第6のアセットクラス「三井のラボ&オフィス」 住宅不可の新木場に開業
「三井リンクラボ新木場1」
三井不動産は7月8日、賃貸ラボ&オフィス事業「三井のラボ&オフィス」の都心近接型施設の第二弾「三井リンクラボ新木場1」が7月1日に開業したのに伴うメディア向け見学会を行った。通常のオフィス空間に加え、実験専用の排気ダクト、空調室外機、緊急用シャワー施設などの増設スペースを確保しているのが特徴。
物件は、東京メトロ有楽町線・東京臨海高速鉄道りんかい線新木場駅から徒歩11分、江東区新木場2丁目に位置する敷地面積約3,300㎡、5階建て延べ床面積約11,169㎡。総貸付面積約7,867㎡。基本計画は日建設計。設計・監理・施工は鹿島建設。建物は今年3月に竣工済み。入居希望企業は、竣工後の仕様を確認してから決定したいということから、現段階では6~7割の入居率という。
今回のプロジェクトは、国際基準の本格的研究が可能なBSL2対応のウェットラボ仕様とし、スタートアップ企業やCRO、異業種からの参入までを可能とするライフサイエンス領域の様々なイノベーションプレイヤーの入居を想定。1フロア約110~1,600㎡のニーズに対応する。また、100人収容の会議室も設置しているほか、社内外のコミュニケーションを活発にさせるためのラウンジ、カフェを設置し、エントランスにはキッチンカー専用の駐車場も設けている。
「三井のラボ&オフィス」は、ライフサイエンス領域において一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)とともに2016年に立ち上げたもので、参加特別会員は461会員、2020年のイベント実施回数は357件に達するなど、国内外の連携の輪が広がっている。
同社はオフィスビル、住宅、商業施設、ホテル・リゾート、物流施設に続く「第6のアセットクラス」としてこの事業の拡大を図っていくとしており、2021年11月竣工予定の「(仮称)三井リンクラボ柏の葉」、2023年春竣工を目指す「新木場エリア2棟目」も計画。先に竣工稼働している「三井リンクラボ葛西」も含め4棟4棟体制となる。また、米国ボストンの「(仮称)イノベーションスクエアPhaseⅡ」(延べ床面積約28,400㎡)も2021年に竣工する予定。
コミュニケーションラウンジ
様々な配管が設置されているバルコニー
会議室
◇ ◆ ◇
オンラインで発表会に参加した記者の方が、事業費や賃料について質問した。同社は当然答えなかった。
この記者の方は答えが返ってこないのを承知のうえで聞いたのか、それとも特別の意図があったのかわからないが、記者は全く別のことを考えていた。設計が日建設計で、施工が鹿島建設であったことだ。わが国を代表する設計会社とゼネコンが、約11,000㎡(3,000坪)程度のオフィスビルを設計・建設した事例はそうないはずだ。ここに隠された何かがある。単純計算だが、レンタブル比率は7,867÷11,169=70.4%だ。こんなビルも少ないはずだ。
さらに言えば、賃料などは同社も入居を考える企業も二の次の問題ではないかということだ。普通のオフィスビル立地として、「新木場」はまずありえない。記者は計画が発表された2019年6月、現地を見学取材している。それまで知らなかったのだが、この新木場一帯は、規模にして皇居をはるかに上回る約151haが地区計画によって「住宅不可」に定められている。
「住宅不可」といえば調整区域だが、調整区域は住宅や商業施設はないかもしれないが、その分だけたっぷりの緑環境が確保されている。ここ新木場は、図体がでかい分だけ大きな騒音を撒き散らすトラックの往来が激しく、飲食店や遊興施設、公園など一つもなかい。あったのは1軒のコンビニだけだった。いくら賃料が安くても、普通の企業はこんなところに事務所を構えようと考えないはずだし、そんな会社に入社を希望する人など皆無のはずだ。
それでも「三井リンクラボ新木場1」を可能にしたのは、同社取締役執行役員/LINK-J専務理事・植田俊氏がいみじくも言ったように「バイオハザード」だろう。事務所で扱う有害化学薬品などか適正に処分できるか、社外秘の研究内容が漏洩しないかが最優先されるはずだ。
だが、しかし、外界と遮断できる職場環境が整っていることに経営者は満足しても、ここで働く研究者などはストレスの固まりになるのではないかと取材したとき考えた。昼食はどうするか、同僚などとの飲み会は駅前のどこにでもある居酒屋で満足できるのか(駅前にはホテルがその後建設されたが)、緑など全くない環境で精神に異常をきたさないか…などだ。
いまもこの疑問・懸念は払しょくされていないのだが、ここに入居しているNECソリューションイノベータ(デジタルヘルスケア事業推進室)シニアプロフェッショナル・堀井克紀氏は「(研究に)集中できるのでいい」と言い放った。同社が借りているのは約200㎡で、5人が勤務している。1人当たり約40㎡だ。大会社の社長室でもあるかないかの広さだ。ここで堀井氏らは抗体の一種であるアプタマーの研究を行っており、新型コロナウイルスのDNAなども調べているそうだ。(ワクチン開発は別の部署で進めているそうだ)
記者などはもろもろの誘惑があってこそ生きるに値する世の中だし、仕事をするときはどんな誘惑にも負けないで集中する自信はあるが、そんなことより、同社にぜひとも聞きたかったことがある。現地を見学取材したときも感じたのだが、貯木場など一つも稼働していない。住宅不可の今日的意味はないのではないか。コンテナの積み下ろしなどの機能はあるのかどうかはわからないが、記者は都心に残された最後の大規模処女地だと思う。
地区計画を変更し、商・住・公(あるいは工)の複合タウンは可能ではないか。すでに同社はそうすべく、その先鞭をつける、外堀を埋める突破口としてこのプロジェクトを位置づけているのではないか。
そんなことを質問しようと、最初から最後までずっと手を挙げたが、指名されなかった。小生はきちんとマスクを付けており、外見はメガネザルに似た目と、白と黒の淫らではないまだらの髪の毛くらいのもので人畜無害のはずなのに…どこかの人も人気がないのは質問を無視したりまともに答えなかったりするからだ。(大和ハウスはその点偉い。質疑応答に1時間くらいかけることもある)
愚痴っぽいことを書いたが、1階には150坪はありそうな入居者が自由に利用できる天然芝張りの立派な広場空間も整備されていた。サクラやヒマラヤスギ(未確認)の高木も植わっていた。
エントランスロビー ラウンジ(壁、天井は本物の木材、観葉植物は本物とフェイク)
誤って薬品などを浴びたときなど非常時に使用できるシャワー(日常的に使用できるかどうかはわからない)
広場(左の樹木はヒマラヤスギとみたが)
住宅不可の151ha〝処女地〟新木場にライフサイエンス拠点 三井不の新事業(2019/6/1)
らしき建築物発見!住宅不可の151haの江東区・新木場に88人が住む不思議(2019/6/4)
「木」の中層マンション「MOCXION(モクシオン)」第一弾 三井ホーム「稲城」見学会
「稲城・木造マンションプロジェクト」
三井ホームは7月7日、建築時のCO2排出量をRC造より半減させる枠組壁工法による日本最大級の「稲城・木造マンションプロジェクト」構造現場見学会を行った。国内最高レベルの壁倍率30倍の高強度耐力壁や高性能遮音床システムなどを採用している。プロジェクトは、国土交通省の令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)に採択されており、一次エネルギー消費量を約30%低減するZEH-M(Oriented)を取得する予定。
物件は、京王相模原線稲城駅から徒歩4分、稲城市百村に位置する5階建て(1階:RC造、2~5階:木造)耐火ハイブリッド構造の延べ床面積約3.738㎡の賃貸マンション51戸。最上階には90㎡の住居も2戸設けられる。木造部分の階高は2980ミリ、リビング天井高は2450ミリ。着工は2020年10月。竣工予定は2021年11月。
プロジェクトでは、中層の建築物を木造化する場合、規定の構造性能と耐火基準を満たすためには、構造壁が厚くなることなどが設計上の課題とされてきたが、その課題を解決するために、枠組壁工法では国内最高レベルの壁倍率30倍の高強度耐力壁「MOCX wall(モクス ウォール)」を開発。これにより、従来と比べ壁厚を約半分に減らすことを可能にしたのが大きな特徴。
また、鉄筋コンクリート造と同等クラスの高性能遮音床システムを開発。鉄筋コンクリート造の集合住宅で求められる要求性能(重量床衝撃音LH-55以下、軽量床衝撃音LL-45以下)と同等程度の遮音性能を実現した。
さらに、準耐火建築物への採用が可能となった構造材「NLT」を一部に採用し、施工の検証を行う。「NLT」は、北米で100年以上前から利用されてきた意匠デザインの幅を広げる構造材で、「大空間」の設計に利用可能なほか、特別な生産設備が不要であり、資材調達におけるコストメリットも期待されている。
このほか、同社は国内初の試みとして、信州カラマツ材による2×10材を床組みの一部に採用し、三井不動産グループの保有林(北海道)の木材や間伐材を軒裏や内装材として活用。国産材の用途拡大に貢献する。
同社は、中層以上の共同住宅の木造化・木質化も促進することで、SDGsや脱炭素社会の実現に貢献するため、「木」を構造材に用いた木造マンションの新ブランド「MOCXION(モクシオン)」を立ち上け、今回の「稲城・木造マンションプロジェクト」を第一弾とすることを発表している。
高強度耐力壁「MOCX wall(モクス ウォール)」
高性能遮音床システム
「NLT」材
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見学会では、同じ壁の厚さで通常の壁の30倍の強度を持つとか、地震時の耐力壁の回転を抑える金物「ロッドマン」は1本で通常50本の金物の役割を果たすとか、矢継ぎ早に発せられる担当者の言葉に記者はあっけにとられるばかりだったが、一つだけ木のよさと技術の高さがよくわかったことがあった。
見学中、サッシは通常のアルミサッシのように見えた。ZEHマンションなどでは断熱性を高めるため二重サッシにし、しかも室内側は樹脂サッシが採用されているものが多い。どうしてアルミなのか聞いたら、担当者は断熱性が十分担保されるので、樹脂サッシを採用する必要がなく、それだけコストも抑えられるということだった。
アルミサッシの開口窓
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会場に着いたら、同社関係者はみんなSDGsバッジを付けていた。記者は「バッジを付けているのは〇〇ハウスさんがおそらく一番多い。御社はどうか」と質問した。「当社は希望するグループ社員全て。2,000人強が対象」とのことで、「〇〇ハウスさんは木製ではない」と聞かないことまで返ってきた。確かにバッジは木製だった。
木製のSDGsのバッジを付けているのは住友林業の役員(一般社員はわからない)とアキュラホームだ。
木製SDGsバッジ
:建設現場
免震、超高層、ディスポーザー、億ション…初尽くし 公・商・住の東京建物「前橋」
「ブリリアタワー前橋」
東京建物は7月5日、群馬県の県都・前橋市の前橋駅前の〝公・商・住〟一体複合再開発免震タワーマンション「ブリリアタワー前橋」のメディア向けモデルルーム発表会を行った。同社にとって前橋市でのマンション供給は初めてで、免震、高さ94mの超高層、ディスポーザー付きなども同市にとって初で、初物尽くしのマンションだ。
物件は、JR両毛線前橋駅から徒歩2分、前橋市表町二丁目に位置する敷地面積約3,870㎡、27階建て全203戸。専有面積は60.85~123.88㎡、価格は未定だが3,000万円台前半からで、坪単価は208万円になる模様。売主は同社(事業比率80%)のほかファーストコーポレーション(同20%)。設計・監理は宮田建築事務所。構造監理はサイエンス構造。デザイン監修は野生司環境設計。施工はファーストコーポレーション・小林工業・鵜川興業・吉田組。竣工予定は2024年3月下旬。
事業は、前橋市が進める「市街地総合再生計画」区域内の重要施策区域に位置する再開発事業の一環であり、東京建物が分譲事業の幹事会社と事業の個人施行者として、ファーストコーポは事業の個人施行者代表企業、分譲事業の共同事業者、物件施行者1社として参画するもの。
四方道路の周囲には、デッキ広場や並木の遊歩道などを整備し、建物デザインには、「糸」「水」「並木」「山並み」「レンガ」といった、前橋の歴史や自然に縁のあるモチーフを取り入れ、前橋駅前のランドマークにふさわしい外観が特徴。
建物の1階に商業施設、2階に子育て支援施設などを整備するほか、災害時における帰宅困難者の一時避難場所としても提供する予定。住戸は2階からで、標準階は1フロア9戸、26・27階は1フロア6戸。
主な基本性能・設備仕様は、免震のほか二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ(上層階26、27階は2700ミリ)、ディスポーザー、食洗機(収納との無償セレクト)、Low-Eガラス、玄関プッシュプルドア、ホーローキッチンパネルなど。共用施設として2階にリモートワークに対応するワーキングラウンジと個室のワーキングブースのほかパーティールーム、キッズルームなどを設置する。駐車場は全213台(うち住宅居住者用203台)。
発表会に臨んだ同社住宅事業第一部長・浅沼正樹氏は「当社が個人施行者となって分譲するもので、免震、高さ94mというのは前橋市で初めて。今週の土曜日から一般公開を開始するが、東京圏からも問い合わせがある」と手ごたえを感じている様子だった。
これまで約600件の反響があり、モデルルーム来場予約は200件を突破。向こう3週間は全て満席(営業スタッフ8人対応で3回転)。年代は40歳代が最多で、60歳以上は約1割、居住地は。地元が約65%、高崎、東京圏がそれぞれ約1割、買い替え希望は約2割。分譲開始は9月の予定。
エントランス上部のアルミ素材による格子状のデザインには、前橋の発展を支えた生糸へのオマージュが込められているという
2層吹抜けエントランスラウンジ
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まず坪単価から。記者はリーマン・ショック後の2010年9月、大京「ライオンズ前橋大手町」112戸とタカラレーベン「レーベンリヴィバーレ高崎グレイス」109戸を見学取材している。坪単価は前者が110万円、後者が120万円だった。
そして今回。いかに地方とはいえ、県都だから坪200万円以下はありえず、とはいえ200万円をはるかに突破することもないと読み、坪210~220万円くらいではないかと予想した。
その通りになった。とても安いとは思うが、高いか安いか判断するのはお客さんだ。
全然知らなかったのだが、関係者から聞いたらこのマンションは初物尽くしだ。以下にそれを列挙する。
①同社初の前橋市での分譲(同社は4年前だったか、高崎で分譲したマンションは人気になった)②免震③最高峰(これまでは群馬県庁か)④ディスポーザー⑤スライドドア⑥億ション(最上階の123㎡)などだ。
不思議に思ったのは60歳以上の反響が1割にとどまっていることだ。その理由はよくわからないが、前橋市の中心市街地は駅から少し離れたところで、その先に県庁などの行政の中心地がある。生活利便施設は中心市街地や行政エリアのほうが充実しているので、通勤する必要のない高齢者などは〝駅近〟に魅力を感じていないためだろうか。
東京圏の反響が1割というのはよくわかる。県都の駅前に立派なマンションが建つなら、地縁のある人ならみんな関心を示す。一方で、高崎も1割というのはよくわからない。前橋の立派なケヤキ並木は高崎にはないのではないか。
建設現場
駅前のケヤキ並木
甲府に続く県都の一等地 大京「ライオンズ前橋大手町」(2010/9/3)
市街地活性化に一役買う タカラレーベン「レーベンリヴァーレ高崎グレイス」(2010/9/3)
いいオフィス 埼玉県最大級のコワーキング「いいオフィス南越谷」開業
「いいオフィス南越谷」
全国に400店舗以上のコワーキングスペースを展開するいいオフィスが7月1日オープンした埼玉県内最大規模の「いいオフィス南越谷」(https://e-office.space/minamikoshigaya/)を見学した。
総席数は140席で、1人用の個室13部屋や2〜6名部屋の個室もあり、4名・6名・8名定員の会議室5部屋用意し、ホワイトボードやモニター、プロジェクターなども利用可能なオンライン会議(テレカン)も設置。
設備はオープンスペース/個室/会議室/テレカンブース/キッチンなど。各種サービスはWi-Fi/スタッフ常駐/複合機/ホワイトボード/モニター貸出し/プロジェクター&スクリーン/フリードリンクなど。法人登記や郵便物受け取りも可能。英語学習ができる「Kids In」(https://kids-in.ib-tec.co.jp/)も併設。喫煙は不可。
施設は、JR南越谷駅・東武スカイツリーライン新越谷駅から徒歩3分の複合商業施設「南越谷ラクーン」4F。元スポーツジムだった区画を居抜きで入居し、リニューアルしたもの。利用料金はドロップイン(当日利用)が1時間660円~、月額会員は13,200円/月~。
同社は、首都圏を中心に日本全国とフィリピンなど国内・海外含め448店舗を展開。2021年度中に契約ベースで1,000店舗の展開を目指している。
消費者に分かりづらい長期優良住宅 見直しへ 住宅性能表示と一体化すべき
国土交通省は6月29日、第1回「長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会」(座長:松村秀一・東京大学大学院工学系研究科特任教授)を開催した。令和3年5月に「住宅の質の向上及び円滑な取引環境の整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立・公布されたことを受け、長期優良住宅認定制度に新たに創設される災害配慮基準や共同住宅での認定促進、脱炭素社会に向けた省エネ対策の強化に係る認定基準の見直しなどについて議論するのが目的だ。
先に報告された「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」(同)最終とりまとめでは、平成21年6月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(長期優良住宅法)による累計認定戸数は約102万戸(平成30度末時点)にのぼり、良質な住宅の供給に一定程度貢献しているとしながらも、消費者への意識向上につながっているかどうかは住宅事業者間で評価が分かれ、①共同住宅の認定がほとんど進んでいない②住宅性能表示制度と重複する評価項目が多いにも関わらず、別の制度であるために申請者の負担が大きい③建設コストが通常より高くなるにも関わらず、流通市場では認定制度はあまり評価されない④税制優遇などのインセンティブは10年後になくなり、増改築認定の場合は当初からインセンティブがほとんどない⑤賃貸住宅の認定実績がない⑥地価が高い都市部では規模の基準が厳しすぎる-などの課題も指摘されている。
「見直し検討会」は、これら「あり方検討会」が指摘した課題に基づいて、具体的な見直し案をまとめることになる。
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記者は、「あり方検討会」で各委員が指摘した「容積率等の緩和の可能性も検討することが望ましい」「長期優良住宅と住宅性能評価の仕組み自体をなるべく整合できるような形にしたほうがいいのではないか」などの声に賛成だ。
制度・モノサシが異なるといってしまえばそれまでだが、住宅性能評価制度と長期優良住宅制度は分かりづらい。
令和2年度の住宅着工戸数に占める住宅性能評価書交付件数は27.9%の約24.5万件で、長期優良住宅認定件数は12.5%の約10.1万戸しかないのは、消費者にとって分かりづらいのが最大の理由だと考えている。以下、まとまりを欠くが、記者なりの考えを紹介する。
住宅性能表示は、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき10分野・34事項について等級表示することで消費者が住宅の品質を理解しやすいように定めた制度だ。紛争処理体制を整え、消費者保護を図り、住宅ローンの優遇が受けられるという目的には賛成だが、当初からずっと腑に落ちないものを感じていた。
国土交通省のガイドラインには「建築基準法で定める基準を下回る住宅については違法と考えられますので、住宅性能評価書を交付することはできません」とある。
当然のことだ。しかし、逆に考えれば、建基法をクリアすれば「等級1」を取得できる。これは〝違法建築ではありません〟と消費者自らか費用(数万円から20万円と言われている)を払っているようなものだ。そうまでしないと、消費者に信用されない業界は情けないと思った。(それでも違法建築は防げなかった)
言い過ぎかもしれないが、住宅性能表示制度はお上がお墨付きを与えることで、建基法を満たしているに過ぎない住宅でも質の高い住宅であるかのような〝誤認〟を消費者に与えたという疑念をずっと抱いてきた。
長期優良住宅制度も同様だ。全然〝優良〟でないのに「優良」のお墨付きを与えた旧住宅金融公庫時代の「優良(中古)マンション」制度と大差ないといったらこれまた失礼か。
この制度の欠点を一つ指摘する。記者は住宅の価値は緑被率など緑環境や地域との親和性が重要だと考えている。長期優良住宅制度の9項目の評価基準の中に「良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること」とする「居住環境」がある。これは所管行政庁が審査することになっており、各行政庁が定める地区計画、景観条例などに適合させることが求められている。
これまた当たり前のことだ。しかし、地区計画、景観条例などは最低限の条件を定めたものが多く、「長期優良」にふさわしいかどうかは別問題だ。記者は、プレハブ建築協会が取り組んでいる「エコアクション」を高く評価しているが、それでも緑化面積率40%以上を目標にした建売住宅の供給率は2019年度実績で14.5%(前年比7.6ポイントマイナス)しかなく、2020年度目標の50%にはるかに及ばない。
大手ハスウメーカーですらこれが現状だ。建売住宅大手も含めた戸建てはコンクリで地面が固められたぺんぺん草も生えない住宅地がどんどん広がっている。この流れを変えるためにも長期優良住宅にふさわしい独自の指標を設けるべきだ。
住宅の質を計るモノサシは住宅性能表示制度、長期優良住宅制度だけではない。2001年に立ち上げたCASBEE、2012年運用開始の低炭素建築物認定制度、2013年運用開始の建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)、2016年ころから取り組みが始まったZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などだ。最近はZEHに力を入れているハウスメーカー・デベロッパーが多い。
この中で、記者はCASBEEとZEHをチェックするようにしている。CASBEEは評価結果を「Sランク(素晴らしい)」から「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」の5段階で評価するもので分かりやすい。東京都の場合は、同様の「マンション環境性能評価」制度を平成17年に設け、断熱性、省エネ性、みどり環境など5項目についてそれぞれ★印3つ(満点は★15個)で評価している。これまで満点を取得したマンションはどれも素晴らしい物件だ。
ZEHは、国土交通省、通産省、環境省など別々の取り組みもあり分かりづらいところもあるが、目指す目標は一つなのでとても分かりやすい。
これらの制度と住宅性能表示、長期優良住宅は相互に関連していることではあるが、消費者は混乱するばかりだ。
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事業者は住宅性能表示制度と長期優良住宅をどのように利活用しているか。事業者のスタンスの置き方、制度の方向性を考えるうえで参考になりそうなので紹介する。
2021年3月期は46,620戸の戸建てを計上した飯田グループ6社は、住宅性能表示制度7項目で全て最高等級を取得しており、それを最大の〝売り〟の一つにしている。一方で、長期優良住宅認定は東栄住宅(2021年3月期は4,954戸)一社のみのはずだ。
住宅トップの積水ハウスは、2019年度の長期優良住宅認定取得率は93%だが、同社は最近ZEHに力を入れており、2020年度のZEH比率が91%に達し、2021年3月末時点で累計60,843戸となったと発表した。
デベロッパーはどうか。三井不動産レジデンシャルは、長期優良住宅認定を取得したマンションは数件あるが、年間数百戸をコンスタントに分譲している戸建てで長期優良住宅認定を受けたのは1件しかない。その理由を同社は「ファインコートの仕様から馴染まないところがいくつかあり、評価をクリアできないのと、維持保全計画は、建売住宅には馴染まない」としている。
では、同社の戸建てのレベルが低いかといえばそうではない。記事にも添付したが、2016年に分譲した首都圏初の〝ススマートウェルネス住宅〟「ファインコート等々力 桜景邸」などは長期優良住宅レベルをはるかに超えていた。
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「見直し検討会」に提出された出口健敬委員(不動産協会事務局長代理)と西澤哲郎委員(住宅生産団体連合会 住宅性能向上委員会SWG1リーダー)の資料について。
出口委員は、集合住宅の現行55㎡の面積要件を単身者の都市居住型誘導居住水準である40㎡に引き下げることを要望している。記者はこれに賛成だ。
住宅の質は基本的には広さではあるが、そもそも面積要件は官主導の住宅金融や税金控除などにはつきものだ。どこかで線を引かざるを得ないのだろうが、合理的な説明がつかないものは多い。記者はローン控除の面積要件を30㎡に引き下げろと20年前から主張してきた。
西澤委員が要望した低層賃貸住宅の可変性に関する認定基準である躯体天井高2,650ミリ以上の基準の緩和には同意しかねる。技術的なことは分からないが、天井高は住宅の質にとって重要だ。最近はコストを削減するためどんどん天井高を低くしているのは残念でならない。賃貸住宅でも躯体天井高2,650ミリというのは譲れないラインではないのか。
この点については、先の出口委員も20mの高さ規制を想定した場合「居室天井高2.45~2.5mを保持しようとすると、1層(階)減り、分譲売上の低下を招き、事業の起点である土地購入の難度が上がります」としているが、これは5m刻みが多い高さ規制に問題がある。1層を3mではなく、3.1とか3.2m刻みにすれば天井高は確保されるはずだ。長期優良など天井高の高いものについては容積の割り増しを行い、質の担保を図るのが合理的だと考える。記者は高さ規制を撤廃すべきというのが持論だ。
また、西澤委員が求めている床面積要因を55㎡以上(現行75㎡以上)に引き下げるというのは基本的には賛成だ。理由は出口委員の要望について書いたのと同じだ。
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住宅性能表示と長期優良住宅の申請に掛かる費用は1件5~10万円として、双方で年間35万件だから5~10万円×35万件=175~350億円となる。もちろん負担するのは他の誰でもない消費者だ。ローン控除などで還元されるとはいえ巨額だ。
長期優良住宅制度の合理化を図り、ハードルを高くして事業者や消費者がチャレンジしたくなるような制度にするか、それともCASBEEのようにランク付けして選択制にしたらいいと思うのだが、どうだろうか。
なぜ伸びない品確法性能表示&長期優良住宅 どうなる中古住宅評価(2015/9/4)
長期優良住宅が「CASBEE」で評価されないのはなぜ(2013/6/13)
敷地60㎡未満の分譲「狭小住宅」 都心部は軒並み50%超 最少の練馬は1.9%(2019/8/19)
首都圏初の〝ススマートウェルネス住宅〟完成 三井不レジ「等々力」(2016/3/24)
小田急不動産 1時間440円のレンタルスペース 本厚木駅30秒にオープン
「ODAKYU RENTAL SPACE本厚木」個室
小田急不動産は7月2日、小田急厚木ホテルビル地下1階にだれでも利用できるレンタルスペース「ODAKYU RENTAL SPACE本厚木」をオープンしたと発表した。
使いたい時にいつでも借りられるドロップイン形式で、WEB会議や作業に集中できる完全個室(1人専用)のワークスペース(7室)と、プロジェクターを完備した最大21名収容可能な会議室(1室)の計8室を設置した。個室の使用料金は1時間440円(税込み)。運営はクルトンに委託する。
施設は、小田急線本厚木駅から徒歩30秒、小田急厚木ホテルビル地下1階。
予約サイトURL:https://upnow.jp/metrominutes/search?keyword=ODAKYU%20RENTAL%20SPACE
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記者は、コロナが発生してから1年4か月、テレワークを行っている。取材などで外出しても店舗内で食事することをやめ、たばこも安全と思われるホテルなどを利用することにしている。ただで喫煙室を利用するのは失礼なのでコーヒーやワインなどを飲むが、1、2本吸うのに千円札も煙のように消えていく。
それと比べ、1時間440円というのはいかにも安い。施設内は禁煙だがホテルには喫煙室はあるはずだ。
京王不動産も会員制サテライトオフィス「KEIO BIZ PLAZA」を展開しており、多摩センターは時間貸しで165円/15分(最低利用料金660円/月)。
これからはこの種のホテルの施設を利用することにしよう。コーヒーを注文すればやはり1000円はかかるのか。
野球を通じて社会貢献「トラバース高谷川球場」完成/無料の野球アカデミー設立
「トラバース高谷川球場」竣工式(屋内練習場で、手前は農園のカボチャ)
当欄既報の測量調査、地盤改良会社のトラバース(本社:千葉県市川市、佐藤克彦社長)は7月3日、社会貢献の一環として自社設計・施工した少年野球グラウンド「トラバース高谷川球場」の竣工式を行った。当日は佐藤社長をはじめ、グラウンド建設とともに設立した「野球アカデミー」のコーチを務める同社副社長・G.G.佐藤氏、同球場の土地所有者、県議会議員、市議会議員など多数の関係者が完成を祝った。当日行われる予定だった野球アカデミーの開校式・野球教室は天候不順のため延期された。
竣工式のあと、佐藤社長は建設に至った経緯について次のように語った。
「当社は会社設立(昭和51年4月)から45年が経過するが、会社の利益は社員と分かち合い、関係者や地域などにも還元しないといけないという三位一体経営を父から教わった。球場を造ろうと思ったのは2年半前だった。江戸川に掛かっている妙典橋(千葉県道179号船橋行徳線)の西岸はきれいに整備され散歩する人たちも多いのに、反対側は青々としたまるで草原のような光景が広がっていた。この土地に球場を造って、青少年野球に貢献できないかと考えた。プロを引退した息子を含め元プロのセカンドキャリア支援に取り組み、社員として採用してきた結果、多くの野球経験者が集まるようになってきた。この人材を活かせば地元からプロを誕生させることができるのではないかと」
「グランド整備に当たっては、6種の石や砂などを埋めたが、水はけが悪かったり球が思ったように弾まなかったりしたので何度も入れ替えた」と悪戦苦闘したことも明かし、「ナイターも可能にしたので、アカデミーにたくさん参加していただきたい」と話した。
昭和14年生まれの地元の大地主という土地所有者(82歳)は、「以前は毎年5月、7月、9月に敷地内の雑草刈りをやっていたが、俺も歳をとった。(土地を貸してくれと)話が持ち込まれたときはいつ相続が発生するかわからないので躊躇したが、俺も高校のとき、ちょこっとだが野球をやったこともあり、トラバースさんのやっていることにも共感したので受けることにした。立派な球場ができてとても嬉しい。従前? ここら一帯はみんな蓮の田んぼだった。賃料? それは勘弁して。たくさんいただいている」と笑顔を見せた。
完成した球場は、東西線妙典駅と原木中山駅の中間くらいの市川市高谷に位置し、千葉県道179号船橋行徳線妙典橋のたもと。敷地面積は約1400坪。グラウンドは左翼・中堅は60m、右翼は50m。芝は天然芝(内野除く)。屋根・夜間照明付きの練習場には佐藤氏が25年前に考案した特許取得日本第一号のキャタピラーで簡単に運べるピッチングマシンが3台装備。
敷地内には約100坪の農園も設置。パクチー、カボチャ、カキ、チンゲンサイ、コマツナ、ユズ、サツマイモ、ネギ、キュウリ、ナス、タカノツメ、ピーマン、モロヘイヤなどを栽培。収穫して関係者などにプレゼントするのだそうだ。水遣り用の井戸を2基掘削している。
アカデミーは、小学生を対象に無料で定期的に開催予定。コーチにはG.G.佐藤氏をはじめ同社のNPB、独立リーグ、社会人野球出身者が務める。外部コーチとして元ヤクルト・西武ライオンズの米野智人氏を招へいする。
天然芝のグラウンド(外野から写す)
佐藤社長
関係者で記念撮影
佐藤鯱用が考案した日本で初の特許を取得したバッティングマシン
◇ ◆ ◇
「牧田さん、これ見てよ。私が息子のために25年前に日本で初めて特許を取得したピッチングマシンだ。最初、ボールは奥さんが入れる役割を果たしていたが、嫌がったので自動的に補給できるように改良した。デッドボール? 全然ない。コントロールはいい。130キロは出る」
佐藤社長は自慢げにこう話した。記者は事前にピッチングマシンがあるのを確認していたが、〝大きな仕事をしているのに中古を買うなんて何と中途半端な〟と思った。そんな歴史ものだとは全然知らなかった。
G.G.佐藤氏は「そう。わたしはこれでプロになった。これを使って市川からプロを育てたい」と語った。
ついでに聞いた。「佐藤さん、もうすぐオリンピック。北京の悪夢を再現する外野手はいませんか」「大丈夫。わたしみたいなへぼな選手は一人もいない。みんな素晴らしい選手ばかり」(日本代表の外野手は柳田・吉田・栗原・近藤・鈴木誠也の各氏)
土地所有者との交渉役を務めた創価高校-創価大野球部出身の越口誠氏は、「最初に土地を貸してくださいとお願いに行ったときは、ほとんど相手にされなかった。その後、市会、県会議員さんなどの協力も得て、当社のことも分かっていただき建設が実現した。元プロや独立リーグ、社会人野球経験者の入社も増えている。今回の球場建設も含めて野球を通じて業界を明るくしたい」と語った。越口氏は高校時代、通算49本の本塁打記録を残している。
カボチャ
農園
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トラバースは、RBA野球大会第30回、31回大会に参加(昨年の32回、今年の33回大会はコロナの影響で中止)。通算成績は8勝3敗、勝率.727の高率を残しているが、「元プロの出場は1人」という大会規定の壁と寄る年波には勝てないのかベスト8どまり。
記事はRBA野球大会ホームページhttps://www.rbayakyu.jp/の検索欄で「トラバース」を入力していただければ100本近くヒットするはずだ。
トラバース 自社設計施工の少年野球グラウンド整備 地域貢献の一環として無償提供(2020/12/23)
G.G.佐藤さんの実父 トラバース社長・佐藤克彦氏がポラス分譲地で絵画展(2019/2/6)
全27棟にオリジナル樹木 敷地全体では5+1本 大和ハウス「武蔵府中ひかりテラス」
「セキュレア武蔵府中ひかりテラス」
大和ハウス工業は7月2日、「家事シェアハウス」を全戸に盛り込んだ分譲戸建て「セキュレア武蔵府中ひかりテラス」のメディア向け見学会を行った。全戸に「家事シェアハウス」を採用するのは初めてで、6月19日から販売開始した第1期11戸ののうち4戸が成約済み、1戸が申し込み済み。
物件は、JR中央本線国分寺駅からバス約11分、バス停徒歩3分(京王線府中駅から約9分、徒歩3分)、府中市栄町二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する開発面積約4,381㎡の全27戸。現在分譲中の住戸(6戸)の土地面積は113.02~123.17㎡、建物面積は88.62~90.36㎡、価格は5,490万~6,190万円(最多価格帯5,900万円台)。建物は完成済み。構造は軽量鉄骨2階建て。全体完成は2021年11月の予定。
現地は、東京農工大が社宅などとして所有・利用していた土地で、同社は約2年前に取得し、開発しているもの。府中市景観条例に基づき緑化を図り、全27戸にオリジナルの樹木を植樹するほか、敷地内の樹木には廃材を活用した樹名板を設置する。
「家事シェアハウス」は2017年から採用しているもので、玄関に家族それぞれの靴、コート、スリッパなどを管理できる「自分専用カタヅケロッカー」、リビングには自分専用の雑誌、美容グッズ、勉強道具などを収納できる「自分専用ボックス」と乱雑に散らかりがちな紙類を収納する「お便り紙蔵庫」、階段室には畳んだか洗濯物を一時的における「階段ポケット」を設けている。
また、昨年10月から販売開始した据え置き型ダストボックス「D’s stocker」を標準装備している。
府中市の開発指導要綱では、開発面積3,000㎡以上の最低敷地面積を110㎡とし、低層住居専用地域の緑地率を15%以上確保するよう求めている。
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記者は今年3月、この物件に近い「セキュレア武蔵府中なごみプレイス」(33区画)を見学しており、記事にもしているのでそちらも参照していただきたい。記事にも書いたのだが、今回の「ひかりテラス」のほうが国分寺駅にも府中駅にも出るのが便利なので、価格は6,500万円くらいが、ひょっとしたららもっと高くなると考えていた。
しかし、見学会で平均価格は約5,900万円と聞き、その安さに驚いたのだが、設備仕様などモデルハウスの全体的なレベルを考慮すれば、この価格帯もありかと考えた。
率直に言えば、完成販売で販売開始後10日間で5戸の成約・申し込みは少ないような気がする。バス便ではあるが、国分寺駅にも府中駅にも近い希少の一低層の住宅地であることを考慮すればもっと売れていいはずで、そうでないのは、若い世代では「家事シェア」は当たり前のことなので、心に響かなかったのか。
「家事シェアハウス」は結構なのだが、それを強調すれば販促に効果があるとすれば、家事労働は夫婦間で平等にシェアされておらず、妻に過大な負担がかかっている情けない現状をさらけ出すようなものだ。
さらに言えば、いまは共働きが多数派を形成しているとはいえ、専業主婦(主夫)も3割くらいあることを考えれば、「家事シェア」は全戸採用ではなく、選択制でもよかったのではないかと思う。
記者は、「イクメン」もそうだが、この専業主婦(主夫)の言葉が嫌いで、主婦あるいは主夫をきちんと職業として認め、家事労働も当然のように労働として評価する社会にすべきだと思う。そうなれば「家事シェア」なる言葉は意味をなさなくなり、死滅すると考えている。
ヤマボウシ(二季咲き)樹名板
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「家事シェア」より、記者が注目したのは全27戸にオリジナルの樹木を植樹することだった。敷地内の他の樹木には「樹名板」を設置するが、オリジナル樹木には設置しないということだったので、その名前を聞いた。シロモジ、ミツバツツジ、リョウブ、マンサク、カツラ、クロモジ、ナツハゼ、ツリバナ、シデコブシ、ヤマツツジ、エゴノキなどだ。今後、残りの16戸についても別の樹木が植えられる。
各敷地内には、オリジナル樹木のほかにもシラカシ、二度咲きヤマボウシなど少なくとも5本の中高木が植えられていた。「5本の樹計画」は積水ハウスの十八番だが、大和ハウス工業はオリジナル樹木を含めると6本だ。これらの中高木が育ったら素晴らしい景観を形成するのは間違いない。これは「家事シェアハウス」よりはるかに価値があると思うが、みなさんはいかが。
三菱地所レジ&モリモト 敷地1000坪超の1低層「自由が丘」1期20戸が完売
「ザ・パークハウス自由が丘ディアナコート」
三菱地所レジデンスとモリモトは7月1日、目黒区自由が丘アドレスの第一種低層住居専用地域に位置する「ザ・パークハウス自由が丘ディアナコート」第1期20戸を6月20日に抽選販売した結果、最高6倍、平均2.2倍で完売したと発表した。
物件は、東急東横線・大井町線自由が丘駅から徒歩9分、目黒区自由が丘3丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約3,619㎡、地下1階地上3階建て全44戸(分譲対象外12戸含む)。第1期(20戸)の専有面積は74.72~138.99㎡、価格は11,800万~29,700万円、平均価格は18,795万円。竣工予定は2022年6月下旬。設計・施工は東急建設。
自由が丘駅圏では希少の敷地面積が1,000坪以上の第一種低層住居専用地域に位置すること、生物多様性に貢献する面積29%超の緑を確保しているのが特徴。
物件エントリー数は2,347件、来場者は428件、登録申し込みは44件。
登録者の属性は、居住地は目黒区23%、世田谷区14%、年齢層は30歳代から70歳代まで幅広く、40歳代が最多、職業は会社役員・経営者が28%、会社員26%、医師16%、購入目的は自己居住用がほとんど。
三菱地所レジ・モリモト 自由が丘の1低層マンション 大規模緑化と既存樹木など保存(2021/4/9)
圧巻の眺望「メムズ竹芝」 眼下の浜離宮-隅田川-ビル街…「ウォーターズ竹芝」
「ウォーターズ竹芝」
水辺や「WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)」を中心とした街づくりを推進するタウンマネジメント組織・一般社団法人竹芝タウンデザインなどは6月29日、「ウォーターズ竹芝」の報道陣向け内覧会を行った。記者は、施設内のラグジュアリホテル・メズム東京、アトレ竹芝、オートグラフ コレクション、干潟などを約2時間にわたって見学した。
「ウォーターズ竹芝」は、東日本旅客鉄道が開発した敷地面積約23,030㎡、26階建てオフィス高層棟、6階建て劇場棟、10階建て駐車場棟からなる延床面積約108,500㎡の複合施設。オフィス棟には14階までの全フロアにヤクルト本社が、15階以上はJR東日本グループの日本ホテルが運営する「mesm Tokyo Autograph Collection(メムズ東京 オートクラブ コレクション)」265室が、劇場棟は「JR東日本四季劇場」がそれぞれ入居している。施工は清水建設。開業は昨年4月。
竹芝エリアでは昨年10月、敷地面積約12,156㎡、40階建て延べ床面積約182,052㎡のソフトバンク本社が入居する「東京ポートシティ竹芝」が開業している。
また、近接エリアでは東京建物の32階建て免震タワーマンション「ブリリアタワー浜離宮」420戸が建設中。
「メムズ東京」ロビーラウンジから
勝どき、晴海のマンション群(「メムズ東京」ロビーラウンジから)
「BANK30」
「BANK30」
「BANK30」
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圧巻は「メムズ東京」だ。16階のロビーラウンジは、高さ約9m、幅数十mの180度吹き抜け空間で、眼下の浜離宮恩賜庭園から再開発計画が楽しみな約23haの築地卸売市場-隅田川-「勝どき ザ・タワー」「THE TOKYO TOWERS」などのタワーマンションが近景に広がり、遠景には都心のビル街や東京スカイツリーなどが眺望できる。緑や川・海などの景観や、都心の夜景が楽しめるラグジュアリーホテルはたくさんあるが、すべてを満たすホテルはまずない。「京都ブライトン」は6階吹き抜け、水天宮の「ロイヤルパーク」は5層吹き抜け空間があるが、外の景色は見えない。
客室は、40㎡台のchapter1から95㎡のchapter3、180㎡のchapter4まで。95㎡のchapter3を見学したが、客室のほか43㎡のバルコニー付きだ。ルームチャージは約20万円。chapter4は60㎡のバルコニー付きでルームチャージは100万円~とか。
バー&ラウンジ、ダイニング「シェブズ・シアター」などはカジュアルなもので、バンケットルーム(宴会場)は180㎡の1室のみで、大宴会などは想定していないようだ。
「メムズ東京」は、「Exactly like nothing else(唯一無二)」の価値である水辺と浜離宮恩賜庭園を臨む立地環境を生かした〝五感を楽しむ〟がコンセプト。マリオット・インターナショナルと提携することで、JR東日本グループのホテル全体の底上げを狙う。
「アトレ竹芝」は、同社初の〝駅外〟施設で、新業態のラグジュアリーオーシャンビューラウンジ「BANK30」は、海を目の前にショーと映像、音楽のセッションの3つのエリアで構成されており、料理、酒などはリーズナブルな値段だ。
干潟は、JR東日本が整備したもので、広さは150坪くらいか。ハゼなど10種以上の魚が釣れ、マイクロプラスチックごみ、オイルボール(油の固まり)なども流れ着くので、海の汚染状況が勉強できる。
〝小さなごみのようなものがマイクロプラスチックごみです〟
干潟で釣れるハゼなど
干潟
「東京ポートシティ竹芝」