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「オンサイトPPA」を採用した物流施設「DPL 三郷Ⅱ」

 大和ハウス工業は9月22日、再生可能エネルギー供給を加速するため、同社が建設・開発する商業施設・事業施設の全ての屋根に、太陽光発電システムを提案すると発表した。

 同社グループは、「第7次中期経営計画(2022~2026 年度)」で、2023年度には業界初となる「RE100」達成、2030年度までに国内でZEB・ZEH率100%を目指すことを打ち出している。今年度から分譲住宅を含む戸建て住宅全商品をZEH仕様としたほか、賃貸住宅もZEH-M仕様の提案を強化している。

 また、着工中の一部の事業施設でも10月1日から商業施設・事業施設の全ての屋根に、太陽光発電システムの提案を本格的に開始する。

 今回の提案では、顧客との通常の請負方式に加え、同社が屋根を借りて太陽光発電システムを無償で設置し、発電した電力を供給する「オンサイトPPA」方式を活用。発電した再生可能エネルギーを入居テナント企業に使用してもらうことで、顧客のCO2削減にも寄与する。

 

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「ナインアワーズ大手町」(Nine Hours Otemachi - Imperial Palace

コスモスイニシアは926日、同社が保有するカプセルホテル「ナインアワーズ大手町」(Nine Hours Otemachi - Imperial Palace)に遮音性の高い新型静音カプセル「9h sleep dock」を初導入し、睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」の提供を開始する。運用・サービス提供を前にした921日、プレス内覧会を実施した。

新型カプセル「9h sleep dock」(計8床)は、ヤマハ発動機と共同開発したもので、従来はロールカーテンで仕切られていたカプセルの入り口を遮音性に優れたハッチ型にすることで、いびき音や廊下を歩く音などを聞こえづらくする「静音空間」のほか「個別温湿度管理」「クリーン換気」機能を持つ。

睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」は、202112月から導入を開始したもので、宿泊客に了解の上で、睡眠データを赤外線カメラ、集音マイク、体動センサーで収集・解析し、後日、心拍数やいびき、無呼吸になった回数・時間などをレポート形式で提供する。サービス利用者は現在1万人を超え、約7%の睡眠時無呼吸症候群が検出されている。

今後、同社が運営する19店舗、年間利用者100万人に近い利用者へサービスを拡大することで、数年以内には数百万人~1千万人規模の睡眠データベースの構築を見据えている。

この種の「睡眠ビッグデータ」は世界に類がなく、睡眠障害は統合失調症、うつ病、パーキンソン病、認知症などの疾患と関連があることから、データが疾病メカニズムの解明や治療に貢献すると期待されているという。

施設は、東京メトロ東西線竹橋駅から徒歩3分・神保町駅から徒歩4分、千代田区神田錦町3丁目に位置する敷地面積約166㎡、8階建て延べ床面積約829㎡、客室数129室(男性76/女性53室)。チェックイン・アウトは14:0010:00、宿泊料金は変動制でこの日(21日)は約3,000円(「9h sleep dock」は+1,000円)。

東京駅や大手町、皇居に近いため出張や旅行の際のトランジットサービスとして、宿泊や仮眠などさまざまな需要に応えるカプセルホテルで、皇居ランナーなどにはシューズロッカーの提供やランニングウェア、ランニングシューズのレンタルサービスも行っている。

10月には、コワーキングスペースとして電源・Wi-Fi完備のデスク・ラウンジが使える当日/月額プランの販売を開始する予定。

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新型カプセル「9h sleep dock

 

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ピクトサイン

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洗面室

        ◆     ◇

 カプセルホテルは苦い経験しかない。大成有楽不動産が一昨年開業した「BAYHOTEL東京浜松町」を取材したときも書いたが、終電に間に合わず家に帰るよりはるかに安く済むので同僚などと何回か利用したことがある。ゴムひも付きのカギを手首にはめさせられ、囚人服のようなパジャマを着せられ、2段ベッドに押し込められるのには閉口した。浜に打ち寄せられたトドの死骸のよう格好の湯上り姿のサラリーマン(さすがにそんな女性はいなかった)を見ると、情けないやら悲しいやら、酔いがぶり返した。その都度〝絶対、お前らとは飲まないぞ〟と誓ったが、酒の誘惑には勝てなかった。

 今回のカプセルは、昔利用したものとは異なっていた。テレビはなかった。スマホがあればいいのだそうだ。酔っぱらいなどはあまり利用しないことも初めて知った。

白を基調にした内装デザイン、廣村デザイン事務所によるピクトサインは美しく、シャワー室のシャワーヘッドは立派なものだったのが印象に残った。ただ、人間洗濯機のようなカプセルはどうしても馴染めなかった。

 睡眠解析サービスについてはよく分からないが、無呼吸、いびき・歯ぎしりは重大な疾患と関係があることは身内、知人を通じてよく知っている。カプセルだけでなく、同社の「MIMARU」に導入してもいいのではないか。

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コワーキングスペース

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外観

大成有楽不 ホテル&カプセル 「BAYHOTEL東京浜松町」424日開業(2020/3/18

 

 

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キッズデザイン賞 受賞36作品

 キッズデザイン協議会は9月21日、第16回「キッズデザイン賞」受賞作品214点の中から優秀作品へノミネートされた最優秀賞、優秀賞、奨励賞、特別賞など36点を発表した。9月28日に表彰式、シンポジウムが開催される。

 最優秀賞の内閣総理大臣賞には茨城県の黒田潤三アトリエ/なないろレディースクリニック「なないろこまち」が選ばれた。受賞理由は「カフェのような待合室、別荘のような病室など、クリニックの枠を超えて、小さな町をそのまま実現し、リアルな触れ合いを大切にした良質な取組」であること。

 住宅・不動産業界からは、奨励賞(キッズデザイン協議会会長賞)に中央住宅「育てることで育む『農』のある暮らし ハナミズキ春日部・藤塚」と、積水ハウス「エルミタージュクール」がそれぞれ選ばれた。

 中央住宅の受賞作は「住まいながら農に関わり、自らの食の成り立ちや消費を学べる、社会提案性の高い取組であり、建築はベーシックな機能と意匠を押さえており、すっきりとしたデザインで評価できる」点が、積水ハウスの受賞作は「子育て世帯ならではのニーズ、例えば見守りをしながら家事のしやすい動線、外遊びを自由にさせられるような中庭、一時預かりに使えるような空間や遊び場などを備えた、『子育て』に特化した思い切った空間提案」が評価された。

◇        ◆     ◇

 両社の受賞作のうち「ハナミズキ春日部・藤塚」は見学取材している。記者は調整区域で開発したことに価値があり、だからこそ農園付きで土地面積が広く、価格もリーズナブルな商品にしたのが肝だと思う。受賞理由にある、子どもが「住まいながら農に関わり、自らの食の成り立ちや消費を学べる」かどうかは親次第だ。

 積水ハウスの受賞作は機会があったら見学したい。

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中央住宅「育てることで育む『農』のある暮らし ハナミズキ春日部・藤塚」

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積水ハウス「エルミタージュクール」

 

◇        ◆     ◇

 今回から受賞作品発表・表彰式の方法が変わった。従来は受賞作発表と表彰式は同時だったのが、今回は受賞作発表と表彰式まで1週間の期間が設けられた。メディアがこの間に各受賞作を見学取材できるよう配慮したと小生は受け止めた。結構なことだと思う。小生は前回の第15回表彰式の記事でも「記者が見る機会を与えてほしい」旨の記事を書いた。

 しかし、28日までは3連休を挟んでいるので、休祝日を取材に充てられないことはないが、実質3日間しかない。しかも、多くのメディア関係者はすでに日程を組んでいるはずで、自分の目で確認できる機会は限られる。もう少し期間を開けていただきたい。

 さらに言えば、キッズデザイン賞に限ったことではないが、応募・審査の方法を改め、直接消費者が参加できるようにしてはどうかということだ。

 建築物などは竣工から1~2年が経過しているものが多いはずだ。応募する側としては、実態・実績がないと応募しづらい事情もあるのだろうが、中央住宅の受賞作は2年前、積水ハウスの賃貸住宅は3年前の竣工だ。今回、総理大臣賞を受賞した「なないろこまち」も1年以上前だ。これだけ間延びすると、受賞の有難みも薄れるというものだ。

 いまの若い人は新聞もテレビも観ないと聞く。スマホ一つであらゆる情報を収集するのだそうだ。ならば、SNSを利用して、消費者から推奨してもらえるようにすれば賞の〝格〟は飛躍的に高まるはずだ。前回の第15回のときの菅義偉総理も今回の岸田文雄総理も人気がないようだ。そんなお墨付きをもらって嬉しい子どもなどいるのだろうか。ネットで調べたら、世の中には内閣総理大臣賞・杯は競馬、競輪をはじめ院展、パソコン入力など60以上あった(岸田総理はいくつご存じか)。いい加減、このような事大主義から脱却すべきだ。権威に縋りつこうとする国民性にも問題がある。それより赤胴鈴之助とか月光仮面、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、アンパンマン…はどうか。

厳しくなる調整区域の宅地開発/ポラス・春日部の記事 メディアはなぜ触れない(2020/7/10)

調整区域の市民農園付き200㎡邸宅 ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2021/7/3)

積水、旭化成、ケイアイスターが受賞/記者にも見る機会を 第15回キッズデザイン賞(2021/9/30)

 

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「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)海老名I」

 三井不動産は9月20日、同社のロジスティクス事業のフラッグシップとなる「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)海老名I」が竣工、満床稼働すると発表した。免震構造、太陽光発電、地中熱活用、屋上緑化、グリーンインフラ、間伐材利用、天井高3.5mのスケルトン天井ワークプレイス、雨水貯留池などを整備して同社初の最高ランク「ZEB」認証を取得しているのが特徴。同日、メディア向け内覧会を行った。

 施設は、圏央道「海老名」ICと海老名運動公園に隣接する海老名市中新田の工業・準工業地域に位置する敷地面積約54,847㎡、鉄骨造・免震構造6階建て延べ床面積約122,180 ㎡。設計・施工は日鉄エンジニアリング。着工は2021年5月、竣工は2022年9月20日。

 施設は、従前採石場として利用されていたところで、建物デザインはオーストラリアのデザイン事務所JACKSON TEECEを起用。圏央道からよく見える3階以上は見る角度によって表情が変わる木調ルーバー(ある女性記者は「木琴のよう」と形容した)を採用。

 最大の特徴は、同社初の「ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証を取得したことで、太陽光発電、Low-Eガラス、地中熱ヒートポンプ、デシカント空調、屋上緑化などを整備することで、全体のCO2排出量を実質ゼロにする「グリーンエネルギー倉庫」を実現した。

 このほか、環境配慮では「海老名の森・グリーンインフラ」をコンセプトに、桜並木をはじめ約1,500本の高中木、約15,000本の低木類などを植樹。最大貯水量2,100m³の雨水貯水池を整備し、樹木の水遣りなどに活用する。また、三井不動産グループの約5,000haの社有林から生じる間伐材をエントランスやラウンジの仕上げ材に多用している。

 さらに、地域との親和性を重視し、施設の使用開始(10月1日)前の9月25日(日)に、近隣の子どもや住民に開放し、マルシェ、ランニング教室、ヨガ教室、間伐材工作プログラム、スノーピークビジネスソリューションズ監修によるテント設営体験会や焚火体験などのイベントを行う。この種の取り組みは継続して行っていく予定。

 快適なワークプレイスを提供するため、共用部にはスケルトン天井(約6m)の開放感あるワークプレイス(天井高3.5m)や、WEB会議にも対応した個人ブースを設置するほか、事務所に面したバルコニーやスカイデッキには緑化を施し、最上階には相模川越しに丹沢連峰や富士山を一望できるラウンジを配している。BCP対応は72時間稼働の非常用発電機や免震装置など。

 同社ロジスティクス本部ロジスティクス事業部事業グループ統括・田中耕一郎氏は「フラッグシップと位置づけた施設で、インターチェンジに隣接する恵まれた立地を生かし、当社初のZEB認定などの環境配慮、デザイン、地域連携などで他社との差別化を図っている。テナントからもお褒めの言葉を頂いている」と話した。

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表情が変わる木調ルーバー

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エントランス

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スケルトン天井の事務所スペース

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スカイデッキの横の屋上緑化(草はセダン)

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 免震にZEB認証、天井高3.5m(倉庫部分は5.5m)、Low-Eガラス、スカイラウンジ・スカイデッキ、間伐材利用のラウンジ仕上げ、木調ルーバーの外観デザイン…素晴らしい施設だ。同社がメディア向け内覧会を実施した理由がよく分かる。

 マンションに例えたら、同社の〝パークホームズ〟に負けないどころか、はるかに勝るレベルだと思った。厚木駅前では坪単価200万円のマンション「ファーストリンクレジデンス」(193戸のうち170戸超が成約済みとか)が建設中で人気にもなっているが、ここなら坪単価250万円でも売れるのではないかと思ったほどだ。

 実際は圏央道の騒音が凄いのでマンションは無理だが、これほど高いレベルであれば共同住宅などとの複合開発(同社の「羽田」は梓設計の本社が入居している)の可能性もあるのではと田中氏に聞いた。田中氏も「機会があれば商業、オフィス、住宅などの複合開発をやってみたい」とまんざらでもなさそうだった。バブル期は倉庫がディスコなどで賑わったではないか。

 もう一つ。田中氏が「倉庫は車の出入りが多いことなどで『嫌悪施設』と言われるが、そうでないことを地域の方々にも理解してもらえるよう9月25日には施設を開放し、マルシェや子供のかけっこ、ヨガ教室気などを行う」と語った「嫌悪施設」について。

 記者は2018年の記者会見で、当時、常務執行役員ロジスティクス本部長だった三木孝行氏(現取締役専務執行役員)が「もはや、後発ではない。嫌悪施設ではない」と語ったのを鮮明に覚えている。昨年には、「嫌悪施設」とは何かの記事も書いた。「嫌悪施設」は不動産流通促進センターが例示したのを業界がそのまま受け入れ運用しているもので、概念などない。「嫌悪施設」は、風俗も含めていわゆるエッセンシャルワーカーが働いている施設も多い。職業差別にもなりかねない。見直す必要があるのではないか。「駅近」がいいと決めたのは誰だ。

 さらにもう一つ。今回の施設は最高に素晴らしいのだが、画竜点睛、だからこそ欠けているものが一つだけある。オフィス内のフェイクの観葉植物だ。本物の緑を配置すれば就労環境は劇的に向上し、「倉庫」のイメージは一変する。用途規制も見直されることになるかもしれない。やらない、やります、やる、やるとき、やれば、やろう…号令を下せるのは三木さんしかいない。

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スカイラウンジ

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間伐材を活用したラウンジ

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非常用発電機

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スカイラウンジと分散配置となるサブラウンジ

「心理的瑕疵」「嫌悪施設」とは何か 釈然としない国交省「死の告知ガイドライン」(2021/10/10)

梓設計が本社機能 三井不 街づくり型「インダストリアルパーク羽田」満床稼働(2019/7/5)

「最早、後発でない」「嫌悪施設でもない」 三井不 ロジスティクス本部長・三木氏(2018/5/21)
平均74㎡、競合物件意識した商品企画 マリモ・小田急不の駅前再開発「厚木」(2021/11/3)

 

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「レ・ジェイド北海道ボールパーク」

 日本エスコンは9月20日、来春に開業する北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO」に徒歩1分のマンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」全118戸が9月19日に全戸完売したと発表した。2022年2月の分譲開始からわずか8か月だった。

 物件は、北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド北海道)」を核とする約23,814haの「北海道ボールパークFビレッジ」プロジェクトの一角にあり、JR千歳線北広島駅から車で約5分・徒歩22分、北海道北広島市共栄の商業地域(建ぺい率80%、容積率400%)に位置する14階建て全118戸。専有面積は43.43~137.55㎡。価格は3,500万円台~1.5億円台。竣工予定は2023年2月下旬。設計・監理は浅井謙建築研究所、施工は中山組。販売代理はライズパートナーズ。

 商品企画は、暖炉を囲んで過ごせる憩いの場「ウォームリビング」や、本格的なキッチンを備えた「クラブハウス」、北海道の原生林を見渡せる「屋上共用テラス」など共用部の充実を図り、専有部は、セカンドハウスやワーケーションなど様々なライフスタイルに合わせて選択できる20タイプを用意。バルコニーの隣にサンルーム「Fテラス」を設けた。購入者は引渡しから10年間利用できる球場への入場フリーパス付き。

 同社は人気の要因を、①新球場から約80mの希少立地②物件周辺の「沢エリア」が広がり、BBQやキャンプ・グランピングといったアクティビティが充実③最寄りのJR北広島駅は、新千歳空港駅へ電車で約21分、札幌駅へ電車で約17分などが評価されたとしている。

 購入者の属性は、居住地は6割が道内、4割が道外。年齢は50代が4割、40代、60代が各2割。日ハムファンを中心にスポーツ好きの人が多いという。

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 話は聞いていたが、凄いの一言だ。ハウスメーカーは逆だが、首都圏に進出し成功した大阪発祥のデベロッパーは少ないはずだが、平成27年分譲の「レ・ジェイド世田谷 砧」(25戸)を取材し、28~29年の「若松町」「渋谷富ヶ谷」と30年の中部電力との資本提携あたりで、何かをしでかすのではないかという予感はあった。

 そして、2020年1月、北海道日本ハムファイターズの新球場のネーミングライツ(命名権)を取得したとき、予感は確信に変わった。他の球団のように単なるCM看板にとどまらず、不動産事業と抱き合わせであるはずだと思った。その後の経緯は省略するが、その通りになった。

 昨年分譲し、早期完売した「パーク レ・ジェイド白金レジデンス」(55戸)は三菱地所レジデンスとのJVだが、メインは同社だ。大手デベロッパーを従えさすことができる中堅デベロッパーは同社のほかはモリモトくらいだ。

シニア層もターゲット いわき駅前の免震再開発 フージャースコーポ・日本エスコン(2022/9/17)

坪235万円でも7割近い144戸成約100㎡超58戸も人気 日本エスコン「つくば」(2021/4/24)

高層ZEH-M プラン秀逸 日本エスコン「レ・ジェイド大倉山」(2020/2/1)

3帖大の「Fテラス」ヒット 日本エスコン「豊田」 坪236万円も割安(2019/11/8)

全戸にホワイエ(屋内廊下)土地の価値を最大限引き出す日本エスコン「渋谷富ヶ谷」(2017/4/24)

ライトコート付きのプラン秀 日本エスコン 首都圏初の〝グラン〟「若松町」(2016/11/4)


 

 

 大京は9月20日、環境省の「令和4年度 集合住宅の省CO2化促進事業」のうち「中高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に「(仮称)盛岡菜園プロジェクト」(ZEH-M Oriented)、「(仮称)琴似1条プロジェクト」(同)、「(仮称)ライオンズ南塚口町7丁目」(ZEH-M Ready)の3物件が採択されたと発表した。

 この結果、オリックスグループの大京と穴吹工務店が「経済産業省 高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」と「環境省 中高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に採択された累計採択数は31物件になった。

 両社は、開発する全ての新築分譲マンションで原則「ZEH-M Oriented」基準を満たす仕様で推進するとしている。

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 これまで環境省の「中高層ZEH-M」は31物件、経産省の「高層ZEH-M」は33物件、合計64物件が採択されているが、うちオリックスグループは半分近くを占めている。天晴れ。

 大京は、マンションの商品企画もそうだが、「環境共生」「ユニバーサルデザイン」でも業界をリードしてきた。なのに、最近は大手デベロッパー6社の後塵を拝している。戸数だけではないが、ブランディング、情報発信力に課題があるのではないか。

 大和ハウス工業は915日、9月下旬に発表される基準地価を前に、記事を書くのに参考となる「記者レクチャー会〈2022年基準地価〉」を開催した。記者は別の取材のため録画で視聴した。

分譲マンションについては同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏が、分譲戸建てについては同社住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ部長・本間生志氏が、物流事業についてはDプロジェクト推進室上席主任・藤田渉氏が、オフィス・ホテルについては流通店舗事業本部事業統括部開発事業部開発グループグループ長・和田康紀氏がそれぞれ約10分間、事業環境などについて説明した。

角田氏は、首都圏マンションは引き続き好調に推移し、DINKSDEWKS、富裕層の資産性を重視する旺盛な需要を背景に、販売価格も引き続き上昇しているとした。近畿圏や地方都市でも首都圏ほどではないが、再開発・複合開発などに対する需要の高まりがみられると説明した。

このような需給関係から、仕入れ競争も激化し、マンション用だけではなく賃貸用として取得するデベロッパーとの競合もあり、良好な適地には各社が群がり入札になると話した。

本間氏は、今年度上半期は在庫減少が要因で低調に推移したが、下半期はZEH仕様比率を大幅に高め、人気の家事シェアタウンなどを積極的に分譲すると話した。在庫(販売物件)が減少(最小期2,800区画⇒現在は3,400区画)したことから、今年設けた82名の用地企画マネージャーを通じて仕入れを強化し、3月末には年間在庫数(販売数)4,000区画に戻すという。

今後の地価動向については「全く読めない。いつ下落してもおかしくない」と警戒感も強めている。

物流市場について藤田氏は、EC・通信販売の継続進展、コロナ禍によるEC利用の定着・決済環境の充実などからBtoC、EC市場規模は順調に拡大し2026年度は29兆円を超えると話した。また、消費形態の変化と冷凍技術の進化に伴う冷蔵冷凍倉庫需要の増加などから物流適地が不足しており、好立地の物流用地は高値で取引されていると説明した。

オフィス・ホテルマーケットについて和田氏は、東京・大阪・名古屋圏のオフィスはテレワークやサテライトオフィスなど働き方の多様化により、乱立する都心のオフィスビルは波乱含みとした。

ホテルはコロナ禍で固定賃料の大幅減額や固定賃料が負担となり撤退を余儀なくされるホテルも見受けられ、本格回復は2024年と読み、これからは、売上に応じた変動賃料やホテル運営委託が主流になってくるとした。ホテルオペレーターの質(運営力 ・組織力・サービス・財源)が求められる時代になったと語った。

◇      ◆     ◇

これまでもそうだが、同社の記者レクチャーは非常に面白い。今回も4氏の説明は40分くらいで、残りの約50分間を質疑応答に割いた。そのため、メディアの質問が相次いだのだが、ハウスメーカー担当記者の関心事でもあるのだろうか、分譲戸建てに関する質問が多かった。

意図したことかどうかは分からないが、本間氏が質問を誘発するような本音の話をしたからでもある。本間氏は冒頭、各地区別の分譲戸建ての表データを示し「これは未公表資料ですので、転載は控えていただきたい」と前置きしながら、「赤字が目立ちかっこ悪いのだが、これが実態。今年度上半期の分譲戸建ては低調に推移した。分譲は〇%、土地は〇%減少した(戸数のことか)。大幅な在庫減が要因…価格は建売住宅が〇万円、戸建ては〇万円上昇した。要因は建売住宅はZEHを推進しており、土地は一等地戦略を取っているから(金額的には小幅減少にとどまったということか)…下期にはZEH比率を飛躍的に高める」などと具体的な数字を交えながら話したからだ。

(本間さん、ご安心ください。わたしのパソコンは表の映りが鮮明ではなく、ほとんど読めませんでした。転載のしようがありません。ただ、上記に書いたように、本間さんが話されたことのうち数字は〇にしましたが…これは書いてよろしいのでしょうか)

当然のように、この件にメディアは反応した(本間氏の計算通りか)。本間氏は具体的な数値を示し丁寧に対応した。小生もそこまで赤裸々に〝内幕〟を話したのには驚いたのだが、それは同社だけでなく戸建て業界全体の実態を話したのに過ぎない。この件についてはこれ以上触れない。

本間氏はポータルサイトによる反響が大幅に減少していることにも言及したので(検討者の知りたいのはセカンドオピニオンだ。ポータルサイトにはこれが全然ないのが課題だと記者は思う)、〝一強〟サイトの東京都の新築戸建てを検索した。約11,000件がヒットした。東京都の令和3年の分譲住宅の着工戸数は48,610戸だ(マンション31,221戸、戸建て17,389戸)。全着工戸数に占めるこのポータルサイトの捕捉率がどれくらいか分からないが、年間着工戸数の63%が分譲中というのはあり得ない数字だと思うが…。

そして「ZEH」で検索しようと思ったら、その項目はない。仕方なく「長期優良住宅」で検索したら503件だった。

ZEH」でヒットしないのは、分譲戸建てのZEH比率は微々たるものであるからだろう。国土交通省のデータによると、2019年度の分譲戸建ての着工戸数146,154戸のうちZEH住宅は1,901戸、わずか1.3%しかない。年間400500戸をコンスタントに供給している三井不動産レジデンシャルはZEHに取り組み始めたばかりで、2025年度までに50%という目標を公開している。野村不動産もこれからではないか。

なので、同社がZEHを標準仕様にするのは大賛成だ。本間氏は「時代に沿って先頭を走ろうと舵を切った。今期計上する約1,600戸の分譲戸建てのうち8割はZEH対応。5年後には100%にする」と話した。先頭を走るから価値がある。後ろからついていくのは誰だってできる。依拠すべきは良質住宅を求める顧客だ。価格が多少上昇しても、ZEHの魅力を丁寧に説明できれば購入検討者はみんな買いあがる。同業の積水ハウスは分譲戸建てもZEHが標準仕様と聞いている。

首都圏マンションはどうかというと、23区内は軒並み坪300万円以上で、駅近(どれほどの価値があるか分からないが)は400万円、500万円以上だ。20坪で1億円の相場となりつつある。神奈川、埼玉、千葉だって主要都市は坪250万円以上で、300万円を突破してきている。ZEHマンションは相場より坪単価(総額ではない)は1、2割高くてもみんなよく売れている。分譲戸建てをZEH化することで分譲価格が上昇しても、マンションにしたら1坪くらいではないか。

 参考までに、年間4万戸以上販売する飯田グループホールディングスの2023年度第1四半期決算を紹介すると、分譲住宅の販売棟数は9,266戸(前年同期比9.5%減)で、平均価格は3,007万円(前年同期比5.0%、143万円増)に上昇。建物原価、土地原価上昇分を販売価格に反映しきれずに、1棟当たりの売上総利益額は35万円減少した。2年前の1棟単価は2,656万円だったので、この2年間で351万円上昇している。同社グループでZEH住宅を分譲しているのは東栄住宅のみで、同社は今後すべてZEH化すると打ち出した。

分譲戸建て「仕入れ強化。Nearly ZEH進める」本間部長 大和ハウス 恒例レクチャー会(2022/3/17

27棟にオリジナル樹木 敷地全体では5+1本 大和ハウス「武蔵府中ひかりテラス」(2021/7/2)

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「東京ミッドタウン八重洲」

 三井不動産は9月15日、八重洲二丁目北地区市街地再開発組合の一員として事業参画しているミッドタウンブランド3施設目の「東京ミッドタウン八重洲」を2023年3月10日(金)にオープンすると発表。同日、施設が竣工したのに伴う記者会見を行い、9月17日に先行オープンする地下1階の13店舗、オフィスゾーン、地下4階のエネルギーセンターの内覧会を実施した。

 東京駅八重洲駅前で進行中の隣接する「八重洲一丁目地区」(51階建て延べ床面積約225,200㎡、2025年度竣工予定)と「八重洲二丁目中地区」(43階建て延べ床面積約388,300㎡、2028年度竣工予定)の先陣を切るプロジェクトで、施設コンセプトに「ジャパン・プレゼンテーション・フィールド ~日本の夢が集う街。世界の夢に育つ街~」を掲げ、世界中・日本中から人や情報、モノ・コトが集まり、交わり、新しい価値を生み出し、世界に向けて発信していく街づくりを目指す。

 施設は、ミクストユース型の多様な機能を備えているのが特徴で、セントラルタワーの地下1~2階の「バスターミナル東京八重洲」と地下1階の13店舗からなる商業施設を9月17日に先行オープンしたほか、地下4階に八重洲エネルギーセンター、地下1~3階に商業ゾーン、1~4階に中央区立城東小学校、4~5階にビジネス交流施設「イノベーションフィールド八重洲」、5階に屋上テラス、7階にワークスタイリング、24階にテナント向け会員制施設・サービス「mot.三井のオフィスfor Tomorrow」を備える。オフィスフロアは7~38階。40~45階には日本初の「ブルガリ ホテル東京」が2023年4月に開業する。セントラルスクエア2~3階には「認定こども園」が開設される。

 「日本橋」「豊洲」に次ぐ第三弾となる「八重洲エネルギーセンター」も今秋から稼働する。

 施設概要は、JR東京駅地下直結(八重洲地下街経由)、中央区八重洲二丁目地内の区域面積約1.5haに位置する地下4階・地上45階建て延べ床面積約約283,900㎡の「八重洲セントラルタワー」と、地下2階・地上7階建て延べ床面積約5,850㎡の「八重洲セントラルスクエア」で構成。基本設計・実施設計・監理は日本設計、実施設計・施工は竹中工務店、マスターアーキテクトはPickard Chilton。建物は2022年8月31日に竣工。

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オフィスロビー

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24階オフィス

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「八重洲エネルギーセンター」のコージェネレーションシステム(CGS)

◇        ◆     ◇

 他の取材もあり途中で退席したので、地下1階の商業施設は見学できなかったのだが、記者会見・内覧会で同社ビルディング本部ビルディング事業三部長・藤井卓也氏と同社商業施設本部アーバン事業部長・牛河孝之氏が「類を見ない再開発」「周辺エリアを包含する再開発」「行きたくなるオフィス」「国内最大級のZEB Ready認証」「ワーカー・ツーリスト・ファミリーなど、全ての人の好奇心をくすぐる」「東京の新名所の多彩な店舗」「SC初」などと強調したように、コロナ以後を見据えた新しい働き方の提案や、オフィスワーカーはもちろんバスタ利用者、観光客のほか「都心生活者」も大きなターゲットの一つにしているのに注目した。

 記者は、コロナ前までは三菱地所の「丸の内北口ビル(丸の内オアゾ)」が勤務地で、オフィスにいるときは必死でキーワードを叩き、取材で外出するときは街路樹と建物ばかり眺めていたので、街行く人には関心を払わなかったので確証は得られないのだが、コロナ禍の三井不動産「コレド室町」「COREDO室町テラス」「MIYASHITA PARK」、三菱地所の仲通りをはじめとする「大丸有」エリアの街は、コロナ前とは様相が一変したように感じる。目立って増えたのは小さな子ども連れた女性グループだ。これだけでオフィスワーカーでないことが一目瞭然だし、着ている衣服も労働者のそれではないし、昼間から平気でワインなどを飲んでいる。

 どこから湧き出てくるのだろうと考えるのだが、おそらく人口が爆発的に増えている中央区を始めとする千代田、港区、渋谷区居住のアッパーミドル・富裕層だろう。

 この仮説が当たっていれば、「都心生活者」のキーワードの謎が解ける。今後、来街者の争奪戦はますます激化する。負ければ商業施設だけにとどまらず、オフィス空室率の悪化を招く。いかに来街者を増やし、滞在時間を延ばすかが大きなテーマになってくるのではないか。

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藤井氏(左)と牛河氏

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「東京ミッドタウン八重洲」

◇        ◆     ◇

 オフィスロビーと24階の会員向け施設は整備途中だったが、それぞれ2層吹抜けで床材・壁材には天然石や天然目の突板が多用されている。24階はカーペット敷きだった。(通常階のオフィスフロア天井高は2800ミリとか)

 顔認証による「完全タッチレスオフィス」や「デリバリーロボット」の導入は驚きはしなかったが、小生のようにタバコを吸うためにしょっちゅう席を外す人は全部カウントされ、配達料は取らないというが、ロボットに趣向まで知られるのは気持ちのいいものではない。そのうち〝カロリーの取りすぎですよ〟〝もっとましなものを食べなさい〟などと注文をつけるロボットが出現するのではないか。

 今年3月に行われた施設見学会でも確認しているのだが、今回の内覧会でもセントラルタワーの外観はゆるやかなカーブを描いたシンメトリー形状であることを再確認した。この前見学した三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス グラン三番町26」もそうだった。

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顔認証完全タッチレス(認証されない人はたちまち赤い警報が出る)

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デリバリ―ロボット

国内最大級「バスターミナル東京八重洲」9月17日開業UR都市機構・京王電鉄バス(2022/9/17)

「バスターミナル東京八重洲」に名称決定9月17日開業UR都市機構・京王電鉄バス(2022/3/16)

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「ミッドタワーいわき」

フージャースコーポレーション(事業比率51%)と日本エスコン(同49%)は915日、常磐線いわき駅前の商業・住宅一体の「ミッドタワーいわき」のマンションパビリオンが完成したのに伴うメディア向け見学会を開催した。免震の21階建て全216戸で、うち3スパン55戸はシニア層をターゲットにした「シニアバリアフリー」住戸としているのが特徴だ。フージャースコーポにとっては市内で4棟目の分譲で、両社のJVは今回が初。

物件は、JR常磐線・磐越東線いわき駅から徒歩3分、いわき市平並木の杜1番の商業地域に位置する敷地面積約5,609㎡、免震21階建て全216戸(権利者住戸10戸含む)。専有面積は62.89131.57㎡、価格は未定。駐車場は自走式222台。竣工予定は20242月下旬。設計・監理は熊谷組、UG都市建築、施工は熊谷組・加地和組・堀江工業特定建設工事共同企業体。販売開始は10下旬~11月上旬の予定。

プロジェクトは、平成263月に「いわき市並木通り地区復興市街地再開発ビル協議会」が設立されてから、平成303月の都市計画決定、フージャースコーポの事業協力者選定などを経て、20222月に着工。市の中心市街地活性化基本計画の一つ。

名称は「並木の杜シティ」で、全体敷地面積約1.1ha4階建て商業棟の1街区とマンション棟、駐車場棟からなる2街区で構成。「並木の杜」としているように、前面道路の国道の歩道部分幅員5mと再開発事業地内の幅員5mを合わせた幅員10mの部分は2段植栽のプロムナード(歩道)として整備するのも特徴の一つ。

主な基本性能・設備仕様は免震構造、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機(プレミアム住戸のみ)などで、共用施設にはクラブラウンジ、マルチスタジオなど。シニア層をターゲットにした「シニアバリアフリー」住戸はベンチ付き玄関、全居室・浴室引き戸ドア、メーターモジュール廊下など。

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模型

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ベンチ付き玄関(左)と2枚引き戸の浴室

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現地(右は「ホテルB4Tいわき」)

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 いわき駅に降りてすぐ、他の地方都市と同様、街の活性化が急務であることが分かった。来年1月開業予定の駅直結のJR東日本のスマートホテル「ホテルB4Tいわき」と駅前の再開発商業ビル「ラトブ」は目立つのだが、その他の建物は古く、駅前通りのケヤキ並木は美しいのだが、どこか暗い影を落としているように感じた。人通りも少なかった。

マンション取材を終え、一杯飲んでから帰ろうと思い、担当者に飲食街を尋ねた。マンションパビリオンのすぐ裏手がそうだと教えられたので足を踏み入れた。車がやっと通れるような狭い路地裏には大小の古い雑居ビルに飲食店・歓楽施設が櫛比していた。その佇まいは隆盛を極めた「常磐炭鉱」の昭和の時代にタイムスリップしたようで、時間が午後4時過ぎだったためもあるのだろうが、営業している店はほとんどなく、廃墟の町に迷い込んだような錯覚も覚えると同時に、おどろおどろしい光景に足がすくんだ。

そんな記者を見下すように、3匹の野良猫が毛を逆立て〝お前が来るところではない〟と殺意のこもったまなざしで睨めつけてきた。馬鹿にされまいと小生も睨み返したら、そのうちの一匹は記者の剣幕に怖気ついたのか脱糞(マーキングか)した。

猫とそんなやり取りをしていても埒があかないので、その飲食街と目と鼻の先の「ラトブ」1階のカフェ&バーでワインを飲んだ。安くておいしかった。そろそろ帰ろうとしたら、目の前の対面の店に「営業中」の電灯がついた。午後5時過ぎだったか。落ちぶれ果てても小生は記者だ。この目で疲弊する飲み屋の実態を探ろうと、店の前のベンチに腰かけていた女子高生3人組に勧められるままに3店並んだ真ん中の「わら焼 湊」に入った。

カツオなど新鮮な魚介類を本物の藁で焼いて食べさせる店だった。店内に入った途端、L字型の無垢の白木のカウンターが目に飛び込んできた。幅(奥行き)にして50cm、長さにして3m+6m9mはあった。樹種を聞いたらイチョウだった。値段は百数十万すると思ったが、「神社の御神木だったのをただで譲り受けたもの」とのことだった。

高級材の、しかも御神木だった貴重なイチョウのカウンターで酒が飲める僥倖に記者は舞い上がり、早速お勧めの酒を注文した。宮城県栗原市の一ノ蔵酒造の「祥雲金龍」だった。初めて味わう酒だった。甘さが抑えられている分だけ旨みと辛みが口腔に広がった。肴もおいしい。

会計を済ませるころには相当酔っぱらっていた。東京に戻るのは夜中になりそうだったので帰るのを断念、ホテルに泊まった。

翌日は「ラトブ」の45階にある市の図書館に立ち寄った。三猿文庫・愚庵文庫など背表紙を見ただけで読みたくなるような歴史的な書籍・文献がたくさんある。同市の所蔵図書の多さは東北一だそうだ。

飲まずに東京に戻っていたら、いわき市の悪いイメージしか残らなかったはずだ。酒に十の徳あり。(今年5月に行われた、フランスの日本酒コンクール「Kura Master 2022」純米酒部門で「祥雲金龍 純米吟醸」が部門最高賞「審査員賞」を受賞したとある)

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いわき駅近くの飲食・歓楽街の昼と夜

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〝お前は誰だ〟〝大きなお世話だ〟(脱糞したのは手前の猫)

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イチョウ材のカウンター(左)と生カキのわら焼き・「祥雲金龍」

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 「シニアバリアフリー」は成功するとみた。これはどこのエリアのマンションにも通用するはずだ。肝心の坪単価だが、担当者から「書かないで頂きたい」と言われたので書かない。今回で4棟目の分譲というフージャースコーポは「年間100戸は厳しい」地域の需給関係を知悉しているはずで、高値追求しないとみた。市の人口動態などのデータも強気になれない数値を示している。

 同市は昭和41年、県が主導して行った広域市町村合併によって生まれた中核市だ。市域面積1,232k㎡は当時日本一広い市として話題になった。その後、他の地域でも合併が相次いだため、現在は富山市(1,241k㎡)に次いで全国12番目の広さとなっている。

令和49月現在の人口は326,000人。福島県全人口の18.2%を占め、仙台市の1,068,129人(令和49月現在)に次ぐ東北エリア2番目の多さだ。しかし、人口は平成10年の360,661人をピークに減少の一途で、高齢化率も31.5%(令和2年)と30%を超えている。

「並木の杜シティ」が街の再生の起爆剤になるよう願う関係者の気持ちはよく分かる。

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駅前通り

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「バスタ―ミナル東京八重洲」バス出発式

 東京駅前に竣工した「東京ミッドタウン八重洲」の地下1、2階に整備された、都市再生機構が所有し、京王電鉄バスが運営する国内最大級の高速バスターミナル「バスタ―ミナル東京八重洲」の第1期エリアが9月17日開業する。開業に先立つ9月15日、両社は竣工記者会見を行い、施設を公開した。

 バスターミナルは、これまで各方面に向かう高速乗合バス、空港連絡バスなど約1,200便/日の停留所が東京駅前交通広場では充足できず、周辺の道路上に散在しているため、鉄道との乗り換えが不便であり、道路上での乗降により車両交通や歩行者運行が妨げられるなどの課題を解消するもの。

 今回の第1期エリアでは、JR東京駅(八重洲南口改札口)から八重洲地下街を通ってアクセスが可能になり、案内カウンター、待合スペース、トイレ、授乳室などのほか、物販・サービスなどの店舗を併設。約1,200便のうち約550便/日が施設内に収容され、新たに設けられた便約50便/日と併せ、約600便/日の高速バスが発着する。三井不動産が整備した地下1階の13店舗も9月17日に同時オープンする。

 第2期は令和7年度竣工予定の再開発事業「東京駅前八重洲一丁目東B地区」に、第3期は令和10年度竣工予定の「八重洲二丁目中地区」にそれぞれ整備される。全体が完成すると、20バース、約21,000㎡の国内最大級の高速バスターミナルとなる。3施設は地下通路で結ばれる。

 3つの再開発事業はそれぞれ事業主体やスケジュールが異なり、また、施設の性格上、事業採算性が低いことから国からの補助を受け、UR都市機構が施設を取得し、京王電鉄バスが運営することになったもの。

 記者会見でUR都市機構東日本都市再生本部都心事業部担当部長・大貫英二氏は「長期的な視点で支出を抑え、収入を増やすよう取り組んでいく」と語り、京王電鉄バス取締役ターミナル営業部長・福島八束氏は「新たな需要を創出する」と話した。

 会見後には、バス発着先の千葉県、石川県、名古屋市、仙台市、大阪府の5体のキャラクターを交えたフォトセッションや、東京ミッドタウン八重洲の1~4階に併設される中央区立城東小学校6年生21名のバス出発式が行われた。

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左から東京大学大学院新領域創成科学研究科特任教授・中村文彦氏、中央区副区長・吉田不曇氏、京王電鉄バス代表取締役社長・宮坂周治氏、UR都市機構東日本都市再生本部本部長・中山靖史氏、国土交通省都市局街路交通施設課課長・服部卓也氏、八重洲二丁目北地区市街地再開発組合理事長・百合達哉氏

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「東京ミッドタウン八重洲」

「バスターミナル東京八重洲」に名称決定9月17日開業UR都市機構・京王電鉄バス(2022/3/16)

 

 

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