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「3Days DESIGN CHAMPIONSHIP2025」GRAND FINAL(決勝)優勝した「黒衣」チーム

 オープンハウス・ディベロップメントが10月21日行った「3Days DESIGN CHAMPIONSHIP2025」GRAND FINAL(決勝)を取材した。〝現場取材〟の声が掛ると「パブロフの犬」そのものになる記者は、何の予備知識も持たず会場に駆け付けたのだが、普通の設計コンペとは天と地ほどの差があるのに仰天し、そのまま踵を返そうとも思ったのだが、お世話になっている同社女性広報の笑顔には勝てず、ほぼ半日を費やし、一部始終を見届けた。オープンハウスのエネルギーの凄さを体験した。

 どのようなイベントかご存じない方も多いだろうから、概要から紹介する。このイベントは11年前から実施しているもので、今回が12回目。四年制大学、大学院、専門学校などの建築、住環境、土木系、デザイン系の学科に所属する2027年3月に卒業見込みのインターンシップ学生が対象。設計コンペで優勝したチームの作品を同社の分譲戸建てに採用するというのが最大の特徴。

 同社人材開発部係長・吉野愛理氏は「大学で行われている授業は何の制約も設けられないものが多い。当社のイベントはそれらと異なり、都市計画法や建築基準法に適合するのはもちろん、不特定多数向けの分譲戸建てとして実際に建築するというもので、この種のコンペは全国的にも珍しく、かなり知られています。昨年の作品は2日間で完売しました」と話した。毎年約1,000人の応募があり、11回まで累計参加者は1万人を突破しているという。

 今年は7月28日から計7回の予選(各3日間)「3Daysインターンシップ」(予選)で勝ち抜いた5チームが決勝戦に出場。①デザイン性②間取り③施工実現性④プレゼンテーション⑤模型の5項目、各5点25点満点で、同社の建築部門のスタッフ約100人(一・二級建築士)が評点し、最高得点を得たチームが優勝。副賞として50万円が贈呈される。

 決勝に勝ち上がったのは「YOHAKU」「青のすみか」「黒衣(くろご)」「檸檬」「Crafters」の5チームで、審査の結果、「黒衣(くろご)」が優勝した。受賞者は「富山から新幹線を利用して駆けつけました。模型は上野のカラオケ店で撮影した」「みんなそれぞれ離れており、分担して最高の作品に仕上げることができた」「住む人のこと考えて喜んでもらえる作品を作った」「今日は私の誕生日。信じられない。とても嬉しい」「私はパースと動画を担当した。チームに支えられた。感謝したい」と喜びを爆発させた。

 審査員を代表して同社・佐藤部長は「みんな素晴らしい作品ばかりだった。最後の3作品には残れなかったが、『Crafters』のプレゼンはおじさん審査員に受けた。私はこれまで、学生さんに専門性を深く掘り下げ努力しないと実社会では通用しないと話してきたが、今回の各作品はそれに沿うもの」と講評した。

 優勝作品は、同社がブラッシュアップし、練馬区・光が丘の敷地40坪の分譲戸建てとして分譲される。

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◇        ◆     ◇

 写真を見ていただきたい。会場に当てられていたのは、同社ショールームも設けられている渋谷南東急ビル。みんな異様な格好をしていた。馬鹿な記者でも渋谷=迷惑ハロウィンくらいは知っている。そのまま立ち去ろうと思った。馬鹿にするなと。

 だが、しかし、5つの作品の間取りや模型をざっと見たが、設計条件である細長い敷地条件に果敢に挑戦していた。みんな外と内をつなぐ土間や吹抜け、ロフト、屋上テラス、2階リビングなどを提案していた。

 6分間のプレゼンのあと、同社の部長クラスと思われる特別審査員からの鋭い質問にひるむことなく答えていたのも印象に残った。最高に面白かったのは、審査員がデザインを〝寒々しい〟と批判したのか、女性の学生さんが「寒々しいと言ったのは誰ですか」とやり返したことだ(記者はこのプレゼンに満点を投じる)。

 記者は、「黒衣」はいまひとつよく分からなかったが(耳が遠く、間取りもほとんど判別できなかった)、住宅全体を歌舞伎の舞台に見立て、それぞれの居住空間に役割を振り当てた発想力が素晴らしいと思った。

 作品は、来年にも分譲される。ぜひとも取材を申し込みレポートしたい。相場からしたら価格は1億円くらいになるかもしれない。

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ポラス 学生コンペ 実物件化モデルハウスを公開 ミニ開発の難点を解消(2017/8/12)

次代へ道を開くか「広がる通りみち」第8回「三井住空間デザイン賞」(2014/10/23)

ポラス 中央グリーン開発 「子育てママの理想の家をつくろう!」コンペ(2013/9/3)

ポラス「子育てママの理想の家」コンペ大会(2013/4/26)

三井不レジ・大栄不 免震&長期優良「パークホームズLaLa新三郷」(2012/6/12)

不思議な空間を見た 三井不動産レジデンシャル「第6回三井住空間デザイン受賞住戸」(2011/2/9)

 

 


 

 

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MID POINT×BIZcomfort豊洲」 

コスモスイニシアは1020日、WOOCMigakunとの協業拠点のシェアオフィス「MID POINT×BIZcomfort豊洲」を開業し、同日、メディアにも施設を公開した。働く場所としての利便性のほか、地域とつながる場としての新たな価値を提供するニューノーマル時代の未来型シェアオフィスを目指す。

施設は、東京メトロ有楽町線豊洲駅徒歩3分、江東区豊洲5丁目の豊洲プライムスクエア10Fに位置する約715㎡。58席のコワーキングスペース「BIZcomfort」(約253㎡)と74室のレンタルオフィス「MID POINT」(約461㎡)で構成。コワーキングの利用料金は24時間365日利用可の全日プランが19,800/月、土日祝プランが7,700円。レンタルオフィスは53,900円~/月(共益費込・別途総額の5%の保証料あり)。設備はWi-Fi、フリードリンク、無料プリンター、ロッカー、ポスト、登記可、会議室、WEB会議用個室など。

テクノロジー感のあるオフィスデザインを追及するため新素材「バンドクサルデコール建材」や、SDGsの達成に向けた取り組みの一環として、廃漁具をリサイクルして生まれた低炭素タイルを採用している。

WOOCが運営する「BIZcomfort」は、全国174拠点(OPEN予定含む)を展開するコワーキングスペース・レンタルオフィス。「Migakun」は、様々な空間の上流から下流までの施設運営サービスを提供し、管理運営の効率化を支援している。

MID POINT」は、1名から利用可能なシェアオフィスで、2018年にオープンした第1号拠点「MID POINT目黒不動前」を皮切りに、東京都、神奈川県で9店舗を展開。24時間・365日利用可能、住所利用・法人登記、ポスト利用が可能な個室プラン・ブースプランのほか、コワーキングプランを用意し、コミュニティマネージャーが駐在している。

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 記者は、「MID POINT」第一弾の「目黒不動前」をはじめ結構見学・取材している。記事を参照していただきたい。

 今回の「豊洲」は、「BIZcomfort」のデザインが素晴らしい。あちこちにフェイクの観葉植物が配置されていたのは如何と思うが(関係者の皆さん、野村不動産の「BLUE FRONT SHIBAURA」を参考にしていただきたい)、黒・グレー・青を基調にした内装は、作業・思考に集中するのに最適だと思う。

 もう一つ、施設を案内して頂いたWOOC開発事業部開発チーム課長・井貫拓真氏が「他の大手施設と比較して、利用料金は圧倒的に安い」と強調したことだ。

 確かにそうだ。124時間、365日利用すると仮定した場合、1日の利用料金は約651円だ。酒が飲めないのは難点だが(タバコもダメか)、日高屋でビール1杯とアジフライか半ラーメンの値段と、主にタバコを吸うために123回利用するドトールとほぼ同額だ。13時間利用すれば1回当たり2,920円となり、時間給の3分の1のコストだ。

 しかし、この種のサービスの難点・課題は一つある。記者は1990年ころにワープロを覚え、キーボードを叩いて記事を書いてきた。今でもそうだ。パソコンのキーボードを叩く音がマナー違反になり、叩き出されるのが分かっているので利用しない。消音ボードをどこか開発しないか。

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豊洲二・三丁目の最後にして最高の再開発PJ IHI三菱地所「豊洲セイルパークビル」(2025/7/23

「唯一無二」新たな街づくりの嚆矢へ 野村不他「BLUE FRONT SHIBAURA」開業(2025/9/1

〝めっちゃいい〟デザイン コスモスイニシア レンタルオフィス「MID POINT川崎」(2021/11/11

レベル高い 天井高は3.5 コスモスイニシア レンタルオフィス第三弾「武蔵小杉」(2020/7/21

住宅立地に特化 コスモスイニシア レンタルオフィス第一弾「目黒不動前」オープン(2018/11/17

 

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黄色い花がオミナエシ(女郎花)、茶色の花がワレモコウ(吾亦紅)=目黒天空庭園で

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オミナエシ(左)とワレモコウ(photoACから) 

秋の七草-オミナエシ(女郎花)、ススキ(薄)、キキョウ(桔梗)、ナデシコ(撫子)、フジバカマ(藤袴)、クズ(葛)、ハギ(萩)-を皆さんはご存じか(覚えやすいのはオスキナフクハ)。特にオミナエシは希少種で、花屋にはまず売っていない。小さい頃、あちこちに咲いていたような気がするが、すっかり記憶から抜けている。だからこそ、ずっと気になっていた。万葉集にも「手に取れば袖さへにほふ女郎花この白露に散らまく惜しも」(詠み人知らず)と詠まれているように、どんな怪しい花だろうと。

そのオミナエシを先月929日、グリーンインフラ官民プラットホームが主催した「グリーンインフラ優良事例視察会」会場の首都高速道路大橋ジャンクション「目黒天空庭園」で観た。

庭園でたくさん咲いていたのだが、名前を知らないので、そばにいた若い女性の方に聞いたら「オミナエシ」と、一緒に咲いていた草花は「ワレモコウ(吾亦紅)」だと教えてくれた(すぎもとまさと氏のヒット曲・吾亦紅はよく知っているが、どんな花なのかは知らなかった)。

彼女にお礼の意味を込めて「オミナエシの花言葉は美人です」と話したら、彼女は恥ずかしそうに笑った。決して怪しい花ではない。可憐な黄色い花だ。

塚本正司氏の「主張する植物」(八坂書房)の一部と、写真で見学したグリーンインフラ国土交通大臣賞を受賞した「小田急線上部利用施設等」と「大橋の里の杜&目黒天空庭園」を以下に紹介する。塚本氏はその著で次のように我々に問いかけている。

「自然にはそれ自体に何かが備わっている。そこから切り取ったり、そこへ付け加えたり、改造したりして生じるものではなくてである…それは一度破壊されれば人為的に再び同じ姿に構築できないものであり、何ものにも代えがたい。そこから切り取り利用することによって生じる価値とは違う根源的な価値がある。だから自然に接したり浸ったりすると、あわただしく争うような気持が平穏で静かな心地になる。すばらしい景観や月、日の移ろいに遭遇すると、時に荘厳な気分となる。自然の中のさまざまな生命を発見すると、書に学んで応用する知識とは違う体験や官能としての知恵となる。多様な生命活動や不思議な生命力をみて、時に尊厳さを感じる」

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ミカン

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下北沢駅前の舗道ブロック(クラウドファンディングで整備。14万円×1,200枚=4,800万円など全体で6,500万円集まったそうだ)

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「シモキタエキウエ」

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下北沢駅歩道空間(土地は区と小田急電鉄が所有)

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下北線路街空き地

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区が推進している雨庭

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ボランティア活動拠点「relord

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おおはし里の杜

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おおはし里の杜(高木は風のせいで高くは育たない)

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首都高速大橋ジャンクション目黒天空庭園(面積は約7,000㎡。高木は691本、中木は1,201本)の田んぼ

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メダカも泳いでいた

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せせらぎも整備されている

「雨にわ」の普及・実証事業 グリーンインフラ大賞「国土交通大臣賞」受賞(2025/1/29) 

日・韓・台・泰・越南…多国籍飲食街 黒白迫り京王カラーもかすむ「ミカン下北」(2022/4/9

がんばれ京王!10月1日開業 小田急電鉄「BONUS TRACK」に負けるな!(2020/10/9

小田急電鉄〝下北沢の新たな名所〟SOHO&店舗「BONUS TRACK」4月1日開業(2020/3/30

東急不動産「BRANZ GREEN PROJECT」ツールがJPM金賞(2010/11/30

 

 

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 野村不動産(代表幹事)、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、大和ハウス、総合地所、東方地所の6社は10月15日、「東京大学西千葉キャンパス跡地利用事業」プロジェクトが始動したと発表した。

 同プロジェクトは、JR総武線西千葉駅から徒歩3分の国立大学法人東京大学が所有していた約75,000㎡の西千葉キャンパス跡地の開発事業者として選定され開発するもので、分譲マンション(831戸)、戸建て(57戸)、サービス付き高齢者向け住宅(110室)、学生マンション(312室)、商業・介護・複合施設(各3.000㎡)と、隣接する千葉大学・千葉市と協議し、大学敷地・公園敷地にまたがる「(仮称)西千葉キャンパスパーク(以下「キャンパスパーク」)を整備する。

 開発に当たっては、①アーキテクトコードとして、周辺地域の色彩や外構計画の一部を取り入れた5つのデザイン指針やカラーパレットを設定し、各街区の建築デザインに統一感を持たせ、一体的なまちづくりを目指す②ランドスケープコードとして、樹種や樹高、外構照明などにルールを設定し、散歩道やたまり空間の設置によるウォーカブルなまちの実現、浸透性舗装やレインガーデンなどグリーンインフラの採用による環境負荷軽減に取り組む③ウェルネスコードとして、「学ぶ」「動く」「育む」「憩う」「繋ぐ」の5つのサブコードで構成する

 また、千葉大学・千葉市を交えた公民学連携の取り組みとして、広さ約12,000㎡の「(仮称)西千葉キャンパスパーク」を整備する。

◇      ◆     ◇

 この6社の社長は年齢が近いのも特徴の一つ。野村不動産・松尾大作松社長は1964年10月18日生まれ、三井不動産レジデンシャル・嘉村徹社長は1964年10月7日生まれ、三菱地所レジデンス・宮島正治社長は1964年5月26日生まれの同級生で、大和ハウス工業・大友浩嗣社長は1959年8月31日生まれ。総合誌所・梅津英司社長と東方地所・麻生博章社長は不明だが、梅津氏は1967年生まれ、麻生氏は1964年生まれと思われる(長谷工コーポレーション・熊野聡社長は1961年9月7日生まれ)。ちなみに千葉銀行・米本努社長は1964年7月9日生まれ、長谷工コーポレーション・熊野聡社長は1961年9月7日生まれ。

 誰もバブルを経験しておらず、若いときはバブル処理に追われていたはずだ。そして今、市場はかつて誰も経験したことがないバブル経済を上回りつつある。順風満帆ではあるが、疑心暗鬼にさいなまれ、みんな頭が痛いのではないか。

 年齢が近ければまとまるのは速いだろうが、ライバル心も大きいはずで、出し抜いてやろうといつも思っているはずだ。だが、しかし、手を切ったら修復は難しいので、当面は〝おてて繋いで〟進むはずだ。大規模プロジェクトでどことどこが組むかを見るのも楽しい。

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【キャンパスパークのイメージパース】

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「東京ミッドタウン日比谷」6階パークビューガーデン

 三井不動産は9月29日、「東京ミッドタウンの生物多様性への取り組み」記者説明会を開催し、同社サステナビリティ推進本部サステナビリティ推進部・竹澤正浩氏は、これまでの同社の環境への取り組みを説明し、「私たちは街づくりを通じて、豊かな『環境』のネットワークを日本橋はもちろん、東京、日本全国へ広げ、次世代へ繋いでいきます」と話した。

 「東京ミッドタウン日比谷」では、都心部にありながら約2,000㎡(緑化率約40%)の緑地を創出しており、隣接する日比谷公園と同種の樹木を取り入れ、環境に配慮した植栽計画を実施。また、地域全体の生物多様性の向上に寄与するため巣箱、石積み蛇篭、エコスタックとバードバスを設置。生きもの音声分析技術「KoeTurri」(ハイラブル提供)を活用し、来街者へ豊かな生態系の魅力を発信していく。今年3月、いきもの共生事業推進協議会が運営する第18回「ABINC 認証」を取得している。

 今年度より、東京都市大学北村亘准教授を「東京ミッドタウン日比谷 生物多様性アドバイザー」に迎え、定期的な実地調査、調査結果を踏まえた中長期的な生物多様性施策の検証・実装などを行っていく。北村氏は「都心部でありながらカワセミやアオサギなど多数の野鳥が生息する日比谷公園や皇居と隣接している立地特性を踏まえると、東京ミッドタウン日比谷には地域の生態系を補完・強化する役割が求められる」とコメントしている。

 「東京ミッドタウン日比谷」の来街者は、2018年3月に開業してから2025年3月末で約11,200万人に達している。

 同社は今年4月、環境との共生宣言 「&EARTH for Nature」を策定、重点課題として「緑を守り育む」「水の魅力を生かす」「生態系を豊かにする」「地域の想いをつなぐ」「自然資源を循環させる」の5つを定めている。

 同社が「ABINC 認証」を取得したのは、「三井不動産ロジスティクスパーク市川塩浜Ⅱ(物流施設版)」「(仮称)日本橋本町一丁目3番計画(都市・SC版)」「ザ・ガーデンズ大田多摩川(集合住宅版)」に続き4施設目。

 また、港区立檜町公園に隣接している「東京ミッドタウン(六本木)」の「東京ミッドタウンガーデン」(約1.38ha)は、国土交通省などの「自然共生サイト」に認定されており、緑地は都心5区では最大級となる。

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「東京ミッドタウンガーデン」

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「東京ミッドタウンガーデン」で保存されてきたケヤキ、エノキ

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樹林内のヤマトタマムシ翅

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「MIDTOWN OREN THE PARK」

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蛇篭(左)と「KoeTurri」

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壁面緑化

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オフィスワーカー専用ガーデン

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高層階から6階ガーデンを望む(右側が日比谷公園)

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「工夫次第でたくさんの鳥を呼ぶことが可能」北村氏

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 記事化が2週間以上も遅れたことをお詫びしたい。記者説明会のすぐあと10月1日から、30年以上取材しているRBA野球大会が始まり、約25試合を取材したのだが、記事は刺身と同じ鮮度が命なので、野球記事を最優先して書いたので遅れてしまった。何しろ、試合結果の記事を1本書くのに約2時間、1日8時間労働としても1週間くらいかかる。「経年優化」を掲げる同社の街づくり・環境共生の記事は鮮度とは関係はないのも遅れた理由の一つだ。

 今回の記者説明会は、同社が環境への取り組みを日本全国に広げる宣言だと受け止めた。同社は「神宮外苑問題」ではずいぶん批判も浴びたが、40年以上同社のマンションや分譲戸建てを取材してきた記者は、緑環境の取り組みとしては、同業では積水ハウス、野村不動産、三菱地所、森ビルとともに業界トップクラスだと思っている。「パークシティ浜田山」や「HARUMI FLAG」は特筆ものだ。

 「ABINC 認証」が4施設目というのは意外な感じもしたが、これから積極的に申請するということだろう(積水ハウスは単独での認証はゼロだが、5本の樹計画は他を圧していると思う)。

日比谷公園の樹木1,000本伐採は本当か「日比谷公園整備計画」勉強会に参加して(2023/5/22)

3階のコンセプトが最高「東京ミッドタウン日比谷」プレス内覧会に1,000人超(2018/3/22)


 

 

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日本政府観光局(JNTO)は1015日、9月の訪日外客数は前年同月比13.7%増の3,266,800人となり、9月として過去最高を更新し、9月までの累計では31,650,500人となり、過去最速で3,000万人を突破したと発表した。

中東地域で単月過去最高を更新したほか、台湾や米国、ドイツなど18市場で9月として過去最高を記録した。

 

 

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「日本の都市特性評価DATABOOK 2025」合計スコアトップの大阪市のチャート

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「日本の都市特性評価DATABOOK 2025」23区合計スコアトップの港区のチャート

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 LIFULLの社内シンクタンクLIFULL HOME'S総研が「Sensuous City(センシュアス・シティ)[官能都市] 2025」報告書を発刊したことは先に紹介した。モノサシが異なるものを同じ俎上に載せ批評するのは適当ではないことを承知のうえで、ほぼ同時期に発表された森記念財団都市戦略研究所「日本の都市特性評価DATABOOK 2025」とどこが同じで、どこが異なるのか比べてみた。改めて分かったのは〝何のためか、誰のためか〟ということだ。

 まず、「日本の都市特性評価」から。これは、森記念財団都市戦略研究所が2018年から調査・発表しているもので、国内の政令指定都市、都道府県庁所在地、人口17万人以上の136都市と東京23区を対象に、「都市の力を定量・定性データをもとに相対的かつ多角的に分析し、都市の強みや魅力といった都市特性を明らかにすること」が目的となっている。

 調査は、「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・住居」「環境」「交通・アクセス」の6分野の28指標グループごとに平均値を算出し、合計スコアとしてまとめたもの。配点は2,800点満点(経済・ビジネス600点、研究・開発200点、文化・交流500点、生活・居住700点、環境500点、交通・アクセス300点)。

 調査の結果、23区を除く全国上位10市は、1位大阪市、2位名古屋市、3位福岡市、4位横浜市、5位京都市、6位神戸市、7位仙台市、8位金沢市、9位札幌市、10位つくば市の順。東京23区は1位港区、2位千代田区、3位中央区がベスト3で、最下位は江戸川区。合計スコアは、中央区(1,378.1点)より大阪(1,355.8点)のほうが低い。

 大阪市は、経済・ビジネスと文化・交流の両分野で高い評価を維持。名古屋市は、研究・開発と交通・アクセスで高い評価を獲得した。福岡市は、経済・ビジネスでは2位を維持し、特に「ビジネスの活力」の新規不動産業用建築物供給面積でスコアが上昇した。横浜市は、文化・交流で3位と高評価を得ている。京都市は、文化・交流で昨年に引き続き首位を維持している。

 分野別では、経済・ビジネスは大阪市、研究・開発は名古屋市、文化・交流は京都市、生活・住居は名古屋市、環境は鎌倉市、交通・アクセスは大阪市がそれぞれトップ。アクター別では、シングルは名古屋市、ファミリーは福岡市、シニアは松本市、観光客は大阪市、経営者は大阪市、従業員は大阪市がそれぞれトップ。

 47都道府県庁所在地のワースト3は那覇市(136位)、高知市(134位)、福島市(86位)。那覇市は、分野別スコアで「文化・交流」は15位にランクされたが、「経済・ビジネス」は78位、「交通アクセス」は70位で、「研究・開発」「生活・居住」「環境」は最下位になっている。47都道府県庁所在地より上位は10位つくば市(水戸市は72位)、12位松本市(長野市は17位)、21位浦安市(千葉市は50位)の3市。

 首都圏では、東京都は全国合計スコア25位府中市、26位三鷹市、39位調布市、47位立川市、48位八王子市、73位日野市、75位小平市、107位町田市、108位西東京市。人口17万人未満の武蔵野市などは調査対象外。

 神奈川県トップは全国合計スコア4位の横浜市で、16位鎌倉市、60位藤沢市、109位相模原市、110位横須賀市、111位平塚市、112位茅ヶ崎市、113位大和市となっている。人口14万人の海老名市は調査対象外。

 埼玉県のトップは全国合計スコア32位のさいたま市で、92位川越市、93位熊谷市、94位川口市、95位所沢市、96位春日部市、97位上尾市、98位草加市、99位越谷市の順。人口17万人未満の新座市、久喜市、三郷市などは調査対象外。

 千葉県は、浦安市、千葉市の次は76位に流山市が入り、100位市川市、101位船橋市、102位松戸市、103位習志野市、104位柏市、105位市原市、106位八千代市。人口17万人未満の佐倉市、野田市、木更津市などは調査対象外。

 三県とも5~8市が〝群(塊)〟として連続してランク入りしているのが特徴。他の地域も同じような傾向がみられ、81位の函館市から85位の八戸まで北海道・東北が、116位富士市から120位鈴鹿市までは東海が、121位堺市から130位加古川市までは大阪圏が、131位呉市から136位那覇市までが中国・四国・九州がそれぞれ連なっている。

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 「官能都市」の順位は別表の通り。島原氏は「本来の趣旨は都市に優劣をつけて序列化することではない。ランキングは、あくまで、こういう指標で測ればこういう結果になった、というかたちで指標のアイデアにリアリティを与えるものであり、それ以上でもそれ以下でもない。また、すべての都市がセンシュアス・シティを目指すべきだと主張する意図もない」と断っているので、そのつもりで見ていただきたい。

 島原氏は、市街地再開発に対しては辛らつではあるが、致命傷になる、修復が不可能になるような攻撃を加えていない。大手デベロッパーの地道なエリアマネジメント活動などをきちんと評価している。「官能都市」が何よりもいいのは、主語が「私」であり、述語は「キスした」などの動詞であることだ。ただの願望に過ぎない「ナンパしたい」「住みたい」などの助動詞でないことだ。

 島原氏は終章で次のように記している。

 「自分にとっての意味によって語られる物語のことを『ナラティブ』と呼び、『昔々あるところに』で始まるようなストーリーの物語とは区別される。私たちが自分で住んでいる都市について誰かに語るとき、そこで語られるのは、よほど特殊なシチュエ―ションでない限り、緯度経度や面積や人口やGDPなど客観的なデータではなく、自分自身のナラティブである。だから自分が住んでいる都市に対して大して語る言葉がないとすれば、それは自分が住む都市が、自分にとってあまり意味化していないことを表している」

 そして、またナラティブ度順位の高い横浜市中区、千代田区・中央区、文京区、横浜市西区、目黒区、港区、松本氏、函館市、世田谷区、武蔵野市などを紹介し、「下関市(都市特性評価133位=記者注、以下同じ)、那覇市(同136位)、高知市(同134位)、長崎市(同43位)、奈良市(同18位)、山口市(66位)、川越市(同92位)などもナラティブ>センシュアスギャップが大きい」としている。

 島原氏が絶賛している吉江俊氏の「<迂回する経済>の都市論」(学芸出版社)を買って読んでいる途中だ。記者のような素人を対象にしていないのだろうが、全体の骨組みを補強する役割を果たす金物(参考文献の古典・論文)が多すぎる(ハワードの田園都市構想は分かるが、「都市と農村の結婚」「農工両全」はありえないことは過去の歴史が証明していると思う)。ただ、「『何か大切なことが書いてある気がする。手元に置いておこう』と思ってくれる人がもしいたならば、私の試みは半分、実現したようなものだ」(序章)と述べられている、その一人だ。著作で紹介されている「下北線路街」もこの前見学・取材してきた。機会があったら記事にしたい。

◇      ◆     ◇

 以下は、双方を比較して思いつくままに記すものだ。

 「都市特性評価」上位のつくば市(10位)、浜松市(15位)、鎌倉市(16位)、奈良市(18位)、豊田市(26位)、浦安市(21)、府中市(25位)、三鷹市(26位)、豊橋市(29位)、盛岡市(30位)、松山市(33位)八王子市(48位)などは「官能都市」の106位までに入っていない。これはなぜか。

 逆に、「都市特性評価」136位まで入っていないのに、「官能都市」106位までにランクインしているのは武蔵野市(39位)、狛江市(調布市とともに46位)、日野市・多摩市・稲城市(1括りで94位)、国立市・国分寺市・小金井市(1括りで95位)。人口17万人未満の武蔵野市を敢えて入れ、複数市を1括りにしているのはある程度理解できる(記者は調布市、三鷹市、日野市、多摩市に居住経験があるが、住宅選好で重視したのは子育て環境と緑環境)。ただ、調布市と立川市が入っているのに三鷹市と八王子市が入っていないのは解せない。また、〝住みたい街ランキング〟などで上位にランクされるつくば市、浦安市、鎌倉市などが106位以下なのはどうしてか。

 「都市特性評価」の配点にも疑問を挟まざるを得ない。2,800点満点で「環境」の配分は500点。比率は17.9%だ。記者が重視する「都市地域緑被率」は全体で87項目のうちの1つに過ぎないこれは少な過ぎないか。環境は何よりも重視すべき指標ではないか。お金持ちは緑被率の高い区に住んでいるという研究論文はあるが、お金を出せば環境を買えるということか。

 また、「生活・住居」では、23区はほぼ地価水準・マンション価格水準の高い順にランクされているが、これは何を意味するか。23区内のマンション価格は、どんなに駅から遠いところでも坪単価は300万円をくだらない。利便性の高いところは500万円以上だ。早晩、都心の一等地は坪3,000~5,000万円になると記者は見ている。一般的な給与所得層は住めなくなる。「住宅の広さ」「住宅コストの低さ」を重視したら、庶民にとっては最悪の点数どころかマイナスだ。調査は、地価が高く、居住水準が低いほど高い評価となっていることが分かる。

 全ての調査・ランキングに言えることだが、何のためか、誰のためかを考えることが必要だ。積水ハウス「男性育休白書」では、「男性の家事・育児力全国ランキング2025」は2年連続して沖縄県がトップだ。

◇      ◆     ◇

 長谷工総研の「CRI」10月号からエッセイスト・広瀬裕子氏の巻頭エッセイが紹介されている。「官能都市」報告書のセンシュアス、ナラティブに通じるものがあると思うので、以下の通り「『住む』は『生きる』」から少し引用する。

 「毎朝、目覚めた時に漂う静けさ、帰宅して窓を開けた時の風景、駅に降り立った時の香り、近隣から流れてくる音。

 条件やそれに伴う事項は、金銭的な余裕があれば、いくらでも選択できます。でも、条件に掲載されていない多くのことや五感が、『生きる』ことを形作っていきます。

 不動産情報で条件が合い内見したけれど『ここではない』となることが度々ありますが、それは、条件には挙げられていない本質的なことが『そこではない』と感じるからだと思います。

…『住む』は、すべての『生きる』とつながっている-。あの家の、あの季節の、あの場所だから、気づいたことです。大切なことは、情報として発進されること以外、日々のなかで展開することがほとんどです」

所得の多い人は緑被率の高い地域に住むその差100万円立正大・榎本氏の論文(2025/9/28)

「Sensuous City(センシュアス・シティ)[官能都市] 2025」発刊 LIFULL HOME'S(2025/9/25)

夫の育児・家事の満足度高いのは佐賀、沖縄、山梨、三重積水ハ「男性育休白書」(2025/9/22)


 

 

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Screenshot 2025-10-09 at 21-29-16 【News Release】約8割が知らない売却できる資産 全国845万戸の”共有持ち分付き住宅”の持つ課題とは 訳あり不動産市場調査.pdf.png
(提供:「株式会社モニタス」) 

空き家・訳あり不動産の買取再販サービス「ワケガイ」・空き家・訳あり事業を展開しているネクスウィルは109日、メディア向け「訳あり不動産の実態に関する勉強会」を開催し、「共有持ち分」に関する訳あり不動産実態調査結果を発表した。

調査は、全国40歳以上の男女11,199人を対象にインターネットリサーチにより「株式会社モニタス」が実施したもの。「訳あり不動産」とは、相続や権利関係の複雑さなどにより、売却や活用が難しい不動産を指す。

調査の結果、40歳以上家計主世帯における3,112戸の現住戸の持ち家数のうち、共有持ち分付き住宅は全国で845万戸(現住戸が612万戸、現住戸以外が233万戸)にのぼり、大都市圏に集中し、「隠れ資産」の存在感が浮き彫りになったとしている。

「共有持ち分の住宅や土地を売ることができる」と認識している人は全体で16.5%にとどまり、共有持分所有者の売却可能性の認知度は28%にしか過ぎないことも分かった。相続後に必要となる手続きや、手続きを行わなかった場合に起こり得るリスクの理解も2割程度にとどまっている。

共有持ち分を所有する人の9.4%が「困っている」と回答し、その悩みとして「税金や管理費用などの費用負担があること」(46.7%)のほか、「共有者との関係が良くない」「一部の共有者だけが使用しており、自身にメリットがない」「共有者の所在や連絡先が不明である」などと、人間関係や権利の不透明さに悩みを抱えていることがわかった。

このような悩みを抱える人のうち約7割が「時期を問わず解決したい」と考えており、「すぐにでも解決したい」と答えた人は10.3%にのぼった。

一方で、共有持ち分に関する専門家などへの相談経験がある人はごくわずかで、「相談したことはない」と答えた人が88.7%を占めた。

同社は結果について、同社代表取締役・丸岡智幸氏は、「買取再販業は、銀行からの融資を受けて事業展開しているが、このような『訳あり物件』は融資が下りない。当社はこれまで約300件の実績を通じてノウハウを蓄積してきた。問題を次の世代に先送りするのではなく、早め早めの対応が求められる。当社は、空き家対策に悩んでいる全国の自治体と連携を強化し、社会的課題の解決につなげたい」と話した。

同社の2024年度の買取実績は27.4億円(425件)で、うち「共有持ち分物件」は116件。2025年予測は42億円(800件)で、うち「共有持ち分物件」は200件を予測している。累計の「共有持ち分物件」取り扱い件数は約300件。自治体との連携による成約件数は約10件。

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丸岡氏

◇      ◆     ◇

 空き家問題に関心がないわけではないが、テーマが大きすぎて、手に負えないのでこれまでほとんど取材してこなかった。絶対的・排他的に保障されている財産権に踏み込むのは一筋縄でいかないからでもある。

 なので、同社のような取り組みをしている会社があるのにびっくりした。累計で約300件の買取実績があるというではないか。しかも、連携している自治体は岩手県紫波町、愛媛県八幡浜市、岩手県宮古市、大阪府阪南市といえば、阪南市はともかく、往復の交通費だけで数万円、日帰りは無理だろうから1回の出張代を考えたら、ペイするとはとても思えない。それを社員が直接出向いて交渉するのだという。近親憎悪という言葉があるように、親族間のトラブルは容易に修復できないのはみんなよく知っていることだ。気の遠くなるような、複雑に絡み合った糸をほぐす、このようなビジネスモデルを構築した同社を応援したい。専門家に相談したら、アドバイスは得られるだろうが、解決策を提示する専門家は皆無のはずだ。

 国土交通省の空き家対策総合支援・空き家再生等推進事業費の令和8年度予算概算要求額は70.80億円、1都道府県当たり額は約8,700万円だ。この額が多いのか少ないのかよく分からない。空き家の増加による社会的・経済的損失額をAIに聞いたら、「約3.89兆円の経済損失や、固定資産税の負担、資産価値の低下をもたらし、社会的損失としては、治安の悪化や犯罪の温床化、景観の悪化、近隣への被害、地域経済の衰退や過疎化を加速させるなどの問題を引きおこします」と返ってきた。

        ◆     ◇

いつか記事化を考えているのだが、国や業界に言いたいことが一つある。「有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」もそうだが、「訳あり不動産」「事故物件」「嫌悪施設」「心理的瑕疵」などの文言を改めていただきたいということだ。

消費者は「訳」があるから不動産を売ったり買ったりする。空から人が降ってくる時代だ、世の中は「事故」だらけではないか(これは微妙な問題だが、「自死」はどうして「事故物件」になるのか。生きようが死のうが自由ではないか。生きづらい世の中を変えるべき)。「嫌悪施設」はほとんどエッセンシャルワーカーが勤務する施設だ。先祖代々が祭られている「墓地」を嫌悪することは、自己を嫌悪することにならないのか。

これらの文言・不動産用語は、問題を解決するのではなく、より問題を複雑化し、社会的・経済的格差を助長しているように思えてならない。

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 東京都の緑被率(都はみどり率の指標を用いている)を調べていたら、凄い調査研究論文を見つけた。立正大学の榎本毅氏による「東京23区における緑化の現状に関する研究」だ。

 榎本氏の論文によると、「緑被率の低い地域は緑被率の高い地域に比べ全ての調査区において7.6%~52.9%二酸化炭素排出量が増加していることを確認できた」とあり、「所得においても関係があるのか、野村総合研究所のエリア別の推計結果『世帯当たり年間総所得』を参考にした(緑被率の高い地域、低い地域)における年間総所得は千代田区(950~1,100、580~620)、中央区(680~720、580~620)、港区(1,250~1,500、1,100~1,250)、新宿区(850~950、650~680)、文京区(720~780、580~620)、台東区(650~680、580~620)、墨田区(580~620、580~620)、江東区(650~680、580~620)、品川区(650~680、560~580)、目黒区(950~1,100、650~680)、世田谷区(720~780、580~620)、渋谷区(950~1,100、850~950)、中野区(580~600、500~530)、杉並区(680~720、530~560)、豊島区(680~720、580~620)、練馬区(680~720、580~620)であった(単位:万円)。この結果から墨田区においては解明する点もあるが、緑被率と所得については相関関係があると考えられる」としている。

◇      ◆     ◇

 緑被率の低い地域は緑被率の高い地域と比べて二酸化炭素排出量が増加するというのは理解できるのだが、緑被率の高い地域に住む人のほうが低い地域に住む人より所得が多いことが調査で確認できたことが凄い(記者は、金持ちは絶対緑が多い山の手に住むと考えてきたが)。

 例えば千代田区。緑被率の高いエリアに住む人の年収は950~1,100万円で、緑被率の低いエリアに住む人の580~620万円と比べ実に370~480万円の差がある。この他、目黒区は300~420万円、世田谷区は140~160万円、文京区は140~160万円、区全体として緑被率が低い台東区でも70~60万円の差がある。平均すると100万円くらいの差がある。緑被率が高い戸建てに住んでいる人のほうが年収が高いということだろうか(最近の分譲戸建ては敷地面積が狭く、ほとんどコンクリで固められるので、ぺんぺん草も生えないが)。

 やはり区全体の緑被率が低い墨田区は所得差がないことについては記者もよくわからないが、緑被率より他の要素を重視するアジア系のコミュニティが形成されているのと関係がありそうな気がするのだが…。

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「Sensuous City(センシュアス・シティ)[官能都市] 2025」

 LIFULLの社内シンクタンク「LIFULL HOME'S総研」は9月24日、「Sensuous City(センシュアス・シティ)[官能都市] 2025」報告書を発刊した。2015年に発刊した第一弾の「Sensuous City(センシュアス・シティ)[官能都市]」に次ぐもので、第一弾の「センシュアス」(官能性)に加え、「ナラティブ」(物語)の概念を新たな調査項目に加え、「ナラティブ」が「センシュアス」や「ジェネリック」(普遍的魅力)に大きな影響を与えていることを浮き彫りにした。業界関係者必読の報告者だ。

 調査は、47都道府県の県庁所在都市や政令指定都市、中核市に居住する20歳~64歳までの男女を対象に、時代の変化を捉える8指標・32項目について設問したもので、有効回収数は167都市の44,472件。

 調査の結果、「センシュアス・シティ」総合ランキングは1位が千代田区・中央区、2位が横浜市西区、3位が豊島区、4位が大阪市北区・福島区、5位が横浜市中区、6位が渋谷区、7位が港区、8位が大阪市中央区、9位が福岡市博多区、10位が大阪市天王寺区・浪速区となった。2015年は上位だった武蔵野市、目黒区、金沢市、品川区、静岡市、盛岡市などは順位を下げるか、圏外となった。一方、宮崎市、松本市などの地方都市がランキング入りした。

 同総研はセンシュアス度が向上した都市の特徴として、①カフェやレストランが多く、地元産の食材を用いた料理や地場のビールなど、豊かな「食」の経験が維持されること②きれいな青空や夕焼けや小鳥のさえずり、木陰での気持ちよい風など感じられる環境であること③路上での演奏・ライブなど都市の喧騒だけなく、歩くこと自体を楽しめること-なことが分かったとしている。

 報告書は、A4版270ページに及ぶもので、同総研所長・島原万丈氏のほか、横浜市立大学都市社会文化研究科准教授・渡會知子氏、一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科教授・清水千弘氏、ディ・プラス橋口理文・吉永奈央子氏、九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門助教・有馬雄祐氏、柏市役所副市長・山田大輔氏、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻講師・吉江俊氏、LIFULL HOME'S PRESS編集部・渋谷雄大氏、東京情報堂代表取締役・中川寛子氏、スピーク共同代表/東京R不動産ディレクター・林厚見氏の論文・寄稿文が掲載されている。

 島原氏は「2015年に発表した『Sensuous City[官能都市]』は、『動詞で都市を測る』というユニークな評価方法を提案しました。それから10年。私たちの都市は大きな転換点を迎えています。全国的に広がる市街地再開発は、土地の高度利用を進め、機能性や安全性を高める一方で、街の『らしさ』を希薄にしてきました…『Sensuous City 2025』では、前回から継承する『関係性』と『身体性』のフレームを基盤に、評価指標となるアクティビティ項目を時代に合わせてチューニングしました。さらに今回は、新たに『ナラティブ』という概念を導入して都市がセンシュアスであることの意義について深い分析を試みています。ナラティブとは、人々の経験や記憶、さらには歴史や文化が重なり合って紡がれる都市の『語り』のことです…ナラティブが都市の幸福やシビックプライドを増幅させる――この循環こそが、センシュアス・シティの大きな意義です。本調査が、これからの都市政策やまちづくりの新たな指針を描くための契機となることを願っています」とコメントしている。

 報告書は希望する人に無料で進呈される(なくなり次第終了)。希望する人はLIFULL HOME'S総研公式サイト:https://www.homes.co.jp/souken/report/202509/へ。

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島原氏

◇       ◆     ◇

 「官能」といえば「小説」しか思い浮かばない記者は、取材案内メールに「官能都市」の文言がちりばめられていたので、スルーしようかと思った。どうせ、根拠など全くない、ただ面白おかしく紹介するSBIアルヒ「本当に住みやすい街大賞」(昨年から公表されなくなったが、同社はその功罪を明らかにしていない)か、デベロッパーの影が透けて見える〝住みたい街〟やら〝住みやすい街〟の類だろうと考えたからだ。

 まあ、しかし、時間はたっぷりある。同総研副所長・チーフアナリストの中山登志朗氏のような楽しい人が登壇するのだろうから、冷やかしの一つや二つ浴びせかけてやろうと参加することにした。

 ところが、豈図らんや。予想した発表会とは全然異なった。島原氏は同社のシンボルカラーのオレンジで身を固めて登場するのかと思ったら、濃紺のスーツだった。

 報告書は前段で紹介した通りだ。「官能」の本来的な意味である「五感で感じる」をモノサシにして都市を評価したものだ。島原氏は第1章で「雑多さや猥雑さ、いかがわしさ、夜など、政治的な〝正しさ〟で武装した資本とアカデミックな工学が重視してこなかった、あるいは意図的に排除した、人間が生きる場所であるところの都市の本音を救出する意図もあった」と、発刊した理由を述べていように、官製の報告書では絶対ない、主人公である居住者の生の声であふれかえっている。〝路上でキスした〟〝素敵な人に見とれた〟〝地元産の食材や郷土料理を楽しんだ〟〝木陰で気持ちよい風に吹かれた〟などだ。総合ランキング1位の「東京都千代田区・中央区」だって容赦しない。ウォーカブルの指標では3位になった理由として、「『道端でくつろぐ猫を見かけた』の144位が足を引っ張った」ことを挙げている(記者は千代田区、中央区はウォーカブルな街づくりのトップランナーだと思っている。ネコを見かけないのがマイナス要素になるとは…)。

 嬉しくなる指標項目もある。「グラングリーン大阪」の街づくりの評価が高いのもそうだが、都市のリトリートでトップは「日野市、多摩市、稲城市」となっていることだ。「木陰で気持ちよい風に吹かれた」のが評価ポイントだという。わが多摩市が素晴らしい街であることをこれまで何度も記事にしてきたが、居住者も同じ考えのようだ。一方で「江東区」がこの指標で2位となっており、「公園や水辺で緑や水に直接ふれた」というのがその理由なのは解せない。江東区は多摩市と対照的に住居系用途地域が極端に少なく、工業系ばかりで緑が少なすぎると思っているのだが…だからこそ住民は少ない公園や水辺を評価していると理解することにした。

 参考までに、記者は街のポテンシャルを測るモノサシを紹介すると、①大勢の人が集まり、おいしてものが食べられるホテルがあること②なんでも揃うデパートがあること③歴史・文化施設があること-この3つが基準で、最近はやや軌道修正し、タバコが吸えるドトールとせんべろが可能な日高屋があることを追加した。これにマクドナルドを加えた〝御三家〟が不動産進出の決め手になることを同業の記者から教わった。

 各氏の論文を一つひとつ紹介する余裕はないが、島原氏は序章で「もしこの10年間に国内で出版された都市論の中から最も重要な10冊を選べと言われたら、吉江俊氏の『<迂回する経済>の都市論』(2024年)は、その筆頭に上げたい画期的な一冊」と綴っている。「<迂回する経済>の都市論」を早速ネットで購入した。 

 林氏の寄稿「みんながデベロッパーになる時代」は現在の街づくりに警鐘を鳴らしている。「デベロッパーは意味的には終わった」の言葉には肺腑をえぐられた。

 ただ、報告書に注文・疑問もある。記者は、調査範囲をもっと広げ約260ある人口10万人以上にしたらどうかと質問したら、島原氏は「広げたいのだが、コストがかかるので…」と話した。ならば、先日発表された積水ハウスの「男性育休白書」と連携したらどうか。素晴らしいものになるはずだ。疑問点は、先の「日野市、多摩市、稲城市」は似ているようで似ていない。「豊島区」は風俗も所在する池袋もあれば、戸建て住宅街もある。他の区市もそうだろう。広域・狭域の視点も必要ではないか。

 -読みだしたら止まらない。書き出したら止まらない。もうやめる。とにかく面白い。業界関係者必読の書だ。

◇       ◆     ◇

 報告書で興味深いことを発見した。経歴だ。島原氏は「1989年リクルート入社」で、LIFULL HOME'S総研所長に就任したのは2013年とある。1989年といえばリクルート事件が発覚した翌年だ。所長に就任した2年後に「官能都市」を発刊したことになる。

 島原氏のほかにもリクルート出身の執筆者は3人いる。林氏は、リクルート創業者の江副浩正が立ち上げたデベロッパー・スペースデザインに在籍していた。清水氏は2000年11月に        リクルート住宅総合研究所主任研究員に就任している。橋口氏もリクルート入社とある。

 なぜ、このようなことを書くかといえば、記者にとってリクルートは特別な存在だからだ。リクルート事件では数回にわたって特集記事を書いた。コスモスイニシアは創業時からずっと取材してきた。〝デベロッパーの頭脳〟と呼んでいいほど商品企画が優れている。それは、江副の「自ら機会をつくり、機会によって自らを変えよ」という起業家精神がずっと引き継がれているからだと思う。「官能」と「都市」を結びつけ、さらにまたナラティブ(語り)を付加した島原氏もまた創業時のDNAを受け継いでいるに違いない。

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