チームにも互角の成績を残していたが、年を重ねるごとに選手の高齢化が進み勝てなくなった。2011年、三菱地所ホーム相手に15-0の5回コールド勝ちを収めるが、これは実に5年ぶりの勝利だった。梅津氏は5番ファーストとして出場、3打数2安打3打点の活躍をしている。
ところがその翌年の2012年、RBA野球大会の中で〝燦然〟と輝く〝不名誉〟な大記録を2つも打ち立てた。
一つは対住友林業の試合。0-21の大敗を喫したのだが、何と制限時間1時間半の大半を守らされ、住林の打者は3~4回打席に立っているのに、同社は6人しか回ってこなかった。つまり7~9番打者は1度も打席に立つことなく敗れた。これは前代未聞の大会記録だ。
もう一つは、三井リハウス東京戦で大会記録の0-36で敗れたのだが、1イニング28打者連続出塁、28打者連続得点(プロ野球記録は14者連続)というこれまた空前絶後の大会記録を樹立した。三井の打者の打席数は49なのに対し同社は13。三井は9番打者も5回打席に立ったが、同社の5番打者以下は1打席しか巡ってこなかった。雨中の中、ずぶぬれになって守らされた。
これに懲りたのか、同社は2015年から出場しなくなった。梅津氏は「長谷工のチームに出てもいいとみんなに言っている」というが、さて…復活はあるか。
敷地延長の難点を解消したプラン光る 総合地所「ルネテラス船橋」(2016/10/1)
総合地所 建築家とコラボ シンプルで端正なデザイン、大胆提案に注目(2016/4/28)
第1期167戸成約 小田急不ほか「海老名」のタワーマンション好調
「リーフィアタワー海老名アクロスコート」完成予想図
小田急不動産は4月12日、三菱地所レジデンス、小田急電鉄との3社共同プロジェクト「リーフィアタワー海老名アクロスコート」(304戸)の第2期販売を4月14日(土)から開始すると発表した。
1月6日にモデルルームをオープンし、これまで第1期1次~第1期3次として195戸を供給し、167戸が成約するなど販売は好調に推移している。専有面積は45.25~120.65㎡、最多価格帯は5,400万円台。総来場者は955件。
契約者は、20代後半のプレファミリーからシニア層まで多様な世帯で、持家からの住替えが全体の約60%、交通利便性の向上への期待感から広域勤務(都内および横浜市内)が全体の30%に達している。