分譲戸建て初の最高峰グレード「ザ・リーフィア」 レベル高い小田急不「喜多見」
「ザ・リーフィア世田谷喜多見」
小田急不動産の最高峰グレード「ザ・リーフィア」を冠した初の分譲戸建て「ザ・リーフィア世田谷喜多見」を見学した。喜多見駅から徒歩3~4分の1低層・風致地区に位置する全3棟で、2008年から展開している「リーフィア」はもちろんそれ以前の「コートアベニュー」戸建てを含めてトップクラスの戸建てであるのは間違いない。
物件は、小田急線喜多見駅から徒歩3~4分、世田谷区喜多見9丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全3戸。土地面積は133.57~147.25㎡、建物面積111.27~119.26㎡、価格は未定。建物は木造2階建て(2×4工法)で、2025年2月下旬に完成済み。施工は三井ホームエンジニアリング。
現地は、風致地区に指定されている1低層の閑静な住宅街。従前は賃貸アパート。主な基本性能・設備仕様は、全棟〈Nearly ZEH〉、BELS認定、エネファーム、太陽光発電システム、蓄電池、全館空調、ボッシュ製深型食洗機、磁器タイル仕上げ玄関ホール、アイアン玄関門扉(1号棟)、ガラス製階段手摺、フィオレストーン天板、1620サイズの浴室など。
同社は4月28日に物件ホームページを立ち上げ、これから集客を本格化させる予定。
1号棟リビング(吹き抜け部分の天井高は6m弱)
◇ ◆ ◇
駅から現地までの道に迷ったため、20分くらい周辺を歩いた。野川を超えた隣の成城学園の邸宅街には負けるかもしれないが、間違いなく喜多見駅の一等地の住宅街だ。
3棟のうち幅員5.8mの西道路に面した1号棟の外観を見て、価格をすぐはじいた。3億円の値をつける自信はないが、2億5,000万円くらいではないかと。その通りだった。同社担当者は否定しなかった。
なぜ、価格予想が的中したか。現地の少し先には、記者が取材した2021年分譲の積水ハウスと清水総合開発のJVマンション「世田谷喜多見ザ・テラス」134戸が建っているが、分譲時の坪単価は375万円だった。マンションと戸建てを単純に比較はできないが、その後の価格上昇を考えると、同駅圏のマンション坪単価は600万円くらいではないか。30坪で1億8,000万円だ。「ザ・リーフィア」の1号棟の敷地面積は約45坪だ。2億5,000万円でも安いかもしれない。
建物のデザイン、基本性能・設備仕様は上段で書いた通り、素晴らしい。唯一不満だったのは階段ステップは15段あったのだか、幅はメーターモジュールではなかったことだ(同社はかつて30坪の建物でも積極的にメーターモジュールを採用していた)。
そこで考えた。急いで売ることはない。同社は「ザ・リーフィア」のシリーズ化も考えているというから、多くのお客さんに見てもらうことを優先させるべきだと思う。そして、価格はお客さんに判断してもらうことだ。オークションにかけたら、3億円で落札される可能性もあるとみた。
幅員5mの東道路に面した2・3号棟は1号棟よりやや設備仕様が劣るので価格は低くなりそうだが、インターロッキング舗装の私道部分がたっぷり取られており、駅からの近道は車が通行できない歩道であるため、来場者の評価も高いという。これらも2億円を突破するはずだ。
記者はこれまで同社の小田急線沿線の分譲戸建てをかなり見学しており、2年前には野村不動産「プラウドシーズン成城五丁目」、今年3月には価格が10億円超の諸戸の家「代々木上原」、4月にはコスモスイニシア「イニシアフォーラム南荻窪」の高額戸建てを見学している。これらと比べて今回の「喜多見」は全然引けを取らない。
現地(1号棟)
現地(2・3号棟)
コモンスペース中央に全5棟差別化できているコスモスイニシア「南荻窪」(2025/4/19)
価格10億円超分譲戸建ての歴史を変えた諸戸の家「代々木上原」完売(2025/3/6)
野村不「高額建売戸建」第2弾「プラウドシーズン成城五丁目」も即日完売(2023/10/7)
稀有な駅近で大規模な1低層積水ハウス・清水総合開発「世田谷喜多見ザ・テラス」(2021/1/16)
建ぺい40%、容積80%の邸宅跡地に21区画売れ行き好調の小田急不「狛江」(2020/2/11)
ヴェール脱ぐ全185区画、敷地170㎡以上の小田急不「リーフィア南大沢ガーデンズ」(2019/4/17)
コミュニティ醸成へ 中庭を取り囲む配棟計画 ポラス 全5棟の「柏の葉キャンパス」
「ミライネス柏の葉キャンパス」(北道路側から)
ポラスグループのポラスガーデンヒルズは5月9日、分譲戸建て「ミライネス柏の葉キャンパス」のメディア向け見学会を行った。戸建ての開発が今後加速するとみられる区画整理事業地内に位置する全5戸で、樹木やウッドデッキを配した中庭を取り囲むように配棟し、協定によりフェンスをなくしコミュニティの醸成を図っているのが特徴。
物件は、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅から徒歩15~16分、柏市正連寺字出山の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全5戸。土地面積は170.00~172.00㎡、建物面積は102.71~112.39㎡、価格は7,490万~7,990万円。構造・規模は在来工法2階建て。建物は5月に完成済み。施工はポラテック。
昨年9月から予定広告を開始し、今年3月までの問い合わせ件数は約100件、4月から契約を開始し、3戸が成約済み。来場者は約30件で、6割が千葉県居住者。うち半数が柏市内。残りは流山市のほか東京、埼玉、神奈川など。
現地は、千葉県が施行している約272.9haの柏北部中央地区一体型特定土地区画整理事業地内に位置。周辺は戸建て住宅地で、地区計画により最低敷地面積は150㎡(45坪単価)以上に定められている。
主な特徴は、全戸敷地面積が50坪以上、全棟ZEH、長期優良住宅、離れ(2戸)、「小路」、「ウッドデッキ」など。
企画意図について同社設計部シニアマネージャー街並デザイン室室長・松井孝治氏は、「当社グループは街並み景観を大事にしており、それぞれがしのぎを削っている。当社は千葉エリアを担当しており、今回はプラスαの取り組みとして家と外を一体的に設計し、コミュニティを育む境界レスとしたほか、『離れ』を2戸設けるなど豊かな空間を演出した」と語った。
また、同社ガーデンヒルズ事業部設計部企画設計室1係係長・水野貴裕氏は、「用地は2年前に取得。テーマは光と緑とコミュニティ。南側の3戸は前建の視線を気にされる方もいるので、中庭はあえて中央に配し、住戸間のフェンスもなくしコミュニティに配慮した」と話した。
販売担当の同社ガーデンヒルズ事業部ウッドガーデン事業所営業課課長・石田和広氏は、「周辺はハウスメーカーの停止条件付宅地分譲が多く、土地代だけで5,000~6,000万円している。建売りは差別化を図れるかどうかが課題。価格は値ごろ感があり、完全ZEHとし、中庭や『離れ』の提案がお客さまから高い評価を頂いている」と語った。
中庭
南道路の住戸から
中庭
離れ
ウッドデッキ空間
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ポラスグループの〝コモン〟を演出した分譲戸建てはかなり見学している。今回も差別化は図られていると思う。気になったのは、同社の建売りとは真逆の、街並みの統一感などまるでない周辺の停止条件付きと思われる住宅街だった。敷地面積だけでも100坪はありそうな豪邸もあれば、敷地全体がコンクリで固められている住宅もあった。
購入した土地にどのような建物を建てようと勝手ではあるが、建物と外構・街並みは不可分だ。柏市の地区計画では1低層の敷地面積は最低150㎡(45坪)確保するよう求めているが、緑化基準はまったくない。ハウスメーカーもまたそれに倣ったのだろう。
今後、区画整理事業地内では大量の住宅が建設されるのだろうが、てんでんばらばらの街にならないか心配になった。行政もハウスメーカーも美しい街並み形成にもっと力を入れるべきだ。
富山農業-大阪杉材-埼玉桐材-信州志賀石つなぐ ポラス ワークショップ第2弾
「リーズン新鎌ヶ谷 きときと未来PROJECT」ワークショップ
ポラスグループは4月26日、昨年分譲し2カ月で完売した「リーズン新鎌ヶ谷 きときと未来PROJECT」(全14棟)の外構・内装に採用した大阪杉材(モリアン)、埼玉桐材(厚川産業)、信州志賀石(メイク)と、富山野菜(too・シテン)の協力を得て、入居者を対象としたワークショップを開催。ゴールデンウィークに入ったことからか、参加者は5組だけだったが、〝石のソムリエ〟が制作した希少な志賀石の作品はジャンケンによる争奪戦となり、2歳児くらいの子どもが落札するなど盛り上がった。
「リーズン新鎌ヶ谷」は、東武アーバンパークライン・新京成電鉄・北総鉄道・京成成田スカイアクセス線新鎌ヶ谷駅から徒歩17~18分(京成電鉄初富駅から徒歩9~10分)の全14区画。価格は3,490万~4,890万円。建物全体竣工は2025年2月末。昨年8月に分譲開始し10月までわずか2カ月で完売。歩留まり率は36%だった。
イベントを企画した中央住宅戸建分譲設計本部設計一部営業企画設計課主任・小瀧愛美氏は「人・モノ・地域をつなぐこの種のイベントは昨年の『浦和』に続く第2弾。協力してくださった皆さんに感謝します。今後も継続して行っていきます」と締めくくった。
「KIRINOKA」モデルハウス
「SUGINOKA(杉の香)」モデルハウス
信州志賀石が多用されている「石の教会 内村鑑三記念堂」
小瀧氏
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「トーニョー、トーニョー」と連呼する二人組の男性がいた。もう二十数年前から糖尿病治療のため病院に通っている記者にとって、共倒れ共食いを暗示されているようで心中穏やかならざる響きがあった。
こん畜生、負けてなるものかとにらみつけた。二人組とは、tooの社員・大石和氏(32)と瘧師(ぎゃくし)光一郎氏(30)だ。二人の前のテーブにはわが家では食べたことがない「豆苗(トウミョウ)」が置かれていた。二人の語りといえば、もう絶えて久しい講釈師の〝ガマの油売り〟〝バナナのたたき売り〟そのものだ。
豆苗はエンドウ豆の若葉で、再生栽培が簡単にできる特徴がある。葉っぱを食べ、根っこの部分を水に浸けておけば1週間から10日後にはまた食べられるようになるという。グリコと同じ2度おいしい。キッチンに置いておくだけで目の保養にもなる。
大石氏については記者の過去記事を読んでいただきたい。瘧師氏は、持続可能な農業のために様々な事業を行っている富山県射水市のシテン営業担当で、地元の小中学校などに食育教育の講師として食や農業などについて話しているという。講釈師そのものと書いたのは、難しい問題をわかりやすく話す話法を習得したのだろう。
その一幕を紹介する。瘧師氏は「農家は野菜のほか何をつくっているでしょうか。小中学生に戻ったつもりで答えてください」と呼び掛けた。「幸せ」「世界平和」「夢」などと答えた大人もいた。
瘧師氏はまた、農業従事者の推移について質問した。誰も正解しなかった。2005年から今日まで富山県の人口約100万人をはるかに上回る約120万人が減少している。(農水省のデータによると農業従事者は2005年2,241万人から2020年には1,363万人へと約4割減少している。「幸せ」「世界平和」「夢」をもたらす農業がここまで衰退している理由をみんな考えないといけない)
記者の取材の目的の一つはトマトを買うことだったが、2粒試食させてはもらったが、いざ買おうと思ったら1つも残っていなかった。富山のミニトマトは抜群においしい。
大石氏(左)と瘧師氏(息もぴったり、まるでお笑いコンビ)
「SNSをとても大事にしています」瘧師氏
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〝石のソムリエ〟のグローバルストーンマテリアル代表取締役・井出寛氏によるワークショップも最高に面白かった。仕事柄、御影石、トラバーチン、大理石、フィオレストーンなどのほか、たまに庵治石、鉄平石、大谷石なども目にするが、岩石の生成、特徴、用途などについて講義を受けるのは中学以来か。安山岩の一種の信州志賀石(玄武岩と花崗岩の中間の性質を持つという)の原石を墓石のようにつるつるに研磨する作業・技術を観るのは初めてだった。
研磨方法は、水を流しながら研磨する湿式が一般的だそうだが、この日は水を使わない乾式で、ダイヤモンドの粒子をちりばめた工具を使って、原石の石目にくさびを打ち込んで割る場面から磨き上げまでの工程を井出氏は披露した。
驚いたのは、石を磨く丸い研磨パットは50番から200番、400番、800番、1,500番、3,000番まで6枚使ったことだ(番号が増えるごとに光沢が増し色味も濃くなる。6,000番もあるそうだ)。これほど手間暇かけて仕上げるのはミクロンの世界のカンナと同じだ。人間も同じかもしれない。
井出氏の話は含蓄に満ちていた。「木と異なり、扱いは難しい」「美しい自然形状に値打ちがある」「柔らかいのは光沢が出ない」-人間界そのものだ。
「私は墓石はやらない」というのも合点がした。この前、久しぶりに田舎に帰り、墓参りもした。昔からの墓石は実家くらいで、みんな新しいものに変わっていた。これはもう完全に死者のためというより、生者の見栄っ張り、虚勢だ。生者のために生きる井出氏の矜持をみた。
「私が石のソムリエ・井出です」
「扱いは、木よりは難しい」(記者のかみさんと一緒。一つ間違えると修復が難しい)
末広がりの富士山をイメージした作品をジャンケンの結果、ゲットしたお子さん(相当の額になるはず)
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埼玉県吉川市に本社がある厚川産業の「KIRINOKA」はポラスの戸建てにたくさん採用されている。代表取締役・厚川雅信氏と同社取締役兼Kiri-Life事業部・三村裕加氏からもいろいろ話を聞いた。
葉っぱが大きく、日射を遮るのに大きな効果ある桐はかつて日光街道の街路樹として多用されていたそうだ。生育が早い樹種もあり、10年もすれば製品になるという。
10年で成木になるのなら用途は限りない。同社は4月29日、「GX推進プロジェクト~早成桐植樹祭~」を春日部夢の森公園で開催する。桐が街路樹として採用されているところはほとんどないはずだ。
「KIRINOKA」ワークショップ
厚川氏
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ポラスの戸建てのデザインウォールに用いられている「SUGINOKA(杉の香)」は、大阪・岸和田市に本社を構えるモリアンの製品だ。スギの香り成分は癒し・リラックス、熟睡効果があることが実証されており、東京大学の香りの研究チームによる共同研究でグッドデザイン賞を2020年に受賞している。
岸和田から車で駆け付けた同社代表取締役社長・森庵充久氏の説明を受け、参加者はくぎなどを使わずに組み立てられるプランター(お盆にもなりそう)をその場で組み立てた。周囲にはスギ独特の香りが漂った。
「SUGINOKA(杉の香)」ワークショップ(右が森庵氏)
◇ ◆ ◇
これほど面白くてためになるイベントはない。そこで、ポラスに提案だ。居住者限定にするのはもったいない。地域の人や自治体に声を掛けて自由に参加できるようにしてはどうか。
森林・林業・農業の再生・活性化は国土強靭化の肝であり、食料自給率の向上は喫緊の課題の一つだ。趣旨をきちんと説明すれば、町内会や自治体の賛同は得られるはずだ。
「きときと未来PJ」第2弾 歩留まり率36% 2か月で完売 ポラス「新鎌ヶ谷」(2024/11/8)
抜群においしいミニトマト ポラス「浦和」街びらき+富山マルシェワークショップ(2024/7/6)
ポタジェ(家庭菜園)活用したワークショップ ポラス「北浦和みのりプロジェクト」(2024/4/23)
抜群に美味しい「ザファーム」のミニトマト 「ららテラスHARUMI FLAG」(2024/3/1)
「桐の街・春日部」匠の技を未来に繋ぐ ポラス+地元企業連携 建材・インテリア開発(2022/10/25)
〝稀有なハイスペック〟〝注文仕様の分譲〟東京ゼロエミ認証のポラス「花小金井」
「花小金井35邸プロジェクト(仮称)」(手前は提供公園)
ポラスグループ中央住宅は4月24日、「花小金井35邸プロジェクト(仮称)」のメディア向け見学会を行った。エリアでは数十棟の戸建てが分譲されている激戦地で、同社物件は「東京ゼロエミ住宅」と「認定低炭素住宅」の認証を受けており、提供公園、ホワイエ、クルドサックによる街づくり、天井高2.7m、天然木のデザインウォール、挽き板フローリング、ソフトクローズ機能付き開き戸などで差別化を図っている。分譲開始は5月下旬。
物件は、西武新宿線花小金井駅から徒歩15分(バス8分徒歩5分)、西東京市芝久保町5丁目の第二種中高層住居専用地域(建ぺい率70%、容積率200%)に位置する全35戸。第1期(13戸)の土地面積は110.02~123.31㎡、建物面積は88.07~104.66㎡。価格は6,000万円台~。モデルハウス2戸は完成済み。構造・規模は木造2階建(2×4工法)。
敷地の従前は畑。東京ゼロエミ住宅(水準B)、認定低炭素住宅認定を取得しており、「太陽光発電システム」「蓄電池」「HEMS」、ハイブリッド給湯器、樹脂+Low-E複層ガラスなどを採用。このほかリビング天井高2.7m、無垢材のアクセント壁パネル、挽板フローリング、マルチラウンジ、DENなどを装備している。
同社マインドスクェア事業部東京西営業所営業課課長・井上鋭氏は「このエリアで供給を開始してから7件目の案件。これまで年間100棟くらいを供給している。当社初の『東京ゼロエミ』認証を受けた『東久留米』(6戸)は半年で完売した。今回の物件の反響は2カ月で約40組。地元居住者は24%で、広域からの反響が多い。これだけのスペックを搭載しているのは〝稀有〟だと思う」と自賛した。
用地担当の同営業所用地開発課係長・斉藤繁樹氏は「従前は畑。地主さんから2年前に取得した。周辺で宅地化が進み、管理するのが難しいということだったが、これだけの広さの土地は希少価値が高く、再用船して取得を決断した。競合も多いが、当社の認知度を上げ、供給シェアを上げる戦略的な意味も大きい」と語った。
また、ポラス暮し科学研究所住環境G課長・野田将樹氏は「今回の物件を供給する事業部は当社グループの中でも圧倒的に省エネ開発に熱心な部署。全棟を『東京ゼロエミ』にしたのは凄い。施工したのは注文住宅のグローバルホームなので〝注文仕様の分譲住宅〟でもある。ハイブリッド給湯器も搭載しており、当社の光熱費シミュレーションでは新省エネ基準の約55万円より半分以下の約17万円に抑えられる」とアピールした。
モデルハウス
モデルハウス
井上氏(左)と野田氏
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各氏が自画自賛したように、基本性能・設備仕様レベルは高いと思う。問題は、周辺にはエリアでの実績豊富な兼六ホームの「パークタウン花小金井第33期」(42戸)など数社数十戸の戸建てが分譲中で、価格も4,000万円台から7,000万円台まであり大激戦の様相を呈しており、今回の同社の物件レベルがよくわからないことだ。
天井高2.7m(階段ステップ15段)、ソフトクローズ機能付き引き戸、天然木を多用した仕上げなどはないはずだが、他社物件を見ていないので何とも言えない(小生を含めたメディアもまたデベロッパーの物件を取材しない。物件を観ないとレベルが高いのか低いのか判断できない)
「東京ゼロエミ」について。「水準B」(UA値0.46以下)の威力は凄いと思うが、〝見える化〟ができていないのは課題だ。光熱費が半分以下と説明は出来ても、快適性を体験できるようににし、その価値をお金に換算する仕組みを構築すべきだ。
「花小金井35邸プロジェクト(仮称)」完成予想図
2か所に花粉対策施したポラス「花小金井」涙が出るほどうれしくなり、鼻水も止まる(2025/2/20)
自由学園卒の造園学博士・神藤氏監修緑地率30%確保ポラス「東久留米・学園町」(2025/2/6)
UA値0.46 ポラス初「東京ゼロエミ住宅」最上位認証(旧基準)の「東久留米」(2024/12/26)
都心外周部で増える予感ボラスのコンパクト「東久留米」は坪420万円(2024/12/14)
コモンスペース中央に全5棟 差別化できている コスモスイニシア「南荻窪」
「イニシアフォーラム南荻窪」2階リビング
コスモスイニシアが分譲中の戸建て「イニシアフォーラム南荻窪」を見学した。JR荻窪駅、西荻窪駅からそれぞれ徒歩14分の1低層エリアに位置する、コモンスペースを取り囲むように配棟されている3階建て。周辺は良好な戸建て住宅街。商品企画の差別化はできていると思う。
物件は、JR荻窪駅・西荻窪駅から徒歩14分、杉並区南荻窪2丁目の第一種低層住居専用地域(建ペい率50%、容積率100%)に位置する全5棟。土地面積は100.11~110.44㎡、建物面積は92.25~121.43㎡、現在先着順で分譲中の住戸の価格は1億3,780万円。建物は竣工済み。構造・規模は2×4工法3階建て。施工は三井ホームエンジニアリング。3月15日から3戸の分譲を開始しており、2戸は契約済み。
現地は、閑静な第一種低層住居専用地域の閑静な住宅街の一角。道路を挟んだ敷地北側は中学校と神社に隣接、南側は低層住宅街。主な特徴は、全5棟がコモンスペースに面している住棟配置のほか、ZEH水準、ゆとりある玄関・ホール、2階リビング天井高4m以上、ふるまい本棚、ロフト、ルームバルコニーなど。
ルーフバルコニー
玄関・ホール
◇ ◆ ◇
現地に着いたとき、すぐ思い出したのは2016年に見学取材した同社の「グランフォーラム石神井公園」だった。コモンスペースを中央に配した住棟配置が同じだったからだ。敷地全体を無電柱化し、インド砂岩による植栽桝やゲート、斑岩による舗装などもほとんど同じだった。
驚いたのは、同社の物件を含め周辺には完売済みの戸建てを含め十数か所で戸建て分譲現場があることだった。価格帯もみんなよく似ている。1億円は超えるが、2億円以上は少ないようだ。
同社の分譲戸建ては上段で紹介したように差別化は出来ていると思うのだが、他社物件を見ていないので何とも言えない。物件をたくさん見ないといけないということだ。
現地
現地
植栽帯
井の頭公園に2分 隣接地も公園 リビング天井高4m超 コスモスイニシアの戸建て(2024/10/23)
価格に見合う価値あり コスモスイニシア「グランフォーラム石神井公園」(2016/12/3)
高額注文住宅と規格住宅を車の両輪へ 野島秀敏・三井ホーム社長
野島氏(本社:新木場センタービルで)
三井ホームは4月17日、社長就任記者懇親会を開催し、4月1日付で社長に就任した野島秀敏氏が「注文住宅の会社から住宅事業+木造施設建設の会社へ」構造改革を進め、「木造建築のナンバーワンを目指す」と語った。同社の強みである富裕層へのアプローチを再強化する一方で、コスパ・タイパを重視する若年層に対応した規格住宅「三井ホームセレクト」を棟数ベースで注文住宅と同じくらいにする意向を示した。懇親会には約30人が参加した。
野島氏はまず、昨年5月に本社機能を「新木場」に移したことについて触れ、移転の大きな目的の一つとして「新木場は木造の会社が集積しており、昔からおつきあいしている会社もあれば、初めて接点を持たせていただいている会社もある。当社は木造建築のナンバーワンを目指しており、皆さんとうまく関係を構築するために飛び込んできた」と説明した。
注文住宅市場については、「マーケットがずっと縮小し続けており、業界として厳しい状況に追い込まれているのが現状だが、一方で、環境問題、脱炭素の流れの中で建物を木で作ろうという動きが強まっており、これをチャンスと捉えたい」と話し、「注文住宅の会社から住宅事業+木造施設建設の会社へ」構造改革を進めると話した。
そのため、「当社は25万棟の注文住宅の実績がある。そのノウハウを生かし、強みである富裕層向け高額注文住宅を再強化する。一方で、コスパ・タイパ、リセールバリューを重視する若い方向けの規格住宅(三井ホームセレクト)を昨年スタートさせた。試行錯誤の段階だが、できるだけ早い時期にこの両輪を回せるようにしていく。将来的には棟数ベースで注文住宅とセレクトの比率を同じくらいにしたい」と語った。
同社の木造建築の事例としては木造マンション累計受注棟数78棟のうちMOXIONが46棟に上っていることのほか、木造ニーズの高まりの中で学校施設、学生寮、ロードサイド店舗などが増加していることを説明した。
10ブースくらいある執務室(プレートに「KARIN」とあり、室内の机はカリン材)
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野島氏が話した中で、富裕層向け高額商品の強化と規格住宅の投入により、車の両輪を目指すと語ったことに注目したい。国交省のデータを待つまでもなく、持家の着工戸数は漸減するのは間違いない。縮小するパイの奪い合いになるのは必至だが、記者はデザイン性の高い同社の商品は競争力が高いと見ている。
規格住宅はどのようなものかよくわからないが、野島氏は性能を落とさずに、分譲マンションや分譲戸建てに流れている需要層を獲得できると話した。かじ取りが見ものだ。
9階本社オフィス(手前のテーブルはかなり高価)
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記者も野島社長に聞きたいことはあったのだが、質疑応答の時間が足りなかったのか、個別質問があったためか、たくさんのメディアの方が列をなしていたので質問をあきらめた(それにしてもみんな質問時間が長すぎる。ワンイッシューにすべき)。
聞きたかったのは、野島氏の入社は1988年だから、その直後にバブルが崩壊した。甘い汁は全然吸っていないはずだ。その後2013年に三井不動産レジデンシャルに異動するまでの25年間はどのような仕事に携わっていたのかだ。厳しい事業環境下にあったはずで、座右の銘と関係はあるのかどうか。また、慶大卒といえば、三菱地所レジデンスの宮島社長の2歳後輩だ。趣味も似ているのではないか(宮島氏はカヌーではなかったか)。交流はあるのかどうか、機会があったら聞いてみよう。
もう一つは、〝木造コンプレックス〟〝現しの呪縛〟について。この問題については記事を添付するので、読者の皆さんも考えていただきたい。「モクシオン稲城」を取材したとき、同業の記者の方が「これって鉄かコンクリか木造か分かりませんよね」との趣旨の質問をしたところ、同社技術研究所研究開発グループマネージャー・小松弘昭氏(当時)は「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し。木の性能、コストなど科学的・合理的なことのほうが大事」と言ったのを記事にしたものだ。
記者はこの小松氏の〝一喝〟になるほどとは思ったが、やはり「現し」は美しい。「美しいもののみが機能的」と語った丹下健三の意見に賛成する。野島氏の意見を聞きたかった。
さらに加えるなら新木場の地区計画についてだ。都は平成11年11月15日付で従前の用途地域・工専を準工業に変更し、なおかつ「新木場・辰巳三丁目地区 地区計画」を定め、約151haにわたり「木材関連をはじめとする多様な生産・流通機能と商業・業務機能などが共存できる複合地区の形成を図る」目的に適さない住宅や風俗系建築物、廃棄物処理場を不可とした。面積は約115haの皇居を上回る。
読者の皆さんもご存じなかったようで、この記事へのアクセス数は7,000件を突破した。記者は、貯木場の役割が終えたのだから、その景観を生かしホテルや住宅を可能にしたら「グラングリーン大阪」を上回る素晴らしい街ができると思う。あと10年もすれば、そのような案が浮上する気がしてならない。これは野島氏より三井不動産社長の植田氏に聞くべきか。「妄想」⇒「構想」⇒「実現」の可能性はあるかどうかだ。
野島氏は1963年生まれ。兵庫県出身。慶應大学経済学部卒。1988年、三井不動産入社。2013年、三井不動産レジデンシャル企画経理部長、2015年、同社東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部長、2020年、三井ホーム取締役常務執行役員、23年兼三井ホームカナダ(株)代表取締役会長(現任)・兼三井ホームアメリカLLC取締役会長(現任)を歴任。2024年、同社取締役専務執行役員、2025年4月1日付で代表取締役社長に就任。趣味はダイビング(キャリア26年)、座右の銘は「寛仁大度」。
外貌の呪縛を解き放つか「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏(2021/12/9)
第6のアセットクラス「三井のラボ&オフィス」住宅不可の新木場に開業(2021/7/8)
プレ協 狭小住宅に新概念「微景観」 ハウスメーカーの矜持見たい
プレハブ建築協会の「まちなみワーキンググループ」(構成会社:積水化学工業、 積水ハウス、大和ハウス工業、パナソニックホームズ、ミサワホーム、岩村アトリエ、エムエフクリエイツ)がまとめた「都市型住宅地のデザインメソッド」を公表し、敷地が狭小な都市型住宅の優れた景観づくりにはきめ細かな細部への配慮・こだわりが欠かせないとし、新たな概念として「微景観」を打ち出した。
「微景観」は、3月26日に行われた同協会のメディア向け2024年度活動報告会で公表されたもので、「コンパクトであっても単なるミニ開発ではない、ハウスメーカーとしての矜持を感じるデザイン理論を今後とも構築していく」とし、一つ一つの素材選定、デザイン、配置に対して、きめ細かな対応を図ることで、全体に統一感を感じ、まちなみ全体に落ち着きを感じる景観を創ることができ、また、狭いスペースにも可能な限り植栽を施すことで、まちなみに潤いを感じる景観を創出することは可能としている。
具体的なデザインコーデとして、相隣間で補う借景的微景観、室内からの微景観、アプローチ周りの微景観、微景観阻害要因の軽減、微景観における宅盤段差のデザインなど事例などを紹介しながら17ページにまとめている。
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記者は「微景観」なる造語をまったく知らなかった。そもそも「微」は微細、微小、微妙、微笑、微力、衰微などの熟語が示すように、どちらかといえば目立たない、取るに足りないことなど示す言葉だ。〝美景観〟の誤字ではないかと思ったくらいだ。
都市型住宅については、明確な定義はない。バブル崩壊後に生まれた言葉だ。バブル崩壊前の分譲戸建てといえば、敷地規模は最低40坪、郊外住宅地では50坪、60坪が当たり前だった。一部のデベロッパーが供給していた敷地規模が30坪未満の住宅は〝ミニ開発〟として、銀行も住宅ローンの対象外としていた。
ところが、バブル崩壊後はハウスメーカーもデベロッパーも敷地規模が30坪前後、他建物規模が30坪前後の分譲戸建てを積極的に供給するようになり、最近では敷地が15坪くらいの超ミニ開発も珍しくない。
これらの現状に対し、プレ協のまちなみワーキンググループが一石を投じる形で「微景観」を打ち出したようだ。
論より証拠だ。記者は敷地規模が30坪未満では敷地の緑化は難しいと考えているが、「微景観」を採用したこれらまちなみワーキンググループが供給している戸建ての見学を申し込むつもりだ。どこが見せてくれるか。
ポラス 6か所目の単独展示場「体感すまいパーク吉川美南」/記者一押しは「Leche」
「体感すまいパーク吉川美南」
ポラスグループの注文住宅を手掛けるポラテックとグローバルホームは3月6日、ポラスグループ6か所目の単独展示場「体感すまいパーク吉川美南」のメディア向け見学会を行った。展示場は3月1日(土)にオープンしたもので、土・日曜の2日間で200組以上の来場者があった。2022年1月に開設した、同社本拠地の「越谷」は2日間で140組だったことから、ポラテック取締役・橋本裕一氏は確かな手ごたえを感じているようだった。
同展示場は、JR武蔵野線吉川美南駅から徒歩13分、吉川市による施行面積約59.1haの吉川美南駅東口周辺地区土地区画整理事業地内に位置する敷地面積約6,000㎡(1,800坪)。モデルハウス4棟と技術展示スペースを設けたオフィス棟、ポラス暮し科学研究所の研究棟と実験棟を併設。吉川美南駅東口開発はこれから本格化することから、同社は地域の新たな顧客開拓を目指す。
橋本氏は「これだけのエリア(ポラス商圏)に人材(ポラス従業員約4,500人)を投入している会社はほかにない。『吉川美南』は営業拠点だけでなく、支店の一部、非住宅部門も移転し、ポラス暮し科学研究所の研究棟と実験棟も入る。これらは、広い土地を購入できたからこそ実現した。展示スペースは木造建築の学びの場とし、さらに地域交流拠点として新たな顧客を掘り起こしていく。この1年間で120棟の受注を目指す」と語った。
オープンしたモデルハウスは、「PO HAUS ARZILL」「PO HAUS 和美庵」「北辰工務店 心」「HaS casa Leche」の4棟。延床面積はすべて20坪後半から30坪台のリアルサイズが特徴で、宿泊体験も可能。
「PO HAUS ARZILL」は延床面積115.22㎡(34.85坪)、ホワイトスペース、フォイヤーなど多目的に利用できるスペースを随所に設け、プライバシーとオープンな空間の相反する要素の両立を目指す。価格は100万円/坪~。
「PO HAUS 和美庵」は延床面積99.78㎡(30.18坪)。ダイニング天井、天井ルーバー、造作風呂、吹き抜け空間、ヌックなどに本物の木を多用している。価格は100万円/坪~。
「北辰工務店 心」は延床面積96.54㎡(29.20坪)。共働き世帯を想定し、「最新住宅設備×IoT 技術」が助ける家事ラク住宅がテーマ。価格は80万円/坪~。
「HaS casa Leche」は延床面積86.86㎡(26.22坪)。外観はライトブラウン(茶色)一色。ツーバイシックス工法と超高断熱仕様で曲線美と機能美をアピールしている。価格は90万円/坪~。
橋本氏
技術展示コーナー
「PO HAUS ARZILL」
「PO HAUS 和美庵」
「北辰工務店 心」
「HaS casa Leche」
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これまでもそうしたように、4つのモデルハウスについて、独断と偏見に満ちた記者の格付けを行うことを決めた。設計担当者による「PO HAUS ARZILL」、「PO HAUS 和美庵」、「北辰工務店 心」のプレゼンが終わった時点で甲乙は付けられず、互角だと判断した。そして最後、およそ家らしくない、奇怪な形と目立つようで目立たない土気色をした「HaS casa Leche」が紹介された。担当者いきなりシュールレアリズムの奇才サルバドール・ダリを口にした。ややあってサグラダ・ファミリアで知られるアントニ・ガウディとモダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエの名前が飛び出した。
担当者の方は最初から最後まで数分間、唯我独尊、わが道を行く。聴衆(同社関係者を含め50~60名か)を無視し、タブレットに神経を集中していた。
3人の巨匠の名前に圧倒され、事大主義に侵されている記者はこの時点で、モデルハウスを見ていない段階でナンバーワンは「HaS casa Leche」にしようと決めた。早速、名刺交換した。グローバルホームHaS casaDv設計課注文設計1係主任・浅井直林氏だ。浅井氏は「外観は大地の色、ライトブラウン。アール? 人と地球にやさしい」と語り、好きな建築家としてアルヴァ・アアルトと安藤忠雄を挙げた。
この外観に惚れ込む人はどれだけいるか、やたらと多いR形状(記者の自分自身の軟弱な性格を見るようでR形状は好きではない)に眉をしかめたのだが、決め手となったのは、リビングとキッチンをつなぐ白い壁にポツンと宙に浮いているような黒い帽子だった。ダリの再来かと。コーカサスの織物キリムのクッションと、階段の鉄のフレームをそのまま伸ばしLDKのテーブルにも物書きデスクにもなる提案もいいと思った。
モデルハウス4棟を見終えた時点でも「Leche」の首位は揺るがなかった。次点は「PO HAUS 和美庵」だ。ナグリ仕上げの床、浴室壁のヒノキ(浴槽をヒノキにすると掃除が大変)、額縁絵のような窓枠・窓台も本物の木でできていた。「Leche」とはタッチの差だ。
3位は「PO HAUS ARZILL」、4位は「北辰工務店 心」とした。「ARZILL」の幅6.3mの棒状キッチンとダイニングは人を呼ぶのにとてもいい。ただ、フォイヤーとLDKの使い方がいま一つよくわからなかった。「北辰工務店」は坪単価がもっとも安く、収納が多いので、むしろ検討者の一番人気になるかもしれない。実利的だ。最下位にして申し訳ないが、モデルハウス1棟につき見学時間が10分に制限されていたことと、意図を読む「心」が記者にはないためか、いま一つ「心」が伝わってこなかった。
浅井氏
ぽっかり浮かぶ黒い帽子(左)とキリムを配したリビング床
なぐ率上げの床(左)と額縁絵のような窓
5か所目の単独展示場「体感すまいパーク朝霞」オープンボラスグループ(2023/9/2)
延床876㎡の木造事務所工期5か月、建築費坪110万円ポラス「体感すまいパーク柏」(2023/4/29)
価格10億円超 分譲戸建ての歴史を変えた 諸戸の家「代々木上原」 完売
「代々木上原の邸宅」
分譲価格が10億円を超えることからメディアで話題になった「諸戸の家」の分譲戸建て「代々木上原の邸宅」を見学した。代々木上原駅圏の第一種低層住居専用地域の邸宅街に位置する1邸で、竣工後ほぼ1か月で完売。5人のプロフェッショナルによる「技」が注ぎ込まれている、これまでの分譲戸建てになかったもので、新しい歴史を刻んだ記念碑的な物件だ。同社は今後、この種の分譲戸建てを年間10棟くらい供給する意向だ、
物件は、小田急線・東京メトロ千代田線代々木上原駅から徒歩8分、第一種低層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率150%、条例により最低敷地面積180㎡)に位置する南東、南西側に接道する敷地面積242.12㎡(73.21坪)、延床面積303.96㎡(91.95㎡)、価格は10億円超。構造は2階建て木造・パネル工法。2025年1月完成。
「諸戸の家」は、〝日本の山林王〟と称された三重県・桑名の諸戸家の事業を継承し、昭和50年6月創業(本社:桑名市)。これまで分譲住宅、自社設計・自社施工など5,000棟超の引き渡し実績がある。目指すのは〝「世代を超え、世代に継承される価値を生む〟スーパーラグジュアリー。
現地の所在地は紹介しないという約束なので書かないが、間違いなく代々木上原駅圏の一等地だ。これまで取材したマンションをいくつか紹介する。読んでいただければ、代々木上原駅圏の相場が分かっていただけるはずだ。
今はどうか。マンションの坪単価1,000万円をはるかに超えている。なので、土地が73坪で、建物が30坪近い戸建てが10億円を超えても全然驚かない。価格には驚かなかったが、プロフェッショナル人の〝競演〟には驚愕した。
一つひとつ紹介しないが、これまで50社を超えるメディアがあまり触れていないことを中心に紹介する。圧巻は2階の37帖大のLDKだ。天井高は3.6m、天井は本物の木ルーバー・突板仕上げ、壁はブラックウォルナットと障子。家具・調度品はイタリアのミノッティ。食洗機は幅60センチのGAGGENAU(ガゲナウ)製、冷蔵庫はスウェーデン・アスコ。ダイニングテーブル、チェア、ソファ、ローテーブル、シャンデリアなどは総額で2,000万円とか。
リビングドアがまたすごい。塗師・牧野昴太氏による世界にここしかない「ひび塗り」だそうで、本物の木に漆を9回塗り重ね、仕上げまで3か月、50工程を掛けたという。これまでたくさん高額リビングドアを見学してきたが、この「ひび塗り」は桁違いだった。
全フロアに用いられていたクロスがまたすごい。見る角度によって微妙に表情が変わり、微細な文様が現れたので、布クロスかと思ったが、吉川氏は「ビニールクロス」とこともなげに語った。これまで布クロスやレザ―仕上げはたくさん見てきたが、ビニールクロスでここまで表現しているものは見たことがない。
2階のトイレには絶句した。前日見学取材した旭化成ホームズ「FREX asgard(フレックス アスガルド)」の便器はグレーだったのに驚いたのだが、今回は「黒」だった。便器だけではない。手洗いカウンターの淵はデザイン処理された本物の木だった。
牧野氏の「技」だけではない。商品企画を担当した同社常務取締役・吉川政弘氏が物件パンフレットに商品化に至った経緯を次のように明らかにしている。「二の足を踏むほどの(土地)金額に、やはりリスクが大きすぎる…私は緊張していました…様々な可能性に賭けようと考えました…諸戸の家をよく知る世界的ランドスケープデザイナーの石原氏と…(5人の)奇才に恵まれ、プロジェクトをスタートさせることができました」と。
その5人の「技」を紹介する。「英国チェルシーフラワーショー」で12個のゴールドメダルを獲得するなど世界的なランドスケープデザイナーとして知られる石原和幸氏は1階の「緑の扉」やルーフバルコニー、バルコニー、リビングの植栽を担当している。
京表具伝統工芸士・田中喜茂氏(弘誠堂三代目)による引箔技法によるアートは迫力があった。
表現士・職人の肩書を持つ吉河清人氏による1階エントランスのアートは、天然石ソーダライトやラリマーを薄く何層も塗り重ね、スポンジやヘラを使用し、ここにしかない「青の存在」を表現したという。
エントランス正面には迫力のあるアーティスト・大森レイ氏の作品が飾られていた。シュールな抽象画であり古来の屏風絵のようでもあり、不思議な魅力をたたえていた。
石原和幸氏によるルーフバルコニー
大森レイ氏によるアート
牧野昴太氏による「ひび塗り」
吉河清人氏によるアート
田中喜茂氏(弘誠堂三代目)
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価格について。記者は価格が10億円超でも驚かないと書いた。単純比較は難しいだろうが、バブル期のマンションの最高価格はドムス「南麻布」の44億円(坪単価は3,000万円超)で、最近では三井不動産「六本木・檜町公園」の55億円(同)のはずだ。
分譲戸建てはどうか。バブル期の最高価格はいくらだったか記者は全く記憶がないが、最近では、「成城学園」アドレスのコスモスイニシアと野村不動産のそれぞれ2.7億円が最高ではないか(5億円くらいの物件が供給されたとも聞くが)。10億円は単なる通過点にしか過ぎない。同社にも同業他社にも高額戸建てに挑戦していただきたい。敷地は100坪は欲しい。
エントランス
2階リビング
主寝室
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今から60~70年くらい前だ。なぜ〝日本一の山林王〟と呼ばれたか理由は知らなかったが、三重・伊勢出身の記者は小学生のころ諸戸家を知った。毎年、伊勢新聞から発表される長者番付でいつも諸戸家はトップにランクされていたからだ。全国ランキングでも30位くらいに入っていたはずだ。
Wikipediaによると、「諸戸宗家・本家の両家を合わせると、諸戸一族が所有する山林は巻間一万町歩といわれ、その財力や資産は数えることができないくらいの山持ちである」「初代清六(1846年~1906年)が米相場から、土地に手を出したのは1883年頃からであるが…わずか5年ほどで清六が買い集めた田地は5千町歩にものぼった。清六の土地買いは、田地田畑だけではなく、その後、東京の恵比寿から渋谷、駒場に至る住宅地30万坪を買いまくり、ひと頃は渋谷から世田谷まで、他人の地所を踏まずに行けたといわれる」とある。
その後、「初代諸戸清六には4人の子がいたが長男と三男は夭逝し、次男の諸戸精太と四男の清吾が残った。諸戸家の家督を継いだのは四男の清吾であり、二代目諸戸精六と名乗り『東諸戸家』に、次男の精太は分家して『西諸戸家』となった。…初代諸戸清六は『山林は一坪たりとも減らすな』『木を伐るな』との遺訓を残したが、東諸戸家では2007年に所有していた山林をトヨタ自動車に売却して今は山林事業から撤退」(三重県の諸戸家FC2Home)しているようだ。
ジョサイア・コンドルが設計した大正2年完成の二代目清六の邸宅・六華苑は国の重要文化財に指定され、一般に公開されている。
一方の西諸戸家の事業を継承する諸戸ホールディングスの保有林は約2.800haのはずだ。
クロスの文様
同じ文様なのに見る角度により表情は全然異なる
2階トイレ
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外観・内装とも黒・グレーが基調 玄人の虜になるか 旭化成ホームズ「FREX asgard」
「FREX asgard(フレックス アスガルド)」モデルハウス
旭化成ホームズは3月4日、先に発表したアッパー向けの3階建て新商品「FREX asgard(フレックス アスガルド)」モデルハウスのメディア向け見学会を行った。同社マーケティング本部営業推進部・林紳哉氏が「英知を結集した」と話した通りだと思う。外観も内観も黒が基調で、照明も敢えてダウンライトを抑え、暗くするなど〝黒づくし〟。設備仕様レベルも極めて高い。ターゲットとする玄人に受けるのではないか。
モデルハウスは、駒沢公園ハウジングギャラリーに完成した建築面積約173㎡(52坪)、重量鉄骨3階建て延床面積約334㎡(101坪)。主な基本性能・設備仕様は、断熱等級6、全館空調、フルフラットスラブ・バルコニー、メーターモジュール廊下・階段、階段ステップ18段、幅3m×奥行き5m×天井高2.88mゴルフシュミレーター、水風呂付サウナ室など。
2階リビング
フルフラットバルコニー&シェルウォール
洗面
トイレの便器の色にもこだわっている
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新商品のコンセプト、設備仕様などは同社が1月に行った発表会の記事を参照していただきたい。
外観は「黒」だった。若い人にも年寄りにも、お金持ちにも貧乏人にも、右寄りだろうが左寄りだろうが、つまり万人受けする「白」ではなく、真逆の「黒」一色だった。一見して、まあ、これもありかと。似たものは他にもある。考えてみれば、わが国の昔の民家は屋根瓦からコールタールの塗り壁、年を経るごとに黒ずむ柱に至るまで山水画そのもの、黒が基調だった。金色やら赤やら黄色やら青やらに派手にぬりたくったのは殿様かお寺、金持ちだけだった。
驚いたのは、外観だけではない。内装・内観も黒が基調だったことだ。この種のモデルハウスはほとんど見たことがない。外のレニウムブラッグから、黒っぽいデザイン処理された大理石(瓦)-焼杉をモチーフにしたタモ材の黒・グレーへと緩やかにつなぐグラテーションは見事というほかなかった。
照明も、ダウンライトは小さなLED照明しかなく、行燈・間接照明が多用されていた。これまた昔の民家そのものだった。
だが、しかし、これが消費者に理解されるかどうかは別問題だと思った。黒一色の外観は、敷地規模が30~50坪の緑が圧倒的に少ない都市の住宅街になじむかどうか。これが第一の問題。第二は、明るい室内が常識のいまの住宅に、行燈・間接照明が理解されるかどうか。この世間の常識を覆すことができるかどうか。
80万円するというイタリア製の椅子(座り心地が良かったためか、メモも取らずふんぞり返り独占していた記者がいた)
エルメスにも負けないというイタリア製絨毯の微細な文様
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外観・内装デザイン、コンセプトなどについて同社技術本部商品企画部開発第一グループリーダー・松本淳氏、同部同グループ・小泉雅由氏、同部内装・設備グループリーダー・杉原香菜氏がそれぞれ20分くらい熱っぽく語った。「堅牢で優美。これをしっかり両立させた」(松本氏)「上質で静謐」(小泉氏)「黒とグレーの居心地のいい空間」など魅力的なフレーズが飛び交った。
一つひとつ紹介する余裕がないのは残念だが、デジカメで写真をたくさん撮ったので、その写真を紹介する。林氏が語った「が「英知を結集した」ことが分かるはずだ。
肝心の価格。同社はプロトタイプ仕様の価格を公表していないが、記者は坪単価200万円をかるかに超えると読んだ。同社の富裕層向け「RAUMFREX(ラウムフレックス)」や大和ハウス「Wood Residence MARE-希-(マレ)」の設備仕様には負ける(価格が安い)かもしれないが、デザインは互角だ。業界最上位であるのは間違いない。
レニウムブラッグの外壁
焼杉をモチーフにしたタモ材による壁
大理石の壁
左から松本市、小泉氏、杉原氏
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書きたくはないのだが、これは同社だけでなくすべてのハウスメーカー、デベロッパーに言いたいことなのであえて書く。この前書いた積水ハウス「グランドメゾン御徒町公園」の記事と一緒に読んでいただきたい。
「FREX asgard」のモデルハウスの開き戸を締めたときの音だ。「カチッ」ではなかった。ドアだけでない。LOUIS VUITTON、Hermès、BOSCH、Miele、COLOMBO、Baccarat、Volvic…記者には縁のものばかりなのでどうでもいいのだが、わが国の〝ものづくり〟はどこに行ったのか。舶来コンプレックスは生きているのか。
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