東京ガスなど15社 カーボンニュートラルに貢献 LNGバイヤーズアライアンス設立
「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」設立記者発表会(ホテルニューオータニで)
東京ガスを筆頭にアサヒグループホールディングス、いすゞ自動車、オリンパス、堺化学工業、ダスキン、玉川学園、東芝、東邦チタニウム、ニュー・オータニ、丸の内熱供給、三井住友信託銀行、三菱地所、ヤクルト本社、ルミネの15 社は3月9日、「カーボンニュートラルLNG(以下、CNL)バイヤーズアライアンス(以下、アライアンス)」を設立した。
アライアンスは、持続可能な社会の実現に向け、CNLを調達・供給する東京ガスと購入する各社が一丸となり、CNLの普及拡大とその利用価値向上の実現を目的として設立されたもの。気候変動対策やSDGsへの貢献、ESG企業経営に直結する重要なソリューションの一つとする。
アライアンス参画各社は、2050年の「カーボンニュートラル社会の実現」に貢献することを目指し、CNL を世の中に広く認知させるとともに、投資機関による評価向上や国内各種制度における位置づけの確立に向けて取り組みを推進していく。
CNLは、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスをCO2クレジットで相殺(カーボン・オフセット)し、燃焼させても地球規模ではCO2が発生しないとみなすLNG。東京ガスが2019年に輸入を開始し、カーボンニュートラル都市ガスとして日本で初めて供給を開始した。対象となるCO2クレジットは、信頼性の高い検証機関が世界各地の環境保全プロジェクトにおけるCO2削減効果をCO2クレジットとして認証したもの。
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この日(9日)の記者発表会場となったホテルニューオータニの広い宴会場正面には、欠席したアサヒグループ、オリンパス、ヤクルトの3社を除くそれぞれの業界を代表する会社の代表全員が、社章バッジではなくSDGsバッジを襟に付けて並んだ。わが住宅・不動産業界では三菱地所執行役員コマーシャル不動産戦略企画部長兼都市計画企画部長・井上俊幸氏とグループ会社の丸の内熱供給取締役社長・土屋正裕氏が出席していた。
冒頭に、経産省資源エネルギー庁長官・保坂信氏と環境省総合環境政策統括官・和田篤也氏からのビデオメッセージが紹介され、それから東ガスソリューション共創部長・清水精太氏から概要説明があり、各社のあいさつもあった。
年を取るごとに横着になっている記者は、事前にしっかり勉強しなかったために、清水氏が「今後CNLの輪を100社、1000社に、世界に広げたい。東京ガスのGはGoodのD」と語ったのは印象に残ったが、意義や問題点、今後の展開などをよく把握できなかったというのが率直な感想だ。
もちろん、記者だってSDGsのバッジを持っているし、脱炭素社会実現の取り組みは待ったなしなのはよくわかる。菅総理が昨年10月26日の所信表明で、「わが国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と表明した。アメリカ・バイデン大統領は今年1月、「パリ協定」に復帰署名を行い、中国・習近平主席も2060年のカーボンニュートラルを表明した。これから一挙にこの取り組みは加速する。
しかし、一方ではよくわからない問題も多いような気がする。カーボン・オフセットは果たして問題の解決につながるかという問題だ。様々な問題が指摘されている。例えば、ある地域での森林減少を抑制しても、他の地域で森林破壊が増大すれば、カーボンニュートラルにならないとか、国境を越えて金で売買されるクレジットは結果として発展途上国の様々な問題解決につながらないどころか矛盾、格差を拡大し固定する…などだ。
さらにまた、わが国は電源の自給率は11.8%(2018年度)にしかすぎず、化石燃料への依存度は85.5%にも達する。3.11以前は電源の11.2%を占めていた原子力発電は今後どうなるのか、30年先には水素、太陽光、地熱、風力などの再エネとLNG、原子力、石炭がバランスよく利用されるのか、バイオエタノールや南海トラフに大量に眠っているといわれるメタンハイドレードの開発・利用は可能になるのか、森林はきちんと管理できているのか…。
最後に資源エネルギー庁によるわが国の2018年度の電源構成比率データを紹介する。( )内は2010年度。
・石炭 25.1%(22.7%)
・石油 37.6%(40.3%)
・LNG 22.9%(18.2%)
・原子力2.8%(11.2%)
・水力 3.5%( 3.3%)
・再エネ8.2%( 4.4%)
ホテルの近くで咲いていたムササキナバナ
開幕前に西武〝日本一〟 素晴らしいボールパーク化工事完了 人材流失に終止符 更新
「メットライフドームエリアの改修計画」竣工式セレモニー 後藤オーナー(右)と辻監督
後藤オーナー(左)と辻監督
西武ライオンズは3月8日、投資額約180億円、工期3年3カ月をかけてリニューアル工事を進めてきた「メットライフドームエリアの改修計画」のすべての施設が完了したのに伴い、竣工式を行った。当日はオーナーの後藤高志氏(西武ホールディングス社長)のほか、代表取締役社長・居郷肇氏、辻発彦監督、施工主の鹿島建設・押味至社長などが出席し、メディア関係者に施設を公開した。公式戦開幕日の3月26日(金)には一部の施設を除きオープンする。
改修計画は、「ボールパーク化」と「チームと育成の強化」の2つを軸に、2017年12月から工事が開始されており、自然豊かな周辺環境と半ドームという特性を活かすことで、開放感に満ちた、四季折々の風情が楽しめるボールパークを目指し、屋根の外側の広がりを有効に活用して大型フードエリアやこども広場などを整備した。
また、ライオンズ トレーニングセンター(室内練習場)、若獅子寮、CAR3219フィールド(西武第二球場)など選手の育成環境面についても施設を刷新し、野球に集中できる環境を整備した。
野球観戦以外にも楽しめる「ボールパーク化」に加え、選手の練習・育成環境の刷新を行ったことにより、「ファンにとっても選手にとってもより満足できる施設」へと変貌した。
ドーム内で行われたセレモニーで後藤オーナーは次のようにあいさつした。
「事故や遅延なく、予定通り『メットライフドームエリアの改修計画』の完了を迎えることができたことを、大変うれしく思っております。
メットライフドームエリアの改修計画には、『ボールパーク化』『チームの育成/強化』という2つの目的がありました。さまざまなエンターテインメント性の高いものを用意させていただいたことで、年齢、性別を問わずあらゆる世代の方に埼玉西武ライオンズの試合、そしてコンサートなどのイベントを心からエンジョイしていただけると思います。『チームの育成/強化』については、既に完成しておりますライオンズ トレーニングセンター、若獅子寮、さらにはCAR3219フィールドを整備したことで、若手のプレーヤーの育成、強化に存分に活かされることを期待しております。
コロナ下の中で、行動変容、価値変容、などを言われる時代ですが、プロ野球の開幕により、多くのファンの皆さま、国民の方に希望、元気、勇気、笑いをお届けして、日本を元気づける大きな力になっていきたいと考えております。西武グループの理念である『地域・社会の発展、環境の保全に貢献する』、『安全・安心、そして快適なサービスをご提供する』という理念に基づいて、このメットライフドームエリアをしっかりと運営していきたいと思います。
続いて、辻監督は次のようにあいさつした。
「グランドオープンを迎える年に、監督として指揮をとれることを大変うれしく思っております。この改修工事を経て、本当に新しい座席も増えた中で、先ほど『アメリカン・エキスプレス プレミアム ラウンジ』に足を運び拝見しましたが、ゆったりとした環境で野球を楽しめる素晴らしい場所だと思います。選手たちと同じ目線で野球を楽しめる、近くで選手と触れ合える、そんな素晴らしい場所を、メットライフドームの大きな目玉のひとつとして皆さまに楽しんでいただきたいです。
そして、メットライフドームの新たな歴史の幕開けとなるこの2021シーズン、日本一という大きな目標に向かって戦ってまいります」
セレモニー
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ここまでの記事はほとんど球団のプレス・リリースのコピペ。過不足なく伝えられたと思う。以下が、西鉄・西武ファン歴60余年の記者の独断と偏見の記事。やや我田引水的な部分もあるが、極力客観的に書くつもりだ。西武が嫌いな人もお付き合い願いたい。
素晴らしい施設が誕生した。記者は他の取材が入っており、公開された施設のうち半分くらいしか見学できなかったが、見学した施設は多分〝日本一〟だと思う。
その前に、どうして三重県出身の記者が西鉄ファンになったのかの経緯を紹介する。
熱烈なファンになったのは、知将・三原修監督時代の1956年から1958年まで読売巨人軍を下して日本シリーズ3連覇を達したあたりだ。ご存じない方も多いかもしれないが〝神様仏様稲生様〟が流行ったころで、中西太氏のほか、すでに鬼籍に入られた豊田、関口、仰木、高倉、島原の各氏らが活躍した時代だ。記者は7~9歳だった。
強かったからファンになったわけではない。伏線があった。小さい頃のことはよく覚えていないのだが、4歳年上の頭の悪い兄は捕手をしており、キャッチボールをしても記者に手加減などしなかった。別棟の風呂や便所の下見板、戸板などをどれだれ壊したことやら。兄との仲は最悪となった。1954年、記者が5歳のときだ。西鉄と中日が日本シリーズで対決した。中日・杉下投手が3勝するなど4-3で中日が日本一になった。当然、兄は中日ファン。ならば俺は負けた西鉄を応援しようとそのとき決めた。西鉄が負けたことがその後の記者の性格形成に大きな影響を与えた。
西鉄が西武に身売りされても心変わりなどせず、ずっと応援してきた。後藤オーナーは1949年の2月生まれで、記者より2か月年上だが、西武ファン歴は記者の方が長いはずだ。
さて、肝心の施設。トレーニングセンター、CAR3219フィールド、エントランスゲート、レンガサークル、ライオンズチームストア プラックス、3塁側コンコース新飲食エリア、グリーンフォレスト デリ&カフェはみんな素晴らしい。
トレーニングセンターは12球団最大級の広さということだ。内野フィールドエリアは内寸50m×50m、メットライフドームと同じ人口芝が採用されており、試合と同様の環境で練習が可能。ブルペンは5レーン、バッティングは4レーン。一部空調設備付き。ファンも練習風景を見学することができる。トレーニングセンターと全4層の若獅子寮(28室)は廊下でつながっており、野球に集中できる環境を整備したという。
記者は、神宮球場しかトレーニング室を見たことはないので比較は難しいが、雲泥の差だと思う。施設全体のスマートスタジアム化も行っているそうなので、投球や打撃データを駆使して選手育成に生かせるはずだ。
寮は門限が定められているが「門限破りはいない」(球団広報=本当かしら)そうだ。清原氏はしょっちゅう門限を破ったはずだ。
ライオンズチームストア プラックスは2階層で、600㎡を誇る大型旗艦店。ファンはたまらないだろう。
残念ながら、バックネット裏のアメリカン・エキスプレス プレミアム、4人掛けテーブル4、6~8名が利用できるバーティテラス、ブルペンかぶりつきシート、立見席ステンレスカウンター、パノラマウッド4など17種の客席や、これまでは芝生席だった外野に設けられた4,374席の指定席は見学できず、さらにベンチ内の空調設備も見ることができなかった。
トレーニングセンター
トレーニングセンター内
CAR3219フィールド
CAR3219フィールド ブルペン
ライオンズチームストア プラックス
ベンチ内空調設備
パーティーテラス
ネット裏テーブル4
ネット裏指定席
アメリカン・エキスプレス プレミアム ラウンジ
テイキョウキッズフィールド
テイキョウキッズルーム
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セレモニーが行われた約20分間、記者は〝夏熱く冬寒い〟球場の欠点はよくわかってはいたが、後藤オーナーや辻監督がスーツ姿なのにコートを着たままはというのはいかにも失礼だと思い、コートを脱いで震えながら必死にメモを取った。
後藤オーナーも辻監督も〝ペナントレース奪還〟〝日本一目指す〟をそれぞれ1~2回、合計で6回は口にしたはずだ。記者は、日本シリーズで勝つのは容易だと予想するが、目の上のたん瘤・ソフトバンクを倒すのは容易ではないと思う。現有勢力ではどうひいき目に考えても〝神様仏様稲生様〟のような計算が立つ投手が足りない。
しかし、練習環境は間違いなく日本一だと思う。これで、毎年のように続いていた全日本クラスの人材の流失に終止符が打たれると確信した。西武の黄金期(何度目になるのか)が始まる。
もう一つ、球団、野球ファンの方々にいかに西武が優れたチームであるかの客観的データを紹介する。
記者は以前、ドラフト選手の現役稼働年数を数日かけて調べたことがある。確証があったわけではないが、〝西武がナンバーワン〟という確信があったからだ。結果はその通りだった。次位は広島だったか。
スカウト陣の目利き力が優れていることの証左だ。そしてまた、監督やコーチに就任するスタッフの数も西武が他を圧倒しているはずだ。辻監督が就任した2017年には、ソフトバンク・工藤公康氏、ロッテ・伊東勤氏、中日・森繁和氏の西武出身者4人が監督をそれぞれ務めた。12人の3分の1だ。
もういい加減止める。辻さん、優勝できなくてもいい。行きつけのヤクルトファンの酒屋の親父は「いいんじゃないですか。西武は選手の育て方がうまい。儲かればいいんです」と、後藤オーナーが喜びそうな言葉を発した。ヤクルトがんばれ。
あっ、一つ肝心なことを書き忘れた。大型ビジョンは従前のものより2倍になり、臨場感溢れるものになった。その大型ビジョンの下の1塁側のフェンスには「野村不動産グループ」の広告が掲出されていた。
このほか住宅・不動産関係の広告では「住友不動産」が1塁側、「菊池建設」が3塁側の天井部分に掛かっていた。
「ボールパーク」に唯一欠けているのはやはりホテルだ。首都圏の他の球場は全て立派なホテルが近接している。
レンガサークル(1個2万円で昨年売り出されたが、予定5000個のうち残りはわずか。増加する予定はないとか)
辻監督のレンガ
メヒア選手のレンガ(家族など9個を刻んだとか。このほか東尾氏、ニール投手、源田選手の名も刻まれている)
住友不動産の広告(1塁側)
野村不動産グループの広告
菊池建設の広告(3塁側)
3.11から10年 人口減少幅 拡大と縮小が拮抗 太平洋岸39市町村の人口動態
陸前高田市役所玄関(2011年4月12日撮影 消防科学総合センター提供)
pdf 令和3年2月被災地人口.pdf
警察庁、復興庁などのデータによる死者19,668人(うち関連死3,367人)・行方不明2,529人の人的被害を受け、今なお約4.1万人の人が避難生活を続けている2011年の東日本大震災(3・11)からもうすぐ10周年を迎える。甚大な被害を受けた太平洋岸39市町村の人口動態を紹介する。
今年2月1日時点の人口を見ると、岩手県は県全体で昨年より1.1%減少(前年同月は1.2%減)したのに対し、太平洋岸12市町村は2.1%減少(同2.2%減少)と減少幅は縮小したが、県平均を1ポイント上回っている。もっとも減少幅が大きかったのは田野畑村の3.6%で、久慈市、野田村、岩泉町、宮古市、陸前高田市は前年より減少率が増加した。
宮城県は、県全体で昨年より0.4%減少(前年同月は0.5%減)したのに対し、太平洋岸15市町村は0.2%減(同0.2%減)と変わらず。仙台市は0.2%(前年同月は0.1%増)、名取市は0.6%(同0.6%増加)それぞれ増加した。39市町村で人口が増加したのはこの2市のみ。
減少幅が大きかったのは女川町の2.5%(同1.3%)、南三陸町の2.4%(同2.7%)。昨年より減少率が増加したのは石巻市、塩竃市、亘理町、山元町。減少率が減少したのは南三陸町、東松島市、利府町など。
福島県は、県全体で昨年より1.0%減少(前年同月は1.0%減少)したのに対し、太平洋岸10市町村全体では1.1%減少(同1.0%減少)した。
減少幅が縮小したのは相馬市、大熊町、楢葉町で、拡大したのは富岡町の3.2%減(前年は2.2%減)、浪江町の2.8%減(同1.4%減)、双葉町の2.3%減(同1.7%減)など。
39市町村合計の人口は、前年同月の約249.5万人から約248.0万人へ0.6%、1.5万人減少した。減少幅が拡大したのは17市町村で、縮小したのは15市町村だった。
震災前との人口比較では、女川町が43.7%、南三陸町が38.4%、大槌町が29.8%それぞれ減少している。
宮城県名取市の高さ8メートルの慰霊碑(2017年3月撮影。波はここまて達した)
自転車が埋まった浦安市今川地区の住宅街(2011年3月18日撮影)
地面が50cm近く沈下し、ビールケースで下りられるようにしている稲毛高浜南団地(2011年3月22日撮影)
東日本大震災から9年目 太平洋岸39市町村の人口減少止まらず 改善したのは11市町村(2020/3/3)
ポラス 宮城県名取市の仮設住宅で慰問の南越谷阿波踊り(2017/4/27)
液状化に悲鳴あげる浦安市 道路・上下水道ズタズタ 計画停電も(2011/3/17)
「砂上の楼閣都市」新浦安 それでも住宅はしっかり建っていた(2011/3/18)
大ダメージを受けた新浦安 液状化対策は万全だったか(2011/3/19)
海・山・地の神の怒りの刃見る思い 千葉市美浜区の液状化被害も甚大(2011/3/23)
「晴海」「豊洲」「有明」 液状化は全く問題なし(2011/4/6)
野村不動産 小規模オフィスビル「H¹O外苑前」に木造ハイブリッド初採用
「H¹O外苑前」
野村不動産は3月5日、従業員10名未満の小規模オフィスマーケットのニーズに対応したオフィスビルブランド「H¹O(エイチワンオー)」(Human First Office)シリーズ第12号物件「H¹O外苑前」(2022年10月開業予定)の主要構造部へ初めて木造ハイブリッド構造を導入すると発表した。
「H¹O外苑前」は、事業企画及び設計を担当する熊谷組が2017年に業務・資本提携した住友林業と共同設計を行い、木質耐火部材の大臣認定を取得したλ-WOOD(ラムダウッド)を使用。柱・梁一部の木造化によって建築時のCO2排出量約21tの削減と、CO2約19tの固定を実現する。
CO2固定量は、計画地(約453㎡)と同等の広さの土地に杉を植栽した場合のCO₂吸収量約50年分に相当する。
同社は、国際的な森林認証制度「SGEC/PEFC プロジェクトCoC 認証」をデベロッ パーとして初めて、またオフィスビル分野で初めて「H¹O平河町」(2021年2月竣工済み)で取得している。
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いい取り組みだ。同社に期待したいのは外壁への木造の採用だ。コストのことは分からないが、技術的には可能なはずだ。画像と記事を添付したように、大田区の「田園調布せせらぎ館」や三井不動産の「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」は最高に素晴らしい。
「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」
「田園調布せせらぎ館」
隈研吾氏設計 鉄と木とガラスの「融通無碍」ハイブリッド「田園調布せせらぎ館」(2021/1/28)
隣接明大校舎の巨木の借景見事 日本初の木造ハイブリット 野村不「神田駿河台」(2020/11/24)
さすが三井不動産 わが国初の本物の木造〝杉乃木〟ホテル「神宮外苑」に誕生(2019/11/13)
EC拡大 多様化する顧客ニーズ コロナ禍でも伸びる三井不ロジスティクス事業
「MFLP東名綾瀬」
三井不動産は3月4日、日比谷三井タワーでロジスティクス事業記者説明会を開催し、同社常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(4月1日付で専務執行役員に就任予定)がこれまでの取り組みや新規開発物件の紹介、今後の展開などについて説明した。説明会はWeb会議システム「ZOOM」でのオンライン参加も可能で合わせて56名の報道陣が参加した。
三木氏は、新型コロナウイルスにより物流施設市場も大きく変化し、「EC(Electronic Commerce)は想像以上に拡大している。テナントのニーズも多様化しており、ICT活用が加速し、マルチユース、ラストワンマイル配送網の需要が顕在化し、その一方で参入企業の増加で用地取得の競争が激化。デベロッパーは全員参加型となった」と語った。
こうした環境変化に対応するため、三木氏は「従来以上の事業規模・領域拡大を目指す。これまでは年間5件くらいの開発スピードだったが、今後は増やしていく。物流ソリューションとしてパッケージで提案できるかが試されており、当社は機械化倉庫、デジタル倉庫、ミクスト産業施設、スタートアップ企業などとの連携、冷凍・冷蔵倉庫、アーバン型の展開に力を注いでいく。ICT活用により業務効率・従業員満足度も向上させ、環境配慮型倉庫の実現を推進する」などと語った。
新規開発物件は、「東名綾瀬」「新木場Ⅰ」「新木場Ⅱ」「海老名南」「平塚Ⅲ」「弥富木曽岬」「(仮称)粕屋町計画」の7物件の開発が決定し、累計では国内45物件・海外2物件合計47物件、延べ床面積は約390万㎡、投資額は約6,100億円となることを明らかにした。
三木氏(座った席がよくなかった。アクリル板の線はどうしようもない)
「MFLP羽田」
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発表会場には26名の、オンラインには30名の記者がそれぞれ参加するなど、コロナ禍にもかかわらず堅調に推移している物流市場を反映する賑わいを見せた。
記者は、三木常務が何を話すか注目していたのだが、コロナ禍であることを考慮したのか、この日はプロジェクターに映りだされた15ページにわたる説明会資料について説明したのにとどまった。〝日本一〟〝世界一〟は、「船橋MFLP」の21万坪の広さを「世界的に類を見ない」、併設されたスケートリンクを「世界基準」、「MFLP ICT LABO 2.0」を「日本に例がない」と3回話したのみで、他では稼働物件のテナント入居状況について「極めて順調」と語ったのにとどまった。囲み取材もなかった。
報道陣からは10人くらい質問があった。手が上がった質問者のほとんどに答える姿勢はいい。小生は伸長著しい業績に驚いているので次の質問をした。
・御社の2021年3月期3Qの分譲セグメントでロジスティクスやオフィス、マンションなどの投資向けの売上高が約2,800億円で、国内分譲マンションと戸建ての約2,500億円を上回るなど歴史的な数値となった。この投資用のうちロジスティクス事業はどれくらいの比率を占めるのか
・今後の事業展開で示している「光ダクト」の採用に注目している。工場・倉庫の難点は蛍光灯などの影が出るので、フォークリフト作業などの際のストレスが高いと聞いている。(「光ダクト」は光を拡散することで影を生じさせないので)革命を起こすかもしれない。倉庫会社でこれを採用している会社はどれくらいあるか
これに対して、三木氏は「売上数値は非開示。光ダクトは分からない」としか話さなかった。(三井不動産ロジスティクスパーク投資法人の2020年1月期末から2021年1月期末まで新規取得は5物件1,257億円、資産規模は約3,000億円の見込み。「光ダクト」は無限の可能性を秘めていると思う)
もう一つ聞き忘れたので、同社広報に確認した。三木氏は「2012年に物量施設事業部を発足させたときのスタッフは7名で、うち経験者は1人のみ」と語ったので、現在は何人か聞いたところ70人だった。10年で10倍増だ。すごい数字だ。
それにしても、ロジスティクス事業に参入してわずか10年でこの数字だ。既存の名だたる会社はいったい何をしてきたのか。
以下に、同社のロジスティクスに関する記事を添付する。
駅前4.5haの再開発も三井不グループに決定 三井不レジ「南船橋」人気加速か(2020/10/23)
人の100倍働く年収500万円ロボット! 三井不 日本初の物流ICT体験型ショールーム(2020/2/13)
わずか7年間でオフィス面積と肩並べる360万㎡開発 三井不のロジスティクス事業(2019/11/6)
アナログの世界に楔IoT活用で物流市場を変えるHacobu多業種と連携し課題解決構想(2019/9/22)
梓設計が本社機能 三井不 街づくり型「インダストリアルパーク羽田」満床稼働(2019/7/5)
住宅不可の151ha〝処女地〟新木場にライフサイエンス拠点 三井不の新事業(2019/6/1)
もう我々の出番ない〟 三井不動産〝かつて〟の主力、溝口も福田もICTに脱帽(2017/9/12)
画期的、大成功、渦を巻く〝三木&御酒〟雄たけび 三井不・プロロジス「川越」竣工(2018/11/6)
「最早、後発でない」「嫌悪施設でもない」 三井不 ロジスティクス本部長・三木氏(2018/5/21)
一都三県のコロナ緊急事態宣言 2週間延長へ 菅総理が表明
菅義偉首相は3月3日夕、3月7日とされている一都三県の新型コロナ緊急事態宣言の期限を2週間程度延長し、3月21日(日)までとする意向を示した。
記者も大賛成。別表に第2波の8月15日(土)から9月7日(月)までと、第3波の2月7日(日)から3月2日(火)までの感染者の推移を示した。
それぞれ感染者数は異なるが、波の形は似通っており、3月7日(日)までとされている今回の緊急事態宣言を予定通り解除したら、感染拡大は再発するとみた。
9月7日以降の感染者は100人を割る日も8日あったが、外国人入居緩和、GoToキャンペーンが東京へも適用された10月以降は爆発的に感染者が増えた。
徹底して感染を抑制し、オリンピック開催の機運を高めてほしい。
滋賀に拠点持つ旭化成など8社で構成する団体 「日本自然保護大賞2021」受賞
トンボ採取活動
滋賀県に拠点を持つ旭化成、旭化成住工、オムロン、積水化学工業、積水樹脂、ダイハツ工業、ダイフク、ヤンマーホールディングスの8社で構成する「生物多様性びわ湖ネットワーク(BBN)」は3月2日、公益財団法人 日本自然保護協会が主催する「日本自然保護大賞2021」の教育普及部門で大賞を受賞しましたと発表した。
BBNは、滋賀県に拠点を持つ異業種の企業8社が、滋賀県の生物多様性を保全することを目的に2016年に発足した任意団体。
今回の受賞につながったのは、「トンボ100大作戦~滋賀のトンボを救え!~」と題した2016年から開始したプロジェクト。各企業の持つ緑地や湿地、池の管理や定期的なモニタリング、周辺地域の自然の現状把握、ビオトープの整備や外来生物の駆除、自然観察会や活動の展示・発表などに取り組んできた。2020年からは、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)によるトンボの特徴や生息環境を公開するなど、積極的な発信に取り組み、企業・団体の参画拡大や生物多様性の保全意識の向上を目指している。
「日本自然保護大賞」は、2014年度から開始された表彰で、今回が7 回目。応募があった129 件の活動から保護実践部門、教育普及部門、子ども・学生部門の3 部門の大賞が各1件、特別賞である沼田眞賞1件、選考委員特別賞2件などが1月18日に発表された。3月13日にオンライン で開催される授賞記念シンポジウムで大賞および特別賞の合計6件の活動成果が発表される予定。
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このような表彰制度があることなど全然知らなかった。記者の故郷・三重県に隣接し〝近江泥棒、伊勢乞食〟などと揶揄されてはいるが、祖母の家系は滋賀県近江なので、とても親しみのある県だ。琵琶湖は若いころ1度行ったことがあるが、へべれけに酔っぱらった記憶しかない。水上勉「湖の琴」など小説の舞台には数えきれないほどあるはずだ。トンボが100種も生息するのか、大好きなアユはまだ獲れるのか。
授賞式は視聴しよう。わが三重県は入賞したことがないか調べたら、2019年の鈴鹿・亀山地域親水団体連携体と2020年に鈴鹿高等が大賞を受賞しているようだ。伊勢湾に注ぐ宮川は〝日本一〟きれいな川ですぞ。
国際的な産業・研究拠点目指す 東工大田町キャンパス高度利用 NTTUDなど
「東京工業大学田町キャンパス土地活用事業」
東京工業大学とNTT都市開発(代表企業、NTTUD)、鹿島建設、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東急不動産は3月1日、報道関係者を対象としたオンライン記者会見を開き、2月26日に締結されたJR田町駅前の「東京工業大学田町キャンパス土地活用事業」に関する事業協定書の概要を発表した。
同事業は、同大学田町キャンパスに位置する附属科学技術高等学校を大岡山キャンパスに移転することを前提に、公募型企画競争方式により事業者の選定が行われたもので、同大学が定期借地権を設定し、事業者が土地を借り受け、一体的な開発により大学施設を含む複合施設を整備し、管理運営を行うもの。
「科学技術とビジネスの融合により、才知溢れた人々と洗練された情報が集積し、新たな価値創造をリードしていく、国際的な産業・研究拠点を形成」する提案が採択された。隣接する田町グランパークなどとの一体的な街づくり 、国際的な産業・研究拠点の形成に資する1万㎡超のインキュベーション施設などを整備する。2030年6月の供用開始を目指す。
施設は、複合施設Aと複合施設Bから構成。Aは敷地面積約22,700㎡、36階建て延べ床面積約247,700㎡。主な用途は事務所、ホテル、商業施設、保育所、産官学連携施設など。Bは敷地面積約500㎡、7階建て延べ床面積約2,500㎡。主な用途は商業施設、教育研究施設。グランドオープンは2032年4月頃。
複合施設 A 低層部内観
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政治家や官僚の記者会見などもそうだが、テレビ画面に顔が大写しされ、話す言葉が全て聞き取れるこの種のオンライン記者発表会の面白いのは、質疑応答の場面だ。
小生よりずっと若いはずのややメタボなフリージャーナリストが「田町にはあまり行ったことがない」と話した。(小生は、醜悪な顔を人前にさらけ出したくないので今までもこれからも絶対顔は出さない。そもそもその操作方法がわからない)
記者は「えっ」と思ったが、メディアの方が田町は馴染みがないというのもよくわかる。乗降客の多寡で街のポテンシャルが図れるわけではないが、JR東日本のデータから山手線29駅の直近の1日当たり乗降客数を調べてみた。
一番多いのは新宿で、池袋、東京がベスト3。以下、品川、渋谷、新橋、秋葉原がJR東日本エリア全体でもベスト10に入り、高田馬場、上野、大崎、有楽町、浜松町に次いで田町は13番目だ。三越が撤退を決めた恵比寿や東急不動産が再開発に参画することが決定した五反田のほか目黒、神田などは同駅の下位にあるが、新駅・高輪ゲートウェイに近い将来追い抜かれるのは必至だ。
記者が山手線29駅のマンション単価ランキングを予想しても、田町は上位にはならない。隣駅の浜松町と高輪ゲートウェイには勝てない。坪単価にして200万円の差はある。
なぜか。住所は港区なのに工場街のイメージが強く文化、商業施設の集積が少ないからだ。ラグジュアリーホテルは一つもない。
そんなエリアの一等地に産官学が結集して国際的な複合施設を整備するのは大賛成。マンションを併設したら記者は坪単価700万円を付けるが…残念。
田町をよく知らない方のために、以下に記者の記事を添付する。
築84年 都内に現存する唯一の木造見番建築物見学会 青木茂建築工房が設計監理(2020/12/15)
東京ガス不・三井不・三菱地所「msb Tamachi(ムスブ田町)」全体街区が竣工(2020/7/15)
東京BRT初体験 虎ノ門~晴海の終点まで28分 信号31か所、待ち時間6.6分
トヨタ製の東京BRTバス(京成バス提供)
新型コロナ緊急事態宣言下の穏やかな天気の2月28日(日曜日)、初めて東京BRTプレ運行(一次)を利用した。「HARUMIフラッグ」から勝どき駅まで歩けば30分近くかかり、勝どき駅から新橋まで都営大江戸線・浅草線を利用すると14分、220円だから、BRTに乗れば同じ料金(変更の可能性あり)で大幅に時間短縮できることが分かった。路線バスとどう違うのかの疑問は残った。
起点の虎ノ門ヒルズから乗ったのは午後1時30分。バスはトヨタ自動車製の77人乗りハイブリッド水素バス「SORA」。料金はPASMO利用で220円(このほかいすゞ自動車製の113人乗り連結バス「ERGA DUO」が運行されている)。乗客は記者のほか男性一人のみだった。
運転手の方は女性で、声をかけて運転を誤ませるようなはことは厳に慎むべきだと口を封じ、ほぼ中央の座席に座り、左手にノートを右手に万年筆を片時も離さず、ひたすら前方に目を凝らし、信号機の数と信号待ち時間をその都度1秒、2秒、3秒と…と計りメモした。
記者は車を運転しないのでわからないのだが、信号機の多さには驚いた。新橋のバス停に着いたのは1時37分だが、この間、信号機は10基。信号待ち時間は合わせて96秒(1.6分)。ここで親子連れ、大人の男女、男性が乗車。
4分間停車したのち1時41分発車。勝どきBRTに着いたのが1時46分。この間の信号機は6基で、待ち時間は1回60秒。ここで1人が乗車し、5人が下車。
2分停車して1時48分発車。まっすぐ進めば終点の晴海BRTターミナルに近いはずだが、バスは大きく迂回したため終点に着いたのは1時58分。この間の信号は15か所で、待ち時間は合計238秒(4.0分)。新橋から終点までは17分だった。終点はトリトンスクエアと三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスのマンションに近接している。
トータルの信号か所は31か所、信号待ち合計時間は394秒(約6.6分)だった。
「連節バスの採用、走行空間の整備等により、路面電車と比較して遜色のない輸送力と機能を有し、定時性・速達性を確保した」BRT(Bus Rapid Transit=バス高速輸送システム)と路線バスの違いはどこにあるのかの疑問は残った。信号機の制御は行っているはずだが、もっと効率よく行えば信号待ち時間はより短縮できるのではないか。
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「路線バスと変わらないではないか」という疑問に東京都都市整備局担当者から回答をもらった。
都は「現在はプレ運行の第一次の段階で、(信号の)優先システムは全部できておらず、路線バスとそれほど変わらない部分もあるが、今後、道路交通を管轄する警察などと検討を重ね、ルートの追加や変更を含め本格運行に向けシステムを完成させていく」と話している。
記事には書けないが、京成バスの総務部にはすごい名前の方がいらっしゃる。一度聞いたら二度と忘れられない。
いすゞ製の東京BRT連結バス(京成バス提供)
燃料バス車内(京成バス提供)
起点の虎ノ門ヒルズのバス乗り場
東京BRTは、東京都の公募によって2015年、運行事業者として京成バスが選定され、会社は2019年7月設立された。2020年10月から第一次プレ運行が実施されている。
現在は、幹線ルート(虎ノ門・東京駅〜国際展示場駅・東京テレポート駅)、晴海・豊洲ルート(虎ノ門〜市場前駅)、勝どきルート(新橋駅〜勝どき)、選手村ルート(新橋駅〜晴海五丁目)の4ルートが計画されているが、都は東京2020オリンピック・パラリンピック大会後の選手村の街びらきなど今後の交通需要の増加も見据え、ルートの追加も含め令和4年度以降に本格運行を開始する予定。
手前2棟が三菱地所レジデンス、その奥が三井不動産レジデンシャルのマンション
「HARUMIフラッグ」
朝潮運河(左の3棟はURの賃貸と住友不の2棟、右側で「パークタワー勝どき」が建設中)
「パークタワー勝どき」建築現場
三井不レジ・鹿島・清水「パークタワー勝どき」第1期1次は237戸 坪単価425万円(2020/11/18)
文句なしにいい 街づくり・基本性能 坪単価280万円か 「HARUMI FLAG」(2019/4/24)
三井レジ他「パークタワー晴海」 「有明」と競合必至 価格はいくらになるか(2017/4/26)
東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟(2016/8/4)
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」完成(2014/3/3)
コロナ禍 貧困、飢餓、健康福祉、不平等解消などSDGs達成の妨げに PR総研調査
PR総研は2020年3月、(一社)日本記念日協会の認定を受け3月17日を「みんなで考えるSDGsの日」に制定。SDGsの「17 Goals」にちなみ、毎月17日に情報の発信や交流を中心とした取り組みを行っている
共同ピーアールのシンクタンクである共同ピーアール総合研究所(PR総研)は2月26日、報道関係者を対象にSDGs広報に関するインターネットアンケート調査「SDGs広報2020年の振り返りと2021年の展望」の結果をまとめ公表した。
調査は、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・Webなど報道関係者を対象に2020年12月18日~2021年2月11日に行われたもので、回答者は136人(選択式・一部記述式)だった。
調査によると、SDGsの有効性については「2030年までの目標として有効である」と回答したのは83.8%で、2030年までの17ゴールの達成見通しは「2分の1程度」以下とする選択が8割に達し、コロナ禍がSDGs達成の妨げになっていることが浮き彫りになった。
SDGsの取り組みに対するコロナ禍の日本での影響では、「1.貧困撲滅」「2.飢餓撲滅」「3.健康と福祉増進」「10.不平等解消」の4項目で「達成から遠のいた」が6割超で、一方で「達成に近づいた」評価では、「9.産業と技術革新」項目が32.4%でトップ(「達成から遠のいた」はが33.1%)だった。
2020年の振り返りでは、「SDGsに関する企業・団体からの情報発信は増加している」が80.1%、「17ゴールのうち優先して発信されている項目は「7.エネルギー」、「5.ジェンダー平等」、「13.気候変動対策」、「最も印象に残ったニュースは「2050年カーボンニュートラル宣言」、「ガソリン車販売全廃」が上位に挙げられた。
注目キーワードでは、全体では「DX」および「withコロナ/アフターコロナ」「地方創生」を3割以上が選択した。
このほか、「企業や団体によるSDGsの取り組みについては、今後さらに積極的に「取材したい」 が70.6%、「特に取材したいもの」の1位は「商品・サービスや製造プロセス等にSDGsを採り入れる取り組み」、次いで「トップ・マネジメントの考え方や戦略」、「プレスリリースなどの広報活動で重視する要素」の1位は「ファクト(取り組みの事実)」が66.2%、「固有性(独自性・先進性)」27.2%、「経済性(マーケット・ビジネス価値)」26.5%など。
SDGsメディアアンケート結果リリース公表用20210226.pdf
SDGsメディアアンケート結果【詳細レポート】20210226.pdf
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時宜を得たアンケートだと思う。記者は、アンケート方式の調査は好きではないが、「飲み会」はもちろん、自分を成長させる機会を自ら絶つような取材の誘いを断ることはこの40年間ほとんどしてこなかったので、回答することにした。136分の1は記者だ。アンケート結果について感想を以下に述べる。
まず、回答者の数が136人だったことについて。PR総研は100人以上を目標にしていたようなので目標は達成できたのだろうが、やや少ないような気もする(日本新聞協会の2020年のデータだけでも記者数は約18,000人)。自由回答で「2020年、最も印象に残ったSDGsに関するニュースは何ですか」には「CLT活用など木造建築物の増加」と回答し、「『SDGsへの取り組みに積極的だ』と感じる企業や団体名」では「積水ハウス 企業理念が『人間愛』〝世界一幸せ住まい〟を目指す取り組み」と書いた。同社の取り組みが立派なのは、社員一人ひとりが〝自分は17項目のうち何に貢献するか〟を自覚していることだと思う。
積水ハウスを挙げた人は他にも1人おり、グループ全体で10人以上あった「TOYOTA」や6人の「Panasonic」には及ばないが全体で8番目(同数が多数)だった。他の住宅・不動産会社は大和ハウス工業を挙げた人が1人。
コロナ禍が与えたSDGsの取り組みへの影響についての回答は大変参考になった。
「日本において、新型コロナウイルス感染症の拡大により達成に影響があったと思うSDGsのゴールはどうですか」という問いに対して、達成から遠のいたが最多となる項目は8(貧困、飢餓、健康と福祉、質の高い教育、働きがいと経済成長、人や国の不平等など)という結果は記者もそう思う。
その一方で、「産業と技術革新の基盤を作ろう」(32.4%)「エネルギーをみんなそしてクリーンに」(21.9%)に次いで「達成に近づいた」と評価された「住み続けられるまちづくり」(20.3%)はやや意外で、複雑な思いがする。
「住み続けられるまちづくり」は住宅・不動産業界の大きな課題の一つで、最近はコンパクトシティ、スマートシティなど先進的な取り組みも増えてはいるが、難問は山積している。
主なものを列挙すると、都市と地方の格差拡大、東京への一極集中、空き地・空き家の増大、自然災害に対する脆弱性、旧耐震の木密地域、高齢者の孤独死、待機児童、貧困ビジネスと紙一重のセーフティネット住宅、生活保護世帯の増加、都市公園・緑地の荒廃、生物多様性の減少…上げたらきりがない。
そしてまた、近年の地価・建築費の上昇で分譲住宅は価格が上昇する一方で、専有圧縮、狭小住宅の増加など質の低下、居住環境の悪化はどんどん進行している。住宅難民が激増しないか心配だ。
もう一つ。これは予想されたことではあるが、SDGsに関する企業・団体からの情報発信のうち、17ゴールのなかで特に優先して発信されていると感じるものについては、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(45.6%)「ジェンダー平等」(37.5%)「気候変動に具体的な対策を」(35.3)が高い数値を示した他方で、「平和と公正をすべての人に」(0.7%)「飢餓をゼロに」(5.1%)「安全な水とトイレを世界中に」(5.1%)「陸の豊かさを守ろう」(5.9%)「人や国の不平等をなくそう」(6.6%)などが低い数値にとどまっているのはとても残念だ。
コロナ禍で、政治家の収賄、高級クラブのはしご、女性蔑視発言、高級官僚の賭け麻雀、接待問題などが噴出しているが、これらはアンケート結果の裏返しだ。政治家や官僚の不正や不平等社会を許す諦めがわれわれにないとは言えないし、「平和」を叫ぶと非国民扱いされる政治風土はずっと温存されているのではないか。
「飢餓」は食品ロスと表裏一体となすものであり、「安全な水」もそれこそ湯水のように水資源を費消する国であることの自覚の欠如だ。
PR総研も、「注目度が低い項目はすなわち重要性が低いというわけではありません。むしろ、こうした項目についてこそ光を当てる知恵と工夫が情報発信者に求められ、目標への取り組みとともに成果も適切にアピールしていくことが必要です」と総括しているが、これはメディアの課題でもある。
SDGsが掲げる17の項目はみんな人類普遍の永遠のテーマであり、ゴールなどそもそもないが、今回のアンケートをきっかけにより力をいれて取り組んでいきたい。