「まちづくりとはなんだ」 専大生によるドキュメンタリー「変わりゆくまち 神田」
伐採されたイチョウの切り株の映像(ドキュメンタリー「変わりゆくまち 神田」)
「まちづくりとはいったいなんだろう。住民が大切にしてきた文化や歴史を守ることも必要な一方、表面を新しくして便利にすることも必要だ。だからこそ意見の相違も生まれる。それを乗り超えるには話し合いしかないはずだ。そのプロセスを考えることもまちづくりなのではないか。イチョウの切り株が私たちに問いかけているような気がする」
これは、専修大学国際コミュニケーション学部のゼミ生が、神田のまちづくりの現状を探る一環として、12分のドキュメンタリー「変わりゆくまち 神田」にまとめた、その締めくくりのナレーションだ。
まちづくりは言うまでもなく、このイチョウ伐採問題に少なからずかかわってきた〝街路樹の味方〟の記者は、この問いかけにぎくりとさせられた。心臓をわしづかみされたような複雑な気持ちを味わった。
参加資格を問わないドキュメンタリー上映会が4月30日夕、千代田区神田神保町の同大学キャンパスで行われた。
冒頭、専修大学国際コミュニケーション学部・土屋昌明教授は制作に至った経緯・意図について「専修大学の所在地は千代田区なのに区のことをなにも知らない。これではいけない。『千代田学』は区と区内大学の連携協定に基づき、区の助成を受けて行っている調査・研究で、まちと人の多様性を考察することを目的にしている。昨年10月から研究を開始した。まちは開発が進みどんどん変わっている。いま現在残っている姿を映像に記録することは大事なことで、映像はスマホで簡単に撮れる。学生のプレゼンにも使える」と話した。
ドキュメンタリーは、土屋教授のゼミ生4人が今年3月まで半年かけて取材・撮影しまとめたものだ。制作にあたっては、映画監督でもある同学部客員教授・舩橋淳氏が指導した。
ドキュメンタリー上映会(専修大学10号館キャンパスで)
土屋氏
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ドキュメンタリーは、再開発に伴う神田のまちの変貌、区民の声が行政に届かない苛立ち、再開発ラッシュがもたらす問題点を指摘する住民や区議の声が中心だ。いくつか紹介する。
「地上げで散々ぼろぼろにされちゃった。もう古い話だから、皆さんわからないかもしれないが、シャッター開けると不動産屋が土下座してんだよ。信じられないでしょ。で、『売ってください』と。売ったらそのまま転売しちゃって、大手がまとめて再開発するわけですよ」(バブルを経験した地元の商店店主。記者も地上げの現場を何度も取材している)
「(見張っているのは)もう300日ですから、今度の土曜日で。毎日夜中から朝方まで。それしか方法がないんですよね。イチョウに寄り添っていたら、(工事業者が)引き上げることになれば、伐られない可能性があるということですから」(神田警察通りの街路樹を守る会の代表)
「伐ってしまったら歴史も文化もすべてなくなってしまいます。やっぱり未来永劫、まちは変わってもあの木だけは残していただきたい。昔住んでいた方も帰ってらっしゃったとき、ああ、やっぱりここがふるさとだと感じられるはずです。戦中から戦後ずっと見守ってきた木をね、簡単に伐らないでいただきたい」(イチョウが若木だったころを知っている地元居住者)
イチョウに張り付く住民を排除しようとする工事関係者
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どうしてこのような反対者の声ばかりになったのか。それには理由がある。ドキュメンタリーの途中に「直接区役所で話を聞いた。承諾を取って撮影した動画は、のちに映像使用を拒否された」とのナレーションが流れた。区のコメント(回答)は黒地に白抜き文字の1枚のみしかない。次の通りだ。
「伐採反対の住人に説明を求められ、説明会を実施した。かつ、陳情も出たので一旦工事を止めて街路樹を守る会と、胸襟を開いて少人数で意見の交換も行った。それでも一致点は見いだせなかったということになっている」
区のコメント(回答)
動画使用を拒否されたことに対して学生は「インタビューを通じて視点が広がった」「賛成する人も反対する人も、両方から話を聞いた」「コミュニケーションが取れない怖さを知った」などと多くを語らなかったが、土屋教授は「私たちは、大学のゼミの一環として調査・研究しているのであって、行政に取材しているのは行政の施策のPRを代行するためでもないし、伐採問題を取り上げるのは、反対する人たちの代行をするためでもない。PRしか認めない区職員の姿勢はリテラシーに欠ける」と批判した。
舩橋氏も、「区が道路整備についてさらに説明するというなら喜んで伺いたい。続編に反映させる」と語った。作品については、「僕にはできない、いい作品になった。虚心坦懐に話を聞く、色眼鏡でものを見ない姿勢が奏功した。言葉で表現できない<まちづくり>を映像で示してくれた」と称賛した。
ドキュメンタリーはYouTubeで放映されている。記者が書いてきたこれまでの記事も添付する。
舩場氏
「アレ」を「暗黒社会」「ファッショ」に置き換えた…千代田区の仮処分申立書(2023/12/2)
〝やめてくれよ区長さん 千代に千代田のイチョウが泣いている(20230/12/1)
「約束を反故。許せない」住民怒る健全木のイチョウ新たに4本伐採千代田区(2023/2/7)
健全な街路樹を「枯損木」として処分問われる住民自治千代田区の住民訴訟(2022/11/12)
「苦汁」を飲まされたイチョウ「苦渋の決定」には瑕疵続「街路樹が泣いている」(2022/5/14)
民主主義は死滅した千代田区のイチョウ伐採続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/13)
千代田区の主張は根拠希薄イチョウの倒木・枯死は少ない「街路樹が泣いている」(2022/5/12)
マンション平均価格に意味はあるか/どうなる今後の住宅着工 分譲の郊外は増えるか
どこかのテレビは昨日、東京都23区の分譲マンションの平均価格が1億円を超えたと報じていた。バラエティ番組であれ報道番組であれ、記者はこの種の報道を見たり聞いたりするとうんざりする。ものにもよるが、「平均値」は落とし穴が隠されており、実態を正確に測るモノサシにはならないからだ。
例えば、プロ野球選手の年俸。日本プロ野球選手会は毎年、支配下登録選手の年俸を公表しており、昨年は716人の平均年俸は4,713万円、中央値(358番目)は1,800万円と発表した。
平均年俸と中央値にこれほどの差が出るのは、約100人と言われる1億円プレーヤーが平均値を高めているためだ。年俸200~300万円台の育成選手(今年は242名)を含めれば数値の乖離ははもっと大きくなる。(記者は、独立リーグを含めてプロ野球選手の最低年俸は大卒初任給の約360万円以上にすべきだと思っている。わがRBAの選手もプロ並みの700人はいるが、平均年収は700万円はあるはずで、某チームのエースは数千万円だとみている)
似たような例では課税標準額がある。富裕層が飛びぬけて多い東京都港区の令和3年度の納税者一人当たり所得割額は約61万円だが、課税標準額が1億円超の納税者1,250人(全体の0.9%)の一人当たりの所得割額は約225万円だ。
マンションの平均価格も同様だ。元データとなっている不動産経済研究所は、東京23区の供給量11,909戸(シェア44.3%)のうち「三田ガーデンヒルズ」を筆頭とする億ションは4,174戸(首都圏全体に占める割合15.4%、23区に占める割合35.0%)で、これが平均価格を押し上げたとし、首都圏平均は8,101万円、神奈川県は6,069万円、埼玉県は4,870万円、千葉県は4,786万円と発表している。
つまり、値の幅が大きいものの平均値をとっても意味をなさないということだ。マンションの指標で重要なのは専有面積と坪単価だ。単身者向け市場は存在せず、共働きも少数派だったバブル前と市場は変わってはいるが、坪単価がどんどん上昇し、一方で専有面積圧縮が続く今のマンション市場を注視する必要がある。記者は、Wリビングを提案したコスモスイニシア「イニシアクラウド渋谷笹塚」や、長谷工コーポレーションが開発した「Be-Fit」は専有面積圧縮に対応するプランとして注目している。田の字型プランから脱却すべきだ。
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価格動向もそうだが、今後の住宅着工動向に注視する必要がある。令和5年度の持家は前年度比11.5%減の219,622戸となり、月別では28か月減少しているが、これは今後も継続するのか、関係者の間で〝適地がない〟が口癖になっているマンションは郊外部の着工が増えるのか、いわゆるパワービルダーによる〝価格ありき〟の分譲戸建てはどうなるかだ。
貸家が平成30年度から令和2年度まで減少したのは、明らかにレオパレス21の違法建築問題と金融機関の融資審査の厳格化によるものと思われる。その後は持ち直し傾向にあり、今後もしばらくは世帯数の増加が続きそうで、スクラップ&ビルドを繰り返しながら堅調な市場を形成するのではないかとみられる。
問題は持家だ。減少率は2年連続して2ケタ台。建て替え需要は一定程度見込めるが、利便性を重視した高齢者世帯のマンションへの住み替え、新規需要層の所有から利用への意識の変化、今後需要が顕在化するZ世代の〝モノからコトへ〟志向などの懸念材料もある。漸減傾向に歯止めをかけられるか。
分譲住宅はどうか。全国的には漸減しているものの、マンションと戸建ての合計では2年連続して持家を上回った。マンションは、札幌、仙台、広島、福岡などを中心とする地方圏での着工が目立つ。デベロッパーの供給意欲も高く、地方中核都市での着工は増加しそうだ。
首都圏では、23区内では坪単価は400万円を超えつつある。平均的な勤労世帯の取得限界を超えている。大手デベロッパーによる再開発などによる富裕層向けは一段と活況を呈するとみられるが、広さを確保したいファミリー層向けの郊外が増えるかどうか。
いま一つ読めないのが分譲戸建てだ。コロナ禍での予想外の人気は一巡し、供給トップの飯田グループの2024年3月期の決算はどの程度の着地をみるのか。結果いかんでは〝価格ありき〟の商品企画の見直しが迫られそうだ。
しかし、その一方で三井不動産レジデンシャル、野村不動産などの大手デベロッパー、ハウスメーカーの高額戸建ては伸びる可能性が高いとみている。
興味深いのは、埼玉県と千葉県の分譲住宅の着工戸数だ。マンションはあざなえる縄のように絡み合って推移しているが、分譲戸建ては埼玉県が千葉県を毎年4~5千戸上回り、令和4年、5年は神奈川県をも上回った。記者は、埼玉県を本拠にし、圧倒的なブランド力を持つポラスの数値の反映だと思う。同社は今後、都内西部エリアでのマンション供給を増やすとしている。〝ピアキッチン〟が目玉だ。台風の目になる可能性を秘めているとみた。
令和5年度の住宅着工前年度比7%減の80万戸 2年連続減少持家、貸家、分譲とも減る(2024/4/30)
大東建託 2024年3月期 売上高過去最高/賃貸管理戸数2029年に世界一の150万戸
大東建託は5月2日、2024年3月期決算を発表。売上高1兆7,314億円(前期比4.5%増)、営業利益1,048億円(同4.8%増)、経常利益1,087億円(同4.6%増)、純利益746億円(同6.1%増)と増収増益。売上高は過去最高。
セグメント別では、建設事業は工事が順調に進捗し、価格改定効果などにより売上高4,924億円(同7.2%増)、営業利益289億円(同35.5%増)。不動産事業は一括借り上げ物件の増加などにより売上高1兆1,291円(同2.4%増)、営業利益820億円(同0.6%増)となった。受注単価は1億3,667万円(同1,729万円増)、受注ルートはリピートが70.4%(同4.4ポイント増)、新規が29.6%(同4.4ポイント減)、入居者斡旋件数は337,611件(同1.1%減)、居住用入居率(家賃ベース)は97.9(同0.1ポイント減)、2023年度の貸家着工戸数340,395戸に占める同社のシェアは12.6%(同0.8ポイント増)、戸当たり家賃は66,273円。
その他の事業は、マレーシアホテルの稼働率の改善、投資マンションの販売戸数、ビルドセットおよびリノベーション・再販の販売棟数が増加したことなどにより売上高1,098億円(同15.6%増)、営業利益206億円(同36.6%増)となった。
当社はまた、今年創業50年を迎えたことから、次の100年へ向けたグループパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定。中期経営計画(2024~2026年度) として売上高2兆円、営業利益 1,400億円、ROE 20%、配当性向50%などの数値目標を公表。従業員へ譲渡制限付株式の付与、全商品のZEH化などのSDGsの推進・社会課題への対応、3年間で1000億円の不動産投資、北米買取リノベ再販事業へ着手するなど、積極的に事業展開し2029年管理戸数を世界一の150万戸(現在134万戸)に拡大することを目指すと発表した。
2025年3月期予想は売上高1兆8,200億円(前期比5.1%増)、営業利益 1,100億円(同4.9%増)、経常利益1,130億円(同3.9%増)、純利益760億円(同1.8%増)。年間配当金予想は前期比50円増配の575円。
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同社の決算発表・説明会に初めて参加した。増収増益は想定内だった。市場を反映した数値だと思う。住宅着工戸数は社会経済状況の変化などから縮小しており、令和5年度の総数は前年度比7.0%減の約80万戸となった、とくに持家は前年度比11.5%減の約22万戸、分譲住宅は9.4%減の約24万戸と落ち込んだが、賃家は2.0%減の約34万戸にとどまっている。同社が主力とする「賃貸」はオーナーの相続・節税対策などから堅調に推移しているとみることができる。質の悪いものは市場から排除されるが、その都度、新たに建て替えられる、スクラップ&ビルドが健在なのが賃貸市場の特徴のようだ。
資材高騰、24年問題などはあるが、決算発表・説明会に臨んだ同社社長執行役員 CEO・竹内啓氏は「相続税がある限り、賃貸はそれほど落ち込まない。市場は二極化している」と話したように、エリア特性に適切に対応するなどして、今後も価格転嫁は進むと見た。竹内氏は「世界一の賃貸管理戸数150万戸」達成に自信も見せた。
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記者は、全国セーフティネット住宅の登録戸数895,982戸(3月19日現在)に占める同社の登録戸数855,483戸(比率95.5%)について質問したかった。先日、ある地方自治体の担当者の方から匿名の手紙が届いた。手紙の冒頭には「制度の目的と実態の乖離がひどく疑問をもちながら業務に当たっているなかネットで牧田記者のこだわり記事を拝読し…住宅確保要配慮者の住まい確保に有効な制度になるよう発信をお願いします…このシステムは住宅確保要配慮者の空き家探しには全く役立たない…」とあった。
決算説明会出席者がセーフティネット住宅について質問することを期待はしていたのだが、そんな人などいるわけがない。説明会の趣旨、アナリスト、メディアの取材目的を考え、だんまりを決め込んだ。質問すれば、全員から白眼視されるのは目に見えている。
竹内社長、国や自治体関係者の皆さん、業界の皆さん、そしてアナリストやメディアの皆さん、この現場担当者の悲痛な声にきちんと向きあっていただきたい。
巨人の築地移転なし 後楽園とスポーツ・エンタメの2つの聖地へ 三井不など会見
「築地地区まちづくり事業」全体鳥瞰イメージ
三井不動産、トヨタ不動産、読売新聞グループ本社は5月1日、先に東京都の「築地地区まちづくり事業」の事業予定者に選定されたのを受けた記者会見を行い、三井不動産・植田俊社長、トヨタ不動産・山村知秀社長、読売新聞グループ本社・山口 寿一社長がそれぞれ街づくりにかける意気込みなどを語った。会見の会場となった「COREDO室町テラス」にはメディアは約100人、関係者は約50人(記者推定)が集まり、関心の高さがうかがえた。
植田社長は、「『築地』は東京都の大切な財産。国際的競争力を高め、都民から愛され称賛される街づくりを進める。事業参画する11社の知見を惜しみなく注ぎ込む」とあいさつ。「都民の財産」「稀有な土地」「国際競争力の向上」「イノベーション」「感動」「デフレ脱却」「スポーツ・エンタメの聖地」などのフレーズを連発した。
山村社長は「陸・海・空の次世代モビリティへの期待は大きく、街づくりの親和性は高い。トヨタグループとして街づくりとモビリティを結びつける役割を果たしたい」と語った。
山口社長は、「読売新聞社は今年創刊150周年。新聞発行と並んで長年にわたってスポーツ、文化、エンタメの分野で事業展開してきた経験を活かし、大勢の方に楽しんでいただける施設を作っていきたい」と語った。プロ野球巨人軍の本拠地移転については「前提にしていない」と否定した。
左から山口氏、植田氏、山村氏
会見会場(COREDO室町テラス 3階 室町三井ホール&カンファレンス)
メディア
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読売巨人軍の本拠地移転について記者団から質問が飛んだ。山口氏は「巨人軍の本拠地移転を前提としてマルチスタジアムの提案を行ったわけではない。(「ぜひ移転をという声があったら移転検討の余地はあるか」という質問には)プロ野球球団の本拠地移転は大仕事で、調整も必要。巨人軍だけで決められるものでもない」と本拠地移転を否定した。植田氏も「東京ドームと築地の二つのスポーツ・エンタメの聖地を目指す。シナジー効果を発揮するはず」と語った
東京ドームが完成してから35年経過するが、年間来館者が4,000万人にも達するように、巨人の試合だけでなく様々なイベントにも利用されており、フル稼働の状態だ。今すぐ築地に移転するメリットはないと両社は判断したようだ。
しかし、今回の「築地」再開発と後楽園・水道橋の再開発はリンクしており、いずれ後楽園・水道橋の再開発計画は浮上すると記者はみている。
隣接する後楽園飯店が入居する「後楽園ホールビル」東京ドームシティ アトラクションズ(旧後楽園ゆうえんち)」などは古く、容積をかなり余しているのではないか。再開発すれば超高層ビルがいくつも建つのではないか。
再開発の要件も揃っている。東京ドームシティを含む文京区後楽一丁目及び春日一丁目の約22.1haは都市計画公園「後楽園総合公園」として指定されており、このうち「未供用」の面積が2.83haある。
この「未供用」の面積がとても大事な数字だ。都は平成25年12月、「公園まちづくり制度」を創設し、都市計画決定からおおむね50年以上経過し、かつ未供用区域の面積が2.0ha以上の都心部の都市計画公園・緑地を民間の力を活用して整備することを打ち出した。
神宮外苑の再開発が可能になったのも、秩父宮ラグビー場を中心とする約4.7haが未供用になっていたからだ。実態として共用か未供用かは問われない。「後楽園総合公園」の再開発は、神宮外苑と同様の手法を使うことができる。公園に近接して築42年の19階建てトヨタ自動車東京本社ビルもある(神宮外苑の伊藤忠本社ビルは築44年)。トヨタグループが築地プロジェクトに参画しているのは後楽園再開発の布石だと見た。面積も後楽園のほうが広い。
植田氏は〝二つの聖地〟をつくり、スポーツ・エンタメ分野で独走することを〝日々妄想〟しているのは間違いない。同社は3月1日、商業施設事業とスポーツ・エンターテインメント事業の連携を加速させるため、「商業施設本部」を「商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部」に改称し、ソリューションパートナー本部の「東京ドーム事業部」を同本部に4月1日付で移管すると発表している。
マルチスタジアム入口イメージ
隅田川芝生広場イメージ
国際見本市・大型複合コンベンションイメージ
MICEホワイエイメージ
築地の森とベイサイドデッキイメージ
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東京都は4月19日、「築地地区まちづくり事業」事業者を三井不動産など11社の「ONE PARK×ONE TOWN」に決定したと発表した。三井不動産が選ばれるとは思っていたが、構成員にはやや驚いた。大手ゼネコン5社の一角、大林組はどうして入っていないのか、三井不動産と親密な関係にある読売新聞社はともかく、読売の天敵であるはずの築地が本拠地の朝日新聞社と、〝世界のトヨタ〟はどのような役割を果たすのか…なども興味深い。
もう一つ、驚いたことがある。採択された「ONE PARK×ONE TOWN」のほかにもう一つAグループの提案があり、都は「Aグループは、ヒアリングを含む審査を通じて、参加資格要件及び基本的な条件を一部満たしていないことが確認されたことから、失格が相当と判断した」としている。Aグループの提案者はどこか不明だが、情けないの一言だ。
考えてみれば、三井不動産は「ミッドタウン東京六本木」「HARUMI FLAG」「横浜市旧市庁舎街区活用事業」「神宮外苑」「南船橋」などビッグプロジェクトのコンペは連戦連勝だ。他の大手デベロッパー、ハウスメーカーはどうしたのか。三井不動産に〝街づくり〟の独走、〝一強〟を許していいのか。
◇ ◆ ◇
東京都が4月19日に発表した「築地地区まちづくり事業」は、三井不動産を代表企業とする11社によるコンソーシアム。同社とトヨタ不動産、読売新聞グループ本社の3社が開発・運営責任を負う企業で、建設は鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店、設計は日建設計、パシフィックコンサルタンツ、協力企業は朝日新聞社、トヨタ自動車となっている。
事業地は、中央区築地五丁目及び築地六丁目各地内に位置する築地市場跡地の都有地約19万㎡(指定建ぺい率80%、容積率500%/700%)、総延床面積約117万㎡、総事業費約9,000億円。期間70年の定期借地権付き。貸付料は4,497 円(月額/㎡=年間換算で102億円)。開業時期は2030年代前半以降(一部施設は29年度に先行開業)。
主要建物は大規模集客・交流施設(マルチスタジアム)、ライフサイエンス・商業複合棟、MICE・ホテル・レジデンス棟、舟運・シアターホール複合棟など合計9棟のほか、陸・海・空を結ぶ次世代型交通拠点(東京駅と臨海部を結ぶ臨海地下鉄の新駅、首都高晴海線出口と接続、空飛ぶクルマの実用化を見据えたポート、隅田川沿いに、観光・通勤の舟運ネットワークの拠点となる舟運施設)、バス、タクシーなどが乗り入れる交通ターミナルなど。
マルチスタジアムは、世界屈指の可変性と多機能性を備えた約5万人(用途に応じて2万~5万7000席に可変)収容の屋内全天候型施設。可動席と仮設席を活用し、用途に応じてフィールドと客席が形を変え、スタジアム、アリーナ、劇場、展示場へと専用化する超多機能施設(想定イベント:ラグビー、野球、サッカー、バスケットボール、eスポーツ、MICE、音楽ライブ、コンサート、演劇など)。
建物省エネ、自立・再生可能エネルギーの利用、蓄熱・蓄電などの都市インフラと緑被率を約40%確保するなどグリーンインフラの整備を行い、環境共生型の街づくりを行う。
野球・ソフトボールイメージ
アメリカンフットボール・サッカーイメージ
アイスホッケー・フィギュアスケートイメージ
コンサートイメージ
陸・海・空の広域交通結節点イメージ
ホテル・レジデンス棟低層部イメージ
ステップテラスと築地ゲートイメージ
令和5年度の住宅着工 前年度比7%減の80万戸 2年連続減少 持家、貸家、分譲とも減る
国土交通省は4月30日、令和5年度の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は前年度比7.0%減の800,176戸となり、2年連続で減少。持家、貸家、分譲住宅とも減少した。
内訳は、持家が219,622戸(前年度比11.5%減、2年連続の減少)、貸家が340,395戸(同2.0%減、3年ぶりの減少)、分譲住宅が235,041戸(同9.4%減、3年ぶりの減少)。分譲住宅の内訳はマンション100,241戸(同12.0%減、昨年度の増加から再びの減少)、一戸建住宅133,615戸(同7.4%減、3年ぶりの減少)。
令和6年3月の住宅着工は、総数が64,265戸(前年同月比12.8%減)で、内訳は持家16,637戸(同4.8%減)、貸家28,204戸(同13.4%減)、分譲住宅19,189戸(同16.8%減)。分譲住宅の内訳はマンション8,977(同21.1%減)、一戸建て10,113戸(同12.7%減)。持家は28か月連続、分譲戸建ては17か月連続の減少。
あの〝杉乃木〟ホテルと同様 外装材に天然木採用 三井不レジ「城北中央公園」
「パークホームズ城北中央公園」
三井不動産レジデンシャルは4月30日、同社初のマンションの外装材に天然木を採用するなどバイオフィリックデザインをテーマにした「パークホームズ城北中央公園」の物件エントリーを同日から開始したと発表した。
物件は、東武東上線上板橋駅から徒歩9分、板橋区桜川2丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する7 階建て全37戸。専有面積は54.10~85.68㎡、竣工予定は2025年4月下旬。設計・施工は安宅設計・埼玉建興株。「城北中央公園」へ徒歩4分の立地特性を生かし、外装材に天然木を採用し、ルーフバルコニーに1.5以上の樹木を植えられる薄型マットを採用するなど、バイオフィリックデザインの考えを取り入れているのが特徴。
外装材には、兼松サステックの防腐・防蟻処理用木材保存剤「ニッサンクリーンAZN」で加圧式保存処理した国産スギ材に住友林業の木材保護塗料「S-100」を施した建材「SUSTIMBER(サスティンバー)」を採用。同製品は「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」でも採用している。
また、37戸中7戸にルーフバルコニーを設け、ボスケが提供する5~15cmの薄さにも関わらず1.5m以上の樹木を生育することが可能な薄層緑化マット「安行四季彩マット」を分譲マンションで初めて採用。ガーデニングを楽しむことができる。
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文句なしにいい。どれほど素晴らしいかは、同社の「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」の記事を読んでいただきたい。マンションの屋上に森を設けた旭化成ホームズ「アトラス江戸川アパートメント」が最高傑作だが、ルーフバルコニーに1.5m以上の樹木が植えられるマンションなど初めてではないか。モデルルーム見学を申し込んだが…。
建築家・藤本壮介氏「大屋根リング」意義を語る 三井不動産「木と生きる」イベント(2024/4/17)
さすが三井不動産わが国初の本物の木造〝杉乃木〟ホテル「神宮外苑」に誕生(2019/11/13)
野村不HD 2024年3月期 増収増益 賃貸など収益不動産の売却増寄与 増配へ
野村不動産ホールディングスは4月25日、2024年3月期決算を発表。売上高 7,347億円(前期比12.2%増)、営業利益1,121億円(同12.6%増)、経常利益 982億円(同4.4%増)、純利益681億円(同5.6%増)となった。期末配当は従来予想から10円増配し、1株当たり75.0円とし、年間配当金は140.0円となる。
セグメント別では、住宅部門は売上高3,518億円(前期比16.3%増)、事業利益408億円(同22.5%増)と増収増益。収益不動産事業の売却収入が増加した。計上戸数は4,298戸(前期4,142戸)、内訳はマンション3,069戸(同2,718戸)、戸建て385戸(353戸)。期末完成在庫は販売中が248戸(同222戸)、未販売が279戸(同199戸)。次期計上予定売上高3,800億円に対する期首時点の契約率は72.5%。
都市開発部門は売上高2,237億円(前期比12.3%増)、事業利益499億円(同26.4%増)と増収増益。収益不動産事業の物件売却収入が増加した。オフィス・商業の空室率は4.4%(前期4.8%)。
仲介・CRE部門は、売上高495億円(前期比4.0%増)、事業利益134億円(同2.7%減)と増収減益。仲介取扱高は10,204件(前期9,985件)、取扱高は1兆2,218億円(同1兆603億円)、1件当たり取扱高は11,974万円(同10,619万円)。
2025年3月期の通期予想は、売上高7,900億円(前期比7.5%増)、営業利益 1,140億円(同1.7%増、経常利益1,000億円(同1.8%増)、純利益700億円(同 2.7%増)を見込む。配当金は第2四半期末、期末をそれぞれ82.5円とし、年間配当金は165.0円とする予定。
西武グループ・野村不動産 「軽井沢千ヶ滝地区」共同開発で基本協定
西武ホールディングス、西武リアルティソリューションズ、野村不動産の3社は4月26日、「軽井沢千ヶ滝地区プロジェクト」について2024年4月25日付で共同開発に向けた基本協定書を締結したと発表した。
千ヶ滝地区は、1919年に西武グループが分譲を開始した別荘地の中心部に位置する約22ha。かつてはスケートリンク・ホテル・温泉などが存在していたが、現在は軽井沢千ヶ滝温泉のみが営業中。協定により、100年以上の歴史と自然環境を踏まえ、これから先100年を見据えたエリア価値向上に向けた取り組みを行っていく。
ポラス「東武動物公園」「ジャパン・レジリエンス・アワード2024」最優秀賞
「ディスカバリープロジェクト東武動物公園 コネクト・コミュニティ」
ポラスグループのポラスタウン開発は4月26日、同社が開発・分譲した「ディスカバリープロジェクト東武動物公園 コネクト・コミュニティ」が、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会主催の「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2024」の最優秀賞を受賞したと発表した。NPO法人日本防災環境、ユニソンと取り組んだプロジェクトで、3法人での共同受賞。最優秀賞の受賞はポラスグループとして初。
プロジェクトは、東武スカイツリーライン・東武日光線東武動物公園駅から徒歩10分の全37棟(うち25棟が入居済み)の分譲地。災害に強い街をつくるため、「いつも」と「もしも」の境界をなくすフェーズフリーの考え方を取り入れた分譲地。身の回りにあるモノを、日常時だけではなく非日常時にも役立て、災害時には住民同士が助け合う「共助」、自ら主体的に考え行動する「自助」の醸成が自然にできる街と家づくりを目指し、「防災意識の高い街づくり」に挑戦した。
左2人目からポラスタウン開発・内田里絵氏、NPO法人日本防災環境・加藤愛梨氏、ユニソン・鷲津智也氏
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可視化難しい「防災」「コミュニティ」「環境」に挑戦ポラス「東武動物公園」(2023/6/16)
「成長する家」「両立の家」などシンプルで心地よい暮らし5提案 ポラス「高柳」好調
「楽家RAKUYA 松戸・高柳」
ポラスグループのポラスガーデンヒルズは4月25日、“シンプルライフ研究家マキ”さん&LIXILとコラボした分譲戸建て「楽家RAKUYA 松戸・高柳」(全28棟)のメディア向け見学会を行った。「楽家」はシンプルで心地よい暮らしを提唱するもので、今回の「高柳」は、2021年の第一弾「豊四季」(3棟)、2022年の第二弾「流山おおたかの森」(18棟)に次ぐ第三弾。2月2日に第1期15棟を販売開始して以降、これまでに23棟を成約、残りは5棟。好調な売れ行きを見せている。
物件は、東武アーバンパークライン高柳駅から徒歩13分、千葉県松戸市六高台5丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全28棟。土地面積は120.92~126.91㎡、建物面積は95.30~104.17㎡、価格は3,480万~4,450万円。引き渡し予定は2024年7月。
「楽家」では、これまで家族の好みを自由にアレンジする「自由の家」、家事効率を最適化する「時短の家」、家事と仕事の両立を目指す「両立の家」、家族それぞれが憩いの時間を過ごす「休息の家」を提案しており、今回は家族と一緒に成長する子ども目線の「成長の家」を新たに追加した。
「成長の家」は、子どもに「自分で片づける」習慣を身に着けさせるため、玄関を入ってすぐのところに収納「ファミ片」を設けたほか、リビングに設置したベンチ「オキニコーナー」では、子どもの遊び場や読書コーナー、昼寝などができる工夫を凝らしている。ベンチ下にはお片付けボックスも設置している。
“シンプルライフ研究家マキ”さんは、YouTubeチャンネル「エコナセイカツ」やオンラインサロン「シンプルライフ研究会」を主宰し、アパレルブランドとの商品開発、モデルハウスプロデュースなどで衣食住にかかわる企業とのコラボレーションを得意としており、これまでの累計書籍発行部数は29万部。
「オキニコーナー」(左側は奥行きをとり昼寝もできるようにしている)
「オキニコーナー」
〝マキさん〟(現地で)
◇ ◆ ◇
今年に入ってからこれまで東武アーバンパークライン・新京成線沿線では、添付した5物件のマンション・戸建てを見学した。マンションは坪単価200万円以上だ。豊四季では400戸近いマンションが総合地所などによって分譲される。これも坪200万円以下はありえない。20坪で4,000万円以上だ。
今回の「高柳」は、土地面積が40坪以上、建物面積が100㎡前後で、価格は4,000万円前後だ。価格が安いからと言って基本性能が劣っているわけではない。リビング天井高は2700ミリ、サッシ高は2400ミリ。食洗機、床暖房もついており、多用されている引き戸は開閉ともソフトクローズ機能付き、床は突き板フローリングだ。分譲開始から2か月半で全28棟のうち残り5戸にこぎづけられたのは、マンションと比べ圧倒的に安くて質も高いからだ。
「楽家」はコンセプトを明確にしているのがいい。〝マキ〟さんも「万人に受ける必要はない。その人がいいと思う間取り提案」に力を注いでいるというのも大正解だと思う。かつて建売住宅は大量販売を前提にした画一的、没個性的なプランが中心だったが、いまは時代が変わった。多様化しているニーズに応える個性的なプラン提案はありえる。十中八九の人に嫌われても、他にはない〝これがいい〟と決断させる注文住宅に近い提案ができるのが理想的な建売住宅だと思う。
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