公園、山、川…地域の資源と接続 全面展開へ フージャースコーポ 小川栄一社長

「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園

小川氏
フージャースホールディングスの2021年3月期業績予想は、売上高80,000百万円(前期比6.1%減)、営業利益4,200百万円(同37.2%減)、経常利益3,500万円(同36.5%減)、純利益2,400百万円(同766.5%増)で、新型コロナの影響を受けたCCRC事業、不動産投資事業、不動産関連サービス事業などがそのまま数値に反映されそうだが、主力事業であるマンション、戸建て、シニア向けなどの不動産分譲事業が堅調に推移している。第3四半期決算によると、今期引き渡し戸数1,632戸のうち契約済みは1,560戸となっており、進捗率は95.6%に達している。
同社取締役で、分譲事業を担当するフージャースコーポレーション社長・小川栄一氏と同社営業推進部長・友野珠江氏に話を聞いた。テーマは「街の資源と接続」だ。

友野氏
◇ ◆ ◇

「デュオヒルズつくばセンチュリー」(手前が公園)
-御社のマンションは、自社開発第一号の「デュオ南浦和サザンヒルズ」(2000年分譲)をはじめ、結構これまで見学しております。第一号では収納に工夫を凝らし、ドアノブを壁面まで後退さていたのを見て、リクルートコスモスのいいところを引き継いでいるなと思ったものです。
小川 そうですか。第一号は創業から6年目。マンション販売代理で知見を貯め、廣岡が覚悟を決めて自社開発事業を始めたそうです。他との差別化を図るため、モノづくりや女性目線という特徴をアピールしました。これはきちんとこれからも伝えていかないといけない。
友野 いまあちこちで『女性活躍』と言われておりますが、当社は男女差別などもともとなくフラット。それが当たり前の風土が脈々と引き継がれています。
-その後、御社のマンションは結構見ているんですが、一昨年のシニア向け「デュオセーヌ豊田」の竣工見学会は別にして、2017年分譲のつくはEX柏たなか駅圏の「トレジャーランドプロジェクト(デュオヒルズ・ザ・グラン)」(253戸)を取材し、友野さんにもインタビューして以来、一つも見学していません。
取材したとき、友野さんは「3年間で売る」と仰ったが、わたしは最低5年かかると予想していまして、やはり3年では売れず、友野さんは責任を取らされて異動になったのではないかと、それを聞くのが怖かったんです。ところが御社は昨年12月、分譲事業が極めて好調に推移していると発表し、「柏たなか」もとっくの前に売れたと聞きまして、もう嬉しくなって。それじゃということで、この前は「デュオアベニューつくば吾妻」も観てきました。素晴らしい戸建て住宅地でした。それにしても、苦戦必至の「柏たなか」をよくぞ早期完売されました。女性活躍は、友野さんにインタビューしたときの記事を添付します。全てのデベロッパーの社員に読んでいただきたい。
マンション企画、女性活躍の核心を語る フージャースコーポ・友野珠江部長(2017/4/10)
小川 「柏たなか」は営業がよく頑張って売ったと思います。駅周辺に何もなかったですからね。最初は苦労しました。その後、ぽつぽつと居酒屋などが出来てきて売れましたが…。
「柏たなか」の経験と反省を踏まえて考えたのは、「街の資源と接続」と「強いコンセプトによる差別化」でした。
そのきっかけになったのが、現在分譲中の「デュオヒルズつくばセンチュリー」(229戸)です。土地を買ったとき、タカラレーベンさんが駅から6分の「レーベンつくばCORIS」(330戸)を分譲することになっていました。うちは駅から11分。普通の売り方では勝てない、どうやって販売するか、相当悩みました。
ちょうど敷地の隣につくば市内で一番人気がない、地域の人が〝砂利公園〟と呼ぶ、誰も利用しない水が溜まり、樹木がうっそうと茂った公園があったんです。
-公園隣接マンションはよく売れますが…。
小川 ええ。パークサイドマンションとか。しかし、ここはそうではなかった。これを何とかしようと考えたのです。芝生を張り、樹木を剪定してマウンドと滑り台を造ろうと。市の公園管理課に「公園をいじらしていただきたい」と交渉しました。最初は「何を言っているんですか」と。門前払いでした。
ところが、市の中心市街地の活性化や街づくりなど総合的な企画を考えている部門の方が取り合ってくれたんです。費用も民間が負担してくれるならいいではないかと。ただし、デベロッパーは開発に際して木を伐採してしまうという背景があって、樹木の伐採を一切行わないという条件と共に賛同を得られました。契約書には「市の所有物に芝生を付着することを許可する」と書かれていました。そここまで漕ぎつけるのに1年かかりました。
そして、樹木伐採がだめだから、樹木医の力を借りて樹木剪定を行い、芝生を張り、明るい緑の公園が出来上がったんです。公園利用者のターゲットを小さい子どもを抱えるファミリーに絞り込み、キャッチボールなどをする大きな子どもは他の公園で遊んでくれるように滑り台などにも工夫を凝らしました。こうして行政とマンション居住者、地域の人たちのWin-Winの関係を実現しました。
さらに、子どもが遊ぶのを見守り、休憩するための大人のカフェが必要だと、マンションの1階に市内で指折りの「パン工房クーロンヌ」さんを誘致しました。カフェでコーヒーを飲み、おいしいパンを食べながら、また在宅のパソコンも使える緑の空間を造ろうというストーリーを描きました。駅から11分ではあるが、ファミリーが住む価値をつくり出そうと考えました。
マンション敷地と公園の垣根、フェンスもありません。デッキでつながっています。
また、地域の方たちやNPOとも連携して公園の維持管理もみんなでやろうという現在進行形のingの仕掛けも考えています。芝生の管理を行う芝育チームもその一つで、そのためのユニフォームもつりました。
-なるほど。わたしもつくば市のマンションを取材したとき、人っ子一人いない公園を観ています。利用されない公園はつくば市に限らずたくさんあります。行政は管理することを最優先にして、美しい公園にしようという考えはまったくないように見えます。

「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園

「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園

「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
小川 これから広島の標高70mの比治山に隣接する「デュオヒルズ比治山レジデンス」(110戸)を分譲するんですが、コンセプトは「比治山と暮らそう」です。
この山は〝広島の守り神〟と呼ばれておりまして、現在は広島市現代美術館があり桜の名所にもなっている比治山公園になっています。
これもingなんですが、地域不動産会社や地域NPOと一緒になって公園の維持活動を行おうと考えています。
もう一つ。郊外部のプロジェクトで桜並木と川をコンセプトに組み込んで、休日は子どもとサイクリングしよう、自転車に乗ろうと、エントランスや共用施設に工夫を凝らしています。
つくばの公園も広島の比治山も、郊外部の川もマンションの外ですが、この外にある街の資源とマンションの商品企画を接続して絡め合わせれば、そこにしかない価値を造れるんではないかと。これを今後全面展開しようと考えています。「柏たなか」の反省とはこれです。「柏たなか」は〝街が変わる〟をプロモーションに掲げましたが、街はなかなか変わってくれなかった。
暗中模索で始め、もがいてもがいて積み上げてできた「つくば」を経験し、一山超えたような気がしています。
-思い出しました。東京都には民設公園制度があり、東京建物と西武不動産が東村山市の萩山でその制度を利用した第1号マンションを10年以上前に建設しました。しかし、その後、この制度は全然使われていません。公園とマンションなど民有地との間のフェンスをなくした例というのは非常に珍しいケースだと思います。公園に柵が張り巡らされ、檻の中で子ども遊んでいるような現場も見ました。渋谷区はメディアが報道のために公園の写真を撮るのも許可が必要です。
都の民設公園第1号「萩山 四季の森公園」開園祭り(2009/10/5)
公園を所有するマンション 東建・西武「Brillia L-Sio 萩山」(2008/5/26)

「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園

「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園のデッキ

「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園のデッキ
友野 街と接続することを可能にしたことは、デベロッパーの概念を変え、境界を広げることにつながるのではないかと。商品企画も仕入れも建築も一体となって取り組んでいこうと考えています。
小川 マンションの広告も、建物や間取りではなく、公園や山や川などとつながった生活シーンが連想できるようなものにできないかと。
-広告? 広告といえば、飯田グループホールディングスの「好立地」というタイトルの企業広告には、わたしか住む多摩センターの多摩中央公園が何のクレジットもキャプションもなく紹介されています。市役所に聞いたんです。どうして中央公園の写真を使わせるのかと。答えは、お金を出せば商業目的に使用できるというものでした。さっき話しましたが、渋谷区はかなり厳しいのに多摩市は簡単。バラバラです。ひどいもんです。
小川 友野 …
-ぜひ、やってください。〝当社は公園の維持管理に関わっています〟などのクレジットを付ければ可能じゃないですか。
友野 デベロッパー各社は建物を大きく見せるとか、特定の季節感だけを強調したり、押しつけがましい広告がいまだに多いですが、人間の目線でこうした暮らしをしたいとか、自分がその中にいるような気持ちになれるシーンを伝えられないかと。共感力ですね。土地に敬意を払わないものは社会的な支持を得られなくなると思っています。これが課題ですね。
-御社は売上的には分譲事業が5割くらいですが、今後はどう考えているのですか。
小川 財閥系でもパワービルダーでもない当社の未来について廣岡と話し合ったんです。廣岡は学生のころ、森ビルのアークヒルズをみて感動し、そのような再開発を夢見たそうです。当社も現在の財政力なら大規模再開発を1つくらいできるかもしれないが、それって楽しいだろうかと。楽しくないんじゃないかと。アークヒルズと比べれば小規模かもしれないが、マンションをつくって、周辺の街の価値を少しでも向上させる、そのほうが俺らに向いているのではないかと。住宅をつくり街の価値を向上させることはSDGsにも結果的につながっていく。われわれの会社の立ち位置はここにあるんではないかと。
いま新中計を策定中ですが、当社グループが目指している次のステージは本業回帰ではないかと考えています。これまでの5年間は、マンションは縮小産業だから次は何だとホテル、スポーツ、海外、生活関連事業などを模索しながら展開してきました。振り返ってみると当社の分譲事業はやはり強い、ボラティリティがないとわかったんです。〝分譲のフージャース〟というファクトは伝えやすいと。
アメリカやアジアでの自社開発は見極めている段階ですが、戸建てやシニア向けも含めた分譲住宅事業で必要利益を出そうと考えています。分譲事業で一定利益を確保して、そのうえで+αとして他の事業を展開しようという方向です。
「わたしの好きなものではなく、お客さまの好きなものを造ってくれ」と廣岡は言っています。社長の顔色を窺い、よくわからない社長の趣味に合うものなど誰もつれません。しかし、顧客のニーズは科学で解き明かすことができるんです。
-ありがとうございました。「つくば」はぜひ見学させてください。
◇ ◆ ◇
小川氏プロフィール 1964年生まれ。桐朋高-明治大学卒。1988年4月、コスモスイニシア(当時リクルートコスモス)入社。2001年7月、フージャースコーポレーション入社。2002年2月、同社取締役、2017年6月、同社社長(現職)、2019年5月、フージャースホールディングス取締役(現職)。
◇ ◆ ◇
【編集後記】 小川社長と友野部長と1時間以上にわたり話しあった。「街の資源と接続」するコンセプトに同感だ。デベロッパーは〝ここに住めばこうした生活ができる〟ということを分かりやすく伝えないといけない。単に価格が安いとか駅に近いというだけではユーザーの心に響かない。
つくば市の誰も利用しない公園を再生し、マンション居住者や地域とつなげる活動は刮目に値する。公園との柵を取っ払った事例などないはずだ。都市公園のあり方、指定管理者制度の方向性に示唆を与えるものだ。
同社の販売力と商品企画について補足する。「柏たなか」を3年間で売り切った販売力は、2008年のリーマン・ショックのとき「グランドホライゾン・トーキョーベイ」686戸の販売を受託し、早期完売したことで証明されている。
小川氏は「当社はコスモスイニシアと似て非なるもの」とも話した。〝頭脳〟も〝足腰〟も誰にも負けないことを言いたかったのだろう。
「COCOSUMA」「COCO COMMU」を代表する商品企画では、記者が強烈な印象として残っているのは、京王線中河原駅からかなり遠い坪単価138万円の「デュオヒルズ府中多摩川」(187戸)に食洗機を標準装備したことだ。普通のデベロッパーなら価格を抑えるため真っ先に削るはずだ。「忙しい共働きの主婦(あるいは主夫)にとって食洗機は必需品」という認識は記者と一緒だった。
冒頭に書いたように、同社は2021年3月期第3四半期決算の段階で、引き渡し戸数1,632戸のうち契約済みは1,560戸で、進捗率は95.6%に達したと発表した。駅近など売りやすい物件はほとんどないはずだ。むしろ逆だ。
同じようなデベロッパーでは、大和地所レジデンスが2021年3月期完成マンション898戸を全て期末までに契約したと発表した-なぜそのような芸当ができるか、じっくり考える必要がある。小川社長は「顧客ニーズは科学」と話した。ここにヒントがあるような気がする。
フージャースHD シニア向け「デュオセーヌ豊田」竣工 半分強が契約済み(2019/8/7)
米・クレセント社の日本初「グランドホライゾン・トーキョーベイ」(2008/2/15)
駅から7分で敷地60坪 素晴らしい フージャース「つくば吾妻」82区画 完売(2021/3/25)
駅1分 乃木神社に隣接 建築・内装費に315万円/坪 サンフロ「+SHIFT NOGIZAKA」

「+SHIFT NOGIZAKA」
サンフロンティア不動産は4月21日、ワークスタイルデザインブランド「+SHIFT(プラスシフト)」のフラッグシップ新築オフィスビル「+SHIFT NOGIZAKA」のメディア向け内覧会を行った。
物件は、東京メトロ千代田線乃木坂駅から徒歩1分、港区赤坂8丁目の商業地域に位置する敷地面積約361㎡、13階建て延床面積約1,289㎡。1フロア82.20~133.30㎡(12席~19席)。1フロア11席前後。賃料は平均9万円/席、平均3.5万円/坪。建物は2021 年3月31日に竣工済み。デザイナーは山下泰樹氏。
付帯設備は高速wi-fi、プリンタ複合機、ホワイトボード、Bluetooth スピーカー、モニター付応接室、冷蔵庫&電子レンジ、プロジェクター付き共用ミーティングルーム(10席)、コーヒーマシン(1階ラウンジ)、無人ミニショップ(1階ラウンジ)など。
賃料には管理共益費、家具・機材使用料、清掃費(コミュニティーマネージャー)、廃棄物処理費、水道光熱費、wi-fi 通信費、印刷費(インク・トナー/紙代は別途)などが含まれる。
「+SHIFT」は、同社とデザイナー・山下泰樹氏がコラボレーション。外観デザインは、“根”をモチーフにこれまでのオフィスの概念を超える斬新なものになっているのが特徴。
床材には無垢材のフローリングを使用。手に触れる部分にはレザーやファブリックをあしらい、五感を刺激する様々な工夫を施している。
同社執行役員リプランニング事業部長・小田修平氏は、「リプランニング事業は、5年以上前から付加価値の高いセットアップオフィス事業を展開しており、曜日貸しオフィス、Art×Office、5月にオープンする『LIT』など様々なニーズ対応できている。コロナ禍でもしっかり利益を確保している。今回の『+SHIFT』はDRAFTさんとコラボしたもので、デザイン・意匠から内装、インテリア家具、アメニティに至るまで全てDRAFT化した。豊かな世界観が実現できている。建築費は坪215万円で、内装に坪80万円、家具などに坪20万円、合計で坪315万円。この種の賃貸オフィスでは日本一お金をかけているのではないか。坪3.5万円の賃料は相場の坪2.5万円より高いが、いいものには対価を払うテナントが増えている」と語った。

1階ラウンジ

プライベートガーデン付きの2階フロア

トイレサイン
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写真を見ていただきたい。外観がとてもユニークで、東京モード学園か池袋ダイヤゲートを連想させる。立地も最高。乃木坂駅から徒歩1分、乃木神社・公園に隣接。東京ミッドタウン、隈研吾氏がデザイン監修した全197戸が億ションの「パークコート赤坂檜町ザ タワー」も徒歩圏。よくぞこんな好立地の土地を仕入れられたものだ。
外観だけではなく、内装も床は無垢のフローリング、本革の収納扉・手すり、お洒落なトイレサイン…細かなところにもこだわりを施しており、「+SHIFT」をフラッグシップにする意気込みも感じられる。共用施設も充実している。

2階プライベートガーデン(正面の巨木は乃木神社の港区保存樹に指定されているシイノキ)

13階のルーフトップガーデン


左から「+SHIFT NOGIZAKA」、「パークコート赤坂檜町ザ タワー」、「東京ミッドタウン(乃木神社から望む)
スウェーデンハウス 世界初3DキャラクターによるVR内覧サービス モデル来場2.2倍

サイトページ画面
スウェーデンハウスと野原ホールディングスは4月20日、世界初の3Dキャラクターによる接客機能を搭載した室内360度バーチャル内覧サービス「VRモデルハウスウォークスルー」を共同開発し、同日からスウェーデンハウスの公式サイトで提供すると発表した。
「VRモデルハウスウォークスルー」は、両社が共同開発したもので、住宅購入検討者はスウェーデンハウスのモデルハウスをバーチャルで内見でき、オリジナルの3Dキャラクターが内見サポートするウェブサービスだ。
利用者はWeb上でモデルハウスを内覧することができるだけではなく、好みの3Dキャラクターと営業スタッフに現地で説明を受けているような感覚で会話(ボット機能)をしながら、モデルハウスを内見することができるのが特徴。
モデルハウス内見用の3Dサービスは、米国マーターポート社(Matterport, Inc.、URL:https://matterport.com/ )が開発した「Matterport® True3DリアリティーキャプチャープラットフォームおよびMatterport Pro2 3D カメラ」を活用しており、このシステムに3Dキャラクター関連機能を搭載したのは世界初という。
発表会で同社・村井秀壽社長は、「わたしは3年前に終の棲家としてスウェーデンハウスの住宅を建てた。3重窓や高気密・高断熱住宅のよさを実感した。コロナの影響でモデルハウスの来場は減少しているが、Z世代を中心に住宅取得のニーズは高く、当社もまだまだ伸びしろがある。今回の世界初のトライによって業績は10%伸びた」と語った。
また、同社営業推進部部長・大川保彦氏は、「昨年5月から試行的に3Dウォークスルーを導入したところ、モデルハウス来場予約は2020年3月期の757件から、2021年3月期は1,665件へと2.2倍に増加した。モデルハウス来場者による成約率は2~3%だが、Webを通じた成約率は10%に達している」と具体的な数値を示した。
野原ホールディングス社長・野原弘輔氏は、「昨年の春以降、VRの撮影依頼が急増している。DXを加速させる」と話した。
両社は今後、検索項目を増やし、例えばモデルハウスに使用されている家具をクリックすると、製造はどこかいくらで販売しているかわかるようにするなど、ブラシュアップしていくという。

村井氏(左)と野原氏

熊谷モデルハウスにおける現地(左)と同サービス(右)の対比

3D キャラクター
◇ ◆ ◇
スマホすら満足に扱えない記者にとって、発表会の1時間というものはちんぷんかん、何のことなのかさっぱりわからなかった-というよりは、ずっと話を信じていなかった。
なぜか。昨日書いた積水ハウスのライフスタイル型モデルハウス「みんなの暮らし 4stories」の記者発表会・内覧会の記事を読んでいただきたい。積水のモデルハウス内覧会は同社の広報のスタッフが撮影した動画を配信したものではあったが、モデルハウスのよさを伝えきれておらず、プロが担当してもオンラインでは住宅の質感を表現できないと確信したからだ。
スウェーデンハウスの住宅だってそうだ。いくら村井社長が「三重窓はいい」といったところで、これは実際に体験してみないとそのよさはわからない。
同社の住宅は、C値(相当隙間面積)もQ値(熱損失係数)もU値(外皮平均熱還流率)も他社を圧しているが、これら優れた数値がもたらす快適な居住環境、空気感、居心地の良さなどのリアル感は、いかなる精巧な3Dキャラクターを駆使し、画像の解像度を上げたところで演出できないはずだ。
村井社長など3氏の話を聞きながら、3Dキャラクターにトナカイ「ムース先生」やスウェーデンのきれいな女性を起用しようが、劇的に住宅展示場のあり方を変えることなどできはしないと、ずっと考えていた。
ところが、記者発表会の後のシステム体験会で、その考えがぐらついた。
自分のライフスタイルにあわせたモデルハウスを選び、こだわりなども設定し、指向性は記憶させることもできるというのは想定内だ。
驚いたのは、モデルハウスの内観のところどころに◎印がついており、そこをクリックすると、その部位の素材や特徴などが表示されたことだ。読者のみなさんもぜひ体験していただきたい。(VR モデルハウスウォークスルー https://vr.swedenhouse.co.jp/)本音を言えば、記者は操作も満足に行えないので、VR画像などをWebでほとんど見たことがない。どこまでが従来もある技術で、どこからが〝世界初〟なのかよくわからない。
それにしても、凄い世の中になってきた。同じようにAI技術を活用したシステムでは、東急リバブルが投資用マンションと顧客をつなぐ「投資用区分マンションAIマッチングシステム」を開発した。これによると、営業経験5年以上の担当者が行う物件選定と遜色ないレベルを実現したというではないか。
だが、しかし、村井社長も話したように、いかにAI技術が発展しようとも人間の五感に迫るリアル感は開発できないのではないか。

同社の三重窓(Low-Eガラスは内と外に2枚、木製枠は熱が遮断されるので内側はアルミサッシ、樹脂サッシよりはるかに耐火性能は高い)
リアルを伝えたか 説明的にすぎはしないか 積水ハウス オンライン内覧会の課題

「関西 住まいの夢工場」
積水ハウスは4月20日、京都府木津川市にある総合住生活研究の「関西 住まいの夢工場」に新設したライフスタイル型モデルハウス「みんなの暮らし 4stories」の記者発表会・内覧会を行った。モデルハウスは4月29日にオープンする。
「みんなの暮らし 4stories」は、理想の住まいを説明的に伝える従来型のモデルハウスから脱却し、人が本当に住んでいるかのようなリアルな生活・暮らしを提案することで「共感」を呼ぶことをコンセプトにしている。
今回新たにオープンするモデルハウスは、二世帯向けの「高橋さんち。」、自分と家族の「王国」を築く富裕層向けの「財前さんち。」、アクティブシニア向けの「山本さんち。」、子育て&共働き世帯向けの「小林さんち。」の4棟。

積水ハウス執行役員総合住生活研究所長・野間賢氏(左)と河崎氏(記者はこの日の河崎氏の衣服について、小さい画像しか見えなかったが「春爛漫にふさわしい淡黄蘗(うすきはだ)」と表現した。河崎さん、間違っていませんよね)
◇ ◆ ◇
同社から取材の案内が届いたとき、小説の舞台にもたびたび登場する木津川を観たいものだと参加も考えたが、ライフスタイル型モデルハウスは昨年8月に「関東 住まいの夢工場」で見学しており、コロナ禍で交通費と時間をかける価値とを天秤にかけて断念した。ところが、発表会の数日前に、オンラインでも参加を受け付けるとのメールが届いたので参加した。
ただ、この日(4月20日)、記者はスウェーデンハウスの「世界初の機能を搭載したオンライン住宅展示場システム発表会」にリアルで参加することも決めていたので、積水ハウスのオンライン見学会は途中で退席した。その際、以下のような率直な感想をチャットで送った。
「河崎さん(この日、施設の説明を行った同社執行役員住生活研究所長・河崎由美子氏)は『共感』と仰いました。わたしは、モデルハウスに使用されている床材、壁材、建具家具などの素材がなんであるか、天井の高さや階段の広さなどを具体的に伝え、空気感が感じられるような語り、演出も必要だと感じます。
これは御社だけでなく、オンライン説明会はやや説明が過ぎるというのが率直な感想です。一番良かったのは『樟の一枚板』でした。クスノキの香りを伝えればもっとよかったし、『豪華』というのは『美しい花』と一緒。『目も彩な』というようにどのように豪華なのか伝えるべき。古河の見学会での『小林さんち。』を説明された方は最高によかった」と。
このチャットは少し補足する必要がある。「御社だけでなく」としたのは、あるデベロッパーのオンラインでのマンションプロジェクト発表会を視聴したときも同じような感想を抱いた。今回の発表会は「(同社)広報室社員の携帯端末からの簡易配信のため、音声・映像などの乱れなど閲覧しづらい部分もあるかと思いますが」ということを割り引いても、「4stories」のよさを伝えきれていないと感じた。一方通行のオンラインの課題だろう。
「一番良かったのは『樟の一枚板』」とも書いたが、これは「豪華」なバーカウンターを担当者が紹介したものだ。これは分かる人には分かるだろうが、その豪華さをどこまで伝えられたか疑問だ。
「目も彩な」は、同社が2018年に「住生活研究所」を設立し、その発表会を行ったとき、河崎由美子所長の衣服に記者は感動を覚え、次のように書いた。「この日の河崎氏が着ていた洋服がまた目もあやな、えもいえぬ『赤』だった。本人に聞いたら『タイシルクです。70代の母が着ていたワンピースをツーピースに仕立て直したものです。〝幸せ〟の継承です』と語った」
ここで「河崎氏が美しい」と書いていたら、ご本人も含め顰蹙ものだったに違いない。
「古河の見学会での『小林さんち。』」は、添付した記事を読んでいただきたい。説明したのは住生活研究所課長・木野村昭彦氏(41=当時)だった。木野村氏は最初に「リアルを表現した」と短い言葉で特徴を言い切り、自らの子育て・共働きをリアルに語った。
そんな経験をしているのでチャットで注文を付けた。
ただ、素晴らしい説明もあった。「山本さんち。」で担当者の方は、敷地に植わっている、「山本さん」が植えたアカマツについて「アカマツの葉っぱ(二葉松)は、枯れても離れずにくっついている」という主旨の説明をした。熟年夫婦をアカマツの枯葉に例えるこうした意表を突く言葉にみんな共感を覚える。別れたくてしょうがない妻、あるいは夫もドキリとするはずだ。
とりとめないことを書いた。この続きはスウェーデンハウスの記事で書く。積水ハウスが伝えられなかったものをスウェーデンハウスは伝えた。
いちご2021年2月期決算 コロナの影響受けホテルの賃貸収益が大幅減少
いちごは4月19日、2021年2月期決算を発表。売上高613億円(前期比29.8%減)、営業利益96億円(同65.1%減)、経常利益71億円(同70.6%減)、純利益50億円(同38.7%減)となった。新型コロナの影響を受け、ホテルの賃貸収益が大幅に減少した。
アセットマネジメント事業は、コロナの影響を受けいちごホテル売上に連動するベース運用フィーが減少し、物件売却益がなかったことなどから売上高は2,480百万円(前期比37.2%減)となった。
心築(心を込めて既存不動産に新しい価値を創造する)事業は、コロナの影響により資産の売却を見送り、売却益が減少した結果、売上高は54,780百万円(同32.0%減)となった。ただ、レジデンスは賃貸収益の安定性を背景に堅調に推移した。
収益の安定性が高いクリーンエネルギー事業は売上高4,654百万円(同22.6%増)と順調に成長した。
2022年2月期業績予想はレンジでの開示とし、営業利益120~91億円(前期比24.1%増~5.9%減)、経常利益89~60億円(同24.0%増~16.4%減)、純利益80~50億円(同59.1%増~0.5%減)を見込んでいる。
「トイレは経営の問題」哲学の一端を垣間見た「ラスカ平塚」 トイレ考Ⅲ-4

湘南ステーションビル「ラスカ平塚」のアートギャラリートイレ(全て同社提供)
湘南ステーションビルの「ラスカ平塚」のトイレを見学した。噂にたがわぬ素晴らしいトイレであることを確認することができた。「トイレは経営の問題」という哲学の一端を垣間見る思いがした。
最初に見学した「ラスカ平塚」のトイレは、1階と2階の階段室の中央にある男性用トイレだった。間口は優に10mを超えていた。しかも、壁面は直線ではなく、湘南の海の波をモチーフにしたのか緩やかなウェーブが掛かっており、本物の木枠や真鍮製のキャビン窓があしらわれていた。内部も木調デザインで統一されていた。
一定の条件を満たす人でないと利用できない女性用の2階と3階の階段室中央にある「マーメイドルーム」は見学できなかったが、これは〝トイレ〟の概念を超えるものであるのは間違いない。カード鍵付きなので一人しか利用できないようになっており、便器は1ブースしかない。その代わりウォーターサーバー、コーヒーメーカー、化粧品、フィッティングルームなどが備わっており、トイレというより多目的に利用できる休憩室(レストルーム)そのものだ。
もう一つ、素晴らしいコンセプトのトイレも3階にあった。2014年から実施しているもので、市内にある東海大教養学部芸術科学科デザイン学課程と提携し、年2回、学生の作品をトイレに掲出している。作品は学生の学課の評価基準にもなっているという。小便器、大便器含め男性用トイレには10作品以上掲げられていた。みんな素晴らしいものばかりだった(女性用もほぼ同様のようだ)。2階のベビールームも初めて見た。
掃除などメンテナンスを担当する人も、女性は「マーメイドスタッフ」、男性は「ポセイドンスタッフ」と呼ばれ、専用のユニフォーム姿だった。

これがトイレか まさにアートギャラリー出入口

会員制パウダールーム

会員制パウダールーム

会員制パウダールーム
◇ ◆ ◇
「湘南ステーションビル」のトイレの取り組みは、日本トイレ協会会長・小林純子氏編著「心に響く空間―深呼吸するトイレ」(弘文堂、設計事務所ゴンドラとの共著)で詳しく書かれている。元湘南ステーションビル社長で交通道徳協会会長・室賀實氏と、同社元専務・佐竹明雄氏の対談だ。少し長いが紹介する。
室賀氏が社長に就任したのは平成2年。当時、経理部課長代理だった佐竹氏は、「当時の駅ビルは平塚に限らず、国鉄・JRの退職者の受け皿みたいな位置づけでしたから、男性社員は隠居後の仕事として割り切っていましたし、女性社員にいたっては電話番か来客のお茶出しをするだけで、あくまで男性社員の補助でした。社風は極めて保守的で前例踏襲を金科玉条としていて、職場は沈滞ムード一色でしたね」と語っている。
その沈滞ムードを吹き払うプロジェクトとして、室賀社長は平成3年4月、「CBF」(Conductors for the Best Future=最良の未来を導く人々)を立ち上げ、佐竹氏を事務局長に据えた。メンバーは、入社したばかりの社員を含めることを条件に男女同数、所属する部署、地位・性別に関係なく編成した。
CBFで出た提案は全て経営会議で議論された。もっとも多く出たのがトイレに関する提案だった。そこで、女性社員に限ってトイレの勉強をする有志を公募。総務部、経理部、事業部、営業部の各部から編成された4名のトイレ研究グループWC(ワンダフルクラブ)が誕生した。メンバーは全国のトイレ約40か所を視察し、5点満点で採点したところ、ラスカは2.7点にしかならなかったという。
その後、改革を進め、前段で紹介したようなトイレ整備を行った。清掃員の呼称も〝おばあちゃん〟から前段の「マーメイドスタッフ」「ポセイドンスタッフ」に改めた。士気の向上につながった。効果はてきめんで、売り上げ増にも寄与したようだ。
現在まで社長は何度も交代したが、今でもWCは継続して活動しているという。
会員制の「マーメイドルーム」は他の商業施設などにも影響を与え、渋谷ヒカリエにも同様の施設があるようだ。

女子用トイレ

ベビールーム(授乳室もあった)
マスク越しに強烈な匂い 平塚駅前公衆トイレ 利用者はほとんど男性 トイレ考Ⅲ-3(2021/4/3)
富士を観ながら…日本トイレ協会「特別奨」受賞 「ダイヤゲート池袋」 トイレ考Ⅲ-2(2021/4/1)
多様化する利用目的 少ない車いす対応 マンホールトイレ 畢生のトイレ考Ⅲ-1(2021/3/31)
トイレ紙1日使用量 男性3.5m 女性12.5m 年間排泄量15t 畢生のトイレ考Ⅱ(2021/3/30)
櫂 糞尿譚 陰翳礼讃 水琴窟 シカの糞…虚々実々 記者畢生のトイレ考(第1回)(2021/3/29)
安否確認イベントに過去最多65%参加 三菱地所レジ・コミュニティ 津田沼「奏の杜」(2021/3/14)
「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ(2020/9/15)
素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)
〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)
マンション・戸建て トイレはTOTO、LIXIL、パナソニックがデッドヒート(2020/3/24)
デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)
2.1畳大の「土間」付きがいい コスモスイニシア「日暮里プロジェクト」販売順調

「イニシア日暮里アベニュー」
コスモスイニシアが分譲中の「イニシア日暮里アベニュー」を見学した。同駅圏の「イニシア日暮里テラス」(54戸)と「イニシア日暮里プロジェクト」として同時に昨年6月から販売しているもので、前者は未分譲3戸を含め残りは9戸、後者は残り3戸と順調な売れ行きを見せている。
「アベニュー」は、山手線鶯谷駅から徒歩6分、荒川区東日暮里四丁目の尾竹橋通りに面した商業地域立地の11階建て45戸。専有面積は33.09~55.6969㎡、先着順で販売中の住戸(6戸)の専有面積は33.09・55.69㎡、価格は3,748万~5,198万円。平均坪単価は350万円。建物は2021年1月に竣工済。施工はライト工業。

土間側から引き戸を開け放した状態

土間側蟹引き戸を閉めた状態

リビング側から引き戸を開け放した状態
◇ ◆ ◇
この物件については、昨年6月にモデルルームを見学しているのでそちらを参照していただきたい。
今回注目したのは、約2.1畳大の「土間」を設けた33㎡1LDKのタイプだ。45戸のうち7戸に採用されているもので、記者はこれにほれ込んだ。もちろん好き嫌いはあるだろうが、引き戸を閉めれば室内を隠すこともできる。玄関窓もついている。多目的に利用できるのではないか。リビング・ダイニング・キッチンに床暖房付きだった。
もう一つ、同じ広さの1LDKも見学したが、こちらは土間の代わりにシューズクローゼットやウォークインクローゼットを充実させたもので、女性はこちらを選ぶそうだ。

満開のオオアマナ(花はハナニラに似ているが茎などに匂いがない)
「Doma(土間)」とLDK一体化 コスモスイニシア「日暮里テラス」企画秀逸(2020/6/26)
両国駅圏 最高値の坪450万円に納得 伊藤忠都市開発・東建「両国 国技館通り」

「クレヴィア両国 国技館通り」
伊藤忠都市開発・東京建物が5月下旬に販売する「クレヴィア両国 国技館通り」のモデルルームを見学した。坪単価は両国駅圏最高値の450万円になる模様だが、立地条件のよさ、設備仕様レベルの高さからして当然の単価だと思う。これまで1,200件弱の問い合わせがあるという。
物件は、JR総武線両国駅から徒歩2分、墨田区両国2丁目の商業地域に位置する14階建て全77戸(事業協力者住戸9戸含む)。専有面積は25.63~67.39㎡。価格は未定だが、坪単価は450万円。竣工予定は2022年4月下旬。設計・監理はIAO竹田設計。施工は佐藤工業。販売代理は伊藤忠ハウジング。
現地は、両国駅からすぐの国技館通りに面しており、由緒ある回向院へは徒歩2分のほか、芥川龍之介が通った通学区の両国小学校へは徒歩6分、隅田川は徒歩4分、駅の北側には国技館、旧安田庭園、江戸東京博物館、両国中学校、横綱町公園などがある。
建物は内廊下方式で、住戸は2階以上。5階まではワンルームタイプや事業協力者住戸が中心で、9階以上は40~60㎡台の2LDKと3LDKで1フロア4~5戸構成。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、ディスポーザー、食洗器、御影石キッチン天板など。最上階(14階)には、カウンター席「スカイビューラウンジ」と、リモートワークや読書、勉強などにも利用できる個室ブース「+HANARE Common」を設置しているのも特徴。

エントランスアプローチ

共用施設「HANARE」

モデルルーム
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坪単価を聞いたときはびっくりしたが、さもありなんと思った。こんなことを書くと錦糸町住民に怒られるかもしれないが、雑多な錦糸町と比較にならないほど両国駅圏は歴史・文化の香りがする。格が違う。国技館通り沿いの物件としては約10年ぶりの供給であり、昨年末からの反響が1,200件近くに上っているのもよくわかる。
記者はもう20年くらい前か、物件の対面にある「ちゃんこ巴潟」で2度食事をしたことがある。相撲甚句を聞きながらおいしいちゃんこ鍋をつつき、酒を飲めるのは格別だ。平幕クラスでも一人5,000円くらいだったはずで、決して安くはないが、坪450万円を検討するユーザーだったら痛くもかゆくもないはずだ。
とはいえ、下町だから1億円を超えるニーズは多くないと見た。伊藤忠都市開発もその辺をよく弁えているのか、1億円超はそんなに多くないはずだ。
単身者向けの「nanoni」にはトール型収納+全身ミラー、高機能シャワー、スクエア型キッチン+食器棚、ディスプレイウォール+床暖房、可動パーティション(半透明ガラス)などを採用しているのもいい。
モデルルームがある「有楽町イトシア」の伊藤忠都市開発の常設販売ギャラリーは必見だ。買わない買います買えば買え…記者のような貧乏人は足がすくむかもしれないが、どんな人にもお菓子やコーヒーくらいは振舞ってもらえるはずだ。モデルルームで使用されていた食器類はDEDAR(デダール)製。目が飛び出るほど高価ではないが、安物でもないはずだ。
これはついで。売主は伊藤忠都市開発と東京建物。メインは伊藤忠都市開発だが、この両者はいま分譲中の東建がメインの「聖蹟桜ヶ丘」もそうだが、これまで「有明」「磯子」「上野池之端」「上野」…よっぽど仲がいいんだろう。仲を裂く勇気のあるデベロッパーはいないのか。こんなことを書くから取材の声がかからなくなるのか…それでも記者は書く。

スクエア型キッチン(これはスグレモノ)
これは凄い ホテルなら5つ星 伊藤忠都市 「ギャラリークレヴィア有楽町イトシア」(2020/9/10)
際立つ突板フローリング 白とグレーのカラーリングもいい コスモスイニシア「築地」

「イニシア築地レジデンス」
今年1月に竣工し、3月末から入居も始まったコスモスイニシア(事業比率60%)・大和ハウス工業(同40%)の「イニシア築地レジデンス」82戸を見学した。
分譲開始の一昨年秋の段階では、この物件を含め6物件463戸が同じエリアで激突するもと思われたが、ワールドレジデンシャル「レジデンシャル築地」40戸と大成有楽不動産「オーベルアーバンツ銀座築地」55戸が分譲直前で1棟売りされたのか戦線を離脱したため、結局4物件368戸となった。今回の物件も竣工を前に売れ行きが加速し、未分譲6戸を含め残りは16戸。

モデルルーム
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物件概要、その他設備仕様などは一昨年書いた記事を参照していただきたい。水準以上であるのは間違いない。
完成した建物を見てとてもいいと思ったのは、白と淡いグレーのカラーリングと突板フローリングだった。最近の床はほとんどシート張りになってしまったので余計に際立つ。
価格が7,000万円台~7,500万円台の53~54㎡の住戸プランでは、間口を7100ミリ確保したCタイプの間取りがよくできており、他のAタイプは子ども部屋にもリビングにもなる間取り可変式提案がいい。
上層階2層の専有面積が74~75㎡の1億円以上の住戸4戸(未分譲1戸含む)が残っているが、これをどう売るかだろう。

小泉環境・気候変動相が講演 今井議長は同省に要望 エコ・ファースト推進協 総会

今井議長(左)と小泉大臣(小泉氏はオンライン画像)
エコ・ファースト推進協議会は4月14日、通常総会を開催し、2020年度事業報告、議長・副議長・幹事の選任、2021年度事業計画を承認した。議長は今井雅則氏(戸田建設代表取締役会長)、副議長は稲垣士郎氏(積水ハウス代表取締役副会長)をそれぞれ再任、新幹事に上田輝久氏(島津製作所代表取締役社長)を選任した。
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総会では、この日(4月14日)が40歳の誕生日という小泉進次郎 環境大臣・気候変動担当大臣が「2050年カーボンニュートラルに向けた取組」と題する講演を約20分オンラインで行い、これに応える形で今井議長が議長メッセージと要望を発表した。
今井議長は、①脱炭素社会の形成②循環型社会の推進③自然との共生④地域連携⑤環境コミュニケーション⑤イノベーションの推進の5項目についてメッセージを送り、要望として「エコ・ファースト推進協議会は設立12年を迎え、加盟企業も50社となりました。幅広い業界から選ばれた各社は高い環境目標を掲げ、日々の事業活動に取り組みながら、各業界の環境対策をリードしてきました。また環境省から発信される環境政策や環境活動に賛同・協力し、加盟企業各社が連携を図りながら政策推進に貢献してまいりました。今後、脱炭素社会実現、資源循環型社会実現に向け、官と民との連携した取り組みはますます重要となると考え、その橋渡し役であるエコ・ファースト推進協議会の使命を確実に果たして行きます。環境省におかれましても協議会加盟企業各社の環境施策の推進や、協議会のプレゼンス向上のために、是非、お力添えいただきますようお願い申し上げます」と小泉大臣に伝えた。
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小泉大臣の講演を一つひとつ伝えたいのだが、同協議会から詳細な資料を頂いたので、こちらを是非読んでいただきたい。環境省の資料には議長会社の戸田建設をはじめ、住宅・不動産業界では積水ハウス、大和ハウス工業、住友林業、東急建設、ヒューリック、三井不動産、三菱地所の取り組みも紹介されている。
小泉大臣は、昨年の国連総会での菅総理の2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会実現宣言を「不戦敗を免れた」と評価しながらも「これからが大事。わが国が本気で脱炭素社会の実現に取り組んでいることを皆さんと一緒になって進めていく」と述べた。
また、同省の「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフスタイル・ワークスタイル先行導入モデル事業」に毎日1,000件の問い合わせがあることも紹介した。

