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 細田工務店は4月1日、本社内(杉並区阿佐谷南3-35-21)に「杉並区空家等利活用相談窓口」を開設したと発表した。「杉並区空家等利活用相談窓口業務公募型プロポーザル」で同社が選定されたもの。協定期間は2024年4月1日から2029年3月31日までの5年間。

 「相談窓口」では、専門家(建築士、弁護士、司法書士、税理士等)と連携・協力して、区内の空き家の相続、賃貸、改修、売却などの相談に対し、ワンストップで利活用に関する助言・提案を行う。

 問合せは下記の通り。

・電話:03-5397-7717

 ▪メール:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

 ▪ WEB:https://www.hosoda.co.jp/contact/vacant-suginami/

・受付時間:午前9時~午後6時(定休日:水・日曜日※夏期休業、年末年始除く)


 

 

 国土交通省は3月29日、令和6年2月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は59,162戸となり、前年同月比8.2%減、9か月連続の減少となった。内訳は持家16,307戸(前年同月比11.2%減、27か月連続の減少)、貸家24,934戸(同1.0%増、2か月連続の増加)、分譲住宅17,327戸(同17.7%減、2か月連続の減少)となった。分譲の内訳は、マンション7,483戸(同23.3%減、2か月連続の減少)、一戸建住宅9,710戸(同13.3%減、16か月連続の減少)。

 首都圏は貸家(同1.3%増)が増加したものの、持家(同8.5%減)、分譲住宅(同16.7%減)が減少したため総戸数は同8.1%減少した。

 首都圏マンションは4,169戸(前年同月比23.8%減)で、内訳は東京都2,224戸(同21.0%減)、神奈川県885戸(同27.3%減)、埼玉県868戸(同161.4%)、千葉県192戸(同82.6%減)。

 

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「シティテラス多摩川」

 住友不動産・長谷工コーポレーションが分譲中の建て替え「シティテラス多摩川」を見学した。全体で約49ha、賃貸・分譲合わせ約3,900戸の住宅団地「多摩川住宅」の再生を図るプロジェクトの先陣を切るもの。長期優良、ZEH、CASBEE、緑環境などで高い評価を受けているのが特徴で、同社が現在分譲している都内マンションの〝最安値〟の物件でもある。分譲は始まったばかりだが、まずまずのスタートを切った。

 物件は、京王線調布駅からバス13分、バス停から徒歩4~6分(小田急線狛江駅からバス9分、徒歩4~5分)、調布市染地三丁目の第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積約37,638㎡、12階建て10棟全900戸(非分譲住戸244戸含む)。専有面積は30.68~87.01㎡。先着順で販売中の住戸(17戸)の専有面積は55.57~82.62㎡、価格は4,200万円~7,200万円。坪単価は250万円。完成予定はⅠ工区:2024年12月上旬、Ⅱ工区:2025年10月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。

 主な基本性能・設備仕様は、長期優良住宅認定、ZEH-M Oriented認定、直床、リビング天井高2500ミリ(4階までは2550ミリ)、御影石キッチン天板、ミストサウナ、Low-Eガラス(廊下側)など。共用施設はオープンラウンジ、キッズルーム、ゲストルームなど。

 これまでの反響数は1,200~1,300件、モデルルーム来場者は約300件。1月から販売開始しており、これまで約100戸を成約。同社販売担当者は、調布、狛江駅からのバス便だが、住環境、居住環境がいいこと、リモートワークが定着し、都心へのアクセスもよいことからファミリー、プレファミリーのほか近隣の高齢者などからも幅広い支持を受けていると話した。坪単価は同社が現在分譲中の都内物件では〝最安値〟だという。

 「多摩川住宅」は、東京都調布市と狛江市にまたがる約48.9ha(調布市約32.9ha・狛江市約16.0ha)のエリアに、東京都住宅供給公社によって賃貸住宅(1,826戸)と分譲住宅(2,048戸)の3,878戸のほか商業施設、幼稚園、小・中学校などの生活利便施設が整備された1968年竣工の大規模住宅団地。当時、モデル団地として話題になった。

 建物の老朽化が進んだことから2007年に「多摩川住宅まちづくり協議会」が結成され、2017年、調布市・狛江市は地区の地区計画を決定。全体を生活拠点地区、住宅福祉複合地区、住宅再生地区(A地区・B地区)、住宅再生促進地区、住宅公益複合地区、公共公益地区に分け、12の地区計画が定められている。建て替えは「住宅再生地区」計画に沿って行われるもので、両社は事業協力者として2015年11月に選定された。

 隣接地の狛江市側では、積水ハウス、小田急不動産、長谷工コーポレーションの3社が参加組合員として事業参画している「多摩川住宅ニ棟団地マンション建替事業」1,217戸(分譲戸数未定)が進行しており、2024年度内に着工される予定。このほか12ある計画のうち、調布市内に位置する約820戸の「イ」号棟、約1,400戸の東京都供給公社の賃貸住宅「ロ」・「ハ」号棟は現段階で具体的な建て替え案は決まっていない。

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多摩川住宅(建て替え工事前)

◇        ◆     ◇

 記者は、結婚したときに調布に住み、それ以降今日までずっと京王線沿線に住んでいる京王線ファンで、同社には貸し借りなど一銭もないが、取材をセットしてもらった女性広報担当者の名前を聞くと年甲斐もなく胸がキュンとなり、彼女が眉をしかめるような記事は書けない。マンション購入検討者の方は、このことを念頭に置いて、以下の記事は多少割り引いて読んでいただきたい。

 京王線沿線に住んで40年以上が経過する。見学すべき沿線のマンションはほとんど観ている。数にして数十物件をくだらない。従前の「多摩川住宅」も何度か訪れている。団地が完成してから56年。建物の老朽化、間取りの陳腐化は避けられないが、樹木は年を経るごとに成長し続けている。ケヤキを中心とする保存樹木は調布市、狛江市双方で数十本はあるはずだ。多摩川もすぐそばだ。緑環境・住環境は申し分ない。地区計画の目標でも「豊かに育った街路樹等を活かして,景観性及び機能性を備えた快適な歩行者空間ネットワークの形成を図る」と明記されている。

 この緑環境についてもう少し触れる。2005年(平成17年)10月、住宅用途の床面積が2,000㎡以上の建築物(分譲又は賃貸マンション)を対象とした東京都マンション環境性能評価制度がスタートした。「建物の断熱性」「設備の省エネ性」「再エネ設備・電気」「維持管理・劣化対策」「みどり」の5つの環境性能をそれぞれ★1~3個(満点は★15個)で広告に表示を義務付けているものだ。これまで認定を受けた分譲マンションは845件、このうち「みどり」で★3つを獲得しているものは186件だ。都内では年間1,000物件くらい供給されているはずで、認定を受けている物件比率は4.2%、「みどり」★3つの比率は0.9%だ。調布・狛江市内に限定すると、「みどり」★3つは8件しかなく、うち「多摩川」が7件を占めている。(認定物件は棟数でカウントされているので、物件比率にするともっと低くなる)

 ちなみに、先の5項目すべて★3つ(15点満点)のマンションは9物件しかない。そのうち一物件は同社が事業参画した「武蔵小山パルム駅前地区第一種市街地再開発事業」だ。

 同社を含めたマンションデベロッパーは、高さが日本一だとか規模が最大だとか駅距離が近いとかなどを最大の売りにして宣伝するが、この「みどり」の価値についてもしっかり伝えるべきだと思う。欧米では、街路樹などが果たしている役割・価値を金額に換算する樹木による生態系サービス評価ツール「i-Tree」が普及していると聞く。わが国も導入すべきだ。

 このように考えると、今回の物件の現段階での坪単価250万円は妥当どころか割安感がある。ディスポーザーは付いておらず食洗機はオプション、浴室タオル掛けは1か所などにはやや驚いたが、このレベルが当たり前になりつつあるということだ。このところ供給が目立つ東武野田線(東武アーバンパークライン)でも駅に近い物件の坪単価は250万円になっている(同社の女性広報担当はこの東武野田線を知らなかった)。バス利用を含めて新宿まで30分圏内の「調布」と、都心まで1時間はかかる野田線がどうして等価なのか。

 積水ハウスなどがいつ分譲するか分からないが、記者は坪300万円超もありうるとみている。10月に完成販売される小田急不動産の調布駅近マンションは坪450万円くらいになるのではないか。「多摩川」は半値に近い。多摩川住宅はバス便だが、通勤時は1時間に7~8本運行されている。渋滞も少ないはずだ。

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建築現場

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爛漫の春 咲き乱れるハナニラ

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「多摩川住宅ニ棟団地マンション建替事業」(これから解体工事が始まる)

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記者の昼食(隠れているのは2個入りカツサンド)

 現地取材を終えたのが午後3時過ぎ。何か食べようと思ったが、飲食店はなし。マンションの建築現場に近い「CO-OP」では店内で買ったものを食べられると聞いたので利用した。酒もたばこも不可だったので、スタッフの了解を得てノンアルコールの白ワインを水代わりに飲んだ。

 すると、別の女性スタッフから声をかけられた。「お客さん、上の者に確認しましたら、嗜好品(酒肴品と聞こえたが)のノンアルコールも酒扱いでして…もう飲まれているので今回は結構ですが、お子さんもいますし…次回以降はよろしくお願いします」と言われた。つまり、ノンアルコールはダメだと。

 スーパーで食事をしたのは初めてだった。ノンアルコールも酒扱いとはこれまた初めて。嗜好品の定義はよく分からないが、品名を確認した。「21%ぶどう果汁入り飲料」とあった。隣の小さい子どもとお母さんらしき女性が飲んでいたジュースと変わらないのではないか。子どもに見せたくないのは、雑草を紙コップに活け、ビニールに包まれたトマトを食べる風変わりな枯れ木のような小生を指すのか。

 トマトが好きなので、調布市産のトマトも買って食べた。アメーラほどではないが、美味しかった。

積水ハウス・小田急不・長谷工コーポ多摩川住宅ニ号棟建て替えへ(2023/8/7)

長期優良、ZEH、CASBEE…レベル高いはず住友不&長谷工「多摩川住宅」着工(2022/9/2)

 

Screenshot 2024-03-29 at 08-42-17 【大成有楽不動産】富裕層向け高級賃貸マンション「UNUS.」始動.pdf.png
UNUS.」ブランド メインビジュアル

大成有楽不動産は328日、富裕層向け高級賃貸マンションの新ブランド「UNUS.」(ウヌス)を立ち上げたと発表。現在、第一弾物件「UNUS.白金長者丸」(16戸)を建設中で、今後も「UNUS.」ブランドにふさわしい都心立地での取り組みを検討していく。

UNUS」は、「ひとつの」「唯一の」意味を持つラテン語。ブランドコンセプトは「普通じゃない、ちょっと特別な日常。」

同社は2014年、新築賃貸マンションシリーズ「TERRACE(テラス)」を、2020 年に既存賃貸マンションシリーズ「ReTERRACE(リテラス)」を立ち上げ、TERRACE シリーズはこれまで22物件・1,064戸を供給している。

 

 

 

大和地所レジデンスは327日、20243月期に完成したマンション9物件696戸が全戸完売、全て引渡しを終え、来期(20253月期)完成を予定しているマンションの契約は、80%進捗していると発表した。

また、2023年は、首都圏で1,068戸のマンションを発売し、新築分譲マンション供給ランキングで第6位となった。主な供給物件は、設立30周年プロジェクトの「ヴェレーナグラン北赤羽(総戸数318戸)」や「ヴェレーナグラン菊名の杜(総戸数125戸)」など。

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 これほど供給して完成在庫を出さないのは同社くらいだろう。オープンエアリビング・バルコニー、メーターモジュール廊下、御影石キッチン・洗面カウンター、ミストサウナ、スロップシンクなどの標準装備が他社を圧倒している。

 

 

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xLINK(クロスリンク)丸の内永楽ビル」共用ラウンジ

三菱地所は327日、「丸の内永楽ビル」に41日に開設するフレキシブルオフィス「xLINK(クロスリンク)丸の内永楽ビル」の報道陣向け内覧・体験会を開催。同社執行役常務・荒木治彦氏は、現在同社が所有・転貸する丸の内エリアのオフィス貸付面積約52.4万坪の約2%、1万坪のフレキシブルオフィスを2030年には貸付面積約60万坪のうち約5%、約3万坪に増床し、多様な就業者100万人に最適な空間を提供し、自由でフレキシブルな働き方を実現すると語った。

また、同社フレキシブル・ワークスペース事業部部長・河野安紀氏は、フレキシブル・ワークスペースの事業戦略について「丸の内エリア120haの広域であらゆる形態のオフィスを提供できる強みを発揮し、選択肢の拡大によりワーカーマーケットを育て、サステナブル社会の実現、SDGsにも貢献する」と話した。

同社フレキシブル・ワークスペース事業部 ユニットリーダー・岩本祐介氏は、新設する「xLINK丸の内永楽ビル」の施設概要について説明し、「100坪で賃料は800万円(坪賃料8万円)」などと具体的な賃料も公表した。ラウンジでの酒類の提供は行わない(帰りに寄った丸の内北口ビルでは就業者向けラウンジで酒類の販売を行っていた)。

フレキシブルオフィス「xLINK丸の内永楽ビル」は、「丸の内永楽ビル」の最上階26階約834坪と25階約178坪、合計1,012坪の規模。2名~36名までの什器付サービスオフィス(40個室、約242坪)、20名〜40名程度で利用可能な専用エントランス・会議室付オフィス(8区画、約4284坪)、30名〜70名程度で利用可能な専用エントランス、会議室、コミュニティキッチン、基本什器付ハーフセットアップオフィス(2区画、101坪・143坪)を整備。カフェ、ソロワークブース、フォーカスブース、ミーティングブース、ボックスシート、イベントスペースなど多彩な用途を持つビル共用ラウンジを併設する。

フレキシブルな契約形態、什器・造作付きのハーフセットアップオフィスとすることで、退去時の原状回復工事範囲を限定。成長企業のステージに応じたステップアップオフィスとして利用可能なのが特徴。

 同社は20224月、フレキシブル・ワークスペース事業部を発足し、それまで新規事業として取り組んできたフレキシブルオフィス事業を統合する形で、本格的にフレキシブルオフィス事業に参入。20232月には、国内48都市・185拠点でフレキシブルオフィス事業を展開する日本リージャスホールディングスをグループ会社化。丸の内では、プロジェクトオフィスとして供給していた「xLINK」を3種類のフレキシブルオフィスにリブランド、ビルテナントが利用できる共用ラウンジの新設に合わせて、「xLINK」の併設も進めている。20234月に開業した「xLINK丸の内パークビル」「xLINK丸の内パレスフロント」が開業1年未満で稼働率80%以上の安定稼働に移行している。

今後、2024年秋には、「新大手町ビル」3階にビル共用ラウンジを開設すると共に、「xLINK大手町」3期増床を行うほか、2025年春には「丸ビル」に、2028年春には「Torch Tower」への開設を検討している。2030年までに丸の内エリアの貸付有効面積の約5%、3万坪まで拡大する。

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セットアップオフィス(コミュニティキッチン)

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xLINKスカイラウンジ

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 この日配布された資料には、丸の内に本社を構える上場企業は135社で、連結売上高は約155兆円(わが国のGDP9.12%。ちなみに三井グループ25社の連結売上高は約88兆円)、就業者は約35万人とあった。

 坪賃料8万円には驚いたが、共用ラウンジやワーケーション施設、街全体をワークプレイスとして利用できる環境などを考えたら納得もできる。坪賃料で測れない価値がある。

 荒木氏はあいさつの中で「コリアーズのアンケート調査でも、丸の内エリアは働きたい場所として圧倒的に高い支持を受けている」と語った。コリアーズは同社の「丸の内二重橋ビル」に入居しており、先日行われたアンケート調査発表会&記者懇親会を取材した。アンケートはZ世代に聞いたもので、「働きたい場所(駅)」は「丸の内」ではなく「東京」だが、ベスト3は「東京」25.0%、「大手町」19.3%、「有楽町」11.6%なので、「大・丸・有」地区が圧倒的支持を得ているのは間違いない。

 これほど人気が高いのだから、皇居が一望できる一角にマンションを分譲したら「うめきた」の倍、坪5,000万円でも売れると思うのだが…。

オフィスワーカーの欲しい設備「食堂」/Z世代の働きたい場所「東京」 コリアーズ(2024/3/18

「彩」「祭」「才」と「愛」をつなぐ 三菱地所「SAAI(サイ)」新東京ビルに移転(2023/11/17

メタボ増えたが、あらゆるデータが向上三菱地所「本社オフィス体験・懇親会」(2023/11/12

「多様な100万人」の街へ 「Torch」へのブリッジ役「TOKIWA BRIDGE三菱地所(2022/3/26

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「那須 無垢の音」(「水庭」)

 タカラレーベンは3月27日、「那須 無垢の音」のオープニングセレモニー&メディア向け内覧会を開催した。従前の「アートビオトープ那須」をリニューアルしたもので、同社代表取締役・島田和一氏が開発の経緯、ブランドコンセプト、今後の展開などについて語り、ホテル事業の責任者である同社取締役兼執行役員・岩本大志氏が施設の特徴について説明し、施設の〝売り〟の一つである「水庭(みずにわ)」について、設計を担当した建築家・石上純也氏か設計手法などについて語った。ホテルは4月1日にオープンする。

 島田氏は「MIRARTHグループ初となる自社ホテルブランド『HOTEL THE LEBEN』を立ち上げ、2022年に第一弾を大阪・心斎橋でオープンした。今では〝予約が取れないホテル〟として好評をいただいている。2026年12月にはかごしま空港ホテルを開業する。『那須 無垢の音』は、地産の美食と優雅な寛ぎを愉しめる『オーベルジュ』として開業する。ホテル事業は2030年までに2,000室にする目標を掲げている」などと語った。

 岩本氏はホテルの特徴について、「石上純也先生が手掛けた『水庭』、フレンチレストラン、『スイートヴィラ』から構成されており、7月には『B&B(ベッド&ブレークファスト)」も開業する。那須の天然水を地下水脈よりくみ上げ客室に提供し、客室の半露天風呂(一部桧風呂)、那須の旬の食材を楽しんでいただける』と説明した。

 石上氏は、「約50年前は水田だった土地の歴史と、この場所にある自然の素材を生かせないかと、自然と人とが共存するアート『水庭』を構想した。現在の宿泊施設エリアにあった約三百数十本の樹林を采配しなおし、160の池の水は小川から水をひき、昔の水田を表現した。夏には池の水、陸の草、光と影が交わる環境が作られ、秋には色づいた葉が池の中にたまる景色、冬には雪の白、影の黒のモノトーン景色に変化する。それぞれの景色を愉しんでいただきたい」と述べた。

 施設は、JR那須塩原駅から車で30分、栃木県那須郡那須町高久乙道上に位置する敷地面積約35,418㎡、客室数はスイートヴィラ15室(1室82㎡)、カジュアルツイン20室(1室20㎡)、その他施設はレストラン、ワインバー、ショップ、カフェテラスなど。スイートヴィラの宿泊料金は年間平均112,000円~(2名様1室、1泊2日2食付き)。2024年7月にはカジュアルに愉しめるツインタイプの「B&B」をオープンする予定。運営は那須横沢ホテルマネジメント(タカラレーベン100%子会社)。

 従前施設は1986年、栄光ゼミナールの文化事業「二期倶楽部」として創業。その後、様々な経緯を経て2007年、MIRARTHと共同事業を開始し、同年、二期倶楽部としては営業終了。2018年に 「水庭」完成。2020年、建築家・坂茂氏設計のスイートヴィラとレストランμ(ミュー)が完成。

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「那須 無垢の音」

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オープニングセレモニー(左から千葉拓海総料理長、石上氏、島田氏、岩本氏、永山総支配人)

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島田氏(左)と石上氏

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ヴィラ客室

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ヴィラ客室

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 この日は他社の取材を優先することに決めていたのだが、前日(26日)夜、「那須 無垢の音」を取材させていただくことに変更した。キャンセル・取材申し込みを受けていただいた両社に感謝申し上げる。

 「那須」を取材することを決めたのは、同社のホテル事業がどのようなものかこの目で確かめたかったのと、島田社長が何を話すか、石上氏が設計した「水庭」とはどんなものか、とても興味があったからだ。

 結果は大正解。同社が目指すホテル事業はワクワクするほど魅力的で、石上氏の「水庭」は人工ではあるが那須の自然木を見事に調和させている。さらにまた、ヴィラ、レストランμ(ミュー)の設計を建築家の坂茂氏が手掛けたことを初めて知らされたが、全てが本物でそのレベルの高さを確認することができた。

 まず、島田氏の挨拶。リリースでは触れられていないが、島田氏は真っ先にこのリゾートに出会ったのは10年昔であることを明らかにした。10年前と言えば、島田氏が社長に就任した年だ。その数年前から同社のマンションが劇的に変わったのを記者は確認している。一言でいえば〝非日常の演出〟だ。その舵取りを行ったのが島田氏だ。

 今回、島田氏直々に「水庭」を案内してもらった。島田氏は「現在ある『水庭』の場所は砂利敷の駐車場だった。こんなになるとは夢にも思わなかった」とも語ったが、ひょっとしたら、今日の姿を夢想していたのではないか。10年構想と考えれば腑に落ちる。

 〝非日常の演出〟と書いたが、記者はマンションの究極はホテルだと思っている。自腹を切って名だたるラグジュアリーホテルに宿泊したのも、究極のマンションとはどのようなものかイメージするためだった。これ以上は書かないが、皆さん、どこでもいいから同社のマンションを見学していただきたい。「福岡天神」と「上尾」の記事を添付した。

 「水庭」とはどんなものか。上段の石上氏のコメント通りだが、驚いたのはその設計手法だ。記者は造園のことはわからないが、樹木の移植はとても難しく、下手をすると多くは枯死するという。枯死させないためには事前の根回し・根巻がとても大事だと聞いている。

 ところが、石上氏は根回し・根巻を行わず、自然らしさを演出するために普通の造園では考えられないミリ単位で設計し、日本に3台しかない機械を使って1日1~2本ずつ、2年間(冬場は作業できない)かけて三百数十本の高木(クヌギが中心)を移植したという。そうすることで、生物多様性の宝庫でもある地中のいきものたちへのダメージも軽減できるのだという。移植から6年経過しているが、枯死の事例は十数本にとどまっているという。そしてまた驚いたのは、倒木を防ぐため地中1~2mに支柱を埋め込み、池の水は川から引いたもので、水そのものはただで、循環させているという。写真を見ていただきたい。見事の一語に尽きる。

 ヴィラも素晴らしい。何が素晴らしいかと言えば、全てが本物であることだ。樹林-テラス-室内のプランニングが素敵で、2階建てではなくスキップフロアを巧みに利用した平屋建てなのもいい。さすがプリッツカー賞の坂氏だ。(山形の「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」も見たいと思っているのだが…お金がない。今年、同賞を日本人として9人目の山本理顕氏が受賞したのもとても嬉しい)

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水庭

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水庭

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 島田社長は、2030年までホテル事業を2,000室にすると語った。那須塩原も競争は激化するはずで、「楽観はしていない」ようだが、「水庭」と「坂茂のヴィラ」の素晴らしさを伝えきれれば、「大阪」のように〝予約の取れないリゾート〟に生まれ変わるかもしれない。

富裕層の心揺さぶるタカラレーベン創業50周年記念「福岡天神」約1年で完売(2023/2/4)

地所レジから専有卸受け分譲タカラレーベン「上尾」1年で全183戸完売の勢い(2019/7/30)

まさに紙わざ ヒントは「6」坂茂氏が設計した芝浦工大のレストラン&カフェ(2022/10/25)

 

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ROOFLAG

記者はずっと分譲マンションや分譲戸建てを取材してきたからでもあるのだが、賃貸住宅にはいいイメージを持っていない。入居者がもっとも大切な顧客であるはずなのに、敷金、礼金、原状回復など時代遅れの商習慣を墨守し、大家・投資家の利回りを優先し、コストを下げるために居住面積を圧縮し、遮音・断熱などあらゆる基本性能・設備仕様レベルを落とす(だからこそマンションが売れるのだが)。あろうことか、高齢者を理由に入居を断る。レオパレス21の不祥事で賃貸業界への疑念は頂点に達した(この会社は好きになれず、一度も取材したことがないのは幸いだった)。

 その賃貸事業分野で断トツの大東建託も取材したことはこれまでほとんどなかった。発祥は名古屋なので、わが故郷・三重県の三交不動産などと共に応援したい気持ちはあったが、取材の間口を広げようとは思わなかった。

 ところが先日行われた、大和ハウス工業と同社との賃貸住宅の「災害における連携及び支援協定」締結発表会を取材して、同社の見方を修正しなければならないと思った。同社代表取締役社長執行役員・竹内啓氏は、有事に備えた防災訓練を日ごろから行っていると語った。その取り組みは半端でなかったからだ。

 竹内氏の話を聞きながら、後述する住宅セーフティネット制度のことが頭をよぎった。その場で取材を申し込んだ。この日(322日)実現した。場所は、同社の賃貸住宅未来展示場「ROOFLAG」だった。約1時間半、施設を見学し、セーフティネット住宅について大東建託パートナーズ事業戦略企画室メディア戦略課次長・宍戸敏之氏に話をきいた。同社に対する疑念は払しょくされたが、セーフティネット制度に対する疑問、謎はより深まった。

 まず、同社に対する見方から。「ROOFLAG」は、東京メトロ豊洲駅から徒歩11分、江東区東雲一丁目に2020年に完成した木造&RCの混構造4階建て本棟と、木造(2×4工法&CLT)モデルハウス2棟から構成されている。

 本棟アトリウムの天井には国内最大級という三角形のCLT屋根が張られていたのには圧倒された。枚数は128枚、体積は500㎥という。展示室にはCLTの模型もあった。このほか同社の理念・顧客主義などを紹介するコーポレートゾーン、歴史を紹介するヒストリーゾーン、ラウンジなどを見て回った。

 CLT2×4のモデルハウスは、木の素材をふんだんに用いたオーナーズモデルルームや16×16サイズの浴室も提案するなど分譲仕様の提案も行っている。断熱、遮音など構造に力を入れていることが一目瞭然の仕掛けも施されている。

 この時点で、同社に対する疑念は取り払われ、全国に617拠点(2024年4月)を張り巡らせ、賃貸住宅完工が41,238戸/年、賃貸仲介件数23,877件/年、賃貸累計管理戸数1,230,339戸、入居率98.0%(2022年)など圧倒的数字を誇る理由が少しは分かった。

 本題のセーフティネット住宅について。宍戸氏は「319日現在、全国の登録戸数は895,982戸に対して、当社の戸数は855,483戸、比率は95.5%。当社管理建物情報は、国土交通省の協力のもと、毎月25日前後にシステム通じて各自治体への申請(登録・変更)を行っています。賃貸住宅の仕様や性能は、国が定めた基準に沿って決定していますが、当社は、35年間サブリースで管理・運営を行っているため、35年間入居者様に選ばれ続ける建物にする必要があります。それが空室リスクの低減にも繋がることから、一定水準以上の建物性能は必要であるということを、オーナー様にご説明しています。また、マーケティングデータに基づき、社内基準に則り物件の立地ごとの事業性をきめ細かく見極めてオーナー様にご提案しているので、立地や地域性によって一概にパターン分けされるということでもありません。入居審査においては、当社の社内審査チェックに通れば高齢者や外国人、障がいを理由に差別することはありません。敷金もなく、ハウスクリーニング代金として46万円をお預かりしますが、高耐久仕様にしているため、退去時の原状回復はこの範囲内でほとんど収まっています。高齢入居者様のご逝去や、残置物の処理なども相続人の協力を得ながら問題なく対応しております。入居者様の属性の公表については、国からの要請があればご協力させていただきます」などと語った。

 同社の登録件数が群を抜くのは、国の依頼があり、国の基準に適合させたのだろうと思ってきたが、事実は違ったようだ。同社が当たり前のように行っていることを同業の他社はやらない-この後進性はいつになったら改められるのかという問題は残った。

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ROOFLAG」内観

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ROOFLAG」モデルハウス(CLT)

           

「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」の一部を改正する法律が施行されたのは平成2910月。住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度の創設登録住宅の改修や入居者への経済的な支援住宅確保要配慮者に対する居住支援-この3つを柱とするもので、大きな期待が寄せられた制度だ。

 ところが、登録住宅は最初から伸び悩み、2度にわたる登録促進策を施したにもかかわらず、令和元年12月末時点の登録戸数は全国で27,056戸にとどまっていた。そこで普及促進策の第3弾として令和23月、業界団体連携による一括申請(データ連携型)が導入されてから増え始め、20212月末には30.2万戸に増加し、2020年度末までに全国で175,000戸登録という政府目標を大幅に上回った。令和6319日現在、登録住宅は895,982戸となっていることは前段で紹介した。

この数値だけ見ると爆発的な増加だが、率直に喜べない事情がある。上段でも紹介したように、この895,982戸の登録住宅のうち大東建託パートナーズを通じた登録住宅の比率は95.5%だ。同社登録を除くと戸数は約4万戸だ。(空き家活用を想定した)住宅確保要配慮者専用住宅は202312月末時点で5,778 戸(登録住宅の0.7%)しかない。登録住宅の空室率2.3%は大東建託パートナーズの数値そのものだ。

この現状をどう見るか。昨年7月、厚生労働省、国土交通省、法務省による第1回「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(座長:大月敏雄・東京大学大学院工学系研究科教授)が行われた。

 記者は、大東建託パートナーズのみに依存、偏重している現状について各委員から声があがると期待していたのだが、誰一人として声をあげなかった。その時点で検討会の視聴をやめた。肝心要の住宅確保要配慮者とは居住支援とは何かの本質的な議論はされず、山積する様々な課題にどう対応するかに論議が終始すると読んだからだ。

検討会はその後、12月まで5回開かれた。その5回目の会合で「居住支援とは何ぞやという話が第2回目の検討会の最後ぐらいで出てきていました。結局、居住支援ってよく分からないという話になって、それぞれの立場でイメージがずれているという話もそうなのですが」と発言された委員がいたが、それ以上の論議はされなかった。平山洋介・神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授(当時)の著書「マイホームのかなたに」(筑摩書房、20203月刊)で平山教授が指摘した「留意すべきは、多彩な『カテゴリー』を『列挙』すればするほど、住宅セーフティネットの対象が『特殊』で、その構築が普遍性を持つ施策ではないことを示唆する効果が生まれる点である。住宅確保要配慮者の長大なリストの作成は、住宅困窮の範囲を拡大するのではなく、むしろ狭め、セーフティネット政策に『ピースミール・アプローチ』を当てはめる意味を持つ」(233ページ)の通りだと思った。

そして今年2月、中間とりまとめが発表された。とりまとめは「国土交通省、厚生労働省及び法務省においては、本中間とりまとめや関連する制度の諸課題を踏まえ、具体的な見直しに向けて必要な検討を進めるべきである。その際、地域における住宅セーフティネットの機能を強化するため、地方公共団体、不動産事業者、居住支援法人、社会福祉法人、社会福祉協議会、地域生活定着支援センター、NPO、更生保護施設等多様な主体が協働して取り組む仕組みの構築にも資するよう、制度、補助、税等幅広い方策について充実や見直しの検討を進め、可能な限り早期に実施するよう、各省が連携して取り組むべきである」と締めくくっている。-この通りなのだろう。しかし、平山教授が指摘するピースミール・アプローチ=対症療法的な手法では住宅困窮者は救われないような気がする。

◇             

セーフティネット住宅情報提供サイトで東京都の物件を検索したら、ある区の駅近の築35年のマンションの1フロア延べ床面積51.38㎡を対象とした共同居住型住宅(シェアハウス)3室がヒットした。専用面積8.299.95㎡(2.53.0坪)、家賃7.3万~7.6万円(坪賃料2.5万~3.0万円)、敷金3万円、礼金なし。便所、洗面、浴室、台所、収納、洗濯室居室内にはなく、約24㎡のスペースで共有利用する。

 入居対象は女性限定で、低額所得者(生活保護者以外)、被災者、外国人、生活困窮者、犯罪被害者等、DV被害者、児童虐待を受けた者、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)、UIJターンによる転入者などで、ほとんどすべての入居者対象要件を満たしているが、家賃の額が近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないことの要件との整合性は欠いていないのか。この種のシェアハウスは他にも結構ある。

同じ区内には、豪華な2階建て延床面積105㎡で、家賃21.0万円(坪賃料約7,300円)もあった。 

天晴れ 大和ハウス・芳井社長&大東建託・竹内社長の即断即決 賃貸に関する災害協定(2024/3/5

住宅セーフティネットを考える 「住宅確保要配慮者」は400万世帯でも少ない(2023/7/18)

問題山積 要配慮者の居住支援 大家の安心、安否確認、支援法人などテーマ(2023/7/3

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激増セーフティネット住宅 1年で政府目標の2.8 大東建託がけん引/必読の平山論文(2021/7/12

坪3.5万円!億ション以上 現地見ずに家賃判断 審査は適正か セーフティネット住宅(2018/11/9

課題山積〝玉石混交〟市場に百家争鳴 サ高住に関する国交省・有識者懇談会(2018/2/3

 プレハブ建築協会は326日、住宅部会・教育委員会のメディア向け活動状況を報告し、懇親会を開催した。

 「住生活向上推進プラン2025」では、22年度実績は戸建てZEH供給率の目標である80%に対して79.3%、長期優良住宅認定取得率(戸建)85%に対して85.0%、工場生産のCO2排出量(総量)40%減(2013年度比)に対して63.2削減を実現するなと成果目標12項目のうち多くの項目で成果を上げた一方、長期優良住宅認定取得率(共同住宅)、ZEHM供給率(低層共同)などは目標、実績とも低い数値にとどまった。

 環境分科会部門では、計画2年目の22年度は、居住段階、向上生産段階とも前年を上回る実績をとなり、新築のZEH供給率79.3%、改修一次消費量削減貢献量27.1%増、工場生産におけるCO2排出量63.2%減、再エネ電気利用率67.8%などを達成したことから、2025年目標をZEH供給率8580%)へ、改修一次消費量削減貢献量30%増(同15%増)へ、CO2排出量を65%減(同40%減)へ、再エネ電気利用率75%(同30%)へそれぞれ上方修正した。

 このほか、住宅ストック分科会では積極的なリフォーム推進、教育委員会の住宅コーディネーター資格制度運営など幅広い活動が報告された。

地価はさらに上昇基調 いつの時代もマーケットを重視 東京建物・野村均社長

 今回発表された地価公示は、地域や用途により差があるものの、三大都市圏や地方圏でも上昇率が拡大傾向となるなど、地価は全国的に上昇基調を強めている。これは社会経済活動の正常化が一層進むなか、好調な分譲マンション市場に加え、ホテルや店舗需要の回復、オフィス需要の底堅さ、再開発による利便性向上エリアの増加が背景にあると考えられる。

 オフィスマーケットは、好調な企業業績などを背景に、オフィス回帰や業容拡大、人材確保を目的とした好立地・ハイグレードオフィスの需要は引き続き底堅く、空室率も低下傾向にある。新規大型ビルの稼働率も高く、特にサステナビリティやウェルビーイングなどに対応した高付加価値のオフィスビルは今後の需要も一層増大すると見ている。当社も八重洲・日本橋・京橋エリアや渋谷エリアで地権者の皆様と進めている再開発事業において、高い環境性能とワーカーのウェルビーイングなどに配慮した快適なオフィスビルづくりを進めている。

 ホテルや商業施設は、個人消費の回復やインバウンド需要の拡大などにより、国内の人流も増え、観光地や全国主要都市を中心に、ホテルの稼働率や飲食店舗の売上が増加するなど、この先も回復基調の継続が期待できると思われる。当社は今年、ヒルトンのフラッグシップ・ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」として京都初進出となる「ヒルトン京都」をオープンする。同ホテルは京都市中京区の河原町三条に位置し、客室数330を超えるラグジュアリーホテルであり、今後、京都観光の拠点の一つとして重要な役割を担うと同時に京都経済の発展にも貢献するものと考えている。

 物流施設は、施設選別の目が厳しくなりつつあるなか、自動化、冷凍冷蔵、環境性能、ウェルビーイングなどの先進性・機能性・快適性を備え、「2024年問題」などの物流課題解決に資する付加価値の高い施設が一段と求められている。

 分譲マンションマーケットは、建築費高騰や土地代の上昇などにより価格は上昇したものの、低金利の継続やローン減税等の支援策を受け、共働き世帯の増加等もあいまって、市場は好調を維持している。特に、資産性を重視する富裕層やパワーカップル層を中心に、都心部や駅近物件の販売は好調が続いている。当社等が大阪で開発を推進し、今年竣工を迎える「Brillia Tower 箕面船場TOP OF THE HILL」「BrilliaTower 堂島」は、いずれも将来の資産性を重視した顧客層から高い評価を受け、販売は好調である。具体的には、「Brillia Tower 箕面船場TOP OF THE HILL」は、北大阪急行延伸部の新駅となる「箕面船場阪大前」駅にペデストリアンデッキで直結し、駅前整備進展による将来の利便性向上による資産性に、「BrilliaTower 堂島」は、日本初となるフォーシーズンズホテルと一体となった超高層複合タワーという希少性に高い評価をいただいている。

 先日発表された日銀の政策変更による金利上昇はそれほど大幅なものにはならないと見ており、当面不動産市場への影響は少ないと思われる。その他、地政学的リスクや為替変動の影響、国内外の物価動向や人手不足問題等、今後の景気への不安要素もあるが、アフターコロナとなった現在、社会経済活動がさらに活発化し、原材料上昇分の製品価格転嫁、賃金上昇などが進むと、商業地、住宅地、工業地を問わず利便性の高いエリアを中心に、地価はさらに上昇基調を強める可能性がある。

 地価動向には引き続き注視するととともに、当社はいつの時代もマーケットを重視し、お客様のニーズを的確に捉え、お客様が満足する商品の提供と人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりを推進していく。

経済活動の回復の反映 産業競争力強化に貢献 三井不動産・植田俊社長

 今般発表された地価公示では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3 年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。また、三大都市圏・地方圏においても、上昇が継続し、上昇基調を強めています。

 都市部においては、コロナ禍以降、インバウンドを含め人の流れが活発化し、経済が回復基調にあることが、今回の地価公示上昇に反映されていると考えています。オフィスにおいては出社回帰の動きがみられるほか、ホテルや商業施設における集客がコロナ禍前以上の水準で推移、さらに、住宅については堅調なマーケットに支えられて引き続き好調です。足元もこの動向は継続しており、今後のわが国の経済回復に一層寄与すると考えております。また、都市部以外においても、大手半導体メーカーの工場が進出する地域や、Eコマース事業伸長により、大型物流施設用地周辺での地価上昇も見られ、新たな需要創造により経済が活性化されていくということも、今回の地価公示で注目すべき点と考えています。

 先月には日経平均株価が過去最高値を更新し、日銀によるゼロ金利政策も解除されましたが、バブル崩壊後の「失われた30年」にピリオドを打ち、デフレから完全脱却ができるかどうか、2024年はその見極めをする勝負の年だと考えています。デフレのもとでは、付加価値創出のための努力が報われず、中々イノベーションを起こすのは困難でした。しかし、賃金上昇も伴った持続的・安定的なインフレに移行することで、投資の拡大、イノベーションや付加価値の創出、そして、その付加価値をお客様に正当に評価いただく、という好循環が生み出されます。この好循環のもと、日本経済が持続的に成長していくことを期待しています。

 当社グループは、これまでも、日本橋におけるライフサイエンスや宇宙領域での「場」と「コミュニティ」の提供などを通じて、集まる人々や企業のイノベーションや付加価値向上のお手伝いを行い、共に成長してきました。また、スポーツ・エンターテイメントの力を活用するなど、コロナ禍が明け再認識された「リアルの価値」を最大限に高めるミクストユースの「行きたくなる街づくり」も推進しております。

 今回の地価上昇については、我が国の経済活動の回復が反映された結果ととらえています。この経済活動の回復に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして、国富増大に結び付いているとも言えます。当社グループとしましても、イノベーションや付加価値を創出することで、日本の産業競争力強化に貢献してまいります。

マイナス金利解除の影響は大きくない 野村不動産・松尾大作社長

 今回の地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。住宅地については3大都市圏・地方圏のいずれも3 年連続で上昇し、三大都市圏においては上昇率が拡大。地方圏では、地方四市が11 年連続で上昇した。商業地については大阪圏が2年連続で上昇、三大都市圏・地方圏いずれにおいても3年連続で上昇し、上昇率も拡大した。

 住宅市場に関しては、引き続き需要が堅調であることに加えて、マンション供給数が減っていることもあり、需要と供給のバランスが取れていることから売れ行き好調な状況が続いている。日銀が「マイナス金利政策」解除などの政策修正を発表したことを受けて、今後の金利上昇も予想されるが、当社のお客様の多くが変動金利の住宅ローンを利用されており、同ローンの過去の変遷を見る限りでは急激な上昇になるとは考えづらいことから、この影響は大きくないと考えている。但し、建築費高騰は今後も継続すると考えられることなどからも価格下落も想定しにくく、価格に見合った付加価値のある商品を企画していく必要がある。お客様のニーズが益々多様化する中、今後は「サステナビリティ」や「激甚化する災害」に対応した設備も一層求められてくる。

 オフィス市場に関しては、2025年に東京での新規供給が集中するものの、23 区全体のマーケット規模と過去からの供給量を鑑みると、需給バランスが急激に悪化することは考えづらい。当社主力ブランドのPMOを例に話すと、コロナ禍を経て出社や採用を増加している企業が増えてきており、PMO に加えて、サービス付き小規模オフィスのH1O、時間貸しシェアオフィスのH1Tの組み合わせにより、コロナ後の働き方の多様化にも対応出来ていることから、リーシングも順調に推移している。

 2025年にいよいよ竣工予定の「芝浦プロジェクト」S棟では、ワーカーの皆様が多様で新しい働き方を実現できるように、「TOKYO WORKation」をテーマに、都心で空・海・緑を圧倒的に感じられる立地特性を活かした新しい働き方を実現する。ビルの高層階1フロアの約1,500坪全てを「テナント様専用の共用施設」として用意するなど様々な工夫を予定している。

 ホテル市場に関しては、単月ではコロナ前の2019年を上回る訪日外国人数の月も出てきており、ホテル稼働率やADR も高い水準で推移している。商業施設についてはコロナ後の人流回復を受けて店舗需要が回復し、売上高が伸長している。

 物流市場に関しては、4月からの労働規制強化により、長距離ドライバーが不足する2024年問題を眼前に控えている。一方でEC拡大により、業務荷物量は増加傾向にあり、引き続き、物流オペレーションの自動化導入など、物流・荷主企業の抱える課題への解決策を今後も提供していく。

 当社グループでは、「将来自分たちが、どのような価値を社会やお客様に提供している企業グループになりたいのか」の目指す姿を明確にするため、2030年をターゲットとするグループビジョンとして「まだ見ぬ、Life&Time Developerへ」を掲げている。不動産開発や関連サービスの提供を通じて、お客様一人ひとりの様々な生活「Life」や、お客様一人ひとりの過ごす時間「Time」に寄り添うことを大切にしてきた。様々な社会課題に直面し、お客様の生活スタイル・価値観も多様化する中で、当社も変化していく必要がある。自らも変革していくことで、新たな価値を創造し、お客様に多様な付加価値を提供できる不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。

 地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

不動産業界全体の好機 本質的な価値提供 三菱地所・中島篤社長

 令和6年地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続上昇し、上昇率が拡大した。利便性や生活環境に優れた地点の上昇傾向が継続していることや、インバウンド需要を背景とした上昇が目立つ地価動向であったと認識している。

 足元では、日経平均株価の上昇、企業による力強い賃上げ、マイナス金利政策の解除など日本経済が大きく転換しようとしている。この動きを不動産業界全体の好機と捉え、本質的な価値提供を続けていきたい。

 分譲住宅は、都心の高額物件の需要が引き続き旺盛であり、都内では「ザ・パークハウス千代田六番町」の販売が好調に推移している。大阪では、梅田駅前の再開発事業「グラングリーン大阪」至近に計画中の「ザ・パークハウス 大阪梅田タワー」の反響が大きい。賃貸住宅では、フレキシブルな働き方が社会に根付いたことに伴い、居住者が24時間使用出来るコワーキングスペースを併設した「The Parkhabio SOHO」シリーズの引き合いが強い。

 順調なインバウンドの回復を背景に、ホテルやアウトレットも好調に推移している。ホテルでは、インバウンド比率がコロナ前を上回る水準になっており、市況を牽引している。今年2月に開業した「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」や、今年5月に開業予定の「ザ ロイヤルパークホテル 銀座6丁目」などでもこの旺盛な需要を取り込んでいきたい。アウトレットにおいても、インバウンド比率が高まっており、「御殿場プレミアム・アウトレット」などが好調。昨年12月は御殿場を含む複数施設にて過去最高の月商を記録した。

 オフィスは、経済活動の正常化が一段と進んだことで、出社率が上昇傾向にあり、丸の内エリアへの集約移転や業容拡大による増床の動きが活発化している。同エリアの空室率は昨年12月時点で2.88%と低水準を維持しており需要は底堅い。今期は東京駅前の「TorchTower」の他、渋谷や赤坂でも新たに大型複合ビルを着工した。オフィス、商業、ホテル、エンタメなど多様な機能をハード・ソフト両面から整備し、人・企業を呼び込み、巻き込みながら、新しい価値を生み出し続けるまちづくりを実現したい。

 

 

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