東京建物 第2回「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」金賞を受賞
東京建物は2月24日、環境省の第2回「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」の資金調達者部門で最高位である金賞(環境大臣賞)を受賞したと発表した。前回の銀賞(環境大臣賞)に続く連続受賞は初めて。
受賞対象は、2020年7月に発行した不動産セクターとして国内初となる200億円(発行年限5年)と200億円(発行年限10年)のサステナビリティボンドの発行。
「大規模再開発プロジェクトを核とした東京駅前の八重洲・日本橋・京橋エリア(八日京エリア)のまちづくりを資金使途とするサステナビリティボンドは、ハード面のみならず、ソフト面でのスタートアップ企業の誘致やクロステック・SDGs・食・ものづくり等を支援する取り組みなどを併せることで、脱炭素社会の構築に向けた環境負荷低減や防災対応力強化、イノベーション創出のためのプラットフォーム構築など、環境・社会的側面を含めた多様な価値を追求し、サステナビリティのテーマを幅広くカバーしている」(同省)点が高く評価された。
三井不 柏の葉「KOIL」換気・在席・トイレ空き状況・マスク着用有無を可視化
座席の空き状況が確認できる
三井不動産とセンスウェイは2月24日、「柏の葉IoTビジネス共創ラボ」でスマートオフィス・ワーキンググループを設立し、その第一弾として柏の葉スマートシティのイノベーション創出拠点である「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」(KOIL)の執務空間内で、コワーキングオフィスの換気状況、在席状況、トイレの空き状況の可視化、体温・マスク着用検知のシステム導入を行うと発表した。
センスウェイが提供するIoT通信プラットフォームサービス「SenseWay Mission Connect」とMicrosoft Azureを活用することで1 台のIoTゲートウェイで複数フロアをカバーすることが可能になり、センサーを通じて集めた様々なIoTデータを一つのクラウドサービス上で、一元的に管理、閲覧可能としたのが特徴。
KOILの1階入口と6階KOILパークに設置されたデジタルサイネージへ表示し、リアルタイムで確認できるようにする。今後は同画面をKOIL利用者が閲覧可能な会員限定サイトでパソコンやスマートフォン上でも閲覧できるアプリケーションの提供を行う予定。
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「KOIL」は柏の葉に取材があるときは寄り、コーヒーを飲んだりタバコを吸ったりするのだが、すごいことができるものだ。ウイルスは検知できないのか。トイレの空き状況は「グランスタ東京」で記者も体験済み。
コスモスイニシア レンタルオフィス第5弾「MID POINT 川崎」4月開設
コスモスイニシアは2月24日、レンタルオフィス「MID POINT(ミッドポイント)」第5弾となる「MID POINT 川崎」を4月に開設するのに伴い、同日から入居者の募集を開始したと発表した。
JR川崎駅から徒歩3分、「ラゾーナ」「ミューザ」に近接し、「界隈をつくる」をキーワードに掲げ、丘の起伏を表すような階段状のステップラウンジを設置するなどデザイン性の高い空間を設計したほか、24時間利用や法人登記が可能。ミーティングスペース・宅配ボックス・メールボックスを設置、メンバーの増加に合わせて利用人数の調整や部屋の変更にも対応する。
オフィスは、JR京浜東北線・東海道線・南武線川崎駅から徒歩3分、川崎市幸区中幸町3丁目に位置するLoc’s KAWASAKI BLDG 7~9F。区画数は77区画。区画面積は2.55~14.26㎡、
伊藤忠都市開発 建て替えマンション「渋谷区富ヶ谷」分譲開始
「クレヴィア渋谷富ヶ谷」
伊藤忠都市開発は2月24日、「マンション建替え等の円滑化に関する法律(建替え円滑化法)」による個人施行方式により、同社が個人施行者として建設している建て替え事業マンション「クレヴィア渋谷富ヶ谷」の販売を2月20日(土)から販売開始したと発表した。
物件は、東京メトロ千代田線代々木公園駅から徒歩10分、渋谷区富ヶ谷2 丁 目に位置する敷地面積757㎡の10階建て35戸(事業協力者住戸13戸含む)。専有面積は50.35~80.23㎡、第1期1次・2次(8戸)の価格は8,970万~15,030 万円。これまでの総来場者は約100組。竣工予定は2021年9月下旬。
従前の「富ヶ谷スカイマンション」は、RC造・地上3階建て15戸(専有面積約63~約73㎡)の規模で、1978年竣工。同社からの提案をきっかけに2016~2017 年にかけて建替えを含む再生の検討が開始され、2018年3月に事業協力者として選定され、2018年12月に建替え円滑化法個人施行による建替えの全員同意がなされ、2019年9月に施行認可、2020年6月に着工。従前の容積率は約150%で、建て替えマンションは約310%。
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現地もモデルルームを見ていないので何とも言えないが、建物は高台で公園に面しているようだ。坪単価は価格からして坪600万円強か。近年見学した同社の建て替えマンションの記事を添付した。
近接エリアでは森トラスト「フォレセーヌ渋谷富ヶ谷」70戸が分譲中だ。全て億ション。ターゲット・コンセプトが異なる。坪単価は800万円を超えるのではないか。見学を申し込んだが、返事はない。
三菱地所 サイクルロードレースを運営するJCLのスポンサーに決定
ジャパンサイクルリーグ
三菱地所株は2月24日、サイクルロードレースの運営会社であるジャパンサイクルリーグ(JCL)が実施した第三者割当増資を引き受け、資本業務提携に合意し、JCL の資本パートナー及びJCL の新たなロードレースリーグであるジャパンサイクルリーグの2021年シーズンタイトルスポンサーとなったと発表した。
JCLは2021シーズンより始動する新リーグの運営会社で、新リーグは主にホームタウンを持つ地域密着型チームが加盟(スタートは9チーム)。地方創生をキーワードにホームチーム・自治体・JCLの3者連携による、魅力あるサイクルロードレースの全国各地での開催を目指している。
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記者は、わが国のアスリートで世界に誇れるナンバーワンは世界選手権個人スプリントで10連覇を果たした中野浩一氏だと思う。なのに正当に評価されていないのではないか。残念でならない。自転車競技は国際大会くらいしか見ないが(そもそも放映などされない)、ロードレースなどの競技はチームレースで〝捨て駒〟の使い方で勝敗が決まるというのがおもしろい。
ジャパンサイクルリーグの掲げる目標が「世界レベルの選手を輩出し、ツール・ド・フランスで日本チームを表彰台に立たせること」というのもいい。
同社がスポーツ団体・大会のオフィシャルスポンサーになるのは、体操日本代表とラグビー日本代表に続き3つ目か。いくら出資したかわからないが、マラソンや駅伝のようにレースをテレビで視聴できるようにしてほしい。
コンポジットロゴ
東急不動産 目黒川に面した東五反田二丁目第3地区再開発に事業参加
東急不動産は2月24日、品川区の東五反田二丁目第3地区市街地再開発準備組合の参加組合員予定者に選定され、2021年2 月4日付で「東五反田二丁目第3地区第一種市街地再開発事業 参加組合員予定者協定書」を締結したと発表した。
再開発が計画されているエリアは、大崎駅と五反田駅のほぼ中間にあり、地区の南側は目黒川、東側は公園に隣接。周辺には品川区立日野学園・品川区立総合体育館や三井不動産の「パークタワーグランスカイ」「ザ・パークタワー東京サウス」「オーバルコート大崎」、野村不動産「プラウドタワー東五反田」などかある。
地区内には約30棟の建物が存在し、築35年以上経過している建物が約6割を占めており、計画では地域のシンボルである目黒川に面する環境を活かしたまちづくりを推進するため、再開発事業によって土地の高度利用、耐震性に優れた建築物の整備、道路・歩行者空間の整備及び公園や広場などの整備を行う。
事業予定地は開発面積約1.6haで、A地区の20階建て延べ床面積約70,000㎡の業務棟、B地区の40階建て延べ床面積約41,000㎡の住宅棟で構成。竣工は未定。
「東京サザンガーデン」が竣工「パークタワーグランスカイ」見学会(2010/7/6)
サンフロンティア 所有と投資を両立させたホテルコンド「沖縄」開業 販売も順調
「HIYORIオーシャンリゾート沖縄」
サンフロンティア不動産は2月20日、不動産所有・利用と投資を両立させた分譲コンドミニアムホテル「HIYORIオーシャンリゾート沖縄」(客室数:203室)を開業したと発表した。
施設は、那覇空港より車で約49分、沖縄県国頭郡恩納村に位置する敷地面積13,263㎡(4,012.06坪)、地下1階地上12階建てホテル棟と地下3階地上4階建て延べ床面積21,998.70㎡(約6,654.61坪)。客室数203室。客室面積は56.12㎡~90.46㎡。
①全室サンセットオーシャンビュー&フラットテラス付きスイートルーム②メインダイニングや鉄板焼ハウスのほかテラスやリビングで楽しめるインルームダイニングなど7種類の食事③サウナ付き露天風呂、ジャグジー付き室内プール、屋外プール、エステサロン、フィットネスジムなどの設備④ロングステイを可能にするキッチン・冷蔵庫・食器・乾燥機付き洗濯機などの設備-などが特徴。
2019年2月、第1期(25室)が4,930 万円~16,400 万円(最多価格帯5,900 万円台、専有面積56.12~90.46㎡で分譲された。販売は好調で、残りはわずかの模様。オーナーが利用しない日は、一般客室として利用され、オーナーには賃料収入が入る。
客室
登録件数と成約件数の乖離は重複登録が理由 レインズ情報の疑問に機構から回答
1月24日と1月26日に書いたレインズ情報に関する疑問について東日本レインズに問い合わせていたが、その回答があった。以下に紹介する。
まず、新築戸建ての登録件数と成約件数の乖離(新規登録件数に占める成約件数は8.4%)が大きいことについて。
レインズは「売却の仲介を一社だけに依頼する専属専任媒介や専任媒介物件は宅建業法でレインズに登録する義務が定められています。売買物件のうち宅建業者が所有している物件(売主物件)や賃貸物件はレインズへの登録は任意ですが、レインズを利用して取引を促進するため相当数が登録されています。
そのため、登録件数は一般媒介契約のように複数の業者から一つの物件を登録されていたり、売主物件で一つの物件を複数回登録されていたりする場合もあります。
一方、成約件数は取引が成立した一つの登録のみがされます。分母の登録件数と分子の成約件数はベースが異なるため、登録件数に占める成約件数の比率は小さくなります」としている。
-つまり、一つの物件が複数回登録されている可能性が多いということだ。同じ物件であることはデータ処理の段階でチェックできるはずなので、重複登録を避けることはできるのではないか。着工件数より多い新規登録件数の情報など信用できるのか。
次に、「成約報告をしない業者が信じられないほど多い」との業界紙記者の指摘について。
回答は、「登録したままになっている物件数は把握しておりません。成約報告を怠った場合は事務局指導や当機構委員会の協議による処分が行われます。宅建業法上の措置については監督官庁(国交省、都道府県庁)にお問い合わせください」となっている。
-これは国土交通省、都庁などに聞くことにする。
レインズ情報に記載されている物件概要・項目についてレインズは、「当機構ではレインズ情報の記載内容は開示しておりません。マンションの登録情報では施工会社、管理会社の項目はありますので(会員不動産会社が登録していれば)確認することができます。間取り図は販売図面を登録していれば確認することができます」とのことだ。
-これは残念だが、これ以上深入りしない。レインズの会員である親しい不動産会社に聞けば教えてくれるところがあるかもしれないが、「社員は発行されたID・パスワードを使用してレインズを利用することができます。利用者は会員不動産会社で管理するよう指導しています」(レインズ)とあるように、記者など第三者に閲覧させることは禁止されているはずで、そんなことは記者もしたくない。
レインズ情報の加工・公表などの禁止については、レインズは「事実確認・指導を行うケースは年に1~2件のペースで発生しています。規程に違反している場合、事務局指導や当機構委員会の協議による処分が行われます」とのことだ。
一つ、面白いことが分かった。これは業界の常識かもしれないが、「会員になるには宅建業者でレインズ構成団体(FRK、宅建協会、全日本不動産協会、全国住宅産業協会)に入る必要があります。会費はそれぞれの団体で異なります」(レインズ)とのことだ。不動産協会は入っていないようだ。同協会会員はほとんどFRKの会員でもあるはずなので、不都合は生じないと思うが…。会費も加入団体によって異なるというのも初めて知った。各団体に聞くことにしよう。
業界初 猫の日に水洗トイレ・シャンプーシンク一体型「ネコレット」発売 大和ハウス
「ネコレット」
大和ハウス工業は2月22日、水洗トイレ・シャンプーシンク一体型猫専用ユニットバス「ネコレット」を2021年2にゃん月2 2にゃんにゃん日(猫の日)に発売すると発表した。この種の商品は業界初。ニューノーマル時代を見据えた住まい提案第三弾。
商品は、猫がトイレに尿を排泄し、退出後に自動洗浄ができるようにセンサーを搭載したトイレ「猫トイレパン」を設置し、ファンを内蔵した光触媒作用による脱臭器も併設することで、トイレ空間にこもる臭いを軽減する。
また、水が嫌いな猫のシャワーに対するストレスを軽減させるため広々とした深型シンク(深さ22cm×幅63cm×奥行37.5cm)に加え、猫の転倒防止用滑り止めゴムマットを採用。シンクは三面を高くしたため「猫シャン」時の水跳ねも気にならなくしているのが特徴。シャワーヘッドにはマイクロバブル水栓を搭載している。
開発に当たっては、日本を代表するアーティストで愛猫家のDREAMS COME TRUE 中村正人氏がコンセプター/発案者として企画した。
寸法は幅98cm×奥行59cm×高さ110cm。販売目標は年間100ユニット。本体価格は36万3,000円(税込)。
猫トイレパン(左)とシャンプーの様子
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報道関係者向け発表会がこの日(猫の日)10:30~12:00、オンライン配信によって行われた。同社取締役常務執行役員・大友浩嗣氏と中村正人氏が登壇し、メディアとの質疑応答にも30分くらい時間をかけるなどとても面白い発表会だった。
記者も小さいころ、実家がオス猫を飼っていた。放し飼い同然だったので家の中で排泄することはなかったが、ネズミを捉えるとこれ見よがしに三和土で食べ、抜け毛をそこら中にばらまき、泥足で動き回り、隣近所の野良猫を引き込み、食器棚を難なくこじ開ける狼藉には閉口した。
さらに、猫の尿は草花を枯らすほどの威力があり、強烈な悪臭を放つ。大きな家ならともかく、マンションなどの家の中で飼育するというのは理解できない。そもそもそもそも猫は風呂など水が大嫌いなはずだ。給排水の設備にはそれなりの費用が掛かり、どこに設置するかも問題だろう。
まあ、しかし、ペット飼育者の悩みを解決しようとする姿勢は買える。年間販売目標が100ユニットなのは、多いのか少ないのかわからないが、業界初という宣伝効果を考えたらもとは回収できると読んでいるに違いない。
大友氏は賃貸住宅への展開について聞かれ、「賃貸は大家さん次第。サービスの一環。」と答えたように爆発的なヒットは考えていないようだ。中村氏も「(排せつ物の処理など)課題解決のために考えたもので、風呂ありきではない」と答えた。猫に対する愛の深さとはあまり関係がなさそうだ。
ペットフード協会の調査によると、2020年10月現在、全国の犬の飼育頭数は約8,489千頭、猫の飼育頭数は約9,644千頭で、1 年以内に新たに飼われた猫と犬は約95万頭・匹(前年比約15%増)と推計されるという。わが国の世帯数は約5,690万世帯だから、多頭飼育を考慮しなければ約31.8%の世帯で飼育していることになる。凄い数だ。
大友氏(左)と中村氏
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記者は、じわじわと自動洗浄バスが売れているように感じる。風呂掃除ほど面倒で時間のかかる家事労働はない。その労力をお金に換算したら1万円/月はくだらないはずだ。
それより、記者が期待しているのは人間自動洗浄バス(人間洗濯機)だ。これが開発されたら、浴室スペースは半分以下に収まるだろうし、水道使用量も激減し料金は半減する。そしてまたバーチャルウォーターの概念を取り込み、その効果を金額に換算したら1世帯当たり年間100万円、全世帯では数兆円に上るはずだ。
大和ハウス工業がこれを開発したら、売上高は10兆円どころかその数倍に上るはずだ。大友さん、ぜひ開発に着手していただきたい。
ニャンともうらやましい 大和ハウス「猫と暮らすまちなかジーヴォ」オープン(2017/3/22)
〝絶好調〟の分譲戸建て市場 着工は激減 各社の動向の一端を遠望する
昨日(2月19日)は、スタイルアクトの調査による首都圏分譲戸建て市場に関する記事を書いた。住宅着工戸数を上回る戸数が新規発売され、着工戸数を1万戸以上も上回る戸数が成約したなどとする吃驚仰天の記事なのだが、その真偽のほどを確認する材料を記者は持たない。
新型コロナの影響で時間はあるのに分譲戸建ての取材が激減し、どうなっているのかさっぱりわからない記者に、万里の長城のような〝ビッグデータ〟を持ち出されたらぐうの音も出ない。
だが、しかし、各社が発表する決算数値などから市場動向の一端を捉えることはできる。以下、ガリバー企業の飯田グループホールディングスをはじめ供給2位グループのオープンハウス、ケイアイスター不動産、ポラス、さらにはこれら各社とは一線を画す三井不動産、野村不動産の分譲戸建ての動向について書く。スタイルアクトのレポートが事実なら記者は大恥を〝書く〟ことになるが…。
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まず、分譲戸建て市場の30%を占めるガリバー企業・飯田グループホールディングスから。
飯田グループ6社の2020年3月期の戸建事業の売上高は1兆2,159億円で、売上棟数は45,773戸だ。2020年度の分譲戸建ての着工戸数は146,154戸なので、同社のシェアは30.8%にも達する。今期も業績を伸ばしており、土地仕入れ原価、建築費の上昇を価格に転嫁できており、売上高、棟数、利益とも上昇し、課題だった在庫数も減らしている。
同社の最大の強みは47都道府県のうち営業拠点の空白県は鳥取、島根、長崎県のみ(前期は高知、大分、宮崎に進出)という全国展開力と他社を圧倒する価格の安さだ。
価格の安さでは、同社の1戸当たり全国平均価格は2020年3月期で2,650万円だ。エリア別は公表されていないが、首都圏でも3,000~3,500万円くらいではないかと記者は予想する。
どれだけ安いか。仮に建物を30坪としたら飯田グループは坪117万円だ。マンションならどうか。首都圏のどんな山奥でも坪150万円以下は絶無だろうから20坪でも3,000万円、30坪だと4,500万円だ。飯田グループにかなわないことが素人でもわかる。
しかし、一口に分譲戸建てといっても他の商品と同様ピンとキリがある。飯田グループと対極に位置するのが三井不動産(三井不動産レジデンシャル)だ。
同社の2020年3月期の売上戸数は481戸で、1戸当たり価格は6,785万円だ。これには地方物件も含まれるはずで、首都圏に限れば7,000万円を突破するのではないか。つまり、飯田と三井の首都圏戸建て価格は1:2ほどの差がある。
これほど差があるのに、三井不動産は売れていないわけではない。その逆だ。同社は2015年3月期、過去最多の916戸を計上したが、その時の1戸当たり価格は5,425万円だった。その後、戸数を減らしているが、1戸当たりの価格は6年間の間に1,360万円も上昇している。戸数をほぼ半減させながら、売上高は496億円から328億円へと34%減にとどまっている。ここが機を見るに敏な同社のすごいところだ。競争力の強い利益率の高い都心部に注力しているのは間違いない。
それでも売れ行きは好調だ。2020年3月期末では58戸だった完成在庫は2020年12月末で36戸しかない。(飯田グループの2020年3月期末の完成在庫は10,104戸)
他社はどうか。〝東京に、家を持とう〟〝オペンホウセ〟をキャッチフレーズに別表のように驚異的な伸びを見せるオープンハウスは、2021年9月期を初年度とする中期経営計画の中で「行こうぜ1兆!2023」を打ち出し、2023年9月期のグループ売上高1兆円を目標にすると発表した。
大手デベロッパーでも売上1兆円以上は数えるほどしかないのに、1997年創業の、人間でいえばまだ20歳を少し超えたばかりの企業がそれを眼前に掲げるまでに成長したのに驚くほかない。
記者は2012年、荒井正昭社長にインタビューしたことがある。その時、荒井社長は将来の目標について「夢は1兆円といいたいところだが、売上は2,000~3,000億円ぐらいには伸ばしたい。飯田一男さんを見習いたい。不動産会社を興した人で、いまも伸ばしているのは飯田さんとこぐらい。最近、お会いした」と話した。
「飯田一男さん」を知らない人は多いだろうから少し書く。記事も添付したので読んでいただきたい。
飯田一男氏は、飯田グループの核をなす一建設の創業者で、荒井社長と会ったその翌年の2013年12月に亡くなられた。その1か月前には飯田グループホールディングスが設立され、グループ会社の合計売上高は9,075億円だった。
飯田氏には年に1、2度うかがい、「数字だけは教えるが、オレのことや会社のことについて記事にするな。写真はもちろんメモも取るな」「ただで話すのだから新聞購読料をただにしろ」という条件つきで取材し、1時間も2時間も話し込んだ。当時の本社屋は駅から遠く、プレハブ造りでエアコンなどなく、コンクリ床にストーブが1つしかなかった。
荒井社長と飯田氏がどのような話をしたか知らないが、荒井社長はその時から売上1兆円を夢に描いたのは間違いない。荒井氏ほど時代を読む能力の高い人を記者はしらない。
同社の2020年9月期の分譲戸建て計上戸数は2,804戸で、ポラス、アイダ設計、ケイアイスター不動産などを一挙に抜き去った。注目すべきは1戸当たり平均価格が前期比140万円減の4,160万円に抑制できたことだ。比率にすれば3.4%だがこれは大きい。
同じように業績が急伸しているケイアイスター不動産はどうか。同社は2月9日、2021年3月期通期業績予想を上方修正。売上高1,480億円(前期比22.6%増)、経常利益116億円(同83.6%増)、当期利益70億円(同95.3%増)と全段階で過去最高を予想。期末配当も前回予想の44円から95円へ増配すると発表した。
ものすごい数字だ。記者はこの会社が急成長したのは、ポラス出身の専務取締役・瀧口裕一氏と取締役第二分譲事業部長・浅見匡紀氏の功績が大きいと思っている。オープンハウス荒井社長にインタビューした翌年の2013年、瀧口氏にインタビューしている。瀧口氏は2008年1月、同社に請われて入社。いきなり常務取締役に就任した。浅見氏は瀧口氏より2か月後の2008年4月に入社している。お二人の記事も添付したので読んでいただきたい。
同社には大変失礼だが、瀧口氏を最初に取材したときは、本社屋は高崎線の本庄、しかもバス便で、地元や群馬県、栃木県が営業エリアだったので、ポラス商圏では戦えず、せいぜい埼玉県の北西部から群馬県、栃木県のビルダーにとどまるのだろうと思った。とんでもない見込み違い誤算だった。
同社は2015年に東証2部、翌年に東証1部に指定替えとなり、東京本社を設置したあたりから業績が急伸した。2016年は43店舗だったのを今期末には121店舗に拡大する。この間、ローコストの商品開発、FC展開などを矢継ぎ早に打ち出し、M&Aも進めた。現在のグループ販売棟数は4,457棟に達するというではないか。
オープンハウス、ケイアイスターの後発の急襲を受け、売上戸数では瞬く間に抜かれたポラスはどうか。
グループ代表の中内晃次郎氏の本心は分からないが、唯我独尊我が道を行くではないかと思う。上場する気などまったくなく、越谷にある本社から車でスピーディーに駆けつけられる埼玉県・千葉県・東京都の一部エリアのみを商圏とする方針に変わりはないはずだ。
同社の2021年3月期業績予想は、売上高2,300億円(前期比1.9%増)、経常利益170億円(同10.4%増)、純利益47億円(同7.4%増)と過去最高を目指すが、関係者からは〝絶好調〟の声も聞かれる。業績予想を上回る可能性が高いと見た。
デベロッパーでは、野村不動産が2018年に初めて三井不動産を上回る607戸(三井は501戸)を計上したが、その後はやや頭打ちだ。最近は準都心・郊外の大規模から三井不の独壇場だった都心部への攻勢を強めている。
この二強に割って入るデベロッパーはないのか注目しているのだが、いまのところその気配はない。
分譲戸建て市場は、好況と逆行するように首都圏着工戸数は2019年の63,360戸から2020年は54,340戸へと14.2%も減少しており、用地争奪戦が激化していることを裏付けている。これが質の低下につながらないことを願うほかない。
驚天動地 首都圏着工を上回る新規戸建て分譲 成約戸数!スタイルアクト調査(2021/2/19)
旧聞のみ 実態に迫れず羊頭狗肉の記事 週刊住宅1/18号〝ミニ戸建てがブーム〟(2021/1/21)
敷地60㎡未満の分譲「狭小住宅」 都心部は軒並み50%超 最少の練馬は1.9%(2019/8/19)
建売住宅のガリバー企業誕生 飯田グループホールディングス(2013/11/2)
オープンハウス荒井社長「いまは踊り場。成長戦略を構築する」(2012/1/19)