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「ライオンズミレス蔵前」

 大京が一昨日の10月21日(木)第1期40戸の分譲を開始し、広い住戸は抽選になるほどの好調なスタートを切ったコンパクトマンション「ライオンズミレス蔵前」を見学した。坪単価450万円は高いか安いか、これは顧客が判断することだが、約356㎡(108.04坪)のマンションギャラリーには本物の立派な観葉植物を配し、「蔵前」の魅力を余すことなく伝え、商品企画では細部にこだわった外観デザインが印象的だ。

 物件は、都営大江戸線蔵前駅から徒歩2分、都営浅草線蔵前駅から徒歩4分。東京メトロ銀座線浅草駅下車から徒歩8分、台東区駒形1丁目の商業地域に位置する15階建て97戸(非分譲住戸10戸含む)。ひ竣工予定は2023年3月10日。設計は現代綜合設計。施工は大京穴吹建設。10月21日(木)から第1期40戸の分譲を開始した。

 現地は、表通りから1歩入った商業地域で四方道路に接道。敷地南側と東側は建物と同レベルの建物が建っている。建物デザイン監修はIKAWAYA建築設計代表取締役・井川充司氏。コンセプトは「TAYLOR Made TOKTO」。角を丸め、なめらかな曲面で包み込むような外観デザインとし、階によって窓の形や位置を変え、さらに基壇部や共用部分には松灰という釉薬を用いて焼き上げたオリジナルの陶板を採用。主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2400ミリ、食洗機など。

 同社本店事業推進部事業推進一課課長・金井貴幸氏は、「ギャラリーにはエレベータを降りたらすぐ本物の観葉植物が目に入り、コリドーには〝ここに住めばこんな生活ができる〟ことをビジュアルに訴えられるよう地元の街並みやショップ、アート作品などを展示しました。商品企画では、〝売り〟の一つでもある隅田川花火大会を〝砂かぶり〟席で楽しめるように屋上にはテラスを設置しました。資料請求は1,000件近くに達しています」と語っている。

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ギャラリーに据えられている本物の観葉植物

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北側の外観(左)と南側の外観模型(窓がアトランダムに配されているのが分かる)

◇       ◆     ◇

 同社は先月9月30日、メディア向け見学会を行っている。記者は各紙が報じた記事でこの物件の存在を知った。各紙は価格について次のように報じた。

 「価格は未定だが、おおむね3300万円台から1億2000万円台までを想定しており、平均坪単価は400万円前後と見られる」(住宅新報)

 「価格は未定だが、3,3000万円台から1億2,000万円台が目安。坪単価で400万円台の設定になりそうだ」(週刊住宅)

 「価格は未定。そのために、予想値になるのだが、1DKを3,000万円以下で販売するのは、むずかしいのではないか、と思われる」(住宅ジャーナリスト・桜井幸雄の現場レポート/先端を読む-687-)

 「住戸は、専有面積約25~69平方メートル。1DK・1LDKが59戸、2DK・2LDK・3LDKが35戸、全15タイプを用意」「販売予定価格は、3,300万円台~1億2,000万円台」(不動産流通研究所・R.E.poot)

 つまり、みんな隔靴掻痒。記者は同じころ、坪単価が505万円の積水ハウス「グランドメゾン浅草花川戸」の記事を書いた。この価格には驚いたのだが、大京はいくらで分譲するのかとても興味があったので取材を申し込んだ。

 同社のコンパクトを取材するのは2017年の「千代田岩本町」以来だったが、外観デザイン、マンションギャラリーの設営にはかなり力が入っている。メディア向け見学会を行った理由がよくわかった。訴求力は間違いなくある。

 坪単価450万円が高いか安いか。23区内のコンパクトは2、3年前から軒並み坪400万円を突破してきているので、これもありかと思う。

 当面は住友不動産の田原町駅から徒歩4分の「ザ・浅草レジデンス」113戸(記者は坪単価500万円とみたが)と競合しそうだが、大京の担当者は「積水ハウス」と競合していると話している。

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現地(北側から写す)

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 以下は、前述の記事とはほとんど関係ないおまけ。記者のつぶやきだ。

 マンションの取材を始めてから40年が経過する。大京からはマンションのイロハを教わった。昔は鷹揚なもので、広報を通じて取材したことはなく、ほとんど役員クラスから直接情報を得た。原価はどのようにして積みあがっていくか、利益率をどれくらいに設定するかから、近隣対策費にはどれくらいのお金をつぎ込むかまで聞いた。

 大京ばかりではない。子会社の扶桑興業(のちに扶桑レクセル)、かろりーな(その後グローベルス、現プロスペクト)、日神不動産、ダイア建設、明和地所、エフ・ジェー・ネクスト、菱和ライフクリエイト(現クレアスライフ)、明和地所、日本エスリード、日本綜合地所(現大和地所レジデンス)、ランド、プレザンスコーポレーション、シーズクリエイト、アンビシャス…OB会社の情報も収集できた。これまでグループ会社も含めて年間平均20~30物件として1,000物件くらいは取材している。

 これくらい取材するとマンション市場が把握できる。記事はスピードが命だ。市場は刻々と変わる。旬の情報を読者の方に伝えられたと今でも思う。

 ただ、記事にできない情報のほうが多かった。〝書くな〟と言われたことは一切書かなかった。もう時効だから書くが、こんなことだ。

 明和地所の創業者、故原田利勝氏は社員の奥さんの月経の周期まで把握しており(なぜだか書くのは野暮)、奥さんの誕生日には必ずお花をプレゼントしたそうだ。生まれた子どもに「利勝」と付けた社員もいた。

 大京のCMに出演していた故星野仙一氏とは何度も千駄ヶ谷駅近くの舗道でお会いした。故横山修二氏と面会した後などは満面に笑みを浮かべていた。心なしか胸の内ポケットが膨らんで見えた。

 原田氏も横山氏も星野氏もみんな亡くなった。

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 取材したこの日(10月22日)はわが西武ライオンズの49年ぶりの最下位を覚悟した日だ。前日は、これまで〝お客さん〟だったオリックス相手に惜敗し、残り1試合で最下位の日ハムに3厘差に迫られた。負け方もひどかった。今から13年前、2008年のあのG.G.佐藤さんの北京オリンピックの悪夢と同じ山野辺外野手の落球が致命傷になった。

 取材中は野球のことなどさっぱり忘れていたが、同社の広報担当者は記者の傷口に塩をすり込む意図はなかったはずだが、オリックスファンだと話した。まあ、オリックスが優勝すれば、1995年(平成7年)の阪神淡路大震災以来だ。宮内さん、おめでとうございます。クソッ、山本め、宮城め、2人で11勝も献上した。来年は倍返しだ!

 取材の帰り。たばこを吸いたくて蔵前駅周辺を探したが吸えるところは一つもなく、冷たい雨が降るなか悪態をつきながら浅草駅前の「神谷バー」まで歩いた。

 生ビールとデンキブランを勧めるメニューには「相思相愛。交互に飲めば、非常に美味しい。どちらかだけでは、もの足りない」とあった。その通りに飲んだ。刺激的で甘い香りが口の中一杯に広がった。

 記者を捨てた彼女とここでデンキブランを飲んだのはもう50年も昔だ。〝花を愛せる人になって〟が捨てセリフだった。立ち直るのに3年かかった。

 その後10年以上かけてたどり着いたのは〝記事はラブレター〟だ。前段の業界紙の記事に欠けているのはこの「愛」だ。その欠片もないと言ったら失礼か。

眺望抜群 坪単価500万円超でも人気か 積水ハウス初のコンパクト「浅草花川戸」(2021/10/6)

大京久々のコンパクト「ライオンズ千代田岩本町ミレス」売れ行き好調(2017/7/27)

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「TOMORE zero」

 野村不動産は10月21日、シェアハウス&コワーキングスペース事業を始動し、事業化に先駆けた実証プロジェクト「TOMORE(トモア)共創ライフ開発プロジェクト」のコンセプトコワーキングスペース「TOMORE zero」を東京・日本橋人形町に11月オープンすると発表した。

 「TOMORE(トモア)」は、「TOMO(友と、共に)×MORE(もっと先へ) 」を掛け合わせて生まれた言葉で、「More Company(仲間),More Collaboration(共同),More Creation(創造)」をオンライン・オフラインの双方で体現することを目指し、今後プロジェクトを段階的に進めていく。

 「TOMORE zero」には、「ソーシャル・ワークスペース」と「ソーシャル・リビング・ダイニング」の2つのゾーンそれぞれに4つのエリア、計8つのエリアを設置。ソーシャル・リビング・ダイニングゾーンには靴を脱いでソファに腰掛けながら過ごすことができ、またアートが設置されたダイニングテーブルで食事を取りながらメンバー同士で交流することができる。

 施設は、都営新宿線浜町駅から徒歩3分、日比谷線人形町駅から徒歩6分。面積は151㎡(46.01 坪)。営業時間は10時~19時(2021年10月21日現在)。定休日は土・日・祝日・年末年始(同)。会費は当初トライアル期間中につき無料(同)。https://www.nreg-tomore.jp/map/

 

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「NAGOYA the TOWER」

 総合地所など6社は10月20日、名古屋駅周辺で最高層(地上42階地下1階建て)のタワーマンション「NAGOYA the TOWER」の第2期を11月中旬に分譲すると発表した。

 これまでの資料請求数は2,300 件超、モデルルームご来場も700件を超えるなど、2021年9月末時点で総戸数435戸のうち165戸を成約するなど第1期販売を終了している。

 購入者の選好理由は「名古屋駅最寄り、かつ42階建ての超高層タワーマンション」「都心でありながら約2,000㎡の豊かな緑が敷地内にある」「バラが咲き誇るプライベート性の高いガーデ ン」「地下駐車場と38階以上の住戸専用の直通エレベーター」「名古屋駅周辺の摩天楼が一望できる地上29階のエグゼクティブラウンジ」「リニアを始めとする名古屋駅周辺の開発計画が多数あり、居住用だけでなく 投資用としても魅力がある」など。

 第2期(20戸)の価格は4,118万~11,378万円(最多価格帯7,300万円台)、専有面積は36.17~85.57㎡。

〝どえりゃあ高い〟坪単価400万円 総合地所など6社JV「NAGOYA the TOWER」(2021/4/8)

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既分譲のポラス「浦和美園E-フォレスト コネクテッドサイト」

ハウスメーカー・デベロッパー各社から「2021年度 グッドデザイン賞」受賞の知らせがメールに届いた。17:00現在の各社の受賞作は次の通り。印は記者が見学した物件。順不同

三菱地所(8件)

・「WORK×ation Site 軽井沢」

・「型枠木材のトレーサビリティ認証スキーム」

・「ザ・パークレックス 大濠公園」

・「瀬田の杜 Garden & Terrace

・「天然木ノンビス工法外装材」

・「大手町ビル・リノベーション」

・「LIXIL WING ビル HOSHI

・「明産霞が関ビル」

住友不動産(5件)

「新宿住友ビル」

・「プレミアム・J 京都五条」

・「New J・アーバンコート二俣川」

・「シティハウス品川サウス」

・「シティハウス四谷坂町」

ケイアイスター不動産(1件)

「縁廊の間縁廊と離れが暮らしに交感を創出 都市型分譲住宅の新たなスタイル」

三井不動産(5件)

・「HOTEL THE MITSUI KYOTO

・「パークホームズ中目黒」

・「パークホームズ中野本町 ザ レジデンス」

・「DX ロッカーシステム」

「木でつくるマンションプロジェクト」(三井ホーム)

野村不動産(6件)

「ラウド神田駿河台」(グッドデザイン・ベスト100選出)

「プラウドシティ吉祥寺」

・「プラウド杉並方南町」

・「プラウドフラット中野」

・「H¹O日本橋小舟町」

・「Hi-NODE TOKYO HiNODE PiER

大和地所レジデンス(1件)

「オープンエアリビングバルコニー」

フージャースコーポレーション(1件)

「デュオヒルズつくばセンチュリー」

コスモスイニシア(4件)

・「イニシア三鷹」

・「イニシアテラス小竹向原」

・「ETOWA KASAMA

  ・「KARUIZAWA FOREST VILLA  PROJECT

積水ハウス(2件)

・「KOKAGE LOUNGE(コカゲ ラウンジ)」

・「グランドメゾン上町台レジデンスタワー」

ポラス(14件)

「浦和美園 E-フォレスト 2021

・「スマートシティさいたまモデル」

・「KIRINOKA

・「結の街(ムスビノマチ)」

・「サイクルスペースを軸に考えた空間提案」

・「咲が丘 3 丁目緑地」

・「空居間(そらいま)の街」

・「唯・巧・居(イ・コ・イ)の家」

・「ボーダレスな家」

・「暮らしを整える家」

・「家の中のノマドワーカー」

・「大谷口の家」

・「断熱材の産廃排出抑制とリサイクル化への取り組み」

・「アンビエントフロアーCV

大和ハウス工業グループ(6件)

「プレミスト船橋塚田」(東武鉄道JV

・「イニシア三鷹」(コスモスイニシア)

・「イニシアテラス小竹向原」(コスモスイニシア)

  ・KARUIZAWA FOREST VILLA PROJECT (コスモスイニシア)

  ・ETOWA KASAMA」(コスモスイニシア)

・「株式会社リクルート KUDANZAKA SUSTAINABLE PROJECT (九段坂サステナブルプロジェクト)」(コスモスモア)

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 受賞した各社もそうだが、天晴れ!ポラス!といいたい。何と14件も受賞したではないか。昨年は9件だったそうだ。

 残念なのは、記者の取材フィールドである分譲住宅で言えば、昨年も今年もコロナ禍でメディア向け見学会などを行えなかったこともあるだろうが、今回発表されるまで存在すら知らなかった物件ばかりであることだ。以前は7~8割方は取材した物件だった。今回は数えるほどしかなく、全体でも9件しかない。

 各社にお願いだ。自信作であるのなら希望者はみんな取材・評価できるようにしていただきたい。審査委員だってほとんど書類審査で決めているはずだ。もの(商品)を見せないで、また見ないでその良し悪しをどうして判断できるのかという疑問もわく。消費者参加型の他薦もあっていいのではないか。

 

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「クレヴィアリグゼ中野新井薬師」

 伊藤忠都市開発は10月20日、賃貸マンション「クレヴィアリグゼ」シリーズ初となる顔認証システムサービスを「クレヴィアリグゼ中野新井薬師」に導入したと発表した。

 物件は、西武新宿線新井薬師前駅から徒歩2分、中野区松が丘1丁目に位置する9階建て33戸/店舗1区画。間取りは1DK・1LDK・2LDK(25.20~47.95㎡)。入居開始日は2021年9月24日。

 3タイプからなる住戸は、オンとオフが切り替えられるよう寝室とダイニング空間を区分できる間取りとしたほか、壁一面に設置したクローゼットは、2人暮らしにも対応できる収納量を確保し、全住戸のキッチンに2口コンロと魚焼きグリルを標準装備。

 また、1LDK・2LDK住戸にはビルトイン型の食器洗い乾燥機や大型のクローゼット、リネン庫、浴室乾燥機などの設備を完備。1LDK住戸の一部には1418ユニットバスを採用。インターネットにはNURO 光Connectを採用。

 1階にはココカラファイン ヘルスケアが展開する「ココカラファイン新井薬師前店」を10月下旬に新規開店する予定。

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顔認証システム


 

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国土交通省 不動産取引件数・面積データから

 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は10月18日、季報Narket Watchサマリーレポート<2021 年7~9 月期>」をまとめ発表した。首都圏中古マンションの成約件数は前年比で7.8%減少し、5期ぶりに前年同期を下回ったが、成約㎡単価は前年比で9.3%上昇し、5期連続で前年同期を上回った。成約価格は前年比で6.6%上昇し、12年10~12月期から36期連続で前年同期を上回った。専有面積は前年比で2.4%縮小した。

 中古戸建ての成約件数は前年比で2.8%減少し、5期ぶりに前年同期を下回った。成約価格は前年比で9.4%上昇し、5 期連続で前年同期を上回った。土地面積は前年比で6.9%縮小し、建物面積は前年比で1.3%縮小した。

◇       ◆     ◇

 記者は1週間前の東日本レインズの月例速報Market Watchサマリーレポート(2021年9月度)でも記事にしたのだが、このところの中古マンション・戸建ての価格の上昇は〝異常〟だと思う。

 いったい誰が売り誰が買っているのか、手掛かりを得ようと国土交通省が毎月公表している所有権移転登記データを基にした不動産取引件数・面積データを調べた。これによると、今年の3月の全国の法人⇒法人取引は2008年4月にデータが公表されてから過去最多の取引件数を記録したことが分かった。個人需要もさることながら、不動産会社が介在しているのは明らかだ。

 データによると、関東圏の区分所有物件(ほとんどは中古マンション)の2009年の取引件数約9万件のうち、個人⇒個人は約3.7万件で全取引に占める割合は41.5%で、個人⇒法人は約1.3万件で13.9%、法人⇒個人が約3.6万件で40.3%、法人⇒法人は約0.8万件で4.1%だった。

 興味深いのは法人間の売買データだ。これは、個人⇒法人の「買い」から法人⇒個人の「売り」を差し引いたもので、2009年はリーマン・ショックの影響で売り一色となっており、差し引きトータルで約2.4万件の売り越しとなっている。その後、2016年12月までの関東圏の各月ごとでは買い越しは2か月あるのみで、売り越しがほとんどだった。

 2017年からは個人売買とともに法人間の売買も活発になり、直近の2020年は取引件数約10.4万件のうち、個人⇒個人は約4.7万件で45.5%、個人⇒法人が約2.4万件で23.3%、法人⇒個人が約2.9万件で27.7%、法人⇒法人が約0.4万件で3.4%となっている。

 2009年と比較して、個人⇒個人の取引か多いのは当然だが、個人⇒法人の件数は倍近くに増加し、比率的にも9.4ポイント上昇している。また、法人⇒個人は0.7万戸減少し、割合も12.6ポイント減少。法人⇒法人は0.4万戸、比率は0.7ポイントそれぞれ減少している。法人間の売り買いは差し引き4,595件の売り越しとなっているように、2009年とは様変わりしているのが分かる。

 今年に入っても法人の買い意欲は旺盛で、全国の今年3月の法人⇒法人の取引件数は811件となり、これまで最多だった前年同月の730件より81件多く、1か月間の取引件数としての最多記録を更新。関東圏でも1~6月の「買い」は約1.4万件で、約1.3万件の「売り」を上回っている。

 この差が大きいのか小さいのかよく分からないが、株の世界と一緒だ。投資が目的であれば買ったものは売らないと利益は確定しない。当分の間、中古市場から目が離せない。

バブルだ すさまじい中古マンションの値上がり レインズの9月のレポート(2021/10/21)

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「レーベン横浜山手 ONE WARD COURT

タカラレーベンが11月から分譲する予定の「レーベン横浜山手 ONE WARD COURT」を見学した。山手駅から徒歩13分の傾斜地に立地する全228戸の大規模マンションで、同社の創業50周年記念にふさわしいデザインにこだわった物件だ。いったいいくらになるか、興味津々。

物件は、JR京浜東北線・根岸線山手駅から徒歩13分(JR根岸駅から徒歩19分・バス5分)、横浜市中区根岸加曽台の準住居地域、第一種住居地域、第一種低層住居専用地域に位置する開発区域面積13,504.14㎡(※分筆予定地・帰属道路・提供公園・譲受予定敷地面積を含む)の7階建て全228戸。専有面積は55.59101.51㎡、価格は未定。竣工予定は20232月中旬。設計・監理は小野田建築設計事務所。施工は飛島建設。

現地は、山手駅から坂を上って下った、横浜市民にはよく知られている58系統、横浜市営バス間門バス停から徒歩1分の傾斜地立地。敷地は日石エネオスの社宅跡地。前面道路の本牧通りと擁壁の上に建つ建物の1階レベルは比高差にして2層くらいあり、敷地の最高レベルまでは約24mの傾斜地。

敷地は、市の土砂災害ハザードマップではレッドゾーンの警戒レベル3とイエローゾーンの警戒レベル2のエリアに指定されているが、指定解除のための造成工事が施工済み。建物は雁行設計の南向き3棟とそれぞれの棟とつながる東向けの3棟からなるEの字型6棟構成。デザイン監修にはウィ・アンド・エフヴィジョンを起用。鋭角的な縦と横の白い庇・マリオンが印象的な外観としている。

間取りプランは46タイプ用意。主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2400ミリ、食洗機、ディスポーザー、たからの水に加え、同社初の非接触式エレベーターを完備。共用施設はフィットネスルーム、パーティルーム、キッズルーム、ワークラウンジ、ゲストルームなど。

同社マンション事業本部営業推進事業部第2統括部 副統括部長・金光泰成氏は、「デベロッパーなら喉から手が出るほどの立地と規模。用地取得は昨年2月。取得後約1年かけて地盤・擁壁工事など行い、市のハザードマップのレッド・イエローソーンを解除できる予定になっています。反響は広域にわたっており、50周年記念物件としてスタートダッシュを掛けたい」と話している。

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記者は10年前、現地の道路を挟んだ隣接地で分譲された名鉄不動産「横濱山手テラス壱番館・弐番館」(234戸)を取材している。好調な売れ行きを見せた。当時の記事を見たら坪単価は170万円とあった。

また、数年前、どこの物件だったか思い出せないのだが、その取材の帰り、更地になっていたこの現場を見ている。マンションになったら素晴らしいものができると思ったものだ。

そして今回。同社の創業50周年記念物件というだけあって、商品化にはかなり力が入っているようだ。

問題は価格・坪単価だ。今はすさまじい勢いで価格が上昇しており、ほとんどのエリアで高値を更新している。

ここも高値を更新する可能性が高いと見た。何より魅力的なのは、「根岸風致地区」に隣接するという住環境だ。根岸地先の眺望も担保されており、根岸森林公園(徒歩15分)、本牧山頂公園(徒歩7分)、三渓園(徒歩14分)も徒歩圏だ。

さらにまた、約43haの米軍施設跡地の「根岸住宅地区」の街づくりもこれから本格化し、エリア全体の将来性も期待される。

同社はまだ価格を公表していないが、いったいいくらになるか。

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記者はマンションの現地取材をする際、価格・坪単価予想をする。自らの見る目を養い、デベロッパーや住宅購入希望者の意識・志向とのずれがあるのかないのかを確認するためだ。

価格について触れないのは、例えていえば冷めた紅茶、気が抜けたビール、伸びたラーメン、サビ抜きの寿司、西武と日ハムの消化試合、辛口評論家の甘党、酒屋の下戸、…目と舌の肥えた読者の方の興味を引くことはできず、締まりもないし塩梅がよろしくない。

前置きが長くなった。ズバリ予想。記者と一緒に見学した同業の横浜が地元の記者の方は「坪単価は、造成工事費にもコストがかかっており坪290万円くらいで、坪300万円超もありうる」と話した。

「現地から見える首都高速湾岸線の外側に広がる根岸地先の工場街の夜景はとてもきれいだ」といった。また、「58系統バスは本牧-桜木町-横浜まで通じており、横浜まで約30分で出られるのも魅力だ」と話した。

なるほど。山手駅や根岸駅を利用せず、バスを利用すれば横浜まで約30分というのは説得力がある。夜景がきれいというのは信じられない。かつて磯子プリンスに泊まったとき、工場街は墨を流したように暗い空と一体となり、かといって真っ暗闇にもなれず星などは見られなかったのを経験しているからだ。根岸と磯子の工場街は違うのか。嫌悪施設も遠くから眺めると愛でる景観になるのか。

そのプリンスの跡地に建った坪230万円くらいだった東京建物他「Brillia City 横浜磯子」は素晴らしく、「早期完売か」と予想したが、完売まではかなり時間がかかった。これまで予想を外した物件の最右翼だ。

そんなこんなで記者は、85㎡のモデルルームはとてもよくできていたのだが、山手・根岸両駅への距離も鑑みると坪280万円くらいではないかと予想する。あるデベロッパーの社長にも聞いたら即座に「坪280万円」と返ってきた。読者の皆さんはいくらと予想されるか。

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建設現場

景観風致地区の一角 大和地所レジデンス「ヴェレーナグラン山手」(2018/5/8

好調スタート 名鉄不動産「横濱山手テラス」(2011/2/3

圧倒的な人気呼ぶか東京建物他「Brillia City 横浜磯子」(2012/2/2

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「T-BOX」オンライン発表会

 積水ハウスと東京大学大学院工学系研究科は10月14日、「未来の住まいのあり方」をテーマとした研究および次世代の建築人材育成を目指す「国際建築教育拠点(SEKISUIHOUSE–KUMA LAB)」の研究施設「T-BOX」を東京大学工学部1号館に新設し、同日から順次運用を開始すると発表した。隈研吾・特別教授を中心に世界最高峰の「デジタル×建築」により、次世代の人材育成および住宅イノベーションの実現を目指す。

 「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」は、国際アドバイザーにバリー・バーグドール(コロンビア大学美術史学専攻マイヤー・シャピロ講座教授、ニューヨーク近代美術館(MoMA)建築デザイン部門元主任学芸員)、サラ・M・ホワイティング(ハーバード大学デザイン大学院(GSD)学部長および建築学専攻ホセ・ルイ・セルト講座教授)、佐々木経世氏(イーソリューションズ代表取締役社長)を迎え、国際デザインスタジオ、デジタルファブリケーションセンター、デジタルアーカイブセンターの3つの活動を展開する。

 「T-BOX」は「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」が東京大学内で運営するスペースの呼称で、延床面積約180㎡。デザイン監修はSEKISUI HOUSE - KUMA LAB(担当:隈研吾氏、平野利樹氏、齋藤遼氏)。工作機械や複写機器の設備を備えている。

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仲井氏

 新設を記念するオンライン記者発表会・報道公開イベントで、積水ハウス代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は「SEKISUI HOUSE–KUMA LAB」について、「デジタルテクノロジーを駆使し、国際的な思考と歴史の再認識を重視した活動を展開することにより、未来の住まいのあり方を研究する施設。最先端のデジタル技術の活用や、国際人材の育成を進める東京大学と、人生100年時代における住まいと暮らしについて挑戦する積水ハウス、この両者の産学連携により、新たなイノベーションが生まれることを期待しています」とあいさつした。

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隈氏

 東京大学特別教授でSEKISUI HOUSEーKUMA LABアドバイザーを務める 隈研吾氏は「『T-BOX』が完成したことは、歴史的にも特別な意味があると感じています。そして今、新型コロナウイルスによって、住まい、建築、都市の在り方が大きく変わろうとしています。業界が抱える大きな課題は、リアルとデジタルをどのようにつなぐかということです。建築学科ではこれまで、リアルなものや空間づくりを行ってきましたが、それらと新たなデジタルテクノロジーをどのようにつなぐかということを考えなくてはいけません。本取り組みの目的は、リアルとデジタルをつなぎ直すことです。そして、それを実行できる人材を教育・育成することです。『T-BOX』はリアルとデジタルだけでなく、その他にも様々なものをつなぎ直すと思います」と語った。

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「T-BOX」

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3D プリンタで作成した建築模型(左)と3D スキャナで建築模型をデジタルアーカイブする様子

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 「歴史的な特別の意味を持つ」(隈氏)オンライン発表会は、他の取材と重なったので視聴できなかった。その模様は広報事務局からイベントリポート、資料素材、会見見逃し視聴URLが送られているのだが、もう面倒くさくなり、聴いても訳が分からないだろうとそのままにし、リリースを前段の通りコピペした。どんな凄いことが始まるのか。

 それにしても、大和ハウス工業が2014年、同大学内に隈氏がデザインした「ダイワユビキタス学術研究館」を完成させたし、三井不動産も昨年に「三井不動産東大ラボ」を発足させ、三菱地所は今年4月に東大IPCオープンイノベーション推進1号ファンドへLP出資したように、わが国を代表するハウスメーカー、デベロッパーは東大との連携を強化しているのに注目したい。どこがヘゲモニーを握るのか。

 そういえば、三井不動産には野球メンバーが組めるくらいの東大野球部OBがいる(本業では活躍されているようだが、RBA野球では期待ほど実績を残していない)。

表も裏も美しい 東大「ダイワユビキタス学術研究館」完成(2014/5/14)


 

 農林水産省は10月15日、木材需給・木材価格・木材産業の動向などに関するデータを集約・整理した「モクレポ~林産物に関するマンスリーレポート~」を創刊した。林業・木材産業関係者などの事業活動に役立つ情報を提供するのが目的で、今後、毎月中旬に発行していく。

 創刊号の特集では、概要として①令和2年の総需要(供給)量は7,443.9万㎥で、前年に比べ746.6万㎥減少し、2年連続の減少②国内生産量(国産材)は3,114.9万㎥で、前年に比べ16.1万㎥増加し、平成22年から11年連続で増加。③輸入量は4,329万㎥で、前年に比べ762.7万㎥減少④木材自給率は、前年から4.0ポイント上昇の41.8%となり、平成23年から10年連続の上昇で、木材自給率は48年 ぶりに40%台に回復したとしている。

 基礎的指標としては、2021年1~8月の新設住宅着工戸数は56.3万戸(前年比4.7%増)、うち木造住宅は32.5万戸(同6.8%増)となっていると報告。

 米国の住宅着工戸数(戸建て計)は、コロナ禍による在宅需要の増加と住宅ローンの低金利により、昨年5月から急増。本年3月に173万戸(年率換算)を記録。本年8月は、前月比+5%増の162万戸となったと報告。

 また、2020年末から米国での輸入急増とコロナ禍に伴う港湾処理能力の低下等により、北米にコンテナが滞留して、アジアでコンテナが不足。海上輸送運賃が急激に値上がり、7月は欧州発が横ばいとなる一方、米国発は依然として上昇しているとしている。

 木材価格情報では、 直近のスギ原木価格は前年同期比11%から57%増、ヒノキは前年同期比42%から143%増としている。

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(仮称)早稲田ビルリファイニング工事」(シートが掛かっているのが物件)

青木茂建築工房は1015日、設計・監理を担当した「(仮称)早稲田ビルリファイニング工事」解体見学会を5部に分けて開催。各部ごと4050人が参加するなど人気になった。

物件は、東西線早稲田駅から徒歩5分、新宿区早稲田鶴巻町の早大通りに面した昭和48年に建設された敷地面積239㎡、SRC造一部RC造の8階建て延べ床面積1,216㎡の共同住宅、駐車場、事務所、店舗の複合建築物。リファイニング後は共同住宅、店舗となる。設計は青木茂建築工房(建築)DN-Archi(構造)、ルナ・デザイン・ラボ(電気設備)、ナグモ設備設計事務所(機械設備)。施工は小原建設。竣工は20222月。

既存建築物は、構造耐力、容積率、高度地区が既存不適格で、既存不適格を維持するため増築を伴わない大規模模様替え・用途変更し、建築確認を行い、再度検査済証を取得するもの。

最大の特徴は、法規・環境・構造・意匠を一体とした合理的計画になっていること。28階を共同住宅とするため東京都建築安全条例の規定に基づき避難のための2m四方の吹抜け(ボイド)を建物東側に新設し、さらに2以上の直通階段規定に適法させるために建物西側に2つの階段を新設している。

環境面では、ボイド・階段室からの通風・採光を住戸内・共用部に取り込むことで居住性を高め、外壁にガルバリウム鋼板を採用し、凹凸を設けることで室内の換気量向上に寄与する意匠デザインとしている。

このほか、耐震補強では、袖壁補強、外壁の開口閉鎖を行う一方で、不要なコンクリート壁を撤去するなど建物の軽量化を図り、既存建物重量と比べ約23%の重量が軽減されている。既存建物は台形状で、重心・剛性を担保するため剛心を重心に近づけるための袖壁補強を行っているのがポイント。

耐用年数は、銀行融資を受けるため圧縮強度試験、中性化試験、含水率試験などを行い、躯体の耐用年数は100年超と評価された。

CO2排出量は、既存躯体を再利用し今後50年の使用を想定しているため、同規模の新築と比較して概算で6570%のCO2排出量の削減を実現している。

見学会で青木氏は、「審査機関の担当者は初めて経験することだから無理もないが、やり取りに3か月もかかった」などと課題について話した。

見学会に参加していた元国交相で環境未来フォーラム代表理事・前田武志氏は「壊して建て替えるのではなく、従前のイメージを残しシンボリックな建物に再生したデザインが素晴らしい」と絶賛した。

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見学会

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建物東側のボイド

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建物西側の階段室

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青木氏(左)と前田氏

       ◆     ◇

 現地は、片側二車線の道路の中央分離帯に樹齢数十年と思われる立派なケヤキが植えられており、シンボリックな街並みを形成している。分譲マンションなら坪単価は500万円はしないはずだが、400万円をはるかに突破するのは間違いない。

 前段で書いた通り、今回のリファイニングの最大の特徴は、賃貸マンションとして法規に適合させ、なおかつ商品性を高めるためボイドと階段室を2か所新設していることだ。これは同工房でも初めての試みのようだ。

 住戸プランは内廊下方式の1フロア3戸構成で、全住戸が1LDK2LDKの角住戸となっている。居住性が飛躍的に高まっているのが分かる。

 現場で配布された資料は図が小さいのでよく分からないのだが、開口部はリビング、居室だけでなく、浴室や洗面所、キッチンなどにもあるように思う。

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「妙典行き」の社内表示(左)と横になった「♂」(先生、やはりこれは「オス」ではないか)

 現場には少なくとも5分前に着くように出掛けた。東京メトロ九段下駅で東西線に乗り換えた。3つ先が目的地の早稲田駅だ。ところが車内の案内表示には「妙典行き」とあるではないか。コロナの影響で表示が狂ったのだとすぐ判断し、東京メトロに苦情の一つも言ってやろうと、その証拠のためにカメラに収めた。

 ン? 狂っているのは表示だけでなかった。次の停車駅は「飯田橋」のはずが「次は竹橋」と社内アナウンスが告げたではないか。乗客が騒ぎ立てないのも不思議に思ったが、〝まあ、みんなスマホに夢中になり、眠り呆けているのでこんなこともあるか〟と乗り過ごした。

 ところが、どうだ。次の駅は「神楽坂」ではなく、以前の職場があった「大手町」ではないか。慌てて飛び降りた。狂っているのは電車ではなく、記者だとこのとき初めて気がついた。

 このために、取材現場には10分近く遅刻した。どなたかが何やら話していたが、マスク越しなので声がくぐもってよく聞こえなかった。

 仕方なくあちこちの裸のコンクリを眺めたら、だしぬけに横になった「男」のマーク「♂」が目の前に飛び込んできた。ならば、きっとやはり横になった「」がいるはずだと目を凝らしたが全然いなかった。

 これはおかしい。「オスのマークがあるのにメスのマークはないのはなぜか」と青木氏に聞いた。青木氏は馬鹿にしたように「これは単なる矢印」と答えた。

 この時点でやっと、電車が逆走したのではなく記者が逆走し、矢印を「♂」だと早合点したのは、昨夜、1年半ぶりにデベロッパー社長と飲んだ「酒」のせいにした。あるいは呆けが始まったか。高齢者の皆さん、運転免許は返納した方がいい。夏子さんはいなかった。

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