三井不レジ 家の中まで宅配物を届ける「ナカ配サービス」 第一弾は「月島二丁目」
三井不動産レジデンシャルは1月22日、業界初となる家の中まで食材などの宅配物を届ける「ナカ配サービス」を、三井不動産グループ会社が提供するメンバーシップサービス「三井のすまいLOOP」を通じ4月から運用開始すると発表した。1月下旬に分譲開始する「パークホームズ月島二丁目」が第一弾となる。
「ナカ配サービス」は、不在時に来訪があった場合はインターフォンアプリケーション「住まうほん」に着信が届き、「Tebra connect(テブラコネクト)」専用のアプリケーションを通じて施錠・解錠を行い、玄関内への配達の様子を遠隔で確認できるシステム。サービス提供業者のスマートフォンに合鍵を発行することも可能。
同社はまた、不在時でも安心して利用できる家事代行サービスの仕組みを整える。
スマートロックと連携したセキュリティシステムにより家の中まで宅配物を届けるサービスを開始するのは不動産業界初。
「月島」は、都営大江戸線月島駅から徒歩3分の定期借地権付き全46戸。建物は完成済み。
1階集会室にランドリーとワーキングスペース コスモスイニシア「大森町」
イメージ図
コスモスイニシアの新発想コンパクトマンション「イニシア大森町N’sスクエア」のモデルルームを見学した。居住面積の圧縮を図り価格を抑える一方で、広さ約56㎡のカフェ機能付き集会室にランドリーコーナーを設け、ワーキングスペースとして仕事もできるようにしている。当面使わないものは賃料の安い郊外に預けるトランクルームシステム「sharekura」も提案している。
物件は、京浜急行線大森町駅から徒歩4分、大田区大森西五丁目に位置する15階建て全112戸。専有面積は34.05~62.99㎡、坪単価は320万円。竣工予定は2021年1月下旬。事業主は同社のほかニイノ建設。施工は木内建設。
1階部分の約60㎡の集会室に8キログラムを洗えるランドリー8台とカフェ機能を備え、パソコンを使って仕事もできるWi-Fi付きの「ワーキングスペース」を設置しているのが特徴。
また、当面使わない荷物は、賃料が安い郊外のトランクルーム「sharekura」に預けられるようにする。荷物は一箱250円/月。アプリで荷物管理も行える。
販売事務所で
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1階にカフェ機能付きのランドリー、ワーキングスペースを設けたのは、記者もそうだし、おそらく同社関係者、お客さん全てに当てはまることだと思うが、リビングで仕事をする夫、または妻は嫌われ、不和の原因の一つになっているはずで、これを何とかしようという発想から生まれたものに違いない。
洗濯は、共働きの家庭では夜間に行うのがほとんどのはずだが、隣が気になってためらわれる。1階なら夫、または妻は「洗濯に行ってくるよ」と洗濯物と一緒にパソコンを小脇に抱えて出て行っても文句は言われないし、タバコはもちろん、酒だってこっそり飲めるかもしれない。愛やコミュニティも生まれる。同社は、これまでも「イニシア浦安グランプレイス」や「イニシア横浜桜木町」などでも導入している。
同じような事例では、大成有楽不動産「中野」があり、東建「上野」は近隣住民も利用できる「集会所」を設けている。武蔵小山の食堂付きアパート「Stairs(ステアズ)」も参考になるはずだ。
そこで提案だ。そこまでやるなら、もう一歩踏み出し、「専ら居住」の原始管理規約を見直し、例えばSOHO的な利用を可能にし、法人登記もできるようにしてはどうか。
そもそも商業地域の用途は〝何でもあり〟ではないか。ほとんどの用途建築物が許可されるのに、そこに建つマンションの利用を「専ら居住」に縛るというのは合理的でない。
接客ブースに置かれていたポトス(他の観葉植物も全て本物)
世界初、自動運転バス・タクシー・モビリティを活用したMaaS実証実験 三菱地所など
多くの報道陣にカメラを向けられ恥ずかしそうな「Robocar® Walk」(丸の内パークビルで)
三菱地所など7社は1月20日から2月1日、世界初の空港リムジンバス・自動運転タクシー・自動運転モビリティを活用した「マース」(MaaS=Mobility as a Service)実証実験を実施する。20日、メディア向けに出発セレモニー・撮影会など行った。
午前9時30分に東京シティエアターミナルで関係者によるセレモニーが行われたのち、11時には自動運転タクシーに乗ったモデルの外国人男性客が丸の内パークビルに到着し、さらにアプリを利用して自動運転モビリティを利用し「丸の内仲通り沿い店舗」に到着するまでの様子が公開された。
実証実験を行うのは東京空港交通、東京シティ・エアターミナル、日本交通、日の丸交通、三菱地所、JTB、ZMPの7社。
ZMPが開発した「Robocar® Walk」の運用費用は月額10万円/台、初期費用は500万円~。
自動運転タクシーで丸の内パークビルに到着したモデルの外国人客
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QRコードなるものを一度も利用したことがなく、スマホも満足に扱えず、MaaSの何だかさっぱりわからない記者はちんぷんかんぷん、あっけにとられるほかなかった。
車の自動運転は却って危険ではないかと思えてならず、道行く人に「こんにちは」と黄色い声をかけ、たどんのような黒目の片方をだしぬけにピンクのハート型に変えたのを見て、〝かわいい!〟などと女性が殺到したらモビリティはパニック状態に陥るのではないかと心配もした。
それよりも、駅や歩道や建築物のバリアを解消するのが先決ではないのか。京王新線新宿駅のホームからJR新宿駅の中央線ホームまでに7回も階段・エスカレーターを上り下りしなければならない。
それにしても、値段と重さが記者のものより数倍、いや数十倍もしそうなカメラを抱え、モビリティなるものを追っかけるメディアの人たちは何者だ。人数だってマンション取材の2倍、3倍の60名もいた。「北千住」が坪単価380万円で売れたことのほうがよほど報道する価値があると思うが…。
モビリティに乗り込む外国人客
この後すぐ、右目がピンク色のハート型に変わった
記者はロボットより報道陣の数に驚いた
〝木を愛する人は美しい〟 アキュラホーム 1,000万本の木のストローPJ 始動
「1,000万本の木のストロープロジェクト」イベント(ベルサール八重洲で)
アキュラホームは1月15日、同社・宮沢俊哉社長が主宰する全国工務店グループSABM(Smart Alliance Builder Member)とともに、環境貢献活動として取り組むカンナ削りの「1,000万本の木のストロープロジェクト」を始動すると発表。趣旨に賛同する約50人を招き、製作体験イベントも行った。
木のストローは、わが国の伝統技術である大工仕事のカンナ削りをヒントに木材(間伐材)を厚さ0.15㎜にスライスしたものをストロー状に巻き上げることに成功し開発したもの。2018年12月に発表して以来、森林保全や廃プラ問題を解決するソリューションとして国内外から注目され、G20大阪サミットやその他、国内外のイベントなどで採用されている。
プロジェクトは、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催の機会をとらえ、世界的な普及を加速させるのが狙い。有馬孝禮・東大名誉教授、末松孝弘・ザ・キャピトル東京ホテル東急支配人、高田光雄・京大名誉教授、中西哲也・元サッカー選手、長野麻子・林野庁木材利用課長、堀木エリ子・和紙作家、三井所清典・芝浦工大名誉教授、吉田倬郎・工学院大名誉教授など多くの人が賛同している。
製作体験では、〝カンナ社長〟宮沢氏がカンナ削りのプロの腕前を披露し、一般の参加者は嬉々としてストローづくりに励んだ。
カンナ削りを実演する宮沢社長
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記者が参加したのは、後半の製作体験イベントからだったが、最高に面白かった。参加者の男女比は3:7くらいで、外国人も10名くらい参加していた。
特に目立ったのは20~30歳代の〝美しい〟女性だった。〝木を愛する、環境を大事にする〟女性は身も心も美しいことを改めて確認した。
何人かに声も掛けた。30代の女性は「環境問題はわたしもそうですが、むしろ主人のほうが熱心。スーパーのレジ袋などは受け取らないことにしています」と話し、20代のカップルは「〝木のストロー〟というワードを初めて知り、面白そうなので参加した。1万人が登録しているユーチューブに流します」と出来栄えに満足していた。
関係者から、熟練者は5時間で100本製作すると聞いたので、時給1,000円として5,000円÷100本=50円と単価をはじいた。この原価では木のストローが一般家庭に普及するのは難しいかもしれないが、内職ならする人がいるのではないか。
帰り際に、同社広報課長・杉山正純氏が胸に付けていたSDGsに目が留まり、「これは当社オリジナルの木で作ったもの。売りものじゃありません。予備があります。内緒で上げます」と貰った。この後取材した三井不動産「六本木」ホテルの記事で紹介した。〝穴掘り3年、鋸(ノコ)5年、墨付け8年、砥ぎ一生〟の「カンナ削り全国大会」の記事と合わせて読んで頂きたい。
杉山氏が付けていたこのSDGsバッジを貰った(左)と大工歴約60年の山徳工務店・石田成徳氏(72)
アーティスティック! 建築・芸術家共演「三井ガーデンホテル六本木」1月24日開業(2020/1/17)
横浜版「SDGsストロー・ヨコハマ」1本50円で販売開始 麦わらストローはどうか(2019/11/7)
アキュラホーム&キャピトル東急 世界初の「木材ストロー」開発・導入へ(2018/12/11)
厚さ数ミクロンのカンナ削りの技を競う「第30回全国削ろう会 小田原大会」(2014/11/10)
またも平行線 「早く結審を」(被告)「議事録開示を」(原告)第8回選手村裁判
原告側弁護士の千葉恵子氏(左)と淵脇みどり氏(裁判後の日比谷図書館での集会で)
いわゆる東京オリンピック選手村裁判【事件番号 平成29年(行ウ)第388号】の第8回口頭弁論が1月17日、東京地裁で行われ、被告側の東京都は、原告側主張の裏付けとなっている桝本鑑定士による鑑定評価の問題点の指摘や、開発法に基づく鑑定手法の正当性を盛り込んだ厚さ数センチに及ぶ書面を提出。「論点、争点は明らかになったはず。一日も早く結審していただきたい」と主張した。
これに対して、都民ら原告側は「『廃棄した』とされる議事録を開示しない限り違法、不正の全貌は明らかにならない。人証申請も検討する」と反論した。
裁判官は、「(原告側の)調査嘱託申し入れは(裁判に)なじまない。現時点で(裁判は)ズルズルと進んでいる。最終的にどのようにするか、(裁判が)五月雨式に進むことのないようにしていただきたい」と双方に注意を呼び掛けた。
次回は6月12日、東京地裁419法廷で午後3時に行われることが決まった。
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原告、被告の主張はどこまでいっても交わることのない平行線だ。いい加減、手打ちをしたほうがいいと思うが、双方ともその気は全くないようだ。このまままでは2020東京オリンピック開幕日の7月24日までに結審しそうもない。原告側は「会場に横断幕を掲げてやる」と息巻いている。
争点となっている1:10もの開きがある双方の不動産鑑定評価額は、鑑定手法次第でそのようなものになるということであり、いくら論議しても合意に達することはなく、くんずほぐれつの泥試合となり、結局は裁判の長さだけ徒労感が募り、ぺんぺん草も生えない不毛の地を歩くことになるしかないと、右でも左でもないニュートラルの記者は思えてならないのだが、それぞれの立場だったらどうするか。
まず。原告側。鑑定額の是非を問うのはもうやめる。いかようにもなることは分かったはずだ。不動産鑑定の権威を貶めたのは大きな成果だ。
そんなことより、特約条項に盛り込まれている〝利益の山分け〟の不当性を徹底して突く。賭博のてら銭のようなやり取りを許していいのかを都民に問う。
さらにまた、切り札があるとすれば、あの鳩山邦夫総務相の〝売却価格は安すぎる〟の一声で「かんぽの宿」の売買契約が白紙に戻ったように、政治力に頼ることだ。そんな影響力のある政治家がいるかどうかは知らないが…。
次いで被告側。原告側が攻め立てる「情報開示」を真正面で受けとめ、堂々と詳らかにしてはどうか。痛くもない腹を探られるのは本意でないはずだ。
そして、「特殊要因」をもっとアピールする。中央区の陸の孤島に4,000戸を超えるマンションを建設し、市場価格で売れるわけがないではないか。破格の価格で売却したのは、オリンピックを成功させるためであり、もはや取得が絶望的になった安価で良質マンションを都民に分譲することのどこが悪いのかを訴えるべきだ。
ついでにもう一つ。記者は当初から〝レガシーマンション〟にするのなら、選手村に宿泊するアスリートのサイン、手形、足形、人拓(こんな言葉があるかどうかしらないが、つまり魚拓と一緒のようなもの)を残し、オークションにかけたら数億どころか数十億円の収入が得られるはずと主張してきたが、これはやろうとすればやれることが分かった。
浅田真央さんや錦織圭さんのCMで知られるエアウィーヴの寝具が選手村の寝具に採用される。同社は何と、オリンピックに参加する選手の体重や体型、筋肉の付き方などを調べ上げ、18,000体の「個別仕様」ベッドを開発したのだそうだ。
これをそのまま利用すれば、18,000体の人拓が完成する。わが国の金メダリストの人拓なら100万円以上の値がつくはずだし、平均50万円としても100億円近い金が転がり込むではないか。〝利益の山分け〟などというやくざの親分のような、あるいは一度は振った男に復縁を迫るような女々しい愚行を小池都知事は再選を目指すならやめたほうがいい。
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この日、最高に盛り上がったのは、被告側男性弁護士が座ったまま裁判官の了解も得ずに発言した場面だ。これに対し、原告側女性弁護士は「座ったまま発言する態度は許せない」(〝そうだ!〟の野次)と息巻いた。
記者は主にアメリカの法廷小説をよく読む。このようなシーンは度々登場する。裁判官は「法廷侮辱罪で退廷させる」と脅すのが普通だ。
確かに座ったまま不規則発言をする弁護士は退場させてしかるべきだし、傍聴人に対しても注意を喚起すべきだ。(罵詈雑言の無法地帯となったら、それはそれで見ものだが)
満面に笑み 三井不動産会長・岩沙弘道氏が「財界賞(第64回)」を受賞
「財界賞・経営者賞贈呈式」で喜びを語る岩沙氏(パレスホテルで)
三井不動産会長・岩沙弘道氏が経済研究所の雑誌「財界」の「財界賞(第64回)」を受賞した。「財界賞」はグローバルに社会に貢献し、広く日本経済を牽引した経済人を対象に選ばれるもの。今回で64回目。1月17日行われた授賞には1,000名超が詰めかけた。
岩沙氏は授賞式で、「身に余る光栄。Jリート創設や都市再生の街づくりを評価されたことは無上の喜び。社長に就任した22年前の不動産市場は資産デフレの極みにあったが、ピンチはチャンスと捉え、健全な市場形成に取り組んだ。Jリート市場は今や64リートが上場し、資産総額は19兆円まで成長した。日本橋、柏の葉、ミッドタウン六本木などの課題解決型の都市再生街づくりも推進してきた。もはやデフレは脱却した」などと喜びを語った。
「財界」の主幹で財界研究所代表取締役・村田博文氏は「Jリートを立ち上げ、不動産と金融を融合させることで金融危機を乗り切り、〝残しながら、蘇らせながら、創っていく〟街づくりをされた」と岩沙氏を称えた。
授賞式ではこのほか、「財界賞特別賞」を受賞したJXTGホールディングス名誉顧問・渡文明氏、「経営者賞」を受賞した日本電気会長・遠藤信博氏、ANAホールディングス社長・片野坂真哉氏、ディー・エヌ・エー会長・南場智子氏、東海バネ工業顧問・渡辺良機氏、エアウィーヴ会長兼社長・高岡本州氏がそれぞれ喜びを語った。
村田氏
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記者は岩沙氏が同社社長に就任した1998年の就任会見でいっぺんにファンになった。出身地がわが三重県のとなり愛知県であることもさりながら、テノールに近い声は歯切れがよく美しく、「えー、あー」などの機能語をほとんど使わず所信を表明したからだ。〝この人は間違いなく三井と業界を変える〟と確信した。
その後の岩沙氏の活躍は読者のみなさんもご存じのはずだ。記者がもっとも印象深いのは2001年(平成13年)の「六本木防衛庁跡地」の落札だった。同社など6社によるコンソーシアムを組み1,800億円で落札した。記者は入札日の半年前に「落札価格は1,750億円」と業界紙紙上で予測し、見事に的中させた。2位グループ以下とは確か400億円の差があったはずだ。
そればかりでない。〝タイム イズ マネー〟だ。敷地内の埋蔵物発掘作業があったにも関わらず、6年後の2007年(平成19年)3月30日に開業してみせた。
その後の「日本橋」「柏の葉」「豊洲」「芝浦」「川崎」などの面開発や「ららぽーと」などの商業施設開発でも他を圧倒した。〝機を見るに敏〟-この言葉にぴったりなのが岩沙氏だ。
2020ミス・インターナショナル日本代表の寺内千穂さんと
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授賞式後の懇親の場でも岩沙氏は他を圧した。他の受賞者にも多くの方が列をなしたが、岩沙氏の周りには、やや崩れかけた体形を覆い隠すのにぴったりの和服姿の日本橋の料亭女将然の方や才気煥発そのものの女子大の先生など、霊験にあやかろうとする女性が蝟集した。
誰とでも分け隔てなく接するところが女性にも好かれるのだ。「岩沙さん、女性に持てるんですね」と声を掛けたら「いやいや、こういう日だからだよ」と満面に笑みを浮かべた。
「財界」を創業したのはわが三重県尾鷲市出身の三鬼陽之助だ。
「財界賞」は榊原・経団連会長 「経営者賞」に矢野・住林会長 後藤・西武HD社長など(2018/1/21)
「晴海」より面白い 坪500万円の攻防 目が離せない旭化成不レジ「アトラス築地」
「アトラス築地」完成予想図
旭化成不動産レジデンスが2月に分譲する「アトラス築地」を見学した。大成有楽不動産「オーベル」が戦線離脱したとはいえ、5物件408戸がそれぞれ徒歩数分圏に乱立する大激戦区で、もっとも駅に近い同社の値付け次第では、お互いが手を握り合う大凡戦になるのか、それとも大乱戦の展開になるのか。当事者でなくても目が離せない様相を呈している。
物件は、東京メトロ日比谷線築地駅から徒歩3分、中央区築地6丁目の商業地域に位置する敷地面積約1,914㎡、11階建て全161戸(事業協力者住戸37戸含む)。専有面積は52.19~88.61㎡、価格は未定。竣工予定は2021年10月下旬。設計・監理は永山建築設計事務所。施工は松井建設。販売代理は野村不動産アーバンネット。
現地は、築地本願寺の南側に位置。従前は狭小住宅が密集し、私道は緊急車両も通れない状況にあったのを、同社が2018年に事業参画し、100名以上の権利関係者から同意を得て、地権者38名と等価交換方式で建設するもの。
敷地は4方接道。住戸は1フロア16戸。うち南向きが8戸、北東・北西向きが5戸、南西向きが3戸。北西向きの中層階以上の住戸からは築地本願寺越しに銀座方面が眺望できる。
主な基本性能・設備仕様は、SI、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機、シーザーストーン天板、ハンズグローエ水栓、室内物干し、ピクチャーレール、コロンボ製ドアノブ、御影石玄関、Low-Eガラスなど。
販売を担当する「レジデンシャルサロン」チーフの野村不動産アーバンネット・松谷和則氏は「事前案内会の来場者は約200組。想定以上の数字で、1月11~13日も営業8名×3回転全て満席。『アトラスを見てから』というお客さまも多く、エリアナンバーワン物件として評価をいただいている」と語っている。
ラウンジアート(ベンチは値段が付けられないほど高価な古材「神代木」)
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大成有楽「オーベルアーバンツ銀座築地」55戸の戦線離脱があったとはいえ、5物件408戸がほぼ同時期に分譲される「築地」は大激戦地であることに変わりはなく、「アトラス築地」がエリア全体の販売を左右するキャスティングボートを握っているのは間違いない。
築地駅から徒歩3分ともっとも駅に近いばかりではなく、4方接道の大規模、しかも、一部の北西向き住戸は近接する築地本願寺越しに銀座方面が眺望できる優位性を持っているからだ。
さらにまた、ファサードデザインは上質な設計で定評のあるアーキサイトメビウスの今井敦氏の重厚で印象的なデザイン、ザ・リッツ・カールトンなどのホテルも手掛けた野口真理氏によるグラスアートが彩るエントランス、ジャパンメイドの白磁によって築地の海を表現したアートがほどこされるラウンジなどもユーザーの心に響くはずだ。
こうした物件の特徴をシアタールームでもよく表現している。ソファーは上段と下段含めて12脚で、1脚数十万円はしそうな豪華なものだった。偶然出土したものを建築材に使用した古材「神代木」を利用したベンチを採用するようだが、これなどは数百万円の価値があるのではないか。
ただ、専有部の設備仕様レベルは他の物件と比べ突出しているとはいいがたい。ほとんど横並びではないか。記者が特に注目したのはトイレで、便器は5物件ともLIXILのサティスSタイプ(DV-S716-R2)だったことだ。まさか各社が〝談合〟したわけではないだろうが、設備機器の流通はどうなっているのか。
さて、肝心の価格。競合物件担当者は一様に「アトラスさんは坪500万円を切る」と見ているようだが、記者は坪500万円を割ることはないとみた。
指標となるのが、2017年分譲の駅直結「アネシア築地」だ。記者は坪500万円を突破かと書いたが、最終的には495万円くらいに落ち着いた模様だ。
その「アネシア」より、今回の物件のほうが価値は高いと記者は読んだ。いま人気の日本橋・人形町エリアの条件のいいマンションは坪500万円を突破している。約23haもある築地市場跡地の再開発を考えれば「築地」が「日本橋・人形町」より上位と見るのが妥当だ。同社が高値に挑戦すればするほど競合他社は〝割安感〟をアピールできるので歓迎するはずだ。
だが、しかし、やはり坪500万円を切るかもしれないという予想も捨てきれない。同社が高値追求したマンションは数えるほどだからだ。販売事務所は大和ハウス工業と呉越同舟の同じビルの上と下。大和ハウスより価格を抑えて、顧客を総取りする戦略に出る可能性も否定できない。
こうしてみると、大和ハウスと、旭化成不動産レジデンスの対決とも見えるし、ここに販売力では他社を圧倒する野村不動産アーバンネットも絡み、三つ巴の戦いと考えることもできる。大和ハウスと旭化成不動産レジデンスが激突すれば漁夫の利を得るのは駅からもっとも遠いコスモスイニシアだろう。
どちらかといえば護送船団方式の「HARUMI」より「築地」のほうがはるかに面白い。
ガラスアート
大成有楽不動産「銀座築地」 同業他社に一括売却か(2019/11/27)
余裕しゃくしゃくか 〝孫の手〟のように細かい点に工夫 大成有楽不「銀座築地」(2019/11/14)
築地のポテンシャル下げる足の引っ張り合いはしない」 ワールドレジ・松本部長(2019/11/19)
あの「青山」の美しい流線形 今度は「銀座築地」 大和ハウスがエリア最高峰(2019/11/8)
アーティスティック! 建築・芸術家共演「三井ガーデンホテル六本木」1月24日開業
「三井ガーデンホテル六本木プレミア」
三井不動産・三井不動産ホテルマネジメントは、「三井ガーデンホテル六本木プレミア」を1月24日に開業する。六本木駅から徒歩5分の14階建て客室数257室で、グループホテル31施設目。開業に先立つ1月15日、メディア向け内覧会・試食会が行われた。アーティスティックなホテルだ。Studio Akane Moriyama 森山茜氏の2層吹き抜けのファブリックアートは圧巻。
国内外で活躍する日本の建築家やアーティスト、デザイナーを集結し、国際都市・六本木に相応しい艶やかさと日本らしさを併せ持つデザインを表現しているのが最大の特徴。
外観・外構は光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所、エントランス・ロビーはテキスタイルデザイナーStudio Akane Moriyama 森山茜氏の2層吹き抜けのファブリックアート、ラウンジはアーティスト言上真舟氏によるガラスアート、レストラン&バーはインテリアデザイナーGLAMOROUS co., ltd. 森田恭通氏…など。
外観は木目調素材を多用し「折り」を演出したデザインで、ファブリックアートはアルミのコーティングを施した極薄のピンクの布を重ね合わせたもので、オーロラのような不思議な世界を表現。ガラスアートはシンデレラになったような気分にさせ、森田氏は「モダン・アールデコ」で魅了する。
施設は、東京メトロ日比谷線六本木駅から徒歩5分、港区六本木3丁目に位置する14階建て全257室。客室面積は20.5~63.1㎡、平均客室面積はホテルシリーズのなかで最大の約27㎡。ルームチャージは2万円台から3万円台が中心。フィットネスジムが併設されている。
エントランス
ロビー
ロビーアート
客室廊下アート
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いつもそうなのだが、同社は内覧会後に最上階14階のレストラン&バー「BALCÓN TOKYO」(バルコン・トーキョー)での試食会を行った。
記者はシャンパンを一杯頂き、もう一杯と何か食べようと長蛇の列に並んだ。と、そのとき、スタッフの方が「これは美味しいですよ。『腰長エビ』。爪の先まですべて食べられます」と「腰長エビ」なる料理を運んできた。
隣に並んでいたよく知っている若い女性記者は「手が長いんですか」と話しかけたのに、品性に欠ける記者はスタッフに向かって「あなたは手が早いでしょ。わたしは手も足も出ない」と口走っていた。するとそのスタッフは「うまい!」と応えた。
この二人の絶妙なやり取りを分からないふりをしたのか、女性記者は全然反応しなかったのだが、「腰長エビ」は抜群にうまかった。そこでもう一皿頂き、ついでにシャンパンを立て続けに2杯飲んだ。いい気分で帰る頃には「腰長エビ」はなくなっていた。店長!山菜の女王「コシアブラ」も美味しいですぞ!
それにしても、同社の広報担当は記者がお願いした取材の件はすっぱり忘れていたのに、シャンパンを3杯でなく4杯飲んだことをなぜ知っていたのだ!
レストラン
レストラン個室
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この日は、ホテル取材の前にアキュラホームの「木のストロー」イベントを取材した。取材をし終え帰ろうとしたら、同社広報課長・杉山正純氏のスーツの襟元のいつも見るものとは異なるSDGsバッジが目に留まった。
物欲しげな顔をしていたのを杉山氏は感知したのか、「これは当社オリジナルの木で作ったもの。売りものじゃありません。予備があります。内緒で上げます」とくれた。
嬉しくなって舞い上がり、早速胸に付けホテル会場で胸を張ったのだが、誰も反応を示さなかった。同業の記者に〝この胸の威光が目に入らぬか〟とばかり見せびらかしたら「何? それ」とつれない返事しか返ってこなかった。〝あんたたちはモグリか〟と出かかったのを必死でこらえた。
だが、しかし、さすがかみさんだ。ほろ酔い気分で家に帰ったら、コートを会社に忘れてきたのには気が付かないのに、バッジを目ざとく発見するや否や「何よ、それ、みっともない」と、玄関先でバッジを剥がしにかかった。
剥がされてなるかと記者もすぐさま反撃に出た。ちょうドそのとき、不倫騒動から風向きが変わった小泉進次郎環境相のバッジを付けた姿がテレビ画面に映し出されたので、「ほら、小泉さんだって付けている。そんじょそこらにあるものとは違うんだ」とやり込めたつもりだが、「フン、国会議員先生じゃあるまいし」とまるで取り合わない。
確かに、SDGsバッジは大きく、いかにもこれ見よがしの善意の押し売りのような嫌みを感じ、付けるのは免罪符のように思えなくもないのだが、記者だって17項目の目標のうち10項目くらいは貢献している。こうなったら意地でも付け続けてやる。
杉山氏からもらったSDGsバッジ
販売好調 小田急不他「海老名」第一弾完成 2棟約2,400㎡の駐車場屋上緑化
「リーフィアタワー海老名アクロスコート」
小田急不動産と小田急電鉄は1月16日、小田急線海老名駅とJR相模線海老名駅間の約3.5haの大規模複合開発エリア「VINA GARDENS」で建設を進めていた免震タワーマンション「リーフィアタワー海老名アクロスコート」(304戸)が完成したのに伴うメディア向け竣工見学会を行った。全体で3棟約900戸の第一弾で、坪単価258万円ながら、2018年1月から販売開始2年目で279戸を成約。近接する第2弾の「リーフィアタワー海老名ブリスコート」(302戸)も昨年6月からの販売ですでに104戸を契約するなど極めて好調に推移している。
物件は、小田急線海老名駅から徒歩3分、海老名市めぐみ町に位置する敷地面積約5,035㎡、31階建て全304戸。専有面積は45.25~120.65㎡、価格は3,200万~1億6,488万円(最多価格帯5,700万円台)、坪単価は258万円。事業主は小田急不動産、三菱地所レジデンス、小田急電鉄。基本設計・デザイン監修はアール・アイ・エー。設計・施工は三井住友建設。建物は2019年10月に竣工。
分譲開始は一昨年の1月から。今年1月末現在、最上階の1億円以上のプレミアム住戸7戸を含む279戸が成約済み。
購入者の居住地は海老名市が約37%で、他は県央の6割(横浜市は2割前後)。約5割が持家からの住み替え・買い増し、60歳以上も2割超。家族数はDINKSが約4割、勤務地は厚木市が多いのが特徴。
昨年6月から分譲開始した、駅から徒歩5分の坪単価252万円の「リーフィアタワー海老名ブリスコート」(302戸)もすでに104戸を成約済み。
2025年度の全体計画完了までには、もう1棟のタワーマンション約300戸のほかオフィスやサービス施設などが整備される予定。
高層住居からの眺望(右側が小田急線)
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凄い売れ行きだ。海老名駅圏で大量のマンションが販売されるのに注目したのは2017年だった。小田急は3棟で約900戸を分譲すると発表し、その他のタワーマンションを含めると全体で約2,000戸に達した。わが多摩センター駅圏ではかつて5年間で約2,000戸が分譲されたが、それに匹敵する戸数だった。正気の沙汰でないと思った。坪単価の高さにも驚愕した。多摩センターの最高値坪単価250万円を超えたからだ。
他物件の売れ行きは分からないが、〝苦戦〟の声は聞こえない。本厚木駅前の三菱地所レジデンスの物件も残りは10戸足らずだそうだ。
2017年に開業した駅前の商業棟
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記者がもっとも注目したのは、5階建て自走式駐車場(居住者用169台・来客用2台)の壁面緑化と屋上緑化だった。屋上緑化は約1,200㎡で、芝生広場、ハーブなどの植栽、遊具の設置を行っている。購入者の評価も高いそうだ。
近接する「ブリスコート」の駐車場もほぼ同規模の駐車場が整備されるので、双方を合わせると約2,400㎡(727坪)。
これほど広い面積を屋上緑化したマンションはかつてあったかどうか。国土交通省の平成29年度の調査によれば、「バスタ新宿・JR新宿ミライナタワー」の屋上緑化面積は約3,893㎡だ。これまでの最大では「六本木ヒルズ」の約18,000㎡(屋上緑化というより緑化面積)がある。これよりは小さいが、分譲マンションに限れば過去を含めて10棟あるかどうかではないか。
駐車場の屋上緑化
億が建設中の「リーフィアタワー海老名ブリスコート」
第1期167戸成約 小田急不ほか「海老名」のタワーマンション好調(2018/4/13)
息つく暇なし 津田三佐雄「南極(難局)物語」 百瀬・明大名誉教授ら凍りつく
津田氏
〝サラリーマン登山家〟津田三佐雄氏(72)が「サラリーマンと二足の草鞋を履いたとてつもない冒険野郎の軌跡と奇跡~5大陸最高峰に挑むと南極物語~」と題する講話を昨年末、OSI研究会(代表:篠原勲氏)の定例勉強会で行った。
「瑞宝中綬章」の受章者で齢85の明大名誉教授・百瀬恵夫氏をはじめ多くの参加者は、息つく暇もない生と死が紙一重の言語に絶する南極(難局)物語にあ然茫然するほかなく、話は1時間半にもわたったにもかかわらず、席を外す頻尿老人は一人としてなく異議を唱えるしわぶき一つ漏らさず、まるで氷原の南極に放り込まれて一瞬にして凍りつき、大人しく聞き入った。
津田氏は1948年生まれ。神奈川県小田原市出身。早大を卒業後、1971年富士フィルムに入社。「40歳以降は札幌、広島、中国、東京本社、医薬品製造の関連会社へと渡り歩き、本業のフィルムからはやや離れた辺境ばかり」(同氏)を歴任。2012年に退社した。
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登山の魅力・魔力にとり付かれたのは中学生の頃から。サラリーマンを続けながらヨーロッパアルプス最高峰のモンブラン(4,810m)、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5,895m)、北米大陸最高峰マッキンリー(6,194m)、南米大陸最高峰アコンカグア(6,959m)の登頂を40歳代までに成し遂げた。
エベレストは何回かチャンスはあったものの、この時代会社の要職にありながら、2か月以上の長期休暇は許されず、ベースキャンプまで3回行くに留まっている。
5大陸制覇を目指した南極大陸最高峰ビンソンマシフ(4,450m)への道のりは平たんではなかった。最初のトライは1993年。準備は着々と進んだが、富士山トレーニング中に靭帯を断裂。「登頂はできるかもしれないが、下りてこられない」と医師から忠告され断念。
チャレンジ2度目の2017年には、外国隊に参加を申し込んだが、言語や登攀スピードに不安を覚えまたも頓挫。
そして2018年8月の70歳のとき、「もう体力の限界。これが最後のチャンス」とばかり日本からの公募隊に応募、夢は実現した。メンバーは6名。他は45~61歳の熟練者ばかり。津田氏は圧倒的な最年長者だった。
準備には万全を期した。装備は8,000mクラスのものを用意しなければならず、数十万円を掛け全て一新。低酸素室での訓練のほか、ほぼ毎日、ジムで標高差800mの登行、筋トレ、水泳(2,500m)を行った。
メルヴィルの「白鯨」が描いた厳しい自然にたじろぎながらチリ最南端のプンタアレナスを飛び立ったのは12月26日。そして翌日の深夜1時、南極大陸の基地・ユニオングレッシャー(UG)に到着した。
それからベースキャンプ(2,100m)-ハイキャンプ(2,750m)-アタックキャンプ(3,750m)-頂上アタック(4,750m)-登頂目前での撤退までの9日間の生と死が紙一重、隣り合わせの想像を絶する過酷な体験談を津田氏はこともなげに語った。いかに南極が過酷であるかを次のように列挙した。
・飛行機はロシアの軍用機、好天の一瞬を狙って飛ぶ
・南極は雪原が広がるのではなく急峻な氷の山脈が連なっている
・ハイキャンプからアタックキャンプへは平均斜度は40度、最大斜度は45度の難所が立ちはだかる。
・夜がない、音がない、臭いがない、色がない、変化がない
・吐く息は白くならない。液体物はすべて凍る。寝袋の中に抱いて寝る
・荷物は自身で約25キロ背負い、そりに約40キロ。ひたすら歩く
・排泄物、ごみはすべて持ち帰る(排泄物はあまり匂わないそうだ)
頂上まで残り百数十mの地点で登攀を断念せざるを得なかったが、「登山の目的は登頂することではなく、無事に生還すること」を改めて学ぶことになる。「登頂はできたかもしれない。しかし左耳は感覚を全く失い、恐らく凍傷で切除せざるを得なかったであろう」とも語る。
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津田氏は、仕事では辺境(富士フィルムの今では基幹事業、しかし当時は周辺事業)をひたすら歩き、変狂(偏狂とは言わなかった)の軌跡(奇跡⇒鬼籍によくぞ入らなかった)を生々しく語った。
「植村直己さんが北米最高峰マッキンレー(現デナリ)で消息を絶った翌年(1985年)、我々はその頂きに立った。そしてその時リーダーであった和田昌平氏が、翌年冬季、南米最高峰アコンカグア南壁を登頂後、消息を絶った。翌年その奥さんの嘉代子さんを伴い、捜索を兼ねて登頂したが、昌平氏の姿を見つけ出すことはかなわず、頂上から離れようとしない彼女を下ろした。彼女は夫の亡霊に取りつくように、夫の登った山々の足跡を辿り始めた。そして1995年ヨーロッパアルプスのグランジョラス(4,208m)で悲劇が起きた。我々の目の前でパートナーとロープで結ばれたまま、岩壁を落ちていった。
そして翌1996年、今度はグランジョラスで一緒だった岳友、難波康子がエベレストを登頂後遭難した。世界で二人目のセブンサミッターとなった直後の悲劇であった。この遭難は公募隊の功罪を問う事故として、話題を呼び、米国でベストセラーとなり映画化された」
自らも何度も奇跡的に危機を乗り越えた。2012年、エベレストのベースキャンプで突然尿閉塞に襲われた。ヘリで緊急搬送され一命をとりとめたときは、「1日遅れていたら死んでいた」と医者に言われたそうだ。
津田氏は登山の経験からサラリーマンとしての心構えについても言及した。
登頂成功の条件を3つ挙げた。
1)ベースキャンプをしっかり作ること
危機的状態にあっても、戻れるところがあれば再起を期すことができる。会社も個人も同じ。得意分野を持つことだ。
2)パートナーに対して常に自分の状況を伝えておくこと
ザイルを組んだ時からパートナーとは運命共同体だ。ヤバいと思ったら、背伸びせず、パートナーに伝えておけば救うことができる。上司と部下、先輩と後輩、友人、夫婦の間も同じだ。
3)計画は戦略は楽観的に大胆に、戦術は最悪の事態を想定し、悲観的で緻密、細心であれ。これを逆にすると命を落とす。ビジネスも同じで必ず失敗する。
長期休暇の取得の手順についても語った。最初に了解を得るのは同僚で、次に取引先。外堀を固め、そして上司-社長だそうだ。有給休暇の範囲内であるにもかかわらず、7回の海外遠征の全てが社長決裁であったようだ。
遠征の前後は無茶苦茶仕事をし、絶対行くという本気度を示し、殺し文句は「仕事の遅れは取り戻せるが、青春は取り戻せません」であったというと同時に「人は私のことを冒険家というが、山での1か月の冒険より、会社の長期休暇の取るまでの道程の方が、長く冒険的であった」という。
全て周囲を固め同意を得たうえで、最後の難関壁は奥さん。しかし意外な言葉が返って来た。「わたしがダメと言ったらあなたはやめるの」「そういうのって、相談と言わない。宣言でしょ。だったら生きて帰って。死ぬときは捜索隊に迷惑(お金か)が掛からないようすぐ見つかるところで死んで」だという。津田氏は「何だかんだ言っても、死んだら残せるのは保険金だけ」と笑った(掛け金、保険金はいくらか話さなかった)。(サラリーマンはこれを見習うべき。順序を間違ってはいけない)。
しかし後で聞けば、1年前から準備し、そわそわしている姿を見ながら、薄々は「これは何か企んでる」とお見通しであった 奥さんもまたすごい。出掛ける時はいつもと変わらず「行ってらっしゃい」の一言で、決して不安を覗かせるような表情を浮かべず、玄関先か精々バス停までで、決して空港まで見送ることもなく送り出す。振り向きもしない。
「無理をしないでね」とは言うが、内心「無理をしないと山は登れない。しかし無茶はしない」といつも心に誓って出発したという。
そして帰還すると、全身を見渡し、真っ先に確認するのは身体のどこかが欠落・欠損していないかチェックが入るそうだ。
公募隊ついても津田氏は触れ、商業登山が蔓延し、技術が備わっていなくてもガイドが何とかするという安易な募集が遭難事故を起こすと問題点を指摘した。
最後にこれからの計画について語った。
2012年、64歳でリタイアを決意すると、再び冒険心が目覚めたという。体が動き、アドベンチャラスなことができるのは後10年、75歳までと心得「私の夢10年計画」を立てた。
① ヒマラヤ8,000m峰登頂がかなわなければ、14座全てのベースキャンプを巡る
② 南極大陸最高峰ビンソンマシフ登頂
③ ヨーロッパアルプスのオートルート(モンブランからマッターホルンまで)山スキーで滑走
④ シルクロードからポルトガルロカ岬までユーラシア大陸を自転車で横断
⑤ 北極点到達
⑥ 7つの海をスキューバダイビングで泳ぐ
⑦ 宇宙ステーションから空に飛び出し星になる
70歳を過ぎ、夢計画のほぼ半分を達成したというが、まだまだ挑戦は続く。
最後に齢85の百瀬氏から質問が飛んだ。「あなたはいくつまで生きるつもりか」
津田氏の答えは「明日死んでもいいと思って今日を生き、永遠に生きると思って今日も学びたい」
篠原氏
百瀬氏
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