購入者の4割が道外 日本エスコン 日ハム新球場に隣接マンション118戸完売
「レ・ジェイド北海道ボールパーク」
日本エスコンは9月20日、来春に開業する北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO」に徒歩1分のマンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」全118戸が9月19日に全戸完売したと発表した。2022年2月の分譲開始からわずか8か月だった。
物件は、北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド北海道)」を核とする約23,814haの「北海道ボールパークFビレッジ」プロジェクトの一角にあり、JR千歳線北広島駅から車で約5分・徒歩22分、北海道北広島市共栄の商業地域(建ぺい率80%、容積率400%)に位置する14階建て全118戸。専有面積は43.43~137.55㎡。価格は3,500万円台~1.5億円台。竣工予定は2023年2月下旬。設計・監理は浅井謙建築研究所、施工は中山組。販売代理はライズパートナーズ。
商品企画は、暖炉を囲んで過ごせる憩いの場「ウォームリビング」や、本格的なキッチンを備えた「クラブハウス」、北海道の原生林を見渡せる「屋上共用テラス」など共用部の充実を図り、専有部は、セカンドハウスやワーケーションなど様々なライフスタイルに合わせて選択できる20タイプを用意。バルコニーの隣にサンルーム「Fテラス」を設けた。購入者は引渡しから10年間利用できる球場への入場フリーパス付き。
同社は人気の要因を、①新球場から約80mの希少立地②物件周辺の「沢エリア」が広がり、BBQやキャンプ・グランピングといったアクティビティが充実③最寄りのJR北広島駅は、新千歳空港駅へ電車で約21分、札幌駅へ電車で約17分などが評価されたとしている。
購入者の属性は、居住地は6割が道内、4割が道外。年齢は50代が4割、40代、60代が各2割。日ハムファンを中心にスポーツ好きの人が多いという。
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話は聞いていたが、凄いの一言だ。ハウスメーカーは逆だが、首都圏に進出し成功した大阪発祥のデベロッパーは少ないはずだが、平成27年分譲の「レ・ジェイド世田谷 砧」(25戸)を取材し、28~29年の「若松町」「渋谷富ヶ谷」と30年の中部電力との資本提携あたりで、何かをしでかすのではないかという予感はあった。
そして、2020年1月、北海道日本ハムファイターズの新球場のネーミングライツ(命名権)を取得したとき、予感は確信に変わった。他の球団のように単なるCM看板にとどまらず、不動産事業と抱き合わせであるはずだと思った。その後の経緯は省略するが、その通りになった。
昨年分譲し、早期完売した「パーク レ・ジェイド白金レジデンス」(55戸)は三菱地所レジデンスとのJVだが、メインは同社だ。大手デベロッパーを従えさすことができる中堅デベロッパーは同社のほかはモリモトくらいだ。
シニア層もターゲット いわき駅前の免震再開発 フージャースコーポ・日本エスコン(2022/9/17)
坪235万円でも7割近い144戸成約100㎡超58戸も人気 日本エスコン「つくば」(2021/4/24)
高層ZEH-M プラン秀逸 日本エスコン「レ・ジェイド大倉山」(2020/2/1)
3帖大の「Fテラス」ヒット 日本エスコン「豊田」 坪236万円も割安(2019/11/8)
全戸にホワイエ(屋内廊下)土地の価値を最大限引き出す日本エスコン「渋谷富ヶ谷」(2017/4/24)
ライトコート付きのプラン秀 日本エスコン 首都圏初の〝グラン〟「若松町」(2016/11/4)
大京 環境省「中高層ZEH」に3物件採択 経産省「高層ZEH」と合わせ断トツ31物件
大京は9月20日、環境省の「令和4年度 集合住宅の省CO2化促進事業」のうち「中高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に「(仮称)盛岡菜園プロジェクト」(ZEH-M Oriented)、「(仮称)琴似1条プロジェクト」(同)、「(仮称)ライオンズ南塚口町7丁目」(ZEH-M Ready)の3物件が採択されたと発表した。
この結果、オリックスグループの大京と穴吹工務店が「経済産業省 高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」と「環境省 中高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に採択された累計採択数は31物件になった。
両社は、開発する全ての新築分譲マンションで原則「ZEH-M Oriented」基準を満たす仕様で推進するとしている。
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これまで環境省の「中高層ZEH-M」は31物件、経産省の「高層ZEH-M」は33物件、合計64物件が採択されているが、うちオリックスグループは半分近くを占めている。天晴れ。
大京は、マンションの商品企画もそうだが、「環境共生」「ユニバーサルデザイン」でも業界をリードしてきた。なのに、最近は大手デベロッパー6社の後塵を拝している。戸数だけではないが、ブランディング、情報発信力に課題があるのではないか。
シニア層もターゲット いわき駅前の免震再開発 フージャースコーポ・日本エスコン
「ミッドタワーいわき」
フージャースコーポレーション(事業比率51%)と日本エスコン(同49%)は9月15日、常磐線いわき駅前の商業・住宅一体の「ミッドタワーいわき」のマンションパビリオンが完成したのに伴うメディア向け見学会を開催した。免震の21階建て全216戸で、うち3スパン55戸はシニア層をターゲットにした「シニアバリアフリー」住戸としているのが特徴だ。フージャースコーポにとっては市内で4棟目の分譲で、両社のJVは今回が初。
物件は、JR常磐線・磐越東線いわき駅から徒歩3分、いわき市平並木の杜1番の商業地域に位置する敷地面積約5,609㎡、免震21階建て全216戸(権利者住戸10戸含む)。専有面積は62.89~131.57㎡、価格は未定。駐車場は自走式222台。竣工予定は2024年2月下旬。設計・監理は熊谷組、UG都市建築、施工は熊谷組・加地和組・堀江工業特定建設工事共同企業体。販売開始は10下旬~11月上旬の予定。
プロジェクトは、平成26年3月に「いわき市並木通り地区復興市街地再開発ビル協議会」が設立されてから、平成30年3月の都市計画決定、フージャースコーポの事業協力者選定などを経て、2022年2月に着工。市の中心市街地活性化基本計画の一つ。
名称は「並木の杜シティ」で、全体敷地面積約1.1haに4階建て商業棟の1街区とマンション棟、駐車場棟からなる2街区で構成。「並木の杜」としているように、前面道路の国道の歩道部分幅員5mと再開発事業地内の幅員5mを合わせた幅員10mの部分は2段植栽のプロムナード(歩道)として整備するのも特徴の一つ。
主な基本性能・設備仕様は免震構造、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機(プレミアム住戸のみ)などで、共用施設にはクラブラウンジ、マルチスタジオなど。シニア層をターゲットにした「シニアバリアフリー」住戸はベンチ付き玄関、全居室・浴室引き戸ドア、メーターモジュール廊下など。
模型
ベンチ付き玄関(左)と2枚引き戸の浴室
現地(右は「ホテルB4Tいわき」)
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いわき駅に降りてすぐ、他の地方都市と同様、街の活性化が急務であることが分かった。来年1月開業予定の駅直結のJR東日本のスマートホテル「ホテルB4Tいわき」と駅前の再開発商業ビル「ラトブ」は目立つのだが、その他の建物は古く、駅前通りのケヤキ並木は美しいのだが、どこか暗い影を落としているように感じた。人通りも少なかった。
マンション取材を終え、一杯飲んでから帰ろうと思い、担当者に飲食街を尋ねた。マンションパビリオンのすぐ裏手がそうだと教えられたので足を踏み入れた。車がやっと通れるような狭い路地裏には大小の古い雑居ビルに飲食店・歓楽施設が櫛比していた。その佇まいは隆盛を極めた「常磐炭鉱」の昭和の時代にタイムスリップしたようで、時間が午後4時過ぎだったためもあるのだろうが、営業している店はほとんどなく、廃墟の町に迷い込んだような錯覚も覚えると同時に、おどろおどろしい光景に足がすくんだ。
そんな記者を見下すように、3匹の野良猫が毛を逆立て〝お前が来るところではない〟と殺意のこもったまなざしで睨めつけてきた。馬鹿にされまいと小生も睨み返したら、そのうちの一匹は記者の剣幕に怖気ついたのか脱糞(マーキングか)した。
猫とそんなやり取りをしていても埒があかないので、その飲食街と目と鼻の先の「ラトブ」1階のカフェ&バーでワインを飲んだ。安くておいしかった。そろそろ帰ろうとしたら、目の前の対面の店に「営業中」の電灯がついた。午後5時過ぎだったか。落ちぶれ果てても小生は記者だ。この目で疲弊する飲み屋の実態を探ろうと、店の前のベンチに腰かけていた女子高生3人組に勧められるままに3店並んだ真ん中の「わら焼 湊」に入った。
カツオなど新鮮な魚介類を本物の藁で焼いて食べさせる店だった。店内に入った途端、L字型の無垢の白木のカウンターが目に飛び込んできた。幅(奥行き)にして50cm、長さにして3m+6m=9mはあった。樹種を聞いたらイチョウだった。値段は百数十万すると思ったが、「神社の御神木だったのをただで譲り受けたもの」とのことだった。
高級材の、しかも御神木だった貴重なイチョウのカウンターで酒が飲める僥倖に記者は舞い上がり、早速お勧めの酒を注文した。宮城県栗原市の一ノ蔵酒造の「祥雲金龍」だった。初めて味わう酒だった。甘さが抑えられている分だけ旨みと辛みが口腔に広がった。肴もおいしい。
会計を済ませるころには相当酔っぱらっていた。東京に戻るのは夜中になりそうだったので帰るのを断念、ホテルに泊まった。
翌日は「ラトブ」の4~5階にある市の図書館に立ち寄った。三猿文庫・愚庵文庫など背表紙を見ただけで読みたくなるような歴史的な書籍・文献がたくさんある。同市の所蔵図書の多さは東北一だそうだ。
飲まずに東京に戻っていたら、いわき市の悪いイメージしか残らなかったはずだ。酒に十の徳あり。(今年5月に行われた、フランスの日本酒コンクール「Kura Master 2022」純米酒部門で「祥雲金龍 純米吟醸」が部門最高賞「審査員賞」を受賞したとある)
いわき駅近くの飲食・歓楽街の昼と夜
〝お前は誰だ〟〝大きなお世話だ〟(脱糞したのは手前の猫)
イチョウ材のカウンター(左)と生カキのわら焼き・「祥雲金龍」
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「シニアバリアフリー」は成功するとみた。これはどこのエリアのマンションにも通用するはずだ。肝心の坪単価だが、担当者から「書かないで頂きたい」と言われたので書かない。今回で4棟目の分譲というフージャースコーポは「年間100戸は厳しい」地域の需給関係を知悉しているはずで、高値追求しないとみた。市の人口動態などのデータも強気になれない数値を示している。
同市は昭和41年、県が主導して行った広域市町村合併によって生まれた中核市だ。市域面積1,232k㎡は当時日本一広い市として話題になった。その後、他の地域でも合併が相次いだため、現在は富山市(1,241k㎡)に次いで全国12番目の広さとなっている。
令和4年9月現在の人口は326,000人。福島県全人口の18.2%を占め、仙台市の1,068,129人(令和4年9月現在)に次ぐ東北エリア2番目の多さだ。しかし、人口は平成10年の360,661人をピークに減少の一途で、高齢化率も31.5%(令和2年)と30%を超えている。
「並木の杜シティ」が街の再生の起爆剤になるよう願う関係者の気持ちはよく分かる。
駅前通り
8物件目〝グラン〟「三番町26」 高値更新の坪1000万円前後 三菱地所レジ
「ザ・パークハウス グラン 三番町26」
三菱地所レジデンスは9月13日、都心のフラッグシップマンションシリーズ「ザ・パークハウス グラン」(102戸)の8物件目となる「ザ・パークハウス グラン 三番町26」の報道機関向け内覧会を行い、分譲対象78戸のうち半数以上の40戸を第一期として9月17日(土)から販売開始すると発表した。平均坪単価は1,000万円前後となる模様で、バブル崩壊後の同社の分譲マンションとしては最高値となる。
物件は、東京メトロ半蔵門線半蔵門駅・市ケ谷駅から徒歩8分、千代田区三番町26番の第二種住居地域・商業地域・第二種文教地区(建ぺい率84%、容積率471%)に位置する敷地面積約1,734.28㎡、17階建て全102戸(募集対象外住戸24戸含む)。専有面積は67.99~237.69㎡、第1期は40戸で、坪単価は平均1,000万円前後となる模様。売主は同社のほか三菱倉庫。竣工予定は2024年11月下旬。施工は東急建設。
現地は、二松学舎大、大妻女子大、東京家政学院大などのキャンパスがある文教エリアの一角で、四方道路に囲まれた従前オフィスだった土地。敷地西側は桜並木が美しい「大妻通り」に面している。
事業化に当たっては、地区計画により通常なら14階くらいしか建てられないのを千代田区の総合設計制度を活用することで容積緩和・高さ規制緩和を受け17階建てとし、内廊下方式、全住戸ワイドスパンなどを採用。
デザインでは、同社の「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」や「ザ・パークハウス五番町」などを手掛けた三菱地所設計 シニアアーキテクト・石井邦彦氏を起用。全16本の列柱とエンタシスのフォルムのほか、低層部の水平ライン部分には自然石、エントランスにはロートアイアンを採用するなど重厚感を演出している。
敷地北側のカスケードガーデンには「三春滝桜」の子孫木を配し、敷地四方に植栽を施し、「BIO NETINITIATIVE」にも取り組んでいる。
主な基本性能・設備仕様は、リビング天井高2700~3000ミリ、100㎡超ワイドスパン、Miele、SieMatic製の水回り、脱臭機能付き専有部ごみ置き場、タモ材の居室扉・壁・床仕上げ、床大理石張り、全館空調(エアロテック)、洋室ヘリンボーンパネル(有償)、トランクルームなど。
内覧会で同社執行役員第二販売部長・岡橋志郎氏は、「当社はこれまで番町エリアで14物件846戸を手掛けているが、今回の物件を当社最高水準の〝グラン〟としたのは、豊かな緑と四方道路に囲まれた希少立地を生かすため。総合設計制度を活用し、立体的空間をキーワードに天井高を高くするとか全館空調、専有部ごみ置き場など消費者インサイトに応えられる仕様レベルにした」と語った。
これまで問い合わせは約2,700件、7月からのモデルルーム来場者は約270件。そのうち約半数は千代田区、港区居住者。在日外国人投資家からの反響もあるという。第1期で販売対象の半分以上の40戸を供給できることから好調に推移していると説明した。
エントランス
レジデンスラウンジ
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同社のこれまでの〝グラン〟シリーズのうち「南青山四丁目」を除く「三番町」「千鳥ヶ淵」「南青山」「南青山高樹町」「麻布仙台坂」「南青山四丁目」「神山町」の6物件を見学している。
今回の1,000万円前後という坪単価は、これまでの番町エリアの最高値885万円を上回り、同社のバブル後の分譲マンション単価としても高値更新するというのは、価格の上昇からして〝さもありなん〟と納得した。
基本性能・設備仕様レベルもとくに驚くようなことはなかったが、全館空調(エアロテック)をグランシリーズでは初めて採用(未確認だが)しているのと、建物デザイン・住戸プランがとてもよくできているのが印象に残った。建物は、四方道路に囲まれた長方形の敷地の利点を最大限に生かしたシンメトリックな形状がとても美しい。〝美しいもののみが機能的である〟とはよく言ったものだ。「千鳥ヶ淵」も素晴らしかったが、石井氏の最高傑作となるのだろう。
住戸プランもしかり。3~14階までは1フロア7戸。タイプは60㎡、70㎡、100㎡(2スパン)、110㎡(2スパン)、15・16階が4戸。タイプは120㎡、170㎡(2スパン)、200㎡、最上階の17階が3戸。タイプは200㎡、230㎡、240㎡。スパンは60㎡が10,515ミリ、100㎡が14,855ミリ、110㎡が19,482ミリ、200㎡が25,840ミリなどだ。
この前見学した野村不動産「プラウドタワー目黒MARC」も60㎡台で8,000ミリ以上というワイドスパンが人気だと聞いたが、こちらは比較にならないほど長い。全ての居室が窓側に面しており、廊下幅は1,200ミリ以上ある。逆梁とし全て腰窓のカウンター付きとしているのもいい。
専有部に約1㎡のごみ置き場を設けているのにはびっくりした。専有部のごみ置き場は高級物件には採用事例があるようだが、記者は初めて見た(共用部の外廊下にごみ置き場を設けた事例は取材したことがある)。操作一つでマンション管理センターに通知でき、玄関サイドに設けられたドアから掃除担当者がごみを運び出すのだという。
専有部ごみ置き場
手前からSIC、SK付きUT(この左側にごみ置き場がある)、洗濯機置き場
玄関サイドのごみ置き場出入口(右が玄関ドア)
110タイプ
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余計なことかもしれないが、書くべきだと判断して書く。どこのメディアの方か分からなかったが、200㎡のモデルルームを見て「これって1億円超えるの? 」と担当者に質問した。小生は唖然とした。事前の説明会で同社は坪単価は1,000万円前後と話した。200㎡だから70坪近い。1,000万円×70坪=7億円(モデルルーム住戸は中層階想定で8億円台とか)というのは子どもだって計算できるではないか。この方だったか他の方だったか、「来場者270件」の意味するもの、「全館空調」が何だか分からない記者もいた。
つまり、「猫に小判」「豚に真珠」だ。同社は詳細にわたって説明したのに、聞いている記者はマンションのことなど全然わかっておらず、坪単価、全館空調、ワイドスパン、総合設計なども何のことやらちんぷんかんぷんということだ。この素人記者の方は何を書くのだろうか。読者はその記者が書く記事から何を読み取るのか。
そこで、同社をはじめデベロッパーにお願いだ。これまでも何度も書いてきたが、この種の内覧会をどんどん実施して、よく分かっていない記者向けにはマンションのイロハから説明する機会を設けていただきたい。必死で話しても相手に伝わらない、聞く側はなにを話しているのか理解できない…こんな不幸なことはない。
一つ書き忘れた。同社の物件の背中合わせの隣接地約2,670㎡では三井不動産レジデンシャルが18階建て共同住宅を2022年11月に着工する旨の標識が掛かっていた。おそらく分譲マンションだろう。分譲時期は異なりそうなので競合はしないだろうが、三井不動産レジデンシャルだって負けていられない。坪単価は1,000万円超となるのは必至だ(階高だけなら三菱地所レジデンスが勝つのか)。
モデルルーム リビング
モデルルーム 洗面室
モデルルーム 主寝室
現地
三菱地所レジ マンション単価もバブル後最高値更新 「神山町」は坪800万円台後半 (2021/9/15)
三菱地所レジ 「ザ・パークハウス グラン麻布仙台坂」は坪800万円(2016/7/15)
三菱地所レジ 「ザ・パークハウス グラン」第4弾「南青山」は坪800万円弱(2015/6/4)
皇居が一望できる唯一無二の地所レジ 〝グラン〟第3弾「千鳥ケ淵」(2013/8/5)
三菱地所レジ〝グラン〟第2号「ザ・パークハウス グラン三番町」(2013/5/24)
成約件数は10%減 単価・価格の上昇、在庫増続く 8月の中古マンション レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は9月12日、2022年8月度の不動産流通市場の動向をまとめ発表。
首都圏中古マンションの成約件数は前年同月比10.3%減の2,346件、成約坪単価は同13.7%上昇の222.0万円で、20年5月から28か月連続、成約価格は同13.4%上昇の4,280万円で、20年6月から27か月連続でそれぞれ前年同月を上回った。専有面積は同0.2%縮小の63.60㎡で、21年6月から15か月連続で前年同月を下回った。8月末の在庫件数は38,344件で、前年同月比10.8%増となり、7か月連続、在庫坪単価は241.7万円で、18年2月から55か月連続でそれぞれ前年同月を上回った。
中古戸建て住宅の成約件数は同16.2%減の877件、成約価格は同10.3%上昇の3,779万円で、20年11月から22か月連続で前年同月比を上回った。
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首都圏中古マンションの今年1~8月までの累計成約件数は23,735件となり、前年同期の26,899件より11.8%減少している。しかし、成約単価、成約価格、在庫価格、在庫数などは上昇・増加を続けている。
生活必需品など一般的な商品であればありえないが、新築マンションの供給が減少する一方で、価格も上昇の一途をたどっていることと密接な関係がある。2~3年前まで、山手線沿線の新築物件は一部を除き坪400万円台で推移していたのが、いまでは軒並み500万円を突破してきている。新築と連動する中古も、よほどの住宅取得環境が変化しない限り、価格の上昇は続きそうだ。
ただ、価格・単価の調整弁的な働きをする専有面積は15か月連続縮小しており、63.60㎡というのはファミリー層にとっては譲れない面積ではないか。物件情報サイトで「東京23区」「~4,500万円未満」「~70㎡未満」「2K~3LDK」で検索したら、23区全体の約23,000件のうちヒットしたのは26件しかなく、しかも、具体的な物件は表示されず問い合わせ先のみだった。
新築に置き換えてみると、坪単価222万円以下というエリアは、都内ならば舎人ライナー、八王子以遠、神奈川県は平塚以遠、横浜線・相模原線の一部、小田急線厚木以遠、埼玉県は大宮以遠、所沢以遠、東武野田線、千葉県は千葉ニュータウン線の一部、総武線千葉以遠、内房線、外房線、京葉線の一部か。
南北・銀座戦争か? 北の「十条」と競合あるか 三菱地所レジ他「戸越公園」
「ザ・パークハウス 戸越公園タワー」
三菱地所レジデンス、大成建設、東急、首都圏不燃建築公社、大成有楽不動産の5社は9月9日、戸越公園駅から徒歩1分(50m)の再開発マンション「ザ・パークハウス 戸越公園タワー」を同日から販売開始したと発表した。
物件は、東急大井町線戸越公園駅から徒歩1分、品川区戸越5丁目に位置する23階建て全241戸(募集対象外住戸70戸含む)。専有面積は30.60~120.45㎡。第一期(65戸)の価格は4,480万~24,800万円。竣工予定は2024年2月下旬。施工は大成建設。
地域の賑わい・魅力あるまちづくりを目指す「戸越公園駅周辺まちづくりビジョン」内の市街地再開発事業「戸越五丁目19番地区第一種市街地再開発事業」で、駅前のランドマークとなる商・住複合マンション。大成建設による外観デザインと制振構法「TASS-Flex FRAME」、乃村工藝社デザインチームFOO監修による共用空間デザイン「EDIT STYLE PLAN」をそれぞれ採用する。
「EDIT YOUR LIFE」
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乃村工藝社デザインチームFOOに注目している。同チームは2019年にリニューアルオープンした東京會舘新本舘のレストランなどを手掛けているが、それより1年前の2018年、東京建物・三菱地所レジデンス「Brillia 一番町」を取材した際、販売事務所の企画を乃村工藝社が初めて手掛けたことを聞き、「(同社が)本格的にこの事業に乗り出したら販売事務所のあり方そのものを一変させるかもしれない」と書いた。
今回の「EDIT YOUR LIFE」が同チームによるものかどうかは分からないが、有償のメニュープランを12タイプ用意する。コンパクト住戸は、「お気に入りに囲まれる至高のシングルライフ」をテーマにできるだけ仕切りをなくし、それぞれの空間を行き来することや、住まい全体をより有意義に使えるようにしているという。例えば、例えば55Nタイプではキッチンを90°回転させたり、居室と居室の間に「マルチファンクションエリア」を設けたりする。
これは、実際に見てみないとどのようなものか分からない。取材を申し込むことにする。坪単価はいくらになるのか。野村不動産「目黒」や旭化成不動産レジデンス「五反田」よりはかなり安いはずで、東京建物「池袋」と同じ坪520~530万円くらいではないか。第一期分譲は分譲対象の半分だ。確かな手ごたえを感じているのか。
「戸越公園」といえば「戸越銀座」も近い。同じ駅1分の「十条銀座」で知られる東急不動産「十条」との競合はあるのかないのか。「銀座戦争」であり、北区と南の大田区の「南北戦争」と見ることもできる。周辺は中低層の街並みが広がっているという意味でもよく似ているし、交通便だってどこを起点にするかだが、東京駅まで双方とも約30分だ。どちらが勝つのか負けるのか。相乗効果となればめでたしめでたしだが…。部外者としては興味津々だ。
近畿・中部圏上回る地方のマンション着工 大和ハウス 秋田県で同社初&県初のZEH
「プレミスト秋田中通ザ・レジデンス」
大和ハウス工業は9月9日、秋田市の旧ホテルハワイ・ラグーン跡地で開発中の分譲マンション「プレミスト秋田中通ザ・レジデンス」の概要が決定したと発表した。9月17日(土)にマンションギャラリーをオープンし、11月下旬から販売開始する。
物件は、JR秋田駅から徒歩15分、秋田市中通3丁目に位置する敷地面積約5,209㎡、14階建て全147戸。専有面積は64.66~86.77㎡、予定価格帯は2,900万円台~5,500万円台。設計・監理は創建設計。施工は錢高組。竣工予定は2024年7月。
現地は、1965年創業の老舗ビジネスホテル・旧ホテルハワイ・ラグーン跡地で、同社初の秋田県での分譲マンションで、県初の「ZEH-M Oriented」仕様とし、「BELS」による第三者認証で最高等級を取得。住戸内の一次エネルギー消費量を住棟全体で 24%削減する。
また、東北初となる「TSUTAYA」プロデュースの「ブック&コワーキングラウンジ」を設置。「TSUTAYA」セレクトによる書籍約500冊を用意、テレワークやWeb会議も可能な空間とする。「パーティー&キッチンスタジオ」「ゲストルーム」も設ける。
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知名度は全国区の同社による秋田県初の開発マンション&県内初の「ZEH-M」&県内初「TSUTAYA」がどれほどの威力があるか分からないのだが、概要から坪単価は200万円を切り、坪180万円くらいではないか。
これは高いのか安いのかさっぱり分からないが、この夏見学した人口約42万人の富山市の中心市街地で分譲された穴吹工務店「サーパス富山三番町レジデンス」は坪180~190万円だった。秋田市の人口は約30万人、中心市街地の老舗ホテルの跡地開発などをと比べるとよく似ている。地方都市の坪単価は坪200万円前後が相場か。
このところ、首都圏をはじめ三大都市圏でのマンション着工が減少し、地方圏で増えている。7月住宅着工でもマンションは前年同月比で首都圏は12.8%、中部圏は39.4%、近畿圏は22.0%それぞれ大幅に減少した一方で、その他の地域は25.2%増加した。令和4年1~7月でも、その他の地方の着工戸数は15,564戸で、首都圏の48,014戸には大きく引き離されているが、中部圏の5,269戸の3倍近く、近畿圏の13,596戸を上回っている。
ハウスメーカーもデベロッパーも地価・建築費の上昇で、価格は中堅所得層の取得能力を超えてきており、そのリスクを回避し、まだまだ低価格で供給できる地方圏に触手を伸ばし、あるいは軸足を移しつつあるような気がする。ZEHは地方のほうが先行しているようだ。
弘前市で〝2戸1〟エレベーター 一頭地を抜くプラン 第1期は一挙60戸 タカラL東北(2022/9/5)
戸建てに押され縮小するマンション市場/九州勢の着工 軒並み上位 近畿圏抜く(2022/8/7)
ZEH取得件数断トツ オリックスGr 穴吹工務店「富山」で同社初のZEH-M(2022/7/31)
単価の安さに驚愕 立地よく設備仕様レベル高い 駅圏最大級の野村不他「金沢」287戸(2022/7/30)
福岡の最高峰 第1期100戸 圧倒的な人気 タカラレーベン50周年「福岡天神」(2022/3/15)
北海道最高峰は坪415万円 大和ハウス他「ONE 札幌ステーションタワー」始動(2022/2/8)
分譲開始から10か月で全179戸完売 東急「ドレッセタワー新綱島」
東急が昨年11月に販売開始した東急新横浜線・新綱島駅直結の商・住・公の複合マンション「ドレッセタワー新綱島」が9月5日までに完売した。
物件は、2022年度下期開業予定の東急新横浜線新綱島駅に直結、東急東横線綱島駅から徒歩3分、新綱島駅前地区第一種市街地再開発事業地内に位置する地上29階地下1階建て全252戸(非分譲住戸73戸含む)。専有面積は44.88~113.45㎡、第1期(66戸)の価格は5,360万~1億8,290万円(最多価格帯6,500万円台・7,800万円台各4戸)。第1期の坪単価は400万円。竣工予定は2023年10月下旬。設計・監理は東急設計コンサルタント。施工は東急建設。販売代理は東急リバブル、東急ライフィア。
弘前市で〝2戸1〟エレベーター 一頭地を抜くプラン 第1期は一挙60戸 タカラL東北
「レーベン弘前GRAND RESIDENCE」
タカラレーベングループのタカラレーベン東北は9月5日、青森県弘前市のマンション「レーベン弘前GRAND RESIDENCE」を9月4日から販売開始したと発表した。
青森県内では「レーベン弘前THE MID TOWER」「レーベン青森新町THE GRAND MID」に続く第3弾。弘前市内最大級のマンションで、デザイン性と居住性を追求することで、街の新たなシンボルになることを目指した物件。
〝2戸1〟エレベーターのほか、二重サッシ・ペアガラス、内廊下方式(2戸1エレベーターで内廊下方式とはどのような構造なのかよく分からないのだが)、外壁断熱などが特徴。
物件は、弘前市大字北瓦ヶ町に位置する15階建て全112戸(ほかにゲストルーム1戸)。専有面積は58.15~86.18㎡。第1期(60戸)の価格は3,258万~6,698万円。竣工予定は2024年8月下旬。施工は鉄建建設。
〝2戸1〟エレベーター・両面バルコニープラン
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記者は、この種のリリースはほとんど記事にしない。マンションデベロッパーがマンションを売るという当たり前のことをコピペして記事にする「か・ち・も・な・い」と考えているからだ。
この日(9月5日)、同社からリリースを届いたときもスルーするつもりでざっと読んだ。「今世紀最大級、弘前を誇る全112邸のランドマークレジデンス」「第1期60戸供給御礼!」「すべての中心を、誇る」「想像は時を超越する」などと、おどろおどろしい、コピーを書いた本人も赤面するのではないかと同情したくなる宣伝文句が物件ホームページを飾っていた。
〝よくぞここまで〟とあきれ返ったのだが、小さな文字の「両面バルコニー」に目がとまった。かつて首都圏でも流行した〝2戸1〟エレベーターを採用し、両面バルコニーを実現したプランだ。最近はほとんど見られなくなった。
建物は15階建てだから、単純計算して1層は7~8戸。〝2戸1〟エレベーターにするには4基が必要になる。エレベーター設置率は1基/28戸だ。最近の首都圏マンションではまずないはずだ。青森県では供給されたことがあるのかどうか分からないが、ないとすれば、大げさな宣伝コピーも受け入れられるかもしれないし、インパクトもあると判断し、記事化することを決めた。
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第1期戸数が60戸というのにも驚いた。全住戸の2分の1以上ではないか。不動産経済研究所の調査によると、首都圏の7月の新規マンションの1件当たり販売戸数は約14戸だ。この数字と比べても、この戸数の多さがよく分かる。
弘前市の人口は約16.5万人で、青森市の約27.3万人、八戸市の約22.2万人に次ぐ3番目だ。そんな小都市(大変失礼)で一挙に60戸も供給して売れるのだろうか。売れたら凄い(価格は前段参照。高いのか安いのはさっぱり分からない)。原忠行氏が率いるタカラレーベン東北は、同社のリリースによると、2015年から2021年までで岩手県4棟/230戸、宮城県14棟/1,137戸、山形県3棟/295戸、秋田県3棟/193戸、福島県10棟/505戸、青森県2棟/169戸、合計36棟/2,529戸を供給し、東北エリアナンバーワンというではないか。年間にして約500戸だ。これまた凄い数字だ。
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タカラレーベンはもうずっと以前から、競争の激しい首都圏から地方へ軸足を移している。首都圏物件も大手デベロッパーとの競合を徹底して避ける戦略を取っている。
それが奏功しているのだろう。最近見学した「検見川浜」「戸田公園」「東川口」「小田原」などがことごとく人気になった。地方も好調なのだろう。「レーベン福岡天神ONE TOWER」の価格と売れ行きには唖然とした。「一頭地を抜く」という言葉がぴったりのデザイン・意匠、商品企画が秀逸だ。「弘前」もそうだ。
県初のPPP事業4か月で全143戸完売 タカラレーベン・埼玉建興「東川口」(2022/7/14)
タカラレーベン 小田原駅徒歩1分「レーベン小田原THE TOWER」完売(2022/8/18)
福岡の最高峰 第1期100戸 圧倒的な人気 タカラレーベン50周年「福岡天神」(2022/3/15)
タカラレーベン東北 医療従事者応援 私募債発行・贈呈式(2021/11/20)
マンションの質の退行・劣化、着工戸数の捕捉率、新築・中古の価格などを考える
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あまり論じられない新築マンションの質、着工戸数と供給戸数の違い、新築と中古の坪単価などについて考えてみる。
まず、新築マンションの質について。ここ3~4年間、地価や建築費の上昇に反比例するように基本性能・設備仕様の劣化・退化が進んでいるが、これについて言及した書籍や記事など寡聞にして知らない。
かくいう記者も、新築マンションの記事を書くとき基本性能・設備仕様レベルについて極力触れるようにしてはいるが、そもそも劣悪な(と思える)物件は取材しないし、ここ10年くらいは年間100物件前後しか見ていないので、マンションの質を論じる資格はない。歯がゆい限りだ。
しかし、過去に書いた記事から、いかに最近のマンションの質が劣るかは証明することができる。10年前の2012年に分譲されたマンションの記事を紹介する。
この年を代表する首都圏マンションの一つ、三井不動産レジデンシャル「パークコート千代田富士見ザ タワー」では「標準階高は3,450ミリ。モデルルームはセンのフローリング、エントランスの天井布クロス、紫檀のドアハンドル、天然石巾木、オニキス洗面ボウル、アントニオ・チッテリオデザインの水栓、センで統一した和室(以上181㎡の「粋」)、チーク材の突き板フローリング、ホワイトオーク材の建具、アルミ真鍮ガラスの多用、天然石モザイク貼りだった」と書いた。坪単価は476万円だった。近く分譲される準都心部の〝駅近〟タワーマンションとほぼ同じだ。
坪単価370万円の野村不動産「プラウド小石川」はどうか。「共用部分の床はカリン材。壁はブビンガ。専有部分にも自然石、自然木がふんだんに用いられており、シルバーハート、アフドルモシアなど聞いたことも見たこともない面材が採用されていた。ドア・把手はイタリア製、システムキッチン・御影石天板はジーマティック製。浴槽のエプロンなども天然御影石だ」と記事にした。
坪単価270万円の三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス日吉」は「キッチンの天板が大きめの御影石で、バックカウンターの天板も同じ御影石を採用し、吊戸棚を含めて標準装備。ディスポーザー、食洗機、ミストサウナも標準装備」とある。
坪単価310~320万円のモリモト「ディアナコート文京千石」は「マホガニーを家具・面材、床材に採用している。床は厚さ2ミリだ。このほか玄関、キッチン、洗面室にはふんだんに大理石、御影石を採用。設備仕様では、ディスポーザー、食洗機などを標準装備。サッシは高さ2300ミリ」と紹介した。
このような質の高いマンションはこの年に限ったことではない。三菱地所レジデンス(当時、三菱地所)が2006年に足立区で初めて分譲した「北千住パークハウス」の記事をぜひ読んでいただきたい。記事には「天井高最大2.7メートル、二重床・二重天井、ワイドスパン、ディスポーザー、御影石の玄関床、複層ガラス採用など、間違いなく足立区や伊勢崎線の物件では水準以上だと判断した。坪単価は185万円で相場並みとみた」と書いている。同社の矜持が商品企画に表れている好例だ。
では、いったい質の劣化はいつごろから始まったか。記者は2018~2019年ころの着工で、2019~2020年ころの分譲開始物件ではないかと考えている。2017年分譲開始の住友不動産「シティタワーズ東京ベイ」は「御影石キッチンカウンター、ディスポーザー、食洗機、リビング天井高2600mm、ワイドスパン、二重サッシ、Low-Eガラス」だった。
同じ2017年分譲開始の長期優良住宅認定を受けた積水ハウス「グランドメゾン品川シーサイドの杜」は「設備仕様では、メーターモジュール、ドア把手の壁面までのセットバック、折上げ天井の廊下、天然石のキッチン天板、食洗機、ミストサウナなどが標準装備。リビング天井高は2500~2650ミリ」だ。坪単価は308万円だった。
2020年に野村不動産「プラウド神田駿河台」を見学し、記事には「主な基本性能・設備仕様はリビング天井高2700(11階まで)~2800ミリ(12階から)、階高3200~3400ミリ、二重床・二重天井、食洗器、木製フローリング、木製壁パネルなど」と書いたのだが、この時、天井高がどんどん低くなっていることを関係者と話したのを記憶している。
それにしても、マンションの基本性能・設備仕様、居住性能などについて論じられることがほとんどないのは、自戒も含めてジャーナリストを名乗る人やメディアの劣化もまた進んでいるからではないか。
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冒頭の表を見ていただきたい。着工戸数と供給戸数はかなり差(捕捉率)がある。この11年間で見ると、もっとも捕捉率が高いのは2013年の83.0%で、もっとも低いのは2020年の50.5%だ。平均では63.7%となっている。
国交省の着工戸数は、着工時点の分譲用として建築確認が行われた戸数で、その後、取り下げられたり、あるいは用途変更されたりした場合まで追跡していない。
一方で、不動産経済研究所の数値には、30㎡未満や1棟売りなどは調査対象外で、再開発や建て替えなどによる地権者用住戸や事業協力者向け・優先分譲などは含まれていない。
これが捕捉率に表れている。記者は、当初分譲予定だったのをリートなどに1棟で売却する戸数は年間3,000~5,000戸、地権者向け・事業協力者向け住戸は年間7,000~10,000戸、30㎡未満のコンパクト・投資用は7,000~9,000戸、合計年間17,000~24,000戸くらいあるとみており、この数字を加えるとほぼ住宅着工戸数と一致する。
マンション市況を論じる場合、この捕捉率にも注目する必要がある。供給戸数が減っているから市況が低調とは限らない。むしろ逆のケースもありうるわけで、マクロデータを鵜呑みにしてはいけない。
新築供給戸数と成約件数の推移を見てみよう。2016年に新築の供給戸数35,772戸を中古戸数37,189戸が上回って話題になったが、この年の住宅着工は64,769戸(捕捉率55.2%)だった。その後、6年連続して中古が新築を上回っているが、表面に出ない数値も考慮しないといけない。〝新築低調、中古好調〟という単純な図式にはならないということだ。ただ、中古の成約件数と坪単価は2021年に過去最多・最高となったのは注目に値する。
新築と中古の坪単価について。新築はこの10年間で45.1%も上昇している。2020年には坪300万円を突破した。20坪(66㎡)で6,000万円だ。
ただ、この数値も前段で書いた基本性能・設備仕様ベルや専有面積の推移と一緒に考えないと市場を捉えたことにはならない。専有面積でいえば、2021年の平均面積は66.86㎡で、坪単価が200万円以下だった2002年の73.73㎡から実に6.87㎡(約2.1坪)、畳数にしたら約4.2畳大も縮小している。価格が大幅に上昇し、質も面積も低下の一途なのが今の市場だ。
中古はどうか。中古もすさまじい上昇を続けている。2021年は坪197.4万円で、2012年の126.0万円から56.7%の上昇だ。マンションの45.1%と比較すると11.6ポイントも高いのは、新築の価格上昇、供給減、基本性能・設備仕様の退行のほかリフォーム・リノベ物件による魅力付けなど様々な要因が考えられ、詳細な分析が必要だ。専有面積はこの10年間63~65㎡台で推移している。
新築価格を100%とした場合の中古価格の割合は60前後で推移してきたが、2021年は63.9に上昇した。これも中古の市場・先高観を反映しているのかもしれない。
三井不動産レジデンシャル「パークコート千代田富士見ザ タワー」(2012/11/5)
「まだ間に合う」 借景が見事な野村不動産「プラウド小石川」(2012/5/25)
三菱地所レジ「ザ・パークハウス日吉」全97戸が2カ月で完売(2012/5/22)
モリモト「ディアナコート文京千石」 床も面材・家具もマホガニー(2012/4/2)
「9割がワイドスパン、最強の間取り」全1,539戸の住友不「東京ベイ」(2020/3/28)
呉越同舟効果 「5本の樹計画」の本領発揮 積水「品川シーサイド」1期207戸!(2017/3/24)
隣接明大校舎の巨木の借景見事 日本初の木造ハイブリット 野村不「神田駿河台」(2020/11/24)
三菱地所の足立区初の「北千住パークハウス」が完売間近(2006/3/10)