〝わが国のイーロン・マスク育てよう〟B2B特化型エクイティ型プログラム 三菱地所
同社の丸の内スタートアップエコシステム概念図
三菱地所は5月14日、世界有数のアクセラレーターである米国シリコンバレーをベースとするAlchemist Accelerator LLCとのパートナーシップのもと、日本におけるスタートアップを対象としたアクセラレーションプログラム「Alchemist Japan」を今秋開催すると発表した。B2B(BtoB)分野特化型のエクイティ型(出資を伴う)プログラムとしてはアジア初上陸となる。
Alchemistは、B2B分野に特化したシードステージのスタートアップを支援するアクセラレーターで、650社以上の企業に投資し、60社以上のEXIT企業(M&AやIPOによる出口を迎えた企業)を輩出。優れた技術や世界を変えようとする志を持つスタートアップを対象としている。
三菱地所は、スタートアップ・エコシステムの形成に向け、丸の内エリアにおいて成長企業やイノベーションを生み出す拠点やイノベーションの創出を支援するプラットフォームを運営、新しい事業を生み育てるエコシステムに必要な多様なプレイヤーを巻き込みながら活動を展開しており、Alchemistの誘致を通じて一層のスタートアップ・エコシステム強化を図る。
また、内閣府の「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」や、東京都の「Global Innovation with STARTUPS」には海外VC・アクセラレーターの誘致がうたわれており、JETROが内閣府・経済産業省・東京都の協力のもと誘致を推進している。
「Alchemist Japan」第1回プログラムは、東京・大手町にあるビジネス支援施設「Global Business Hub Tokyo」で実施されるもので、ファンドからの投資、コーチング、メンタリング、レクチャー、および国内外のファウンダーネットワークへのアクセスが可能で、日本・シリコンバレーのベストマッチングを目指し、両地域のメンター、講師、事業者がスタートアップをサポートする。さらに、グローバルでの活躍可能性があるスタートアップのためのプログラムとして設計されており、準備が整い次第、自動的にサンフランシスコで開催される6カ月のプログラムへ参加可能となる。
募集開始は2024年6月1日(土)、締め切りは7月15日(月)。募集対象は日本発で世界をめざす日系スタートアップならびに世界各国のスタートアップ。募集者数は9~12社。出資額はAlchemist Accelerator Fund から1社あたり約100,000US ドル(予定)。プログラム期間は2024年9月から約3か月間(予定)。
記者会見(大手町フィナンシャルシティ グランキューブで)
協業各者
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記者は、すごいことが始まりそうだと胸ワクワク、押っ取り刀で駆けつけたのだが、会見場に現れた記者は10人いたかどうか。肩透かしを食らった。登壇したのは、三菱地所イノベーション施設運営部長・島田映子氏、日本貿易振興機構(ジェトロ)イノベーション部次長・樽谷範哉氏、Alchemist Accelerator創業者・CEOのRavi Belani氏、Managing Director for Alchemist Japanの眞鍋亮子氏。
4氏が話した中身はちんぷんかんぷん、さっぱりわからなかったが、Ravi Belani氏の英語は同時通訳で日本語に訳されたので、皆さんが何を言わんとしたかはほぼ完ぺきに理解した。わが国が世界の潮流に掉さすこともできず、よどみに浮かぶ病葉であるかを4氏は話した。B2B(BtoB)は圧倒的に遅れており、世界には通用しないこと、Alchemist Acceleratorが提供するプログラムは、わが国から世界に羽ばたこうとするスタートアップを資金面で援助し、わが国の「イーロン・マスク」を生み出そうというものだ。
島田氏(左)と樽谷氏
Ravi Belani氏(左)と眞鍋氏
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わが国経済社会はバブル崩壊をきっかけに転落した。「平成元年、日本経済は“山”の頂上にいた。当時の世界時価総額ランキング上位50社中、日本企業が32社を占めていた」(ダイヤモンド社)のに、今はトヨタ自動車1社のみだ。世界経済はすべてGAFAに支配されているといわれている。一方で、「ガラパゴス」としてわが国と国民は世界から嘲笑されている。
記者はそのことを20年近く前に身をもって思い知らされた。RBA野球大会の取材で中国に行った。北京大学と清華大学それぞれの付属小学校でわが国のRBA野球選手が小学4年生に野球を教えるプログラムがあった。記者は、つけ刃で覚えた中国語で生徒に語り掛けた。
生徒から何と答えが返ってきたか。「Do you not speak english」-全身から冷や汗が噴出した。負けたと思った。子どもたちは英語がペラペラだった。数年後の2010年、GDPは中国に抜かれた。いまはドイツにも追い越され、インドにも抜かれるのは必至という。
GDPだけが国力を測るモノサシだとは思わないが、世界に羽ばたけないのは、大陸に小エビのように反り返ってへばりつくわが国の地政学的な問題と、だからこそ生き残れたかもしれないガラパゴス=日本語だと思う。母語を大切にし、同時に英語、または中国語を日常的に話せるような教育が欠かせないと思う。
しかし、その一方で英語をすんなりと受け入れられない別の小生がいる。中学1年の最初の英語の授業だ。昭和24年生まれの小生はそのころ、ヒロシマ・ナガサキ・オキナワ・パンパンを知っていた。少し勉強ができたのか級長に祭り上げられた小生にに向かって英語の先生は「Stand up!」とだしぬけに命令した。わが国とわがクラスが馬鹿にされたように感じ、起立を拒否した。先生は激怒した。それ以来、英語=アメリカが嫌いになった。同時に、英語・アメリカコンプレックスから抜け出せなくなった。コカ・コーラの誘惑には負けたが、いまでもハンバーガーやフライドチキンはほとんど食べない。
4氏に聞きたい。「コケコッコー」はどうして「cock-a-doodle-doo」なのか、「光陰矢の如し」はどうして「time flies like an arrow」なのか。英語の擬音語は理解できないし、美しい大和言葉はどこの外国語に変換はできないと思う。タイ語はいいですよ。「こんにちは」は「触っていいか(サワッディー・カー)」です。その通り話したらタイの大学の学長からハグされた。
三井グループ25社売上88兆円「三井みらいチャレンジャーズオーディション」発表(2024/3/20)
「彩」「祭」「才」と「愛」をつなぐ三菱地所「SAAI(サイ)」新東京ビルに移転(2023/11/17)
スタートアップと大企業を結ぶイベントに2,100名「住友不動産ベンチャーサミット」(2023/10/25)
大和ハウス リブネス事業 買取再販軸に4000億円に拡大 事業用にも対応
大和ハウス工業は5月15日、業界動向勉強会(不動産ストック事業篇)を開催。住宅ストック事業ブランド「Livness(リブネス)」についてこれまでの実績、今後の展開などを説明するとともに、これまでの「住宅リフォーム」「買取再販」に加え、事業用物件にも対応する新ブランド「BIZ Livness(ビズ リブネス)」を同日立ち上げ、2023年度実績3,537億円を2026年度までに4,000億円に増やすと明らかにした。
「リブネス」は2018年1月、同社グループ全体で戸建て・マンション・事業施設を含む不動産の売買仲介・買取再販・リノベーションなどを行う事業として立ち上げたもの。持家を中心に新設住宅着工が減少する中、既存住宅のリフォーム市場は拡大しており、また新築マンション流通量を既存マンションの流通量が上回るなど伸びしろがあり、空き家の増加に伴う顧客の相談が増えているのに対応するのが狙い。現在、100人近くのリブネス専任スタッブが在籍している。
実績は年々増加しており、2023年度は売上高3,537億円を計上。うち住宅系が2,604億円(73.6%)で、建築系が933億円(26.4%)。内訳はリフォームが1,730億円、買取再販が1,425億円、その他が283億円、仲介が99億円。このうち買取再販はグループ全体で戸建て111棟(39億円)、マンション444戸(241億円)、同社単体では戸建て104棟(36億円)、分譲マンション23戸(8億円)。
今後は「リブネス」で培った再生ノウハウを事業・商業施設にも拡大するため「BIZ Livness(ビズ リブネス)」を立ち上げた。遊休資産の有効活用や収益性を高める施設への再生、工場⇔倉庫などにも対応する。第7次中期経営計画では、最終年度の2026年度までに「リブネス」と「ビズ リブネス」を合わせ4,000億円に増やす計画。
4,000億円のうち住宅系はほぼ横ばいの計画であることについて、同社東京本社経営戦略本部リブネス事業推進部部長・平井聡治氏は「マンションの買取再販は競争が激しく、無理をしないというこということ。リノベマンションで実績が豊富なコスモスイニシアが連結子会社から外れたのも大きな要因」と語った。
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買取再販は、参入障壁はほとんどないことからリーマン・ショック後に激増した。改修費に100万円、200万円をかけただけで、その数倍の利益を上乗せして販売していた業者は少なくなかった。「買取再販」という言葉を聞いただけで嫌悪感をもよおした。記事に責任が持てなかったからだ。
それでも、コスモスイニシアのリノベマンションだけは取材してきた。「コスモスイニシア」「リノベ」「RBA」で検索していただければ数十本がヒットするはずだ。なぜかといえば、同社は1戸1戸、手抜きせずコンセプトを明確にして販売してきたからで、新築マンションの商品企画を考えるうえでとても勉強にもなったからだ。
買取再販市場は今、どうなっているか知らないが、大手・中小が入り乱れ全員参加型の市場を形成しているはずだ。玉石混交市場だろう。
そんな市場に大和ハウスが力を入れるという。コスモスイニシアと激しい仕入れ競争を行うのかと平井氏の話を聞いていた。しかし、そんな展開にはならないようだ。平井氏は「これまでコスモスイニシアさんと一緒に仕事してきた。勉強もさせていただいた。これからもコスモスイニシアさんのレベルを確保していく」と語った。
平井氏の説明の中で〝さすが大和ハウス〟と感心したことがある。平井氏は、リブネス事業は環境・SDGs、ESGの観点からも重要な事業と話したうえで「断熱改修はしっかり行う。これは(芳井)社長の指示」と話した。
勉強会後に確認したら、断熱改修は戸建て対象で、マンションの単板ガラスサッシは共用部分なので改修は想定していないとのことだったが、二重サッシを採用して対応していくことに前向きな考えも示した。リノベマンションの課題の一つは断熱性能をどう引き上げるかだ。
驚愕!用賀12分敷地91坪、建坪52坪で25,800万円大和ハウス・リブネス戸建て(2024/5/15)
環境、都市、住宅、税制への取り組みに重点 不動産協会・吉田理事長
吉田氏(ザ・オークラ東京で)
不動産協会は5月14日、第64回定時総会後に懇親会を開催し、吉田淳一理事長は次のようにあいさつした。
本日は、ご多忙中にもかかわらず、日頃からご支援、ご協力をいただいております関係省庁や友好団体、報道関係の皆様、多数のご出席をいただき、誠にありがとうございます。まず本日、当協会の定時総会が滞りなく終了いたしましたことをご報告させていただきます。
さて、わが国の経済は、緩やかな回復基調にあり、賃上げの実施に伴う経済の好循環の実現が期待されますが、ウクライナやパレスチナ紛争の長期化、インフレの進行、金利の上昇傾向、海外経済の下振れ懸念など、先行きについては不透明な状況にあります。
また、能登半島地震は甚大な被害をもたらしたことから、防災への取組の重要性を再認識させました。安心・安全なまちづくりの一層の加速が求められます。その一方で、少子化・人口減少といった構造的な問題にも直面しており、少子化対策は喫緊の課題です。GXやDXの取組が官民を挙げて推進される中、様々な社会課題の解決を経済成長のエンジンに変え、イノベーションの創出により我が国の国際競争力を高めることが重要です。
こうした観点から、今年度は以下の活動に重点的に取り組んでまいります。第一に、環境政策に関する取組です。2050年カーボンニュートラル達成に向けたサステナブルなまちづくりに取り組んでまいります。そのために、排出削減・経済成長の両立の更なる加速、GXの推進、並びに、新たな課題解決への共創を後押しする環境整備を図っていきます。
そうした中で、省エネへの取組深化、再エネ利用への取組加速・課題解決、まちづくりGX推進への取組支援及び中高層建築物における木材利用の普及促進、ネイチャーポジティブ、サーキュラーエコノミーといった新たな社会課題への対応促進などを図ってまいります。
第二に、都市政策に関する取組です。都市再生の推進により、レジリエンスの強化とともにまちづくりGX及びDXを加速させ、国際競争力の向上を図ることが重要です。まずは多様な災害に対し、都市の強靱化のための施策を検討するとともに、ハード・ソフト両面での取組を進めます。
また、質の高い都市緑地創出の推進や、面的エネルギーネットワークの支援促進とともに、都市の魅力を高める多様な機能集積を図ります。さらに、建築費が高騰しており、再開発などの重要な都市再生プロジェクトが頓挫する懸念がありますので、支援の拡充が求められます。
第三に、住宅政策に関する取組です。多様化する住宅ニーズに対応する環境性能に優れた良好な住宅ストックの形成を目指します。災害に対して安全安心で持続可能な住まいを目指し、耐震・防水性能の向上に取り組みます。
老朽化したマンションの建替を促進するために、マンション建替え円滑化法の改正に関連する諸課題に対応します。併せて、良質な住宅ストックの形成のために、適切な管理の実現を図ります。少子化などの社会課題に対応し、子育て世帯などへの支援措置の充実に取り組んでまいります。
第四に、税制改正に関する取組です。住宅ローン減税等の重要な項目に加え、GXやDXの加速やイノベーション創出、経済社会構造の変化などに伴う課題に対応した政策推進に関連し必要な税制の検討を行い、令和7年度税制改正要望をとりまとめます。
その上で、要望の実現に向け、必要なデータを的確に収集し、効果的かつ機動的な活動を行っていきます。
その他、不動産業の事業環境の向上を図るために、国際化への対応や物流が抱える課題への対応など、幅広く必要な活動を行っていきたいと考えています。
不動産協会としては、これらの活動を通じ、魅力的なまちづくりや豊かな住生活の実現、さらには我が国経済の成長に貢献していきたいと思っております。
本日ご参集の皆様方に、引き続き当協会へのご支援・ご指導をお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
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吉田理事長のあいさつを聞いてうれしかったのは「質の高い都市緑地創出の推進」を掲げられたことだ。同協会の新年会や懇親会は欠かさず取材しているが、「都市緑地創出」に言及されたのは初めてではないか。
吉田理事長としばし歓談した。話はSDGsのバッジに及び、記者と同じ木でできたバッジはどこから入手したのか聞いたところ、MEC Industryが端材を活用して制作したものだという。同社が設立されたのは2020年1月なので、胸にこのバッジをつけられたのはそれ以降のはずだ。記者は2020年1月にAQ Group(当時アキュラホーム)から頂いてからつけている。ほぼ同じころからか。
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前不動産協会理事長で三井不動産代表取締役会長・菰田正信氏ともしばし話し合ったが、菰田氏のすごさを改めて知った。同社の「決算数字は非の打ちどころがありませんが、昨日決算発表があったケイアイスター不動産の1戸当たり営業利益はいくらだと思いますか」と聞いたところ、「100万円」と菰田氏は答えた。同じ質問を同社広報担当者にした。「1,000万円」の答えが返ってきた。
正解は150万円。菰田氏はケイアイスターのことはわからないはずだが、当たらずとも遠からず。広報担当者は大外れで、「勉強不足」と恥じたが、そんなことはない。同社のマンション、戸建ての1棟当たり単価は8,000万円を超える。営業利益率を最低10%とすれば1,000万円予想はありうる答えだ。
これは、世の中を鳥瞰的にみている経営者と、与えられた役割を果たそうとするスタッフの違いだ。
乾杯の音頭を取った菰田氏
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もう帰ろうと思っていたころ、「牧田さん」と声をかけられた。伊藤忠ハウジング取締役経営管理グループ長兼監査課長・西健悟氏だった。RBA野球大会で面高さんや杉山さんが活躍していたころの監督さんだ。
伊藤忠ハウジングがんばれ!西さんをドームに連れていけ!可能性は低いが、ゼロではない。
西氏
地域の歴史・文化を継承し、コミュニティ育む ブルースタジオ 練馬区「種音(たね)」
「種音(たね)」プロジェクト
ブルースタジオは5月11日、練馬区田柄3丁目の新築賃貸住宅「種音(たね)」のメディア・事業者向け上棟時現場見学会を行った。光が丘駅に近いことから宅地化が進み、緑被率が低下しているエリアの地域課題に向き合い、コミュニティ醸成にも配慮した店舗併用賃貸住宅を整備するプロジェクト。見学会では地域住民を対象としたお餅、お菓子まきも行われた。
物件は、都営大江戸線光が丘駅から徒歩12分、練馬区田柄3丁目の第一種中高層専用地域・第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約1,200㎡、木造2階建てA棟4戸、B棟9戸の合計13戸。店舗兼用住宅/店舗併用住宅の専用面積はA棟が70.16~76.78㎡(店舗・アトリエスペース:23.27〜31.49㎡)、B棟が46.78~69.56㎡(同:10.09・17.64㎡)。建築主はGRAT。建築設計はブルースタジオ、設備設計はEOSplus。施工は大和工務店。竣工は2024年10月の予定。「HEAT20グレード3」の取得を予定している。
約1,200㎡の敷地に残っている母屋、既存樹木・庭木、漬物石などをそのまま残し、あるいはデザインにと煮込み、原風景の屋敷林の歴史・文化を継承し、店舗併用賃貸住宅によって地域のコミュニティ向上に貢献する狙いもある。
プロジェクトについて、ブルースタジオ専務取締役クリエイティブディレクター・大島芳彦氏は、「田柄地区は練馬大根の漬物の産地で、戦時中は戦地で重宝がられた軍需産業として栄えた。昭和の40年代ころまでは漬物屋を中心とする屋敷林が残っていた。その後は宅地化が進み、区内でもっとも緑被率の低下が著しい地域となっている。この地域の歴史・文化を継承し、かつ地域のコミュニティを重視する『なりわい賃貸』提案が、オーナーの上野さん(達也氏=42)の『自分たちの敷地の中で家族のように暮らしたい』という意向と一致した。HEAT20のグレード3は賃貸ではそうないはず」と話した。
同様の店舗併用住宅の小田急バスとの「hocco(ホッコ)」の効果も大きいようで、大野氏は「大手ゼネコンやハウスメーカーとも相談していたが、『hocco』を見学してから計画が進んだ。敷地内に予定している店舗はかみさん主導ですが、私としては酒類も提供したいし、前職のアパレルの経験を生かした古着屋を考えている」と語った。
見学会には小田急バス取締役不動産ソリューション部長・下村友明氏も私服で顔を見せており、「hocco」の第二弾「深大寺」を着工したことを明かした。
計画図
大島氏
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「hocco」と似たプロジェクトだが、一低層に位置する「hocco」は店舗などの建築は禁止されているのに対し、今回の物件は道路に面した敷地は一中高なので店舗建設が可能になったのが異なる。将来、母屋をどうするかは決まっていないようだが、市の歴史・文化施設として保存するのもいいのではないか。(ポラスの「蔵」がそうだ)
環境配慮にも力を入れているのもいい。大島氏は「HEAT20のグレード3は賃貸ではそうないはず」と語ったが、同社・水越俊宇氏は「区の指導で緑被率25%を確保するよう求められているが、新たに樹木を植えるので余裕でクリアできる」と語った。記者の希望は最低で30%、できれば40%を目指してほしい。
賃料はいくらになるかわからないが、1,200㎡(363坪)をわが家の庭のように利用でき、かつて経験したことがない「「HEAT20 グレード3」の居住性を享受でき、地域と緩やかにつながる価値をお金に換算したらいくらになるのか。新築マンションだったら坪単価は300万円はする。賃料をはじいていただきたい。
手前の漬物石とその奥の庭木も利活用される
建物の南側のケヤキの大木(藤井氏の熱弁に拍手鳴りやまず 会場100人+オンライン180人 三鷹で講演会記事と一緒に読んでいただきたい)
裏山の借景活かし断熱等級6クリアブルースタジオ賃貸住宅「SUNKA(サンカ)」(2023/12/26)
藤井氏の熱弁に拍手鳴りやまず 会場100人+オンライン180人 三鷹で講演会 更新
「身近な樹木にヒントがあった!【温暖化で熱い路面を20℃下げる方法】を街路樹の研究者に聞く」(三鷹市市民協働センター)
ミライアクションみたかは5月11日(土)、千葉大学名誉教授・藤井英二郎氏と特別ゲストに「コモンズの緑を守る全国ネット」共同代表のロッシェル・カップさんを招いた講演会「身近な樹木にヒントがあった!【温暖化で熱い路面を20℃下げる方法】を街路樹の研究者に聞く」を行った。会場となった三鷹市市民協働センターには定員の70人を大幅に超える100人超が参加。オンライン参加者約180人と合わせ約280人が視聴した。予想外の参加者の多さに、主催者は急きょ席を増やしたり配布資料を増刷したりするのに奔走していた。
講演会は2部構成で、藤井氏は「強剪定はダメ」「枝先は残さないといけない」「(市職員は)素人集団になっちゃった」「左脳は言語論。ここにヒントがある」「地下支柱も問題」「三鷹の宝」「天文台は自然の宝庫」などとトータルで2時間近く熱弁をふるった。講演終了後も人気アーティストのコンサートのように拍手が鳴りやまなかった。
ミライアクションみたかは、三鷹市在住の仲間数人で地域の問題解決のため今年から立ち上げた任意団体。5月17日から5月24日23時まで、今回の講演会の録画配信を次の通り行う。https://youtu.be/YKHRIwIs6zY
藤井氏
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三鷹市の街路樹について藤井氏は、「天文台もそうですし、井の頭もそうです。あれだけの緑地があって、間をつなぐ街路樹をしっかり整備すれば、素晴らしい都市になる。それをぜひ実現していただきたい。三鷹市のポテンシャルは極めて高い。そんなに経費は掛からない。街路樹の剪定の仕方を変えるだけで劇的に変わります。昨日見た隣の武蔵野市の剪定はよくできていた。三鷹市はその点を見直さないといけない。そうすれば仙台がそうなったようにまちは劇的に変わる」とエールを送った。
最後に藤井氏は、「強剪定された街路樹をみて多くの人々は無意識でストレスを感じているんです。感じていながら気づいていない。これは不幸でしょ。無窓疎石は『山水に得失なし 得失は人の心にあり』と言ってるんです。山水は庭です。庭に良し悪しはないよ、良し悪しは人の心の中にあるんだよと。街路樹もそうです。強剪定された街路樹は委縮した心と社会の表れです。だから、木とお互い様だよ、共認している生き物としての感覚でいえば、涼しくもなるし、心も豊かになる。そういう社会を目指そうじゃありませんか」と締めくくった。拍手が鳴りやまなかった。
ロッシェル・カップさんは、神宮外苑の樹木伐採計画が発表されて以降、同時多発的に同様の問題が起きているとし、イギリス発祥のPark-PFIについて、「イギリスでは不人気なのに、日本は行政が音頭を取って推進している」と批判した。
ロッシェル・カップさん
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記者は、10年以上前から「街路樹が泣いている」をテーマに数十本の記事を書いており、藤井先生がどのような話をされるか興味があったので参加した。(講演会の前にもう一つ取材があり、また三鷹駅からの道に迷ったため、第一部の講演会はほとんど聴けなかった)
会場に入って驚いたのは参加者の数だった。藤井氏とロッシェル・カップさんは〝全国区〟ではあるが、まさか街路樹をテーマにした講演会にこれほど多くの人が集まるとは全然予想しなかった。せいぜい20~30人くらいだろうと思っていた。
参加者が多様だったのにも驚いた。この種の講演会はお年寄りの女性が圧倒的多数を占めるのだろうと思っていたが、そうではなかった。男女比はほぼ同じで、30代、40代、外国人と思われる人も多く参加していた。市内にある国立天文台敷地内に小学校を移転させる計画があり、敷地内の樹木が伐採されることに反対している住民も多く参加していた。質疑応答に多くの時間を割いていたのもよかった。講演会はこうあるべきだ。
◇ ◆ ◇
藤井氏は無窓疎石の「夢中問答」(岩波文庫)を引用したが、疎石は最近読んだ中村元「慈悲」(講談社学術文庫)にもたびたび登場する。同著には「自己がすくわれるということは、他人をすくうというはたらきのうちにのみ存する」(248ページ)という疎石の考えを紹介している。生きとし生けるものに対する慈しみ=愛は無限であり、自他不二は真理だ。
樹木の倒壊を防ぐ支柱の整備に関する藤井氏の指摘・問題提起は貴重だ。藤井氏は、支柱を設置していない街路樹のほうが、設置している街路樹よりはるかに成長度合いが大きい調査研究を発表。「樹木は揺れることで成長する」と話した。確か「手荒な環境では、手荒な人間しか育たない」旨の発言もした。
-なるほど。死刑囚などが長期にわたって刑事施設に収監されることによる身体的精神的拘禁反応が問題視されているし、特殊学級教育にも通じることだろう。
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街路樹の剪定を改めるだけで、街は劇的に変わるという藤井氏の指摘は全国の市町村に当てはまることではないか。緑被率だけを見ると、武蔵野市は24.3%、三鷹市は32.5%だ。三鷹市のほうがはるかに高い。
武蔵野市のほうが街のポテンシャルが高いのは街路樹整備と無関係ではないと記者は思う。〝街路樹が泣いている〟記事を書くことにしたきっかけは、すべての街のポテンシャルを引き上げてほしいと思ったからだ。いま〝街路樹が泣いている〟をネットで検索すると、かなりの団体がヒットするが、最初にこの見出しを付けたのは記者だと思う。少しは街路樹に対する関心が高まったことに寄与できたかと思うとうれしい。
今回の講演会参加者が一人でも二人でも今回の藤井先生の話を拡散すれば、ねずみ算に増え、行政を変えることができる。藤井先生は「主役は住民」と語ったではないか。
三鷹中央通りの街路樹(藤井氏も指摘したように、きわめて貧弱)
街路樹を拘禁する三鷹中央通りの金属支柱(金具に樹皮が食い込んでいた。何年間も放置されているはずで、市民はともかく、市民代表の市議が問題にしないのは問題。「ケヤキは絶対強剪定してはダメ」と藤井氏が言った三鷹市牟礼の記事も添付する)
街路樹が泣いている ~街と街路樹を考える~丸坊主にされていた三鷹市牟礼のケヤキ⑤(2012/5/15)
氷の微笑、根回し、考え方更新、都市公園とは…神宮外苑を考えるシンポ千葉商大(2023/12/19)
「まちづくりとはなんだ」専大生によるドキュメンタリー「変わりゆくまち神田」(2024/5/8)
「アレ」を「暗黒社会」「ファッショ」に置き換えた…千代田区の仮処分申立書(2023/12/2)
〝やめてくれよ区長さん千代に千代田のイチョウが泣いている(20230/12/1)
「約束を反故。許せない」住民怒る健全木のイチョウ新たに4本伐採千代田区(2023/2/7)
健全な街路樹を「枯損木」として処分問われる住民自治千代田区の住民訴訟(2022/11/12)
「苦汁」を飲まされたイチョウ「苦渋の決定」には瑕疵続「街路樹が泣いている」(2022/5/14)
民主主義は死滅した千代田区のイチョウ伐採続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/13)
千代田区の主張は根拠希薄イチョウの倒木・枯死は少ない「街路樹が泣いている」(2022/5/12)
ぶった斬らないで神田警察通りのイチョウの独白続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/11)
なぜだ千代田区の街路樹伐採強行またまたさらにまた「街路樹が泣いている」(2022/5/10)
「まちづくりとはなんだ」 専大生によるドキュメンタリー「変わりゆくまち 神田」
伐採されたイチョウの切り株の映像(ドキュメンタリー「変わりゆくまち 神田」)
「まちづくりとはいったいなんだろう。住民が大切にしてきた文化や歴史を守ることも必要な一方、表面を新しくして便利にすることも必要だ。だからこそ意見の相違も生まれる。それを乗り超えるには話し合いしかないはずだ。そのプロセスを考えることもまちづくりなのではないか。イチョウの切り株が私たちに問いかけているような気がする」
これは、専修大学国際コミュニケーション学部のゼミ生が、神田のまちづくりの現状を探る一環として、12分のドキュメンタリー「変わりゆくまち 神田」にまとめた、その締めくくりのナレーションだ。
まちづくりは言うまでもなく、このイチョウ伐採問題に少なからずかかわってきた〝街路樹の味方〟の記者は、この問いかけにぎくりとさせられた。心臓をわしづかみされたような複雑な気持ちを味わった。
参加資格を問わないドキュメンタリー上映会が4月30日夕、千代田区神田神保町の同大学キャンパスで行われた。
冒頭、専修大学国際コミュニケーション学部・土屋昌明教授は制作に至った経緯・意図について「専修大学の所在地は千代田区なのに区のことをなにも知らない。これではいけない。『千代田学』は区と区内大学の連携協定に基づき、区の助成を受けて行っている調査・研究で、まちと人の多様性を考察することを目的にしている。昨年10月から研究を開始した。まちは開発が進みどんどん変わっている。いま現在残っている姿を映像に記録することは大事なことで、映像はスマホで簡単に撮れる。学生のプレゼンにも使える」と話した。
ドキュメンタリーは、土屋教授のゼミ生4人が今年3月まで半年かけて取材・撮影しまとめたものだ。制作にあたっては、映画監督でもある同学部客員教授・舩橋淳氏が指導した。
ドキュメンタリー上映会(専修大学10号館キャンパスで)
土屋氏
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ドキュメンタリーは、再開発に伴う神田のまちの変貌、区民の声が行政に届かない苛立ち、再開発ラッシュがもたらす問題点を指摘する住民や区議の声が中心だ。いくつか紹介する。
「地上げで散々ぼろぼろにされちゃった。もう古い話だから、皆さんわからないかもしれないが、シャッター開けると不動産屋が土下座してんだよ。信じられないでしょ。で、『売ってください』と。売ったらそのまま転売しちゃって、大手がまとめて再開発するわけですよ」(バブルを経験した地元の商店店主。記者も地上げの現場を何度も取材している)
「(見張っているのは)もう300日ですから、今度の土曜日で。毎日夜中から朝方まで。それしか方法がないんですよね。イチョウに寄り添っていたら、(工事業者が)引き上げることになれば、伐られない可能性があるということですから」(神田警察通りの街路樹を守る会の代表)
「伐ってしまったら歴史も文化もすべてなくなってしまいます。やっぱり未来永劫、まちは変わってもあの木だけは残していただきたい。昔住んでいた方も帰ってらっしゃったとき、ああ、やっぱりここがふるさとだと感じられるはずです。戦中から戦後ずっと見守ってきた木をね、簡単に伐らないでいただきたい」(イチョウが若木だったころを知っている地元居住者)
イチョウに張り付く住民を排除しようとする工事関係者
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どうしてこのような反対者の声ばかりになったのか。それには理由がある。ドキュメンタリーの途中に「直接区役所で話を聞いた。承諾を取って撮影した動画は、のちに映像使用を拒否された」とのナレーションが流れた。区のコメント(回答)は黒地に白抜き文字の1枚のみしかない。次の通りだ。
「伐採反対の住人に説明を求められ、説明会を実施した。かつ、陳情も出たので一旦工事を止めて街路樹を守る会と、胸襟を開いて少人数で意見の交換も行った。それでも一致点は見いだせなかったということになっている」
区のコメント(回答)
動画使用を拒否されたことに対して学生は「インタビューを通じて視点が広がった」「賛成する人も反対する人も、両方から話を聞いた」「コミュニケーションが取れない怖さを知った」などと多くを語らなかったが、土屋教授は「私たちは、大学のゼミの一環として調査・研究しているのであって、行政に取材しているのは行政の施策のPRを代行するためでもないし、伐採問題を取り上げるのは、反対する人たちの代行をするためでもない。PRしか認めない区職員の姿勢はリテラシーに欠ける」と批判した。
舩橋氏も、「区が道路整備についてさらに説明するというなら喜んで伺いたい。続編に反映させる」と語った。作品については、「僕にはできない、いい作品になった。虚心坦懐に話を聞く、色眼鏡でものを見ない姿勢が奏功した。言葉で表現できない<まちづくり>を映像で示してくれた」と称賛した。
ドキュメンタリーはYouTubeで放映されている。記者が書いてきたこれまでの記事も添付する。
舩場氏
「アレ」を「暗黒社会」「ファッショ」に置き換えた…千代田区の仮処分申立書(2023/12/2)
〝やめてくれよ区長さん 千代に千代田のイチョウが泣いている(20230/12/1)
「約束を反故。許せない」住民怒る健全木のイチョウ新たに4本伐採千代田区(2023/2/7)
健全な街路樹を「枯損木」として処分問われる住民自治千代田区の住民訴訟(2022/11/12)
「苦汁」を飲まされたイチョウ「苦渋の決定」には瑕疵続「街路樹が泣いている」(2022/5/14)
民主主義は死滅した千代田区のイチョウ伐採続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/13)
千代田区の主張は根拠希薄イチョウの倒木・枯死は少ない「街路樹が泣いている」(2022/5/12)
巨人の築地移転なし 後楽園とスポーツ・エンタメの2つの聖地へ 三井不など会見
「築地地区まちづくり事業」全体鳥瞰イメージ
三井不動産、トヨタ不動産、読売新聞グループ本社は5月1日、先に東京都の「築地地区まちづくり事業」の事業予定者に選定されたのを受けた記者会見を行い、三井不動産・植田俊社長、トヨタ不動産・山村知秀社長、読売新聞グループ本社・山口 寿一社長がそれぞれ街づくりにかける意気込みなどを語った。会見の会場となった「COREDO室町テラス」にはメディアは約100人、関係者は約50人(記者推定)が集まり、関心の高さがうかがえた。
植田社長は、「『築地』は東京都の大切な財産。国際的競争力を高め、都民から愛され称賛される街づくりを進める。事業参画する11社の知見を惜しみなく注ぎ込む」とあいさつ。「都民の財産」「稀有な土地」「国際競争力の向上」「イノベーション」「感動」「デフレ脱却」「スポーツ・エンタメの聖地」などのフレーズを連発した。
山村社長は「陸・海・空の次世代モビリティへの期待は大きく、街づくりの親和性は高い。トヨタグループとして街づくりとモビリティを結びつける役割を果たしたい」と語った。
山口社長は、「読売新聞社は今年創刊150周年。新聞発行と並んで長年にわたってスポーツ、文化、エンタメの分野で事業展開してきた経験を活かし、大勢の方に楽しんでいただける施設を作っていきたい」と語った。プロ野球巨人軍の本拠地移転については「前提にしていない」と否定した。
左から山口氏、植田氏、山村氏
会見会場(COREDO室町テラス 3階 室町三井ホール&カンファレンス)
メディア
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読売巨人軍の本拠地移転について記者団から質問が飛んだ。山口氏は「巨人軍の本拠地移転を前提としてマルチスタジアムの提案を行ったわけではない。(「ぜひ移転をという声があったら移転検討の余地はあるか」という質問には)プロ野球球団の本拠地移転は大仕事で、調整も必要。巨人軍だけで決められるものでもない」と本拠地移転を否定した。植田氏も「東京ドームと築地の二つのスポーツ・エンタメの聖地を目指す。シナジー効果を発揮するはず」と語った
東京ドームが完成してから35年経過するが、年間来館者が4,000万人にも達するように、巨人の試合だけでなく様々なイベントにも利用されており、フル稼働の状態だ。今すぐ築地に移転するメリットはないと両社は判断したようだ。
しかし、今回の「築地」再開発と後楽園・水道橋の再開発はリンクしており、いずれ後楽園・水道橋の再開発計画は浮上すると記者はみている。
隣接する後楽園飯店が入居する「後楽園ホールビル」東京ドームシティ アトラクションズ(旧後楽園ゆうえんち)」などは古く、容積をかなり余しているのではないか。再開発すれば超高層ビルがいくつも建つのではないか。
再開発の要件も揃っている。東京ドームシティを含む文京区後楽一丁目及び春日一丁目の約22.1haは都市計画公園「後楽園総合公園」として指定されており、このうち「未供用」の面積が2.83haある。
この「未供用」の面積がとても大事な数字だ。都は平成25年12月、「公園まちづくり制度」を創設し、都市計画決定からおおむね50年以上経過し、かつ未供用区域の面積が2.0ha以上の都心部の都市計画公園・緑地を民間の力を活用して整備することを打ち出した。
神宮外苑の再開発が可能になったのも、秩父宮ラグビー場を中心とする約4.7haが未供用になっていたからだ。実態として共用か未供用かは問われない。「後楽園総合公園」の再開発は、神宮外苑と同様の手法を使うことができる。公園に近接して築42年の19階建てトヨタ自動車東京本社ビルもある(神宮外苑の伊藤忠本社ビルは築44年)。トヨタグループが築地プロジェクトに参画しているのは後楽園再開発の布石だと見た。面積も後楽園のほうが広い。
植田氏は〝二つの聖地〟をつくり、スポーツ・エンタメ分野で独走することを〝日々妄想〟しているのは間違いない。同社は3月1日、商業施設事業とスポーツ・エンターテインメント事業の連携を加速させるため、「商業施設本部」を「商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部」に改称し、ソリューションパートナー本部の「東京ドーム事業部」を同本部に4月1日付で移管すると発表している。
マルチスタジアム入口イメージ
隅田川芝生広場イメージ
国際見本市・大型複合コンベンションイメージ
MICEホワイエイメージ
築地の森とベイサイドデッキイメージ
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東京都は4月19日、「築地地区まちづくり事業」事業者を三井不動産など11社の「ONE PARK×ONE TOWN」に決定したと発表した。三井不動産が選ばれるとは思っていたが、構成員にはやや驚いた。大手ゼネコン5社の一角、大林組はどうして入っていないのか、三井不動産と親密な関係にある読売新聞社はともかく、読売の天敵であるはずの築地が本拠地の朝日新聞社と、〝世界のトヨタ〟はどのような役割を果たすのか…なども興味深い。
もう一つ、驚いたことがある。採択された「ONE PARK×ONE TOWN」のほかにもう一つAグループの提案があり、都は「Aグループは、ヒアリングを含む審査を通じて、参加資格要件及び基本的な条件を一部満たしていないことが確認されたことから、失格が相当と判断した」としている。Aグループの提案者はどこか不明だが、情けないの一言だ。
考えてみれば、三井不動産は「ミッドタウン東京六本木」「HARUMI FLAG」「横浜市旧市庁舎街区活用事業」「神宮外苑」「南船橋」などビッグプロジェクトのコンペは連戦連勝だ。他の大手デベロッパー、ハウスメーカーはどうしたのか。三井不動産に〝街づくり〟の独走、〝一強〟を許していいのか。
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東京都が4月19日に発表した「築地地区まちづくり事業」は、三井不動産を代表企業とする11社によるコンソーシアム。同社とトヨタ不動産、読売新聞グループ本社の3社が開発・運営責任を負う企業で、建設は鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店、設計は日建設計、パシフィックコンサルタンツ、協力企業は朝日新聞社、トヨタ自動車となっている。
事業地は、中央区築地五丁目及び築地六丁目各地内に位置する築地市場跡地の都有地約19万㎡(指定建ぺい率80%、容積率500%/700%)、総延床面積約117万㎡、総事業費約9,000億円。期間70年の定期借地権付き。貸付料は4,497 円(月額/㎡=年間換算で102億円)。開業時期は2030年代前半以降(一部施設は29年度に先行開業)。
主要建物は大規模集客・交流施設(マルチスタジアム)、ライフサイエンス・商業複合棟、MICE・ホテル・レジデンス棟、舟運・シアターホール複合棟など合計9棟のほか、陸・海・空を結ぶ次世代型交通拠点(東京駅と臨海部を結ぶ臨海地下鉄の新駅、首都高晴海線出口と接続、空飛ぶクルマの実用化を見据えたポート、隅田川沿いに、観光・通勤の舟運ネットワークの拠点となる舟運施設)、バス、タクシーなどが乗り入れる交通ターミナルなど。
マルチスタジアムは、世界屈指の可変性と多機能性を備えた約5万人(用途に応じて2万~5万7000席に可変)収容の屋内全天候型施設。可動席と仮設席を活用し、用途に応じてフィールドと客席が形を変え、スタジアム、アリーナ、劇場、展示場へと専用化する超多機能施設(想定イベント:ラグビー、野球、サッカー、バスケットボール、eスポーツ、MICE、音楽ライブ、コンサート、演劇など)。
建物省エネ、自立・再生可能エネルギーの利用、蓄熱・蓄電などの都市インフラと緑被率を約40%確保するなどグリーンインフラの整備を行い、環境共生型の街づくりを行う。
野球・ソフトボールイメージ
アメリカンフットボール・サッカーイメージ
アイスホッケー・フィギュアスケートイメージ
コンサートイメージ
陸・海・空の広域交通結節点イメージ
ホテル・レジデンス棟低層部イメージ
ステップテラスと築地ゲートイメージ
令和5年度の住宅着工 前年度比7%減の80万戸 2年連続減少 持家、貸家、分譲とも減る
国土交通省は4月30日、令和5年度の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は前年度比7.0%減の800,176戸となり、2年連続で減少。持家、貸家、分譲住宅とも減少した。
内訳は、持家が219,622戸(前年度比11.5%減、2年連続の減少)、貸家が340,395戸(同2.0%減、3年ぶりの減少)、分譲住宅が235,041戸(同9.4%減、3年ぶりの減少)。分譲住宅の内訳はマンション100,241戸(同12.0%減、昨年度の増加から再びの減少)、一戸建住宅133,615戸(同7.4%減、3年ぶりの減少)。
令和6年3月の住宅着工は、総数が64,265戸(前年同月比12.8%減)で、内訳は持家16,637戸(同4.8%減)、貸家28,204戸(同13.4%減)、分譲住宅19,189戸(同16.8%減)。分譲住宅の内訳はマンション8,977(同21.1%減)、一戸建て10,113戸(同12.7%減)。持家は28か月連続、分譲戸建ては17か月連続の減少。
西武グループ・野村不動産 「軽井沢千ヶ滝地区」共同開発で基本協定
西武ホールディングス、西武リアルティソリューションズ、野村不動産の3社は4月26日、「軽井沢千ヶ滝地区プロジェクト」について2024年4月25日付で共同開発に向けた基本協定書を締結したと発表した。
千ヶ滝地区は、1919年に西武グループが分譲を開始した別荘地の中心部に位置する約22ha。かつてはスケートリンク・ホテル・温泉などが存在していたが、現在は軽井沢千ヶ滝温泉のみが営業中。協定により、100年以上の歴史と自然環境を踏まえ、これから先100年を見据えたエリア価値向上に向けた取り組みを行っていく。
ビル満床稼働 天井高2700ミリの賃貸は3割契約 住友不 中野駅前再開発が竣工
「住友不動産中野駅前ビル(左)・中野ステーションレジデンス」
住友不動産は4月24日、「住友不動産中野駅前ビル・中野ステーションレジデンス」のメディア向け完成内覧会を行った。JR中野駅周辺で進む11のまちづくり事業のなかで最も早く竣工するプロジェクトで、都心から少し離れてはいるが、都心にはない魅力を備えていることから、ビルは満床稼働、賃貸マンションも3割弱が契約・申し込み済みとなるなど好調なスタートを切った。今後の開発に弾みをつけそうだ。
JR中野駅周辺では現在、11の再開発などのプロジェクトが進行中で、南口では駅前広場の整備、東西南北同線の整備、商業・事務所・住宅開発による駅南口の活性化とにぎわい創出を目指す「中野二丁目土地区画整理事業」と「中野二丁目地区第一種市街地再開発事業」が行われており、「住友不動産中野駅前ビル・中野ステーションレジデンス」は市街地再開発事業によるもの。ペディストリアンデッキで駅とつながっている。11プロジェクトの中でもっとも早く竣工するもの。
「中野駅前ビル」は、敷地面積約1,717㎡、中間免震構造の20階建て延べ床面積約5,676㎡、基準階貸付面積約1,759㎡で、天井高は3m。竣工は2024年2月末。設計・監理はアール・アイ・エー。施工は西松建設。
1~5階は店舗。三段階の無停電対応を採用しており、送電停止、ガスの供給が途絶えても共用部の照明などに72時間給電するBCP対策なども評価され、満床稼働した。テナントは金融機関、エンタメ系、薬品、金融機関など幅広い職種にわたっているという。
「中野ステーションレジデンス」は、敷地面積約4,404㎡、免震構造の37階建て延べ床面積約49,991㎡。専用面積は26.67~211.15㎡。賃料は1K(約27㎡)が約16万円、1LDK(約48㎡)が約30万円、2LDK(約72㎡)が約50万円、3LDK(約150㎡)が約110万円、4LDK(約210㎡)が約210万円。二重床・二重天井、リビング天井高2700ミリ(最上階37階は3100ミリ)。竣工は2024年2月末。施工は西松建設。
3月15日から入居開始しており、3割弱が契約・申し込み済み。コンパクトタイプは近隣居住者、新宿・大手町などに勤務する単身者や、沿線に通学する学生など。大型住戸は会社経営者、弁護士、医師など「士業」の富裕層。
同社ビル事業本部賃貸住宅事業所長・永山貴氏は「当社は1980年代から賃貸住宅事業に力を入れてきた。2024年3月末で保有戸数は約6,500戸。入居率は97%だが、残り3%は入居率にカウントしない原状回復期間なので、ほぼ100%。3月15日オープンした今回の施設は、天井高2700ミリを確保し、分譲にはない広めのサイズを提供することで、富裕層などのニーズを取り込んだ結果、3割弱が契約・申し込み済み。24年前から供給を開始した最上級の『La Tour(ラ・トゥール)』は、〝狭い〟〝英語が通じない〟などの不満が多かった日本駐在の外国人が9割を占めたが、現在は逆転した。所有に固着する『分譲』と異なり、適切なサイズを求めて3~4年で住み替えることができる富裕層向けの『賃貸』は堅調に推移する。今後の目標値などは定めていないが、適地があれば積極的に手掛けていく。『中野』は東京都心も含めた選択肢の一つになる」などと語った。
2階賃貸エントランス
13階モデルルーム
36階眺望
37階天井高3.1m、キッチン(7.8帖)・リビング(41.4帖)からの眺望
内覧会に臨んだ同社賃貸事業所営業統括・鳴海智也氏(左)と永山氏
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永山氏の話を聞きながら〝なるほど〟と思った。20年前に見学した〝ワールドワイズ〟がうたい文句だった「ラ・トゥール新宿」を思い出した。同社が展開する「ラ・トゥール」を中心とする賃貸住宅事業は、わが国の「賃貸住宅」「分譲住宅」それぞれの弱点を補完・解消するものだ。賃貸は、分譲と比較して基本性能などあらゆる点で劣る。相対的に家賃は高く、だからこそ〝賃貸脱出〟などの言葉もある。
一方で、分譲も最近は価格高騰が続き、専有面積の圧縮は甚だしい。かつて3LDKといえば73㎡(22坪)はあったのに、最近は70㎡(21坪)あれば広いほうで、都心部などでは66㎡(20坪)あるかどうかだ。
同社の「中野」はどうか。設備仕様レベルは都心部の高額マンションほどではないが、基本的な住宅の質である広さについては1LDKで約48㎡、2LDKで約72㎡、3LDKで約150㎡だ。家賃はその分高くなるが、坪賃料平均2.3万円というのは、分譲相場から利回りなどを考慮して計算するとリーズナブルな値段だ。天井高を2700ミリ確保しているのにびっくりした(三井不動産レジデンシャル「パークシティ中野」は2650ミリ)。
永山氏は明言を避けたが、天井高2700ミリを確保している賃貸マンションは1割もないはずだ。
同社は今後、「御殿山」「大崎三丁目」「横浜」「南青山」で竣工予定で、「松濤」「元麻布」でも計画中という。
現地
中野サンモール
エントリー数1万件超坪700万円突破も納得三井不レジ「パークシティ中野」(2024/4/24)