旧九段会館を保存・復原 最新鋭のオフィスとの融合 東急不・鹿島「九段会館テラス」
「九段会館テラス(KUDAN-KAIKAN TERRACE)」
東急不動産と鹿島建設は9月8日、登録有形文化財「旧九段会館」の保存・復原プロジェクト「九段会館テラス(KUDAN-KAIKAN TERRACE)」 が完成したのに伴う記者説明会・内覧会を行い、10月1日(土)に開業すると発表した。「水辺に咲くレトロモダン」をコンセプトに、旧九段会館の創建時の技術・素材を活かした保存部分と、IoTを活用した最新鋭のオフィスとの新旧融合を図っているのが特徴で、数十社のメディアが駆けつけるなど関心の高さをうかがわせた。
新築の17階建てオフィスは制震構造、保存部分の5階建て旧九段会館は免震構造を採用。保存・復原では、創建時の写真などをもとに忠実に再現したゲストルームのほか、バンケットホール、玄関ホール・プラザなどは残せるものは残し、意匠・デザインを損なわないようLED照明、建材などを厳選して採用。単に展示して眺めるだけの場にせず、日常利用を続ける動態保存としている。
創建時のまま残されている外壁には、経年により風合いを増したスクラッチタイルや擬石を活用できるよう温水高圧洗浄や表面微細研磨を行ったうえで、安全対策としてスクラッチタイルには約54,000本、擬石には約7,300本のアンカーピンニングを実施している。
オフィス部分には、国内のオフィスビルへの導入は初となるスマートガラス「View Smart Glass」を採用。建物屋上に設置したセンサーとAIにより、太陽の位置や天候に合わせてガラスの透過率を4段階で自動調整し、室内に差し込む自然光・熱量を最適化。空調や照明によるエネルギー消費量を最大約20%削減する。2~4階には約20~80坪の小規模オフィス・ラウンジ「Classic Office& Classic Lounge」(2~4階)を設けている。
現在、オフィス部分のリーシングは約9割が、「Classic Office& Classic Lounge」は約5割がそれぞれ成約済み。緑と水辺に近い、他にはない特性が評価されているという。
企業の健康経営をサポートし、オフィスワーカーの多様な働き方を実現するウェルネスオフィスとしているのも特徴の一つ。地階のシェアオフィスには、MONOSUS社食研が運営する新しい形の職域食堂「九段食堂KUDAN- SHOKUDO for the Public Good」を併設、食材は全国の農家から直送されるオーガニックなものを中心に提供する。1階には内科・皮膚科・耳鼻科・歯科・薬局などのクリニックモールを開設。入居企業は、健康経営の達成度や成果を確認することができる。
保存部分屋上には、一部来館者も利用可能な屋上庭園とラウンジを整備。地元・行政と連携した交流の場として「九段ひろば」「お濠沿いテラス」「九段こみち」も整備する。
説明会で東急不動産取締役常務執行役員都市開発ユニット長・榎戸明子氏は「歴史的建造物の復原の取り組みは当社初。『レトロモダン』をテーマに、例を見ない希少性を生かし、ポテンシャルの高い事業にも対応できる新しい形の施設とし、オフィスワーカーの安心・健康などの仕掛けも盛り込んだ。90年の歴史の重みを受け止め、今後しっかり運用していく」と語った。
来賓として登壇した財務省理財局国有財産業務課長・梅野雄一朗氏は「極めて難易度の高いプロジェクト」にチャレンジした3社を讃えた。
トークセッションでは、同社都市事業ユニット開発企画本部執行役員本部長・根津登志之氏は、創建時の建物保存とオフィスの事業性を両立させるのに苦心したなどと述べた。
また、施工を担当した鹿島建設九段会館テラス工事事務所長・神山良知氏は「旧九段会館の建設に携わった職人技に感動を覚え、それを原動力に高い次元で検討を重ね、最高の建物が完成した。プロジェクトに参加できてとても嬉しい。建物保存では親和性を重視した」などと語った。
施設は、東京メトロ・都営新宿線九段下駅から徒歩1分、千代田区九段南一丁目に位置する敷地面積約8,765㎡、地下3階地上17階建ての延床面積約68,036㎡。設計は鹿島・梓設計・工事監理業務共同企業体。施工は鹿島建設。竣工は2022年7月29日。開業は10月1日。期間70年の定期借地権付き。
旧九段会館は1934年(昭和9年)に完成。昭和初期の時代性を表現した「帝冠様式」と呼ばれる外観的特徴を備えているのが特徴で、主に軍の予備役・後備役の訓練・宿泊に利用された。1936年の二・二六事件では戒厳令司令部が設置され、1937年には愛心覚羅溥傑と嵯峨浩との結婚式場ともなった。
終戦後はGHQに撤収され、その後、1957年(昭和32年)に日本遺族会に無償で払い下げられ、名称を「九段会館」に変更しレストラン・結婚式場として再開業された。2011年の東日本大震災時にホールの天井が崩落したことをきっかけに国に返還された。
東急不動産、鹿島建設、梓設計の3社は2018年3月、登録有形文化財「旧九段会館」の保存・復原プロジェクトコンペで選定され、今回の竣工となった。
外観(田安門から)
外観正面(低層が保存部分)
お濠沿いテラス
お濠のハス
5階ルーフトップガーデン
5階のウエルネスガーデン(菜園)
九段ひろば
◇ ◆ ◇
小生も旧九段会館はコンサートやイベントなどのほか、近くに取材する機会があったときなどはレストランも利用したことがあるが、内装などを今回ほどじっくり見学するのは初めてだった。梅野氏が「極めて難易度の高いプロジェクト」と語り、神山氏が「職人技に感動を覚え、それを原動力にした」「真正性を重視した」という言葉がとても強く印象に残った。
その当時の職人技と、それを再現した同社の技術力の高さは素人の記者でも手に取るように分かる。
応接室・役員室として使用されていた2階のゲストルーム「葵」と「雅」は、GHQが白いペンキで塗りつぶしていたという壁、天井などのペンキをはがし、当時の雰囲気を忠実に再現している。無垢のチーク材の扉、真鍮の丁番・蝶番、寄木張りの床、絹織物の天井、皇族用としか採用されなかった金と銀をテーマにした文様の布クロスなどだ。
腰壁に採用されているえも言われぬ文様の腰壁の石について、神山氏は「この石は国産に間違いないが、どこの石か調べても分からない。全部で採用されている石は21種でうち国産は11種」と話した。
玄関ホールも見事という他ない。創建時採用されていた褐色の大理石は、国会議事堂の総理大臣室の暖炉などにも採用されている長州オニックスと呼ばれる希少な素材で、その素材感などを損なうことなく新たな空間として演出されている。
天井高約7.2m、広さ298㎡の「真珠」と「鳳凰」のバンケットルームは、当時の写真などをもとに一部の床はナラ材のエイジングを施したヘリンボーン仕上げとし、織物クロス、真鍮下地に錫メッキを施した「真珠」をモチーフにした金属装飾を復原して採用している。
外観・外壁には、創建時のスクラッチタイル、擬石をそのまま採用。約28,000枚の屋根瓦のうち半数はそのまま転用し、新たに採用した瓦は復原前の「織部色」を再現するため釉薬の配合比率を変えながら40枚以上の試作を繰り返し、その中から4枚を採用している。階段や壁に使用されている貴重な大理石なども、熟練石工の職人技で復原されている。
玄関ホールには、1枚250㎏のブロンズ製扉4枚からなるものが3か所に採用されているが、下地のスチールは腐食が進んでいたため、ステンレス製に作り直し・組み直しを行って再生している。
玄関ブロンズ扉
玄関ブロンズ扉正面
ブロンズ扉のサーベルをあしらった装飾
1階プラザ
1階玄関ホール
ゲストルーム「葵」
ゲストルーム床
ゲストルーム「雅」
敷地内のケヤキを活用したテーブル
ゲストルーム前室扉
3階階段室
階段室レリーフ
3階バンケットルーム「真珠」
「真珠」の間レリーフ
地階の九段食堂
◇ ◆ ◇
「九段会館及び同敷地に関する検討委員会」の委員長を務めた、都市計画問題に深くかかわった伊藤整の息子でもある東大名誉教授・伊藤滋氏(93)も元気な姿をみせ、トークセッションに参加した。
MCからコメントを求められると、伊藤氏は「二・二六の日はね、私は5歳か6歳で、凄い雪の日で、上野から中野までバスでおばさんの家に行ったのだが、凄い積雪があったのが頭に残っている。軍人会館は、小学5年生のとき、空軍の偵察機に乗ることになった従妹に連れられて行ったことがある。軍人会館がぼくの頭にこびりついている。『九段会館テラス』のネーミングはとてもいいし、軍人会館はすぐ戦争を思い出すように強烈な個性があったが、(3社の)提案はそれほど自己主張していなかったのがよかった」などと語った。
神山氏もどこの産か分からない「雅」の腰壁の石
3階「真珠」のヘリンボーン
壁クロスの文様
左から東急不動産都市事業ユニット開発企画本部開発第一部統括部長・入谷宏一氏、神山氏、榎戸氏、根津氏
東京メトロの保守用宿泊所をSOHOにリノベ リビタ「メトロステージ代々木上原」
「メトロステージ代々木上原」
リビタが企画・プロデュースした東京メトロ所有の築44年の寄宿舎・休憩所をリノベーションして共同住宅(SOHO)に用途変更した「メトロステージ代々木上原」を見学した。全5戸の小規模ではあるが、「LIVING SPACE」と「BUFFER SPACE」を一体として利用でき、法人登記も可能にするなど賃借人の多様なニーズに応えられるのが特徴。
建物は、東京メトロの鉄道保守部門の宿泊・休憩所として使用されていた築44年の寄宿舎をSOHO型賃貸住宅へと用途変更してリノベーションしたもの。旧耐震ではあるが、診断の結果、耐震性には問題がないことを確認済み。構造躯体に変更は加えていない。
商品企画では、「LIVING SPACE」と「BUFFER SPACE」を一体として利用できるように提案。居室としての条件を満たすために窓を新設したり、腰窓を掃き出し窓にしたりしているほか、既存の窓には障子を新設。
さらに、法人登記も可能にしており、賃貸住宅と事務所との二重賃料負担をなくしている。
物件は、東京メトロ千代田線・小田急線代々木上原駅から徒歩2分、渋谷区西原3丁目に位置する敷地面積約285㎡、鉄筋コンクリート造地上2階建て延べ床面積約277㎡のSOHO型賃貸住宅全5戸。専用面積は29.84~55.95㎡。間取りは1R /1R+S /1LDK+S /1LDK+テラス。月額賃料は13.8~25.6万円。建築年は1978年。リノベーション竣工年は2022年9月。管理はリビタ。
イメージ図
◇ ◆ ◇
これまで見学してきたSOHO(Small Office Home Office)はほとんどマンションタイプだったので、今回の物件は、それらとは全く異なっていた。
図を見ていただきたい。広さも形状も様々だ。例えば1階の101号室(約39㎡)。約14帖の住空間と約5.6帖のBUFFER SPACEが共用部の廊下を挟んで完全に分離されている。2階の201号室(約29㎡)は、半分が土間仕上げのBUFFER SPACEとなっており、202号室(約55㎡)は、従来は腰壁(腰窓)だったのを掃き出し窓にし、外部に広いルーフテラスを設置している。
賃料は、相場の坪1.5~1.6万円とそれほど変わらないが、新築並みにリノベした同社のソリューション能力が高いということだろう。既存の寄宿舎は数年間使用されていなかったそうだ。
専用部
専用部
専用部(ルーフテラス付き)
共用の屋上テラス
階段室
幸福とは何か 人口0.6%のモニタにバイアスはないか 「幸福度」1位の鳩山町
鳩山町ホームページトップ
大東建託は9月7日、「街の幸福度&住み続けたい街ランキング2022<首都圏版>」の「街の幸福度(自治体)ランキング」トップは昨年に続き埼玉県鳩山町になったと発表した。
記者は、この種のネットによるアンケート調査は、〝半身〟に構えて読むことにしている。公平性を装った恣意的な質問で回答を誘導するものも少なくないからで、鳩山町が「幸福度」ナンバーワンと言われても〝そうなの〟とやり過ごせばいいのだが、住宅購入検討者をミスリードする危険性もあると考えるので、再批判せざるを得ない。以下は、昨年の批判記事「幸福度トップ自治体は鳩山町 根拠希薄・無神経な大東建託ランキングやめるべき」(2021/9/8)と一緒に読んでいただきたい。
最初に断っておく。鳩山町はとてもいい町だと思う。最寄り駅の東武東上線高坂駅からバス便だが、昭和を代表する素晴らしい「鳩山ニュータウン」のほか東京電機大のキャンパスもあり、ゴルフ場も3か所ある。そのうちの一つ「鳩山カントリー」は何度か利用したことがある。
「鳩山ニュータウン」は、日本新都市開発( 2003年8月特別清算) が開発した面積約140ha、約3200戸の大規模住宅地で、当時としては珍しい地区計画を採用し、美しい街並みを形成した。バブル期には1億円超の「松陰坂」も分譲されたが、基本的には中堅所得層向けの昭和の時代の良好な住宅団地だ。
しかし、バブル崩壊後は都心から50キロ圏のバス便、ニーズの変化などによる人口転出、高齢化が加速度的に進んでいる。同ニュータウンの人口は、平成11年は約1万人で、町全体の人口の57.8%を占めていたが、20年には54.2%へ、令和3年には51.8%へ、そして今年9月1日現在では51.2%(約6.8千人)へと減少。平成11年からの人口減少率は町全体で23.8%であるのに対し、「鳩山」は32.5%減と町全体を大きく上回っている。高齢化率も令和4年1月現在50%超となっており、町の高齢者比率45.1%を上回っている。
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それでも「街の幸福度(自治体)ランキング」トップになったのは、町や民間の活性化の取り組みが奏功したからと受け止めたい。町のホームページには平成16年以降、「待機児童ゼロ」を継続しているほか、子育て世代包括支援センターでは母子保健コーディネーターが子育てママ・パパを支援し、平成21年2月2日以降13年間「交通死亡事故」が一度も発生しておらず、犯罪率も県内トップクラスであり、町民なら誰でも利用できる乗合型のデマンドタクシーは町内のどこへでも200円で行くことができるなどとある。
また、建築家で埼玉県出身の東京藝術大学准教授・藤村龍至氏は町の施設の指定管理者として名乗りを上げ、様々な個人・団体を巻き込んで団地の活性化に取り組んでいる。
そうした取り組みが、町民の幸福度を高めているのであればなおさら、調査結果に反映すべきだ。しかし、同社は「幸福度の評点は、非常に幸福だと思う場合を10点、非常に不幸だと思う場合を1点とする10段階の回答平均を100点満点にするために10倍した」としか説明していないし、いったい何をもって「幸福」「不幸」とするのかアンケートでは聞いていない。
もちろん、「幸福」「不幸」の概念を明確に示せる人など一人もいない。物質的・経済的に豊かなのが「幸福」というのであれば、ほんの一握りの人しかいないはずだ。多くの人は物質的・経済的に恵まれていないと考えるから、それ以外の精神性などに安息の場を求める。神仏がその代表だろうし、「国家」のあらゆる呪縛や社会的規範から解き放たれた自由人こそが幸福者かもしれない。
まあ、そんな哲学的なことはともかく、鳩山町の回答者は78人だ。同町の人口約1.3万人の0.6%でしかない。しかも、回答者は無作為(これだって正確な回答が出るかは分からないが)によって選ばれた人ではなく、マクロミルの登録モニターだ。モニターは自由意志で登録できるはずだから、一定の登録者が「幸福」と答えれば、数値は大幅に変わる。ネットアンケートには常に同調と反発が裏表一帯のバイアスの問題をはらむ。同社は全回答者207,659名の数を誇示するが、数の問題ではない。質の問題だ。
先にも書いたように、ランキングを公表するのであれば、だれもが納得する「幸福」とは何かを示すべきだし、78人の属性も公表すべきだ。
幸福度トップ自治体は鳩山町 根拠希薄・無神経な大東建託ランキングやめるべき(2021/9/8)
鳩山NT活性化を「私自身がアート」藝大卒・菅沼朋香氏「ニュー喫茶 幻」開業(2019/3/23)
頂門の一針、蜂の一刺しにならないが アルヒ「本当に住みやすい街大賞」批判(2021/12/12)
埼玉県「リアル体験教室 理想の家づくり」定員12名に反響306名 ケイアイスター不
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「建築デザイナーになりたい!」
ケイアイスター不動産は9月6日、埼玉県主催の「夢を見つける!リアル体験教室」の一環として職業体験教室「建築デザイナーになりたい!」を8月26日(金)に実施し、募集人数12名に対して306名の応募があったと発表した。
子どもたちは、同社の大会議室でCADを操作しながらゲーム部屋や漫画部屋などの理想の家と、美しい街並みの模型を完成させた。埼玉県が実施した当日のアンケートでは「とても楽しかった」「楽しかった」が100%となった。
「リアル体験事業」は、埼玉県在住の小学4年生から6年生までを対象に、リアルな職業体験を提供することで、子供たちの将来の夢の発見、実現を支援する事業。埼玉県ゆかりの企業のプロフェッショナルが講師となり、直接学べる体験教室を行っている。
埼玉県本庄市を拠点としている同社の職業体験教室「建築デザイナーになりたい!」は今回で7回目の開催。これまでも埼玉県内で行われているジュニアサッカー大会やミニバスケットボール大会への支援など社会貢献活動に取り組んでいる。
丸ビル20周年記念イベント 高橋ユウさん「衝撃的」 フレンチトーストに感嘆の声
左から川端氏、高橋さん、黒沼さん(丸ビル1階マルキューブ内特設ステージで)=PR会社提供
三菱地所と三菱地所プロパティマネジメントは9月6日、「丸ビル20周年・新丸ビル15周年アニバーサリーイヤーオープニングセレモニー」を開催。モデル・タレントの高橋ユウさんを特別ゲストにトークショー、「丸ビル20th×レゴⓇみんなで作る街づくり」お披露目、「THE FRONT ROOM」おすすめメニュー試食、フォトセッションなどを行った。
最初に登壇した三菱地所プロパティマネジメント代表取締役・川端良三氏は「竣工してから20年。人間でいえば二十歳の成人式。あっという間で感無量。コロナ禍で働き方も買い物の価値観も多様化した。リニューアルでは1階の『THE FRONT ROOM』とコラボしたほか、これまで丸の内にはなかった新しいショップも展開し、将来のニーズを先取りした魅力を発信していく」と挨拶した。
高橋さんは、100分の1の丸ビルのジオラマとわが国唯一のプロが作製したレゴには「全部レゴ? 鳥肌が止まらない」と驚き、「THE FRONT ROOM」から提供された試食「ホイップバターとメープルシロップのフレンチトースト」に「ウワァー、ボリュームが凄い!分厚くて食べる前から柔らかいの分かる。メープルの甘い香りが漂ってくる」と歓声を上げ、食べながら何度も目を閉じ「バターが口の中で何段階にも広がってくる。パンもフワフワ、これは衝撃ですね」と感嘆の声をあげた。
「THE FRONT ROOM」は同日オープンしたHUGEが創る初のカフェ業態。「Timeless & Borderless」をコンセプトに、気軽に利用できるサードプレイスとして様々な飲食を提供する。
イベントでは、高橋さんの姉・高橋メアリージュンさんも出席する予定だったが、体調不良のため欠席した。
高橋ユウさんは1991年1月19日生まれ。滋賀県出身。モデル・タレント。「Cawaii!」の専属モデルを経て、「仮面ライダーキバ」、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」シリーズなどで女優としても活躍。2018年にK-1ファイターのト部弘嵩選手と結婚。2020年に第一子を出産。現在は、バラエティー番組に多数出演している。
高橋ユウさん(PR会社提供)
PR会社提供
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この種のトークイベントの取材は難しい。主催者の企図するもの、伝えたいことは何なのかを把握していないといけないし、演出者(登壇者)の来歴も把握しておく必要があるし、そして何より読者になにを伝えるべきかを分かっていないと取材にならない。
その点、今回の記者は失格だった。丸ビル=モデル・タレント、お笑い芸人が結びつかず、演出者についてもまったく予備知識(本来は事前にきちんと調べるべき※)がなかったからだ。
主役を務める高橋ユウさんも、MCの吉本興業所属のお笑い芸人(ご本人がそう話した)・くろぬままことさんも初めて聞く名前で、まったく存じ上げないので、お二人の会話からくろぬまさんがレゴの世界ではよく知られた方で、高橋さんは丸ビルをよく利用し、話し出すと関西出身であることがすぐ分かり、ご主人は引退された格闘家で、二人の間には2歳の男の子と、お腹には12月に出産予定の男の子がいること、子どもには自分が好きなピアノや夫が空手少年だったので空手をやらせたいとか、何事にも前向きな心の持ち主に育ってほしいとか、自分はすぐ泣き、姉からは「感情表現が上手」と言われ、姉の弱音を吐かない強さにはかなわないこととか、いまは妊娠安定期に入っておりパワフルであるとか…これらの情報にいったいどれだけの価値があるのかさっぱりわからなかった。
おぼろげながら分かったのは、「丸ビル」の35階のレストランで一人2~3万円の食事をしたり、一足10万円の靴を買ったり、数十万円のアクセサリーを平気で購入したりする富裕層だけではなく、気軽に立ち寄って食事などを楽しめる街の拠点として利用してもらおうという三菱地所の深謀遠慮、強かな計算が働いているに違いないということだった。
ソクラテスの「無知は罪なり」なのか、ジョージ・オーウェルの「無知は力なり」なのか。
※記者の鏡というべき扇谷正造は人を取材するとき、大学教授であれば論文を、小説家は作品を渉猟し、分からないときはその人の住む近所の魚屋、八百屋などで聞き込みをし、どのような生活をしているかを知るためにごみ箱まで漁ったことがあるという。そこまでやるから、取材対象者は自分をさらけ出してしゃべるのだという。
川端氏
以上、記者のデジカメで写す
フレンチトースト、サラダのチーズは絶品 丸ビル「THE FRONT ROOM」試食会(2022/8/29)
https://www.rbayakyu.jp/rbay-kodawari/item/6649-the-front-room
新土地活用サービス「ALZO(アルゾ)」相談件数700件超 三井不リアルティ
三井不動産リアルティは8月30日、土地所有者と事業用土地を探す事業者をつなぐ土地活用サービス「ALZO(アルゾ)」を昨年8月から開始してから1年間で相談件数は700件超、100社以上の事業者と提携していると発表した。
土地所有者の土地活用状況は、活用中が56%、未活用が44%、相談案件の土地面積は1,000坪以上が9%、100~1,000坪が59%となっている。
2022年8月現在の提携事業者は飲食、物販、コンビニエンスストア、シェア農園、シェアサイクル、カーディーラー、キッチンカー、スーパーマーケット、ガソリンスタンド、コインランドリー、コンテナ・ストレージ、スポーツ施設など。
「ALZO」は、「問合せ件数も増加しており、ニーズの強さを感じています」とコメント。土地所有者からは、「とくに都心部では近い将来のご売却を見据えた短期的な活用提案の依頼や既存テナント退去に伴う依頼、郊外ではアパートやマンション、駐車場に替わる安定的な活用提案の依頼という傾向が見られ」、提携事業者からは「駅前ビルへのテナント出店から住宅地に近いロードサイドで単独店舗出店への切り替え、特に飲食系事業者様においては、テイクアウト・デリバリー専門店など新タイプの店舗出店などが急拡大している」としている。
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新サービスは、本業のリパーク事業から派生したもので、駐車場利用には不向きな土地の利活用を提案するものだろうと思うが、相談件数と土地面積の大きさ、提携事業者の多岐にわたる業種とその数の多いのに驚いた。
相談件数775件のうち土地面積1,000坪以上が9%というから件数は70件もある。「100~1,000坪」は幅が大きくてどのような土地か分からないが、最適解を提案できたら凄いビジネスに発展するのではないか。「ALZO」は何の略か。
そこで、同社に一つ提案だ。三井不動産も同業他社も公募設置管理制度(Park-PFI制度)に積極的に取り組んでいるが、都市部の都市公園は規制が強く、利用されていない公園が目立つ。利活用は喫緊の課題だとおもう。ここに切り込んでほしい。
ショック! 木質空間なし 現し論議に決着 RCと木造混構造の特養完成 三井ホーム
「特別養護老人ホーム新田楽生苑」
三井ホームは8月30日、枠組壁工法では国内最大級の木造5階建て「特別養護老人ホーム新田楽生苑(しんでんらくせいえん)」が竣工したのに伴う記者見学会を行った。
物件は、足立区新田1丁目に位置する敷地面積約4,649㎡、5階建て延べ床面積約7,826㎡。建築主は社会福祉法人新生福祉会。設計監理はメドックス。施工は三井ホーム。構造は1階:RC 造/2~5階:木造(枠組壁工法)。用途は特別養護老人ホーム150室、短期入所生活介護施設(ショートステイ)20室、認知症対応型デイサービスセンター、居宅介護支援事務所など。工期は2021年3月着工~2022年8月完成。開所予定は11月。
施設は、足立区が所有する中学校跡地に区が公募を行い、特別養護老人ホーム・ケアハウスなどを運営する社会福祉法人新生福祉会(広島県尾道市)が選定され、同社が施工を担当することになったもの。
建設地は、隅田川と荒川に挟まれた中洲に立地。現行の建築基準法では5階建ての建物をすべて木造で建築する場合、1階を2時間耐火構造とすることが求められるため、経済合理性とプランニングの特性を踏まえ、1 階をRC造、2~5階は木造1時間耐火構造で設計。合わせて防水対策として1階の階高を6m確保している。
木材使用量は2,716立方メートル(うち国産材は22%)。木造建築にすることで試算では炭素貯蔵量(CO2換算)は1,774t-CO2、スギの木(35年生)換算で7,116 本に相当する。
設備面では新クックチル式の厨房を採用するなど、スタッフの働きやすさや作業効率にも配慮している。新クックチル式とは、通常の方法で調理した料理を急速冷却し、細菌の繁殖しにくいチルド(0~3°Cの低温)状態で保存し、必要時に再加熱して提供するシステム。
外観
入口
施工中の現場
施工中の現場
◇ ◆ ◇
同社施設事業本部コンサルティング第二営業部長・十文字将敏氏は冒頭のあいさつで、「地球環境、脱炭素に寄与するよう木材をふんだんに使っているのがポイント。延べ床面積約7,800㎡に対し木材使用量は2,716立方メートル。国立競技場は延床192,000㎡に対し木材使用量約2,000立方メートル。施設面積は25分の1だが、木材使用量は国立競技場より多い。木質感は全くないが、現しで(木材を)使うより実を取る観点で施工した」と語った。
引き続いて、設計監理を担当したメドックス取締役・佐藤憲一氏も、「木質空間は全くない。収益は限られており、経済合理性を考えると、木質感(の論議)は終わった」と言い切った。
両氏から2度も3度も実も蓋もない「木質感は全くない」と言われて、記者は相当のショックを受けた。昨年12月、三井ホーム技術研究所研究開発グループマネージャー・小松弘昭氏が「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し。木の性能、コストなど科学的・合理的なことのほうが大事」と昂然と言い放ったのを思い出した。
特養の入札は、質の確保は当然ながら、価格が最優先されるはずで、事業環境が厳しいのは、宿泊体験をしたことがある記者もよく分かる。痴ほう症の入居者から同じことを何度も聞かされても無視するわけにはいかないし、部屋は個室をあてがわれたが、夜中にカラスのような声を聞かされ、一睡もできなかった。解放された翌日はうちに帰って半日寝込んだ。オンとオフの切り替えができない若い職員が過労、ストレスで精神を病むケースも他の業種より多いのもうなずける。賃金だって20~30万円台で底這いだ。〝現しにしろ〟というのは、部外者のたわごとかもしれない。
しかし、このまま引き下がるわけにもいかず、質疑応答で「御社だって木造は風邪をひかない、喧嘩をしない、仕事の能率が上がる、ストレスが軽減する…などを実証してきたではないか」と食い下がった。これに対し、佐藤氏だったか「木質感に対するニーズはある」との回答にとどまった。
もう黙るしかない。小松さん、十文字さん、佐藤さん。丹下健三は「美しいもののみが機能的」と言ったではないか。三井ホームが吉永小百合さんをCMに起用したのは、この言葉を具現化するものではなかったのか。
あれから30年。サユリトの小生は今でも一番美しいのは吉永さんだと信じて疑わない。住宅展示場のモデルハウスで一番美しいのは三井ホームだ。
…ここまで書くと、小生はどこかのカルト信者のようで、「外貌の呪縛」に取り憑かれている馬鹿そのものだと皆さんは嘲笑するのだろうが、かなり本質的なことを言っているつもりだ。「経済合理性」が全てを支配していることを今回の取材で学んだ。この悪魔のささやきに等しい「経済合理性」なる文言を前に、反旗を翻すことができる人は果たしているか。
共同生活室
多目的ホール
デイルーム&食堂
外貌の呪縛を解き放つか「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏(2021/12/09)
積水ハウス・千葉大健康増進につながる空気環境研究第3段階へ実験棟完成(2017/11/10)
三井ホームわが国初の5階建て2×4工法による特養が完成(2016/5/25)
内装木質化は熟睡長く、知的労働も向上慶大・伊香賀教授が実証(2016/3/22)
三井ホームわが国初の木造(2×4工法)による4階建て耐火建築物(2015/2/28)
フレンチトースト、サラダのチーズは絶品 丸ビル「THE FRONT ROOM」試食会
「THE FRONT ROOM」
HUGEと三菱地所は8月29日、初のカフェ業態として「THE FRONT ROOM」を丸ビル1階9月6日(火)にオープンするのに先駆け、メディア向け内覧会・試食会を開催した。
「THE FRONT ROOM」は、「レストランを得意とするHUGEだからこそ提供できるホンモノ志向のカフェ」というのが謳い文句で、モーニングにはコーヒーと焼きたてのパンを、ランチにはフレッシュなサラダとパスタ、ディナーにはワインやこだわりの一皿を提供する。
「Timeless & Borderless」をコンセプトにシェフ、バーテンダー、サービスマンのプロフェッショナルが、だれもが1日中どんなシーンでもゆったり寛ぐことができるサードプレイスを目指す。
店舗は、丸ビル1F、営業時間:月-土8:00-22:00(日・祝9:00-21:00)、席数: 123席(店内83席/テラス40席)、平均予算:Drink/600円~Food/1,200円~。Instagram:https://www.instagram.com/thefrontroom_marunouchi/
三菱地所の丸ビルは今年開業20周年のアニバーサリーイヤーを迎えており、同カフェがオープンする9月6日(火)を皮切りに、2023年春にかけて段階的なリニューアルを実施するのに合わせ、「Your Palette ―明日を彩る、わたしを選ぼう。―」をコンセプトに様々なイベントや企画も展開していく。(特設サイト:https://marunouchi-palette.com/)
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記者は東京駅圏で取材があると、この前まで営業していた丸ビルの1階のカフェ・レストランや三菱一号館のワインバーをよく利用した。白ワインは1杯600円~というリーズナブルな値段でおいしい。
今回リニューアルした「THE FRONT ROOM」の店舗デザインは従前のそれとは全く異なる。提供された食事はとてもおいしかった。〝売り〟の一つである「SHIBUichi BAKERY(シブイチ ベーカリー)」のパンを用いたフレンチトーストは、とても柔らかいのが特徴。小生は一時期、子どもに食べさせるためフレンチトーストに凝ったことがある。フランスパンの食感も捨てがたいが、このように口の中でとろけるのもまたいい。喫茶室・ルノワールのフレンチトーストと双璧か。
「カラブリア産唐辛子と完熟トマトのアラビアータ」も美味。パスタは固めのショートパスタで、濃厚なトマトの風味がよく引き出されている。癖になりそうだ。(小生はトマトを人の3倍は食べる。糖尿の数値が悪化しないのはトマトのお陰か)
「JAMON SERRANO and FRESH FIG SALAD」と名付けられた野菜サラダは、ブルーチーズに似たチーズが抜群。ワインにとてもあう。何とかクロックムッシュというサンドイッチはよく分からなかった。
バスク風チーズケーキとチョコレート味のガトーショコラも供されたのだが、小生はケーキ類をほとんど食べないので、おいしいかまずいか全然わからなかった。残すのは失礼だと思い、スプーンで食べたのだが、隣の女性がナイフとフォークで食べていたのでとても恥ずかしく、冷や汗が出た。その女性に感想を聞こうと声を掛けた。それまではマスクをしていたのでよく分からなかったのだが、とても可愛い女性は「固めのプリンみたいで、味が濃い目」と話した。
しかし、小生もあのプラスチックの底の突起物を折ると、ゆらゆらと揺れながら崩れることなく皿に収まるプリンは知っているが、味は今回のケーキとは全然違うと思う。
コーヒーは、HUGEが運営するみなとみらいのQUAYS pacific grill(キーズ パシフィック グリル)内に併設する焙煎所、HAMMERHEAD ROASTERY(ハンマーヘッド・ロースタリー)のコーヒーをシングルビーンズで提供する。コーヒー、酒、たばこは嗜好性が強く、小生は毎朝自分で淹れるコーヒーが一番おいしいと思う。
この日供された食事、ケーキ、コーヒーはメディア向けなのでいくらかは分からないが、オープンする9月6日からは食事は1,000円~とか。グラスワインは650円~750円。
この日供された料理とケーキ
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2021年度のわが国のJR駅別乗降客がもっとも多いのは新宿駅(1日平均約52万人)で、2位池袋駅(同41万人)、3位横浜駅(同30万人)となっており、東京駅は4位の約28万人だ。5位は渋谷駅の約25万人。
前年比伸び率は渋谷駅がトップで11.9%(東京駅は4.3%)なので、このまま推移すれば東京駅は渋谷駅に抜かれそうだが、問題は乗降客の数ではない。そこにどのような人がどれだけ滞在し、消費するかだ。そのようなランキングはないのか。
谷崎潤一郎「陰翳礼讃」の世界 LED照明で表現 東京建物BAG-Brillia Art Gallery-で
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
東京建物は8月26日(金)~9月25日(日)、同社京橋ビル1 階「BAG-Brillia Art Gallery-(バッグ ブリリア アート ギャラリー)」で展覧会「LIVE+LIGHT In praise of Shadows『陰翳礼讃』現代の光技術と』」を開催する。
建築関係者にとってはバイブルとされる文豪谷崎潤一郎のエッセイ「陰翳礼讃」の厠、床の間などの家屋、照明、紙、食べ物、能、化粧、女性美など多岐にわたって論じられている文章の中から印象的な6点をテーマに、現代のLED技術を駆使して表現・展示するもの。
展示スペース「+1」では、「陰翳礼讃」から6つの文章を引用し、日本の伝統素材や工芸品を光と闇の世界で演出。展示スペース「+2」では、LIGHT & DISHESがセレクトした照明とオリジナル照明の販売、及び照明関連メーカーとともに、暮らしを豊かにするツールの展示や照明に関する情報を発信している。
9月23日には企画制作した谷田宏江氏(LIGHT & DISHES 代表)と演出ディレクション遠藤豊氏(ルフトツーク代表)のトークディスカッションをYouTubeでオンライン配信する。
公式サイト:https://www.brillia-art.com/bag/
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
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谷崎自身、相当の助平爺だったようで、短篇小説「富美子の足」などはもう笑うしかない足指フェチの作品だ(映画化もされたようだが小生は知らない)。展覧会でも谷崎のそうした変態趣味や世界観が展示されるのではないかと期待して出かけたのだが、残念ながらそのような展示はなかった。
不思議に思ったのは「陰翳礼讃」の英語表記だった。「praise of Shadows」は直訳したらそうなるのだろうが、青空文庫で確認したところ、谷崎の作品に登場する「陰翳」は22か所、「光」は69か所、「闇」は46か所でも分かるように、単なるものの「Shadows」を論じているわけではない。言葉として「日本」が56回、「西洋」が34回、「愚痴」が6回それぞれ登場するように、西洋化する日本古来の文化を惜しむ文明論を披歴したものだし、日本人のものの見方・考え方を論じたものだ。本文中には「礼讃」は一語もでてこない。
私事だが、小さいころ、真っ暗な部屋に蚊帳を吊るし、その中に蛍を放って楽しんだことがある。しんと静まり返った朝方、雨戸の節穴から光が差し込み、障子に逆さ絵が描き出されることを皆さんはご存じか。
「praise of Shadows」は英語圏の人にはどのように響くのだろうか。マフィアの世界を連想するのだろうか。
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
photo by Takashi Kurokawa, courtesy LUFTZUG
大和地所レジ オープンエアリビング・バルコニー キッズデザイン賞受賞
「オープンエアリビング」
大和地所レジデンスは8月24日、同社の「オープンエアリビング」と「オープンエアリビングバルコニー」がキッズデザイン協議会の第16回キッズデザイン賞」を受賞したと発表した。
「オープンエアリビング」は1999年から導入し、2022年8月供給現在で193物件1,500戸超を供給しており、同じように実用新案登録済みの「オープンエアリビングバルコニー」は2006年から78物件3,100戸超の実績がある。双方とも実用新案登録済みだ。
「オープンエアリビングバルコニー」
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結構なことだ。この「オープンエアリビング」と「オープンエアリビングバルコニー」はたくさん取材している。
いまでも思い出すのは、「オープンエアリビング」を初めて見たときだ。飛びあがらんばかりの衝撃を受けた(物件は確か南武線の中野島)。当時(今でもそうだが)、マンションの1階住戸は日照や通風、見通しなどが悪いことから売れ行きも悪く、その分だけ価格を下げざるのが一般的だが、同社は1階住戸に「オープンエアリビング」を採用し、しかも価格を中層階並みの価格に設定していた。その企画がヒットした。
「オープンエアリビング」と「オープンエアリビングバルコニー」は、マンションの値付け・商品企画に革命をもたらしたと今でも思っている。
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この日(8月24日)午後1時過ぎ、同社から受賞のプレス・リリースが届いた。その後、同協議会をはじめ旭化成ホームズの「子育て家族の安心と健康をサポートする『スマートクローク・ゲートウェイ』」、ケイアイスター不動産の「みんなの樹と軒遊びのある暮らし」、積水ハウスの「子育て家族の幸せな大空間『ファミリースイート』」・「PLATFORM HOUSE touch」・「みんなの家!未来の家! 積水ハウスの住育 家づくりから学ぶプログラミング」・「WALL BOX」・「エルミタージュクール」・「アートとともだち」・「”自由な子ども達の居場所”こども発達支援センターひゅーるぽん」(同社は合計7作品)などの受賞リリースが送られてきた。(申し訳ないがすべては紹介しきれない)
同協議会のリリースによると、今回の受賞作品は214点で、2007年からの累計応募数は6,168点、受賞数は3,653点。各大臣賞などの優秀作品は9月21日(水)発表される予定だ。
また、今回の応募作品について「コロナ禍では実測の難しいとされる調査研究の応募数が減少したものの、地域社会との交流や自然や人との繋がりを重視した建築関連の作品の応募の増加傾向がみられました。さらに今回もSDGsを意識し、子どもの創造性や自主性をサポートする製品や空間・サービスの開発・取組なども多く見受けられました」とある。
記者もマンションや戸建ての取材を通じ、人や地域と緩やかにつながり、景観や生態系に配慮した商品企画が評価されていることを強く感じている。全作品のなかでもっとも多いのはポラスグループの13作品だが、キッズデザイン賞受賞は同社のマンションや分譲戸建てが好調なのをで裏付けている。
受賞作214点リストを見たが、小生が気に入ったのはオーパス/ブルーパドル の「前・後・裏・表、どこからでも着れる(ママ=ら抜き)服『ぜんぶおもて』」だ。これはいい。小さいころは靴を左右逆さまに、シャツなどのボタンの掛け違い、裏表に着るのは日常茶飯で、ハンガー付きだったこともある。大人になってもパンツを逆さに穿いて困ったことも、酔っぱらって隣家の玄関ドアを叩いたことも、男を女に間違えたこともある(これはわが人生の最大の蹉跌)。今でもパジャマ、シャツなどを裏表で着ることもあるが、生き方として裏も表もないのには自信がある。
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一つ提案だ。以前からずっと思っているのだが、デザインアワードを統一してはどうかということだ。
記者は、「キッズ」があるのだから「シニア」「エルダー」「オールド」があってもいいし、一番いいのは「ユニバーサルデザイン」だと思っている。「グッドデザイン賞」「IAUD国際デザイン賞」「ウッドデザイン賞」など全て「ユニバーサルデザイン賞」に統合し、それぞれ分野ごとに賞を設けたらどうかと思う。あらゆる商品の「デザイン」は「ソリューション」だと考えているからだ。冒頭に紹介したオープンエアリビング・バルコニーは子どもだけを対象にした商品企画ではない。万人向きだ。たくさんアワードがあると、その分だけ権威・価値が薄れるのではないかと心配だ。
また、審査に当たっては学者・先生だけでなく、一般の消費者が投票に参加できるようなシステムも考えていい。審査委員の方だって、作品を評価するのは基本的には書類のみのはずだ。作品そのものを見ないで評価するのは誤った評価をする危険性もはらんでいる。