〝三菱地所を、見に行こう。地所ホームで家を建てよう〟赤坂に素晴らしい施設
「ORDER GRAN AKASAKA」(左)と「リフォーム赤坂ラボ」
三菱地所ホームは7月15日、同社の赤坂ハウジングギャラリー内に設置した富裕層向けのフラッグシップブランド「ORDER GRANオーダーグラン)」第2弾のモデルハウス「ORDER GRAN AKASAKA」と「リフォーム赤坂ラボ」をオープンする。一般公開に先駆け13日、報道陣に公開した。
「ORDER GRAN AKASAKA」は、昨年4月、駒沢公園ハウジングギャラリーにオープンした第一弾に次ぐもので、「リラックス&アクティビティ」をテーマにファサード・インテリアデザイン、アクティビティをさらにグレードアップした。同社の全館空調「エアロテック」を搭載、ホームスパ、ゴルフシミュレーション、シアターリビングなどラグジュアリーな最高品質の空間を提案。設計依頼をした顧客向けに体験宿泊できるようにしているのが特徴。
構造・規模は2×NEXT構法2階建て延べ床面積187.95m。モデルハウス仕様の坪単価は約200万円。
「リフォームラボ赤坂」は、1階を築30年のビフォー住宅、2階をリフォーム後のアフター住宅として再現し、「リフォーム100のポイント」を確認しながらリフォーム後の空間や暮らしを体験することができる施設。
記者発表会・内覧会に臨んだ加藤博文社長は「年度明けはやや出遅れたが、6月以降は盛り返している」などと現況を語るとともに「今後のマーケットは楽観できない。当社の『エアロテック』を実際に体験していただくのと、建て替えの楽しさを表現することで、新築もリフォームもわくわくするような戸建ての楽しさを演出した」と語った。
「ORDER GRAN AKASAKA」は年間20~25棟の受注が、リフォームの売り上げは前年度7億円だった一般向けを10億円に伸ばすのが目標。
「ORDER GRAN AKASAKA」外観
加藤社長
◇ ◆ ◇
「エアロテック」が発売された22年前、記者は爆発的にヒットするのではないかと思った。しかし、外断熱マンション同様、それほど伸びなかった。
なぜか。その良さは実際に体験しないとわからないからだとずっと考えてきた。「快適性」はなかなか金額に置き換えられないし、文章でも表現しにくい。最近は各社ともそのことが分かり始め「体験宿泊」を提案するところも出始めた。
同社が今回モデルハウスの「体験宿泊」を可能に、同時にリフォームのビフォー、アフターをその場で見ることができる施設を併設したのは業界初だ。模型コーナーや設備、外壁材の展示コーナーも実によくできている。同社と他社がどう異なるのかもビジュアルに表現している。
同社は今年4月、横浜みなとみらい地区にも仲介・リフォームを強化するショールームを開設した。近くマンション用のエアロテックも発売するという。いよいよ同社が本気で取り組み始めた。
「ORDER GRAN AKASAKA」
「リフォーム赤坂ラボ」 ビフォー(左)とアフター
◇ ◆ ◇
「ORDER GRAN AKASAKA」の単価200万円を聞いて記者は全然驚かなかった。同業他社もこれくらいの単価のモデルハウスを建てているし、都心のマンションなら20坪で軒並み1億円を突破する。
それより驚いたのは、「体験宿泊」を実施することだった。一般的な住宅展示場は防災面から火器を使用することは不可能で、例えば立派な暖炉を設けながらその炎のゆらぎを見せることができない。赤坂ギャラリーは同社のみの施設だからそれができる。
見学してさらに驚いた。広さは187㎡(56坪)、設備などを含めれば1億数千万円の価値がある住宅に「設計依頼をした人」という条件付きとはいえ無料で一泊できる。〝さすが三菱地所〟だと思った。仮にお金を出したらいくらになるか。数十万円の価値はある。
記者は加賀屋ホテルにもパークハイアットにもリッツにも止まったことがあるし、明豊エンタープライズの1億円の外断熱マンションにも宿泊したことがあるが、今回の同社の住宅はその数倍の価値がある。
同業他社との差も分かりやすく展示している
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ゴルフをやらない人には無価値だが、1,000万円かけたというゴルフシミュレーションが素晴らしい。韓国の女子プロが同じ施設を利用していたものだそうで、世界の名門60コースが体験できるそうだ。
加藤社長(52)が実演して見せた。ロペ倶楽部の488ヤードのパー5。まずドライバーで200ヤードを飛ばした。ラフに入ったが、次は5番アイアンで170ヤード、ピッチングで見事にスリーオン。バーディは逃したがパー。見事だった。
傍にいた同社関係者は「1時間1,000円で貸せますね」と話したが、これはない。1億円もする戸建てを建てる人が時間貸しするわけがない。
加藤社長がどんな住宅に住んでいるかわからないが、これはもう絶対モデルハウスそのままで建てるべきだ。年間20~25棟は少なすぎる。〝三菱地所を、見に行こう。地所ホームで家を建てよう〟をグループ全体で訴えれば、この数倍の受注は獲得できるのではないか。
加藤社長もそのような考えを示したように、加藤社長と三菱地所に一つお願いしたい。〝オール三菱〟は価値があるが、三菱地所の分譲戸建ては基本「エアロテック」を標準装備すべきだ。同業他社と同じ建売住宅を分譲する意味は全然ないと思う。
488ヤード 見事パーセーブ ゴルフシミュレーション 実演して見せる加藤社長
浴室
リビング
大和ハウス 「家事シェアハウス」公開 わかったことわからないこと
「セキュレア西落合4丁目4号地」
大和ハウス工業は7月11日、共働き世帯をターゲットにした分譲戸建て「家事シェアハウス」のモデルハウス見学会を行った。家事を「分担」するのではなく「名もなき家事」を含めた家事を家族全員で「シェア」(共有する意味を込めた言葉)する考えをもとに、新たな間取り提案・仕掛けを施した住宅だ。
モデルハウスは、西武池袋線東長崎駅から徒歩7分、新宿区西落合4丁目に位置する「セキュレア西落合4丁目4号地」の全5棟の現場。土地面積は約107~110㎡、建物面積は約104~108㎡、価格は未定だが9,000万円台から1億1,000万円台の予定。7月22日から分譲開始する。
①自分のものは自分で管理する自分専用カタヅケロッカー②洗濯家事をスムーズにするファミリーユーティリティ③散らかる紙類をまとめて仕分けするお便り紙蔵庫④家族の持ち物を個別に収納する自分専用ボックス⑤2階に持っていくものを置く階段ポケット⑥明日着るものを掛けておくビューティクローゼット-などがついている。
同社東京本店住宅事業部事業部長・上野敦仁氏は「最近は分譲戸建て用の土地が仕入れられなくなってきた。背伸びをしても他社のほうがはるかに上回る値段で買っていく。土地値でなく(建物を含めた)売り値ではないかと思うくらい高くなってきた」などと最近の市場に触れ、「当社は女性活躍について積極的に取り組んでいるが、今回の住宅は女性目線で家事を分担するのではなくシェアするという発想で暮らし方を提案した」などと話した。同社は年間、都内で約200戸の分譲戸建てを供給している。
また、同社住宅事業推進部営業統括部事業戦略グループ主任・多田綾子氏は「この家事シェアハウスの考えは、共働き世帯が全国4位の富山県の1支店から生まれたアイデア」であることを話した後、「家事に関する調査結果をリリースしたらマスコミに大きく取り上げられ、『家事シェアハウス』の応援画像は『You Tube』で160万回以上再生された」などと、男性と女性の「家事」についての認識には大きな隔たりがあることを報告した。
お便り紙蔵庫(左)とビューティクローゼット
ファミリーユーティリティ
自分専用ボックス(左)とく階段ポケット
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記者は10年間〝主夫〟をやったので少しは「家事」について知っている。しかし、同社が今年5月にリリースした共働き夫婦の「家事」に関する意識調査を読み、男と女の意識のギャップの大きさに頭をどやされたようなショックを受けた。この歳になっても全く女性の気持ちがわからないのかと。
驚いたのは、多田氏が奥さん役となり、同社東京本店住宅事業部東京分譲住宅営業所主任・中野輝一郎氏が夫役になり「家事シェア」のビフォーアフターの寸劇をやったことだ。40年の記者生活の中で初めて見た。
中野氏は完璧に演じた-「ただいま」(元気な声は立派)はいいが、靴は脱ぎっぱなし、郵便物はテーブルにドサッ置きっぱなし、靴下もスーツも脱ぎっぱなしで、「ビールくれ」-ほとんどの男性は似たり寄ったりではないか。中野氏はどうか知らないが、普段のままでいいのだから演技など必要ないはずだ。昔の自分の姿を見せられたようで情けなくなった。
読者の特に男性のみなさん、ぜひこの同社のリリース(全12ページ)を熟読していただきたい。寸劇も想像していただきたい。またアットホームの別掲のアンケート調査にもどきりとさせられるはずだ。
このギャップを放置すると間違いなく女性に捨てられる。そうなったらどんなに悲惨か、桐野夏生「だから荒野」(毎日新聞社、文庫本もあり。テレビドラマ化されたようだが記者は知らない)がお薦めだ。
妻役を演じた多田氏(左)と夫役を演じた中野氏
〝あーっ、疲れた〟(ビフォー)と〝家事シェアはいいなーぁ、ビールがうまい〟(アフター)
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モデルハウスの提案は記者もそれなりに理解できた。他社も同じような提案を行っているところもある。正直に言えば、どこまでユーザーにアピールできるかよくわからない。いかに仕掛けを施しても男性が奥さんの言うことを聞くだろうかという疑問もある。男性をしつけるのは結婚してからでは遅いような気もする。
しかし、同業の女性記者は「階段ポケット」や「ビューティクローゼット」に〝素敵〟の感嘆の声を上げていた。結構なものだろう。
それより気になったのは戸建て用宅配ボックスの値段の高さだ。門柱を兼ね、書留が受け取れ、発送もできるのはいいと思ったが、価格は約25万円とか。1億円前後の戸建てを買う人にとっては高くないだろうが、昨日、ポラスの柏たなかの分譲戸建てに装備されていた戸建て用宅配ボックスは4~5万円だそうだ。
また、アットホームの調査によれば、「設置にかけてもいいと思う費用は平均12,428円」だそうだ。
戸建ての商品企画では、やはり1階の天井高2400ミリが気になった。同社の戸建て商品「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」は2700~2900ではないか。注文住宅でできるのだから分譲もぜひそうすべきだ。他社にないものでは、2階のベランダ掃き出しがフラット(実際はベランダのほうが下がっているが、デッキを敷けばフラットになる)なのはいい。
門柱を兼ねた戸建て専用宅配ボックス
働く男性必読! 「名もなき家事」を妻に押しつけるな 大和ハウス調査(2017/5/18)
「全150棟、2年間で売る」 ポラス・柏たなかの分譲戸建て 好調スタート
「パレットコート柏たなか エヴァーシティ」
ポラスグループの中央グリーン開発は7月10日、千葉県柏市の全150棟の大規模分譲戸建て開発「パレットコート柏たなか エヴァーシティ」の記者見学会を行った。美しい街並みと防犯・防災、コミュニティ形成に力を入れており、柏市初の景観協定も導入。5月から第1期と第2の分譲を開始しておりこれまで約250件の来場があり、23戸が成約・申し込み済み。好調なスタートを切った。
物件は、つくばエクスプレス柏たなか駅から徒歩11分、千葉県柏市船戸柏都市計画事業柏北部東地区の土地区画整理事業地内の一角にある開発面積約2.7ha、全150棟。敷地面積は150.10~168.12㎡、建物面積は97.29~105.99㎡、価格は3,480万~4,680万円。構造は木造2階建て。施工はポラテック。
用地は昨年、UR都市機構から入札で取得。同社グループは2007年から同エリアで分譲戸建てを展開しており、これまでに286戸を分譲済み。今回の150棟と合わせると436戸となり、エリア最多供給となる。
ベンチマークとなる街づくりを主導するため、アメリカのフロリダ、カリフォルニア、ハワイ、リッチモンド、サンタバーバラ、ブルックリンの6つの都市をモチーフにシンボルツリーとしてサバルヤシをところどころに植え、美しい街並み形成を図る。将来の街並みを担保するため柏市初の景観協定を結んでいる。
街ぐるみで防犯・防災に取り組みコミュニティ活動を支援するため防犯カメラを設置するほか、防災ベンチ、コミュニティスペース「KONOBA(コノバ)」、コミュニティを支援する「マチトモ」、ワークショップなどを行う。
見学会であいさつした同社取締役事業部長・戒能隆洋氏は「エリア開発を主導するためランドスケープデザインや防犯・防災、コミュニティ形成に力を注いだ。2019年5月までに販売を完了したい」と話した。
第1期分譲として16戸を5月に販売し、好調だったため7月に前倒しで第2期の分譲を開始し、これまで23戸の成約・申し込みがあるという。来場者は約250件。来場者は市内が約3割を占めるが、流山市、松戸市、江戸川区など広域から集客できているという。
戸建て用宅配ボックス
戒能氏
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柏たなかエリアは、千葉県柏市ではあるが、隣駅の柏の葉キャンパスや東武線との乗換駅・流山おおたかの森などと比べ開発が遅れており、マンションは坪単価140~160万円台と安いにもかかわらず、苦戦を強いられている。
同社が150棟を分譲すると聞いたとき、常識的に考えたら年間30戸として完売まで5年くらいかかるのではないか、あるいはまた、早期に売るために価格・グレードを抑えるのではないかとも思った。
ところが、その予想・推測はものの見事に外れた。戒能氏は「2年間で販売する計画だが、これはキャパシティの問題であって、早めようと思えば早められる」と自信を見せたその理由も5棟あるモデルハウスを見てすぐ理解できた。きめが細かな商品企画に脱帽した。
45~50坪の広い敷地に、ゆったりと庭を確保したうえ、シンボルツリーのヤシを配し、住戸プランは約5500ミリの吹き抜け付き、インナーテラス付き、多目的利用が可能な土間クローゼット付き、アイランドキッチン、ペニンシュラキッチン、カウンター付き収納など実に多彩。また、同社オリジナルの無垢材を用いたアクセントパネルにLIXLの新製品ドア、人気家具ショップとのコラボも行ない、さらにまた男の籠れるスペースも盛り込んでいる。戸建て用宅配ボックスも全戸に用意している。2年間で売る自信があるというのも頷ける。最大のセールスポイントであるはずの1階の天井高2700ミリなどどこにも謳っていない。
このような商品企画を見せられたら同業はもちろんマンションなどとても太刀打ちできない。
モデルハウス
東急リバブル 就業体験もできる「選べるインターンシップ」開始
同社のインターンシップ
東急リバブル7月1日から2019年度新卒学生向けの「選べるインターンシップ」を開始した。多数のプログラムから学生自身で興味のある内容を自分のスケジュール に合わせて、選んで参加できる。
営業現場での就業体験も特徴の1つで、事前の審査に合格した学生は、同社の営業社員に1日同行し、接客、物件調査などの現場を体験することができる。座学では分からない職場を体験できることから、昨年度は就業体験がもっとも満足度が高かったという。
7月から開催することで、早期から学生に就業体験の機会を提供すると共に、早期に就職活動を始める意識の高い学生に興味を持ってもらう狙いもある。
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就業体験はいいプログラムだ。記者はお客として接遇してもらったことはあるが、逆の立場での不動産仲介の現場は全く分からない。体験してみたい。九分九厘だめだろうが、同社広報にお願いしてみる。事前の審査に通っても、逐一営業社員の行動や言動をメモし、記事にするのはノーだろうし、営業社員やお客さんに余計な口出しをして契約をぶち壊すことになる懸念もある。
大京 リノベーション戸建てに参入 マンションと合わせ2021年には2,500戸超目指す
「リノベーション戸建て」事業の第1号物件
大京グループの大京穴吹不動産は6月30日、「リノベーション戸建て」事業に参入し、第1号物件として川崎市麻生区の2階建て一戸建て住宅の販売を7月1日から開始すると発表した。「リノテラス(Reno Terrace)」ブランドとして展開する。
大京グループは昨年10月、中期経営計画「Make NEW VALUE 2021 ~不動産ソリューションによる新・価値創造」を策定し、新たに取り組むテーマの1つとして「一戸建て住宅リノベーション」事業への参入を掲げた。業界トップクラスの販売実績を誇るリノベーションマンション「リノアルファ(Renoα)」と合わせ、2021年3月期にはリノベーション住宅販売戸数を2,500戸超の規模に拡大する。
第1号物件は、小田急電鉄小田原線柿生駅から徒歩11分、川崎市麻生区片平4丁目に位置する土地面積100.00㎡、 建物面積93.17㎡、1998年11月築の軽量鉄骨造2階建て。
最優秀賞に永田×稲葉氏の「生きる蔵を手伝う家」 ポラス 学生・建築デザインコンペ
、「第4回POLUS-ポラス‐学生・建築デザインコンペティション」審査委員と受賞者(佳作含む)
ポラスグループのポラスは6月29日、「第4回POLUS-ポラス‐学生・建築デザインコンペティション」の公開審査会を行い、最優秀賞(賞金50万円)に永田琴乃氏(日本大学大学院)と稲葉来美氏(横浜国大大学院)の共同作品「生きる蔵を手伝う家」を選んだ。
コンペは、大学院や大学、高等専門学校、専修学校、高等学校などに通う学生を対象に、建築の道を志す学生の自由で新鮮な発想(アイデア)を表現・公表する機会を設け、応援するもの。今回のテーマは「土蔵をつつむ今、今をつつむ未来」で、南北15m、東西60m(900㎡)の土地に木造の建築物5棟を建設するのが条件となっていた。応募総数205件の中から第1次審査を通過した作品5点を公開で審査した。
審査委員長の青木淳氏(青木淳建築計画事務所)は、「各作品とも蔵をテーマに様々な答えを導き出していたのが面白かった。最優秀作品は想像力をかき立てるアイデアがよかった」と講評した。
優秀賞(賞金20万円)は笹尾浩二氏(近畿大大学院)の「路に住まい、路と暮らす町」で、入選(賞金各10万円)は土居大夏・加賀谷元希・坂口佳氏(京都工繊大大学院)の「イキモノの塒」、田中翔太氏(京都工繊大大学院)の「土蔵をぬけて」、藤岡宗杜氏(大阪工大大学院)・前岡光一氏(大阪工大)の「彩りサーカス」の3点。
最優秀賞
作品を前に永田氏(左)と稲葉氏
◇ ◆ ◇
記者は5つの作品を比べて最優秀賞に輝いた作品が一番印象に残った。発酵蔵で麹菌を育て、住宅の中に麹菌を感染させて、人と菌が共に生き、やがて街全体を黒染めさせるという現実離れした奇想天外な発想が面白いと思った。
現実の世界では、麹菌に感染することなどありえないのではという疑問もあるが、麹菌ではなく他のものに置き換えたら住宅や暮らし、街並みを変える可能性を秘めていると考えた。
審査委員長の青木氏をはじめ審査委員の今井公太郎氏(東京大学生産技術研究所教授)、原田真宏氏(芝浦工業大学教授)、永山祐子氏(永山祐子建築設計)、 池ノ谷崇行氏(ポラスグループ)らの評価も高く、2位以下に大きな差をつけて受賞した。
最優秀賞に贈られる賞金50万円の遣いみちを二人に聞いた。永田氏は「新しいメガネを買いたい」、稲葉氏は「新しいマウスを買う」と喜びを語った。稲葉氏は作品を考えるにあたって小豆島の蔵を見に行ったという。
審査風景
◇ ◆ ◇
いつも思うことだが、作品そのものの出来栄えはもちろんだが、与えられた7分のプレゼン時間の中で作品をいかにわかりやすくアピールする能力が問われる。今井氏も「みんな比較が難しかった。説明を聞いていていかに深く考えているかを説明する力が問われる」と話した。
今回よかったのは、「あー」「えーっと」などの機能語があまり飛び出さなかったことだ。
一つよくわからないのは、作品条件にはいっさい法規制が課されていないことだ。商品化を前提としないコンペだからこれでいいのだろうか。
東急不「世田谷中町」シニア向け 契約は過去最高ペース 分譲の4割が60歳以上
「グランクレール世田谷中町」シニアレジデンス
東急不動産は7月1日、分譲マンションとシニア住宅の複合開発「世田谷中町プロジェクト」の「グランクレール世田谷中町」シニアレジデンスの入居を開始する。全176戸のうち半分以上が契約済みで、2003年にグランクレールシリーズを供給開始してから過去最高ペースの進捗を見せているほか、分譲マンションの契約者のうち4割強が60歳以上を占めるなど「世代循環型」の街づくりが評価されている。入居開始に先立つ29日、メディア向け内覧会を行った。
「世田谷中町プロジェクト」は、東急田園都市線用賀駅から徒歩15分、世田谷区中町5丁目に位置するNTTの社宅跡地約3.4haで開発が進められている期間70年の定期借地権付き複合開発。分譲マンション「ブランズシティ世田谷中町」252戸とシニア向け賃貸住宅「グランクレール世田谷中町」(シニアレジデンス176戸、ケアレジデンス75戸)からなる。東京都「一般住宅を併設したサービス付高齢者向け住宅整備事業」第1号選定プロジェクトでもある。
「グランクレール世田谷中町」は、これまで15施設約1,050戸を供給してきた同社の「グランクレール」シリーズで過去最大の規模。建築基準法第55条の適用を受け、建物の高さ10mから12mに緩和されているのも特徴の一つ。
専用面積は約38㎡のワンルームから約63㎡の2LDKまで。利用料は前払方式と月払方式の選択制で、月払方式は月額賃料約24万円のほかサービス費、管理費、朝・昼・夜の食費代込みで43万円台から。共用施設はラウンジ、ダイニング、多目的室、大浴場、シアタールーム、ティーラウンジなど。24時間見守りサービス、健康サポート、アクティビティなどのサービス、ケアレジデンスへの住み替え制度も利用できる。
併設施設は訪問介護事業所、看護小規模多機能型居宅介護事業所、カルチャールーム、コミュニティサロン、認可保育所など。
同社ウェルネス事業ユニット ヘルスケア事業本部 シニア住宅事業部 事業企画グループリーダー部長・林靖人氏は「過去14年間に蓄積されたノウハウを結集した。昨年7月から募集を開始したが、開業時の契約率は過去最高ペース。契約者は区内が20%強のほか都内が3分の2で、神奈川県も20%強あるなど広域から集客できている。2人入居の広めのタイプから入居が決まっている。親がシニア住宅、子が分譲を購入するケースも5~6件ある。マンション購入者約100件のうち4割弱が60歳以上というのも大きな特徴」などと話した。
中庭
ダイニング(左)とカフェラウンジ
エントランスラウンジ(ランの鉢が約30鉢)
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このプロジェクトについては、別掲の記事を参照していただきたい。シニアレジデンスの契約が入居開始時点で半数以上というのにはいささか驚いた。住環境の良さと至れり尽くせりのサービスが評価されたのだろう。高齢化不安・独居不安、地域コミュニティの希薄化などの社会的背景に加え、共働き世帯の増加、保育園不足などの世田谷区が抱える課題を解決する「世代循環型の街づくり」が評価されたと言ってよい。
もう一つ驚いたのは分譲マンションに占める高齢者の購入比率の高さだ。同じような例では大和ハウス「プレミスト高尾」や相鉄不動産「グレーシアタワー二俣川」でも見られたが、これらはいずれも駅に近い複合プロジェクトだった。駅からやや距離があっても条件が揃えば〝元気〟な高齢者が分譲を選択することが分かった。今後の商品企画の参考になる。
スカイテラス
報道陣にふるまわれた昼食(カロリーは550~700カロリー)
国交省 「道路デザイン」10年ぶり改正へ その高邁な思想・哲学を考える
「道路のデザインに関する検討委員会」
天野氏
国土交通省は6月28日、第3回「道路のデザインに関する検討委員会」(委員長:天野光一・日本大学教授)を開催し、道路デザインのあり方について最終検討を行った。
同委員会は、「道路デザイン指針(案)」(平成17年4月)と「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」(平成16年3月)の作成から10年以上が経過し、景観やデザインに配慮した道路整備が一定程度進んできたことや、災害時など暫定的な整備を行う際や防護柵以外の道路附属物を含めた調和などに課題がみられる事例があることから、内容の更新や充実が必要な部分について改定することを目的として設置された。
今回の検討を踏まえて、「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン(案)」のパブリックコメントを実施し、「道路デザイン指針(案)」と「道路のデザイン-道路デザイン指針(案)とその解説-」の改定、「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン)」を策定する。
「道路デザイン指針(案)」では、最小限の加筆・訂正にとどめ、幅員構成の再構築、道路協力団体制度、歴史まちづくり法、木材利用促進、無電柱化の推進、自転車活用の推進、景観アセスメントなどを充実、補足することになる。
「道路附属物等ガイドライン」については、防護柵、照明柱、標識柱の基本色に従来のダークブラウン、グレーベージュ、ダークグレーの3色のほか「オフグレー(薄灰色)」を追加するほか、歩道橋の色彩を高明度低彩度から中明度低彩度にすることなどが盛り込まれる。
◇ ◆ ◇
記者席に配布された資料はA4判1~6全てを合わせると約460ページ、重さにして約850グラム。図版や空白部分もあるので小説などとは比較ができないが、優に1,000ページを超える超大作のようなものだった(各委員にはこのほか製本された「道路デザイン指針(案)」など高さにして20センチくらいの資料も配布されていた)。
素人の記者がこれを読みこなすには相当の時間がかかるので積読することにして、委員会で話されたことや道路に関する哲学・思想について紹介し、自分なりの考えを述べてみたい。
まず街路樹について。記者はこれまで街路樹について10数回にわたって記事を書いてきた。最近の例では、千代田区の「神田警察通り」の樹齢80年超のイチョウ伐採問題に象徴されるように街路樹は道路附属物としか考えられていないと思っていたが、少なくとも国交省道路局の全92ページの「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」には街路樹は道路附属物として位置付けられていないことを確認した。街路樹が附属物であることなど一言も触れていない。
ではいったい各自治体が街路樹を道路課などが管轄しているのはどういうわけかという疑問が新たに涌いた。街路樹の管理維持は道路課と切り離すとともに、双方は不可分な景観を形成するのだからきちんと調整する部署も必要ではないか。
次に「道路のデザイン-道路デザイン指針(案)とその解説-」について。
これは、231ページにもわたるものだが、天野委員長が「高邁な(思想が盛り込まれている)道路デザイン」と語ったように、関係者だけでなくみんな読む価値がある。どうして「道路景観整備」や「便覧・マニュアル」ではなく「道路デザイン」なのかの説明や、「美しい道路づくり」に関する思想-知識-技術が最初の第1章で論じられている。
例えばこのような記述がある。「はじめに思想ありき。美しい道路づくりにおいても、まずはじめに そのよって立つ思想が必要である」「道路という文明の装置も、美しさという価値が備わっていなければ、社会資本としてストックされない」「快適な走行は環境負荷を低減する」「印象的な移動体験を演出する装置が道路であるという考えに立ったデザインが、時に道路そのものの存在を忘れさせるような、真に快適な移動と到達を可能にする」「道づくりはまちづくりでもある」「美しさとは単に姿形だけでなく、人々の意思の発露としても在るのである」「自然の力を借りて美しい道路は成熟し、完成する」
こうした記述に、車を持たないどちらかと言えば車が嫌いな記者でも感動すら覚える。と同時に大きな疑問も抱く。このような高邁な思想を持ちながら道路はどうして街を分断し川を暗渠と化したのか。「車が優先」と「人が優先」は対立する概念なのか、記者の好きな魯迅の言葉「地上にはもともと道はない。歩く人が多くなれば、それが道となるのだ」と「道路」は関係があるのかないのか、考えてみたい。
少なくとも道路は「邪道」「極道」などとは無縁で「人道」につながると信じたい。
街路樹の伐採中止・保存求める陳情書を採択 千代田区議会 企画総務委員会(2016/10/18)
働き方改革×健康経営を実現する わが国初「クルソグ」開始 三菱地所・野村総研
関係者のフォトセッション(左からリーボックワンエリート・土嶺雄一氏、山田氏、杉山氏、嶋本氏、チェンジウェーブ代表・佐々木裕子氏、ニューロスペース社長・小林孝徳氏)
三菱地所は6月27日、野村総合研究所、一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会とともに、大手町・丸の内・有楽町(大・丸・有)に本社または事業所を有する企業とその従業員を対象とした働き方改革と健康経営のソリューションサービス「クルソグ」(QOOLSOG)を開始したと発表した。
クルソグとは、QOL(Quality Of Life)の間に「Office-Worker」をはさんだ造語「Quality of office-worker‘s life so good!」の略。オフィスワーカーのワーク&ライフの質の向上をWell-Beingの視点から「ICT×街×オフィス」からなる独自のソリューションで実現するサービス。
要望に応じて参加企業及びその健康保険組合から就業者の労務・健診データなどの提供を受け、野村総合研究所が開発したWebアプリ「Well plus+(ウェルプラス)」を活用し、従業員1人ひとりの健康状態や就労状況を見える化。「Well plus+」を通して蓄積されるデータを基に、三菱地所が主体となって提供する「運動」や「食」などを切り口とした丸の内エリアの多様なプログラムを参加企業の従業員に案内する。
アプリなどのICTとエリアコンテンツが連動するサービスはわが国初の試み。今年度はトライアル期間と位置付け、同日から4カ月間、14社・約2万人を対象にサービスを提供する。期間中「フィジカル」「メンタル」「ワーク」「ライフ」の4つのカテゴリからなる約200件のコンテンツを揃える。
本日から29日の3日間、丸ビル1階:マルキューブで「ロカボマルシェ」が行われるほか、ロカボメニューを用意する21店舗からなる「ロカボ丸の内プロジェクト」レストランが紹介された。当日から利用できる。
大勢のメディア・関係者が詰めかけた会場(丸ビル:マルキューブで)
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仲良くあるいは喧嘩しながら20年以上も糖尿病と付き合い、医者の「禁煙」の勧めを「喫煙は人権だ」などとやり返す記者にとって「食」も「健康」もあまり関心はないが、三菱地所がなにやら始めそうなので、丸ビルのプロジェクト発表会に出かけた。
最初は、掛け声だけに終わった「プレミアムフライデー」のような〝イベント〟ではないかと思ったが、関係者は大真面目そのもの。多くの報道陣も集まっていた。
最初に登壇した三菱地所会長・杉山博孝氏は「長時間労働の是正など働き方改革は進めなければならないが、一方で労働時間の短縮は生産性の低下につながるのではないかという懸念もある。1年前に丸の内健康経営倶楽部を立ち上げ、働き方改革と健康経営を両立させるためにはどうしたらいいか検討を重ね、実際の行動で企業と働く人の〝幸福を〟実現しようと『クルソグ』につなげた。野村総研さんのICTと当社の街づくりを掛け合わせイノベーションする。4カ月のトライアルで成果を出したい」とあいさつした。
続いで登壇した野村総合研究所会長・嶋本正氏は「リアルな世界とネットを連動させる健康街づくりのソリューションは例がない」などと話した。
発表会では、一般社団法人 食・楽・健康協会代表理事・山田悟氏(北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長)が、カロリー制限ではなく「おいしく楽しく適正糖質」を目指す「ロカボ」をテーマにしたセミナーも行った。
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結構な取り組みだ。同社のリリースによると大・丸・有には約4,300カ所の事業所が集積し、約28万人が就労しているという。クルソグプロジェクト対象はこの10分の1以下だが、検証結果をぜひ公開していただきたい。
「圧倒的な企画提案力」 29年3月期 大幅増収増益 業績続伸のポラスを支えるもの
中内代表
ポラスグループは6月26日、平成29年3月期決算説明会を開催。売上高は1,932億円(前期比10.9%増)、経常利益は138億円(同29.4%増)、当期純利益は36億円(同23.7%)増となり、いずれも過去最高となった。分譲戸建てでは「越ケ谷」「浦和美園」「白岡」など特徴のある街づくり提案が支持されたほか、マンションでは初の200戸物件を発売したこと、独自の耐震技術やデザイン性を高めた注文住宅の契約棟数が伸びたこと、プレカット事業で外販受注、売上げ、構造材生産が過去最高を更新したことなどが業績を押し上げた。
グループ売上げ棟・戸数は、戸建分譲住宅が2,312棟(前期比5.0%増)、戸建注文住宅が775棟(同0.4%減)、賃貸・集合住宅が15棟112戸(同26.8%減)、分譲マンション219戸(同173.8%増)の合計3,418棟・戸(同6.4%増)。
売買仲介部門は、仲介手数料24億円(同0.7%増)、取扱件数2,885件(同2.6%増)。リフォームは71億円(同2.7%増)。
平成30年3月期は、売上高1,950億円(前期比0.9%増)、経常利益150億円(同8.5%増)、当期純利益38億円(同3.4%増)、グループ売上棟数・戸数は戸建て分譲が2,600棟(同12.5%増)、戸建注文住宅が997棟(同28.6%増)、賃貸・集合住宅が25棟177戸(同58.0%増)、分譲マンションが290戸(同32.4%増)の合計4,064棟・戸(同18.9%増)を見込む。
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業績が伸びていることは予想できたことだが、これほど伸びるとは思わなかった。続伸の要因は、分譲事業でいえば、「圧倒的な美しい街並み提案」だとグループ代表・中内晃次郎氏も中央住宅社長・品川典久氏も語ったその言葉に尽きると記者も思う。中内氏は体に似合わず普段大口など叩かない。語りも穏やかで控えめだ。その中内氏が「圧倒的な…」と話した。よほど自信があるのだろう。
ここでは一つひとつその商品企画を紹介しない。別掲の記事を参照していただきたい。〝蔵のある暮らし〟提案を行った「ことのは越ケ谷」はプロジェクト発表会を含めると5回くらい現地に足を運んだ。さいたま市のスマートエネルギー特区」事業コンペに採択された「浦和美園E-フォレスト」(高砂建設、アキュラホームとの共同事業)も埼玉県の「先導的ヒートアイランド対策住宅街モデル事業」に採択された「風と緑のまち白岡」も最高の出来栄えだった。マンションの「ルピアコート西大宮」も極めてコストパフォーマンスの高い物件だと思う。
品川社長は、これらの物件は「手間と時間がかかるが、利益率が落ちてもポラスらしい街づくりを行っていく」と強調したが、この方向性は間違っていない。個別物件で事業期間が延びても、他のプロジェクトへの相乗効果は大きく、同社の企業価値を高めることにつながるはずだ。
そのことを証明するかのように、ポラスコミュニケーション部部長・伊藤賀一氏はグループの契約動向と市況動向について説明した中で、「既契約のお客さま、社員、取引業者の紹介による契約棟数が291棟で増加傾向にある」と話した。
中長期的には分譲市場はシュリンクしていく。その中でどのように伸ばすかはすべて企画提案力にかかってくる。中内代表は5年後の目標数値として売上高2,400億円を掲げていることを明らかにしたが、「それほど数字にこだわっているわけではない」とも話した。その通りだと思う。売上高そのものにそれほど価値などない。地球環境と人にやさしい良好な住宅をつくり続けることが社会的に評価される時代だ。
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同社グループは今後、「三郷中央」(今期100棟)「TX柏たなか」(同86棟)「浦和美園」(同165棟、他にマンション320戸計画)「西大宮」(同80棟)「北習志野」(同91棟)「鶴瀬・みずほ台」(同100棟)などで販売を強化する。いずれも容易なエリアではない。どのような商品企画で需要を喚起するか興味深い。
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