RBA OFFICIAL
 

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総合受付(3階)

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吉田社長

 三菱地所は2月9日、新本社ビル「大手町パークビルディング」のオフィスを報道陣に公開した。吉田淳一社長自らがプレゼンし、社員が仕事中にも関わらず担当者が案内し、劇的にファシリティが向上し、社員の士気が高まったことをアピールした。社員食堂では試食会も行った。

 他のチームメンバーと同様、スタジアムジャンパーに身を包んだ吉田社長は、移転の背景・経緯などについて説明。「オフィスを取り巻く環境の急激な変化を先取りし、われわれ自身がオフィス空間の情報を発信し、働き方を変えたりアイデアを伝える必要性が高まっている」と移転の理由を語った。

 そのため「以前は役員が個室の中に閉じこもり、部長が窓際に君臨していた昔ながらの形状」ではなく「物理的にも心理的にも壁をなくした。新本社のコンセプトであるBorderless!Socializing!from MEC PARK、あらゆる境界をなくし、本当の意味で人と人とが繋がり力が発揮できる空間を実現した」と強調。「AIやIoTを取り込みながら生産性の向上、ビジネスモデル革新、ワークライフバランスの向上、人材の確保などこれまで以上にダイバーシティ、働き方改革を進め、好循環を生み出し、実証実験などを通じて街づくりへと展開していきたい」と力を込めた。

 新しいオフィスは大手町駅に直結。皇居に隣接する29階建て延べ床面積約151,700㎡の3~6階部分で広さは約3,600坪。「大手町ビルヂング」から今年1月5日に移転した。

 全体の面積は約2割狭くなったが、共有スペースは面積ベースで2倍に増やし、オフィス全体の3分の1を占めるように設計。画一的な空間ではなく、社員は、その日の業務スタイルによって好きな場所を選べるグループアドレスを採用。役員個室もなくした。

 平面だけでなく縦方向の交流を生み出すためフロア間の境界をなくしているのも特徴。2カ所に配置した「内部階段」は、蹴上を約15㎝、踏み面を約30㎝確保している。

 制度改革では、従来から実施しているフレックス制度(コアタイムは10時から16時)に加え、テレワーク、仮眠、インターバル勤務制度などを導入。

 ビルのテナントでもあるLiquidとコラボし、指紋によるセキュリティと、日本初の指認証と個人口座を連携した社内カフェテリアで利用できる決済システムも導入。将来、街全体で展開することも視野に入れている。

 パナソニックの協力のもと、役員も含めた社員の社内位置情報システムも採用。誰が、どこにいるかも把握でき、カフェテリアや共用スペースの混雑度も一目で確認できる。

 3階の総合受付では、日立製作所のサービス支援ロボット「EMIEW3」が来客者を会議室まで案内する。

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右から吉田社長、久保氏、竹本氏

⑩業務はもちろん打ち合わせや食事にも使えるラウンジ.jpg
多目的に利用できるラウンジ

④オープンスペースでのミーティング.jpg ⑤グループアドレスの執務空間.jpg
職務スペース

◇      ◆     ◇

 昨年2月、大手町パークビルが竣工したとき、本社をここに移転する話を聞いていた。どれほど素晴らしいビルであるかは、添付した記事を参照していただきたい。

 他の業界、会社のことは知らないが、社員が仕事中の本丸オフィスを報道陣に公開する会社はあるのだろうか。さすがに社長室の位置は公表せず、皇居方面や仕事中の社員の写真は不可だったが、記者が知る社員から声を掛けられる場面もあり、その鷹揚さに驚愕した。移転の効果がてき面であることは、様々な数字・データが証明している。

 「大手町ビル他」では約4,500坪(うち共用スペース約10%)が7フロアに分散していたが、「大手町パークビル」では約3,600坪(同約30坪)が4フロアに集約された。この結果、紙出力枚数は約50%、キャビネ本数は約70%削減されたという。

 本社移転に伴うファシリティに対する社員アンケート結果がまたすごい。90%の社員の満足度がアップし、88%が「偶発的なコミュニケーションが増えた」と答え、86%が「企業風土は変わる」と回答。「会議は効率化された」と思う人は89%に達し、「ペーパーストックの取り組みにより業務は効率化されたと思う」人は65%にのぼっている。

 慣れないためか「上司とのコミュニケーションがとりにくくなった」とする回答が27%あった。これについて久保人司総務部長は「問題だとはとらえていない。メンター制を向上させればカバーできる」と話した。

 機能が一新され、社員の士気が高まったことを、執務中の湯浅哲生常務が端的に語った。

 「これまではここより1.5倍くらい広い(6畳大くらいか)の個室で、今回はやや狭くなった(4畳大くらいか)が、壁が取っ払われてスタッフの声が聞こえ、お互いの交流も見えるようになり〝開放〟された印象。機密漏洩? 大事な話は防音室に移るから問題ない」

 社員は上司に近づこうが避けようが、きれいな女性(イケメンの男性)の近くに座ろうと自由だというから驚きだ。「わたし(記者)のような嫌われ者は誰も隣に座らないのではないか」と質問したら、総務部ユニットリーダー兼ファシリティマネジメント室長・竹本晋氏は「大丈夫。席が余るような配置にはしていない」と話した。

 サービス支援ロボット「EMIEW3」は、記者が大きな声を出したためか、西日が目に入ったためか機嫌を損ね、ガラスの壁に激突しそうになり、スタッフが慌てて制する場面もあった。

 「内部階段」を報道陣も3階から6階まで一挙に駆け上がったが、音を上げた記者はいなかったはずだ。

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湯浅常務

⑧文房具からスナック、飲料まで手に入るカウンター.jpg
「PERCH」

⑪フロア間をつなぐ内部階段.jpg ⑭指紋認証_認証の様子.jpg
内部階段(左)と指紋認証セキュリティ

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 2時間をかけた盛り沢山のプレゼンやオフィス内覧を終えてから、社員食堂「SPARKLE」での試食会が行われた。

 記者はタニタ社員食堂を利用したことがないが、ホテル・旅館のバイキングや役所、図書館、大学の食堂などは何度も利用している。そのレベルはわかっている。「SPARKLE」を運営するノンビの取締役ケータリング事業部事業部長・荒井茂太氏が「ホテルに負けない」と話したときも、半信半疑で聞いていた。

 しかし、朝から何も食べていなかったし、物は試しだ。供された「チェリートマト」10個くらいとサラダを食べた。トマトだけは自信があるからだ。カロリーを抑え、血液と同じ記事をさらさらと書ける効果もあると信じているので、ほとんど毎日食べている。「キャベツ500円は高い」とぼやくかみさんとも、トマトだけは「1個200円の価値はある」と意見が一致する。

 そんな口が悪いが舌が肥えた記者が言うのだから間違いない。この愛知県産のチェリートマトは最高に美味しい。名前の通り佐藤錦の新種かとも思ったほどだ。荒井氏の「ホテルに負けない」言葉に嘘はない。アメーラと比べるとやや酸味に欠けるが、甘さは抜群だ。

 ここでは朝の7時から8時半までは無料で朝食が食べられる。毎日100食を用意しているが、残ることはないという。

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「SPARKLE」

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チェリートマト(中央)

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荒井氏

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 注文が1つ。各フロアに設置された「止まり木」を意味する「PERCH」。広さ10畳大はあっただろうか。ふんだんに本物の木が使われ、各種飲料やスナックも用意されていて素晴らしいスペースだ。ところが、本物の木にまとわりついている観葉植物は一目見てフェイク(まがいもの)だと分かった。これは興ざめ。なくすか本物を用いるべきだ。社員の諸々の作品を展示するギャラリーもいいのではないか。

 お願いも一つ。勤務中のアルコール禁止について。トイレや仮眠室、シャワー室に閉じこもり、タバコを吸いに何度も席をはずそうと、メタボの社員が何を食べようが何のお咎めがない(60分以上勤務エリアから外れると外出扱いになるという)のに、職務中は酒を飲んではならないという社内規則があるという。

 これが解せない。記者の個人的見解を言わせていただければ、砂糖やらその他の怪しげな甘味料にまみれたスナック、飲料のほうが危険だと思う。「酒は百薬の長」というではないか。

 これこそ実証実験の対象にして、社会に情報を発信していただきたい。酒を少し飲んだからと言って生産性が落ちるとは思えない。逆に能率を上げる潤滑油か触媒のようなものだ。

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靴を脱いでくつろげる小上がりスペース

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 本社では約800名が勤務するというから単純に3,600坪で割ると一人当たり勤務スペースは約4.5坪になる。ビルの賃料は公開されていないが、まず坪45,000円は下らない。同社が賃借するとすれば一人当たり20万円だ。効果が現れる来年度の決算が楽しみだ。RBA野球部は大丈夫か。

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サービス支援ロボット「EMIEW3」(ちょっと西日がきついよ) 

皇居に隣接 最高級Sクラスの「大手町パークビルディング」竣工(2017/2/14)

 小田急不動産は2月9日、取締役・金子一郎氏が代表取締役社長に就任すると発表した。代表取締役・雪竹正英氏は退任する。いずれも4月1日付。

 金子氏は1955年生まれ62歳。神奈川県出身。1979年3月、慶応義塾大学法学部卒、同年4月、小田急電鉄入社。広報部長、取締役執行役員総務部長などを経て現在、常務取締役執行役員生活創造事業本部長。同社には2012年、監査役に就任、2016年6月から取締役を務める。

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「LIFORK 大手町」

 NTT都市開発は2月9日、新たなワークスタイル&ライフスタイルを実現するシェアオフィス事業「LIFORK(リフォーク)」を立ち上げ、同社の旗艦ビル「大手町ファースト スクエア」と「秋葉原UDX」内に「LIFORK 大手町」「LIFORK 秋葉原」を4月にオープンし、施設内に企業主導型保育園「ワイナKids 保育園」を順次開園すると発表した。

 「LIFORK」は、多様な働き方が浸透する中、一人ひとりがより自由に、スマートに、場所・時間を選び、自分らしく働き、そして自分らしく人生を過ごすことができるようサポートする。

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 記者が勤務する丸の内北口ビルの2階にはポピンズが運営する東京都の第1号「コンソーシアム型」事業所内保育施設「ポピンズ ナーサリースクール丸の内」が入居している。

朝夕、小さいお子さん連れのお父さんやお母さんを見かける。施設の中に入ったことはないが、他のポピンズの保育施設は見たことがある。

 「育・職近接」は結構なことだ。街とは、赤ちゃんも子どもも大人も、金持ちも貧乏人も、いろいろな階層の人が群れて住むのが本来の姿だ。子どもを抱えた会社員の姿を東京のど真ん中で見ることができると、とても幸せな気分になれる。

 問題は朝夕のラッシュだ。電車が混んでいるときは一つ乗り過ごすことになるのだろうが、そんなことをしていたらいつまでたっても乗れない。「女性専用」もいいが、父親でも母親でも乗車できる「親子専用」車両も設けるべきだ。あとは駅のバリアフリー化だ。小さなお子さんをバギーカーに乗せた若い女性が、エレベータ・エスカレータがない駅の階段前で立ち往生しているのを見たことがある。(手伝わない記者がいた)

 わが国はユニバーサルデザインの視点が決定的に欠けている。

 

 リンナイは2月8日、世界の共働き夫婦の家事事情を探るため、日本(東京)、共働き夫婦が少ない韓国(ソウル)、ナニー(乳母)文化が浸透しているアメリカ(ニューヨーク)、共働きが主流のドイツ、ワーク・ライフ・バランス先進国であるデンマーク5カ国の30~49歳の男女計500名を対象に「共働き」に関する意識調査を実施した。立命館大学産業社会学部教授・筒井淳也氏のコメント付き。

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 プレース・リリースを興味深く読んだ。諸外国と比べ日本の男性は家事労働に参加しない・消極的であることはこれまでも度々指摘されていることだが、改めて報告されると悲しくなる。

 労働時間が9.19時間と5カ国のなかでもっとも長く、夫婦の時間が韓国の1.5時間を下回る1.31時間だ。労働時間はもっとも少ないアメリカの6.68時間より2.51時間長く、夫婦の時間はトップのデンマークの3.19時間より1.88時間も短い。

 家事を男女が分担している比率も、わが国は5か国平均の79.4%を下回る56.0%だ。配偶者(パートナー)の家事に対する協力度を100点満点で問う項目では、日本男性の女性に対する点数は79.9%と5カ国でもっとも高い一方で、女性の男性に対する評点は55.84しかない。アメリカはともに60%台の後半で、差がない。

 悲しい調査結果はまだある。家事スキルを問う項目では、わが国は男女とも自分の評点も相手からの評価も最下位だ。

 家事効率化のための工夫では、アメリカは「機能性の高い家電を使う」が75.0%に達しているのに、日本は38.0%しかなく、「余分なものは買わない」が52.0%となっている。

 これが重要なのだが、配偶者(パートナー)を好きかという設問では、家事を分担しているアメリカでは95.7%が好きと答え、わが国は家事分担しているほうでも67.9%しかなく、分担していないほうは40.9%(韓国も悲惨で30.8%)と半数以上が「好き」ではないと回答している。

 また、家政婦やベビーシッターの利用については、アメリカは61.4%が普段利用しており、「利用したことがある」を合わせると8割以上に達する。わが国は1割に過ぎない。

 育児休暇の取得率も、アメリカの男性は87.8%が利用した経験があるのに、日本の男性は9.7%しかない。一方で、女性の利用度はわが国がもっとも高い61.5%となっている。

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 記者は主夫を約10年間やっているので、家事労働について書こうと思えばいくらでも書ける。また、一番大事な「愛」「ハグ」が欠けていたのが子育てに失敗した原因であることも承知しており、忸怩たる思いがこみ上げてくる。後の祭りだ。

 ここでは最小限にとどめる。まず「夫婦の時間」。皆さんはこの夫婦の時間をどのように考えるか。調査ではまったく触れられていない。

 記者などは、外で結構しゃべるので家ではあまりしゃべらない。野球の話ならいいが、政治やらもろもろの社会的事象、事件などについてしゃべるとボロが出るからだ。「あなたは変人」としか返ってこない。女性、とくに若い女性に関することも禁句だ。あらぬ疑いをかけられる。

 わが国には糟糠の妻(糟糠の夫はないが「玉の輿」「逆玉」はある)という言葉がある。まさに空気のように何も話さないでも、わが国の男性はみんな配偶者(パートナー)を口に出さずとも「愛している」と思う。これは希望的観測が過ぎるか。

 「夫婦の時間」を「夫婦の会話」と解釈すれば、デンマークは3.19時間も本当にしゃべりあっているのだろうか。白夜もあるからなのか。子どもがいればまず学校に行くまでの朝の時間と、子どもが自室にこもるか寝るまでの時間は「夫婦の時間」にならない。そうなると、文字通り夫婦だけの時間で3時間を確保するとなると、夜中から翌日の1時過ぎだ(川の字に寝たら夫婦の時間など皆無だ)。それでも睡眠時間は6.71時間だから、起きるのは8時になる。これに労働時間7.64時間、家事労働1.81時間(分担もあるが)などを差し引くと残りは4.65時間。これが独りの時間ということなのか。通勤時間はどうなのか、食事の時間はどうか。

 気になるのは夫婦交合の時間だ。これは「夫婦の時間」に入るのか入らないのか。同じ部屋に寝るのは入るのか入らないのか、同床異夢はどう判断するのか、これこそ生か死か死活問題だ。所詮、アンケートなどというものは当てにできないということか。

 筒井氏のコメントについて。筒井氏は「最も重要なことは、完璧な家事をしない・求めない、ということです。効率化の最優先事項は『必要度の低い作業を省く』ということです。…男性も女性も、家事の要求水準をもっと下げましょう。『洗濯物を干すときは、完全にそろえて並べる』『カーペットの上の髪の毛一本までとらないと我慢ならない』『ガスレンジを使ったら、必ず毎度拭き上げる』。こんな家事の品質は、専業主婦家庭か、あるいはお手伝いさんのいる家庭でないと求めるのは難しい…共働き夫婦では『毎日やっていた作業を2~3日に一度にする』『(食洗機や掃除ロボットの利用など)自動化できるところは、初期費用が多少かかっても自動化する』といった割り切りは、『仕方がない』というよりも『必須』なのです」と指摘する。

 同感! 洗濯物は乾かすのが目的だから干し方などどうでもよい。たたむのも同じ。干したままの形でいいではないか。掃除などしなくても死にはしない。まとめてやればいい。布団のシーツなど多少汚れていたっていいではないか。バスタオルは夫婦一緒でいい(こんなことを言うから嫌われる)。食洗機は必須家電だ。家事労働の価値をお金に換算したことがある。月30万円とはじいた。安月給のサラリーマンは家政婦だって雇えない。全ての女性に感謝!

いまどきの30代夫、完璧に家事こなすのは3割 旭化成ホームズが調査(2014/7/12)

 

 

 

 書かなきゃならない原稿が5本あるのだが、読んでしまったからにはこちらを優先せざるを得ない。先週も書いた住宅新報のコラム「不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽」だ。前回は1月23日号で、今回は2月6日号だ。

 コラム冒頭には「率直に言って、障害があって生活保護を受けている入居者は大きく3通りに分けられると思う。高齢で身寄りもなく働くこともできない人、身体に障害のある人、そして精神疾患で他の人と十分なコミュニケーションが取れずに働けない人」とあった。

 これだけ読んで、コラム氏の言葉を借りれば「率直に言って、頭にきた」。生活保護制度については疎いが、これは憲法で保障された国民の基本的人権を保障するための制度であり、生活困窮者になった経緯、例えば歳を取ったとか身体に障害があるとか犯罪歴があるとかは問われないはずだ。コラム氏は知ってか知らずか、高齢者、あるいは障がい者=生活保護者であるかのように誘導する。これは極めて偏向した思想だ。

 まあ、コラム氏がどのような思想の持主であろうとどうでもいいことだが、次の、おそらく本人が一番言いたいことなのだろうが、ここがまた問題だ。

 要約すると、「精神疾患ということで生活保護を受けている」入居者から「会社に鍵を忘れてきたみたいでどうすればいいか」との連絡を受けた。コラム氏は「隣に住んでいる家主さんがマスターキーをお持ちだから、それを借りてください」と答えた。すると入居者は「入居してから私が鍵を替えていて、家主さんにはマスターキーを渡していない」と言った。コラム氏は「そんな入居者は初めてである」と書く。

 入居者が家主の承諾なしで鍵を交換する話は聞いたことがあるが、コラム氏は初めてだったようだ。それよりも「精神疾患ということで生活保護を受けている」と、ここでも精神疾患=生活保護と結び付けている。

 改めて言うが、生活保護の申請理由は、働けない理由は説明しなければならないのだろうが、今現在お金があるとか資産があるとか働く意欲があるとかなどのほうが重要視されるはずだ。

 コラム氏もご存じのはずだ。「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする」法律(障害者差別解消法)が施行されて5年が経過する。なにを書こうと勝手だろうが、差別を助長するような発言は慎んだほうがいい。

 記者などは、「障害」は小学校の運動会や競馬のレースのようにまっとうに走る(生きる)のを阻む社会的制度のほうがむしろ大きいのではないかとも考える。

 「障害」は戦前までは「障碍」と書いた。「碍」はストレートに「害」に結びつく言葉ではなかったはずだし、「害」と「者」をくっつけたのがいけなかった。日本碍子は昭和61年から社名表記を日本ガイシに変更した。「日本害子」では具合が悪いからだろう。

 同じように「障害者」も変更してはどうか。一から出直すつもりで、英語は嫌いだが、それもいいかも。競馬、ゴルフは「ハンデキャップ戦」がたくさんある。ゴールに一緒にたどり着けるように強い馬には負担重量を課す。これって合理的ではないか。

 断っておくが、記者はこのコラムを読むのは2回目だ。今回で通算438回目だというから、これまで何を書いてきたか想像するだけで空恐ろしくなる。業界に問題があるのか、新報のチェックが甘いのか…。

本末転倒 傲慢なのは賃貸会社社長のコラム氏ではないか 「住宅新報」の記事(2018/1/29)

ポラス、障がい者中心の新会社設立 越谷市初の特例子会社(2015/3/30)

 

 

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「仮称)銀座2丁目プロジェクト」

 東京建物は2月7日、都市型ホテル「仮称)銀座2丁目プロジェクト」と「(仮称)大宮駅西口ホテルプロジェクト」のホテルオペレーターがそれぞれ決定したと発表した。

 「銀座」は、地下鉄有楽町線銀座一丁目駅から徒歩1分の敷地面積約480㎡、16階建て延床面積約5,700㎡の全182室。2018年秋に開業予定。ホテルオペレーターは、国内47カ所、海外1カ所、総計7,304室の運営実績がある「ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ」が決定した。

 「大宮」は、大宮駅から徒歩6分の敷地面積約2,250㎡、14階建て延床面積約10,100㎡の全321室。2019年夏に開業予定。ホテルオペレーターは、「カンデオ ホテルズ東京六本木」を含め全国17カ所でホテルを運営している「カンデオ・ホスピタリティ・ マネジメント」が予定されている。

 同社はこのところ都市型ホテル事業に力を入れており、昨年10月に開業した「カンデオホテルズ東京六本木」(149室)のほか、2018年秋開業予定の「(仮称)ホテルズグレイスリー浅草」(125室)、2019年春開業予定の「(仮称)ザ・ビー大阪心斎橋」(309室)の工事を進めている。

 立地によりホテルオペレーター・複合用途をベストミックスし、事業性の最大化を企図しているのが特徴。

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「(仮称)大宮駅西口ホテルプロジェクト」

 旧木下工務店の創業社長で日本ハウスビルダー協会理事長、日本住宅建設産業協会(現全国住宅産業協会)の理事長を務めた木下工業会長・木下長志(きのした・ながし)氏が1月11日、急性心不全のため死去したとWeb業界紙「R.E.port」が報じた。享年92歳。

 2月28日12時より京王プラザホテルで「お別れ会」が開催される。

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 訃報に接したとき、しばし言葉を失った。あれほどの功績を残した方が死亡し1カ月が経つまでなぜ報じられなかったのかということだ。地元の中日新聞などはすぐに訃報を伝えている。

 と同時に、昭和50年代から60年代にかけた建売住宅業界がもっとも輝いた時代がそれこそ走馬灯のようによみがえった。

 いま手元に、前職の「週刊住宅」の記者時代に書いたバブルが崩壊後の「週刊住宅」平成4年3月19日号がある。首都圏マンションと建売住宅の同年2月の販売動向を伝えるもので、「マンション市場に〝春一番〟」の大見出しと「供給増え、郊外の売れ行き回復」とのサブタイトルが付いている。

 建売住宅は46物件717戸が供給され、月内に494戸が成約となり月間契約率は69.4%となっている(マンションの月間契約率は64.4%)。木下工務店は「オークきおろしヴィレッジ」15期10戸を最多価格帯4,900万円台で販売し、最高12倍、平均4.2倍で即日完売したとある。

 このほか、三井不動産、三菱地所、西武不動産、積水ハウス、大和ハウス工業、ミサワホーム、中央住宅、平和不動産、京成電鉄、スターツなどのほか日本新都市開発、エルカクエイ、秋田県木造住宅などの懐かしいデベロッパーの名前もある。

 記者は約20年間、このマンションと建売住宅の販売動向調査を続けた。「〇〇(調査機関)の調査によれば」と他人のふんどしで相撲を取りたくなかったからだ。自分こそが情報の発信者という無分別というか若気の至りというか、驕りもあったと思う。

 なぜ、この記事を持ち出したかといえば、このように毎月1回、マンションばかりでなく建売住宅の販売動向を記事にしていたことを、当時、〝建売住宅の雄〟の地位を確立した木下社長は評価してくださった。「他紙は全然市場を伝えない」と。

 建売住宅は供給物件を捕捉するのが難しく、今現在も詳細なデータはどこも持ち合わせていないはずだ。

 木下社長を好きだった理由はほかにもある。長野県の農村(現在は飯田市)の出身だったからだ。三重県の寒村出身の記者は若いとき「農村文学」に夢中になり、信州を舞台にした小説なども片っ端から読んだ。戦前戦後もずっと国の犠牲になり搾り取られたにも関わらず、教育に熱心(そうせざるを得なかった事情があるのだろうが)で、いかがわしい店舗を認めずギャンブル(競馬、競輪、競艇がないのは長野くらい)もご法度の、記者とは真逆のまじめな県民性に敬意を表してきた。

 戦後の小説家ではやはり長野県出身の丸山健二氏こそが他社の追随を許さない最高峰で、ノーベル文学賞ものだと信じている(しかし、氏の小説を海外向けに翻訳できる人もまずいない。言外の意味を伝えるのは困難)。

 木下氏には、10年くらい前に日住協の会合でお会いしたのが最後だった。「いつでもどうぞ」と長野の取材を快く承諾されたのに行かなかったのが悔やまれる。

 92歳といえば大往生だろうと自分を納得させるしかない。長生きされたのは一般庶民に質の高い住宅を供給しようという高い信念・哲学を掲げ、本社があった住友ビルの10数階のオフィスまでエレベータを使わず階段を上り下りするなど身体を鍛えてきたからだと思う。

 どんどん昭和が消えていく。木下さん、安らかにお眠りください。

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「パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー ウエスト」

 三井不動産は2月6日、子育て世代応援型の大規模賃貸マンション「パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー ウエスト」のプレス説明会・内覧会を行った。

 物件は、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅から徒歩3分、柏市若柴の柏の葉キャンパスシティ内に位置する36階建て全491戸。間取りは1K~3LDK(26.28~89.45㎡)。賃料はDINKS世帯向けの2LDKタイプで坪単価10,000円前後(管理費込)。施工は熊谷組。デザイン監修は光井純&アソシエーツ建築設計事務所。建物は2018年1月に竣工済み。近く入居が始まる。

 建物は免震の分譲仕様で、365日無休で夜間・休日診療を行う小児科クリニックが入居するほか、天然温泉、スタディルーム、フィットネス、ワインセラーなどの共用施設が付き、病児も受け入れ、夜間保育も実施し、学校や塾への送迎も行う認可外保育園が入居する。

 同社の柏の葉街づくり推進部部長・加藤智康氏は「柏の葉キャンパスでは環境共生、健康長寿、新産業創造の3つをテーマとした街づくり(=スマートシティ)を進めているが、今回の賃貸マンションでは社会課題になっている子育て支援について解決策を提案した。このような物件は〝わが国初〟と言いたかったが、データがなく言い切れなかった」と話した。

 募集は昨年末から開始しており、いまのところ申し込みは数件にとどまっているという。至れり尽くせりの充実ぶりに見学者からは歓声やらため息やらが漏れた。

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エントランス(左)とコンシェルジュカウンター

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 大規模賃貸マンションの見学は10年前の「芝浦アイランド・エアタワー」以来だ。「芝浦」は平均月額賃料が坪14,200円で、億ション仕様だった(今の億ション仕様とは比べものにならないほどレベルが高かった)。

 なので、単純比較はできないが、至れり尽くせりの子育て施設には唖然とした。レンタブル比は70%ということからもケタ違いの住宅・施設であることが分かる。その一つひとつを書き出せば400字原稿用紙で5枚くらいに達しそうなので最小限にとどめる。

 まず、各住戸のプラン。見学した間取りは47㎡(管理費含む賃料は157,000円)、59㎡(同193,000円)、70㎡(同212,000円)で、いずれもワイドスパン。70㎡のプランは、母親(あるいは父親)が乳児と一緒に寝られるようなベビーベッド付きの8畳大の洋室と、夜泣きに悩まされないでぐっすり眠ることができる4.6畳大の洋室が設けられていた(記者などはいつも川の字に寝て、夜中に飛び起きて、哺乳瓶を煮沸し、人肌まで冷やすのが日課だった。おしめはアイロンがけまでしたことがある)。

 シニア入居を想定した59㎡もよくできていた。設備仕様レベルは〝パークホームズ〟よりやや低いと見た。

 共用施設では、やはり一度にそれぞれ約30名が収容できる男湯・女湯の天然温泉がいい。朝の6時から10時まで、午後の2時から夜中の1時まで利用できる(忙しい主婦は夜10時まででは入れないとの声あり)。以前は温泉付きの分譲マンションがかなり供給されたが、最近はコスト・維持費がかさむためかほとんどなくなった。

 ワインセラーは飲む質(金額)と量にもよるが、35本収納で月額5,000円は高いか安いかは不明(記者なら数本分の金額。昔、数万円もしそうなワインを貰い、いつか飲もうと大事にキッチンの収納にしまい込んだまま忘れてしまい、いざ飲もうと思ったらコルクが壊れ飲みそこなった苦い経験あり)。

 3階のワンフロアに集約された保育施設は、これまで見た施設とあまり変わらなかったが、7:00~22:00(7:00~8:00、19:00~22:00は予約制)の保育時間、病児保育(記者はタクシーを呼んで1万円くらいかけ義妹にあずけたことが何度もあった)、14:00~22:00(19:00~22:00は予約制)の学童保育、階下でこどもを遊ばせ上階で仕事などができる「チコル☆ワーク」(記者は子どもをスイミングに通わせたときは、喫茶店に入って本を読む時間にしていた)、予約制で帰宅時に受け取り、そのまま食卓に並べられる総菜サービスの「チコル☆デリカ」などはとてもいいと思った。

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「チコル☆保育園」

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「チコル☆パーク」(左)と「チコル☆ワーク」

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 いいことづくしだが-地獄の沙汰も金次第、やはり先立つものが心配だ。一緒に見学していた3人の子どもがいるという女性記者は「全てふっくるめて30万円はかかるわよ」とつぶやいた。

 なるほど。保育園「チロル☆保育園」はマンション入居者を優先して受け入れることなどから「認可外」なので入園金は70,000円(3歳児以上)~100,000円(0歳児)と高く、学童向けの「チコル☆アフタースクール」は週2プランでも20,000~30,000円だし、多目的に利用できる「チコル☆シェア」も60分で平日は1時間3,500円かかる。

 2012年に発表された2050年の未来像をうたい上げた「環境未来都市提案書」には、「柏の葉キャンパスの子供たちは、語学ばかりでなく国際的なリーダーシップの取れる人材として育ち、臆することなく世界へと飛躍し活躍する者が多いため、そのような環境を求めて、世界各国から移住してくる家庭も多い。また彼らはやがて柏の葉キャンパスの地に戻り、新たに若者を育てるなど、スパイラルアップの人材育成環境が根付いている」とある。こうした子どもたちを育てるにはお金もかかるということか。

 「チコル☆保育園」を運営するのは千葉県柏市・松戸市・流山市を中心に保育・病児保育事業を展開するマザープラネットで、藪本敦弘社長によると「流山市も柏市も機児童は解消されていない」そうだ。

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天然温泉(女湯)

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 他にも考えさせられたことがある。一つは「認可外保育」という言葉だ。この種の法律言葉は「特別養護」「有料(優良ではない)老人ホーム」「サービス付き高齢者向け」「後期高齢者」「生活保護」などもあるが、よくよく考えると訳が分からない。法律の枠外だと〝劣悪〟をイメージさせるが、今回の保育園でも法律の規制が先進性、自主性を阻んでいることがたくさんあることを学んだ。

 一方で、子育て支援のニーズの高まりの中で、当の「保育士」などの働き方改革はどうなるのだろうと心配もした。

 もう一つは、前出の加藤氏は「われわれは女性と男性を区別・差別しているわけではない」と否定したが、「仕事と子育ての両立」は、女性のみを念頭に置き、かつ対象にして論じているのではないかということだ。

 主夫を約10年間やったことがある記者の経験からして、男性こそ「仕事と子育て・家事の両立」を目指さないと問題は全然解決しない。時短は言うまでもなく有休、フレックス、テレワーク、みなし労働制などを効果的に運用して、働く女性に過度の負担がかからないようにすべきだ。

 さらにもう一つ。「育・住近接」について。この言葉はリクルートがつくったものだが、似たようなものでは積水ハウスなどが取り組む「育・住・医」がテーマの「江古田の杜」がある。昔は「職・住近接」が流行った。目指すべきは「育・職・住近接」だ。

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風除室の壁面緑化(本物とフェイクを使い分けてある。風除室に本物の壁面緑化を施すのは立派だが、どうしてフェイクと併用するのか、これがよくわからない)

賃貸マンションの概念を変える「芝浦アイランド・エアタワー」(2007/3/8)

「柏の葉」の「環境未来都市」 涙が出るほど嬉しい提案書(2012/2/13)

 

 

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第5回「多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウム」(パルテノン多摩で)

 多摩市は2月3日、第5回「多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウム」を開催した。関係者ら約160名が参加した。

 3部構成で、第1部では多摩市ニュータウン再生推進会議 職務代理者の西浦定継氏(明星大学教授)が「諏訪・永山まちづくり計画について」及び「PDCAサイクルについて」報告し、第2部ではカルチャースタディーズ研究所の三浦展氏が「2040年の社会をデザインする~郊外を脱して、本当の街へ~」と題する基調講演を行い、第3部では、同会議委員長の上野淳氏(首都大学東京学長)がコーディネーターを務め、西浦氏、三浦氏、市民委員の松原和男氏と井上亮氏、阿部裕之多摩市長がパネリストとなって座談会を行った。

 開会の挨拶を行った阿部市長は、小田急線が2018年の複々線化の完成により利便性が高まり、京王線も座席指定の「京王ライナー」を2月22日から運行することを受け、「多摩ニュータウンの再生を後押しするもので大変うれしい。多摩市の健康寿命は男性が83歳、女性が86歳で東京トップ。小学校での英語教育を強化するなど学びの場として、また緑の環境も整っている」とし、座談会では今後は大学やUR都市機構などとの連携を強化し、シェアハウス、海外留学生の受け入れ、女性が安心して住めるネットワークを構築し、「他の街に勝つとか負けるとかではなく、自然に選択され浮上する街の取り組みを強化する」などと述べた。

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阿部市長

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 再生会議に期待するからこその苦言を以下に呈したい。

 まず、気になるのが参加者の少なさだ。記者も第3回まで取材しているが、ほぼ満席の250~300名が集まっていた。第4回は都合で傍聴しなかったが、今回は空席が目立ち、第3回の半数の約160名(主催者発表)しかいなかった。報道陣も記者を含めて2~3人という少なさだ。

 西浦氏も話したように、諏訪・永山などの再生プロジェクトは進展がみられないからかもしれないが、当初のあの熱気はどこに行ったのか。

 ここで、「公・民・学」が連携して壮大な次世代型都市づくりが進められている「柏の葉スマートシティ」と比較しても詮ないことだが、多摩NTには再生のエンジンとなる民(デベロッパー)がいないのが最大の欠点だ。

 次に講演者の人選。シンポジウムの第1部で西浦氏は「わたしも三浦さんの話を聞きに来た」と話した。シンポジウムの終わりには副市長の永尾俊文氏も「目からうろこ」と三浦氏を持ち上げた。これは外交辞令お世辞だと思うが、もし本心なら「会議」のあり方そのものが問われる。記者もそうだが、参加者はみんな「会議」のメンバーが何を話すか聞きたかったはずだ。

 三浦氏の招へいは「三浦さんの本はいつも読んでいる」阿部市長直々の口利きのようだ。パネリストも含め参加者は「三浦さんの話が面白かった」と口々に語ったように満足されたのだろう。

 しかし、記者は首をかしげざるを得ない。三浦氏は本人もしゃべったように俗耳に入りやすい「(面白い)情報を売るのが仕事」だ。独自の分析はあるが、あれやこれやのデータを寄せ集め、あちこちの「成功事例」をかき集め、どこでもできるかのように論じる、所詮は講釈師といっては失礼か。第1回目のシンポでは「多摩ニュータウンの魅力を発信していく」ことで合意に達したのではなかったか。面白くて人を集めるのが目的であれば落語家か芸能人でもいい。

 いま「会議」に求められているのは、できることからすぐに手を付け実践することだ。人選にも事欠かないはずだ。地元にしっかり根を張り活動している団体・個人はたくさんいる。そうした人たちの悩み苦労をじかに聞くほうが参考になる。

 会議の市民委員でもある松原和男氏が「働く女性に参加してほしかった」「主要プロジェクトは見えてきたが、果たして市民にとって身近なものか。やや違う気もする。もっと市民の中に入っていくべき」と語り、同じ市民委員の井上亮氏も「見栄えだけでなくシェアしたりかけ合わせたり、無駄を省くなどしたりする四則演算が大事なことを学んだ。魅力的な街は100人いれば100通りのイメージがあるはず。会議の回数が増えるごとに方向性が見え、会場が満員になるようにしたい」と感想を述べた。

 その通りではないか。前回もそうだったようだが、あれこれの雑誌が垂れ流す根拠があいまいな「住みたい街」やら「住んでみたい街」「働く女性が魅力の街」「住みよさランキング」などに多摩ニュータウンが入っていなくとも、市民のほとんどは「それがどうした」と答えるはずだ。

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左から三浦氏、松原氏、井上氏

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 かなり批判的なことを書いたが、うれしくなる、なるほどと得心する発言もあった。

 第3部の座談会でコーディネーターを務めた多摩ニュータウンに住む首都大学東京の学長・上野淳氏か「多摩ニュータウンは郊外の街のチャンピオンとして生き残る。人材は豊富だし何よりも美しい緑、自然、オープンスペースがある。もし多摩ニュータウンがダメになるときは、日本全体が普遍的にダメになるということだ」と発した。

 これを少し補足する。4年前、都庁で行われた首都大学東京の「リーディングプロジェクト最終成果報告会」を取材したとき、「上野氏は多摩ニュータウンの賦活について、『世界的に稀有な事例』である公園・緑地をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークや歩車分離の街づくりをどう継承していくかが鍵だと語った。また、高齢化やバリアの解消などの課題はあるが、多様な主体が主役になる街づくりを行なえば未来都市・多摩ニュータウンには大きな可能性があると力説した」と記事にした。

 上野氏のような人がいる限り、楽観はできないかもしれないが、多摩ニュータウンの未来は希望が湧いてくる(上野氏は「私は福祉亭に焼酎のボトルをキープしている。どなたでも寺田さん(理事)に言って飲んでもらっても結構」と話したが、福祉亭を利用するためのタクシー代のほうが高くつく。それより、上野氏には〝金づる〟となりそうなデベロッパーをひっぱりこんでいただきたいのだが…)

 もう一つ。西浦氏が「持続可能な社会にするため、なにがあっても多摩ニュータウンに住めるセーフティネットを考えたい」と座談会で示唆した。

 これについては、多摩市も「健幸都市(スマートウェルネスシティ)」を目指し「多摩市版地域包括ケアシステム」を立ち上げたが、多摩ニュータウンにはどこにも負けない自然・人的資源がある。三日三晩、電気、ガス、水道が止まろうと、乞田川の水を浄化できれば水は確保できるし、煮炊きだって、生物多様性にいささかも影響を与えない薪を「第31回緑の都市賞」総理大臣賞を受賞した多摩グリーンボランティア森木会が調達してくれるだろうし、市内には炭焼き名人も住んでいる。食べ物だってフキノトウ、ユキノシタなども無尽蔵だ。

 そこで、西浦氏に注文したい。多摩エリアにある26の大学教授が給与の1%でいいからそれぞれの駅のカフェ・飲食店に寄付し、著作も読め、地域通貨として利用できるようにすれば、多摩に移り住む学生・市民が殺到するはずだ。

 教授にもポイントを付与し、利用度の高い店は講義を免除し、提出論文の数にも便宜を図れば、教授の働き方改革も一挙に解決する。

 生まれ故郷の新潟の酒蔵とコネがありそうな西浦氏は、本業などそっちのけで酒の伝道師として生きていくことができるのではないか。

 阿部市長にもお願いだ。どなたかに「母になるなら、流山市。」を上回るキャッチフレーズを求められた。是非とも作っていただきたい。北区は昨年、漫画家を起用して「住めば、北区東京。」のブランドメッセージを打ち上げた。また、不動産コンサルの長嶋修氏が「マンションは足立区に買いなさい!」なる帯付きの本を出版した。

 記者は、多摩市は流山や北区、足立区より圧倒的にポテンシャルが高いと思う。新築分譲はこれからあまり期待できないが、「中古を買うなら多摩市」のキャンペーンを張ろうかしら。

 記者は下記に示しように、これまでの10年間で多摩ニュータウンに関して少なくとも10本以上の記事を書いてきた。読者の皆さん、記事を読んでいただき、コピー&ペーストでもいいですからどうか多摩の魅力をRBAをご存じない方に発信していただきたい。

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上野氏(左)と西浦氏

「多摩NTに風が吹く」 女性の仕事・子育て・地域活動を考える 多摩NT学会が討論会(2016/6/13)

人・街・未来を語り合う 多摩市 第2回「多摩NT再生シンポジウム」(2015/2/5)

「ザ・パークハウス多摩センター」 駅近の免震、最初で最後(2014/6/6)

「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」 西浦・明星大教授(2014/1/29)

多摩ニュータウンの課題を解決し、魅力をどう発信するか(2014/2/13)

多摩市一本杉公園の「炭焼き窯」炭焼き文化を伝承する「一本杉炭やき倶楽部」(2013/2/25)

多摩ニュータウン学会 「木質ペレットで多摩の緑は生かせるか?」(2012/11/27)

緑の都市賞を受賞した多摩グリーン森木会が記念講演会(2011/11/29)

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「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」

 国土交通省は1月31日、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)について幅広い意見を聞く有識者からなる「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」を設置し、第1回懇談会を同日に開催した。

 サービス付き高齢者向け住宅については、平成23年の制度創設から6年経過し、この間、登録戸数は約23万戸まで増加しているが、一方では立地や地域の医療・介護サービスとの連携などの課題も指摘され、制度そのものが分かりづらいという声もあることから、懇談会ではこれまでの取組状況についてフォローアップを行うとともに、今後の取組の進め方について論議していく。

 国交省からは、登録要件となっている1戸当たりの床面積は原則25㎡以上となっているにも関わらず、実際は全体の4分の1にしかすぎず、当初想定した自立高齢者の入居が少なく、要介護3以上が3割に達すること、入居費用は大都市圏では平均約11.9万円に上っており、年金額では負担しきれない額であることなどが報告された。

 以下、各委員の主なコメントを紹介する。ほぼ発言順で、( )内は記者。

 髙橋紘士座長(高齢者住宅財団特別顧問・東京通信大学設置準備室) 国民にとって分かりづらい、老人ホームとどう違うのかという声もある。住まいとして捉える形と施設として考える両方があり課題も多い。早めの住み替えになっていない側面もある。何よりも分かりやすい仕組みにするため課題を整理し、老人ホームも含めて実のある懇談をしていただきたい

 園田眞理子氏(明治大学理工学部教授) 基本的な情報提供がされていない。サ高住は地域包括ケアシステムを担う要素の一つ。地域の医療・介護との連携の中で捉えないといけない。高齢者はやり直しがきかない、先がない。一方でわずかだが業者の倒産もある。きちんと検証する必要がある。金科玉条のように考えていると先に進めない

 小山健氏(高齢者住宅推進機構政策委員長、積和グランドマスト社長) データの平均値で取ると危険な論議になる。内付けサービスを拡大するとコスト上昇につながる。一方で労働力不足もある。IoTも進歩しており、セットで活用していく必要がある

 吉村直子氏(長谷工総合研究所主席研究員) 情報提供システムは使いづらい。ユーザーは知らない人も多い。専門職も使えるものにしないといけない。各種のアンケートは数値を合計してその数で割るものが多いが、これでは実態は把握できない面もある(吉村氏とは30年来のお付き合い。ずっと高齢者住宅について研究されてきた。マクロデータについて鋭い指摘をされた)

 三浦研氏(京都大学大学院工学研究科教授) 見守りは必要ないとか、安否は機械でできるとか、地域に出ていかない、支援しづらい問題がある。生活の質、クオリティをどう上げていくか。サービスとは何かを考える必要がある。器を広げて、地域ソリューション拠点として障がい者なども入居できるようにしてもいいのではないか

 寺嶋清氏(品川区福祉部高齢者福祉課長) 無届老人ホームが半分くらいあった時代と比べ、問題はそれほど改善されていない印象を受ける。サ高住も老人ホームも分かりづらい。一般方はまず特養を考える。現場はデータベースなど眼中にないのでは

 田村明孝氏(タムラプランニングアンドオペレーティング代表取締役) 高齢者住宅は16種類に分けられるが、ジャンル分けする意味があるのかどうか、介護を想定するのかしないのか、看取り、在宅介護も含めて整理しないといけない。表示制度は登録しっぱなしで更新せず、所在がないものもある。このままでは良心的な業者がシュリンクする懸念がある

 福山宣幸氏(全国有料老人ホーム協会副理事長) 利用者が特定施設をチョイスできる仕組み、情報提供できるようにしないといけない。見守りサービスは、自立はしているけれども見守ってほしいというニーズもある。機械に置き換えることができないサービスの見える化を進めることがポイント

 大月敏雄氏(東京大学大学院工学系研究科教授) セーフティネット制度を活用して家賃補助を行っていくことも可能ではないか

 小林宏彰氏(サービス付き高齢者向け住宅協会事務局) 行き過ぎ指導もある。いかがなものか。表示制度は業者負担が過重ならないようしていただきたい

◇       ◆     ◇

 サ高住は玉石混交だと思っていたが、懇談会でも百家争鳴、議論百出、その通りであることを裏付けた。個人的には「見守り」とは何かが明らかにされるのに期待していたが、今回は踏み込んだ発言はなかった。

 法律では、有資格者が居住部分への訪問、電話、入居者の動体を把握できる装置による確認、食事サービスなどの提供時における確認などを能動的にチェックすることが義務付けられている。

 【お断り】 各委員の発言は、記者の責任において紹介した。耳が遠くなり、聞き取り力は小学生並みになり、聞き間違え・見逃しなどで正確に伝えきれていないことを了解していただきたい。また、国交省は後ほど、発言者名を伏せてホームページに公表するが、この種の公的な会合では誰が何を話したかはとても重要だと思うので実名で紹介した。国交省からは実名を伏せるよう報道陣に対する要請はなかった。懇談会の模様は不動産流通研究所のWeb「R.E.port」が正確に伝えている。

 

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