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「カーメスト興野町」

 東京都住宅供給公社(JKK東京)は2月7日、募集戸数98戸の新築賃貸マンション「カーメスト興野町」に844件の申し込みがあり、応募倍率は最高35倍、平均8.6倍にのぼったと発表。ファミリー向けから単身・DINKS向けの間取りまで、全ての間取りで幅広い申し込みがあった。

 物件は、日暮里・舎人ライナー江北駅から徒歩13分、東武スカイツリーライン西新井駅から徒歩20分、東武大師線大師前駅から徒歩14分、足立区西新井本町四丁目に位置する8階建て128戸(募集戸数:98戸)。専用面積は35.03~66.52㎡、間取りは1DK・1LDK・2DK・2LDK・3LDK、月額家賃は80,900(坪7,621円)~132,400円(坪6,568円)。共益費は5,500円/月。竣工は令和4年9月。入居予定は令和5年3月。

 募集は、令和5年1月13日~1月23日で、募集期間中2日間にわたって行われ現地オープンルームには約1,400名が来場。平均倍率の高かったファミリー向けの3LDK(65.81~66.52㎡)は、募集戸数16戸に対して平均14.7倍の応募があり、1DK(35.03~36.38㎡)は募集戸数15戸に対して平均10.1倍の応募倍率となった。もっとも倍率が高かったのは1DK(35.03㎡)の35倍。

 JKK東京は募集倍率が高かったことについて、建て替えに合わせ住宅南側に「興野町いちょう公園」を新設するなど、子育て環境を整備し、ライフスタイルにあわせて間取りをフレキシブルに変えられる「ウォールドア」を設置したことなどが評価されたとしている。

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中庭

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 上段はJKK東京のリリースをコピペしたものだ。昨日(7日)、不動産流通研究所のWEB「R.E.port」が報じていた。それを読んでわが目を疑った。倍率の凄さもそうだが、日暮里・舎人ライナー江北駅から徒歩13分の立地条件と募集戸数の多さに驚いたからだ。

 同沿線の分譲マンションはこれまで数件見学しており、2014年分譲の高野(こうや)駅から徒歩1分で、坪単価153万円の「ハミングテラス」102戸が人気になった以外は早期完売した物件はないはずだ。ここ数年の分譲マンションの値上がりで、もっとも単価相場が低い〝狙い目は舎人ライナー〟などと話す業界関係者は少なくないが、小生などは、商業施設など生活利便施設が乏しく、工場街のイメージしか残っていない。そのようなエリアの賃貸マンションの競争倍率が8.6倍に達したことなど信じられない。いま、同沿線で分譲マンションを供給したらいくらになるか。坪単価200万円だったら売れると思うが、そんな安値にはならない。坪220~230万円とみたが、これでも安いか。

 分譲マンションと比較して、「興野町」の賃料は安いといえば安いのだろうが、施設住宅ではないから民間相場と比べてそれほど低いとも思えない。

 公社募集センター担当者によると、これまで10倍超の応募倍率に達した物件はあるとのことだが、2日間の現地オープンルール見学時に申し込みを受けた住戸の割合は20%を超えたのは想定外の多さだという。

 もうこれ以上書かない。物件を見ていないのにいい加減なことなど書けない。日を改め見学をお願いしてレポートしたい。

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坪賃料グラフ.png 利回りグラフ.png

 賃貸市場のことはよく分からないのだが、分譲住宅市場と関連はあるはずなので、東京カンテイのデータを頼りに比較してみた。

 同社のプレス・リリースによると、東京都の分譲マンションの坪賃料は表・図の通りここ数年かなり上昇している。2022年は坪12,385円で、2017年比18.6%の上昇だ。「興野町」は坪7,000円台のはずで、単純比較はできないにしろ、安いともいえるが、足立区の立地を考慮するとそれほど安いとも思えない。

 中古マンション(70㎡換算)の坪単価は2022年は297万円で、2017年の227.5万円から30.5%上昇。上昇率は賃貸より11.9ポイントも高い。なぜそうなのかは詳細な分析が必要だが、賃貸住宅の供給増と需要動向、マンション適地の地価上昇、建築費の高騰、相対的に質が劣る賃貸から分譲への住み替え、先高観など様々な要因が働いているのだろう。

 注目したいのは、分譲マンション坪賃料の利回りの低下だ。この10年間、利回りは一貫して低下しており、2022年は5.00%と2013年比で1.84ポイント下落している。金利先高観は強まっており、今後の金利動向から目が離せない。

東建不販 多世代交流目指した夏祭り「コーシャハイム千歳烏山」で実施(2014/8/30)

サ高住「コーシャハイム千歳烏山」 「囲い込み施設にしない」JKK狩野氏(2014/3/31)

東京都住宅供給公社(JKK)の建て替え賃貸「久我山」 3日間で来場1000組超 申し込みは2倍(2012/5/15)

駅1分(15m)で坪単価153万円 新日鉄興和不動産「ハミングテラス」(2014/2/20)

 荒井勝喜首相秘書官が3日夜のオフレコ会見で、LGBTQなど性的少数者に対する差別的発言を行ったことが問題となり、その翌日、更迭されたことが報じられた。「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのも嫌だ」「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」などの発言は断じて許せない。更迭は当然だと思うが、同時にわれわれが考えないといといけないのは、そのような重大発言が飛び出すオフレコ記者会見が常態化しており、書くか書かないかは一部のメディアの判断に委ねられていることだ。これは危うい。

 最初にこの問題を取り上げたのは、全国紙では毎日新聞のようだ。同紙は荒井氏の発言があった2月3日22:57にWEBで第一報を報じた。同紙によると、オフレコ会見に同席していたのは約10名の記者で、「現場にいた毎日新聞政治部の記者は、一連の発言を首相官邸キャップを通じて東京本社政治部に報告した。本社編集編成局で協議した結果、荒井氏の発言は同性婚制度の賛否にとどまらず、性的少数者を傷つける差別的な内容であり、岸田政権の中枢で政策立案に関わる首相秘書官がこうした人権意識を持っていることは重大な問題だと判断」(023/2/4 20:48)、オフレコを解除する旨を荒井氏に伝えたうえ記事化。4日付朝刊記事は遠慮がちの3段見出しだった。

 そのほかの全国紙では、朝日新聞は、荒井氏がオンレコ会見で発言を撤回・謝罪したのを受け日付が変わった4日0時50分付WEBで記事化し、4日付朝刊で報じている。同紙記者はオフレコ会見には同席していなかったともしている。読売新聞は4日付夕刊トップ記事で、日経新聞は4日付夕刊で、産経新聞は5日付朝刊でそれぞれ報じた。

 問題は、オフレコ会見にいなかった朝日新聞はともかく、毎日新聞が報じなかったら、同席していた約10名の記者はどうしたかということだ。同席していたメディアの釈明も知りたかった。私見を言わせていただければ、公人にオフレコなどありえない。それを許せば権力とメディアの癒着を生む。

 かく言う小生もオフレコ取材は数えきれないほど経験している。その圧倒的多数は政治問題ではなく下半身、女性問題だった(男性問題はなかった)。情報源の秘匿は記者の生命線だし、小生だって脛に傷持つ。深入りはせず、口外したことはない。

 

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新たに伐採された伸び盛りのイチョウ(切り口はまさに芳紀十八、あっ、これは雄株か)

 東京都千代田区は2月6日未明、「神田警察署通りⅡ期道路整備区域」にある街路樹であるイチョウ4本を伐採した。伐採に反対する「神田警察度通りの街路樹を守る会」(以下、「守る会」)は、「裁判で伐採の是非が問われているさ中のできごとで、昨年7月3日に区と取り交わした工事を再開する際は事前に連絡するという約束を反故にするもので、許せない」と怒りをあらわにした。

 「守る会」によると、樋口高顕区長は抗議文を受け取らず「粛々と工事を進めていく」と語ったという。また、環境まちづくり部道路公園課長・谷田部継司氏、広報担当者、総務課長らの話を総合すると、この案件の実質的な責任者である坂田融朗副区長はこの日(6日)、午後1時45分からの副区長会に出席したのち2、3の会議に出席するとかで、区に戻らずそのまま退庁したという。

 区が「工事をするときは必ず事前に連絡をします」と確約したことについては、環境まちづくり部長・印出井一美氏は「それは(昨年)7月当時の約束で、今は執行停止が出ていないから何ら法的に問題はない」と話したという。

 「守る会」の区長などに宛てた抗議文は次の通り。

 「2月6日未明 何の知らせもなく再び伐採の暴挙に怒りを通り越しています。 先般7月に工事をする時は事前に会に連絡する旨を約束していたにもかかわらず、ましてや裁判の最中であるにもかかわらず、このような事をするとは、人道上、信義に劣る事であり、断じて許せません。

 私共区民をふみにじっているとしか思えません。区長、区議会、千代田区役所に厳重に抗議するものであります」

 この問題については、区域内にある32本のうち樹齢60年超のほとんどが健全木のイチョウ30本を枯損木として伐採することが決まっている。樋口高顕区長は「現在の一致点が見出せない状況が長く続けば、意見の対立を深め地域に亀裂を生じさせることにもなりかねないと認識」「行政として苦渋の決定」として2022年4月25日、イチョウ2本を伐採した。残りの若木2本は移植するとしている。

 現在、伐採に反対する住民が「精神的苦痛を受けた」として22万円の損害賠償を求めた訴訟と、伐採決定は区の区議会への虚偽答弁によって議決された決議は無効、違法であるとした住民訴訟が係争中。

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 この街路樹問題については、最初に持ち上がった2016年から取材をしており、これまで40本以上の記事を書いてきた。住民の味方でも区の敵でもない街路樹の味方の小生は、〝伐採ありき〟の既定路線に沿って事業を強行してきた区側に非があると思う。住民間の分断を生んだのはひとえに区の説明不足にある。令和4年3月17日に行われた区議会企画総務委員会でも嶋崎秀彦委員長は「そうだね。それは、協議会の合意が必要だよね…そこのところの知恵出しというか、やり方というか…多少瑕疵があったのかもしれない…」と答えている。

 「守る会」が話したことが事実であれば、「工事再開の際には事前に連絡する」約束を守らなかったことにについて「あれは7月のこと」としれっと言ってのける印出井氏はひどいの一語だ。夫婦間だって一方的に約束を破ったらひと悶着起きる。公人が吐く言葉ではない。

 一番罪が深いのは樋口区長だ。「粛々と工事を進める」と語ったそうだが、「守る会」によると、6日には道路課の職員25名はほとんど出勤していなかったというではないか。

 この件で、区側に事実かどうか確認した。「工事現場に派遣した人数は答えられない。振替休日を取った人数も答えられないが、適切に処理した」との回答があった。

 なので、約5,000本の街路樹のたかが4本のイチョウを伐採するために全職員を出勤させ、当日に代休を取らせたかどうかは不明だ。とはいえ、夜陰に紛れて抜き打ち的に伐採工事を行うのは「粛々」ではないことは明らかだ。

 「守る会」の皆さんへ。今回の工事再開に対抗するため、皆さんはまたまたイチョウ抱き着き作戦を取るようだが、それは人間でいえは思春期の雄株がほとんどのイチョウの本意ではないはずだ。女性の方に抱きつかれ、しがみつかれるのは体が火照るが、皆さんの中には年齢が80歳近い方もいるという。健康が心配だ。夜は酒か養命酒でも飲んで明日の英気を養ってほしい。

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昨年5月に伐採されたイチョウ。今回は2度目の死刑判決(それでもしっかり生きていた)

これは事実か「枯損木記載は都の慣例に倣ったもの」千代田区の主張 住民訴訟(2023/1/17)

「苦汁」を飲まされたイチョウ 「苦渋の決定」には瑕疵 続「街路樹が泣いている」(2022/5/14)

なぜだ 千代田区の街路樹伐採強行 またまたさらにまた「街路樹が泣いている」(2022/5/10)

 

 

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「レーベン福岡天神ONE TOWER」

 MIRARTHホールディングスは2月3日、グループ会社タカラレーベンのグループ創業50周年記念物件として2022年1月から分譲開始していた「レーベン福岡天神ONE TOWER」が2023年1月30日に全戸完売したと発表した。

 再開発が計画されている「天神ビッグバン」内に位置する、天神エリアで38年ぶりの供給。同社は人気の要因として、①天神エリアを徒歩圏で楽しめる希少な立地と、2026年に再整備が完了する須崎公園に隣接する緑豊かな住環境②外観フォルム・デザインのほかスカイラウンジ、ゲストルームなどの共用施設や多彩なプランをあげている。

 物件は、福岡市地下鉄空港線天神駅から徒歩7分、福岡市中央区天神5丁目に位置する23階建て全153戸。専有面積は37.05~142.99㎡。竣工予定は2024年2月中旬。設計・監理はデベロップデザイン一級建築士事務所。施工は大豊建設。

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エントランス

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モデルルーム

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モデルルーム

 

 

 

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 この物件については、2022年3月に見学取材し記事にもしているのでそちらを参照していただきたい。坪単価は書かないという約束だが、坪520万円の大和ハウス工業「プレミスト大濠2丁目」に抜かれるまでは福岡市エリア最高値だった。富裕層の財布の紐を緩めさせる見本のようなマンションだ。

福岡の最高峰 第1期100戸 圧倒的な人気 タカラレーベン50周年「福岡天神」(2022/3/15)

坪単価520万円でも人気 最終分譲へ 大和ハウス「プレミスト大濠2丁目」(2022/11/1)

 

 大和ハウス工業は2月3日、2024年度以降に着工するすべての新築分譲マンション「プレミスト」をZEH-M仕様にすると発表した。同社は、2022年5月に公表した「第7次中期経営計画」で、2026年度に分譲マンションのZEH-M比率を100%にする目標を掲げているが、その開発・販売態勢が整ったことから、2年前倒しして採用するもの。

 同社は2018年からZEH-M仕様マンションの開発を開始しており、これまで全国で15物件を竣工。全体に占める割合は2022年度には76%(予定)に達している。

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 同社のZEH-Mマンション比率が2022年度で76%(予定)に達していることなど全然知らなかった。知らなかったのは、首都圏での物件は「プレミスト平和台」(2021年竣工)しかないのも理由の一つだ。この物件は最高に素晴らしかった。コロナが怖く、恐る恐る取材したのを思い出す。

 首都圏で供給されているマンションのZEH-M比率はどれくらいだろうか。20%もないはずだ。圧倒的少数なので、このZEH-Mのよさを消費者も知らないだろうし(記者が取材した約30物件はほとんど完成までに売れているはずだ)、ZEH-M仕様でなくとも販売面でマイナスにはならないだろうが、数年後には当たり前になる。そうでないと消費者から見放される。根雪のように残る。

 その意味で、同社は一歩先に出た。主要な住宅・不動産業界では、ほぼ100%近いと思われるオリックスグループや積水ハウスなどとともにトップクラスではないか。住友不動産も2021年9月、同社が分譲するすべてのマンションをZEH-M仕様にすると発表している。

大和ハウス工業「平和台」 同社初の「ZEH-M Ready」 申し込み殺到 早期完売へ(2020/9/15)

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「3億円のマンション」鍵の贈呈式

 東京ヤクルトスワローズのトップスポンサーであるオープンハウスグループは2月2日、ヤクルト村上宗隆選手にプレゼントする「3億円の家」は「3億円のマンション」に決定し、鍵の授与式を行ったと発表した。「3億円のマンション」の詳細は公費要されていない。

 この企画は、村上選手が2022年シーズン最終戦で本塁打日本記録を塗り替える56号を放ち、史上最年少での三冠王を獲得した偉業を称えるもの。当初は1億円としていたが、荒井正昭社長の一声で一挙に3億円に引き上げられた。

 2月2日は村上選手の23歳の誕生日であることから、同社からスペシャルケーキも贈呈された。

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 記者は昨年10月の記事で、「3億円の家」は同社の分譲マンションには該当する物件がなく、戸建ての可能性大と買いたが予想は外れた。

 戸建てならこの価格帯の物件は都内ならたくさんあるだろうが、庭があれば草取りが大変だし、ファンに押しかけられたりしたら隣近所に迷惑もかかる。同社が土地を購入して注文もあるだろうが、これとて管理、防犯面の課題は残る。村上選手が難色を記したのか。

 マンションだって防犯面の課題はあるが、戸建てほどではない。しかし、都心部にたくさん供給されている高額マンションを同社が買い取るなり仲介して村上選手にプレゼントするとは考えられない。となると、同社の自社分譲ということになるが、現段階ではそれが見当たらない。

 ホームページで探したら、目黒駅から徒歩8分の「オープンレジデンシア目黒コート」28戸がヒットした。しかし、最大の専有面積は63.42㎡なので、一人で住むには十分だが、価格は坪750万円としても価格は1億4,000万円だ。設計変更して2戸を1戸にする手はありそうだ。

 さらにまた、小田急小田原線・京王井の頭線下北沢駅から徒歩5分の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率150%)に位置する「オープンレジデンシア下北沢」18戸もある。こちらも最大専有面積は74.91㎡。坪単価750万円としても価格は約1億7,000万円。2戸を1戸にしたら予算はオーバーする。

 このほか、現段階では村上選手がほしがるような物件は見当たらない。今後供給する物件になるのだろうか。その噂が流れたら購入希望者が殺到…そうなれば予定価格を引き上げて3億円を回収できることになりそうだが…。

 いずれにしろ、村上選手は多額の所得税を支払うことになりそうだが、今期年俸は6億円とか。痛くもかゆくもないか。人に貸す手も考えられるが、それではオープンハウスに失礼だ。お金持ちにはお金持ちの悩みはあるものだ。まだ23歳ですぞ。

 オープンハウスも広告宣伝費と考えたら安いものだ。

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スペシャルケーキ贈呈式

村上選手「3億円の家」プレゼント 現段階で未定 戸建ての可能性大 オープンハウス(2022/10/10)

 

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再開発エリア(左側が「新国立劇場」)

野村不動産、住友商事、東京建物、首都圏不燃建築公社の4社は22日、参加組合員として事業参画している「西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業」の市街地再開発組合を21日に設立したと発表した。

プロジェクトは、JR新宿駅と京王新線初台駅の間に位置する事業面積約4.6ha。「新国立劇場」に近接。総戸数約3,200戸の大規模集合住宅を整備するほか、駅方面の歩行者デッキ、4,500㎡の広場などを整備する。2031年の竣工を目指す。

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グループ会社を含め社員の連携を生む共用エリア

 旭化成ホームズは2月1日、神保町本社オフィスを全面リニューアルしたのに伴うメディア向け見学会を行った。2022年に策定した中期経営計画「2030年のあるべき姿Vision for 2030」の柱の一つである「働く人が輝くHappiness Company」を実現する施策の一つで、今年から在宅勤務、フレックスを織り交ぜ、オフィスはペーパーレス、フリーアドレスとするなどデジタル社会に対応した働き方にシフトチェンジした。

 新オフィスは、業務内容に応じて最適な場所を選択するワークスタイルを想定し、ワークスペースはA集中作業スペース、B Phoneブース、C ベースワークスペース、D コラボレーションスペース、Eプロジェクトスペース、F会議室の6つに設定。

 同社代表取締役社長・川畑文俊氏は「2030年のあるべき姿からバックキャスティングしたもので、ビジョンが掲げる①お客様から、社会から必要とされるEssential Company②住まいを創る会社から人生を創るLife Design Company③働く人が輝くHappiness Companyの3つの柱のうちの一つを具体化するもの。生産性の向上、グループ会社間の連携強化、社員エンゲージメントの向上につなげていく。席は2割から8割、平均5割を想定している。リニューアルして社員みんなが明るくなったように思う」「各社の役員が同じフロアにいるので、様々な事案を即決できる効果が生まれている」などと語った。

 設計・監理・施工を担当したイトーキの営業本部執行役員法人営業統括部長・国領隆氏は「当社は空間設計の提案に力を入れており、今回のオフィスは川畑社長の2030年を想定した熱い思いによって実現した。社員のみなさんには魂を込めていただきたい」と挨拶した。

 オフィスは、東京メトロ・都営新宿線神保町駅徒歩1分の千代田区神田神保町1丁目に位置する神保町三井ビルディング4~7階、延べ床面積は約9,547㎡。勤務人員は約1,200名。

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川畑氏

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概念図(青がA、濃い青がB、紫がC、黄色がD、ピンクがE、赤がF)

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Library(ライブラリー)

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Phoneブース

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ベースワークスペース(小生のようなタバコの臭いがし、キーボードを叩かないと記事が書けず、声が大きい嫌われ者の居場所はあるのか。タバコを吸いなから記事の校閲と思索にふけるために1時間に1度は離籍したらAIに追尾されるのか)

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Multi Sofa

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 見学会では、無垢のテーブルと本革の椅子を備えた定員38名の同時通訳室付き大会議室や、「当社らしく華美ではありませんが」(担当者)という足がすくみそうな立派な応接室から、150円から200円のスナック菓子やチョコレートも備えられているCaféスペースまで公開された。

 社員が執務中なので写真撮影はできず、声を掛けることはできなかったが、一つひとつのブースはフムフムと納得できるものばかりだった。社長室を見たかったのだが、役員室も含め不可だった。

 何が嬉しかったかといえば、RBA野球史最強のチームの象徴である川畑社長が元気だったことだ。コロナの影響か、心なしかお尻の肉が落ちたように思ったが、体形はきりりと締まりスリムになっていた。

 読者の皆さんはご存じないかもしれないが、45年間業界を取材してきて、川畑氏ほど立派(主に体格)な方はいない。頼もしい限りだ。相撲を取ったら、短躯頑健そのものの野村不動産の沓掛英二会長に投げ飛ばされるかもしれないが、柔道なら寝技に持ち込み失神させるはずで、ラグビーなら神戸製鋼ラグビー部出身の大和ハウス工業の芳井敬一社長のタックルなどものともせず、引きずったまま牛歩の歩みでトライするはずだ。

 そして、控えめに語った「みんな明るくなったように思う」-このフレーズに、リニューアルが半ば成功したことを記者は悟った。

 しかし、課題も見つかった。取材の会場にあてられていた6階のStadiumオフィスに入った途端、フェイクの観葉植物が目に飛び込んできた。ここだけかと思ったら、案内された役員フロアの7階を始め4階、6階もすべて緑はケミカル製品だった。

 「パーク」(駐車場ではないはず)「パーゴラ」「オリーブ」「ミモザ」などと名つけられたスペースもカラーリングは「調」だった。

 リニューアル工事を担当したイトーキの方に聞いたら「われわれが設えたのは全てフェイク。コストもあるが、管理が大変なので…」と話した。「これは書かざるをえません」と川畑社長に直訴もした。川畑社長は「貴重なご意見ありがとうございます。バージョンアップしていきます」と話した。いつかきっと改善されるだろう。

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フレーム間仕切り(pergola)

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大和ハウス工業のマンションモデルルームの天井に飾られていた本物のポトス

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オフィスの観葉植物を定期的に点検する業者から枝葉をタダでもらってペットボトルに入れて育てたポトス。5年以上たつが育ち続けている

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〝毒をもって毒を制す〟(季節にはドクダミなどを活ける。小生の記事は時には毒を放つが、ドクダミは周囲に香しい毒をまき散らし、加齢臭も消してくれる)

自然と共生するワークスペース「コモレビズ」実装した「ザ・パークレックス天王洲」(2022/7/27)

間伐材・端材を積極活用 三菱地所ホーム 新オフィス/七夕に愛と死と街路樹を考える(2022/7/7)

素晴らしいの一語 市民に開放を ナイス 本社ビル木質化リノベ/対照的な歩道の雑草(2022/6/27)

積水ハウス「スムフム テラス錦糸町」/往年のRBA野球スター選手が勤務(2022/4/18)

アースカラーの空間演出が見事 積水ハウス「SUMUFUMU TERRACE 池袋」(2022/4/7)

三菱地所の本丸を見た 機能一新 士気高揚 トマト最高 地所が新本社公開(2018/2/12)

 

 国土交通省は1月31日、令和 4 年の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は859,529戸となり、前年比0.4%増、2年連続の増加となった。床面積は69,010千㎡で、前年比2.3%減、昨年の増加から再び減少に転じた。

 利用関係別では、持家は253,287戸(前年比11.3%減、昨年の増加から再び減少)、貸家は345,080戸(同7.4%増、2年連続の増加)、分譲住宅は255,487戸(同4.7%増、2年連続の増加)。分譲住宅の内訳はマンション108,198戸(同6.8%増, 3年ぶりの増加)、一戸建住宅145,992戸(同 3.5%増、2年連続の増加)となった。

 首都圏マンションは52,379 戸(同4.8%増)で、都県別では埼玉県5,551戸(同39.6%増)、千葉県6,310戸(同76.0%増)、東京都29,579戸(同5.3%減)、神奈川県10,939戸(同2.2%減)となった。このほか近畿圏は22,999戸(同10.0%増)、中部圏9,145戸(同5.3%増)、その他23,675戸(同9.0%増)。

 この結果、分譲住宅は2006年(平成18年)以来16年ぶりに持家を上回った。マンション着工戸数では、その他地方が近畿圏を上回るのは平成20年以降で同20年、同29年、令和3年に続き4度目となった。

 

タイトルに目を奪われた。「齊藤ひろ子+浅見泰司 編著 タワーマンションは大丈夫か?!」(2020年、プログレス)だ。いかにも売らんかなの、策略が透けて見えるこの種の書籍を記者はほとんど読まないのだが、業界関係者なら知らない人はいない横浜市立大学国際総合科学部教授・齊藤ひろ子氏と、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授・浅見泰司氏の最強の二人が手を組み、定義・概念はあいではあるが、学者風に言えば人口に膾炙する「タワーマンション」を俎上に載せ、「大丈夫か」と疑問を投げかけ、おまけに学術論文ではまずありえない「?!」の疑問符感嘆符が付いている。全296ページで値段3,500円(税別)が高いか安いか分からないが、お金もないので図書館で借りて読んだ。タイトル通り、残ったのは「?!」だった。誰に読ませたいのか。

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年のせいなのか、馬鹿だからか、多分両方だからだろう。のっけから躓いた。肩透かしを食らった。書籍のまえがきの冒頭は「区分所有型のタワーマンションが増加している。タワーマンションとは、建築基準法に従い概ね高さ60m以上、そして階数にして20階上のマンションをさしている」とあった。

これはないと思った。建基法第20条は「高さが60mを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること」と定めているが、これがタワーマンションであるとか超高層建築物であるとかは規定していない。

記者は昭和60年代の初め、「超高層マンション」の記事を書いた。東京都やUR都市機構、三井不動産などの「大川端リバーシティ21」の開発が開始され、従来の物差しでは計れないマンションが続々供給される気配を感じたからだ。定義を調べるために日本建築センターに取材したのだが、定義はなく18階以上だとか20階以上だとか聞いた覚えがある。

その後、20階建て超の「超高層マンション」は主流になったが、デベロッパーが固有名詞の物件名に「タワー」と名付けない限り、記事に「タワーマンション」と書いたことはない。記事は正確でなければならない。定義のないものをそう呼ぶには抵抗がある。〝駅近〟もそうだが、業界関係者が〝タワマン〟と呼ぶのも何だか下品に聞こえ、ほとんど使わない。

広辞苑には、「超高層建築物」とは「1963年、31m以上の高度制限が撤廃された後に出現。15階建て以上の建物を指したり、100m以上の建物を指したりすることが多い」とある。記者も100m以上(概ね30階建て以上)とするのが適当ではないかと考えている。

そもそも「タワー(塔)」とは何かという基本的な問題もある。建築史だけでなく幅広い文筆活動をされている河村英和氏は、その著書「タワーの文化史」(2013年、丸善出版)で「『タワーらしさ』とは、それ自身の高さという物差しのみで測れるものではない。高層ビルが密集せず、周りのビルも高くなくてせいぜい四~五階建て、そんな1970年以前のような昔さながらの高さの建物が主流の土地に、唐突にニョキッと一本、さらに際立って高い建物が君臨すれば、瞬時に周りと差別化され、ある種の異質感が出てくる。たとえその塔らしきものが世界のタワーランキングを競うどころか、全く高層建築の部類に入らないものだとしても、その地域ではタワーらしさを演出することは充分可能だ。よって高さが30メートルにすら及ばなくても、周りの建物が低層階のものばかりの場所なら、それは立派にタワーとなりうるのである。…つまり、周りの環境次第で、ある一定の高さを持った塔上の物体は、タワーになりやすくなったり、なり難くなったりする」(まえがき)と述べている。

至極もっとも。建基法でも「低層」「中層」「高層」「超高層」とは何かについて定義していない。高さだけでなく、規模との関係で「中小・大規模」と判断する指標が示されていることと関連する。高いとか低いとか、大きいとか小さいとか、これは文化によっても違い、歴史とともに変化もする。法律はそのような変化を見越して100年、200年耐えられるものにしているのだろう。

なので、齊藤氏や浅見氏ともあろうものが20階建て以上を「タワーマンション」と呼ぶのに違和感を覚えるし、どうして「超高層マンション」にしなかったのか、さらにまた、マンションが抱える問題は基本的には高さに関係はないので「マンションの将来は大丈夫か」ともすれば、インパクトはもっと強かったのではないかと思う。

まあ、これはさておき本題。かく言う小生も、この10年間で「タワー」のワードが付く記事を616本書いてきた。全てがマンションではなく、同じタワーマンションを何度も取り上げている記事もあるので、どれくらいの「タワーマンション」を見学取材したか分からないのだが、いかに多く供給されているかの証左にはなる。

記事の中から20階建て未満の「タワーマンション」を年代の古い順に列挙する。

「ライオンズタワー片瀬江ノ島」(15階建て、1998年)
 「レーベンリヴァーレ中板橋ヴィーナスタワー」(13階建て、2010年)
 「プラウドタワー本郷東大前」(19階建て、2010年)
 「横濱MIDベース タワーレジデンス」(18階建て、2017年)
 「リビオつつじヶ丘 タワーレジデンス」(17階建て、2021年)

かなりヒットした。首都圏不動産公正取引協議会の不動産広告に関する自主規約「不動産の表示に関する公正競争規約」にも抵触しない。定義がないのだから当然だ。いずれの物件とも周辺に高い建物がないからそう付けたのだろう。

記者は、「タワー」が付くマンションの嚆矢は黒川紀章の今はない13階建て「中銀カプセルタワー」(1972年)ではないかと思うがどうか。業界では住友不動産の21階建て「与野ハウス」(1976年)が第一号と言われている。記者が強烈な印象として残っているのはオリックス不動産他の58階建て「ザ・東京タワーズ(THE TOKYO TOWERS)」(2008年)だ。

        ◆     ◇

各章・各論に移る。それぞれ丹念なフィールドワークに基づいた指摘もある。摂南大学理工学部建築学科教授・大谷由紀子氏の「タワーマンションは子育ち・子育ては心配ないのか? 」には胸を衝かれた。

私事だが、小生と妻はバブルが発生する前、UR都市機構の昭和30年代築の賃貸マンションでは2人の子どもを育てるのは難しいと判断し、新築マンションを購入した。入居前のチェックを済ませ、いざ引っ越そうとしたときだ。家族が寝静まり、一人で酒を飲んでいたら、小12年の長男が夢でも見たのか突然起き出し「お父さん、引っ越し嫌だ。友だちと別れたくない」と号泣した。

これには負けた。手付金を放棄してキャンセルした。その直後、バブルは発生した。マンション価格は暴騰した。

それから56年後だ。轍は踏まないと上の子が中学に、下の子が小学校に上がるのを待って、多摩ニュータウンの中古マンションを買った。バブル絶頂期の平成2年だ。駅から徒歩16分だが、多摩ニュータウンは完全に歩車分離の街づくりが行われており、東南角の専用庭付き1階が決め手だった。現地は見なかった。見なくともURの性能は分かっていた。

価格は、手付放棄したマンションより2倍以上に跳ね上がっていたが、ローンは株や原稿料などアルバイト代で返せるのではないかと過信した。みんな狂っていた。

元に戻る。大谷氏は、大阪市内のタワーマンション居住者調査で、購入した理由の第一は「駅に近い」ことで、子どもがいることで配慮したことは「保育所、学校、病院などが近い」と報告し、「子育て世帯のなかには通勤・通学・通園の便利がよく、治安がよければ、必ずしもタワーマンションでなくてもよい人が一定割合いるのではないかと推測できる」と喚起している。一定割合の層の一人が小生だ。

大谷氏は、「子どもが育つ環境は物理的環境のみならず、教育、福祉、保健、医療、情報、経済、人的リソースなど、本来は子どもを取り巻くすべての環境を含む」としながら、タワーマンションが抱える課題として①生理的・心理的問題②行動、母子、発達の問題③犯罪、事故の問題④災害、緊急時の課題を指摘。そして、「願わくは、子どもの有無にかかわらず、社会全体が子どもの視点に立って住環境を考えてほしい。子どもは生まれてくる家庭を選ぶことができないだけでなく、『自分で住まいを選ぶことができない』のである。都市の未来をつくるのは子どもだからこそ、安全で、健やかな生育環境を整えるのは『大人の責任』であり『社会的責務』である」と喚起している。

おっしゃる通りだ。国もデベロッパーも子育ち・子育ての視点から都市計画を考えてほしい。

一つだけ、言わせていただくと、先生、大阪は分かりませんが、分譲価格が高騰している都内では子どもだけでなく、普通の世帯も住宅を自由に選択できる余裕はありません。23区では20坪で7,0008,000万円もします。

齊藤氏の「タワーマンションは管理不全になりやすい? 」は、タイトルに「? 」が付いているように、必要な対応策を講じれば管理不全に陥らないと言外に匂わせている。行政の関与、代執行、第三者管理などを含め「地域として適正に維持することが社会的に必要であるという考え方を広めていく必要がある」と述べている。

AGデザイン代表取締役・関栄二氏の「タワーマンションでは修繕費が割高? 」の章で、関氏は「タワーマンションという理由で、外壁を中心とした修繕計画の費用が高くなることはない」としているのも注目できる。他の著者とはやや異なった見解を示している。

大谷氏、齊藤氏、関氏と打って変わって、激論を展開しているのがstudio harappa代表取締役・村島正彦氏だ。「タワーマンションは廃墟化するか? 」の章で、「私のたどりついた結論から述べると、『タワーマンションは廃墟化する』となる」と断定し、「超高層マンションが築年数を重ねていくうちに、価値や魅力を減じて住まうことが忌避されるだろう」「筆者は、築後4550年を超えたマンションで、幸せな将来を見通せているものを残念ながらほとんど知らない」「タワーマンションという形態は、100年を視野に入れて総合的な見地に立てば、サスティナブルな住宅ストックとしては、リスクの高いものと結論づけられる」と主張する。

一寸先は闇の世の中だ。この先、何が起きるか誰も分からない。どのように未来を描こうと村島氏の勝手だ。一つひとつ反論はしないが、東京都の「特定街区」制度でマンションとしては唯一の認定を受けた、第一種低層住居専用地域に位置する1981年竣工の12階建て住友商事「成城ハイム」(200戸)の中古価格は、今でも分譲時価格を上回っているはずだ。1982年分譲開始の「広尾ガーデンヒルズ」(1,181戸)は、バブルの波に翻弄(最高値は坪3,000万円、最安値は坪300万円)されたが、こちらも現在の中古価格は分譲時価格を上回っている。探せばこのような事例は他にもあるはずで、村島氏が知らないだけだ(知らないのは罪ではないが)。

村島氏は重大なミスも犯している。「乱暴な仮定」としながら、「同じ広さの住戸が超高層・通常のものについて、既往のデータから管理費・修繕積立金の平均的な単価」から計算したとして、同じ築年数30年、広さ75㎡、中古価格3,000万円の超高層マンションと14階のマンションの管理費・修繕積立金を比較、月々に支払う「管理費・修繕積立金」は超高層のほうが約1.7倍(年額261,000円)高いとしている。

築年数、広さ、価格(坪単価132万円)とも同じで、超高層と普通の高層マンションの「管理費・修繕積立金」の額がこれほど異なる事例など、村島氏の言を借りれば、小生は残念(幸か)ながら知らない。(個別案件で、最高と最低レベルを比較したらあるかもしれないが)。村島氏はこの数値をはじきだした元データを示すべきだ。

専門外だから許せるのだが、浅見氏も〝無知〟ぶりをさらけ出している。前出の齊藤氏、弁護士の戎正春氏、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授・大月敏雄氏との座談会で、浅見氏は「(タワーマンションは)窓を開けられなくて密閉性が強いことが多いと思います」「洗濯物は外に干せませんよね」と話し、大月氏にやんわりと否定されると「でも、しょせん部屋干しになってしまいますよね」と反論する。大月氏は、これに対しても「外で洗濯物を干すことを嫌がる人も増えています」と答えている。

浅見先生、タワーマンションだけでなく普通のマンションでも、最近は24時間換気です。洗濯は部屋干しが当たり前です。ご家族の方に聞いてみてください。超高層から靴下やハンカチ、下着が落下しても下にいる人に怪我をさせることはないでしょうが、ものによっては凶器になります。忙しい主婦(主夫)は浴室乾燥機か、部屋干しにしてエアコンで乾かすのです。先生も家事労働をされたほうがいいですよ。

その点、さすが大月氏。「2005年ぐらいに、東京では再び超高層がどんどん増えてきたので、私はその時点で建設されていた都内のタワーマンションのほぼすべてを見に行き、いくつかインタビューをしました」と語っている。齊藤氏もそうだが、座学だけではないフィールドワークを通じて習得した知見・知識による言葉・文章には重みがある。

この他の章はしっかり読み込んでいないが、総勢15名の先生方の共著であるため、全体としてマクロデータの紹介、論文の引用が多く、296ページのうち少なくとも2割は論旨が同じなのが気になる。タワーマンションをわが国の都市計画、住宅政策、居住性能、基本性能・設備仕様など多面的な視点で論じてほしかった。

 最後に、日大大学経済学部教授・安藤至大氏が担当された巻頭の章「タワーマンションはコンパクトシティの実現に寄与するのか? 」について一言。

 安藤氏といえば、2012年に行われた国交省の第2回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」で、マンション管理業をプリンターのリース料を安くして、トナーなどの維持管理費で儲けるのと似ていると〝不適発言〟を行い、発言を取り消したことがあり、また、マンション管理業協会などの第三管理の導入には慎重を期すべきという趣旨の「意見書」に対して、「私の授業なら『不可』にする」などと語り。マンションの合意形成に欠かせない理事会・自治会のコミュニティ活動を徹底して批判した方だ。

その方が、どのような持論を披瀝するのだろうと期待したのだが、全16ページの大半は国土交通省などのオープンデータの紹介や、学者先生の論文の引用だ。コンパクトシティの実現に向けた取り組みとしては、マンションの総会の議決にボルダールなどを活用すべきとか、第三者管理の活用を検討すべきなどとしているが、その処方箋は示されていない。小生も第三者管理に反対ではないが、その費用をどうしてねん出するか。現状を考えると絶望的にならざるを得ない。

その一方で、安藤氏は「タワーマンションを扱った経済学研究は非常に少ないと認識している」と述べているが、ならば、安藤氏こそがあいまいなタワーマンションの定義をきちんと整理され、その研究の旗振り役になるべきではないかと思う。

また、論文全体の文末は「効果があるだろう」「推進されるだろう」「必要だろう」「期待される」「考えられる」「あるだろう」「ためらう向きも多い」「いえるだろう」「したい」「面もある」「思われる」「報告されている」などのオンパレードで、歯切れが悪い。小生はいささか拍子抜けした。

マンションコミュニティを否定するのか 国交省マンション管理検討会(2015/4/4

 

 

 

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