圧巻の1・2階の天井・サッシ2.72mだからこそ不満も 大和ハ「xevoΣ PREMIUM」
「xevoΣPREMIUM(ジーヴォシグマプレミアム)」完成予想図
大和ハウス工業は10月1日、富裕層をターゲットとした住宅業界最高クラスの鉄骨住宅商品「xevoΣPREMIUM(ジーヴォシグマプレミアム)」の販売を開始する。販売に先立つ28日、モデルハウスを報道陣に公開した。
新商品は、①業界最高水準の断熱・耐震性能及び長期保証②天井高2.72mまで達するサッシやドアの「グランフルデザイン」③業界最大級となる彫りの深さ12mm を実現した新外壁を開発・装備しているのが特徴。
同社取締役常務執行役員 住宅事業全般担当・大友浩嗣氏は、「2014年に発売開始した『xevoΣ 』の天井高2.72mの採用率は80%を超え、累計13,500棟を販売するなど評価されているが、当社の(同業他社と比較して)若干弱い富裕層向けを強化するのが狙い。4月から始めたプレ販売では7月、8月は月間10棟を契約するなど手応えは十分。年間600棟の販売目標はクリアできる」と話した。
同社住宅事業推進部商品開発部長・藤原陽介氏ら関係者は、「xevoΣ」と比較して1.6倍の開口部を設けることができたこと、軽くてデザイン性に優れる高さ2.72mの「グランフルサッシ」を開発し、2階も2.72m天井を提案していること、業界最大級となる柄の深さ12mmの新外壁「ベルサイクス」の良さなどを強調した。
新商品の坪単価は90万円~120万円。販売目標は年間600棟(北海道・沖縄除く)。
「グランフルデザイン」
2階の天井高2.72m提案
◇ ◆ ◇
高天井がいいのは言うまでもない。今回の新商品は2階も天井高2.72mを確保し、しかも掃き出し窓をフラットにしている。これはいい。富裕層向けの分譲戸建ても天井の高さ競争に拍車がかかっている。
LIXIL製という「グランフルサッシ」は障子枠を従来の9cmから5cmに細くし、閉めたときの収まりもよく、しかも軽いのに驚いた。開口部を多くしてもZEH対応が可能というのも納得だ。
しかし、「弱い富裕層向けを強化する」のが狙いであるとすれば、不満も残った。第一に、せっかくの2階も含めた天井高2.72m(一部3m)の圧倒的な大空間が十分演出できていない点だ。
その理由は、今回公開された港北インター住宅公園展示場の敷地形状のためなのか別にあるのか分からないが、約71坪の建物の階段室を建物のほぼ中央に配したことで、廊下部分にもかなりのスペースが取られており、その分リビング、各居室などが窮屈に感じられた。主寝室は8畳大もなかったのではないか。
もう一つ、設備仕様レベルは富裕層を納得させるものかどうかという疑問だ。
1階の床は挽き板が、約5畳大の防音室にはヘリンボーンがそれぞれ採用されていたが、その他の建具・家具の多くはシート張りだった。キッチンカウンターは一見してすぐそのレベルが分かった。
マンションの例だが、三井不動産の「パークマンション」「パークコート」が圧倒的な支持を受けているのは、質がけた違いだからだ。7年前だが、「パークコート六本木ヒルトップ」は階高を3,400~3,450ミリ確保したため廊下、キッチンの天井高も最低2,350ミリあった。
近鉄不動産「グランド ミッドタワーズ大宮」は、ザ・ペニンシュラ東京を手がけたデザイナー橋本夕紀夫氏を起用し、天井高は3m、リビングの床全面を亀甲仕上げとし、建具・面材は全てクリ、トチなどの突き板、廊下幅は1~1.2m、ドアはイタリア製だった。
橋本夕紀夫氏を起用した最近のマンションでは、坪単価750万円の東京建物「Brillia 一番町」が絶好調だ。
ヘリンボーンでは、昨年見た「サンウッド青山」は「マダガスカル・ローズウッド、パリサンダー」と呼ばれる希少高級材が床全面に張られていた。
同業のハウスメーカーの富裕層向けも、三井ホームはかつて坪単価250万円のモデルハウスを設けたことがあったし、積水ハウスや三菱地所ホームなども圧倒的な存在感がある。
この日、配布されたパンフレットには、様々な敷地形状にも対応できる1~5までのプランが紹介されている。1や2、5はとてもいいプランだ。今度、どこかでは同業他社に負けない〝突き抜ける〟モデルハウスをつくってほしい。
高断熱アルミ樹脂複合サッシ
「ベルサイクス」
木の美しさを全面に 天井高3m実現 三井ホームが新商品「LANGLEY(ラングレー)」(2018/4/11)
大和ハウス 天井高2.8mの「xevoΣ」ロビーに公開 一般住宅との差が一目瞭然(2017/4/26)
効果てきめん 三菱地所ホーム 全館空調「エアロテック」記者も宿泊体験(2017/10/30)
積水ハウス 古河に2億円「イズ・ステージ」と1.2億円「グラヴィス・ヴィラ」(2016/7/17)
埼玉県の過去最高レベルマンション 近鉄不動産他「グランド ミッド タワーズ大宮」(2010/6/2)
アキュラホームの「チーム匠」 第1回壁-1グランプリで総合優勝
「チーム匠」の木造耐力壁「一位の壁」
アキュラホームは9月27日、東京大学木質材料学研究室、篠原商店と共同開発した木造耐力壁「一位の壁」が「第1回 壁-1グランプリ」で総合優勝したと発表した。従来の木造耐力壁ジャパンカップを含め通算5回目の総合優勝。
大会は埼玉県行田市・ものつくり大学で9月15~17日にかけて行われたもので、12チーム(体)が参加。二体の木造耐力壁の足元を固定した状態で桁を互いに引き合わせ、どちらか一方の壁が破壊されるまで行う形式で争われた。
同社チーム(チーム名:チーム匠)は、8体による決勝トーナメントでは準々決勝戦で敗退したが、耐震性、加工、施工、コスト、環境負荷、デザイン性のトータルバランスが優れている壁に贈られるグランプリを獲得した。このほか、デザイン、加工・施工、オーディエンスの3部門でも部門賞を受賞した。
「一位の壁」は、赤松、イチイ樫、白樫で構成され、「イチイ樫」を使用した縦貫材を並べ応力を分散させることで粘りを発揮させ、白樫を使った補強斜材を用い、土台の欠損を最小限にさせ、適切な位置にビスを使用することで、高耐力を生み出す耐力壁。
トーナメント戦では三井ホームGT「G-WALL HD」が優勝した。
◇ ◆ ◇
この大会の結果については別掲の通り記事にしたのでこれ以上書かないが、圧倒的に強い壁がグランプリを獲得できず、準々決勝戦で敗退する壁が総合優勝するということが素人には釈然としない。
ただ、なるほどと合点がいくものはある。
現段階では、成績表が公開されていないが、前回の第20回木造耐力壁ジャパンカップの例からすると、チーム匠は、会場での施工時間に作業者数を乗じた人工数に5を乗じた施工費で他を圧している。
総合評価は、耐震点とデザイン点を合わせた数値を材料点、加工点、施工点、解体点、環境点を合わせた数値で割って算出するのだが、チーム匠の施工点は0.734点で、もっとも高かったチームの7.731より一桁小さく、トーナメント優勝したポラス暮し科学研究所の3.188とも大きな差をつけている。次位チームの2.032も大きく引き離している。
この差が今回も総合優勝に大きく作用したということであれば、これはこれで納得できる。職人不足が深刻化する中、いかに人員を減らし、施工時間を削減するかが最大の課題なのではないか。その意味ではチーム匠は称賛に値する。
三井ホームGT「G-WALL HD」
チーム匠がグランプリ 初参加の三井ホームはトーナメント制す 第1回「カベワン」(2018/9/18)
「鷺沼」の再現なるか 大成有楽不動産「オーベル藤が丘」
「オーベル藤が丘」完成予想図
大成有楽不動産「オーベル住吉マスターテラス」に続いて「オーベル藤が丘」を紹介する。駅から2分の閑静な住宅街に立地。人気になった「オーベル鷺沼マスターレジデンス」と同様の売れ行きを見せるかどうかに注目したい。
物件は、東急田園都市線藤が丘駅から徒歩2分、横浜市青葉区藤が丘二丁目に位置する地下2階・地上5階建て全51戸。専有面積は58.35~74.73㎡、価格は未定。竣工予定は2019年7月下旬。設計・監理は陣設計。施工は南海辰村建設。販売予定は10月下旬。
現地は、中層マンションが建ち並ぶ住宅街の一角。敷地は企業の社宅跡地。建物は、傾斜地・敷地形状を生かし、エントランスを地下2階、駐車場入口を2階に設置。歩車分離動線を実現。外壁は重厚感を出す工夫を施している。
プランは、角住戸の「プライバシー重視」(6タイプ)、7.8m以上のワイドスパン「ワイドスパン」(11タイプ)、廊下面積を少なくした「収納充実」(6タイプ)の全23バリエーションを用意。
設備仕様は、人気になった「鷺沼」と同様、オレンジ収納を採用。。キッチン天板はフィオレストーン。
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注目される価格だが、「藤が丘」は各駅停車駅だから、坪単価320万円だった「鷺沼」よりは間違いなく安くなる。同社は坪300万円以上を予定しているようだ。
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それにしても、田園都市線は相対的に価格が高い。昨年、見学した「ドレッセWISEたまプラーザ」は坪400万円近くても売れたし、都内の「二子玉川」は坪500万円が相場になりつつある。一駅先の「青葉台」でも〝駅近〟なら坪300万円をはるかに突破するはずだ。
わが多摩センター駅圏はというと、坪180万円台でも厳しい。藤が丘は渋谷へ、多摩センターは新宿へそれぞれ30分圏なのに、大きな差をつけられている。街のポテンシャルは多摩センターのほうが上回っていると思うのだが…。
なぜ、これほどの差があるのか、その責任の一端は同社にもある。同社は2011年、現在は桜美林大学の施設になっている厚生年金施設「サンピア多摩」の駐車場跡地で「オーベルグランディオ多摩中央公園」358戸を分譲した。多摩中央公園に隣接する一等地のマンションだったにもかかわらず、坪単価は170万円台に抑えられた。
同社が「多摩中央公園」の設備仕様レベルも上げ、もっと高い値段で売っていれば、多摩センターの市場も変わっていたはずだ。
多摩センターは立川や新百合ヶ丘に坪単価にして100万円くらいの差をつけられている。残念。
ヒルトップの社宅跡地 「オレンジラボ」がいい 大成有楽不「鷺沼」(2018/5/8)
東急リバブル 都心のハイグレートマンションの賃貸仲介業に本格参入
東急リバブルは9月27日、昨年7月に開設した港区のハイグレードマンションの仲介に特化した「GRANTACT(グランタクト)」の賃貸仲介事業を10月1日から開始すると発表した。
「GRANTACT」は、港区内(一部渋谷区含む)の大手デベロッパーによる分譲済ハイグレードマンション254棟23,517戸に限定し、エリアと該当物件に精通したスタッフが対応する不動産コンサルティングビジネス。賃貸仲介に本格参入することで、都心エリアでの賃貸仲介のシェア拡大を図る。
「GRANTACT」は、〒106-0032 港区六本木1-4-5 アークヒルズ サウスタワー3F。東京メトロ南北線六本木一丁目駅3番出口直結。営業時間は10:00~18:00(定休日:毎週火曜日・水曜日)。https://www.livable.co.jp/grantact/
東京駅から青山1丁目と同じ距離 公園隣接 大成有楽「オーベル住吉マスターテラス」
「オーベル住吉マスターテラス」完成予想図
大成有楽不動産の「オーベル住吉マスターテラス」と「オーベル藤が丘」を見学した。前者は東京メトロ半蔵門線住吉駅から徒歩3分の全70戸、後者は田園都市線藤が丘駅から徒歩2分の51戸。同社は、メディア向けに2物件のニュース・リリースをほぼ同時期に発信した。
記者は、基本的にこの種の発売ニュースは紹介しない。デベロッパーがマンションを販売するのが主たる業務だ。よほど特殊な物件ならいざ知らず、50戸、70戸の物件をリリースそのまま引き写して記事にする価値はないと思っている。だから、両方とも見学することにした。
まず、「住吉」から。物件は、東京メトロ半蔵門線住吉駅から徒歩3分、江東区住吉一丁目に位置する13階建て全70戸。専有面積は66.60〜75.46㎡、価格は未定だが坪単価は300万円台の前半に落ち着く模様だ。竣工予定は2019年12月上旬。施工は長谷工コーポレーション。
現地は、三方道路の角地。用途地域は準工業地域、商業地域だが、マンション化が進んでおり、嫌悪施設はほとんどない。それどころか、敷地北側は道路を挟んで公園。南側は高層マンションが建っているが、まずまずの環境にある。
建物は西向きが中心。公園が眺められるセットバック住戸はルーフバルコニー付き。歩道上空地の前面には植栽を施し、インターロッキング舗装としている。
住戸プランの基本性能・設備は、二重床・二重天井、フル装備の同社オリジナルオレンジ収納、リビング天井高は2450ミリが標準、食洗機、フィオレストーンキッチン天板、ミストサウナなど。
リリースによると、住吉駅徒歩3 分以内の分譲マンションは16 年ぶりの供給で、5月からの資料請求は想定を上回る約600件に達しているという。分譲は11月の予定。
エントランス(完成予想図)
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リリースを読んで、もう笑うしかなかった。「『田町』『青山一丁目』『豊洲』駅などと同距離の『東京』駅4.5km圏内に位置」とあるではないか。
物件がいかに都心に近いかを同心円で描いて示すのはデベロッパーの常套手段だか、「青山一丁目」と同距離であるのにびっくりした。坪800万、900万円と一緒かと。なるほど。嘘はない。
ややマイナーな「住吉」がどのような位置にあるかをよく伝えている。同社はかつて「勝島」でも同じような広告展開を行って成功している。「品川駅圏のマンション」を前面に打ち出し、大井競馬場や倉庫街としてか知られていなかった「勝島」をマンション化が進む住宅地であることをアピールした。
さて、肝心の価格。同社は「未定」としているが、坪単価は300万円台前半に収まると予想される。街のポテンシャルをどう考えるかだが、「大手町」へ電車で10分圏という利便性を考えると、割安感がある。東京駅を中心とする4.5km圏の主要なエリアは坪400万円以上だ。300万円台は東側エリアしかない。ファミリー向けに受けるかもしれない。
清洲橋を渡れば徒歩3分で中央区アドレスとなる江東区の野村不動産「プラウド清澄白河リバーサイド」を思い出した。
大京 富裕層向けに リノベマンションが体感できる「原宿サロン」開設
「リノエージェントサロン(原宿サロン)」
不動産流通事業を手掛ける大京穴吹不動産とリフォーム事業を展開する大京リフォーム・デザインは9月27日、中古マンションのリノベーションを実際のマンションの一室で体験できるリノベーションショールーム「リノエージェントサロン(原宿サロン)」を渋谷区神宮前に開設し、報道陣に公開した。サロンは顧客向け専用サロンとして活用する。
東京都心のプレミアムマンションの取り扱い強化を目的とするもので、富裕層の嗜好をくすぐるこだわり空間を提供する。両社が連携しワンストップで対応することで、今後の売買・仲介、リフォームの拡大につなげる意向だ。
大京穴吹不動産取締役・大津隆紀氏は、「2012年にリノベーション事業を開始して以来、2018年3月期には1,468戸を供給、累計では約7,000戸まで拡大した。第一弾のサロンは非日常を演出し、新築にも他のリノベにもないオンリーワンの空間を提供する」と語り、大京リフォーム・デザイン取締役の宮澤理樹氏は「いわゆる業者売主のリノベーションマンションはこの数年で数倍にも伸びているが、お客さんのニーズも多様化しており、ワンストップで対応していく」と話した。
原宿サロンは、東京メトロ千代田線明治神宮前駅・JR原宿駅から徒歩9分、渋谷区神宮前2丁目に位置するマンション「ビラ・ビアンカ」の一室。建物は東京オリンピックが開かれた1964年に竣工。専有面積は約64㎡。営業時間は平日10:00~19:00(定休日:火・水曜日)。問い合わせは0120-988-264(本社インフォメーションデスク)。
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そんな時々には、取るに足らない被造物さえ、犬でも鼠でも甲虫でも、いじけた林檎の木でも、丘の上を越えてくねくねと続いていく荷馬車道でも、苔むした小石でも、わたしには、絶世の美女、世にも熱烈な恋人とすごす至福の一夜より、素晴らしいものになるのです。これら口もきけず、場合によっては生き物ですらない被造物は、かくも愛に満ち、愛をまざまざと感じさせながら迫ってくるので、有頂天になったわたしの視界には、生なきものなどなくなってしまいます。何もかもが、この世にある森羅万象が、思い出しうる全てのものが、すっかりと散らかったわたしの思考がふれるあらゆるものが、何か意味をもつかのようになるのです。
フーゴ―・フォン・ホフマンスタール「チャンドス卿の手紙」(1902)早川書房
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なぜ「チャンドス卿の手紙」を引用したかだが、記者の貧しい語彙ではサロンの良さを伝えきれないし、書き出したら止まらないからだ。
サロンは非常によくできている。内装に1,800万円掛けただけの価値は確かにある。
築54年のマンションだから、天井は最大で約2100ミリしかないのを逆手にとって、あるいは開き直って天井のコンクリ壁やダクトをむき出しにし、床をスキップさせて空間をうまく演出している。
記者のお勧めは、ドイツ生まれの95%が金属というメタルコーティングした建具ドアだ。塗装だけで20万円かかるというしろものだが、軽くて美しい。一般的なシート張りのものよりはるかにいい。リフォームはもちろん、分譲マンションに採用したら間違いなくうける。無垢のドアとどれくらいの価格差があるのか。
もう一つはキッチン扉・収納の面材だ。天然石をシート状に加工したものだ。これも値段は分からないが、どこかのマンションのモデルルームでも使用されていた。これもやがて普及するはずだ。
観たいときは観ることができるテレビの存在を隠す鏡面仕上げのデザイン壁もいい。壁面をすっきりさせたい人には支持される。
このほか、ふかふかのウレタン浴槽やミラノ・サローネの最新のトレンドを取り込んだ洗面ボウルやその他のグッズもあった。
だが、しかし注文も一つ。これは何度も書いてきたことだが、あのテーブルに置かれていた造花(フェイク)は絶対ない。富裕層が100円ショップでも買えそうな造花を飾るかといいたい。ナイフもフォークもワインも高価には見えなかった。
ただの飾りだからいいのかもしれないが、最高のパフォーマンスを見せるのがプロだ。1,800万円もかけるのだから、全て本物を揃えるべきだ。什器類や造花などにはホフマンスタールが言うところの「愛」のかけらも感じられなかった。記者がマンションなどの見学でいつもしっかり見るのは「愛」と「美」だ。
「住宅新報」の記事「スルガ銀行は金融機関なのか」に絶句
9月25日付「住宅新報」の1面袖記事に目を奪われた。5段組で見出しには「スルガ銀行は金融機関なのか」とあるではないか。
アパートローンなど個人向け融資とネットバンキング展開で圧倒的な収益力を誇ってきた〝地方銀行の雄〟とも呼ばれてきた同行が、まさにその特異なビジネスモデルに不正があったことから、経営陣5名が責任を取り辞任し、金融庁も調査に乗り出した問題を取り上げたものだ。
住宅新報と言えば、紋付羽織袴の形式ばった記事が多く、この3年間で編集長が2人辞任し、出版部門と新聞部門を切り離し分社化し、元編集長で前論説主幹のH氏は「住宅評論家」として衣替えしたのはともかく、元編集長は定年退職なのか忽然と姿を消し、〝このほど、このほど〟と人を小ばかにした記事のオンパレードに記者は辟易しているのだが、銀行を名指しして〝金融機関なのか〟と、まるでそう呼べないかのような見出しで〝糾弾〟するその英断? に言葉を失った。
かくいう記者もときには激しい口調で罵る記事を書く。例えば〝それでも男か〟と。しかし、これは記者なりの心を込めたエール、勇気付けであって、誰かや何かを為にする記事は書いた覚えは皆無ではないがあまりない。その逆に、「記事をお客さんが読んだらマンションが売れなくなる」と頼まれて取り下げたものがあるくらいだ。だからと言って、記者は誰かのような業界妾には絶対ならない。
住宅新報のスルガの記事は、サブタイトルに「上」とあり、読んだ限りでは、報道されている通り第三者委員会の報告をトレースしたもので、いわば鉈を振り上げた状態だ。次はいきなり「下」として一刀両断に叩き潰す展開にはならず、「中」として不正のあれやこれや、その背景について触れることになるはずで、そのあとに「下」としてどう結論付けるのか、新しい問題が飛び出すのか、記者も興味津々、戦々恐々で次号以下の展開を待とう。
金融庁の処分次第では、融通が利き審査が速いことから不動産業界からも重宝がられてきた同行だけでなく他の金融機関への監視体制が強化され、賃貸市場へ大きな影響を与えるのは必至だ。消費増税どころでないパニックに陥ることだってありうると記者は見ている。ソフトランニングの手はないのか。
積水ハウス 保育園「深川冬木」 キッズデザイン賞 少子化対策担当大臣賞
「ナーサリールーム ベリーベアー深川冬木」遊戯室棟 園庭
9月25日に行われたキッズデザイン協議会「第12回キッズデザイン賞」受賞発表・表彰式で、積水ハウスの街をつなぐ保育園「ナーサリールーム ベリーベアー深川冬木」が優秀賞・少子化対策担当大臣賞を、 ライフスタイル提案「トモイエ 共働きファミリーが暮らす家」が奨励賞・キッズデザイン協議会会長賞をそれぞれ受賞した。同社の受賞は2部門4点で、同賞の創設以来12年連続。
「深川冬木」は、高速道路の高架下の空間を有効活用し、建物配置や外構計画を工夫することで、街との多様な関係が生まれるよう、「地域資源」としての取り込みが評価された。審査員は「高速道路高架沿いの全長180メートルを超える緑地帯を活用し、『街に開く』『自然を感じる』のテーマを、空間環境としても、運用としても見事に実現させている」と評価した。
「トモイエ」は、2009年から展開しているもので、「みんな家事」をコンセプトに「洗濯」「料理」「掃除」を家族みんなで楽しく効率的にこなせるよう間取りや空間、収納、設備の工夫を行っているのが評価された。
同賞は、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つ優れた製品・空間・サービス・活動・研究などを顕彰するもので、この日は、受賞作品252点の中から最優秀賞、優秀賞、奨励賞、特別賞など優秀作品33点が選ばれた。最優秀賞 内閣総理大臣賞は、着脱が容易で、一定の力が加わるとスライダーが外れるYKKのファスナー「QuickFree®」が選出された。
保育室棟 内部
◇ ◆ ◇
「深川冬木」はニュース・リリースで読んだような気がしたが、実物をみようと早速見学した。
保育園は、東西線門前仲町駅から徒歩5分の高架サイドの準工エリア(建ぺい率60%、容積率300%)に位置する約200m×約22mの細長い敷地に重量鉄骨ラーメン構造の2階建て延べ床面積約2,012㎡の保育室棟と、木造平屋建て延べ床面積約290㎡の遊戯室棟から構成されている。完成は2017年3月。園児定員は200名で、運営はネス・コーポレーション。
道路に面する敷地北側には緑地帯を設置し、高架下に面した南側には園庭を配し、フェンスを設けることで地域との緩やかな交流ができるようにしているのが特徴だ。
保育室棟、遊戯室棟とも、内装材には無垢の柱、床材などを多用。玄関・ホールには既存樹のケヤキの高木を取り込んでいる。
保育室棟エントランス
既存樹のケヤキを取り込んだ保育室棟玄関・ホール
◇ ◆ ◇
一昨日(23日)に同社の「江古田の杜」街びらきを取材し、緑の質と量に圧倒されたのだが、今回もけた違いの緑地帯に天にも昇る気持ちになった。
添付した写真を見ていただきたい。道路を挟んだ対面の建物群と何と対照的であるか。記者はこれまで公開空地や緑被率を高めた建築物には容積率を緩和するとともに高さ規制を緩めるべきだと主張してきた。現行の建基法や都市計画法は単体の規制のみで、街のポテンシャル・価値を向上させるという視点が欠落していると思う。総合設計制度ももう少し弾力的に運用すべきだ。
保育園にお願いして、玄関・ホールも見せていただいた。玄関サイドのカウンターには前日(9月24日)が「中秋の名月」であったためか、秋の七草にちなんだススキ、キキョウなどが飾られていた。
皆さんは秋の七草ハギ、キキョウ、クズ、フジバカマ、オミナエシ、オバナ(ススキ)、ナデシコはご存じか。記者は頭文字をとって「おすきなふくは?(お好きな服は?)」と覚えることにしている。オミナエシ(女郎花)はどこにでも生えていたが、今は絶滅危惧種ではないか。
対照的な対面との街並み
「中秋の名月」のお飾り
中学2年・栗田哲くん キッズデザイン協議会会長賞を小中学生として初受賞
栗田哲くん(キッズデザイン賞授賞式で)
キッズデザイン協議会「第12回キッズデザイン賞」記者発表会・表彰式が9月25日行われ、中学2年生の栗田哲くん(13歳)が考案した「食べ残しNOゲーム」(NPO・DeepPeople)が、小中学生個人の受賞としては初となる「キッズデザイン協議会会長賞 奨励賞」を受賞した。
同ゲームは、当時、小学6年生だった栗田君がDeepPeopleの助言を受けながら考案したものを商品化したカードゲームで、プレイヤーが飲食店の店主となり、儲けを出しつつ食べ残しをどう減らすかを競うもの。遊びながら食品ロス問題を考え、その原因や解決法を楽しく学べる。
審査委員は、「プロダクトとしてのクオリティには改善の余地はあるが、実家の飲食店でフィールドワークを行うことで気づいた問題を、その原因と消費者としてとるべき行動までを理解できる教材に仕立て、意志ある事業者がそれを社会デビューさせたプロセスを応援したい」とコメントしている。
「未来価値創造大学校 自分学部 アドベンチャーコース 研究生」という肩書を持つ栗田くんは、大阪市で飲食店を営む栗田太樹・早苗ご夫妻の兄兄姉姉の末っ子。「飲食店を経営する父とDeepPeopleの牧さん(理事長・文彦氏)が知り合いだった縁で、6年生の時から取り組み始めました。店のゴミ箱に捨てられている食べ残しの量にびっくりしたのが、考えるようになったきっかけです。将来? まだはっきり決めていませんが、父のあとを継ぎたい」と喜びを語った。
この日は学校が休みとかで、両親と姉と一緒に上京していた。栗田くんの嫌いな食べ物はピーマンで、好きなものは寿司、ラーメンとか。
「食べ残しNOゲーム」(NPO・DeepPeople)のブース
◇ ◆ ◇
栗田くん、受賞おめでとう。おじさんは、キッズデザイン賞を応援したくて取材してきたが、小中学生個人が初の受賞であることを知り、とても嬉しくなった。
人としてもっと大切な「食」をテーマに、しかも「食品ロス」に真正面から取り組む姿勢に感動すら覚えた。奇しくも、この日の朝日新聞は「食品ロス」の問題を社説で取り上げていた。食べる量と捨てる量が同じだと。
どうしたら改善できるか。むずかしい問題だ。おじさんも分からない。しかし、食べ物を生産する農家や、さらには森林・林業、水産業などにも思いをはせてほしい。食べていくのが大変で、山や田畑がどんどん荒れている。美しい自然や文化も危機的状況にある。
食物を育てるのに欠かせない水だって、われわれはただのように思っているが、世界の科学者は「バーチャル・ウォーター」といって、食物を生産するのにどれだけの水を消費するかを研究している。栗田くんもこの問題に取り組んでほしい。
こんなことを言ったら怒られるかもしれないが、この日、総理大臣賞を受賞した着脱が容易で、外れたほうが安全という考えから商品化されたYKKのファスナー「Quick Free」は結構な商品だとは思う。が、しかし、難儀しながら掛け違いなくボタンを付けられるようにする学習も必要ではないか。「ボタンの掛け違い」は死語になってもいいのか。おじさんは栗田くんのほうに1票を投じる。
さらに言えば、キッズデザイン賞についてもわれわれは考えないといけない。この賞がもてはやされるのは、逆に考えれば、これまであまり考えられてこなかったからではないかと。
記者は大人も子どもも、健康な人もそうでない人も高齢者も、みんなが使いやすいユニバーサルデザイン(UD)の思想が大事だと思っているが…。それぞれ大人の立場があるようだ。
安倍総理は、この日の発表式・表彰式に「日本は、今、少子高齢化という、国難とも呼ぶべき危機に直面しています」「安倍政権は、待機児童の解消や子育て世代の負担の軽減など、未来を見据えた新たな国創りのため、子どもたちに大胆に投資していきます」とメッセージを寄せた。「『働き方改革』を断行し、仕事と子育てを両立できる環境整備も進めていきます」と述べた。
しかし、その一方で「子どもを3人以上産め」とか「LGBTは生産性がない」(栗田くんにはちょっと難しいか)などと平気でしゃべる政治家もいる。子どもを産みたくても産めないひとはいっぱいいる。経済が許さないし、ゆとりある家にも住めない。そうした人たちを思いやる心を持ってほしい。
それにしても、お母さんを5度も孕ませた(失礼)元気なお父さんも立派だが、お母さんはえらい。どんな痛い目をしたかおじさんは男だから分からないが、頭が下がる。
そんな立派なきみのお父さんお母さんがいるのに、どうして「少子高齢化という、国難とも呼ぶべき危機に直面」したのか、安倍総理は他人ごとのように話すのはなぜか。おじさんは4人兄兄姉姉の末っ子だが、少なくとも昭和40年くらいまでは〝子だくさん〟はごく普通で、貧しくても生きられた時代だった。
そして、栗田くん。この日、審査委員長の益田文和氏も触れたように、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs=Sustainable Development Goals)」の視点を忘れずに新たな目標にチャレンジしてほしい。おじさんの記者としてのモットーは「愛」です。人にやさしい、地球環境にやさしい-この視点・モノサシでものを計ると、見えないものが見えてくるのです。頑張れ、栗田くん。
「第12回キッズデザイン賞」記者発表会・表彰式(六本木ヒルズで)
8月の訪日客 前年同月比4.1%増の257万人 累計2,130万人 過去最速2,000万人突破
日本政府観光局(JNTO)は9月19日、2018年8月の訪日外客数は前年同月比4.1%増の257万8千人となり、8月として過去最高を記録したと発表した。8月までの累計は2,130万9千人となり、これまでで最も速いペースで2,000万人を超えた。
新規就航などによる航空路線の拡充に加え、継続的に展開している訪日旅行プロモーションの効果が伸びた要因としている。
一方で、大阪府北部の地震や7月豪雨の影響により、これまで訪日者数の伸びを牽引してきた東アジア市場の一部で訪日需要が抑えられたことが、訪日外客数全体の伸びの鈍化に影響を及ぼした。
市場別では、イタリア、スペインが単月として過去最高を記録したほか、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、ロシアの16市場で8月として過去最高を記録した。