「みなとみらい21中央地区」に世界初のゲームアートミュージアム 大和ハウス・光優
「みなとみらい21中央地区 52街区開発事業」
大和ハウス工業と光優は2月21日、世界初のゲームアートミュージアム、地域熱供給プラント、オフィスを併設した「みなとみらい21中央地区 52街区開発事業」を2月22日に着工すると発表した。
事業は、「中央地区」「新港地区」「横浜駅東口地区」から構成される「みなとみらい 21地区」で一番広い「中央地区」での開発で、横浜高速鉄道みなとみらい線新高島駅から徒歩約2分、横浜駅から徒歩約10分に位置する敷地面積約11,818㎡、29階建てオフィス棟と3階建てミュージアム棟の延べ床面積約113,898㎡。設計は久米設計。事業主はオフィス棟がDKみなとみらい 52街区特定目的会社、ミュージアム棟が光優。施工はフジタ・大和ハウス工業特定建設工事共同企業体。着工は2024年2 月22日。竣工予定は2027年5月30日。オープン予定は2027年7月。
敷地の南側には世界初となる最先端のCG技術を用いた体験もできるミュージアム、敷地の北側には様々な業種に対応可能なオフィスと店舗などを構えるオフィス棟、地下には脱炭素社会の実現に向け、地域熱供給プラントを設置する。
また、ミュージアム棟とオフィス棟の間にデッキを設け、周辺の街区との繋がりも形成するなど、『まちを楽しむ回遊性の強化と国際的魅力あふれるビジネス・文化・交流複合拠点を整備した「SMARTOASIS」の実現』をコンセプトに、事業全体の緑地率約 30%を目指す。
坪単価400万円突破か 森田恭通氏の白の外観デザインがいい リスト「湘南辻堂」
「テラスモール湘南」からみた「THE TOWER 湘南辻堂」(以下、写真提供は全て「THE TOWER湘南辻堂」)
リストグループのリストデベロップメントは2月22日、JR辻堂駅前の商住一体開発の「THE TOWER 湘南辻堂」のメディア向け見学会を行った。価格は非公表だが、最近の信じられないような価格高騰、辻堂海岸が一望できる〝駅近〟の立地条件などを考慮すると坪単価は400万円を突破するとみた。
物件は、JR辻堂駅南口から徒歩2分、藤沢市辻堂三丁目の商業地域に位置する29階建て全196戸(一般販売対象外住戸24戸含む)。専有面積は34.90~92.83㎡、価格は未定。竣工予定は2025年9月中旬。外観、住宅エントランスなどのデザイン監修はグラマラス(森田恭通氏)。設計監修は久米設計。設計は久米開発プロデュース、フィールド・デザイン・アーキテクツ一級建築士事務所。施工は鴻池組。販売開始は5月。
12月から広告を開始し、これまで問い合わせ件数は4,000件。地元が中心だが、約1,000件は都内から。
現地は、2009年分譲の20階建て「リストレジデンス辻堂タワー」以来のタワーマンションで、高さ約98.90mはエリア最高峰。駅とは2階部分のペデストリアンデッキで結ばれる。建物は内廊下方式を採用し、1~3階と低層棟は商業施設、住戸は4階以上。住戸プランは、辻堂海岸が見渡せる南向きと反対の北向きがほぼ半々か。タイプは1R:約5%、1LDK:約20%、2LDK:約30%、3LDK:約35%、4LDK:約10%。
主な基本性能・設備仕様は、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機など。共用施設はワークラウンジやオーナーズラウンジ、ゲストルームなど。
見学会で同社経営戦略室課長代理・鈴木篤氏は「5年前に計画はスタート。地権者の方々と対話を重ね、多様な価値観を呼び込み、街の活性化につなげるよう多彩なプランを用意した。森田氏のデザインにもその狙いは表れている。価格は公表できないが、1億円前後が中心となる」と話した。
外観
エントランス
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販売事務所に設置されている模型の外観は、グレーの隔て板以外はほとんどが白。タワーマンションで外観全体が白で美しい物件を見た記憶がない。このデザインは受けるのではないか。とにかく美しい。
森田氏は「建築物はどうしても、人間のスケールよりも大きなものになってしまい、時に圧というものが出てくるので、その圧を払拭させるような軽やかさを意識しました。そういう意味で『呼吸』というワードが常にテーマになりました」「全体的に、素材やマテリアル、色を極力減らし、カラースキームを強いものを使わず、『シンプルでナチュラルでモダン』を意識しました」と、同社のデザインインタビューで答えている。
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肝心の価格は公表されなかったが、価格について触れない記事は気が抜けたビールか、冷めた紅茶、夫婦仲だと思うので、外れるのを承知の上で予想する。
辻堂といえば、駅北側の商業施設「テラスモール湘南」は魅力的だし、何といっても駅直結というのはインパクトがある。湘南の駅近マンションは軒並み坪300万円を超えてきていることを考えれば、常識的には坪400万円を突破しても不思議ではない。モデルルームに充てられている83㎡の東南角住戸の知要望は素晴らしい。このタイプは坪500万円でも人気を呼ぶと見た。北向き住戸の下層階は坪400万円を割るはずだが、均すとやはり坪400万円を突破すると読んだ。27~29階の3フロア12戸は一般分譲の対象外だが、地元の富裕層がターゲットか。ひょっとすると成約のめどが立っているかもしれない。都内居住者の需要開拓が早期完売のカギを握る。
以下は余談。モデルルームを見学中の時だった。確か生まれが湘南で、小生が若手のホープとして期待している業界紙のA記者(35)が、誰も聞かないのに数年前に「プレミスト辻堂」の70㎡台を坪210万円で買ったと明かし、「そのうちの大半はかみさんのぬいぐるみやコスメ、ジーカワ、キャラクターに占領されている。さ買い換え? 売ればローンを支払って1,000万円は残るが、買えるかどうか…明日(23日)はディズニーに行くが、かみさんは『遠い』とぼやいている」などとしゃべった。
Aさんよ、プレミストはいい物件だ。あなたの年収じゃ北向きのワンルームがやっと。浦安、新浦安も同様。買い替えを考えるより、粗大ごみとして捨てられないよう考えたほうがいい。
1階天井高2800ミリ、30㎡のルーフテラス付き9戸 日本エスコン「茅ヶ崎東海岸」(2023/6/19)
大和ハウス 湘南最大級全914戸の「プレミスト湘南辻堂」が完成(2021/1/22)
ChatGPTを活用したAI査定サービス試験運用 三菱地所・三菱地所ハウスネット
三菱地所と三菱地所ハウスネットは2月22日、ChatGPTを活用した住まいのAI査定サービス(ベータ版)の試験運用を2月20日から開始したと発表した。
サービスの対象となるのは、住宅系会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」の一部会員で、顧客が営業担当者に質問するような双方向コミュニケーションが可能で、住まいの価格査定結果をはじめ、住まいの所在エリアのマーケット状況、類似物件の売出事例などの情報を提供する。ベータ版の質問は選択式だが、今後フリーテキストでの入力も検討予定。将来的には、対象の会員を広げることや会員以外も利用できるサービスを展開することも検討している。
両社は2023年9月、住宅購入検討者向けサービス「KAUnSELL(カウンセル)」を共同開発したが、技術開発に当たってはプライスハブルジャパン(PriceHubble Japan)の支援を受けている。PriceHubbleは、スイスを拠点とする200名を超えるスタッフが在籍する不動産テック企業で、デジタルソリューションは全世界1,300社以上に採用されている。
ストンと腑に落ちる「KIZUKI」 家事動線・収納に工夫凝らす ポラス「南桜井」
「KIZUKIの家 南桜井」
昨日(2月22日)の午前中は、新宿駅から1時間以上かかる東武野田線南桜井駅のポラスグループの分譲戸建てを、午後は南桜井駅から約2時間のリストの「辻堂」のマンション(モデルルームは藤沢駅)をそれぞれ見学した。取材時間はそれぞれ1時間くらいだったが、移動に4時間以上かかった。価格はというと、前者は約30坪で3,000万円前後、後者はこの価格ではワンルームの34.90㎡すら買えない〝駅近〟のタワーマンションだ。「南桜井」から先に紹介する。
ポラスグループの分譲戸建ては、東武野田線(東武アーバンパークライン)南桜井駅から徒歩17分、春日部市西金野井字愛宕の第一種低層住居専用地域(従前は農地)に位置するポラスタウン開発の「KIZUKIの家 南桜井」(全26棟)。土地面積は110.06~132.44㎡、建物面積は93.15~101.70㎡、価格は2,480万~3,380万円。昨年11月17日から販売を開始し、これまで供給した第1・2期18戸のうち9戸が成約済み。残りの8戸は2月23日から販売する。
「KIZUKI」は、18歳の高校3年生の息子さんと8歳の小学3年生の娘さんを子育て中のフルタイムで働く“家事と暮らしの研究家” 中山あいこさんとコラボした、日々の暮らしの中で感じるストレスを一つひとつ検証して得た〝気づき〟を商品企画に反映したもの。2019年に供給した「川口」(3棟)を皮切りに、これまでさいたま市内の5現場で供給しており、春日部市では初の物件。子どものおもちゃや衣服、カバンなどを簡単に収納でき、棚やハンガーパイプは高さを変えることが容易な「ずぼらクロゼット」は2022年のグッドデザイン賞を受賞している。
モデルハウスは2棟で、1棟は調理しながら子どもの様子がうかがえる小上がり付きのマルチコーナー(3.4帖大)、メイクや洗濯干し、アイロンがけなども可能な脱衣場、ずぼらクロゼット、大きめのゴミ箱スペース、土間収納などが特徴。
もう1棟は、エントランス-土間収納-ずぼらクロゼット-パントリー-LDK(16.3帖大)の動線に工夫を凝らし、ランドリールームを広く取り、2階の主寝室(7.1帖大)とベッドルーム(5.2帖大)のほか、もう一つのベッドルーム(9.5帖大)は間仕切りで2ベッドルームにも変更が可能。
見学会で中山さんは、「どうすれば家事動線・効率がよくなるかを2013年からブログで発信しており、3月には3冊目の書籍も発売されます。建築の専門ではありませんが、常識にとらわれない提案が共感を呼んでいます」と語った。
販売担当の同社埼玉中央営業所営業課主任・岩瀬純平氏は、「通常の建売住宅の概念を変えられる物件。ありえない価格の安さと『KIZUKI』の訴求ポイントが多いのが特徴。モデルハウスが完成するまでにこれだけ成約が進んでいる。最終3期を販売開始するが、完売のめどが立った」と話した。
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大きな収穫が2つ。一つは中山さんの説明がとても分かりやすく、提案意図がモデルハウスにしっかり具現化されていたことだ。家事・育児経験者はみんなストンと腑に落ちるはずだ。「辻堂」の取材があったので質疑応答の時間までいられなかったのだが、マンションは分譲価格の高騰で収納スペースが削られ、平均専有面積は昭和50年代の約20坪まで退行・縮小している現状をどう思うか中山さんには聞きたかった。
もう一つは、「通常の建売住宅の概念を変える」と強調した岩瀬氏の説明が完ぺきだったことだ。岩瀬氏は同社野球部のエースとして〝孤軍奮投〟してきた。最近は肩やら肘の痛みから3回あたりで降板することが多くなったが、ポラスグループ全体の販売エースになれるのではないか。「ありえない価格」とも話したが、基本性能・設備仕様は決して低くない。
左から3人目が岩瀬氏、その隣が中山さん
内観パース(1号棟)
内観パース(2号棟)
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東武アーバンパークラインについて。同線は建売住宅供給のメッカだった。昭和50~60年代にかけて、同駅もそうだが川間、春日部、豊春、七光台、愛宕、梅郷、江戸川台、初石、豊四季、柏、六実などで年間数千戸が供給されていた。バブル期の南桜井は4,000万円台、5,000万円台ではなかったか。
この日の日経平均株価終値は3万9,098円をつけ、過去最高値の1989年12月29日の38,915円を更新したが、同沿線の建売住宅の価格は当時の6~7掛けではないか。自治体も事業会社も沿線の魅力を伝えきれていない。大宮、春日部、流山おおたかの森、柏、新鎌ヶ谷、船橋でJR・私鉄と接続できる利便性と緑が多い住環境を考えたらもっと高くても売れると思うが…。
モデルハウス(1号棟)
2号棟モデルハウス
国分寺崖線に近接する1低層&全館空調採用 三菱地所レジ「等々力」分譲
「ザ・パークハウス 等々力」
三菱地所レジデンスは2月20日、国分寺崖線の南端の第一種低層住居専用地域に位置する「ザ・パークハウス 等々力」を3月上旬から第一期の販売を開始すると発表した。
物件は、東急大井町線等々力駅・上野毛駅から徒歩8分、世田谷区中町1丁目の第一種低層住居専用地域(1低層)に位置する敷地面積約3,625㎡、地上3階地下1階建て全39戸。専有面積は70.27~133.57㎡、価格は未定。施工は熊谷組。竣工予定は2025年2月上旬。
主な特徴は、①「等々力渓谷」に近接する風致地区に立地②大型犬飼育可能なプラン(6戸)を設け、ドッグパークやペットルームも設置③全館空調システム「マンションエアロテック」を導入④33%超を緑地化し、生物多様性保全のための取り組み「ビオネット・イニシアチブ」、ZEH-M Oriented の採用-など。
エントランス
外観
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昨年11月に見学取材した同社の「ザ・パークハウス 上野毛テラス」(29戸)もいい物件だったが、国分寺崖線がすぐそばで、1低層の全館空調付きであることを考えると、価格はこちらのほうが間違いなく高くなる。
等々力崖線がアプローチのマンションは過去に1件見たかどうかだ。真夏の気温は5~6度は低い。こんなマンションを買いたい。取材を申し込んで記事にしたい。受けてくれるかどうか。
民泊も可能 大和ハウス「沖縄」/増加する分譲ホテル・コンド リゾマンの行方は
「モンドミオ沖縄リゾート ライカムヒルズ」
大和ハウス工業は2月16日、民泊として賃貸が可能で二拠点居住も想定した沖縄県の分譲マンション「モンドミオ沖縄リゾート ライカムヒルズ」の第1期2次(20戸)の販売を2月17日から開始すると発表した。
物件は、沖縄県中頭郡北中城村に位置する敷地面積約5,204㎡、14階建て全129戸。専有面積は63.10~113.41㎡、第1期2次(20戸)の専有面積は63.22~113.41㎡、価格は3,938万円~1億4,098万円。竣工予定は2025年9月。施工は村本建設。
「モンドミオ リゾートスタイル」は、所有者が住宅宿泊事業者となり、民泊として賃貸が可能で、二拠点生活を前提としたセカンドハウス利用も可能。2024年1月20日から第一期1次として50戸を販売開始しており、契約者の約5割は首都圏を中心とした沖縄県外在住という。
現地は、中城湾を見渡す標高90mの高台に立地。県内最大の商業施設のイオンモール沖縄ライカム、中部徳州会病院、北中城村民体育館、ライカム煌保育園などが徒歩圏。建物は「ZEH-M Oriented」仕様とし、建築物省エネルギー性能表示制度「BELS」による第三者認証で最高等級を取得。管理会社が管理組合運営を行う「第三者管理方式」を導入する。共用施設としてゴルフシミュレーターを設置したゴルフラウンジやプレイラウンジ、BBQテラスなどを備える。
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同社は単価を公表していないが、価格からして坪単価は300万円台の半ばではないか。これが高いか安いかさっぱりわからないが、この種の民泊対応が可能な所有権付きマンションや分譲ホテル・分譲コンドミニアムが今後どうなるのかに興味がわく。
沖縄県では、サンフロンティア不動産が2021年2月に分譲コンドミニアムホテル「HIYORIオーシャンリゾート沖縄」(客室数:203室)を開業した。坪単価は350万円くらいで、開業時までにほぼ完売した。
このほか、サンケイビルと東急不動産は昨年12月、箱根町仙石原の「BLISSTIA(ブリスティア)箱根仙石原」63室(ホテルコンドミニアム38室、ホテルレジデンス25室)を開業した。2016年竣工の「フォーシーズンズホテルレジデンス京都」180室(ホテルゲストルーム123室、レジデンス57室)のレジデンスは現在13室が分譲中で、専有面積は83.64~130.28㎡、価格は4億6,380万~7億5,443万円だ。坪単価は1,800万円超だ。2019年12月竣工の「パーク ハイアット ニセコ HANAZONOレジデンス」(113戸)は現在、坪単価1,000万円以上で売買されているようだ。
今後の物件では、リストデベロップメントが2024年12月に長野県白馬村でホテルコンドミニアム「ラヴィーニュ白馬 by 温故知新」38室を開業する。専有面積は53.96〜144.89㎡、第1期(13室)の価格は8,350万円~2億7,340万円。坪単価は600万円くらいか。
また、ビーロットが箱根芦ノ湖畔に面した国立公園内の敷地面積約33,000㎡で「箱根芦ノ湖ホテルコンドミニアムプロジェクト」を推進している。ホテル(NAGAYA)53室とヴィラ(VILLA)21室で構成される。
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このような新しいタイプのホテル・マンションの台頭で、気になるのはバブル崩壊により市場が崩壊した首都圏近郊のリゾートマンションの行方だ。湯河原、箱根、熱海、伊東、下田、河口湖、軽井沢、湯沢、草津、鴨川…トータルすると数万戸に上るはずだ。空き家対策、二拠点居住と絡めさせれば復活・再生はあるのか。
リスト ホテルコンド「(仮称)ラヴィーニュ白馬by 温故知新」来冬開業(2023/12/13)
「駅徒歩5分以内」は坪492万円 4年前から66%上昇 長谷工総研「CRI」調査
長谷工総合研究所「CRI」最新号№546(2024年2月6日発行)の特集記事で、最寄り駅からの徒歩時間別分譲マンション単価の推移を示した図表に目が留まった。
図表は、首都圏の20階以上の超高層物件を除いたデータで、「駅徒歩5分以内」「駅徒歩10分以内」「駅徒歩15分以内」「駅徒歩16分以上・バス便」それぞれの㎡単価を07年から23年の17年間の推移をグラフ化している。
分譲平均価格は07年の4,644万円から23年は8,101万円へ74.7%上昇しており、専有面積圧縮が進行していることを考慮すると、坪単価の上昇率はそれ以上であることが予想されるのだが、「駅徒歩5分以内」の単価上昇が突出している。
詳しく見てみよう。07年は、「駅徒歩5分以内」は坪単価に換算すると198万円(図から推定、以下同じ)、「駅徒歩10分以内」205万円、「駅徒歩15分以内」161万円、「駅徒歩16分以上・バス便」165万円となっている。
その後、14年くらいまではいずれも横ばいか微増にとどまっているが、15年以降は著しく上昇し、とくに19年を境に「駅徒歩5分以内」の上昇幅が目立つ。23年は、「駅徒歩5分以内」492万円、「駅徒歩10分以内」360万円、「駅徒歩15分以内」271万円、「駅徒歩16分以上・バス便」261万円となっており、19年比の上昇率は「駅徒歩5分以内」が65.7%、「駅徒歩10分以内」が35.3%、「駅徒歩15分以内」が8.4%で、「駅徒歩16分以上・バス便」は1.1%マイナスとなっている(単価が下落した分だけ基本性能・設備仕様もダウンしていると思うが)。
分譲価格そのものは、19年から23年まで35.5%の上昇だから、「駅徒歩5分以内」がいかに著しく上昇しているかが分かる。
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駅距離によってこれほど単価差があることに注目したいのだが、その前に注意すべきことが一つある。データには、20階建て以上、いわゆるタワーマンション(タワマン)は含まれていないということだ。全供給量に占めるタワマンの比率はどれだけあるか知らないが、ひよっとすると4~5割くらいに達するかもしれない。ほとんどが駅徒歩10分以内で、単価も相対的に高いタワマンを含めたらデータは違ったものになるということだ。単価差はもっと拡大しているはず。同社がどうしてタワマンを除いたのか、これは分からない。
このことはともかく、これほどまでに単価が異なるのはなぜか。消費者の物件選好が変化したのか、それともデベロッパーの用地取得、戦略によるところが大きいのか。
コロナによって消費者の物件選好が変わったのかについては、正直よく分からない。変わったようで変わっていないとも読める。
例えば、SUUMOが2014年12月12日~2014年12月15日に行った首都圏在住者アンケート調査(有効回答400件)。物件選びで重視したポイントは1位:家賃・価格91.5%、2位:間取り82.0%、3位:最寄駅からの徒歩分数76.0%、3位:面積・広さ76.0%、5位:路線・駅やエリア74.5%、6位:立地・周辺環境74.0%、7位:通勤・通学時間72.0%、8位:築年数(新築含む)59.5%、9位:住戸の向き・方角59.0%、10位:設備・仕様58.5%の順だ。
一方、三菱地所ハウスネットが2022年6月10日~6月22日に行った「コロナ禍における住まいへの意識調査に関するアンケート」(調査数:2,239名)では、「特に考え方に変わりはない」は60.3%にのぼり、「スーパーやコンビニが近い場所に住みたくなった」16.7%、「自然・公園が近い場所に住みたくなった」15.7%、「駅から近い場所に住みたくなった」13.7%、「治安のよいエリアに住みたくなった」13.1%、「医療機関の近い場所に住みたくなった」11.7%、「自治体のサービスが充実したエリアに住みたくなった」10.7゜%、「郊外に住みたくなった」7.4%、「都心部に住みたくなった」7.15、「閑静な住宅街に住みたくなった」6.3%などが続く。(他の調査ではテレワーク用のスペースを求める声が多い)
このように、コロナ以前とコロナ禍で住宅選好に変化が起きたとは思えない。これほど駅距離によって単価差が激しいのは、〝駅近〟〝資産性〟を全面に打ち出した、マンションデベロッパーの牽強付会そのものの販売戦略が奏功していると判断せざるを得ない。
日照権はまったく考慮されず、用途規制もほとんどない〝なんでもあり〟の商業地域立地の物件よりも、広さやみどりを中心とする住環境を重視する消費者がもっと増えていいような気がするのだが…。小生が2018年に書いた「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」の記事は却って〝タワマン〟ブームに火をつけることになったのか。
また怒り沸騰 「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」の本は買うな!(下)(2018/2/8)
住友不も反論「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」の本は買うな!(中)(2018/1/25)
羊頭狗肉だ「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」の本は買うな!(上)(2018/1/24)
ポラス「POHAUS大谷口の家」 国際的デザインアワードIDA2023で金賞受賞
「POHAUS大谷口の家」
ポラスグループは2月16日、国際的なデザインアワード「International Design Awards(IDA)2023」で、「体感すまいパーク東浦和」のモデルハウス「POHAUS大谷口の家」を設計したポラテック・舘林寛佳氏が金賞を受賞したのをはじめ、銀賞6作品、銅賞5作品、佳作8作品を合わせ、過去最多の20作品が受賞したと発表した。
「大谷口の家」は、日本の文化である「和の心」を継承しながら、現代の生活スタイルにあわせた暮らし方ができる住まいを提案した作品で、舘林氏は「格子や障子、土間等、日本古来の建築技術は空間をあいまいに切り結び、独特の中間領域を創り出します。外部空間と内部空間を緩やかに繋ぐだけでなく、縦の『間』、横の『間』を重ねることで間仕切りを無くし、そこに住まう人々が『空間』や『人』の繋がりを感じられるよう設計しました」とコメントしている。
このほか銀賞を受賞した6作品は次の通り。作品名、所属・リードデザイナーの順。
・リーズン馬込沢SuBaCo 中央住宅戸建分譲設計本部・山下隆史氏
・共有樹木を中心とした街づくり 中央住宅戸建分譲設計本部・鈴木征道氏
・マインドスクェア・収育スタイルズ 中央住宅マインドスクェア事業部・佐野公彦氏
・AKUNDANA 中央住宅マインドスクェア事業部 マンションDv・西牟田奈津子氏
・NOEN 柏・逆井 ポラスガーデンヒルズ・工藤政希氏
・道と広場 ポラテックPOHAUS・齊藤吉己氏
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「大谷口の家」は見学しているのでよく覚えている。記事には「『POHOUS』はこれまで数か所は見学しているが…ほとんど瞬時に〝これが一番〟と評価した。記者の見立ては間違っていないはずだ」「玄関を入ってすぐにおしゃれな手洗い場があり、壁は塗り壁、床はカバサクラの突板、巾木は集成材、リビングのテーブルは木目が美しい杉の一枚板、通り土間から差し込む自然光を取り込んだ畳リビング、リモートワーク用の書斎、高低差を演出したスキップフロア、自然木のウッドデッキを敷いた天井付きのインナーバルコニー、檜風呂…」「デザイン性、設備仕様などから判断してコストパフォーマンスが最高に素晴らしい」と書いた。断熱性能も高かった。
銀賞を受賞した各氏の作品はそこそこ見学している。以下に記事を添付する。「柏・逆井」は分譲戸建ての最高傑作だと思う。「デザイン各賞を総なめにする」と書いたが、その通りになったのではないか。
ポラス3か所目の単独住宅展示場「体感すまいパーク東浦和」 開設2か月で550組来場(2021/3/19)
初めて見た30%・50%×200㎡の分譲戸建て まるで別荘 ポラス「柏 逆井」(2023/5/2)
世界3代デザイン賞の一つ「iF デザインアワード」受賞 ポラス「我孫子」/志賀直哉(2023/5/9)
草加市初 景観協定&全棟ZEH 敷地分断・送電線…難点克服 ポラス「草加松原」(2023/11/23)
ピアキッチンだけでない ポラスのマンションはなぜ売れるのか 中央住宅「和光本町」(2023/4/1)
関西初の木造マンション「MOCXION(モクシオン)」完成 三井ホーム
「MOCXION ESPOIR(モクシオン エスポワール)」
三井ホームは2月15日、関西エリアで初となる同社の設計・施工による3階建て木造マンション「MOCXION ESPOIR(モクシオン エスポワール)」が完成したと発表。同日、報道陣にも公開した。
物件は、OsakaMetro谷町線千林大宮駅から徒歩4分、大阪市旭区大宮3丁目の第2種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積約763㎡、木造(枠組壁工法)3階建て延べ床面積約1,324㎡の全47室。専用面積は23.23㎡。家賃は非公表だが6万円前後になる模様。着工は2023年1月、竣工は2024 年2月。管理運営は学生情報センター。
構造躯体に237.2t-CO2(スギの木470本相当)の炭素を貯蔵しており、建物の劣化対策として耐震等級「3」、BELS評価の「ZEH-M Oriented」を取得、一次エネルギー消費量を20%以上削減。同社独自開発の「高性能遮音床システム「Mute(ミュート)」と、構造強度に優れた木質構造断熱複合パネル「ダブルシールドパネル(DSP)」、エントランスの壁、天井などにナラ材の木をそれぞれ採用している。
見学会で同社関西コンサルティング営業部営業グループ長・楢橋隆氏は「管理運営を担当する学生情報センターの意向も考慮し、エレベータは設置しておらず、部屋は全て同じタイプとした。コストを抑え、利回りを上げるために1時間耐火ではなく1時間準耐火構造としているのもポイントで、ZEH-M仕様は差別化につながるはず」と説明した。
エントランス
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これまで見学した「MOCXION」の「稲城」でも「四谷三丁目」でも「北千束」でもなかった。学生マンションだからそうなのだろう。管理人室もなければエレベータもなし。本物の木はエントランスの壁と天井、ベンチくらい。他は居室を含め「木」に見えるのは全て木調シート。居室の天井高は2400ミリ、キッチン(幅約1.2m)、洗面、浴室、トイレ付き。
もう一つ、これまで取材した女子学生会館や学生マンションとは異なるのも特徴だ。千林大宮駅圏には大阪工大キャンパスがあり、ターゲットは同大学の学生が中心になるようだが、男子、女子の入居区別はないという。
これは結構なことだ。〝爺さん〟〝婆さん〟は禁句のようだし、そのうち女流作家、処女作、女流棋士、女子会も死語となるのではないか。女郎花はほとんど絶滅した。(記者の好きな作家の丸山健二氏は「ブラックハイビスカス」で「不平等社会の陰画にほかならない法の前の平等」と喝破しているが…)
RC造とのコストについて報道陣から質問が飛んだ。同社はRC造とのコスト比較は行っていないと答えたが、間違いなくRC造よりは安いはずだ。建築費だけでなく、レンタブル比も90%を超えているはずで、かなり高い利回りが期待できるのではないか。延べ床面積が法定容積率を余しているのは、敷地条件や1時間準耐火構造としたのも理由の一つという。
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現地について、おやっと思ったことがある。駅前の幹線道路沿いの用途地域は商業地域のはずで、高層マンションなども建っていたが、表通りから一歩入った現地周辺の建物は「MOCXION」を含めてほとんど2~3階建てだった。低層の店舗や高層マンション、駐車場も点在していたので、第一種低層住居専用地域ではないことは理解できた(大阪市内には第一種低層住居専用地域は存在しない)。
後で確認したところ、現地は第2種中高層住居専用地域だった。にもかかわらず2~3階建てばかりというのは、道路が狭く土地も細分化されているからだろうが、〝なんでもあり〟の大阪の気質なのだろうか。
千林大宮駅前
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日経平均株価 34年2か月ぶりに過去最高値更新へ 住宅・不動産株の過去と今
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2月13日の東京株式市場の日経平均は終値37,963円をつけ、1989年12月29日の大納会に記録した過去最高値38,915円にあと952円まで迫った。34年2か月ぶりに記録を更新する可能性が高まった。当時と現在の主な住宅・不動産会社の株価を比較してみた。
当時と現在の社会経済状況は、よく似ているところもある。1989年といえば、世の中はリクルート問題が沸騰しており90人以上の政治家などがリクルートコスモスの未公開株を譲り受けたことから、収賄罪、政治資金規正法に抵触する罪で起訴・逮捕された関係者も出た。天安門事件もこの年だった。
為替は、円は1ドル120~150円台で推移し、公定歩合は3度引き上げられ、年初は4.5%だったのが年末は7%に乗った。長短期金利の逆転現象が起きた。
別表を見ていただきたい。1989年12月29日の時点で東証に上場していた不動産会社は一部、二部、店頭を含めて26社。株価は、飛ぶ鳥を落とす勢いにあったマンションデベロッパーの大京が5,800円をつけ、同社に次ぐ供給量を誇っていたダイア建設が8,140円、リクルートコスモスが6,000円をつけている。〝マンション転がし〟が流行語になったように、マンションや株式が投機マネーを呼び込んでいた世相を反映している。その他のデベロッパーやハウスメーカーも概ね2,000円を突破していた。
ところがその翌年の1990年3月、いわゆる銀行の土地融資を抑制する総量規制が実行され、8月にはイラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争が勃発。原油高も重なり、9月には株価が付かないストップ安が続き、マンションの契約率も50~60%台に急落。バブルは完全に崩壊した。
別表の上場企業も、親会社に吸収合併された企業を除きエルカクエイ、ニチモ、ダイア建設、マルコー、第一コーポレーション、セザール、箕輪不動産、殖産住宅、ニッセキハウスの9社が破綻、市場から消えた。さらに2008年のリーマン・ショックにより多くのデベロッパーが市場から退場を余儀なくされた。
さて、現在の株価はどうか。1989年12月29日の株価を上回っている当時の住宅・不動産上場企業は三井不動産、東京建物、住友不動産、スターツ、大和ハウス工業、積水ハウスと関連の長谷工コーポレーションの7社のみだ。このうち上場来の高値圏にあるのは三井不動産、大和ハウス、積水ハウス(スターツも株式分割を行っているので理論値では過去最高値圏にある)。現在も東証に上場している当時の不動産銘柄は9社しかない。消長の激しさを物語っている。全ての企業が高値更新を射程圏に入れているわけでもない。
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1989年のマンション市場について。記者は当時、前職で毎月マンションと分譲戸建ての販売状況を調べていた。少し紹介すると同年11~12月のマンション坪単価は茗荷谷が890万円、代々木が1,694万円、高輪が1,082万円、平塚が426万円、相模原が445万円、溝の口が415万円、松戸が370万円、船橋が352万円、西川口が510万円、軽井沢が492万円…などとある。 その一方で、郊外部では坪200万円を割る物件も結構供給されており、郊外部でも軒並み坪200万円を超えてきている現在とはやや異なる市場を形成していた。
戸建ても同様で、都内物件は軒並み1億円以上で、藤が丘が1億9,000万円台、柏逆井が8,000万円台、高坂が6,300万円台、佐倉が8,000万円台、成田が4,600万円台…それでも売れていた。